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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】消火活動用マスクカバー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240314BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240314BHJP
   A62B 17/04 20060101ALI20240314BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 H
A41D13/005 103
A62B17/04 Z
A62B18/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020117624
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015033
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593001037
【氏名又は名称】小林防火服株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】小林 寿太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 容子
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237907(JP,A)
【文献】特開2019-187972(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130841(JP,U)
【文献】特開2012-036533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A41D 13/005
A62B 17/04
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染防止用のマスクの上に重ねて装着されることで、前記マスクを火災時の火の粉や熱から保護する消火活動用マスクカバーであって、顔の目より下方部分に添え付けられ、前記マスクを覆うマスクカバー本体部と、首部後方の頸椎部に添え付けられ、前記頸椎部を冷やす頸椎部保冷部と、前記マスクカバー本体部の両側縁端部より前記首部の側部に沿っ
てそれぞれ首部後方に延長され、前記マスクカバー本体部と前記頸椎部保冷部とを連結する帯状連結部と、前記マスクカバー本体部の上端部より耳部の上側を頭部後方に延長され、前記マスクカバー本体部を保持する一対の保持紐部とを備えていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項2】
請求項1記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記頸椎部保冷部に保冷剤収納部が設けられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項3】
請求項1または2記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記頸椎部保冷部は、前記頸椎部に添え付けられた下部保冷部と当該下部保冷部の上側に脱着可能に添え付けられた上部保冷部とを備え、かつ前記下部保冷部および/または前記上部保冷部に保冷剤収納部が設けられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記マスクカバー本体部と顎部との間に下方に抜ける呼吸用の隙間が設けられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項5】
請求項3記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記下部保冷部と前記上部保冷部との当接面に面ファスナーが設けられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記帯状連結部および前記保持紐部に伸縮可能なゴムギャザーが設けられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の消火活動用マスクカバーにおいて、前記マスクカバー本体部の素材として、メッシュ生地が用いられていることを特徴とする消火活動用マスクカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火活動用マスクカバーに関し、特に消防隊員が建物火災や屋外火災、或いは交通火災などの消火活動を行う際に、感染防止用マスクの上に重ねて装着することにより、火災時の火の粉や熱から感染防止用マスクを保護すると共に、頸椎部を冷やして消火活動中の熱中症リスクを低減して消防隊員の安全を図るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年のコロナ禍にあっては、救助活動や救急活動、さらには消火活動を行う時でも、普通に感染防止用のマスクが着用され、感染防止用のマスクには特にN95マスクが着用されている。
【0003】
一般に、火災の伴わない救助活動や救急活動の際は、保安帽とN95マスク、目を保護するゴーグルまたはフェイスシールドが着用され、それ以外の活動、例えば、屋外消火活動、火災を伴う交通救助、火災可能性のある震災時などの都市型救助活動などにおいては、防火帽とN95マスク、さらにゴーグルまたはフェイスシールドが着用され、また、建物火災などにおいて屋内に侵入する際は、面体付き空気呼吸器が着用される。
【0004】
ところで、N95マスクを着用する場合、火災を伴う救助活動や消火活動等の際は、火災の火の粉や熱からN95マスクを保護する必要がある。N95マスクを火災の火の粉や熱から保護する方法として、海外では頭、顔周り、襟首などを覆うように形成された防炎フード(いわゆるバラクラバ型フード)を防火帽の下に着用することになっていることから、必然的にN95マスクは保護される。
【0005】
一方、日本国においては、総務省消防庁ガイドラインによれば、消防活動時の各パーツの接合部(インターフェイス部)が、充分カバーされてコンパチビリティ(性能の整合性、互換性)が担保されていれば、防炎フードは必ずしも着用しなくてもよいとされている。
【0006】
このため、一般的には防炎フードを着用せず、防火服の襟を立てて面ファスナーで固定し、さらに防火帽のフェイスシールドを一番下まで下げてロックし、かつ図4に図示するように「しころ」の前あわせを鼻口前顎辺りで面ファスナーで固定して隙間のないよう保護することにより、N95マスクを保護していた。
【0007】
また、特許文献1には、冷凍した冷却剤を脱着可能に装填して、着用時に着用者の頚椎部を冷やせるように構成された、ヒートストレス対策機能を備えた防火服用上着の考案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3174763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、「しころ」の前合わせによって顔部分を覆うと視界が著しく狭められ、消火活動に大きく支障を来す場合があり、このため、雰囲気温度がかなり上がる場合や危険を察知した場合にのみ「しころ」の前合わせ行っていた。
【0010】
また、防火帽と防火服を着用し、「しころ」の前あわせを行っていても、消火活動中に体温が上昇して熱中症のリスクが高まり、消防隊員の安全性が損なわれるおそれがあった。
【0011】
なお、マスク自体に冷感作用を有する冷感材が配置されたマスクが知られているが、火災時の火の粉や高温に充分耐え得るものは未だ開発されていない。
【0012】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、特に消防隊員が消火活動や火災を伴う救助活動を行う際に、感染防止用として着けるマスクを火災の火の粉や熱から確実に保護することができると共に、消防隊員の異常な体温上昇を抑制して熱中症リスクを低減できるようにした消火活動用マスクカバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感染防止用として着用されるマスクの上に重ねて着用することにより、前記マスクを火災の火の粉や熱から保護する目的で開発された消火活動用マスクカバーの発明であり、顔の目より下方部分に添え付けられ、前記マスクを覆うマスクカバー本体部と、首部後方の頸椎部に添え付けられ、前記頸椎部を冷やす頸椎部保冷部と、前記マスクカバー本体部の両側の縁端部より首部の側面に沿って首部後方に延長され、前記マスクカバー本体部と前記頸椎部保冷部とを連結する左右帯状連結部と、前記マスクカバー本体部の上端部より耳部の上側を前記頭部後方に延長され、前記マスクカバー本体部を保持する一対の保持紐部とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
前記頸椎部保冷部に保冷剤収納部が設けてあれば、保冷剤として市販の保冷剤を利用することができる。保冷剤収納部としては面ファスナー等によって開閉可能な挿入口を備えたポケットが好ましい。
【0015】
また、前記頸椎部保冷部としては、頸椎部に直接添え付けられる下部保冷部と当該下部保冷部の上側に面ファスナー等によって脱着可能に添え付けられる上部保冷部とを備え、かつ前記下部保冷部および/または前記上部保冷部に保冷剤収納部が設けられたものが好ましい。
【0016】
また、頸椎部に直接添え付けられる下部保冷部の収納ポケットに保冷剤を収納して使用する(図3(a))のが通常であるが、さらに、上部保冷部の収納ポケットにも保冷剤を収納して使用する(図3(b))ことで、保冷時間を延長することができる。
【0017】
また、下部保冷部と上部保冷部の当接面に面ファスナーを設置して脱着可能とすることにより、マスクカバーの装着と取外しを簡単に行うことができる。
【0018】
また、帯状連結部および保持紐部の一部または全部を伸縮自在なゴムギャザー仕様とすることにより、マスクカバー本体部と頸椎部保冷部をそれぞれ顔の目より下方部分と頸椎部に完全にフィットした状態で添え付けることができる。
【0019】
なお、マスクカバー本体部、頸椎部保冷部、帯状連結部および保持紐部の素材は、防火服外衣生地同等が望ましいが、N95マスク(感染防止用マスク全般)の形状を活動時前後損なわず、通気性を確保しつつ、断熱性と耐火性、耐熱性を兼ね備えた生地が望ましい。素材として例えば、アラミド繊維、PBO繊維、PBI繊維、難燃合成繊維などが挙げられる。
【0020】
また、マスクカバー本体部の口に直接触れる部分の素材として、難燃メッシュ等のメッシュ生地を採用することもでき、口に直接触れる部分を難燃メッシュ等のメッシュ生地とすることにより、口に触れる部分の通気性能を向上させることができる。
【0021】
さらに、口に直接触れる部分を含むマスクカバー本体部の全体または部分(例えば、マスクカバー本体部の内側全体または内側の一部分)を難燃メッシュ等のメッシュ生地で形成することにより、マスクカバー本体部全体の通気性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特に消防隊員が建物火災や山火事などの屋外火災、或いは交通火災などの消火活動を行う際に、感染防止用マスクの上に重ねて装着することにより感染防止用マスクを火の粉や熱から保護することができ、また、頸椎部を保冷剤で冷やすことで、消火活動中の熱中症リスクを大幅に低減して消防隊員の安全を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態であり、消火活動用マスクカバーを装着した状態を示し、図(a),(b)は側面図である。
図2図1に図示する消火活動用マスクカバーを展開した状態を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は平面図である。
図3】頸椎部保冷部を図示したものであり、図(a)は下部保冷部の収納ポケットにのみ保冷剤が収納された状態を示す断面図、図(b)は下部保冷部と上部保冷部の両方の収納ポケットに保冷剤が収納された状態を示す断面図である。
図4】防火帽の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図3は、本発明の一実施形態であって、感染防止用のマスクとして着けられたN95マスクの上に重ねて装着された消火活動用マスクカバーを図示したものである。
【0025】
図において、消火活動用マスクカバー1は、N95マスク(図省略)の上に、顔の目より下方部分をそのほぼ全体を覆うように添え付けられたマスクカバー本体部2と、首部後方の頸椎部(うなじ)に添え付けられた頸椎部保冷部3と、マスクカバー本体部2の両側の縁端部より首部の両側部にかけて添え付けられ、頸椎部保冷部3の縁端部にそれぞれ接続された左右帯状連結部4,4とを備え、さらに、マスクカバー本体部2の上端部(頬骨部に添え付けられた部分)より左右耳部の上側をそれぞれ頭部側面に沿って頭部後方に延長された一対の保持紐部5,5を備えている。
【0026】
マスクカバー本体部2は、立体裁断加工により顔の前方にほぼ楕円曲面状に立体的に膨出して形成され、これによりN95マスクをその立体的形状を保持しつつカバーすることができようになっている。
【0027】
また、下端部(顎部分)の顎部との間に下方に抜ける呼吸用の隙間2aが確保され、消火活動中にもスムーズに呼吸ができるようになっている。
【0028】
なお、マスクカバー本体部2の口に直接触れる部分の素材として、難燃メッシュ等のメッシュ生地を採用することもでき、特に難燃メッシュ等のメッシュ生地を採用することにより口に触れる部分の通気性を向上させることができる。
【0029】
さらに、口に直接触れる部分を含むマスクカバー本体部2の内側全体またはマスクカバー本体部2の内側の一部分を難燃メッシュ等のメッシュ生地で形成することにより、マスクカバー本体部全体の通気性能を向上させることができる。
【0030】
頸椎部保冷部3は、頸椎部(うなじ)の表面に首部の周方向に一定長および一定幅に形成され、また頸椎部の表面に直接添え付けられた下部保冷部6bと下部保冷部6bの上に重ねて添え付けられた上部保冷部6aとから二重に形成されている。
【0031】
また、その一方または両方の内側に保冷剤収納ポケット6cが形成され、さらに、上部保冷部6aと下部保冷部6bとの当接面に面ファスナー6d,6dが形成されている。
【0032】
このように、頸椎部保冷部3が上部保冷部6aと下部保冷部6bとから二重構造になっていることで、通常は、頸椎部に直接添え付けられる下部保冷部6bの収納ポケット6cに保冷剤7を収納して使用し(図3(a))、必要に応じて上部保冷部6aの収納ポケット6cにも保冷剤7を収納して使用する(図3(b))ことにより保冷時間を延長することができる。
【0033】
帯状連結部4,4は、その一部または全体が頭部後方に自由に伸縮可能なゴムギャザー4aにより形成され、これによりマスクカバー本体部2が顔面にN95マスクの形状を保持しつつ密着した状態で添え付けられるようになっている。
【0034】
保持紐部5,5も、その一部または全体が頭部後方に伸縮可能なゴムギャザー5aにより形成されており、これによりマスクカバー本体部2が顔面にN95マスクの形状を保持しつつ密着した状態で添え付けられるようになっている。
【0035】
また、保持紐部5,5の頭部後方の端部に互いに、または頸椎部保冷部3の面ファスナー6d,6dと脱着可能な面ファスナー5b,5bが形成されている。
【0036】
これにより、保持紐部5,5は耳部の上側を頭部後方に延長し、後頭部で互いに接続したり(図1(a)参照)、或いは耳部の上側に巻き掛け、頸椎部保冷部3に接続することができるようになっている(図1(b)参照)。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、特に消防隊員が建物火災や屋外火災、或いは交通火災などの消火時に、感染防止用マスクの上に重ねて装着することにより感染防止用マスクを火災の火の粉や熱から保護することができ、また、消防隊員の頸椎部を保冷剤で冷やして熱中症リスクを低減することができる。。
【符号の説明】
【0038】
1 消火活動用マスクカバー
2 マスクカバー本体部
2a 呼吸用の隙間
3 頸椎部保冷部
4 帯状連結部
4a ゴムギャザー
5 保持紐部
5a ゴムギャザー
5b面ファスナー
6a 上部保冷部
6b 下部保冷部
6c 保冷剤収納ポケット(保冷剤収納部)
6d 面ファスナー
7 保冷剤
図1
図2
図3
図4