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特許7454261エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20240314BHJP
   C04B 22/02 20060101ALI20240314BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20240314BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20240314BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240314BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240314BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240314BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/02
C04B14/04 C
C04B14/38 A
C04B18/08 Z
C04B22/08 Z
C04B22/06 Z
F28D20/00 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021503141
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 IB2019056288
(87)【国際公開番号】W WO2020021451
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】62/703,295
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/517,802
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504228117
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴン、ウェイラン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、フイ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツェ、ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】ペグ、イアン エル.
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106372289(CN,A)
【文献】特表2015-506453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0152521(US,A1)
【文献】特表2017-537253(JP,A)
【文献】FERONE Claudioら,Finite Element Method Modeling of Sensible Heat Thermal Energy Storage with Innovative Concretes and Comparative Analysis with Literature Benchmarks,Energies ,2014年,Vol.7 No.8,Page.5291-5316
【文献】Colangelo Fら,Thermal cycling stability of fly ash based geopolymer mortars ,Composites. Part B. Engineering ,2017年,Vol.129, Page.11-17
【文献】SNELL C et.al,Comparison of the thermal chararacteristics of portland cement and geopolymer cement concrete mixes,Journal of architectural engineering,2017年,Vol.23 ,04017002-1~04017002-10
【文献】MACKECHNIE JAMES R et al,thermal performance of variable density wall panels made using portland cement or inorganic polymer concrete,materials and structures,2013年,vol.48 no.3 ,p.643-651,10.1617/s11527-013-0206-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02, C04B40/00-40/06, C04B103/00-111/94
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のバインダー;
少なくとも1種のアルカリ活性剤;
少なくとも1種の細骨材;及び
少なくとも1種の粗骨材
を含む、ジオポリマー熱エネルギー貯蔵(TES)コンクリート生成物であって、
少なくとも1種のバインダーが、低CaクラスFフライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムからなる群から選択され、
少なくとも1種のバインダーが、TESコンクリート生成物の10~35重量%を占め、
少なくとも1種のアルカリ活性剤が金属水酸化物と、金属ケイ酸塩と、水とを含み、両金属がカリウム、ナトリウム、又は両方の組み合わせであり、
少なくとも1種のアルカリ活性剤が、0.25~0.60のw/b、0.85~2.0のSiO /M Oモル比、及び5~15のMOHモル濃度を有し、
TESコンクリート生成物が、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも1MJ/m/Kの比熱容量を有する、
生成物。
【請求項2】
少なくとも1種のバインダーが前記低Caクラスフライアッシュであり、前記低CaクラスFフライアッシュが15重量%以下のCaOを有する、請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
少なくとも1種のバインダーが前記低Caクラスフライアッシュと前記メタカオリンとを含む、請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
少なくとも1種のバインダーが前記メタカオリンである、請求項1に記載の生成物。
【請求項5】
少なくとも1種のバインダーが前記高炉スラグと前記メタカオリンとを含む、請求項1に記載の生成物。
【請求項6】
金属水酸化物がMO(M=Na、K、又は両方)として、TESコンクリート生成物の1~8重量%を占め、金属ケイ酸塩がSiOとして、TESコンクリート生成物の2~16重量%を占め、アルカリ活性剤が、TESコンクリート生成物の4~20重量%の水を含む、請求項に記載の生成物。
【請求項7】
少なくとも1種の細骨材が、TESコンクリート生成物の20~50重量%を占める、請求項1に記載の生成物。
【請求項8】
少なくとも1種の細骨材が、石英、酸化アルミニウム、溶融アルミナ、ムライト、カイヤナイト、フォルステライト、チタニア、ヘマタイト、マグネタイト、スピネル、鉄のグリット及びショット、金属スクラップ、炭化ケイ素、グラファイト、グラフェン、炭素ミクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の生成物。
【請求項9】
少なくとも1種の細骨材が、鉄ショット、アルミナ、及び金属スクラップを含み、金属スクラップが、銅、黄銅、鋳鉄、及びステンレス鋼からなる群から選択される、請求項1に記載の生成物。
【請求項10】
少なくとも1種の細骨材が、石英、アルミナ、ヘマタイト、炭素ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の生成物。
【請求項11】
少なくとも1種の粗骨材が、TESコンクリート生成物の20~60重量%を占める、請求項1に記載の生成物。
【請求項12】
少なくとも1種の粗骨材が、ケイ岩、玄武岩、花崗岩、耐火物、磁器、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、耐火物が群:シリカ系、マグネシア系、及びアルミナ系から選択され、磁器が群:アルミナ系、アルミナケイ酸塩系、及びチタニア系から選択される、請求項1に記載の生成物。
【請求項13】
少なくとも1種の粗骨材が石英砂利である、請求項1に記載の生成物。
【請求項14】
粗骨材が再生耐火物及び磁器を含む、請求項12に記載の生成物。
【請求項15】
TESコンクリート生成物が、TESコンクリート生成物の最大35重量%を占める、少なくとも1種のミクロ及びサブミクロン充填材をさらに含み、ミクロ及びサブミクロン充填材が、粉砕石英粉末、超微細フライアッシュ、シリカヒューム、アルミナ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の生成物。
【請求項16】
TESコンクリート生成物が、最大15重量%の少なくとも1種の熱安定剤をさらに含む、請求項1に記載の生成物。
【請求項17】
少なくとも1種の熱安定性増強剤が、500~700℃のガラス転移温度を有するガラス粉末と、水溶性アルカリケイ酸塩ガラス粉末とを含み、ガラス粉末が、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノケイ酸塩からなる群から選択され、水溶性アルカリケイ酸塩ガラスが、ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウムを含む、請求項15に記載の生成物。
【請求項18】
TESコンクリート生成物が、最大10重量%を占める熱伝導性繊維をさらに含み、熱伝導性繊維が、鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭素繊維、ムライト繊維、及び炭化ケイ素繊維、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の生成物。
【請求項19】
TESコンクリート生成物が、
前記低CaクラスFフライアッシュをみ、
前記低CaクラスFフライアッシュが8重量%以下の酸化カルシウムを有し、
少なくとも1種のアルカリ活性剤がアルカリケイ酸塩活性剤である、
請求項1に記載の生成物。
【請求項20】
バインダー、細骨材及び粗骨材、並びに添加剤の固体混合物が、存在する場合、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、45℃超の温度において、12~48時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、請求項19に記載の生成物。
【請求項21】
前記温度が60から85℃の温度である、請求項20に記載の生成物。
【請求項22】
TESコンクリート生成物が、
前記低CaクラスFフライアッシュ;及び
前記メタカオリン若しくは前記高炉スラグ、又は両方を含み、
前記低CaクラスFフライアッシュが8重量%以下の酸化カルシウムを有する、
請求項1に記載の生成物。
【請求項23】
バインダー、細骨材及び粗骨材、並びに添加剤の固体混合物が、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、20から85℃の温度において、24時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、請求項20又は21に記載の生成物。
【請求項24】
TESコンクリート生成物が下記をさらに含む、請求項1に記載の生成物:
前記高炉スラグ;
前記メタカオリン;
並びに
少なくとも1種のミクロ又はサブミクロン充填材。
【請求項25】
バインダー、細骨材及び粗骨材、ミクロ又はサブミクロン充填材、並びに添加剤の固体混合物が、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、20から約85℃の温度において、24時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、請求項24に記載の生成物。
【請求項26】
少なくとも1種のバインダー;
少なくとも1種のアルカリ活性剤;
少なくとも1種の細骨材;及び
少なくとも1種の粗骨材
を含むジオポリマー熱エネルギー貯蔵(TES)コンクリート生成物であって、
少なくとも1種のバインダーが、低CaクラスFフライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムからなる群から選択され、
少なくとも1種のバインダーが、TESコンクリート生成物の10~35重量%を占め、
少なくとも1種のアルカリ活性剤が金属水酸化物と、金属ケイ酸塩と、水とを含み、両金属がカリウム、ナトリウム、又は両方の組み合わせであり、
少なくとも1種のアルカリ活性剤が、0.25~0.60のw/b、0.85~2.0のSiO /M Oモル比、及び5~15のMOHモル濃度を有し、
前記生成物が、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも1500psi(1.034×10N/m)の圧縮強度、少なくとも1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも1MJ/m/Kの比熱容量を有する、
生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱エネルギー貯蔵用途に特化した先進的ジオポリマーコンクリートに関する。
【0002】
高い運転温度において、長いサービス時間全体にわたり、高い機械的強度(例えば、圧縮及び曲げ)、高い熱性能(例えば、熱伝導率、比熱容量)を維持するであろう、低コストの固体熱エネルギー貯蔵媒体を開発する必要がある。
【0003】
第1の大まかな態様によれば、本開示は、少なくとも1種のバインダー;少なくとも1種のアルカリ活性剤;高い熱伝導率及び熱容量を有する少なくとも1種の細骨材;並びに高い熱伝導率及び熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む、ジオポリマー熱エネルギー貯蔵(TES)コンクリート生成物を提供する。
【0004】
本発明には種々の修正及び代替形態の余地があるが、その特定の実施形態が図面において、例として示されており、以下に詳細に記載されるであろう。しかしながら、開示される特定の形態に本発明を限定することは意図されず、対照的に、本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にあるすべての修正、均等物、及び代替に及ぶことになると理解するべきである。
【背景技術】
【0005】
近年、高いエネルギーコスト、及び温室効果ガス排出の低減における関心の増加のため、太陽エネルギー及び風力エネルギーのような代替資源の開発が求められている。しかしながら、太陽エネルギーが断続的に利用可能であることによって、需要と供給との間にエネルギーギャップが生じ、すなわち、晴れわたった日には、収集される太陽エネルギーは通常、直接的使用に必要とされるよりも多い。そのため、効率的且つ経済的な熱エネルギー貯蔵(TES)システムの設計及び開発は、太陽光発電所のために極めて重要である。風力エネルギープラント及び産業排熱の回収にも、同じことが当てはまる。しかしながら、世界中で非常に僅かな太陽熱発電所のみが、これらのTESシステムを利用している。1、2、3、4
【0006】
熱エネルギーは顕熱、潜熱、及び可逆的化学反応の熱の形態で貯蔵することができる。目下、高温熱貯蔵用途のために、液体媒体貯蔵、例えば融解塩が周知であり、商業的に採用されている技術である。相変化材料(PCM)は、固体-液体(溶融)転移が関与する潜熱貯蔵媒体のカテゴリに属する。PCMのエネルギー密度は高いが、熱伝達の設計及び媒体選択が困難である。現在、実用規模のTESシステムにおいて、硝酸塩が利用されている。硝酸塩の融解温度は、例えば最大350℃と比較的低く、これらの低い熱伝導率は、遅い充放電速度を生じる。 材料の性能は、中程度の回数の凝固-融解サイクルの後に劣化する。
【0007】
Department of Energy(DOE)によれば、熱エネルギーを貯蔵するための単位コストはおよそ$30.00/kWhthermalである。熱源として太陽エネルギーが用いられる場合、1キロワット時の電気当たりのコストは高く、約$0.15~$0.20/kWhelectricである。化石燃料を燃焼させることによる電気の単位コストは、$0.05~$0.06/kWhである。明らかに、現行技術では、従来形態の発電に対抗することができない。それに対して、DOEは、太陽光発電のコストを$0.05~$0.07/kWhelectricに低減し、$15.00/kWhthermal未満の熱貯蔵コストを達成するという目標を定めた。そのため、貯蔵媒体のコストの低減は、表明された目標の達成における重大なステップである。
【0008】
投資及び維持コストに関する魅力的な選択肢は、固体顕熱貯蔵媒体の適用である。 これらの固体顕熱貯蔵材料の例としては、アルミナセラミック、炭化ケイ素セラミック、れんがマグネシア、シリカ耐火れんが、鋳鉄、及びグラファイトが挙げられる。4、7 エネルギー貯蔵材料としてのポルトランドセメント(PC)系コンクリートは高価ではなく、PCコンクリートは、1kWhthermal当たりのコストが$1であると報告されている唯一の媒体であり(https://news.uark.edu/articles/19653/researchers-develop-effective-thermal-energy-storage-system)、1キロワット時当たり$15のコストで熱エネルギー貯蔵を達成するというDepartment of Energyの目標を遥かに下回る。German Aerospace Centerは、スペインのPlataforma Solar de Almeriaにおいて、2003/2004年、ドイツ政府が資金を出したプロジェクト内で、第1のPCコンクリート貯蔵を首尾よく試験した。8、9、10、11、13 典型的には、固体媒体熱貯蔵システムは、埋設された熱交換器を有するマトリックス固体材料を含む。充電時、熱エネルギーは、熱伝達流体(HTF)(太陽光発電所)又は排気ガス(石炭燃焼発電所)から貯蔵システムに伝達される。放電時には、直接的な蒸気発生のため、貯蔵システムから例えば水に、熱エネルギーが伝達される。12
【0009】
顕熱貯蔵媒体としてのポルトランドセメントコンクリート(PCC)は、かなり広範囲に研究及び試験されている。6、14、15、16、17 ポルトランドセメント系コンクリートは、高温への曝露時には不安定である。19、20、21、22、23 ケイ酸カルシウム水和物(CSH)は、ポルトランドセメントの主な水和生成物であり、従来のコンクリート中の主要な結合相である。他の水和生成物としては、石膏、消石灰、及びエトリンガイトが挙げられる。高温への曝露時、例えば火災の場合には、エトリンガイトは70~90℃において脱水し、分解する。蒸発性水分は100~120℃において、コンクリートから除去される。石膏は110~170℃において分解する。消石灰は350~550℃において、石灰と水とに分解し、CSHゲルは200~700℃において脱水し、分解する。21 一般に、ポルトランドセメントコンクリートは、300℃未満の温度への曝露時にはむしろ安定であるが、ミクロ割れが生じうる。400℃前後及び400℃超において、CSHの大規模な脱水及び分解のために、高い内圧に起因して、割れ及び破砕が生じる。24、25、26、27 600℃超において、ポルトランドセメントコンクリートが多孔質になり、粉末化する場合があり、長期間の高温曝露中には、物理的完全性が全面的に解けうる。
【0010】
コンクリート熱エネルギー貯蔵システムのためには、高い運転温度は常に望ましい。29 高温への曝露時のポルトランドセメントコンクリートの固有の不安定性に起因して、コンクリートTESの最高運転温度は400℃未満に限定されていた。3、28 例えば、Laingら11、13は、300℃から400℃の最高温度において、約100回の温度サイクルの間運転する、ポルトランドセメントコンクリートTESシステムによる試験を実施した。
【0011】
TESシステムのより高い運転温度は、より高い出力密度を与える。固体貯蔵媒体の塊中に貯蔵される熱エネルギーの量は、Q=ρ×C×V×ΔTとして表すことができ、式中、Qは貯蔵される熱の量(J)であり、ρは材料の密度(kg/m)であり、Cは運転温度範囲にわたる比熱(J/(kg・K)であり、Vは用いた材料の体積(m)であり、ΔTは運転温度範囲である。与えた材料について、顕熱エネルギーを貯蔵する能力は、数量ρ×Cの値に依存する。顕熱TESシステムのエネルギー貯蔵密度は、温度差及び比熱容量(C)に正比例する。より高い運転温度は通常、より大きな温度差をもたらし、したがって、材料の単位体積当たりの貯蔵することができるエネルギーの数量が増加する。
【0012】
加えて、熱エネルギー貯蔵媒体は、効率的な充放電を可能にするために、高い熱伝導率(TC)を有するべきである。
【0013】
ポルトランドセメントの超高性能コンクリートは、その並外れて高い強度及び耐久性によって規定される、コンクリートのクラスである。30 これは、優れた強度及び耐腐食性を必要とする特化用途-海洋アンカー、桟橋、及び耐震構造-のために、欧州において1980年代に開発された。PC-UHPCは、最適化されたグラデーションの粒状構成成分、0.25未満の水とセメント状材料との比、及び高いパーセンテージの不連続内部繊維補強から構成される、セメント状複合材料である。PC-UHPCの機械的性質としては、20,000psi超、又は140MPa超の圧縮強度が挙げられる。Johnら31は、500℃において試験されたPC-UHPC TESシステムを報告した。ポリエチレン繊維がコンクリートミックス中に含まれない場合、PC-UHPCを500℃超に加熱した時点で、爆発的な破砕が観察された。University of ArkansasのSkinnerら32はさらに、超高性能コンクリートTES装置を開発した。いくつかのPC-UHPCミックスは、500℃を超える温度における温度サイクルに耐えることが報告されている。残念ながら、割れ及び水蒸気破砕が、充電中の装置から観察された。32Aydin及びBaradan33は、アルカリ活性化スラグ及びポルトランドセメントをベースとするUHPCの耐高温性を試験した。PC-UHPCは、400℃超の温度において、激しい破砕に起因して容易に不良となることが見出された。PC-UHPCミックスは通常、普通強度コンクリート(NSC)の場合の300~400kg/mと比較して著しく多量の、例えば650~1000kg/mのポルトランドセメントを含む。その結果、より多くのCSHゲルが形成し、400℃超の温度におけるCSHゲルの脱水及び分解はより激しくなる。その上、水とバインダーとの比を0.25未満に減少させるために、著しい量の、例えば0.5~1.5体積%の高性能減水剤固体が、通常利用される。高性能減水剤は高温において不安定な有機分子であり、PC-UHPC TESシステムの性能を損なう。最も重要なことに、PC-UHPCは非常に高価であり、そのため、PC-UHPCをTESシステムに用いることは、コスト要因の観点から予防的である。
【0014】
Alonsoら34は、顕熱エネルギー貯蔵媒体として、アルミン酸カルシウムセメント系耐火コンクリート(CAC)を用いることを提案した。CACコンクリートは比較的高い熱安定性を呈するが、比較的低温、例えば300℃未満において、六方晶アルミン酸カルシウム(CAH、CaH10、及びAH)などの主な水和生成物の脱水が起こる。アルミン酸カルシウムセメントも非常に高価である。そのため、高い運転温度、例えば600℃以上において、長いサービス時間全体にわたり、高い機械的強度(例えば、圧縮及び曲げ)、高い熱性能(例えば、熱伝導率、比熱容量)を維持するであろう、低コストの固体熱エネルギー貯蔵媒体を速やかに開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示の目的は、例えば最高800℃の温度において運転される熱エネルギー貯蔵システムを製造するための、ジオポリマーコンクリートミックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に記載する一実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のための、高強度、高TCジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)少なくとも1種のバインダー材料;(ii)少なくとも1種の水性アルカリケイ酸塩活性剤、(iii)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のバインダー材料は、群:クラスFフライアッシュ、メタカオリン、クラスCフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、ガラス質アルミノケイ酸カルシウム、及び天然ポゾランから選択される。
【0018】
本明細書に記載する一実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)少なくとも水性アルカリケイ酸塩活性剤、(iii)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。
【0019】
この実施形態では、バインダー、細骨材及び粗骨材、並びに添加剤の固体混合物は、存在する場合、少なくとも水性アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合し、TES装置のための鋳型に注入し、45℃超、好ましくは約60から約85℃の温度において、約12~48時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させる。
【0020】
本明細書に記載する別の実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)メタカオリン;(iii)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。
【0021】
ジオポリマーコンクリートは約20℃から約85℃の硬化温度を有する。
【0022】
本明細書に記載する別の実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)群:高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムから選択される少なくとも1種の高Caアルミノケイ酸塩、(iii)少なくとも水性アルカリケイ酸塩活性剤、(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(v)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。
【0023】
ジオポリマーコンクリートは約20℃から約85℃の硬化温度を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、細骨材及び添加剤は、群:石英砂、アルミナ砂、溶融Al、ボーキサイト、マグネタイト、マグネシア、スピネル、カイヤナイト、ルチル、天然グラファイト、グラフェン、及び鋼又は鉄のグリットから選択され、粗骨材は、群:石英砂利、花崗岩、玄武岩、閃緑岩、ケイ岩、再生磁器、及び再生耐火物から選択される。
【0025】
一実施形態では、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリートは、群:鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭化ケイ素繊維、及び炭素繊維から選択される、ある特定の熱伝導性繊維をさらに含む。
【0026】
一実施形態では、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリートは、群:粉砕石英粉末、シリカヒューム、ヘマタイト、及びアルミナから選択される、ミクロン及びサブミクロン充填材をさらに含む。
【0027】
別の実施形態は、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも約1500psiの圧縮強度、少なくとも約1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも約1MJ/m/Kの比熱容量を有する、熱エネルギー用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
「ジオポリマー」と呼ばれる材料を含めたアルカリ活性化材料(AAM)は、過去数十年にわたり、学術及び商業の分野において、多くの関心を引きつけてきた。アルカリ活性化は、高炉スラグ(BFS)、メタカオリン(MK)、クラスFフライアッシュ(FFA)及びクラスCフライアッシュ(CFA)、又はこれらの混合物などのアルミノケイ酸塩材料を、アルカリ活性剤と混合して、短時間で凝結及び硬化するペーストを得る化学プロセスである。35 活性剤は典型的には、アルカリ水酸化物とアルカリケイ酸塩との濃厚水溶液である。AAM及びジオポリマーに関する広範囲の研究が実施されており、これらのアルカリ活性化材料は、高強度及び超高強度、火災、酸、凝固-解凍サイクル、及びアルカリ-シリカ反応への高い耐性など、ある特定の望ましい性質を有する。特に、ジオポリマー材料は、高温に曝露された場合、高い耐火性及び高い熱安定性を有する。49、50、51、53、54、55、56 結果は最近のレビュー記事及び図書にまとめられている。37、38、39、40
【0029】
総称的なジオポリマーは、アルカリアルミノケイ酸塩又は無機ポリマーと呼ばれる。メタカオリン及び低CaクラスFフライアッシュを含めた反応性アルミノケイ酸塩は通常、非常に少ないCaOを含有する。これらの低CaOアルミノケイ酸塩のアルカリ活性化は、特徴的なゼオライト結晶構造は存在しないが、アルカリ金属カチオン(典型的にはNa及び/又はK)がAlO についての電荷平衡化剤として会合した、酸素架橋によって連結されたSi及びAl原子の四面体配位を特徴とするゼオライト構造体の三次元ネットワーク構造に類似した、三次元ネットワーク構造を有するアルカリアルミノケイ酸塩ゲル(AAS)を得る。このタイプのジオポリマーは、X線によれば非晶質である。アルカリ加水分解による反応性アルミノケイ酸塩源の溶解は、水を消費して、アルミン酸塩種とケイ酸塩種とを生成する。ジオ重合の第1の段階は、非晶質又はガラスネットワークを溶解させるため、並びにケイ酸塩及びアルミン酸塩の小さな反応性種を生成するための、アルカリ化合物の適性によって制御される。ケイ酸塩種、アルミン酸塩種、及びアルミノケイ酸塩種の複雑な混合物が、これによって形成される。溶液はますます濃縮され、水相中の種としてアルカリアルミノケイ酸塩ゲルの形成をもたらし、重縮合により巨大ネットワークを形成する。ゲル化後、ゲルネットワークの連結度が増加するにつれて、系は転位及び再編成を続け、これに続く硬化プロセス中に凝結及び硬化する三次元アルミノケイ酸塩ネットワークをもたらす。名目上、ジオポリマーの実験式は、M[-(SiO-AlOwHO[式中、Mはアルカリカチオンを表し;zはSiとAlとのモル比であり(1、2、又は3);nは重縮合度である]として提示することができる。35、[37、38]水は一般にジオポリマー構造の一部ではない。水分子は高温における処理中に完全に除去され、ジオポリマーネットワーク構造に対する最小限の影響を有するであろう。
【0030】
対照的に、BFS、CFA、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウム(VCAS)などのある特定の高CaOアルミノケイ酸塩材料のアルカリ活性化は、主にケイ酸カルシウム水和物(CSH)、アルミノケイ酸カルシウム水和物(CASH)、及びアルカリ置換CASHのゲルを得る。高Caジオポリマー中に形成されるCSHゲルは、構造において、ポルトランドセメントの水和によって形成されるものと同等であるが、異なる組成を有する。例えば、アルカリ活性化スラグは通常、ポルトランドセメントの水和によって生成されるものよりも低いCSH及びCASHゲル中のCa/Siを有する。
【0031】
本発明では、「ジオポリマー」という用語は、低CaクラスFフライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、天然ポゾラン、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムなど、種々の反応性アルミノケイ酸塩材料のアルカリ活性化からの硬化生成物を指す。
【0032】
本開示は、最高800℃の温度において運転することができる、熱エネルギー貯蔵システムのための固体顕熱貯蔵媒体として用いることができる、先進的ジオポリマーコンクリート組成物を提供する。
【0033】
本開示の実施形態は、高温熱エネルギー貯蔵(HT-TES)システムのための先進的ジオポリマーコンクリートを開発した。HT-TES媒体として用いるジオポリマーコンクリートの重要な性質としては、次のものが挙げられる。(1)比熱容量:大きい熱容量は、貯蔵媒体の単位体積当たりの高エネルギー貯蔵密度をもたらすことになる;(2)TESシステムの充放電の速度を決定する熱伝導率(TC)。熱伝導率は適度に高くあるべきであり、TESシステムの有効寿命中に著しく劣化するべきではない;(3)耐酸性。煙道ガスは水蒸気とともに酸性ガス(窒素及び硫黄の酸化物)を含有し、酸性凝縮液を生成しうる。その結果、耐酸性は関心事であり、コンクリートの高い耐酸性は、熱貯蔵システムのより長い有効寿命を保証する;(4)圧縮及び曲げ強度:圧縮強度について、例えば少なくとも1000psiの控え目な要求に過ぎないが、高強度は温度サイクルに起因する劣化への高い耐性を示唆するため、より高いコンクリートの圧縮強度は有益であると考えられる、並びに(5)加えて、コンクリートと金属配管との差のある膨張又は収縮によって生じる応力を最小化するために、コンクリートの熱膨張係数(CTE)は、ステンレス鋼又は炭素鋼管のCTEと可能な限り近くあるべきである。
【0034】
従来のジオポリマーコンクリートは、耐火性及び耐酸性の観点からより良好に、ポルトランドセメントコンクリートよりも良好に機能し、そのため、ジオポリマーコンクリートが、コンクリートTESシステムに確定的に必要な2つの顕著な性質を提供することは周知である。その上、ジオポリマーコンクリートの製造は、主として産業廃棄副産物を用い、ポルトランドセメントコンクリートよりも遥かに少ない二酸化炭素を排出し、これによって製造は環境保全型であり、持続可能となる。
【0035】
開示される実施形態は、高い熱性能及び機械的性能、並びに高い運転温度を有するTESジオポリマーコンクリートを生成するであろう混合物を配合するための、革新的な主材を提供する。これらの配合は、熱的に安定なゲルを形成するバインダー材料の選択、高い熱伝導率及びCTEを有する細骨材及び粗骨材の選択;最小のw/bを有するアルカリ活性剤組成物の最適化:充填密度を改善し、w/bを低減するためのミクロ/サブミクロン充填材を含むこと;並びに熱的性質をさらに改善するための増強剤の使用を含みうる。
【0036】
バインダー材料
本開示における使用に好適なバインダー材料の例としては、クラスFフライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグ微粉末、ガラス質アルミノケイ酸カルシウム、及びクラスCフライアッシュが挙げられる。
【0037】
メタカオリンは最も反応性の高いアルミノケイ酸塩ポゾランの1種であり、細かく割れた材料(例えば、約0.1~20ミクロンの範囲内)である。メタカオリンは精製カオリナイトを、ロータリーキルンにおいて、一般に650~700℃で焼成することによって形成される。メタカオリンに類似したSiO/Alモル比を有する、水酸化アルミニウム又はアルミナ粉末(ミクロ又はサブミクロン粒子)とサブミクロンシリカ粒子との混合物も、配合物中に含まれてもよい。
【0038】
フライアッシュは、石炭の燃焼中に形成される微粉末副産物である。微粉炭を燃やす発電所設備の炉が、市販のフライアッシュの大部分を生成する。これらのフライアッシュは主として、ガラス状の実質的に球状粒子、及びヘマタイト、マグネタイト、未然炭素、並びに冷却中に形成されたいくつかの他の結晶相からなる。American Society for Testing and Materials(ASTM)C618標準は、コンクリートに用いるための2つの主要なフライアッシュのクラス:クラスC及びクラスFを認識している。ASTM C618標準において、クラスFフライアッシュとクラスCフライアッシュとの間の1つの主な仕様の差異は、組成における(SiO+Al+Fe)の下限である。クラスFフライアッシュについての(SiO+Al+Fe)の下限は70%であり、クラスCフライアッシュについての下限は50%である。したがって、クラスFフライアッシュは一般に約15重量%以下の酸化カルシウム含有量を有し、一方、クラスCフライアッシュは一般により高い酸化カルシウム含有量(例えば、15重量%超、例えば約20~40重量%)を有する。高い酸化カルシウム含有量によって、クラスCフライアッシュはセメント質の性質を有し、水と混合した場合に、ケイ酸カルシウム及びアルミン酸カルシウム水和物の形成を生じる。
【0039】
化学的組成及び生成の方法に応じて、高炉スラグ微粉末は、直径約4.75mm超の粒子サイズを有する粗いポップコーン様の脆い構造から、密な砂のサイズの粒まで変動する、ガラス状粒状材料である。粉砕することによって、粒子サイズがセメントの細かさに低減し、ポルトランドセメント系コンクリート中の補助セメント状材料としての使用が可能になる。典型的な高炉スラグ微粉末は、約27~38重量%のSiO、7~12重量%のAl、34~43重量%のCaO、7~15重量%のMgO、0.2~1.6重量%のFe、0.15~0.76重量%のMnO、及び1.0~1.9重量%の他のものからなる。GGBFSはほぼ100%ガラス状(又は非晶質)であるため、大部分のフライアッシュよりも一般に反応性が高い。3つのグレードの高炉スラグ(すなわち、ASTM C989-92による80、100、及び120)のすべてが、TESジオポリマーコンクリートミックスに好適である。高炉スラググレード120は、3つのグレードのスラグの中で、アルカリ溶液中で最も高い反応性を呈するため、好ましい。さらに、「超微細」GGBFSは、炉スラググレード120と比較して、さらにより反応性が高い。例えば、MC-500(登録商標)Microfine(登録商標)Cementは、約10μm未満の粒子サイズと約800m/kgの比表面積を有する超微細炉スラグである。
【0040】
反応性アルミノケイ酸塩(バインダー)のアルカリ活性化は、成分同士を頑丈な石様の材料に結合させる、硬質ジオポリマーマトリックスを形成する。ジオポリマーゲルの組成は、反応性アルミノケイ酸塩材料とアルカリ活性剤との組成によって相乗的に決定される。一般に、クラスFフライアッシュ及びメタカオリンのような、CaOが少ないアルミノケイ酸塩材料のアルカリ活性化によって、アルカリアルミノケイ酸塩ゲル(AAS)組成物を得る。事実上、AAS構造における水和物形態には水が存在しないため、AASゲル組成物が優勢な材料は、高温安定性を呈することが予想される。44、45 開示される実施形態に従えば、高温におけるフライアッシュガラス粒子の強化焼結は、高温に曝露する際の極めて高い強度保持に寄与する。代わりに、BFS、CFA、及びVCASなどのある特定の高CaOアルミノケイ酸塩材料のアルカリ活性化は、主にCSH、CASH、及びアルカリ置換CASHのゲルを得る。ジオポリマー中に形成されるCSH及びCASHゲルは、構造において、ポルトランドセメントの水和によって形成されるものと同等であるが、異なる組成を有する。高Caアルミノケイ酸塩のアルカリ活性化によって形成されるジオポリマーは、高温に曝露された場合、ポルトランドセメントコンクリートに起こるものと類似の反応を起こし、CSH及びCASHゲルが、同じ脱水及び分解プロセスに供されると予想される。これらのCSH/CASHが優勢なジオポリマーは、AASが優勢なジオポリマーと比較した場合、遥かに低い熱安定性を呈することが予想される。例えば、アルカリ活性化BFSは通常、高温への曝露後、遥かに低い強度を保持する。46、47、48
【0041】
開示される実施形態の知見に従えば、低Ca FFA及びMKなどの低Caアルミノケイ酸塩は、優れた熱安定性を有するTESジオポリマーコンクリートを製造するために、好ましいバインダー材料である。低Ca FFAは、TESジオポリマーコンクリートを製造するために好ましい。第一に、低CaO FFAのアルカリ活性化は、CSH/CASHを含まない典型的なジオポリマー(アルカリ-アルミノケイ酸塩)ゲルを主として得る。ジオポリマーゲルは、アルカリ活性化スラグ及びポルトランドセメントコンクリート中に豊富に含まれるCSH/CASHよりも安定であると考えられる。第二に、フライアッシュジオポリマーコンクリートは、MKを含有するコンクリートよりもコストが低い。第三に、低CaO FFAのアルカリ活性化は、MKのジオ重合よりも遥かに少ない水を必要とし、より低い空隙率を含有するジオポリマーゲルを得る。より低い空隙率を有する材料は、より高い熱伝導率を有することが予想される。最後に、FFAガラスは通常、BFSにおけるガラスよりも低いガラス転移温度を有する。高温におけるFFAガラス粒子の焼結は、ジオポリマーTESシステムの熱性能を改善するためになりうる。しかしながら、低Ca FFAのアルカリ活性化はRTでは非常に遅く、強度発現を加速するために、高温における硬化が要求される。
【0042】
一実施形態では、15重量%以下のCaOを有するFFAが唯一のバインダーである。一実施形態では、MKが唯一のバインダーであり;一実施形態では、低Ca FFAとMKとから構成される複合バインダー(二成分)が好ましく;一実施形態では、複合バインダーは低Ca FFAとMKとBFSとから構成され;一実施形態では、複合バインダーは低Ca FFAとBFSとから構成され;一実施形態では、複合バインダーはMKとBFSとから構成される。
【0043】
バインダーは一般に、TESジオポリマーコンクリートミックスの約8~35重量%を占める。より好ましくは、バインダーはTESジオポリマーコンクリートミックスの約10~約20重量%を占める。
【0044】
アルカリ活性剤
アルカリ活性剤は、金属水酸化物と金属ケイ酸塩との溶液である。一実施形態では、プロセスに用いる金属水酸化物は、アルカリ金属水酸化物でありうる。金属水酸化物における金属は、好ましくはアルカリ金属、ナトリウム若しくはカリウム、又は両方でありうる。
【0045】
金属ケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩でありうる。ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩。低いコストのため、ケイ酸ナトリウムが好ましい。約2~3.2に等しいSiO/NaOの質量比を有するケイ酸ナトリウムが好ましい。ケイ酸ナトリウム溶液は、好ましくは、約38~55重量%のアルカリケイ酸塩固体と、約45%~62重量%の水とを含む。
【0046】
活性化溶液は、市販のアルカリケイ酸塩溶液を水によって希釈し、TESジオポリマーコンクリートミックス比率のための標的濃度のMO(M=Na、K)及びSiOを有する溶液を調節するために、固体アルカリ水酸化物を加えることによって、調製することができる。代替的には、冶金学的廃棄生成物又は合成生成物のいずれかのシリカヒュームを用いて、アルカリ水酸化物溶液中に溶解させることによって、活性化溶液を作製することもできる。代替的には、アルカリ活性剤は、水溶性アルカリケイ酸塩ガラス粉末として、例えば固体アルカリケイ酸塩ガラス粉末を水中に溶解させることによって、調製することもできる。市販の可溶性アルカリケイ酸塩ガラスの例としては、PQ CorporationからのSS(登録商標)ケイ酸ナトリウム、及びKasolv(登録商標)ケイ酸カリウムが挙げられる。
【0047】
アルカリ活性剤の重要なパラメータとしては、w/b、SiO/MOモル比(M=Na若しくはK、又は両方)、及びMOH(M=Na若しくはK、又は両方)のモル濃度が挙げられる。
【0048】
アルカリ活性剤溶液についての適当なw/b比は、特に重要である。硬化生成物の最小空隙率を確保するため、並びにTESジオポリマーコンクリートの機械的性能及び熱性能を改善するために、好適な施工性のための最小w/b比を常に用いるべきである。そうでなければ、w/bが増加するにつれて、水分含有量と空隙率との両方が増加する。高温への曝露の際に、細孔から水分が失われ、コンクリートの多孔質の性質が熱伝導率の著しい減少をもたらす。
【0049】
最小w/bを達成しながら、依然としてTESジオポリマーコンクリートについての望ましい施工性を維持するための、少数のメカニズムがある。最適な骨材分級によって、通常は、ジオポリマーコンクリート混合物の最大微粒子充填密度を生じることになる。例えば、細骨材と粗骨材との比の0.3~0.6という比は、典型的に、コンクリートミックスについての高い充填密度値をもたらす。開示される実施形態に従えば、充填密度を改善し、望ましい施工性を達成するために必要な水を低減するために、粉砕石英粉末及びシリカヒュームなどのミクロ及びサブミクロン粒子が、ジオポリマーコンクリートミックス中に含まれうる。開示される実施形態の知見に従えば、シリカヒュームは高性能無機減水材であり、TESジオポリマーコンクリートミックス中に数パーセントを含むことは、望ましい施工性において、w/bの著しい低減をもたらすであろう。シリカヒュームは非常に微細なポゾラン性材料(サブミクロン及びナノ)であり、フェロシリコン合金の生成における副生成物として、電気アーク炉によって生成される非晶質シリカから構成される。一般に、より小さいw/bが達成される場合、硬化ジオポリマーコンクリートの圧縮強度及び他の性質が改善される。例えば1~20ミクロンサイズの範囲における粉砕石英粉末の使用は、微粒子充填密度が増加し、ひいては材料の機械的性能を改善するだけでなく、熱エネルギー貯蔵システムに好ましい2つの重要な性質である、熱伝導率と熱容量とも増加する。開示される実施形態の知見に従えば、超微細バインダー材料(FFA、BFS)の使用は、特定の施工性に必要なw/bを低減する。例えば、約2~10μmの平均粒子サイズを有する超微細クラスFフライアッシュは、未処理フライアッシュのより粗い粒子の機械的除去によって、又は粉砕プロセスによって生成されうる。遊星型ミキサー及び二軸ミキサーなどの強力ミキサーの使用によって、依然として望ましい施工性を有しながら、低いw/b比を達成することができる。
【0050】
活性剤溶液は以下のTESジオポリマーコンクリートミックス:MO(M=Na、K、又は両方)として金属水酸化物約1~8重量%、SiOとしてケイ酸塩約1~15重量%、及び水4~15重量%を与える。アルカリ活性剤は通常、約5~約15の範囲のMOH(M=Na、K)のモル濃度、約0.75~約2.00の範囲のSiO/MO(M=Na、K)のモル比、及び0.25~約0.60の範囲のw/bを有する。
【0051】
骨材
細骨材と粗骨材とが、コンクリートの質量又は体積の大部分を占めるため、骨材は、TESジオポリマーコンクリートの熱的性質に対する最も著しい効果を有する。典型的に、骨材は、TESジオポリマーコンクリートミックス中の約50~85体積%であろう。骨材は、効率的な充放電及び高いエネルギー貯蔵密度の達成のために、可能な限り高い熱伝導率及び熱容量を有するべきである。骨材は、最高800℃のような高温への曝露の際に、高い熱安定性を呈するべきである。加えて、骨材はTES装置中のジオポリマーマトリックス及び鋼管と同等の、例えば10×10-6/℃の桁におけるCTEを有するべきである。表1は、熱エネルギー貯蔵システムのためのジオポリマーコンクリートに用いる、選択された材料のTC及びCTE値(RT)を概括する。
【表1】
【0052】
通例入手可能な骨材すべての中で、潜在的に、TESシステムにおけるコイル化及び配管のための候補である、ステンレス鋼410についてのものと同等の低いコスト、かなり高い熱伝導率及びCTE値のため、細骨材及び粗骨材のための原材料の中でも、石英から作製した砂及び砂利が好ましい。玄武岩、ケイ岩、及び花崗岩が、TESジオポリマーコンクリートミックス中に、粗骨材として含まれてもよい。
【0053】
ある特定の耐火物及び磁器は、高熱伝導率、高機械的強度、及び優秀な熱安定性などの優れた性質に起因して、顕熱貯蔵のための優れた材料である。1、42これらの材料の例としては、シリカ系、マグネシア系、及びアルミナ系の耐火物、アルミナ系、アルミナケイ酸塩系、及びチタニア系の磁器が挙げられる。しかしながら、これらの材料を熱エネルギー貯蔵媒体として用いることは、高い材料コストのため、経済的ではない。しかしながら、これらの耐火物及び磁器の廃材は、低コストで容易に入手可能であり、TESジオポリマーコンクリートに再生利用されうる。TESジオポリマーコンクリートにおいて、これらの耐火物及び磁器材料を、粒子サイズに応じて、細骨材及び/又は粗骨材、並びに充填材として用いることができる。
【0054】
熱伝導率についての増強剤
本開示は、高性能TESジオポリマーコンクリートを開発するために、熱伝導率及び熱膨張係数についてのある特定の増強剤が必要であることを発見している。硬化した純粋なジオポリマーペーストは、例えば0.5W/(m・K)の桁における、低い熱伝導率を有することが予想される。ある特定の高TC骨材を含むことに加えて、開示される実施形態は、高性能コンクリートTESシステムを製造するために、ある範囲の容易に入手可能なTC増強剤を提供する。ジオポリマーコンクリート生成物の熱伝導率及び熱安定性を改善するため、並びに望ましいCTEについてジオポリマーコンクリートを補正するために、1種又は複数の増強剤が含まれる。これらの熱増強剤の例としては、酸化アルミニウム(例えばボーキサイト)、溶融アルミナ、ムライト、カイヤナイト、フォルステライト、チタニア、ヘマタイト、マグネタイト、スピネル、鉄のグリット及び塊、炭化ケイ素、グラファイト、グラフェン、並びに炭素ミクロ粒子が挙げられる。これらの材料はすべて、石英結晶と同等であるか、又は石英結晶よりも高いTCを呈する。これらの熱増強材料は一般に、石英よりも高価である。TESジオポリマーコンクリートミックス中のこれらの増強剤の量は、全体としての材料コストに依存する。しかしながら、グラファイト及び炭素ミクロ粒子は、少しの投与量が性質の改善に対する際立った効果をなしうるため、経済的に成り立ちうる。
【0055】
さらに、溶融アルミナ、炭化ケイ素、金属のグリット及びショット(銅、鋼)は、通例の研磨材吹付け媒体として用いられる。使用済みの研磨材吹付け媒体材料は、低コストの熱増強剤であり、TES用途のためのジオポリマーコンクリートに再生利用することができる。
【0056】
ある特定の金属スクラップも、TESジオポリマーコンクリートへの組み込みを通じて、熱増強剤として再生利用することができる。これらの金属スクラップの例としては、銅、黄銅、ステンレス鋼、及び鋳鉄等が挙げられる。
【0057】
これらの熱増強剤は典型的に、TESジオポリマーコンクリートミックス中の細骨材として用いられる。
【0058】
熱安定性についての増強剤
TESジオポリマーコンクリートの熱安定性を特に増強するために、ある特定の増強剤が含まれてもよい。最高運転温度に近い、例えば600℃のガラス転移温度(T)を有するガラス粉末が、TESジオポリマーコンクリートミックスに含まれてもよい。ジオポリマーマトリックスが、骨材及び他の添加剤とは著しく異なるCTEを有する場合、ジオポリマーマトリックスと骨材との間に熱的不適合があることになる。ミクロ割れの形成によって、TESコンクリートが劣化しうる。例えば300℃-600℃-300℃の温度サイクルの間、最高運転温度においてガラス粉末が柔らかくなり、温度が下がったとき、粘性のガラスがミクロ割れを充填して、回復させうる。理論的には、適切なガラス転移温度を有する任意のガラス組成物を用いてよい。しかしながら、ガラス粉末は、ジオポリマーコンクリートTESシステムに対する悪影響を有するべきではない。ガラス粉末の例としては、ケイ酸塩及びホウケイ酸塩ガラス、並びにある特定の廃棄ガラス材料が挙げられる。
【0059】
ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウムガラス粉末などのアルカリケイ酸塩ガラス粉末は、固体アルカリ活性剤である。市販の可溶性アルカリケイ酸塩ガラスの例としては、PQ CorporationからのSS(登録商標)ケイ酸ナトリウム、及びKasolv(登録商標)ケイ酸カリウムが挙げられる。水に曝露した際に、アルカリケイ酸塩ガラス粉末は溶解して、ジオ重合のための可溶性ケイ酸塩を提供する。さらに、アルカリケイ酸塩ガラス粉末を焼結助剤として用いてもよく、高温において、ガラス粉末は残存する反応性アルミノケイ酸塩粒子と反応して、追加のアルカリアルミノケイ酸塩材料を形成することが予想される。in situで形成されたこのようなアルカリアルミノケイ酸塩材料は、存在する場合、ジオポリマーコンクリートTESシステムの高温における運転中、任意の損傷を修復して回復させうる。
【0060】
繊維
良好な熱伝導率及び熱安定性を有する任意の繊維が、TESジオポリマーコンクリートミックス中に含まれてもよい。これらの繊維は、コンクリートの熱伝導率、曲げ及び引張強度を改善し、したがって機械的破損に対する耐性を改善することになる。これらの繊維の例としては、鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭素繊維、並びにムライト及び炭化ケイ素などのある特定のセラミック繊維が挙げられる。これらの繊維は、TESジオポリマーコンクリートミックス中に、最大10重量%ブレンドされうる。
【0061】
加えて、TESジオポリマーコンクリートのフレッシュ特性に影響を及ぼすために、高性能減水剤及び凝結遅延剤などのある特定の混和剤も、TESジオポリマーコンクリートミックス中に含まれてもよい。
【0062】
表2は、TESジオポリマーコンクリートミックスにおける、構成成分及び好ましい範囲を概括する。
【表2】
【0063】
実施形態
本明細書に記載する一実施形態は、高性能熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。TESジオポリマーコンクリート組成物は、(i)少なくとも1種のバインダー材料;(ii)少なくとも1種のアルカリ活性剤、(iii)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のバインダー材料は、群:クラスFフライアッシュ、メタカオリン、クラスCフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、ガラス質アルミノケイ酸カルシウム、及び天然ポゾランから選択される。いくつかの実施形態では、低CaクラスFフライアッシュ又はメタカオリンが好ましいバインダー材料である。いくつかの実施形態では、低CaクラスFフライアッシュとメタカオリンとからなる複合バインダーが好ましい。いくつかの実施形態では、複合バインダーは、低Caフライアッシュと高炉スラグとからなる。いくつかの実施形態では、複合バインダーは、メタカオリンと高炉スラグとからなる。いくつかのより好ましくない実施形態では、唯一のバインダーが、高炉スラグ、又はクラスCフライアッシュ、又はガラス質アルミノケイ酸カルシウムである。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のアルカリ活性剤は、金属水酸化物と金属ケイ酸塩との溶液である。金属水酸化物は、好ましくは、アルカリ金属、ナトリウム若しくはカリウム、又は両方であり、金属ケイ酸塩は、好ましくは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、又は両方である。
【0066】
いくつかの実施形態では、細骨材は石英組積又は石英コンクリート砂であり、粗骨材は石英砂利である。いくつかの実施形態では、粗骨材は群:石英、玄武岩、花崗岩、耐火物、又は磁器、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、耐火物は群:シリカ系、マグネシア系、及びアルミナ系から選択され、磁器は群:アルミナ系、アルミナケイ酸塩系、及びチタニア系から選択される。いくつかの実施形態では、骨材は群:再生耐火物又は磁器から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、細骨材は、高い熱伝導率を有する熱増強剤を含む。熱増強剤は群:酸化アルミニウム(例えばボーキサイト)、溶融アルミナ、ムライト、カイヤナイト、フォルステライト、チタニア、ヘマタイト、マグネタイト、スピネル、鉄のグリット及びショット、炭化ケイ素、グラファイト、グラフェン、炭素ミクロ粒子、並びにこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、細骨材は、石英砂及び少なくとも1種の熱増強剤を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の熱増強剤は、再生砂吹きアルミナ、鉄のグリット及びショット、並びに再生金属スクラップから選択される。いくつかの実施形態では、再生金属スクラップは群:銅、黄銅、鋳鉄、及びステンレス鋼から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、TESジオポリマーコンクリートミックスは、約500~約700℃のガラス転移温度を有するガラス粉末をさらに含む。いくつかの実施形態では、コンクリートミックスは、ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウムの粉末をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、TESジオポリマーコンクリートミックスは、群:粉砕石英粉末、シリカヒューム、アルミナから選択される、ミクロ及びサブミクロン充填材をさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、TESジオポリマーコンクリートミックスは、鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭素繊維、並びにムライト及び炭化ケイ素などのある特定のセラミック繊維から選択される熱伝導性繊維をさらに含む。
【0071】
本明細書に記載する一実施形態は、高性能熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。TESジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)少なくとも1種の水性アルカリケイ酸塩活性剤、(iii)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。この実施形態では、バインダー、細骨材及び粗骨材、他の添加剤の固体混合物は、存在する場合、少なくとも1種の水性アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合し、TES装置の鋳型に注入し、45℃超、好ましくは約60℃から約85℃の温度において、約12~48時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させる。
【0072】
本明細書に記載する別の実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)メタカオリン;(iii)少なくとも水性アルカリケイ酸塩活性剤、(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(v)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。ジオポリマーコンクリートは約20℃から約85℃の硬化温度を有する。いくつかの実施形態において、FFA/MKの質量比は、約0.1~約10、より好ましくは約1.5~約9の範囲である。
【0073】
本明細書に記載する別の実施形態は、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。ジオポリマーコンクリート組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;(ii)群:高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムから選択される少なくとも1種の高Caアルミノケイ酸塩バインダー、(iv)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の細骨材、並びに(v)高い熱伝導率及び比熱容量を有する少なくとも1種の粗骨材を含む。ジオポリマーコンクリートは約20℃から約85℃の硬化温度を有する。いくつかの実施形態では、FFA/高Caバインダーの質量比は、好ましくは約2.3~約9の範囲である。より好ましくは、FFA/高Caバインダー比は、CASHゲルよりもむしろAASゲルにCaを組み込むのに有利な、約3.5~約9の範囲である。
【0074】
一実施形態では、細骨材は群:石英砂、アルミナ砂、溶融アルミナ、ボーキサイト、マグネタイト、マグネシア、スピネル、カイヤナイト、ルチル、天然グラファイト、グラフェン、炭素ミクロ粒子、再生アルミナ、及び砂吹きのための鋼又は鉄のショット、並びに再生金属スクラップから選択され、粗骨材は群:石英砂利、花崗岩、玄武岩、閃緑岩、ケイ岩(quarzite)、再生磁器、及び再生耐火物から選択される。
【0075】
一実施形態では、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリートミックスは、群:鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭化ケイ素繊維、及び炭素繊維から選択される、ある特定の熱伝導性繊維をさらに含む。
【0076】
一実施形態では、熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリートミックスは、群:粉砕石英粉末、シリカヒューム、ヘマタイト、及びアルミナから選択される、ミクロ及びサブミクロン充填材をさらに含む。
【0077】
本明細書に記載する一実施形態は、高性能熱エネルギー貯蔵用途のためのジオポリマーコンクリート組成物を提供する。TESジオポリマーコンクリートミックスは、約8~約35重量%の少なくとも1種のバインダー材料、約1~約8重量%のアルカリ酸化物、約2~約16重量%の可溶性ケイ酸塩、約4~約20重量の水、約20~約50重量%の細骨材、約20~約60重量%の粗骨材、最大30重量%の充填材、及び約15重量%の熱伝導性繊維を含み、アルカリ酸化物、可溶性ケイ酸塩、及び水は、アルカリ活性剤を構成する。
【0078】
別の実施形態は、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも約1500psiの圧縮強度、少なくとも約1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも約1MJ/m/Kの比熱容量を有する、熱エネルギー貯蔵用途のためのTESジオポリマーコンクリート組成物を提供する。
【0079】
以下の実施例によって本発明を説明する。これらの実施例は決して、本方法の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0080】
以下の実施例は、好ましい実施形態において、本開示の実施を説明する。
【0081】
2種のクラスFフライアッシュを用いて、TESジオポリマーコンクリートを調製した。1つは約0.41%のLOIを有する、Jim Bridger Power Station(Montana)からの低CaO(6.49%)FFAであった。Si+Al+Fe酸化物の合計は83.90%であった。2つ目のフライアッシュは、約0.15%のLOIを有する、Navajo Power Station(NV)からの低CaO(4.77%)FFAであった。Si+Al+Fe酸化物の合計は87.00%であった。両方のフライアッシュは、Headwaters Resourcesから届いた。BFSグレード120は、Lafarge-HolcimのSparrow Pointプラント(Baltimore、MD)から届いた。活性度指数は、ASTM C989に従って約129であった。高炉スラグは、約38.5%のCaO、38.2%のSiO、10.3%のAl、及び9.2%のMgOを含有し、13.8μmの平均粒子サイズを有し、50体積%は7μm未満であった。メタカオリン(Kaorock)は、Thiele Kaolin Company(Sandersville、GA)から届いた。
【0082】
溶融アルミナ(16グリット)はIndustrial Supply Inc(ID)から、グラファイトフレーク(中)はAsbury Carbons(Asbury、NJ)から、ミクロ鋼繊維(13mm/0.4mm)はBekaert(www.bekaert.com)から届いた。石英コンクリート砂及び石英砂利(最大3/8”は、骨材として用いた。シリカヒュームはNorchem,Inc(www.norchem.com)から届いた。
【0083】
PQ,CorpからのタイプRuケイ酸ナトリウム溶液を用いて、アルカリケイ酸塩活性剤溶液を調製した。SiO/NaOの質量比は約2.40であった。受け入れたままの溶液は、約13.9重量%のNaO、33.2重量%のSiO、及び52.9重量%の水を含有していた。
【0084】
試料調製及び測定
ジオポリマーコンクリートの調製の少なくとも12時間前に、アルカリ活性剤溶液を調製した。99%純粋NaOHビーズ及び/又はKOH(91%純粋)フレークを水道水に溶解させ、次いで、PQ CorpからのタイプRuケイ酸ナトリウム液と混合することによって、活性剤溶液を調製した。遅延剤溶液を用いて、高性能コンクリート試料を調製した。遅延剤化合物を別個の容器中で水道水に溶解させ、次いで、ジオポリマー試料の調製の約30分前に、遅延剤溶液を活性剤溶液に混合した。
【0085】
微細石英砂及び豆砂利を処理して、表面乾燥飽水(SSD)状態とした。FFA、BFS、及びSSD微細砂、ミクロ鋼繊維、並びに存在する場合、溶融アルミナ砂、グラファイトフレーク、又はシリカヒュームなどの他の成分を、20L K-Labミキサー(Kercher Industries、PA)において混合し、次いで、活性剤溶液を、存在する場合遅延剤とともに、乾燥混合物に注入し、混合ブレードと混合容器との両方について、約250rpmにおいて3分間混合した。混合容器は逆回転方向であった。最終的に、ペーストに石英砂利を加え、混合を低速、例えば約100~150rpmにおいて、さらに3分間続けた。バッチサイズは約14kgであった。
【0086】
ASTM C143に従って、混合の約10分後、スランプについて生コンクリートを測定した。生コンクリートを、3”×6”及び4”×8”の円筒状型に注入し、棒突きし、振動テーブル上で3分間振動させて、気泡を除去した。熱伝導率及び熱容量についてのセンサのためのパイロットピンを、4”円筒状試料に適当に設置した。コンクリート試料において、開口を維持するのに十分な強度が発現した後、ピンを取り外した。円筒状試料を、RT(22℃~27℃)、65℃、又は80℃において硬化させた。すべての試料は、試験のために試料を型から外すまで、蓋を載せた型において硬化させた。すべての生コンクリート試料について、凝結時間を概算した。
【0087】
Test Mark圧縮機CM-4000-SD上で、3”×6”円筒状試料における圧縮強度を測定した。
【0088】
KD2 Pro SH-1センサ(METER Group、USA)によって、4”×8”円筒状試料において、コンクリート試料の熱伝導率及び比熱容量を測定した。加えて、KD2 Pro TR-1センサ(METER Group、USA)によって、熱伝導率を測定した。すべての熱的性質はASTM D5334に従って決定した。
【0089】
段階的熱処理(HT):4”×8”円筒状試料を、以下の段階的熱処理手順に供した。i.)27日間の硬化後、試料を型から外した;ii.)105℃において少なくとも12時間、試料をオーブン乾燥させて、水分を除去した;iii.)550℃又は600℃において、試料をさらに熱処理した(1℃/分において加熱し、6時間の間最高温度に保ち、次いで、RT近くまで自然冷却した)。合計で、400℃超の温度に少なくとも10時間、試料を曝露した。熱処理ステップそれぞれの前及び後に、熱伝導率及び比熱容量を測定した。
【0090】
温度サイクル試験:いくつかのコンクリート試料をさらに、300℃と550℃との間、又は300℃と600℃との間で、最大25回の温度サイクルに供した。温度サイクル試験は4つ又は5つの試験セグメントを含み、各セグメントは5回の温度サイクルを含んでいた。各温度サイクルは、1.5時間で試料を最高温度(550℃又は600℃)に加熱すること、最高温度において試料を1時間放置すること、約4時間で試料を300℃に冷却すること、及び300℃において試料を1時間放置することを含んでいた(図1)。温度サイクル試験が完了した後、RTにおいて圧縮強度及び熱伝導率を測定した。
【0091】
(例1~4)
例1~4についてのジオポリマーコンクリートミックス比率を表3に示す。配合物は約30kg/mの鋼繊維を含有していた。全骨材は約78.75重量%であり、粗骨材と細骨材との質量比は1.74であった。例1及び2は二成分FFA/MKジオポリマーであり、一方、例3及び4は二成分FFA/BFSジオポリマーである。FFAはNavajoフライアッシュである。例2及び4は、石英砂に取って代わった約30%の溶融アルミナ砂、及び追加で約12kg/mのグラファイトフレークを含んでいた。アルミナ砂及びグラファイトは、高い熱伝導率に起因する熱増強剤であった。ジオポリマーコンクリート試料を、初めに、65℃において24時間硬化させた。
【表3】

【表4】

【表5】
【0092】
例1~4についての試験結果を表4及び5に示す。ASTMスランプは、2”~7.5”の範囲であった(表4)。グラファイトフレーク及びアルミナ砂の添加によって、ほぼ確実にフレークタイプグラファイトに起因して、ASTMスランプは減少した(それぞれ、例2対例1及び例4対例3)。
【0093】
65℃において硬化させた例1及び2についてのジオポリマーコンクリート(FFA/MK二成分)は、6400psi前後で、類似の28日圧縮強度を示した。300と600℃との間の20回の温度サイクル後、例1及び2についての残存圧縮強度は約1600psiであった。試料を250と550℃との間の25回の温度サイクルに供した後、例2の残存圧縮強度は、約2150psiと高いままであった(表4)。表5は熱的性質に関する試験結果を概括する。熱処理前、例1の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、約3.70W/(m・K)及び2.65MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.42W/(m・K)及び1.73MJ/(m・K)であった。例2において、熱増強剤の溶融アルミナ及びグラファイトが含まれる場合、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、熱処理前、5.06W/(m・K)及び3.72MJ/(m・K)に上昇した。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.78W/(m・K)及び2.26MJ/(m・K)であった。
【0094】
65℃において硬化させた例3及び4におけるジオポリマーコンクリート(FFA/BFS二成分)は、約7000psiと類似の28日圧縮強度を示した(表4)。300と600℃との間の20回の温度サイクル後、残存圧縮強度は、例3については約1305psi、例4については約1381psiであった。例4の試料を250と550℃との間の25回の温度サイクルに供した後、残存圧縮強度は、2198psiであった(表4)。熱処理前、例3の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、約4.02W/(m・K)及び3.87MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.64W/(m・K)及び2.36MJ/(m・K)であった。例4において、熱増強剤の溶融アルミナ及びグラファイトが含まれる場合、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、熱処理前、4.91W/(m・K)及び2.91MJ/(m・K)に上昇した。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.78W/(m・K)及び2.55MJ/(m・K)であった(表5)。これらの例は、熱増強剤が、TESのためのジオポリマーコンクリートの熱伝導率及び熱容量を改善することを実証している。
【0095】
(例5及び6)
表3に示す例1~2のジオポリマーコンクリートを、室温のみにおいて硬化させ、例5及び6を得た。例5についての28日圧縮強度は6409psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2297psiであった。例5中に溶融アルミナ砂及びグラファイトフレークを含むことによって、例6を得た。例6についての28日圧縮強度は6571psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2049psiであった。熱処理前、例5の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、約3.74W/(m・K)及び2.35MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.56W/(m・K)及び1.77MJ/(m・K)であった。
【0096】
例5のミックス中に熱増強剤の溶融アルミナ及びグラファイトが含まれ、例6を得た。再び、例6についてのすべての試料を、RTのみにおいて硬化させた。熱処理前、例6の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、熱増強剤を伴わない例5と比較して、4.29W/(m・K)及び3.39MJ/(m・K)に上昇した。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.77W/(m・K)及び2.47MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後の試料をさらに、300と600℃との間の温度サイクルに供した。600℃の最高温度における5回の温度サイクルの後、熱伝導率は1.54W/(m・K)に、比熱容量は2.29MJ/(m・K)に減少した。10回のサイクルの後、熱伝導率は1.45W/(m・K)に、比熱容量は2.27MJ/(m・K)に減少した。15回のサイクルの後、熱伝導率は約1.28W/(m・K)にさらに減少し、比熱容量は2.30MJ/(m・K)にとどまった。例5及び6の結果もまた、熱増強剤が、TESのためのジオポリマーコンクリートの熱伝導率及び熱容量を改善することを実証している。
【0097】
(例7~9)
例7~9についてのコンクリートミックス組成を表6に示す。配合物は30kg/mの鋼繊維を追加で含有していた。全骨材は約78.75重量%であり、粗骨材と細骨材との質量比は1.74であった。例7及び8は二成分FFA/BFSジオポリマー組成物をベースとし、例9は二成分BFS/MKジオポリマー組成物として、72%のBFSと28%のMKとを有していた。例7~9についてのすべての試料を、RTにおいて硬化させた。
【表6】
【0098】
例7についての28日圧縮強度は5865psiであり、600℃/6時間における熱処理後は1447psiであった(表7)。BFSを例7における15%から25%に増加させることによって、例8を得た。例8についての28日圧縮強度は6624psiであり、600℃/6時間における熱処理後は1683psiであった。例8についての28日圧縮強度は12,500psiであり、600℃/6時間における熱処理後は1429psiであった(表5)。例9の試験結果は、高いBFS含有量を有するジオポリマーコンクリートは、高温への曝露後に、過剰なCASHゲル形成に起因して、比較的低い熱安定性を呈しうることを実証している。
【0099】
熱処理前、例7の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、2.93W/(m・K)及び1.87MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.37W/(m・K)及び1.51MJ/(m・K)であった。熱処理前、例8の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.92W/(m・K)及び2.64MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.25W/(m・K)及び2.12MJ/(m・K)であった。いずれの熱処理よりも前、例9についての熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.36W/(m・K)及び2.08MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.32W/(m・K)及び1.93MJ/(m・K)であった(表7)。
【表7】

(例10~15)
例10~15についてのコンクリートミックス組成及び圧縮強度の結果を表8に示す。Jim Bridgerフライアッシュを含有していた例12を除いて、すべての例はNavajoフライアッシュを含有する。配合物は30kg/mの鋼繊維を追加で含有していた。全骨材は約78.75重量%であり、粗骨材と細骨材との質量比は1.74であった。これらの例は、固体顕熱エネルギー貯蔵媒体として、低Caフライアッシュ系ジオポリマーコンクリートが好適であることを実証している。
【表8】
【0100】
例10~15のフライアッシュジオポリマーコンクリートは、RTにおいて約16時間~24時間の凝結時間を有していた。低Ca FFAのアルカリ活性化は通常、周囲温度においては極端に遅く、硬化コンクリート生成物を製造するためには、高温における加速硬化を必要とする。そのため、80℃において24時間硬化させた例13の試料を除いて、すべての試料は、65℃において48時間硬化させた。
【0101】
w/bが減少するにつれて、スランプが減少した(表8)。例えばw/b=0.4の場合、スランプは6”であった(例13)。w/bが0.35に減少した場合、スランプは4”であり(例14)、w/bが0.30に減少した場合、スランプは約2”であった(例15)。
【0102】
例10は、w/b=0.4、9M NaOH、且つSiO/NaO=1.25のミックスである。例10についての28日圧縮強度は8250psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2481psiであり、すなわち、強度の保持は30%であった。例10のコンクリートミックスにおいて、約1重量%のケイ酸カリウムガラス粉末の添加によって、NaOHは10Mに、SiO/NaOは1.5にそれぞれ増加し、例11を得た。例11についての28日圧縮強度は5718psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2460psiであり、すなわち、強度の保持は43%であった。この例は、アルカリケイ酸塩ガラス粉末が焼結助剤として作用して、強度保持を改善することを実証している。例12は、w/b=0.4、10M NaOH、且つSiO/NaO=1.5のミックスである。例12についての28日圧縮強度は5732psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2051psiであり、35%の強度保持であった。例13はNavajoフライアッシュを含有していたが、例12と同じミックス組成であった。試料を、80℃において24時間、RTにおいて硬化させた。28日圧縮強度は8477psiであり、600℃/6時間における熱処理後、圧縮強度は2081psiとなり、25%の強度保持であった。例14は、0.35のw/bを除いて、例13と同じミックス組成を有していた。28日圧縮強度は7389psiであり、600℃/6時間における熱処理後は2297psiであり、31%の強度保持であった。例15において、w/b比は0.30にさらに減少した。28日圧縮強度は9581psiであり、600℃/6時間における熱処理後は3294psiであり、34%の強度保持であった。
【0103】
表9は、熱伝導率及び比熱容量についての結果を概括する。熱処理前、例10の熱伝導率及び熱容量は3.99W/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率は1.46W/(m・K)であった。熱処理前、例11の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.33W/(m・K)及び1.96MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量それぞれ、1.48W/(m・K)及び1.68MJ/(m・K)であった。熱処理前、例12の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.92W/(m・K)及び2.52MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量それぞれ、1.52W/(m・K)及び2.15MJ/(m・K)であった。熱処理前、例13の熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.60W/(m・K)及び2.90MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.53W/(m・K)及び2.18MJ/(m・K)であった。熱処理前、例14についての熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.32W/(m・K)及び2.66MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.75W/(m・K)及び2.20MJ/(m・K)であった。熱処理前、例15についての熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、3.15W/(m・K)及び2.10MJ/(m・K)であった。600℃/6時間における熱処理後、熱伝導率及び熱容量はそれぞれ、1.72W/(m・K)及び1.91MJ/(m・K)であった。これらの例は、低w/b比によって、高温に曝露した場合に、高い熱伝導率及び比熱容量、並びに高い機械的安定性を有するTESジオポリマーコンクリートを調製することが可能になることを実証している。
【表9】
【0104】
(参考文献)
以下の参考文献は上において参照されており、参照によって本明細書に組み込まれる。







【0105】
本特許出願中に引用したすべての文書、特許、学術論文、及び他の資料は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0106】
本発明はある特定の実施形態を参照しながら開示されているが、付属する特許請求の範囲に定義する本発明の領域及び範囲から逸脱することなく、記載した実施形態に対する複数の修正、改変、及び変更が可能である。したがって、本発明は記載した実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の用語及びその均等物によって定義される範囲全体を有することが意図される。
本発明の一態様を以下に示すが、本発明はそれに限定されない。
[発明1]
少なくとも1種のバインダー;
少なくとも1種のアルカリ活性剤;
少なくとも1種の細骨材;及び
少なくとも1種の粗骨材
を含む、ジオポリマー熱エネルギー貯蔵(TES)コンクリート生成物であって、
TESコンクリート生成物が高い熱伝導率及び熱容量を有する、
生成物。
[発明2]
少なくとも1種のバインダーが、低CaクラスFフライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、及びガラス質アルミノケイ酸カルシウムからなる群から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明3]
少なくとも1種のバインダーが、TESのためのコンクリートミックスの10~35重量%を占める、発明1に記載の生成物。
[発明4]
少なくとも1種のバインダーが、15重量%以下のCaOを有する低Caクラスフライアッシュである、発明1に記載の生成物。
[発明5]
少なくとも1種のバインダーが低Caクラスフライアッシュとメタカオリンとを含む、発明1に記載の生成物。
[発明6]
少なくとも1種のバインダーがメタカオリンである、発明1に記載の生成物。
[発明7]
少なくとも1種のバインダーが高炉スラグとメタカオリンとを含む、発明1に記載の生成物。
[発明8]
少なくとも1種のアルカリ活性剤が金属水酸化物と、金属ケイ酸塩と、水とを含み、前記金属がカリウム、ナトリウム、又は両方の組み合わせである、発明1に記載の生成物。
[発明9]
金属水酸化物がM O(M=Na、K、又は両方)として、TESコンクリート生成物の1~8重量%を占め、金属ケイ酸塩がSiO として、TESコンクリート生成物の2~16重量%を占め、アルカリ活性剤が、TESコンクリート生成物の4~20重量%の水を含む、発明8に記載の生成物。
[発明10]
少なくとも1種のアルカリ活性剤が、0.25~0.60のw/b、0.85~2.0のSiO /M Oモル比、及び5~15のMOHモル濃度を有する、発明8に記載の生成物。
[発明11]
少なくとも1種の細骨材が、TESコンクリート生成物の20~50重量%を占める、発明1に記載の生成物。
[発明12]
少なくとも1種の細骨材が、石英、酸化アルミニウム、溶融アルミナ、ムライト、カイヤナイト、フォルステライト、チタニア、ヘマタイト、マグネタイト、スピネル、鉄のグリット及びショット、金属スクラップ、炭化ケイ素、グラファイト、グラフェン、炭素ミクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む、発明1に記載の生成物。
[発明13]
少なくとも1種の細骨材が、鉄ショット、アルミナ、及び金属スクラップを含み、金属スクラップが、銅、黄銅、鋳鉄、及びステンレス鋼からなる群から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明14]
少なくとも1種の細骨材が、石英、アルミナ、ヘマタイト、炭素ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明15]
少なくとも1種の粗骨材が、TESコンクリート生成物の20~60重量%を占める、発明1に記載の生成物。
[発明16]
少なくとも1種の粗骨材が、ケイ岩、玄武岩、花崗岩、耐火物、磁器、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、耐火物が群:シリカ系、マグネシア系、及びアルミナ系から選択され、磁器が群:アルミナ系、アルミナケイ酸塩系、及びチタニア系から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明17]
少なくとも1種の粗骨材が石英砂利である、発明1に記載の生成物。
[発明18]
粗骨材が再生耐火物及び磁器を含む、発明16に記載の生成物。
[発明19]
TESコンクリート生成物が、TESコンクリート生成物の最大35重量%を占める、少なくとも1種のミクロ及びサブミクロン充填材をさらに含み、ミクロ及びサブミクロン充填材が、粉砕石英粉末、超微細フライアッシュ、シリカヒューム、アルミナ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明20]
TESコンクリート生成物が、最大15重量%の少なくとも1種の熱安定性増強剤をさらに含む、発明1に記載の生成物。
[発明21]
少なくとも1種の熱安定性増強剤が、500~700℃のガラス転移温度を有するガラス粉末と、水溶性アルカリケイ酸塩ガラス粉末とを含み、ガラス粉末が、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノケイ酸塩からなる群から選択され、水溶性アルカリケイ酸塩ガラスが、ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウムを含む、発明19に記載の生成物。
[発明22]
TESコンクリート生成物が、最大10重量%を占める熱伝導性繊維をさらに含み、熱伝導性繊維が、鋼繊維、銅被覆鋼繊維、炭素繊維、ムライト、及び炭化ケイ素、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、発明1に記載の生成物。
[発明23]
TESコンクリート生成物が、
8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュをさらに含み、
少なくとも1種のアルカリ活性剤がアルカリケイ酸塩活性剤である、
発明1に記載の生成物。
[発明24]
バインダー、細骨材及び粗骨材、並びに添加剤の固体混合物が、存在する場合、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、45℃超、好ましくは60から85℃の温度において、12~48時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、発明23に記載の生成物。
[発明25]
TESコンクリート生成物が、
8重量%以下の酸化カルシウムを有するクラスFフライアッシュ;及び
メタカオリン若しくは高炉スラグ、又は両方を含む、
発明1に記載の生成物。
[発明26]
バインダー、細骨材及び粗骨材、並びに添加剤の固体混合物が、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、20から85℃の温度において、24時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、発明24に記載の生成物。
[発明27]
TESコンクリート生成物が下記をさらに含む、発明1に記載の生成物:
高炉スラグ;
メタカオリン;
並びに
少なくとも1種のミクロ及びサブミクロン充填材。
[発明28]
バインダー、細骨材及び粗骨材、ミクロ及びサブミクロン充填材、並びに添加剤の固体混合物が、少なくとも1種のアルカリ活性剤溶液と混合され、TES装置のための鋳型に注入され、20から約85℃の温度において、24時間、90%よりも高い相対湿度で硬化させられる、発明27に記載の生成物。
[発明29]
TESのためのジオポリマーコンクリートが、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも1MJ/m /Kの比熱容量を有する、発明1に記載の生成物。
[発明30]
少なくとも1種のバインダー;
少なくとも1種のアルカリ活性剤;
少なくとも1種の細骨材;及び
少なくとも1種の粗骨材
を含むジオポリマー熱エネルギー貯蔵(TES)コンクリート生成物であって、
前記生成物が、600℃における6時間の熱処理後、少なくとも1500psiの圧縮強度、少なくとも1W/(m・K)の熱伝導率、及び少なくとも1MJ/m /Kの比熱容量を有する、
生成物。