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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021529350
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019082885
(87)【国際公開番号】W WO2020114878
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】1819683.2
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】プレストン,ショーン
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/174513(WO,A1)
【文献】特開2011-041799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326620(US,A1)
【文献】特開2010-088884(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103209(WO,A1)
【文献】特表2018-530360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0310230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術器具であって、
マイクロ波エネルギーを搬送するように構成される同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの遠位端から離れて長手方向に延在するロッド状放射先端部と、を備え、前記ロッド状放射先端部は、
前記マイクロ波エネルギーを受信及び搬送するための近位同軸伝送線であって、内部導体、外部導体、及び前記内部導体を前記外部導体から分離する誘電材料を含む、前記近位同軸伝送線と、
前記近位同軸伝送線の遠位端に搭載される遠位針先であって、前記近位同軸伝送線の前記遠位端から前記長手方向に延在する剛性誘電体スリーブを含む、前記遠位針先と、を含み、
前記ロッド状放射先端部は前記同軸ケーブルの直径よりも小さい直径を有し、
前記剛性誘電体スリーブは、前記近位同軸伝送線の前記内部導体に電気的に接続される細長導体素子を囲み、前記近位同軸伝送線の前記外部導体の遠位端を越えて延在し、前記細長導体素子は、前記マイクロ波エネルギーの半波長変成器として動作し、それによって、前記マイクロ波エネルギーを前記遠位針先から生物組織に放射するように構成され、
前記細長導体素子は遠位針先の遠位端上で露出するアクティブ電極で終端し、
前記アクティブ電極は、前記近位同軸伝送線の前記外部導体の前記遠位端に電気的に接続されるリターン電極から軸方向に分離し、前記アクティブ電極及び前記リターン電極は、前記遠位針先で生物組織の電気穿孔のために電場を確立するように構成される、前記電気手術器具。
【請求項2】
前記同軸ケーブルは電気穿孔信号を搬送するように構成され、前記電気穿孔信号は、前記ロッド状放射先端部によって受信されるとき、前記遠位針先における生物組織の電気穿孔のために前記電場を確立する、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記近位同軸伝送線の前記誘電材料は、前記剛性誘電体スリーブよりも可撓性がある、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記アクティブ電極は前記細長導体素子と同軸に配置される導電性リングである、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記導電性リングは前記導電性リングを通って長手方向に延在するチャネルを有し、前記細長導体素子の一部は前記チャネルの内部に含まれる、請求項4に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記遠位針先は、前記チャネルの遠位端を閉鎖する前記導電性リングの遠位端に搭載される先端要素を含む、請求項5に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記先端要素の遠位端は尖っている、請求項6に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記剛性誘電体スリーブはジルコニアから作られている、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記外部導体の遠位部は前記剛性誘電体スリーブの近位部に重なる、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記剛性誘電体スリーブは共働部品の対によって形成され、前記共働部品のそれぞれ1つは、前記細長導体素子を受容するための前記共働部品の表面に形成された縦溝を有する、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記外部導体はニチノールから形成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項12】
導電性コーティングは前記外部導体の外面に形成され、導電性外層はニチノールよりも高い導電性を有する、請求項11に記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記ロッド状放射先端部は40mm以上の前記長手方向の長さを有する、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項14】
前記ロッド状放射先端部は1.2mm以下の最大外径を有する、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項15】
前記内部導体は前記同軸ケーブルの前記遠位端から延在し、前記内部導体は前記同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続され、
前記内部導体は、前記同軸ケーブルの前記中心導体の直径よりも小さい直径を有する、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項16】
前記同軸ケーブルは可撓性である、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項17】
前記ロッド状放射先端部は前記ロッド状放射先端部の遠位長に沿って非粘着性コーティングを含む、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項18】
前記非粘着性コーティングはパリレンCまたはパリレンDから形成されている、請求項17に記載の電気手術器具。
【請求項19】
生物組織を治療するための電気手術システムであって、
マイクロ波エネルギー及び電気穿孔信号を供給するように構成される電気手術用発生器と、
前記電気手術器具の前記同軸ケーブルが前記マイクロ波エネルギー及び前記電気穿孔信号を前記電気手術用発生器から受信するために接続される、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具と、
を備える、前記電気手術システム。
【請求項20】
患者の体内に挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコーピングデバイスをさらに備え、前記可撓性挿入コードは、前記可撓性挿入コードの長さに沿って伸びる器具チャネルを有し、前記電気手術器具は前記器具チャネル内に入るように寸法決定される、請求項19に記載の電気手術システム。
【請求項21】
前記電気穿孔信号は1つ以上の電磁パルスを含む、請求項19または20に記載の電気手術システム。
【請求項22】
前記1つ以上の電磁パルスのそれぞれは1ns~10msの範囲のパルス幅を有する、請求項21に記載の電気手術システム。
【請求項23】
各パルスは1kV~10kVの範囲の振幅を有する、請求項22に記載の電気手術システム。
【請求項24】
前記電気穿孔信号は、デューティサイクルが50%以下である一連のパルスを含む、請求項20~23のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組織を焼灼するために電磁エネルギーを生体組織に送達するための電気手術器具に関する。具体的には、プローブは、非侵襲的方式で治療部位に導入可能である外科用スコーピングデバイスまたはカテーテルのチャネルを通って挿入されるように構成される。プローブは、腫瘍、嚢胞、または他の病変等の組織を焼灼するように構成され得る。プローブは、特に、膵臓の治療に適し得る。
【背景技術】
【0002】
電磁(EM)エネルギー(具体的には、マイクロ波エネルギー及び無線周波数(RF)エネルギー)は、体内組織を切断、凝固、及び焼灼する能力があるため、電気外科手術に有用であることが発見されている。通常、EMエネルギーを体内組織に送達するための装置は、エネルギーを組織に送達するために、EMエネルギー源を含む発生器と、発生器に接続された電気手術器具とを含む。従来の電気手術器具は、多くの場合、患者の体内に経皮的に挿入されるように設計される。しかしながら、例えば、標的部位が動く肺または胃腸(GI)管の薄肉断面にある場合、器具を体内で経皮的に位置決めすることは困難である可能性がある。他の電気手術器具は、気道または食道もしくは結腸の内腔等の体内の経路を通って伸びることできる外科用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)によって標的部位に送達できる。これにより、低侵襲治療が可能になり、患者の死亡率を減らし、手術中及び手術後の合併症率を減らすことができる。
【0003】
マイクロ波EMエネルギーを使用する組織焼灼は、生体組織が主に水で構成されるという事実に基づいている。人間の軟臓器組織は、通常、70%~80%の水分含量である。水分子は永久電気双極子モーメントを有し、分子全体にわたって電荷不均衡が存在することを意味する。この電荷不均衡により、分子が回転して、その電気双極子モーメントを印加電界の極性に合わせるときに、時間的に変化する電界を印加することによって生成する力に応答して分子が移動する。マイクロ波周波数において、急速な分子振動が摩擦加熱を生じさせ、結果的に、熱の形態で電界エネルギーを散逸させる。これは誘電加熱として知られている。
【0004】
この原理は、マイクロ波焼灼療法で利用され、マイクロ波周波数で局所的な電磁場を印加することにより、標的組織の水分子が急速に加熱され、組織凝固及び細胞死が生じる。肺及びその他の臓器における様々な疾患を治療するために、マイクロ波放出プローブを使用することが知られている。例えば、肺では、マイクロ波放射を使用して、喘息を治療し、腫瘍または病変を焼灼できる。
【0005】
別の種類の腫瘍治療は、電気穿孔法(または電気透過化)として既知の効果を利用する。この技術では、電気パルスは、生物組織に印加され、標的部位における細胞膜でナノスケール細孔を開放させる。細孔は、通常、細胞膜を通って浸透できない抗がん剤または他の物質が細胞に入ることを可能にする。次に、細孔は細胞内に物質を捕らえるために再び閉じ得、細孔は、(例えば、細胞を殺すために)治療効果を生じさせ得る。また、電気穿孔法を使用して、細胞膜の永久的ナノスケール細孔を作ることが知られている。これらの細孔は再び閉じなく、ひいては、細胞恒常性を破壊し、最終的に、細胞死をもたらす。この技術は、不可逆電気穿孔法または非熱的不可逆電気穿孔法として知られている。熱焼灼とは異なり、例えば、マイクロ波エネルギーを使用して、不可逆電気穿孔法は、細胞外マトリックスを維持する。
【0006】
超音波内視鏡ガイド高周波焼灼を使用する膵臓の組織を治療する技術は知られている(Pai,M.,et al.:Endoscopic ultrasound guided radiofrequency ablation,for pancreatic cystic neoplasms and neuroendocrine tumors,World J Gastrointest Surg 2015 April 27;7(4):52-59)。この技術では、小さな直径(例えば、0.33mm)を有する導電性ワイヤは、超音波対応内視鏡のワーキングチャネルを通って挿入される。RF電力は、肝臓及び膵臓の組織を凝固させるために、患者の皮膚と接触する外部に接地されたリターンパッドと併せてワイヤに印加される。病変を焼灼するために、90~120秒、電力を印加する必要があり、場合によって、ワイヤを除去及び再配置する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も一般的には、本発明は、低侵襲方式でマイクロ波エネルギー及び電気穿孔法(例えば、非熱的不可逆電気穿孔法)を使用して、組織焼灼を行うことが可能である放射先端部を有する電気手術器具を提供する。電気手術器具を使用して、別々に(例えば、連続的に)または同時に、マイクロ波焼灼及び電気穿孔法を行い得る。放射先端部は、既知のRF焼灼技術に代わる急速及び正確な代替手段を提供するために、外科用スコーピングデバイスによって膵臓に挿入するのに適切になるように寸法決定され得る。低侵襲手技を使用して膵臓内の腫瘍を治療することを可能にすることによって、その治療は、治癒的及び一時的緩和の両方の理由のために、焼灼及び/または電気穿孔処置を使用する実行可能なオプションであり得る。
【0008】
本発明では膵臓における特定の使用が発見されているが、その使用は、また、他の扱いにくい治療部位(肺等)で使用されるのに適切であり得る。本明細書に開示される器具構造は、様々な設定で使用される適切な長さ及び剛性を放射先端部に提供することを可能にする。
【0009】
前述の器具によってマイクロ波焼灼及び電気穿孔法を行う能力を組み合わせることによって、器具を変更する必要がなく、電気外科手技中に治療モダリティごとに速く変更することが可能である。標的組織をより効果的に治療するために及び/または治療時間を最小にするために、補完的方式でマイクロ波焼灼及び電気穿孔法を使用し得る。放射先端部の小さな直径により、マイクロ波エネルギーを組織に送達するために放射先端部を使用するとき、放射先端部は熱くなり得る。過度の加熱により健康的な周囲組織に損傷を生じさせ得るため、多くの場合、マイクロ波エネルギーを印加した後、放射先端部が冷えるのを待機する必要がある。本発明の器具によって、放射先端部の過度の加熱を回避するために、マイクロ波エネルギー及び電気穿孔法による治療を交互に行うことが可能である。これは、全治療時間を最小にすることを可能にし得る。
【0010】
本発明の実施形態に従って、電気手術器具が提供され、電気手術器具は、マイクロ波エネルギーを搬送するように構成される同軸ケーブルと、同軸ケーブルの遠位端から離れて長手方向に延在するロッド状放射先端部と、を備え、放射先端部は、マイクロ波エネルギーを受信及び搬送するための近位同軸伝送線であって、内部導体、外部導体、及び内部導体を外部導体から分離する誘電材料を含む、近位同軸伝送線と、近位同軸伝送線の遠位端に搭載される遠位針先であって、近位同軸伝送線の遠位端から長手方向に延在する剛性誘電体スリーブを含む、遠位針先と、を含み、ロッド状放射先端部は同軸ケーブルの直径よりも小さい直径を有し、剛性誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の内部導体に電気的に接続される細長導体素子を囲み、近位同軸伝送線の外部導体の遠位端を越えて延在し、細長導体素子は、マイクロ波エネルギーの半波長変成器として動作し、それによって、マイクロ波エネルギーを遠位針先から生物組織に放射するように構成され、細長導体素子は遠位針先の遠位端上で露出するアクティブ電極で終端し、アクティブ電極は、近位同軸伝送線の外部導体の遠位端に電気的に接続されるリターン電極から軸方向に分離し、アクティブ電極及びリターン電極は、遠位針先で生物組織の電気穿孔のために電場を確立するように構成される。
【0011】
遠位針先の電気的長さがマイクロ波エネルギーの半波長に一致する場合、遠位針先は半波長変成器として構成され得る。半波長変成器として遠位針先を構成する利点は、構成要素間の、例えば、同軸ケーブルと近位同軸伝送線との間の、近位同軸伝送線と遠位針先との間の境界面における反射を最小にすることである。後者の境界面における反射係数は、一般的に、インピーダンスの大きい変動により大きくなる。半波長の構成はこれらの反射を最小にすることにより、主要な反射係数は近位同軸伝送線と組織との間の境界面の反射係数になる。近位同軸伝送線のインピーダンスは、予想される組織インピーダンスの同一またはそれに近くなるように選択され、マイクロ波エネルギーの周波数で良好な一致をもたらし得る。
【0012】
放射先端部の構成の結果として、同軸伝送線のインピーダンスは、遠位針先構造の(より小さい)インピーダンスよりもむしろ、組織と「見なされ」得る。遠位針先の物理長は、自由空間のマイクロ波エネルギーの半波長に一致する必要はない(実際に、おそらく一致しない)。この理由として、半波長変成器として遠位針先が電気的に動作することを可能にしながら、遠位針先の物理長を制御するために、遠位針先の形状及び近位同軸伝送線との遠位針先の相互作用を選択できるためである。
【0013】
同軸ケーブルは電気穿孔信号を搬送するように構成され得、電気穿孔信号は、ロッド状放射先端部によって受信されるとき、遠位針先における生物組織の電気穿孔のために電場を確立する。アクティブ電極は遠位針先の表面に配置され得る。
【0014】
電気穿孔波形は、細胞膜で細孔を開放するように構成される1つ以上の高電圧エネルギーパルスを含み得る。本発明は、治療薬が治療部位に存在するシナリオで使用され得、それによって、細胞膜で細孔を開放することで、治療薬が細胞に入ることを容易にするまたは可能にする。言い換えれば、本発明は、従来の電気穿孔処置で使用され得る。
【0015】
代替としてまたは加えて、電気穿孔法のためのエネルギーは細孔を永久的に開放し、それによって、細胞を死なせる細胞膜に不可逆的分裂を生じさせるように構成され得る。言い換えれば、不可逆電気穿孔法(IRE)のために器具を使用できる。
【0016】
電気穿孔波形は1つ以上の高電圧エネルギーパルスを含み得る。各パルスは1ns~10msの範囲、好ましくは、1ns~100μsの範囲のパルス幅を有し得るが、本発明はこの範囲に限定される必要はない。短い持続時間のパルス(例えば、10ns以下)は、可逆電気穿孔法に好ましくあり得る。不可逆電気穿孔法に関して、可逆電気穿孔法と比較して、より長い持続時間のパルスまたはより多いパルスを使用し得る。
【0017】
好ましくは、各パルスの立ち上がり時間は、パルス持続時間の90%以下、より好ましくは、パルス持続時間の50%以下、最も好ましくは、パルス持続時間の10%以下である。短いパルスに関して、立ち上がり時間は、100ps程度であり得る。いくつかの実施例では、電気穿孔波形は無線周波数(RF)または低周波電磁信号であり得る。
【0018】
各パルスは10V~10kVの範囲、好ましくは、1kV~10kVの範囲の振幅を有し得る。各パルスは、接地電位からの正パルス、または接地電位からの一連の交互に発生する正パルス及び負パルスであり得る。
【0019】
電気穿孔波形は、単一パルスまたは複数パルス(例えば、周期一連のパルス)であり得る。波形は、50%以下(例えば、0.5%~50%の範囲)のデューティサイクルを有し得る。
【0020】
一例では、一連の10~100パルスで送達される200ms程度のパルス幅は、不可逆電気穿孔法に使用され得る。一例では、電気穿孔波形は、送達の間に約1分で3回送達される振幅1.5kVの10×300μsのパルスを含み得る。この波形は、肝細胞がんで細胞アポトーシスまたは細胞死を生じさせ得る。
【0021】
電気穿孔波形は、所望の効果に応じて選択される治療期間中に送達され得る。例えば、治療期間は短くなり得る(例えば、1秒未満、または2~3秒、または約1分)。代替として、治療期間は長くなり得る(例えば、最大で1時間)。
【0022】
同軸ケーブルは、近位端において電気手術用発生器に接続可能である従来の低損失同軸ケーブルであり得る。同軸ケーブルは、誘電材料によって外側導体から分離された中心導体を有し得る。同軸ケーブルは、さらに、ケーブルを絶縁及び保護するための外部保護シースを含み得る。いくつかの実施例では、保護シースは、組織がケーブルに付着するのを防ぐために、非粘着性材料から作られ得る、または非粘着性材料でコーティングされ得る。放射先端部は同軸ケーブルの遠位端に位置し、同軸ケーブルに沿って搬送されるEMエネルギーを受信するために接続される。
【0023】
近位同軸伝送線は同軸ケーブルの遠位端に接続され得る。具体的には、近位同軸伝送線の内部導体及び外部導体は、各々、同軸ケーブルの中心導体及び外部導体に電気的に接続され得る。近位同軸伝送線で使用される材料は、同軸ケーブルで使用される材料と同じであり得るまたは異なり得る。近位同軸伝送線で使用される材料は、近位同軸伝送線の所望の適応性及び/またはインピーダンスを提供するために選択され得る。例えば、近位同軸伝送線の誘電材料は、標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択され得る。
【0024】
近位同軸伝送線の構成要素の寸法は、可撓同軸ケーブルのインピーダンス(例えば、約50Ω)に同一または近いインピーダンスを構成要素に提供するために選ばれ得る。内部導体は高導電性の材料(例えば、銀)から形成され得る。
【0025】
放射先端部は、放射先端部と可撓同軸ケーブルとの間の接合点にわたって搭載されるカラーによって、可撓同軸ケーブルに固定され得る。カラーは導電性があり、例えば、黄銅から形成され得る。カラーは、外部導体を可撓同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続し得る。
【0026】
放射先端部の外径は同軸ケーブルの外径よりも小さい。これは、標的組織への放射先端部の挿入を容易にし、放射先端部の操作性を改善し得る。この構成が十二指腸壁を通って膵臓への放射先端部の挿入を容易にし得るため、その構成は、特に、膵臓の腫瘍の治療に適し得る。
【0027】
放射先端部は、組織がそれに付着するのを防ぐために、非粘着性コーティング(例えば、PTFEから作られたコーティング)を含み得る。非粘着性コーティングはパリレンCまたはパリレンDから形成され得る。非粘着性コーティングは、アクティブ電極及びリターン電極を除く放射先端部の全長に沿って形成され得、これらの電極は、組織内への電気穿孔信号の効率的な送達を容易にするために露出されている。非粘着性コーティングは、焼灼のアクティブゾーンに対応する長さだけに沿って、例えば、(アクティブ電極及びリターン電極を除く)遠位端から後部に2cm延在する領域に沿って、塗布され得る。針が一部だけコーティングされているとき、針は、針の温度上昇を生じさせ得る熱エネルギーの蓄積の影響を受けにくくなり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、リターン電極は、近位同軸伝送線の外部導体の遠位部によって形成され得る。このように、放射先端部が電気穿孔波形を受信するとき、放射先端部は双極型電気穿孔プローブとして働き得る。リターン電極として外部導体の遠位部を使用することによって、電場は遠位針先の周りで局所化され得、これにより、電気穿孔法は遠位針先の周りの領域内で行われ得る。外部導体の遠位部は、遠位針先に隣接して、近位同軸伝送線の遠位端に位置し得る。外部導体がニチノールまたは他のいくつかの可撓性導体材料から形成される場合、リターン電極は、ニチノールよりも高い導電性を有する材料の外部導体の遠位部に形成されるコーティングを含み得る。材料は、例えば、銀であり得る。電気穿孔信号の効率的な送達を容易にするために、アクティブ電極及びリターン電極は滑らかにされ、すなわち、可能な限り円滑にされ得る。
【0029】
細長導体素子は、その長さに沿ってマイクロ波エネルギー放射し、遠位針先の周りに位置する領域内の組織を焼灼し得る。いくつかの場合、細長導体素子は、遠位端を越えて延在する内側導体の遠位部であり得る。
【0030】
アクティブ電極は細長導体素子に電気的に接続される。このように、電気穿孔波形は細長導体素子を介してアクティブ電極に送達され得る。また、アクティブ電極は、放射先端部のマイクロ波放射プロファイルをつくり、例えば、遠位針先の周りにマイクロ波エネルギーの放出を集中させる役割を果たし得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、アクティブ電極は細長導体素子と同軸に配置される導電性リングであり得る。言い換えれば、導電性リングの中心軸は細長導体素子の長手軸と整合し得る。これは、長手軸を中心に対称的な組織に電気穿孔波形を送達する役割を果たし得る。また、これは、軸対称のマイクロ波放射プロファイルを提供する役割を果たし得る。
【0032】
導電性リングは導電性リングを通って長手方向に延在するチャネルを有し得、細長導体素子の一部はチャネルの内部に含まれ得る。このように、細長導体は、チャネルの内側のアクティブ電極に電気的に接続され得る。チャネルの直径は、細長導体素子の外径に実質的に一致するように寸法決定され得、これにより、チャネルは、細長導体素子の周りの締まり嵌めを形成し得る。これは、アクティブ電極を細長導体素子に対して固定する役割を果たし得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、遠位針先は、チャネルの遠位端を閉鎖する導電性リングの遠位端に搭載される先端要素を含み得る。先端要素は誘電材料から作られ得る。先端要素の誘電材料は、放射先端部と標的組織との間のインピーダンス整合を改善するように選択され得る。先端要素の一部は、チャネル内部に突出し、チャネルに対して適所に先端要素を保持し得る。
【0034】
先端要素の遠位端は尖り得る(例えば、鋭くなり得る)。これは、標的組織への遠位針先の挿入を容易にし得る。例えば、これは、膵臓への十二指腸壁または胃壁を通る器具の挿入を容易にし得る。
【0035】
遠位誘電体スリーブは、細長導体素子を受容するための遠位誘電体スリーブを通して形成された孔を有し得る。遠位誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の誘電材料と異なる材料から作られ得る。
【0036】
遠位誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の誘電材料よりも高い剛性を有し得る。高剛性を遠位誘電体スリーブに提供することで、標的組織への遠位針先の挿入を容易にし得る一方、低剛性の近位同軸伝送線を有することで、放射先端部を曲げることを容易にし得る。これは、狭い通路及び曲がりくねった通路を通って器具を誘導することを可能にし得る一方、さらに、器具を標的組織に挿入することを可能にする。例えば、近位同軸伝送線の誘電材料は、可撓誘電材料(例えば、PTFE)から作られ得、遠位誘電体スリーブは、例えば、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはガラス充填PEEKから作られ得る。遠位針先の先端要素は遠位誘電体スリーブと同じ材料から作られ得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、遠位誘電体スリーブはジルコニアを含み得る。発明者は、ジルコニアが遠位針先を組織に挿入するために良好な剛性を提供していることを発見している。さらに、発明者は、ジルコニアを使用して、遠位誘電体スリーブが標的組織との良好なインピーダンス整合を提供し得ることを発見している。
【0038】
いくつかの実施形態では、外部導体の遠位部は遠位誘電体スリーブの近位部に重なり得る。言い換えれば、遠位誘電体スリーブの近位部は、外部導体の遠位部の内部に含まれ得る。これは、遠位針先と近位同軸伝送線との間の接続を強化する役割を果し得る。
【0039】
外部導体の遠位部が遠位針先の近位部と重なる放射先端部の長さは、近位伝送線と遠位針先との間で中間の同軸伝送線を形成し得る。中間の同軸伝送線は、近位同軸伝送線よりも高い誘電率を有し、必要な電気的長さ(半波長)に達しながら、より小さい物理長を可能にし得る。マイクロ波周波数において、遠位針先の遠位部は、中間の同軸伝送線に接続される開口がある装荷モノポールとして働き得る。また、遠位針先は、開口がある同軸モノポールで終端し、焼灼ゾーンをつくっている単一構造と見なされ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、遠位誘電体スリーブは共働部品の対によって形成され得、共働部品のそれぞれ1つは、細長導体を受容するための共働部品の表面に形成された縦溝を有する。遠位誘電体スリーブの係る構造は、放射先端部の組み立てを容易にし得る。共働部品が遠位誘電体スリーブを形成するために組み立てるとき、共働部品の溝は細長導体を受容する孔を形成し得る。接着剤を使用して、共働部品を一緒に固定し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、近位同軸伝送線の外部導体はニチノールから形成され得る。例えば、外部導体はニチノール管から形成され得る。発明者は、ニチノールが十二指腸壁を貫通することが可能である力を伝送するのに十分な縦剛性を示すことを発見している。加えて、ニチノールの可撓性は放射先端部を曲げることを容易にし得、これにより、器具は、狭い曲がっている通路を通って誘導され得る。したがって、ニチノールの外部導体を形成することで、膵臓の腫瘍を治療するために、器具の使用を容易にし得る。
【0042】
導電性外層は外部導体の外面に形成され得、導電性外層はニチノールよりも高い導電性を有する。導電性外層は、放射先端部のマイクロ波エネルギーの損失を減らし、遠位針先へのマイクロ波エネルギー送達の効率性を改善する役割を果たし得る。導電性外層の厚さはニチノールの厚さよりも小さくなり、放射先端部の可撓性に及ぼす導電性外層のいずれかの影響を最小にし得る。
【0043】
放射先端部は、30mm以上、好ましくは40mmの長さを有し得るが、100mmと同じくらいの長さを有し得る。この長さは、膵臓内の全ての位置の治療領域へのアクセスを可能にし得る。放射先端部は1.2mm以下の最大外径を有し得る。これは、治癒の過度の遅延を生じさせないように、器具の挿入によって生じる貫通穴を減らし得るまたは最小にし得る。また、貫通穴のサイズを最小にすることで、開口を治す際の貫通穴の望ましくない状況と、消化管と体腔との間で瘻孔または望まないチャネルを生じさせることとを回避し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、内部導体は可撓性同軸ケーブルの遠位端から延在し得、内部導体は可撓性同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続され、内部導体は可撓性同軸ケーブルの中心導体の直径よりも小さい直径を有する。これは、放射先端部の可撓性を改善し得る。例えば、内部導体の直径は0.25mmであり得る。内部導体の直径は、放射先端部に沿った損失(及び加熱)が導体損失であることを決定する支配的パラメータを考慮し得、支配的パラメータは内部導体の直径の関数になる。他の関連パラメータは、近位同軸伝送線の遠位誘電体スリーブ及び誘電材料の誘電率と、外部導体に使用される直径及び材料である。
【0045】
上記に説明した電気手術器具は、完全な電気手術システムの一部を形成し得る。例えば、本システムは、電気穿孔波形を有するマイクロ波エネルギー及び電磁エネルギーを供給するように構成される、電気手術用発生器と、電気穿孔波形を有するマイクロ波エネルギー及び電磁エネルギーを、電気手術用発生器から受信するために接続される、本発明の電気手術器具とを含み得る。電気手術装置は、さらに、患者の体内に挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)を含み得、可撓性挿入コードは、その長さに沿って伸びる器具チャネルを有し、電気手術器具は器具チャネル内に入るように寸法決定される。
【0046】
用語「外科用スコーピングデバイス」は、本明細書では、侵襲的手技中に、患者の体内に導入される剛性導管または可撓性導管(例えば、操縦可能導管)である挿入管が設けられた、いずれかの外科用デバイスを意味するように使用され得る。挿入管は、器具チャネル及び光チャネル(例えば、光を伝送して、挿入管の遠位端における治療部位を照らす及び/またはその治療部位の画像をキャプチャするためのチャネル)を含み得る。器具チャネルは、侵襲的外科用具を受容するのに適切な直径を有し得る。器具チャネルの直径は5mm以下であり得る。本発明の複数の実施形態では、外科用スコーピングデバイスは超音波対応内視鏡であり得る。
【0047】
本明細書では、用語「内側」は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(例えば、軸)に対して半径方向により近いことを意味する。用語「外側」は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から半径方向にさらに遠いことを意味する。
【0048】
用語「導電性の(conductive)」は、本明細書では、文脈上で他に規定がない限り、電気的に導電していることを意味するように使用される。
【0049】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、細長プローブの端を指す。使用中、近位端は、RF及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するために発生器のより近くにある一方、遠位端は発生器からさらに遠くにある。
【0050】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すために広範囲に使用され得るが、1GHz~60GHzの範囲が好ましい。マイクロ波EMエネルギーに関する好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzを含む。5.8GHzが好まれ得る。本デバイスは、これらのマイクロ波周波数の2つ以上の周波数においてエネルギーを送達し得る。
【0051】
用語「無線周波数」または「RF」は、300kHz~400MHzの周波数を示すために使用され得る。用語「低周波」または「LF」は、30kHz~300kHzの範囲の周波数を意味し得る。
【0052】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の実施形態である組織焼灼のための電気手術システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態による、電気手術器具の概略的な断面側面図である。
図3図2の電気手術器具の遠位端の概略的な断面側面図である。
図4】本発明の実施形態で使用され得るアクティブ電極の概略図を示す。
図5】本発明の実施形態で使用され得る先端要素の概略図を示す。
図6】本発明の実施形態で使用され得る遠位誘電体スリーブの一部の概略図を示す。
図7図2の電気手術器具の第1の実施例に関する反射減衰量のシミュレーションのグラフを示す。
図8図2の電気手術器具の第1の実施例に関するシミュレーションされたマイクロ波放射プロファイルを示す。
図9】本発明で使用できる別の先端要素の概略斜視図である。
図10図9の先端要素を含む器具の遠位先端部の断面図である。
図11図2の電気手術器具の第2の実施例に関する反射減衰量のシミュレーションのグラフを示す。
図12図2の電気手術器具の第2の実施例に関するシミュレーションされたマイクロ波放射プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、侵襲性電気手術器具の遠位端にマイクロ波エネルギー及び電気穿孔法のためのエネルギーを供給することが可能である、電気手術システム100の概略図である。システム100は、マイクロ波エネルギー及び電気穿孔法のためのエネルギーを制御可能に供給するための発生器102を備える。電気穿孔法のためのエネルギーは、無線周波数(RF)または低周波数(LF)のバンドにおけるパルスエネルギーまたは正弦波エネルギー(例えば、連続波、電磁波)を含み得る。
【0055】
この目的のために適切な発生器は、WO2012/076844(本明細書に参照によって組み込まれる)で説明される。発生器は、送達のために適切な電力レベルを決定するために、器具から戻されるように受信された反射信号を監視するように構成され得る。例えば、発生器は、最適な送達電力レベルを決定するために、器具の遠位端において確認されるインピーダンスを計算するように構成され得る。
【0056】
発生器102は、境界面ケーブル104によって境界面ジョイント106に接続される。示される例では、境界面ジョイント106は、また、流体流動ライン107を介して、シリンジ等の流体送達デバイス108に接続される。いくつかの実施例では、本装置は、加えてまたは代替として、流体を治療部位から吸引するように構成され得る。このシナリオでは、流体流動ライン107は、境界面ジョイント106から離れるように、適切なコレクタ(図示しない)に流体を搬送し得る。吸引機構は、流体流動ライン107の近位端に接続され得る。
【0057】
必要に応じて、境界面ジョイント106は、例えば、1つ以上の制御線またはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後)の移動を制御するために、トリガを摺動させることによって動作可能な器具制御機構を収容できる。複数の制御線がある場合、完全な制御を提供するために、境界面ジョイントに複数の摺動トリガがあり得る。境界面ジョイント106の機能は、発生器102、流体送達デバイス108、及び器具制御機構からの入力を、境界面ジョイント106の遠位端から延在する単一の可撓シャフト112に結合することである。
【0058】
可撓シャフト112は、外科用スコーピングデバイス114の器具(ワーキング)チャネルの全長を通して挿入可能であり、本発明の複数の実施形態では、外科用スコーピングデバイス114は、超音波内視鏡検査デバイスを備え得る。
【0059】
外科用スコーピングデバイス114は、器具コード120が延在するいくつかの流入ポート及び流出ポートを有する、本体116を含む。器具コード120は複数の管腔を囲む外側ジャケットを含む。複数の管腔は、様々なものを本体116から器具コード120の遠位端に搬送する。複数の管腔の1つは可撓シャフト112を受容するための器具チャネルである。他の管腔は、例えば、遠位端に照明を提供するために、または遠位端から画像を集めるために光学的放射線を搬送するためのチャネルと、超音波信号を搬送するための超音波信号チャネルとを含み得る。本体116は、遠位端を見るためのアイピース122を含み得る。
【0060】
超音波内視鏡検査デバイスは、一般的に、超音波信号チャネルの出口開口を越えて、器具コードの遠位先端に超音波振動子を含む。超音波振動子からの信号は、適切なケーブル126によって、器具コードに沿って後部に、既知の方式で画像を生成できるプロセッサ124に搬送され得る。器具チャネルは、器具コードの内部に成形され、器具チャネルから出る器具を超音波システムの視界を通るように指向し、標的部位における器具の位置についての情報を提供し得る。
【0061】
可撓シャフト112は、外科用スコーピングデバイス114の器具チャネルを通過し、器具コードの遠位端において(例えば、患者の体内に)突出するように成形される遠位アセンブリ118(図1では縮尺通りに描かれていない)を有する。
【0062】
下記に説明される遠位アセンブリ118の構造は、特に、超音波内視鏡検査(EUS)デバイスとともに使用するために設計され得、それによって、遠位端アセンブリ118の最大外径は、2.0mm以下、例えば、1.9mm未満(より好ましくは、1.5mm未満)であり、可撓シャフト112の長さは1.2m以上であり得る。
【0063】
本体116は、可撓シャフト112に接続するための電源入力ポート128を含む。下記に説明されるように、可撓シャフト112の近位部は、マイクロ波エネルギー及び電気穿孔エネルギーを発生器102から遠位アセンブリ118に搬送することが可能である、従来の同軸ケーブルを備え得る。
【0064】
上記に説明したように、少なくとも、器具コード120の遠位端の位置を制御することが可能であることが望ましい。本体116は、器具コード120を通って延在する1つ以上の制御線(図示しない)によって、器具コード120の遠位端に機械的に結合される制御アクチュエータを含み得る。制御線は、器具チャネルの内部または制御線自体の専用チャネルの内部を進み得る。制御アクチュエータは、レバーもしくは回転可能ノブ、または他のいずれかの既知のカテーテル操作デバイスであり得る。器具コード120の操作は、例えば、コンピュータ断層(CT)画像から組み立てられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェアに支援され得る。
【0065】
本発明の実施形態に従った電気手術器具200は図2及び図3に示される。図2は、電気手術器具200(例えば、図1の遠位アセンブリ118に対応する器具)の遠位端の概略的な断面側面図を示す。図3は、電気手術器具200の遠位端の拡大した概略的な断面側面図を示す。
【0066】
電気手術器具200は、可撓性同軸ケーブル202と、同軸ケーブル202の遠位端に搭載される放射先端部204とを含む。同軸ケーブル202は、外科用スコーピングデバイスの器具チャネルを通って進むのに適切な従来の可撓性の50Ω同軸ケーブルであり得る。同軸ケーブルは、誘電材料210によって分離される中心導体206及び外部導体208を含む。同軸ケーブル202は近位端において(例えば、発生器102に)接続可能であり、マイクロ波エネルギー及び/または電気穿孔エネルギーを受信する。
【0067】
放射先端部204は、近位同軸伝送線212と、近位同軸伝送線212の遠位端に搭載される遠位針先214とを含む。近位同軸伝送線212は、同軸ケーブル202の遠位端において、同軸ケーブル202の中心導体206に電気的に接続される内部導体216を含む。内部導体216は、中心導体206よりもより小さい外径を有し、高導電性を有する材料(例えば、銀)から作られている。
【0068】
内部導体216は、その近位部に沿って、近位誘電体スリーブ218によって囲まれる。近位誘電体スリーブは、可撓性絶縁材料(例えば、PTFE等)から作られ得る。遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216の遠位部にわたって、放射先端部214を形成するために搭載される。遠位誘電体スリーブ220は、近位誘電体スリーブ218よりも高い剛性を有する硬質絶縁材料から形成される。例えば、遠位誘電体スリーブ220はジルコニアから作られ得る。
【0069】
近位同軸伝送線212は、近位誘電体スリーブ218の周りに搭載される外部導体222によって完全になる。外部導体222は導体材料の可撓管によって形成される。管は、生物組織(例えば、十二指腸壁)を貫通することが可能である力を伝送するのに十分な長手方向の剛性を有するように構成され、同時に、器具が外科用スコーピングデバイスの器具チャネルを通って進むことを可能にする適切な短手方向の可撓性も示す。発明者は、ニチノールが特に外部導体222に適切な材料であることを発見している。ニチノール管は、近位同軸伝送線212に沿って伝送損失を減らすために、例えば、ニチノール管の内面に導電性コーティングを含み得る。このコーティングは、ニチノールよりも高い導電性を有する材料(例えば、銀等)によって形成され得る。
【0070】
外部導体222は、近位同軸伝送線212の遠位部を形成するために、遠位誘電体スリーブ220の近位部に重なる。重なり領域は中間の同軸伝送線と見なされ得る。遠位誘電体スリーブ220が近位誘電体スリーブ218よりも高い誘電率を有するため、外部導体222と遠位誘電体スリーブ220との重なり領域は、所望の電気的長さを維持しながら、放射先端部212の物理長を減らすことを可能にする。外部導体222と遠位誘電体スリーブ220との重なりの長さ及び遠位誘電体スリーブ及び近位誘電体スリーブの誘電材料は、放射先端部212の所望の電気的長さを取得するように選択され得る。
【0071】
遠位針先214は、内部導体216の遠位端に搭載されるアクティブ電極224を含む。アクティブ電極は導体材料(例えば、黄銅)の円筒部であり、円筒部を通って延在する中央チャネル226を有する。アクティブ電極は図4により詳細に示され、図4は、(a)電極の斜視図と、(b)電極の断面側面図とを示す。内部導体216の遠位端はチャネル226の内側に突出し、内部導体216の遠位端は(例えば、はんだ付け接続もしくは溶接接続によって、または導電接着剤を用いて)アクティブ電極224に電気的に接続される。アクティブ電極の外径が遠位誘電体スリーブ220の外径に実質的に一致することにより、遠位針先214は滑らかな表面を有する。
【0072】
尖った先端要素228はアクティブ電極224の遠位面に搭載され、標的組織への器具の挿入を容易にする。先端要素228は、好ましくは、遠位誘電体スリーブ220と同じ材料(例えば、ジルコニア)から作られる。先端要素228は図5により詳細に示され、図5は、(a)先端要素の側面図、(b)先端要素の斜視図、及び(c)先端要素の背面図を示す。先端要素228の寸法の例は図5(a)及び図5(c)に示される。先端要素228は、その近位側から延在する突起232を有する円錐本体230を有する。突起232は、アクティブ電極224のチャネル226の内側に適合するように成形され、先端要素228を適所に保持する。先端要素228は、例えば、接着剤を使用して、アクティブ電極224に固定され得る。
【0073】
近位誘電体スリーブ218及び遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216上を摺動する管として形成され得る。一実施形態では、遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216の周りに搭載される共働部品の対から成り得る。図6は、遠位誘電体スリーブ220を形成するために使用され得る部分700の例を示す。図6は、(a)部分の側面図、(b)部分の斜視図、及び(c)部分の前面図を示す。部分700の寸法の例は図6(a)及び図6(c)に示される。部分700は、その長さに沿って延在する縦溝702を有する剛性誘電材料(例えば、ジルコニア)の半円筒部である。部分700の対は、遠位誘電体スリーブ220を形成するために一緒に組み立てられ得、これにより、部分700のそれぞれの溝702は、内部導体216を受容するチャネルを一緒に形成する。例えば、接着剤を使用して、2つの部分700を一緒に固定し得る。遠位誘電体スリーブ220の係る構造は、放射先端部212の組み立てを容易にし得る。また、共働部品の対を含む同様の構造は、近位誘電体スリーブ218のために使用され得る。
【0074】
放射先端部212は、カラー236によって同軸ケーブル202の遠位端に固定される。カラー236は、半径方向の圧着部として働き、放射先端部212を適所に固定し得る。また、カラー236は、同軸ケーブル202の外部導体208を近位同軸伝送線212の外部導体218に電気的に接続するように配置される。したがって、カラー236は導体材料(例えば、黄銅等)から形成される。
【0075】
図9及び図10は、遠位先端の代替配列を示す。この配列では、尖った先端要素及びカラーは単一の先端要素250で組み合わされる。先端要素250は例えば円錐形を有する尖った遠位先端252を含み、遠位先端252は、内部導体216の遠位部を受容するための孔256(近位円筒部254の中にある)を有する近位円筒部254が形成される。先端要素250は一体成形の導体材料(銀等)から製作され得る。
【0076】
使用中に、マイクロ波エネルギー及び電気穿孔波形を有するエネルギーは、同軸ケーブル202から放射先端部に搬送され得る。同軸ケーブル202から受信されたエネルギーは、近位同軸伝送線212に沿って、遠位針先214に伝送され得、そのエネルギーは標的組織に送達され得る。
【0077】
マイクロ波エネルギーにおいて、遠位針先214は、標的組織へのマイクロ波エネルギーを送達するための半波長変成器として機能するように構成される。言い換えれば、遠位針先214の電気的長さは、マイクロ波エネルギーの波長の半分に対応し得る。このように、マイクロ波エネルギーは、標的組織を焼灼するために、標的組織に効率的に送達され得る。
【0078】
マイクロ波エネルギーは、マイクロ波焼灼中に、放射先端部212の加熱を最小にするために、パルスで送達され得る。発明者は、下記に記載されるエネルギー送達サイクルが、放射先端部212の加熱を最小にしながら、マイクロ波エネルギーの効率的な送達を可能にし得ることを発見しているが、他のエネルギー送達サイクルも可能である。
●10msのマイクロ波エネルギーの送達後に、90msオフになる(すなわち、マイクロ波エネルギーの送達がなくなる)、
●10msのマイクロ波エネルギーの送達後に、50msオフになる、
●10msのマイクロ波エネルギーの送達後に、30msオフになる、
●100msのマイクロ波エネルギーの送達後に、900msオフになる、
●100msのマイクロ波エネルギーの送達後に、500msオフになる、
●100msのマイクロ波エネルギーの送達後に、300msオフになる。
【0079】
電気穿孔エネルギーは放射先端部に搬送するとき、電場は、アクティブ電極224と外部導体222の遠位部238(遠位端)との間で設定され得る。このように、外部導体222(露出し得る)の最遠位縁または端の終端は、電気穿孔エネルギーのためのリターン電極として挙動し得る。電場は、遠位針先214の周りに位置する組織の電気穿孔(例えば、不可逆電気穿孔)を生じさせ得る。アクティブ電極224が器具の長手軸を中心に実質的に対称的に配置されるとき、電気穿孔波形によって生じる電場は軸方向に対称であり得る。他の実施例では、治療領域は、例えば、アクティブ電極の適切な構成により非対称であり得る。
【0080】
電気手術器具200は、同軸ケーブルに沿って搬送されるマイクロ波エネルギー及び電気穿孔エネルギーを生物組織に送達するための焼灼デバイスとして使用するように構成される。電気手術器具200は、具体的には、治療部位への外科用スコーピングデバイス(例えば、超音波内視鏡検査(EUS)装置)の器具チャネルを通る挿入のために適切であるように設計される。治療部位は膵臓であり得、それによって、外科用スコーピングデバイスの器具コードが十二指腸に挿入されると、電気手術器具200は治療のために膵臓内に向かって十二指腸壁を貫通して延在する。
【0081】
電気手術器具は、これに関連する使用のために電気手術器具を適切にするいくつかの特性を有し得る。器具の放射先端部212は、望ましくは、40mm以上の長さを有し、その最大外径は1.2mmである。これは、治癒を容易にするために、針が膵臓内に位置する腫瘍に達するのに十分に長いことを確実にでき、貫通穴があまりに大きくないことを確実にできる。
【0082】
図2は、電気手術器具200の寸法の例を示す。第1の実施例では、近位誘電体スリーブ218の長さに対応する符号240によって示される寸法は37.0mmであり得る。外部導体222と遠位誘電体スリーブ220との重なりの長さに対応する符号242によって示される寸法は4.70mmであり得る。外部導体222の遠位端からアクティブ電極224の遠位端までの距離に対応する符号244によって示される寸法は3.00mmであり得る。図9に示される先端要素を使用する第2の実施例では、寸法240は37.0mmであり、寸法242は8.30mmであり、寸法244は5.00mmである。
【0083】
CST Microwave Studioは、上記に説明した電気手術器具200を設計及びシミュレートするために使用された。図7及び図11は、上記に説明した電気手術器具200の第1の実施例及び第2の実施例のマイクロ波エネルギーの周波数に対するSパラメータ(「反射減衰量」としても知られている)のシミュレーションのグラフを示す。当技術分野でよく知られているように、Sパラメータはインピーダンス不整合によるマイクロ波エネルギーの反射減衰量の評価基準であり、したがって、Sパラメータは標的組織と放射先端部とのインピーダンス不整合の程度を示す。Sパラメータは方程式P=SPによって定義でき、Pが組織に向かう器具の送信電力であり、Pは組織から反射される電力であり、SはSパラメータである。図7に示すように、Sパラメータは5.8GHzにおいて-21.9dBであり、非常に小さいマイクロ波エネルギーがこの周波数で組織から反射されたことを意味する(これは、反射されるエネルギーの約0.645%に一致する)。これは、5.8GHzの動作周波数におけるインピーダンス整合が良好であることと、マイクロ波エネルギーがこの周波数で放射先端部から組織に効率的に送達されることとを示す。図11では、Sパラメータは5.8GHzにおいて-14.6dBである。
【0084】
図8及び図12は、上記に説明した電気手術器具200の第1の実施例及び第2の実施例の周囲組織の計算されたマイクロ波放射プロファイルを示す。放射プロファイルは、有限要素解析を使用して、5.8GHzのEMエネルギー周波数について予測されたものである。予測では、マイクロ波エネルギーが遠位針先214の周りに放射され、器具によって生成される焼灼プロファイルの形状の表示を生じさせることが示される。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12