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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】編レース、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/12 20060101AFI20240314BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20240314BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
D04B21/12
D04B21/18
D02G3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021022053
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124342
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】597027305
【氏名又は名称】株式会社クロダレース
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 茂男
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-181946(JP,A)
【文献】特開2011-219876(JP,A)
【文献】特開平09-119046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28、21/00-21/20、
A41C1/00-5/00、
D02G1/00-3/48、D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入糸を挿入する編み目が複数連続した編レースであって、
複数の前記編み目が連続した基本組織を形成する組織形成糸と、
前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記編レースの表側に位置し、所定の柄を形成する第1の挿入糸と、
前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記編レースの裏側に位置し、地編み組織を形成する第2の挿入糸と
を有し、
前記第2の挿入糸は、前記組織形成糸と染色性質が異なる繊維を含む複合糸であり、
前記組織形成糸及び前記第2の挿入糸は、染め分けられている
編レース。
【請求項2】
前記第2の挿入糸は、前記第1の挿入糸と染色性質が異なる繊維を含む複合糸である
請求項1に記載の編レース。
【請求項3】
前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記第2の挿入糸より前記編レースの裏側に位置する伸縮糸をさらに有する
請求項2に記載の編レース。
【請求項4】
前記第2の挿入糸、前記組織形成糸、及び前記伸縮糸の少なくとも1つが熱融着性のある糸である
請求項3に記載の編レース。
【請求項5】
前記第1の挿入糸は、前記組織形成糸と染色性質が同一又は同質の糸である
請求項4に記載の編レース。
【請求項6】
挿入糸を挿入する編み目が複数連続した編レースの製造方法であって、
前記編レースの裏側に位置するように、組織形成糸により形成された前記編み目に、地編み組織を形成する挿入糸を挿入し、地編み組織を形成する工程と、
前記編レースの表側に位置するように、組織形成糸により形成された前記編み目に所定の柄を形成する挿入糸を挿入し、所定の柄を形成する工程と、
形成された前記柄、及び、前記地編み組織の少なくとも一方を染色する工程と
を有し、
地編み組織を形成する工程において、前記組織形成と染色性質が異なる繊維を含む複合糸を地編み組織を形成する挿入糸として、前記編み目に挿入し、
前記染色する工程において、同一の染色条件で染め分ける
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編レース、及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ラッシェル機にて経編編成されたレース生地において、透明ないし透明に近い地糸で柄糸を押さえ編成することにより、透明ないし透明に近い地糸を透過して柄糸を表わしてなることを特徴とする経編編成によるレース生地が開示されている。
また、特許文献2には、1針おきの交互配列をなすように分割構成されかつ並設された2枚の分割ジャカード筬と、少なくとも1枚の地筬とにより編成され、地編の組織に対して分割ジャカード筬によりレース調の柄が構成されてなる衣料用ジャカードレース編地であって、前記2枚の分割ジャカード筬によりそれぞれ導糸される柄構成用糸として、編幅方向の少なくとも一部においては各々に異色または異種素材の糸が配されて編成され、編地表面の柄部分に2色以上の色柄が表現されてなることを特徴とする衣料用ジャカードレース編地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-205286号公報
【文献】特開2002-4158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自在な配色が可能で、柄が鮮明となる編レースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る編レースは、挿入糸を挿入する編み目が複数連続した編レースであって、複数の前記編み目が連続した基本組織を形成する組織形成糸と、前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記編レースの表側に位置し、所定の柄を形成する第1の挿入糸と、前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記編レースの裏側に位置し、地編み組織を形成する第2の挿入糸とを有し、前記第2の挿入糸は、前記組織形成糸と染色性質が異なる繊維を含む複合糸である。
【0006】
好適には、前記第2の挿入糸は、前記第1の挿入糸と染色性質が異なる繊維を含む複合糸である。
【0007】
好適には、前記編み目に挿入された挿入糸のうち、前記第2の挿入糸より前記編レースの裏側に位置する伸縮糸をさらに有する。
【0008】
好適には、前記第2の挿入糸、前記組織形成糸、及び前記伸縮糸の少なくとも1つが熱融着性のある糸である。
【0009】
好適には、前記第1の挿入糸は、前記組織形成糸と染色性質が同一又は同質の糸である。
【0010】
また、本発明に係る製造方法は、挿入糸を挿入する編み目が複数連続した編レースの製造方法であって、前記編レースの裏側に位置するように、組織形成糸により形成された前記編み目に、地編み組織を形成する挿入糸を挿入し、地編み組織を形成する工程と、前記編レースの表側に位置するように、組織形成糸により形成された前記編み目に所定の柄を形成する挿入糸を挿入し、所定の柄を形成する工程と、形成された前記柄、及び、前記地編み組織の少なくとも一方を染色する工程とを有し、地編み組織を形成する工程において、前記組織形成と染色性質が異なる繊維を含む複合糸を地編み組織を形成する挿入糸として、前記編み目に挿入する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自在な配色が可能で、柄が鮮明となる編レースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例における柄模様入り編レース1の表側を例示する図である。
図2】柄模様入り編レース1の表側の地模様5及び柄部6を例示する拡大図である。
図3】柄模様入り編レース1の裏側の地模様5及び柄部6を例示する拡大図である。
図4】柄模様入り編レース1の編成組織を説明するための図示例である。
図5】柄模様入り編レース1の編成組織を詳細に説明する平面模式図である。
図6】柄模様入り編レース1の編成組織を詳細に説明する断面模式図である。
図7】編レース1の製造方法(S10)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明がなされた背景を説明する。
先行技術の実開昭57-205286号公報(特許文献1)では、鎖糸に透明ないしは透明に近いものを使用し、柄糸の色を透過させて立体的に見える様に提案されている。この場合は原着糸又は異染糸の挿入糸を地糸や柄糸に用いる為、生産時の配色の限定があり、客先が所望する配色を行う場合は、配色に合わせた色糸を準備して編機の糸をその都度切り替える必要があり、切り替えによる残糸処理が発生し、また配色別の糸や編成後のレースの在庫管理等が複雑になり生産コストがかかる問題点がある。また、先行技術の特開2002-4158号公報(特許文献2)では、1組のジャカード筬に異なる糸種の整経を行い編機に仕掛けて色を変える提案がされている。この場合は個々のテンション管理が難しく、また糸の切り替えロスも大きくなり生産コストがかかる問題点がある。そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、生産や在庫ロスが少なく、自在な配色が可能で、柄が鮮明となる編レースを提供することが可能である。以下、このような本発明の実施形態による柄模様入り編レース1を図面を参照して説明する。
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、図1図3を参照し、柄模様入り編レース1の概要を説明する。
図1は、本実施例における柄模様入り編レース1の表側を例示する図である。
図2は、柄模様入り編レース1の表側の地模様5及び柄部6を例示する拡大図である。
図3は、柄模様入り編レース1の裏側の地模様5及び柄部6を例示する拡大図である。
図1に例示するように、柄模様入り編レース1(以下、編レース1)は、例えば、ラッセル機などの経編機によって編成された経編地のラッセルレースであり、複数の透孔が形成され、各透孔の形状および配置の組合せによりレース模様が形成される。また、編レース1は、単色又は複数色を有するレースであり、本例の編レース1は、複数色を有するレースである。編レース1は、地編み組織2と、地編み組織2に編み込まれた柄部6とを有する。
【0015】
地編み組織2は、隣り合う2つの基本となる組織(後述する基本組織12)を互いに連結して形成された地編み組織である。地編み組織2は、例えば、鎖編み、チュール、又は、パワーネット等で形成された基本となる組織を互いに連結して形成された地編み組織であり、本例では鎖編みで形成された基本組織12を互いに連結し、鎖編み組織として形成される。なお、鎖編み組織は、ラン止め(ほつれ防止)組織があってもよいしなくてもよい。また、地編み組織2は、透かし部4と、地模様5とを含む。
透かし部4は、単位面積あたりに配置される糸の量が疎な領域であり、様々な複数のネット目である透孔が配置される。
地模様5は、単位面積あたりに配置される糸の量が密な領域であり、所定の模様に形成される。本例の地模様5は、4コースネットを形成する。
柄部6は、地編み組織2の表側において、地模様5に柄糸60が編み込まれ、地模様5を装飾する領域である。柄部6は、編み込まれた柄糸60の疎密度合いにより、花柄模様の輪郭、濃淡、或いは凹凸を現出させる。
【0016】
また、編レース1の地模様5及び柄部6に着目すると、図2及び図3に例示するように、地編み組織2の表側(すなわち、編レース1の表側)から見ると、柄部6は、地模様5より編レース1の表面に配置され、地編み組織2の裏側(すなわち、編レース1の裏側)から見ると、地模様5は、柄部6より編レース1の裏側に配置されている。すなわち、柄部6は、編レース1の厚み方向において、地編み組織2の表側(すなわち、編レース1の表側)に位置するよう、地編み組織2に重なっている。
【0017】
次に、図4図6を参照し、柄模様入り編レース1の編成組織を説明する。
図4は、柄模様入り編レース1の編成組織を説明するための図示例である。
図4に例示するように、編レース1は、地編み組織2を形成する鎖編糸10、伸縮糸20及びジャカード糸30と、柄部6を形成する柄糸60とを有する。
【0018】
鎖編糸10は、本発明に係る組織形成糸の一例であり、地編み組織2の基礎となる基本組織12を形成する編糸である。ここで、基本組織12とは、挿入糸を挿入する編み目が複数連続した組織であり、例えば、鎖編組織、チュール組織、又はパワーネット編組織等であり、本例の基本組織12A~12Gは、複数の鎖編み目が連続した鎖編組織である。すなわち、鎖編糸10は、挿入糸を挿入する編み目を複数形成する編糸である。また、鎖編糸10は、化学繊維のうち合成繊維で形成した糸であり、フィラメント糸又は複合糸である。例えば、鎖編糸10がフィラメント糸である場合、ポリアミドナイロン(ナイロン)、アクリル、又は、ポリエステル等で形成される。また、鎖編糸10が複合糸である場合、熱融着性のある糸であり、例えば熱融着性弾性糸であるポリウレタンを芯糸にして、ナイロン糸である被覆糸を巻回した複合糸である。ここで、ポリウレタンを染色するのに適した染料は、酸性染料又は分散染料であるため、ポリウレタンは、ナイロンと同様の染料で染色できる。
なお、本例の鎖編糸10は、ナイロンで形成したマルチフィラメント糸である。また、鎖編糸10の太さは、例えば20デニール以上140デニール以下の範囲であり、好ましくは、30デニール以上40デニール以下である。なお、本例の鎖編糸10の太さは40デニールである。また、鎖編糸10の複合方法は、カバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工の他、既知の複合加工法を適宜選択でき、鎖編糸10は、条件に適した上記複合方法で製造された複合糸である。
【0019】
伸縮糸20は、基本組織12の鎖編み目に挿入して配置される挿入糸である。本例の伸縮糸20は、各基本組織12に配置され、かつ、挿入糸を挿入する鎖編み目が複数連続する方向(コース方向)に配置されている。基本組織12に配置された伸縮糸20は、柄糸60より編レース1の裏側に位置する。伸縮糸20は、弾性を有する糸であり伸縮する。伸縮糸20は、例えば、ポリウレタン弾性糸(いわゆるスパンデックス)、又は、熱融着性ポリウレタン弾性糸である。これにより、伸縮糸20は、基本組織12をコース方向に伸縮させることができるため、編レース1をストレッチレースとすることができる。なお、編レース1をリジットレースとする場合は伸縮糸20を省くことができる。また、伸縮糸20の太さは、例えば40デニール以上560デニール以下の範囲であり、好ましくは、70デニール以上280デニール以下であり、伸度や伸縮力により太さを適宜変更可能である。なお、本例の伸縮糸20の太さは70デニールである。
【0020】
ジャカード糸30は、本発明に係る第2の挿入糸の一例であり、基本組織12の鎖編み目に挿入する挿入糸である。ジャカード糸30は、後述する柄糸60より編レース1の裏側に位置し、隣り合う2つの基本組織12を連結し、レース模様のある地編み組織2を形成する。ジャカード糸30は、単独素材の糸、又は複合糸であり、本例では複合糸である。例えば、ジャカード糸30は、天然繊維又は再生繊維と、合成繊維との複合糸である。合成繊維とは、例えば、アクリル、ポリエステル、ナイロン、又はポリウレタン等である。天然繊維とは、例えば、綿、麻、シルク、又は、ウール等であり、再生繊維とは、例えば、レーヨン、キュプラ、又はポリノジック等である。また、ジャカード糸30は、熱融着性のある糸であってもよく、例えば、熱融着性弾性糸であるポリウレタンを芯糸にして、ナイロン糸である被覆糸を巻回した複合糸であってもよい。ポリウレタンを染色するのに適した染料は、酸性染料又は分散染料であるため、ポリウレタンはナイロンと同様の染料で染色できる。
また、合成繊維、天然繊維および再生繊維のうち、機能性繊維と換言できる繊維がある。例えば、吸水速乾/吸放湿機能繊維、接触冷感機能繊維、遮熱UVカット機能繊維、保温機能繊維、吸湿発熱機能繊維、又は消臭機能繊維等に該当する糸は、機能性繊維と換言できる。
なお、本例のジャカード糸30は、キュプラ繊維とナイロン繊維との複合糸であり、キュプラ繊維及びナイロン繊維の太さがそれぞれ30デニールである。キュプラ繊維は、前記機能性として、吸水性や吸放湿による衣類の快適性などがある。また、ジャカード糸30の複合方法は、カバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工の他、既知の複合加工法を適宜選択でき、ジャカード糸30は、条件に適した上記複合方法で製造された複合糸である。
また、ジャカード糸30は、鎖編糸10及び柄糸60と染色性質が異なる繊維を含む複合糸である。ここで、染色性質が異なるとは、例えば酸性染料、反応染料、又は、カチオン染料等の染料のうち、染色する繊維に適した染料が互いに異なることを意味する。なお、本例の編レース1では、ナイロンである鎖編糸10及び柄糸60と、ナイロンとキュブラとの複合糸であるジャカード糸30との組合せであるため、ジャカード糸30に含まれるキュブラに適した染料は反応染料であり、鎖編糸10及び柄糸60であるナイロンに適した染料は酸性染料となる。すなわち、ジャカード糸30は、鎖編糸10及び柄糸60と染色性質が異なる繊維を含む複合糸であるといえる。
【0021】
柄糸60は、本発明に係る第1の挿入糸の一例であり、基本組織12の鎖編み目に挿入する挿入糸である。柄糸60は、伸縮糸20、ジャカード糸30及び柄糸60より編レース1の表側に位置し、所定の柄を形成する糸である。柄糸60は、図1図3に例示した地模様5に編み込まれ柄部6を形成する。編み込まれた柄糸60は、単位面積当たりの疎密度合いにより、地模様5に花柄模様の輪郭、濃淡、或いは凹凸を現出させる。また、柄糸60は、化学繊維のうち合成繊維で形成した糸であり、例えば、ポリアミドナイロン(ナイロン)、アクリル、又はポリエステル(カチオン可染ポリエステル)等の繊維で形成される糸である。また、柄糸60は、再生繊維であるレーヨン等で形成される糸でもある。なお、本例の柄糸60は、ナイロン糸である。
また、柄糸60は、鎖編糸10と染色性質が同一又は同質の繊維を含む糸である。ここで、染色性質が同一とは、例えば酸性染料、反応染料、又は、カチオン染料等の染料のうち、染色する繊維に適した染料が同じであり、かつ、糸の種類が同じことを意味する。また、染色性質が同質とは、例えば酸性染料、反応染料、又は、カチオン染料等の染料のうち、染色する繊維に適した染料が同じであり、かつ、糸の種類が異なることを意味する。なお、本例の柄糸60は、鎖編糸10と同様のナイロン糸であり、鎖編糸10と染色性質が同一である。
【0022】
また、図5及び図6に例示するように、編レース1は、基本組織12を形成する鎖編糸10の編み目に、伸縮糸20、ジャカード糸30、及び柄糸60を挿入することにより編成されている。鎖編糸10の編み目は、編レース1の厚み方向において、編レース1の表側に位置するシンカーループ10Aと、編レース1の裏側に位置するニードルループ10Bとにより形成される。柄糸60は、編レース1の厚み方向において、ジャカード糸30、伸縮糸20、及び、ニードルループ10Bの上方に位置すると共に、シンカーループ10Aの下方に位置しており、このシンカーループ10Aにより抑えられている。すなわち、柄糸60は、編レース1の表側に位置する。また、伸縮糸20及びジャカード糸30は、編レース1の厚み方向において、シンカーループ10A、及び柄糸60の下方に位置する。すなわち、伸縮糸20及びジャカード糸30は、編レース1の裏側に位置する。また、鎖編糸10は、柄糸60と同じナイロン糸であるため、柄糸60により編成された柄部6の鮮明性を妨げない。
このように、編レース1は、編レース1の表側に柄部6が位置し、編レース1の裏側に地編み組織2が位置すると共に、柄部6と基本組織12と同じ糸で形成することにより、図1及び図2で例示したように、地編み組織2から柄部6が浮き上がるように鮮明となる。
【0023】
次に、図7を参照し、編レース1の製造方法を説明する。
図7は、編レース1の製造方法(S10)を説明する図である。
本実施例の編レース1は、バックジャカードラッセル編機(以下、バックジャカード機)により編成される。バックジャカード機は、4種類の筬を有し、編機前側から、ビームから供給される鎖編糸10を編針に導く第1地筬、ビーム又はクリールから供給される柄糸60を編針に導く柄筬、ジャカード機構を有し、ビームから供給されるジャカート糸30を編針に導くジャカート筬、ビームから供給される伸縮糸20を編針に導く第2地筬の順番に配列されている。すなわち、柄筬は、ジャカート筬及び第2地筬より、編機前側に位置している。以下、本例の製造方法では、上記バックジャカード機を使って編レース1の編成し、編成した編レース1を染色し、染色した編レース1を得る。
図7に例示したように、ステップ100(S100)において、作業者は、バックジャカード機に、図4に例示した基本組織12を形成させる。具体的には、バックジャカード機は、第1地筬によって鎖編糸10を編針に導き経編用の鎖編み目を形成し、形成した鎖編み目をコース方向に複数連続させて基本組織12を形成する。また、バックジャカード機は、基本組織12を形成しながら伸縮糸20を全ての鎖編み目に挿入する。また形成される基本組織12は、ウェール方向に等間隔で複数設けられる。
【0024】
ステップ102(S102)において、作業者は、バックジャカード機に、図1に例示した地編み組織2を形成させる。具体的は、バックジャカード機は、図4に例示したように、ジャカート筬から導かれたジャカート糸30を基本組織12の鎖編み目に挿入し、柄糸60より編レースの裏側となる位置において、ウェール方向に複数並ぶ基本組織12のうち、隣接する2つの基本組織12を互いに連結して地編み組織2を形成する。バックジャカード機は、ジャカート糸30により隣接する2つの基本組織12のウエール間を連結すると共に、図1に例示した透かし部4や地模様5を形成する。
【0025】
ステップ104(S104)において、作業者は、バックジャカード機に、図1に例示した柄部6を形成させる。具体的は、バックジャカード機は、形成された基本組織12の鎖編み目に柄糸60を挿入し、ジャカート糸30により編レースの表側となる位置において、柄部6を形成する。
このように上記ステップS100、S102、及びS104では、バックジャカード機の編成動作にて同一コース上で編込み等が行われ、染色加工前の編レースが製造される。
【0026】
ステップ106(S106)において、作業者は、編成後のレースのうち、柄部6、及び、地編み組織2の少なくとも一方を染色する(後染め)。染料の選択は、例えばナイロン糸を染色する場合に酸性染料を選択し、綿、レーヨン、及びキュプラを染色する場合に反応染料又は直接染料を選択し、カチオン可染ポリエステルを染色する場合にカチオン染料を選択する。なお、特定の素材に対する特定の染料を使用しない場合もある。本例では、図1図3に例示した柄部6を形成する柄糸60は染色せず、地編み組織2を形成するジャカード糸30を染色する。作業者は、キュプラ繊維とナイロン繊維との複合糸であるジャカード糸30のキュプラ繊維を反応染料で染色する。これにより、図1図3に例示した編レース1を得ることができる。
このように、本製造方法により、編レースの厚み方向において、編レースの表側に柄部6を配置し、編レースの裏側に地編み組織2を配置した編レースを製造することができる。なお、本製造方法において、後染めの場合を説明したが先染めであってもよいし、原着糸での編成であってもよい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の編レース1によれば、鎖編糸10及び柄糸60と染色性能が異なる繊維を含む複合糸をジャカード糸30とすることにより、鎖編糸10及び柄糸60との染め分けができ、ジャカード糸30を自在に配色することが可能となる。また、ジャカード糸30が編レース1の裏面に配されるため、柄が鮮明となると共に、ジャカード糸30に使用した機能性繊維の機能効果が使用時により発揮される。
また、編レース1は、基本組織12を形成する鎖編糸10と、柄部6を形成する柄糸60とが染色性能が同じ素材のナイロン糸であることで、編レース1の最表面に出てくる鎖編糸10のシンカーループ10Aと柄糸60とが同じ素材となる。これにより、基本組織2と柄部6とを同じ発色を表現することができるため、柄部6に別の色が被らずにメリハリのある表現が可能となり鮮明に発色する。また、柄糸60がジャカード糸30より編レース1の表側に配されるため、各々を異色に染色した場合に柄部6が落下板編レースのように浮いて視認できる。
なお、鎖編糸30と柄糸60は同じ糸種であれば柄部6の発色性に優れるが必ずしも同一である必要はなく、用途や配色の組み合わせにより別素材の使用や異素材の組み合わせも可能である。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0028】
次に、上記実施形態における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
上記実施形態では、基本組織12を形成する鎖編糸10をナイロンの単独素材糸とし、伸縮糸20をポリウレタン弾性糸とする場合を説明したが、これに限定するものではなく、鎖編糸10を熱融着性ポリウレタンとナイロンとの複合糸としてもよく、伸縮糸20を熱融着性ポリウレタン弾性糸としてもよい。このように、鎖編糸10及び伸縮糸20を熱融着性のある糸とすることで、スパン抜けやほつれを防止することができる。
【0029】
[変形例2]
上記実施形態では、挿入糸として、編レース1の厚み方向において編レース1の表側から、柄糸60、ジャカード糸30、及び伸縮糸20の順で挿入される場合を説明したが、これに限定するものではなく、これに加えて、伸縮糸20の下方に、さらにキュプラ繊維及びナイロン繊維の複合糸を挿入してもよい。これにより、キュプラ繊維及びナイロン繊維の混合比を増やすことで、機能性繊維の性能をより発揮させることができる。
【0030】
[変形例3]
上記実施形態では、ナイロンである鎖編糸10、ナイロンである柄糸、及びナイロンとキュブラとの複合糸であるジャカード糸30の組合せを説明した。ジャカード糸30は、鎖編糸10及び柄糸60と染色性質が異なる繊維を含む複合糸であれば、ナイロンである鎖編糸10、カチオン可染ポリエステルである柄糸、及びナイロンとキュブラとの複合糸であるジャカード糸30の組合せ、又は、カチオン可染ポリエステルである鎖編糸10、レーヨンである柄糸、及びナイロンとキュブラとの複合糸であるジャカード糸30の組合せであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 柄模様入り編レース
2 地編み組織
4 透かし部
5 地模様
6 柄部
10 鎖編糸
10A シンカーループ
10B ニードルループ
12 基本組織
20 伸縮糸
30 ジャカード糸
60 柄糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7