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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】塑性加工材料の塑性加工方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240314BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20240314BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240314BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240314BHJP
   C01G 39/06 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B32B9/00
C01B32/198
B82Y30/00
B82Y40/00
C01G39/06
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022001789
(22)【出願日】2022-01-07
(65)【公開番号】P2022107536
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】202110028933.1
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517312490
【氏名又は名称】ヂェァジァン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.866,Yuhangtang Road,Xihu District,Hangzhou, Zhejiang China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】シュ ヂェン
(72)【発明者】
【氏名】グゥォ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー ゼェァシン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111003703(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266739(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110803930(CN,A)
【文献】特表2018-524257(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110937599(CN,A)
【文献】特表2017-512747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
C01B 32/00-32/991
C01G 25/00-47/00、49/10-99/00
B82Y 30/00、40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性加工材料の塑性加工方法であって、
二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料に対して鍛造、圧延、押圧、引き抜き、深絞り、曲げ、せん断またはインプリントを行う塑性加工方法であり、
前記塑性加工材料は
少なくとも本体層と前記本体層間に位置する活性化層とを含み、
前記本体層は、少なくとも、平面に沿って配置された二次元シート状材料を含み、
前記活性化層は流動性を有する活性化媒体で構成され、
前記活性化媒体と前記二次元シート状材料との接触角は80°未満であり、
前記二次元シート状材料の質量は全質量の50%以上を占め、
前記本体層は、前記二次元シート状材料を厚さ方向に1~50層含み、
前記活性化層の厚さが5nm以下であり、
前記二次元シート状材料は、酸化グラフェン、二硫化モリブデンまたは還元型酸化グラフェンである、
ことを特徴とする塑性加工材料の塑性加工方法
【請求項2】
前記活性化媒体は、エタノール、グリセリン、酢酸、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル及びポリエチレンオキシドの一種又は二種以上を含む活性化分子によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工材料の塑性加工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塑性加工材料分野に属し、具体的には二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
塑性加工は強力な経済的動力を有する効率的な加工方法であり、現在標準的な工業技術となり、金属鍛造分野及びポリマー加工成形分野の幅広い分野にわたる。典型的な塑性成形(例えば、鍛造、圧延、インプリントなど)は、材料を固定形状の部品に成形するために、基本的に一定の塑性変形能力を必要とする。金属及びポリマーの両方において、塑性変形能力は、金属における粒界すべり(grain boundary sliding)又は転位すべり(dislocation glide)、およびポリマー中の鎖の熱活性化運動によって保証され得る。
【0003】
二次元シート状材料は単層又は複数層の原子又は分子で構成され、層内は強い共有結合又はイオン結合で接続され、層間は弱いファンデルワールス力で接続される。これらは独特な平面二次元構造により優れた力学、電気学及び熱学などの特性を有する。現在、二次元シート状材料は主にグラフェン(GN)、トポロジー絶縁体(TI)、遷移金属硫黄系化合物(TMDCs)、黒リン(BP)などを含む。二次元材料は、その独特なマイクロナノ物理化学的特性から、常に多くの分野で注目されており、これは優れた性能のマクロ材料を製造するための基礎を提供する。しかし、二次元シート間の相互作用は、加工性を制限する。
【0004】
二次元材料は、塑性変形の基本的な要件を満たさない固有の脆性を示す。研究者はポリマーと二次元材料とを混合して「ゴム粘土」状固体を製造した。当該「ゴム粘土」は極めて高い可塑性を有し、任意の形状に加工することができる。しかしながら、このような複合材料内には二次元ナノシートの含有量が非常に低く、通常は10%未満であり、二次元ナノシートはランダムに配向され、得られたマクロ複合材料は典型的な二次元材料マイクロナノ物理化学的特徴、例えば導電性、熱伝導特性などを欠く。立体的微細構造を有する二次元マクロ組立材料を高効率で高精度に製造することは、今後の大きな課題である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様として、光熱変換、電気熱変換、エネルギー貯蔵、触媒、半導体デバイス等の分野における金属、プラスチックを含む塑性加工材料の既存の応用に関する欠点を解決するために、二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料を提供する。
【0006】
本発明の別の態様として、二次元シート状材料を主体とした塑性加工材料を提供し、二次元シート状材料の質量が全質量の50%以上を占め、二次元ナノシートが平面に沿って配向し、得られたマクロ複合材料は二次元シート状材料の優れた物理化学的特徴(導電性、熱伝導特性など)を有する。
【0007】
本発明の別の態様として、最小加工精度が60nm、最大延伸率が100%、最大スタンピング深さ比(スタンピング深さ/複合膜厚さ)が1000%である二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料を提供する。当該材料は本体層-活性化層の交差相互侵入(交互)の層状構造を有し、そのうち、本体層は少なくとも平面に沿って配置された二次元シート状材料を含み、前記活性化層は活性化媒体で構成され、活性化媒体は特定の温度範囲で流動可能であり、前記活性化媒体と二次元シート状材料との接触角は80°未満である。そのうち、活性化層を挿入することは本体層の層間隔を広くすることができ(例えば、酸化グラフェン本体層に対し、層間隔は0.8nmから最大3nmまで広くなる)、平面間のファンデルワールス力の計算式によると以下の通りである。
【数1】
【0008】
層間距離が広がることは層間ファンデルワールス力のべき乗則減衰をもたらし、それにより本体層全体の相対運動を促進し、二次元シート状材料を主体とする材料に塑性加工の可能性をもたらす。
【0009】
いくつかの実施例では、本体層は、厚さ方向に、二次元シート状材料を1~50層含む。本体層の厚さが増すと活性化層の可塑化作用が低下し、マクロ材料は、加工精度及び再現性を確保する十分な可塑性を備えない。したがって、本体層の厚さ方向の層数は30層未満であることが好ましい。一方、本体層の厚さが増すに伴って曲げ剛性も増加し、複合材料の曲げ弾性率は急速に増加し、曲げひずみの存在下で、塑性変形から弾性変形へと徐々に変換する。
【0010】
いくつかの実施例では、活性化層の厚さは5nm以下、好ましくは3.3nm以下であり、活性化層の厚さが増すとマクロ材料全体の塑性が向上したが、同時に二次元シート状材料の質量割合が低下し、二次元ナノシートの平面に沿った配向性が悪くなり、二次元シート状材料の本来の優れた物理化学的特徴(導電性、熱伝導特性など)が次第に失われた。一方、活性化層の厚さが増すにつれて、本体層間の摩擦力は、先ず増加し、その後、緩やかに減衰し、安定化する傾向にある。活性化層が特定の範囲の厚さ(5nmより小さい)のとき、本体層間のすべり摩擦力が十分に大きくなることを実現できる。すべり摩擦力が十分に大きいことは、複合材料内部で外力を効果的に伝達することを実現でき、材料を塑性加工、例えば鍛造、圧延、押圧、引き抜き、深絞り、曲げ、せん断、インプリントに使用し、このような複雑に変形する状況で、安定した塑性変形が発生する。鍛造、圧延、押圧、引き抜き、深絞り、曲げ、せん断、インプリントなどの複雑に変形する状況では、材料に十分な機械的ロバスト性が要求される。つまり、靭性と強度(引張強度、圧縮強度、曲げ強度、せん断強度、ねじり強度を含む)とを兼ね備えている必要がある。
【0011】
上記活性化媒体が特定の温度範囲で流動可能であるとは、以下のことを意味する。
任意の温度条件下で流動性を有する活性化媒体であれば、室温で流動性を有するものも、加熱条件下で流動性を有するものも、いずれも本発明に適用可能であり、特定の温度で塑性加工を行えればよい。
【0012】
本出願の別の態様は、上記塑性加工材料の塑性加工への応用を提供することである。塑性加工への応用は、鍛造、圧延、インプリントを含むが、これらに限定されない。
本出願の別の態様は、塑性加工材料の塑性加工方法であって、二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料に対して鍛造、圧延、押圧、引き抜き、深絞り、曲げ、せん断またはインプリントを行う塑性加工方法であり、前記塑性加工材料は、少なくとも本体層と前記本体層の間に位置する活性化層とを含み、前記本体層は、少なくとも、平面に沿って配置された二次元シート状材料を含み、前記活性化層は流動性を有する活性化媒体で構成され、前記活性化媒体と前記二次元シート状材料との接触角は80°未満であり、前記二次元シート状材料の質量は全質量の50%以上を占め、前記本体層は、前記二次元シート状材料を厚さ方向に1~50層含み、前記活性化層の厚さが5nm以下であり、前記二次元シート状材料は、酸化グラフェン、二硫化モリブデンまたは還元型酸化グラフェンである。
前記活性化媒体は、エタノール、グリセリン、酢酸、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル及びポリエチレンオキシドの一種又は二種以上を含む活性化分子によって形成されていることが好ましい。
【0013】
本願の別の態様は、上記塑性加工材料の製造方法を提供し、当該方法は以下の通りである。
二次元シート状材料分散液を活性化分子と混合し、せん断場の作用下でナイフコーティング法により膜を形成し、乾燥した後、活性化分子は流動性を有する活性化媒体を形成し、それにより本体層-活性化層の相互浸入の層状複合材料を得る。
【0014】
本出願において、二次元シート状材料の濃度、活性化分子との比率、及びせん断場の大きさはいずれも本出願の塑性加工材料の各パラメータに影響を与える。一般的に、二次元シート状材料の含有量が低いほど、活性化分子に対する比率が小さく、一つの本体層に含まれるシート数が少ないほど、塑性加工性が高い。二次元シート状材料の含有量が高いほど、活性化分子に対する比率が大きく、一つの本体層に含まれるシート数が多いほど、加工後も、マクロ材料は二次元シート状材料が本来有する多くの物理的および化学的特性を維持している。当業者は、対応する性能の塑性加工材料を得るために、上述の傾向に従ってパラメータを変更可能である。
【0015】
本願において、二次元シート状材料と混合する活性化分子は活性化媒体を形成し、当該活性化媒体は以下を満たしている。
二次元シート状材料との接触角は80°未満である。
したがって、異なる主体材料に対して、対応する活性化媒体を選択する必要がある。本願に適用される本体層の二次元シート層材料及びそれに付随する活性化媒体は、少なくとも次の表のものを含む。
【表1】
【0016】
本願において、せん断場は本体層と活性化層の配向及び分布に影響を与え、一般的に、同じ材料配合比で、せん断場が大きいほど、本体層と活性化層の配向が規則的で、厚さが均一で、二次元ナノシート/活性化分子が交互に積層する層状構造が形成される。一般的にはスピンコーティング、ナイフコーティング、遠心などの手段を含む。
【0017】
高含有量の二次元材料複合膜の塑性加工方法であって、当該方法は以下の通りである。
【0018】
本発明の提供する塑性加工材料は、二次元シート状材料をz主体とし、層間に活性化層が挿入され、塑性加工の特性と二次元材料の特性とを兼ね備え、以下の有益な効果を有する。
高速せん断場の作用下で二次元ナノシート-可塑剤分子層が積層するように組み立てられた複合膜(図1)を形成し、そのうち二次元ナノシートの含有量は50%を超え、且つ本体層の厚さは50層未満である。このような二次元ナノシート/活性化分子の交互積層の層状構造は層内の二次元シートの自由運動能力を高め、複合膜のマクロ及びミクロ塑性変形に有利である。
我々は初めて準固体二次元材料の直接塑性成形を実現した。この技術により、金属や高分子材料と同じように二次元材料を加工することができる。異なるテンプレートを使用することによって、紙折り、エンボス加工及び周期的配列を含み、豊富な微細構造を有する二次元材料のマクロ組立体は、容易に作製され、200μm~390nmの多重スケールで高解像度を示した。現在主流の溶液加工に比べ、二次元材料の塑性成形技術はより良好な加工精度、構造的特徴の優れた制御性及びより高い効率を有する。
二次元ナノシート/可塑剤分子層で積層するように組み立てられた複合膜の塑性加工は等材製造技術であり、その加工精度が高く(最大60nm)、速度が速く、環境が温和であり、広範な二次元材料(例えば二硫化モリブデン、MXene)体系において実行可能性を有する。
塑性加工後に得られたマクロ組立材料は元の二次元材料の電気的、光学的、力学的等の特性を維持し、且つ内部ナノシート層の配向が規則的で、制御しやすく、表面微細構造の設計はマクロ組立材料の光熱変換、湿度応答、親水性及び疎水性等の性能を効果的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、二次元ナノシート本体層-活性化層分子の交互積層の層構造である。
図2図2は、酸化グラフェン-グリセリン相互侵入層状複合膜のXRD(αは、酸化グラフェンに対するグリセリンの質量比を表す)である。
図3図3は、実施例1における酸化グラフェン-グリセリン相互侵入層状複合膜の塑性加工能力と活性化層の厚さとの関係である。
図4図4は、実施例1で得られたナノピラー構造の走査型電子顕微鏡画像である。
図5図5は、インプリント前後の酸化グラフェン膜の接触角変化である。
図6図6は、実施例2で得られた異なる厚さの活性化層を有する酸化グラフェン/PVA複合膜の異なる温度での力学特性である。
図7図7は、実施例2で得られた表面周期構造を有する酸化グラフェン/PVA複合膜である。(a)使用した金属テンプレートのSEM画像。(b)インプリント後の酸化グラフェン/PVA複合膜表面の立体周期構造のSEM画像。(c)インプリント後の酸化グラフェン/PVA複合膜表面の立体周期構造の白光回折画像。
図8図8は、実施例3で得られた表面周期構造を有する純粋な二硫化モリブデン膜である。
図9図9は、活性化層の厚さと摩擦力との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下実施例と合わせて本発明をさらに説明する。但し、本発明の保護範囲は、これに限定されない。
【0021】
実施例1
8mg/mlの酸化グラフェンの懸濁液(ハンヂョウ ガオシー テクノロジー カンパニー リミテッドから購入し、サイズが2~30μmであり、炭素:酸素の比が1.5:2.2)を異なる濃度のグリセリン溶液と混合して泡を除去し、グリセリン含有量と酸化グラフェン含有量との比(α)(酸化グラフェン含有量に対するグリセリン含有量)がそれぞれ0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8及び1である七種類のスラリーを準備した。一定の速度200cm/minでブレードコーティングによって膜を形成し、厚さ約30μmの酸化グラフェン/グリセリン複合膜を作製した。XRD測定により、得られた複合膜ではピークがあり、それが均一に分布する交互層状構造を有することを示し、複合膜の層間距離は、グリセリンと酸化グラフェンとの質量比(酸化グラフェンに対するグリセリンの質量比)と線形関係にあり、活性化層の厚さは、0.8nmから3.3nmまで変化している(図2)。図2のXRDパターンから分かるように、グリセリンの質量比が増加するにつれて、(002)ピークの位置が徐々に小さくなる。これは活性化層の厚さ(本体層の層間距離)が徐々に増加し、膜全体の可塑性も徐々に高くなることを示している。一方、グリセリンの質量比が高くなるにつれて、(002)ピークの半価幅は徐々に広くなり、これは二次元酸化グラフェンシート/グリセリン分子が交互に積層された層状構造の規則性が徐々に低下すること、すなわち材料全体の配向が悪くなることを示している。
【0022】
図3に示す、酸化グラフェン-グリセリン相互侵入(交互)層状複合膜の塑性加工性と活性化層の厚さとの関係図から分かるように、活性化層の厚さが増す(αが徐々に大きくなる)に伴い、複合膜全体の塑性加工性が向上する、具体的には塑性引張変形歪みが向上する。
【0023】
酸化グラフェン/グリセリン複合膜をAAO(直径13mm、孔径390nm)テンプレートに置き、プレス機でインプリントした。圧力は50MPaであり、温度は室温であった。AAO/酸化グラフェン/グリセリン複合膜サンプルを10%のリン酸溶液に浸漬し、60℃で10時間加熱し、AAOテンプレートを除去し、最終的にナノ柱状表面構造を有する酸化グラフェン/グリセリン複合膜を得た。(図4)走査電子顕微鏡で観察すると、複合膜は層状構造を有し、表面には、400nm程度の中実のナノピラーが観察され、ナノピラーの高さは、インプリント時間と圧力を調節することにより、400nm-3μmの間で自由に調節することができる。
【0024】
得られた表面ナノピラー構造を有する膜をスライドガラスに貼り付け、水相接触角試験を行い、接触角が<65°(65°未満)であり、良好な親水性を有した。インプリントされていない酸化グラフェン/グリセリン複合膜は、試験の結果、接触角が>90°(90°超え)であり、親水性を有さなかった(図5)。
【0025】
上記で得られたナノ柱状表面構造を有する酸化グラフェン/グリセリン複合膜を1600°Cで熱還元処理することにより、グリセリン活性化層を除去し、最終的に還元型酸化グラフェンナノピラーアレイを得た。当該アレイ(配列)における単一ピラーの導電率は約10000S/mであり、グラフェン誘導体の高伝導性を十分に保持する。
【0026】
実施例2
10mg/mlの酸化グラフェンの懸濁液(GO、ハンヂョウ ガオシー テクノロジー カンパニー リミテッドから購入したものであり、サイズが2~30μmであり、炭素酸素比(C/O)が2.14)を1%のPVA溶液と混合して泡を除去し、PVA含有量と酸化グラフェン含有量との比(α)(酸化グラフェン含有量に対するPVA含有量)が0、0.5及び1の三種類のスラリーを準備した。一定の速度500cm/minでブレードコーティングによって膜を形成し、厚さ約15μmの酸化グラフェン/PVA複合膜を作製した。αが0~1の範囲にある場合、層間距離は0.8nmから3.3nmまで変化する。図6に示す、異なる温度における、活性化層の厚さが異なる酸化グラフェン/PVA複合膜の力学特性に、室温では、高分子PVA活性化層の厚さが厚くなる(αが徐々に大きくなる)ことに伴い、複合膜全体の塑性加工性が向上していること、具体的には、塑性引張変形歪みの向上とヤング率の低下が示されている。PVAの転移温度よりも高い95°Cまで温度を上げると、複合膜全体の塑性加工性はさらに向上する。PVA活性化層の厚さが3.3nmのとき、95℃における複合膜の伸び率は1.5%から6%に増加し、同時にヤング率は8GPaから3GPaに低下する。注目すべきは、層間距離0.8nmの複合膜は純粋な酸化グラフェン膜であり、温度に起因する可塑化特性を示しておらず、これは、純粋な酸化グラフェン膜が本体層/活性化層が交互に積層された特徴的な層状構造を有さないためであり、さらに、少なくとも本体層と本体層の層間に活性化層とを有することを特徴とする二次元シート状材料を主体とする塑性加工材料であることが確認された。
【0027】
酸化グラフェン/PVA複合膜を金属(孔径43μm)テンプレートに置き、プレス機でインプリントした。圧力は100MPaであり、温度は95℃である。金属テンプレートを酸化グラフェン/PVA複合膜から離し、最終的に表面周期構造を有する酸化グラフェン/PVA複合膜を得た。(図7)走査型電子顕微鏡で観測したところ、複合膜の表面に周期的な立体構造が観察され、高さは約50μmであった。上記で得られた周期的な立体構造を有する酸化グラフェン/PVP複合膜を1600℃の熱還元処理することによってPVP活性化層を除去し、最終的に表面立体パターンを有する還元型酸化グラフェン膜を得た。当該還元型酸化グラフェン膜の電気伝導率は約300000S/mであり、熱伝導率は約100W/mKであり、グラフェン誘導体の高導電性と高熱伝導性を十分に保持している。
【0028】
実施例3
1mg/mlの二硫化モリブデン懸濁液を減圧下で吸引濾過し、膜を形成し、約5μmの厚さの二硫化モリブデンフィルムを得た。得られた二硫化モリブデンフィルムをエタノール溶液に入れ、5分間浸漬し、複合膜を金属テンプレートに置き、ホットプレス機でインプリントを行った。50MPaの圧力、60℃の温度で、4時間行った。離型後、最終的に表面立体構造を有する二硫化モリブデン膜を得た。(図8)走査型電子顕微鏡で観察すると、複合膜は層状構造を有し、表面に幅50μm、長さ100μmの角丸長方形の突起を有し、突起の高さは最大20μmに達することが観察された。この膜を電極材料として用いたら、50 A g-の電流密度で、コンデンサのエネルギー密度は1000 W kg-に達する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9