(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】薬液揮散装置、薬液揮散具及び薬液揮散具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20240314BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240314BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
(21)【出願番号】P 2020105744
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591117491
【氏名又は名称】株式会社栄光社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】秋津 博美
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-177458(JP,A)
【文献】特開2009-056115(JP,A)
【文献】実開平06-058812(JP,U)
【文献】特開2012-147706(JP,A)
【文献】実開昭61-026541(JP,U)
【文献】特開2002-362660(JP,A)
【文献】特開2018-110616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B65D 83/00
B65D 83/08 - 83/76
B65D 85/00 - 85/28
B65D 85/575
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散する薬液が封入される容器と、
前記容器内に設置され、一部又は全部が第1薬液吸収体によって構成された薬液吸収ユニットと、
前記第1薬液吸収体と前記容器との間に設置された圧縮性を有する第2薬液吸収体とを備え、
前記第1薬液吸収体が、前記第2薬液吸収体に接触して当該第2薬液吸収体に含侵された薬液を吸収するように構成されている薬液揮散装置であって、
前記第1薬液吸収体と前記容器との間の距離が前記第2薬液吸収体の非圧縮状態における厚みよりも大きくならないように、前記薬液吸収ユニットの前記第2薬液吸収体から離れる向きへの移動を規制する規制機構をさらに備え、
使用状態において、前記第2薬液吸収体に前記薬液吸収ユニットの自
重の力しか加わらないように構成されていることを特徴とする薬液揮散装置。
【請求項2】
前記第2薬液吸収体が、前記第1薬液吸収体と前記容器の底面との間に設置されている請求項1記載の薬液揮散装置。
【請求項3】
前記薬液吸収ユニットが、前記第1薬液吸収体と、前記第1薬液吸収体とは別部材であって、前記第1薬液吸収体と前記容器の内側面との間に介在するとともに、当該第1薬液吸収体を保持する保持体とを備えており、前記規制機構が、前記保持体と接触して前記薬液吸収ユニットの移動を規制するものである請求項1又は2のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【請求項4】
前記容器が、前記薬液吸収ユニット及び前記第2薬液吸収体を収容した状態で、前記第1薬液吸収体及び前記第2薬液吸収体の最大含侵量の合計以上の薬液を充填可能な内部容積を有するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液揮散装置と、
前記薬液揮散装置の容器に封入された薬液とを備えることを特徴とする薬液揮散具。
【請求項6】
両端が塞がれる筒状をなし、その中に薬液が封入された容器と、前記容器内に設置され、一部又は全部が第1薬液吸収体によって構成される薬液吸収ユニットと、前記容器と前記薬液吸収ユニットとの間に設置された圧縮性を有する第2薬液吸収体とを備えた薬液揮散具の製造方法であって、
一端を塞ぐとともに他端を開口させた前記容器内に、前記薬液吸収ユニットと前記第2薬液吸収体とを順次重ねるように設置し、前記第1薬液吸収体と前記第2薬液吸収体とを互いに接触させるステップと、前記容器の他端の開口を塞ぐことにより、前記第1薬液吸収体と前記容器との間の距離が前記第2薬液吸収体の非圧縮状態における厚みよりも大きく
ならず、かつ、使用状態において、前記第2薬液吸収体に前記薬液吸収ユニットの自重の力しか加わらないように、前記薬液吸収ユニットの前記第2薬液吸収体から離れる向きへの移動を規制するステップと、を備えることを特徴とする薬液揮散具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散装置、薬液揮散具及び薬液揮散具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から芳香剤揮散装置として、薬液が封入された容器内にケイ酸カルシウムを成形した多孔質体を設置し、開封までの時間を利用して多孔質体に薬液を含侵させるようにしたものがある。
【0003】
前記芳香剤揮散装置として、特許文献1には、容器内に設置された多孔質体と、容器の内側面と多孔質体との間に巻いた状態で挿入され、当該多孔質体から離して設置された不織布とを備えた構造のものがある。この芳香剤揮散装置によれば、香りの持続性は高いが単位時間当たりの揮散量が少ない吸収体に加えて、単位時間当たりの揮散量が多い不織布を備えているので、多孔質体のみではなし得ない芳香能力(揮散能力)が得られる。
【0004】
ところが、特許文献1に係る芳香剤揮散装置は、不織布を容器に巻いた状態で挿入しなければならないので、組み立て難い。また、多孔質体と不織布とが離れているので、例えば、輸送中に容器が傾き多孔質体が薬液に浸らなくなると、多孔質体は薬液を吸収できなくなる。その結果、開封時までに多孔質体に想定した量の薬剤が吸収されなくなり、多孔質体の香りの持続性が低下する。
【0005】
一方、前記芳香剤揮散装置として、特許文献2には、容器の底に不織布を設置し、不織布の上に保持体に保持された多孔質体を載置し、保持体の弾性力によって多孔質体を不織布に押し付けて接触させることにより、毛細管現象によって不織布に含浸された薬液を殆ど多孔質体に吸収させるようにした構造のものが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に係る芳香剤揮散装置では、不織布が保持体の弾性力によって押さえ付けられて圧縮されるので、僅かしか薬剤を含浸できない。また、不織布に含浸された薬液は、殆ど多孔質体に吸収されるようになっている。このため、開封後に不織布から殆ど薬液が揮散されなくなり、不織布の単位時間当たりの揮散量が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-56115号公報
【文献】特許第5388905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、所期の揮散能力が得られるように、開封時までに第1薬液吸収体及び第2薬液吸収体に想定した量の薬液を含侵できる薬液揮散装置を得ることを主な課題とするものである。また、本発明は、組み立て易い薬液揮散装置を得ることを更なる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る薬液揮散装置は、芳香剤や消臭剤等の薬液が封入される容器と、前記容器内に設置され、一部又は全部が第1薬液吸収体によって構成された薬液吸収ユニットと、前記第1薬液吸収体と前記容器との間に設置された圧縮性を有する第2薬液吸収体とを備え、前記第1薬液吸収体が、前記第2薬液吸収体に接触して当該第2薬液吸収体に含侵された薬液を吸収するように構成されている薬液揮散装置であって、前記第1薬液吸収体と前記容器との間の距離が前記第2薬液吸収体の非圧縮状態における厚みよりも大きくならないように、前記薬液吸収ユニットの前記第2薬液吸収体から離れる向きへの移動を規制する規制機構をさらに備え、使用状態において、前記第2薬液吸収体に前記薬液吸収ユニットの自重以下の力しか加わらないように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成によれば、使用状態において、第2薬液吸収体に薬液吸収ユニットの自重以下の力しか加わらないので、特許文献2に係る芳香剤揮散装置に比べて、保持体の弾性力が加わらない分だけ第2薬液吸収体が圧縮されなくなり、薬液を多く含侵できるようになる。また、第1薬液吸収体と容器との間の距離が第2薬液吸収体の非圧縮状態における厚みよりも大きくならないので、例えば、容器が傾いても、第1薬液吸収体は、第2薬液吸収体と接触した状態に保たれ、当該第2薬液吸収体から薬液を吸収できる。これにより、開封時までに第1薬液吸収体及び第2薬液吸収体に想定した量の薬液が含侵されるようになり、所期の揮散能力を得られるようになる。
【0011】
また、前記第2薬液吸収体が、前記第1薬液吸収体と前記容器の底面との間に設置されるものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、容器内に第1薬液吸収体と第2薬液吸収体とを重ねるように設置すればよいので、第2薬液吸収体を巻いた状態で収容する必要がなくなり、組み立て易くなる。
【0013】
また、前記薬液吸収ユニットが、前記第1薬液吸収体と、前記第1薬液吸収体とは別部材であって、前記第1薬液吸収体と前記容器の内側面との間に介在するとともに、当該第1薬液吸収体を保持する保持体とを備えており、前記規制機構が、前記保持体と接触して前記薬液吸収ユニットの移動を規制するものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、第1薬液吸収体と容器との間に保持体が介在するので、第1薬液吸収体が容器に直接接触し難くなる。これにより、例えば、第1薬液吸収体を衝撃に脆い性質のケイ酸カルシウムやセラミック等で形成した場合に、これらが容器と接触して破損することを防止できる。
【0015】
また、前記容器が、前記薬液吸収ユニット及び前記第2薬液吸収体を収容した状態で、前記第1薬液吸収体及び前記第2薬液吸収体の最大吸収量の合計以上の薬液を充填可能な内部容積を有するものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、製造時に第1薬液吸収体及び第2薬液吸収体の最大吸収量の合計以上の薬液を封入できるので、開封時までに第1薬液吸収体だけでなく第2薬液吸収体も最大吸収量の薬液が吸収できるようになる。これにより、所期の揮散能力が得られる。
【0017】
本発明に係る薬液揮散具は、前記薬液揮散装置と、前記薬液揮散装置の容器に封入された薬液とを備えるものである。
【0018】
本発明に係る薬液揮散具の製造方法は、両端が塞がれる筒状をなし、その中に薬液が封入された容器と、前記容器内に設置され、一部又は全部が第1薬液吸収体によって構成される薬液吸収ユニットと、前記容器と前記薬液吸収ユニットとの間に設置された圧縮性を有する第2薬液吸収体とを備えた薬液揮散具の製造方法であって、一端を塞ぐとともに他端を開口させた前記容器内に、前記薬液吸収ユニットと前記第2薬液吸収体とを順次重ねるように設置し、前記第1薬液吸収体と前記第2薬液吸収体とを互いに接触させるステップと、前記容器の一端の開口を塞ぐことにより、前記第1薬液吸収体と前記容器との間の距離が前記第2薬液吸収体の非圧縮状態における厚みよりも大きくならないように、前記薬液吸収ユニットの前記第2薬液吸収体から離れる向きへの移動を規制するステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
このような構成によれば、容器内に第1薬液吸収体と第2薬液吸収体とを重ねるように設置するので、組み立て易くなる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した薬液揮散装置によれば、開封時までに第1薬液吸収体及び第2薬液吸収体が想定した量の薬液を含侵できるようになり、所期の揮散能力を得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る薬液揮散具を模式的に示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る薬液揮散装置を模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る薬液揮散具の使用状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る薬液揮散具を図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明に係る薬液揮散具Mは、芳香剤や消臭剤等の薬液を徐々に揮散させるものであり、例えば、室内や車内等の芳香・消臭に使用される。
【0024】
<第1の実施形態> 本実施形態に係る薬液揮散具Mは、
図1及び
図3に示すように、薬液揮散装置100と、薬液揮散装置100から揮散される薬液(図示せず)と、を備えている。
【0025】
前記薬液揮散装置100は、
図1乃至
図3に示すように、薬液が封入される容器10と、容器10に封入された薬液を吸収する第1薬液吸収体A1によって一部が構成された薬液吸収ユニット20と、第1薬液吸収体A1とともに容器10に封入された薬液を吸収する第2薬液吸収体A2と、容器10内における薬液吸収ユニット20の移動を規制する規制機構30と、を備えている。
【0026】
前記容器10は、薬液吸収ユニット20及び第2薬液吸収体A2を収容した状態で、第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2の最大吸収量の合計以上の薬液を充填できる内部容積を有するものである。
【0027】
前記容器10は、具体的には、筒体11と、筒体11の一端側の開口を塞ぐ上板12と、筒体11の他端側の開口を塞ぐ底板13と、を備えている。従って、容器10内には、上板12によって上面12sが形成され、底板13によって底面13sが形成される。
【0028】
前記筒体11は、例えば円筒状のものである。前記上板12は、外縁部12aが筒体11の開口端に巻締加工によって固定されるものであり、その外縁部12aの内側に切り離し可能な上蓋体12bを備えている。また、外縁部12aは、巻締された状態で、その内側が筒体11の内方へ突出した形状になっている。前記底板13は、上板12と同一構成を備えており、外縁部13a及び底蓋体13bをそれぞれ備えている。
【0029】
前記薬液吸収ユニット20は、容器10の筒体11に対して底面13sと垂直な方向α(以下、垂直方向αともいう)へフリーな状態で収容されるものである。また、薬液吸収ユニット20は、垂直方向αの長さX1が容器10の上面12sと底面13sとの間の距離Xよりも小さくなっている。
【0030】
前記薬液吸収ユニット20は、具体的には、第1薬液吸収体A1と、第1薬液吸収体A1を保持する保持体21と、を備えている。
【0031】
前記第1薬液吸収体A1は、多孔質体である。具体的には、第1薬液吸収体A1は、円柱状をなし、両端へ貫通する孔A1hが形成された連続多孔質体である。本実施形態の第1薬液吸収体A1は、ケイ酸カルシウムを成形したものである。なお、第1薬液吸収体A1の素材は、ケイ酸カルシウムに限定されず、例えばセラミックやその他のものであってもよい。
【0032】
前記保持体21は、容器10の内側面と第1薬液吸収体A1との間に介在する二重筒状のものである。具体的には、保持体21は、容器10の内側面から内方へ離して設置される内筒21aと、容器10の内側面と内筒21aとの間に設置される外筒12bと、を備えている。そして、保持体21は、容器10内に設置された状態で、内筒21aに第1薬液吸収体A1を着脱自在に嵌め込んで保持するとともに、外筒21bの外側面を容器10の内側面に接触させることにより、第1薬液吸収体A1の容器10に対する垂直方向αと直交方向(径方向)への移動を規制するようになっている。また、保持体21に保持された第1薬液吸収体A1は、その一部が保持体21から底面13s側へ突出した状態となる。
【0033】
前記第2薬液吸収体A2は、圧縮性を有する多孔質体であり、容器10の底面13sと薬液吸収ユニット20との間に設置される。本実施形態の第2薬液吸収体A2は、不織布で形成された円板状のものである。なお、第2薬液吸収体A2の素材は、不織布に限定されずスポンジや他のものであってもよい。
【0034】
ここで、前記第1薬液吸収体A1と前記第2薬液吸収体A2との性質の違いを説明する。第1薬液吸収体A1は、第2薬液吸収体A2に比べて香りの持続性が高い性質を有している。すなわち、第1薬液吸収体A1は、第2薬液吸収体A2に比べて開封後に長期間に亘って薬液を揮散し続ける性質を有している。一方、第2薬液吸収体A2は、第1薬液吸収体A1に比べて単位時間当たりの揮散量が多い、言い換えれば、揮散スピードが速い性質を有している。これにより、第2薬液吸収体A2は、第1薬液吸収体A1に比べて香りの強さのピークが高くなる性質を有している。また、第1薬液吸収体A1は、第2薬液吸収体A2に接触した状態で、毛細管現象によって第2薬液吸収体A2に含侵された薬液を吸収する性質を有している。すなわち、第1薬液吸収体A1は、第2薬液吸収体A2に比べて比表面積が広くなっている。
【0035】
前記規制機構30は、容器10の上板12によって構成されている。すなわち、規制機構30は、容器10の一部によって構成されている。そして、規制機構30は、薬液吸収ユニット20の上端と接触することにより、薬液吸収ユニット20の第2薬液吸収体A2から離れる向きへの移動を規制するようになっている。
【0036】
また、前記規制機構30に薬液吸収ユニット20が接触した状態で、第1薬液吸収体A1と容器10の底面13sとの間の距離X2が、第2薬液吸収体A2の非圧縮状態における厚みと同一長さになるように構成されている。この同一長さには、第2薬液吸収体A2に薬液吸収ユニット20の自重以下の力が加わって当該第2薬液吸収体A2が僅かに圧縮された状態における厚みも含まれる。
【0037】
次に、本実施形態に係る薬液揮散具Mの製造方法を説明する。
【0038】
先ず、筒体11の一端側の開口を上板12で塞ぐ。次に、筒体11に固定された上板12を下に向けた状態で、筒体11内に薬液吸収ユニット20を収容する。なお、薬液吸収ユニット20は、保持体21から突出する第1薬液吸収体A1の一部を上に向けて収容する。次に、筒体11内に薬液を充填する。次に、筒体11内に第2薬液吸収体A2を第1薬液吸収体A1上に重ねるように載せて収容する。最後に、筒体11の他端側の開口を底板13で塞ぐ。これにより、薬液揮散具Mが組み立てられる。
【0039】
次に、本実施形態に係る薬液揮散具Mの使用方法を説明する。
【0040】
先ず、薬液揮散具Mを、底板13を下に向けた状態で設置し、上蓋体12bを切り離して開封し第1揮散口12hを形成する。これにより、第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2から揮散した薬液が、第1揮散口12hから外部へ放出される。この状態で、第2薬液吸収体A2には、薬液吸収ユニット20の自重しか力が加わらない。また、薬液吸収ユニット20は、規制機構30である上板12の外縁部12aの内側に引っ掛かり、第2薬液吸収体A2から離れる方向への移動が規制される。
【0041】
また、例えば、香りが弱まった場合には、さらに底蓋体13bを切り離して第2揮散口13hを形成する。これにより、容器10内の通気性が良くなり、第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2から揮散する薬液の量が増加し、第1揮散口12h及び第2揮散口13hから外部へ放出される薬液の量が増加する。また、この状態で、第2薬液吸収体A2は、底板13の外縁部13aの内側に引っ掛かり、第2揮散口13hから脱落することが防止される。すなわち、底板13の外縁部13aは、第2薬液吸収体A2が容器10から脱落することを防止するための脱落防止機構であるといえる。
【0042】
このような構成によれば、規制機構30によって薬液吸収ユニット20の容器10の底面13sから離れる向きへの移動が規制された状態で、第1薬液吸収体A1の容器10の底面13sからの距離X2が、第2薬液吸収体A2の非圧縮状態における厚みと同一長さになるので、第1薬液吸収体A1と第2薬液吸収体A2とが接触した状態となる。これにより、例えば、輸送中に容器10が傾いても、第1薬液吸収体A1は、第2薬液吸収体A2から薬液を吸収できるようになり、開封までに第1薬液吸収体A1に想定した量の薬液を吸収させることができる。さらに、薬液吸収ユニット20が、容器10に対して垂直方向αへフリーな状態で収容されるので、使用状態において、第2薬液吸収体A2に薬液吸収ユニット20の自重しか加わらないようになる。これにより、第2薬液吸収体A2は、殆ど圧縮されなくなり圧縮された場合に比べて含侵できる薬液の量が増す。その結果、開封後に第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2から想定した量の薬液が揮散されるようになり、所期の揮散能力を得ることができる。
【0043】
また、容器10内に薬液吸収ユニット20と第2薬液吸収体A2とを重ねるように設置して組み立てることができるので、製造の手間やコストを削減できる。さらに、第1薬液吸収体A1が、保持体21に着脱自在になっているので、第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2を厚み等が異なるものに変更すれば、芳香する空間に合わせた揮散能力を得られるようになる。この場合、第1薬液吸収体A1及び第2薬液吸収体A2以外の部品を共通化できるので、製造コストも抑えられる。
【0044】
<その他の実施形態> 前記薬液吸収ユニットは、必ずしも保持体を備えているものでなくてもよく、その全部が第1薬液吸収体によって構成されているものであってもよい。
【0045】
また、前記第1薬液吸収体と前記第2薬液吸収体とは、第1の実施形態のものと異なる性質を有するものであってもよい。なお、第1薬液吸収体と第2薬液吸収体とは、異なる性質を有するものであってもよく、同じ性質を有するものであってもよい。また、前記第1薬液吸収体は、圧縮性を有するものであってもよく、圧縮性を有しないものであってもよい。
【0046】
また、前記第2薬液吸収体は、第1薬液吸収体と容器の内側面との間に設置されたものであってもよい。この場合、使用状態において、第2薬液吸収体には、薬液吸収ユニットの自重より小さい力しか加わらないようになる。また、第2薬液吸収体は、第1薬液吸収体と容器の上面との間に設置されたものであってもよい。この場合、使用状態において、第2薬液吸収体には、外力が加わらなくなる。
【0047】
また、前記規制機構は、容器の一部によって構成されたものでなく、容器に別途設けられたものであってもよい。
【0048】
また、前記容器は、底蓋体を備えていないものであってもよい。さらに、容器は、着脱自在な上蓋体又は底蓋体を備えるものであってもよい。
【0049】
また、前記薬液揮散具Mを製造する場合に、一端が塞がれるとともに他端が開口された容器内に、第2薬液吸収体を設置した後、薬液吸収ユニットを設置してもよい。すなわち、前記第1の実施形態では、一端側の開口を上板で塞いだ容器内に、薬液吸収ユニット、第2薬液吸収体をこの順番で設置しているが、例えば、他端側の開口を底板で塞いだ容器内に、第2薬液吸収体、薬液吸収ユニットをこの順番で設置してもよい。また、当該容器に薬液を充填するタイミングは、薬液吸収ユニット又は第2薬液吸収体のいずれか一方又は双方が設置された後、或いは、双方が設置される前であってもよい。
【0050】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
M 薬液揮散具
100 薬液揮散装置
10 容器
12 上板(規制機構)
12a 外縁部
13 底板
13a 外縁部
20 薬液吸収ユニット
21 保持体
A1 第1薬液吸収体
A2 第2薬液吸収体