(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】エンドウと米混合物と米糠とを含有するタンパク質高機能性粥プレミックス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/185 20160101AFI20240314BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240314BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20240314BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240314BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20240314BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240314BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240314BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240314BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240314BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20240314BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A23L33/185
A61P37/02
A61K36/899
A61K36/48
A61K31/07
A61K31/375
A61K31/519
A61K33/06
A61K33/30
A61K31/198
A23L33/175
A23L33/15
A23L33/16
A23L7/10 B
A23J3/14
(21)【出願番号】P 2022141906
(22)【出願日】2022-09-07
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0174435
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521541309
【氏名又は名称】グリーン-ファミリー.インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Green-Family.Inc
【住所又は居所原語表記】66, Annyeong-gil, Hwaseong-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】リ ピルス
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1441565(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第108065414(CN,A)
【文献】特開2019-142976(JP,A)
【文献】特表2017-529086(JP,A)
【文献】特表2014-519842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウを水で洗浄し、浸漬した後、水気を除去して高温で殺菌及びブランチングした前記エンドウを低温で急速に冷却した前記エンドウを粉砕するステップと、
エンドウ粉末に水を加えて均質化させた後、商業用タンパク分解酵素を用いて加水分解させるステップと、
前記加水分解させた物を熱処理して酵素を失活させた後、遠心分離してエンドウ酵素分解物を得るステップと、
前記エンドウ酵素分解物を乾燥させた後、篩別して異物を除去するステップと、
エンドウ粉末、米混合物(完全米、米グリッツ、米粉末)、米糠粉末、分枝アミノ酸、及び微量のビタミンとミネラルを混合して粥プレミックスを作るステップと、
を含んでなる、タンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法。
【請求項2】
前記エンドウを精製水で洗浄、浸漬した後、水気を除去して78~82℃で20~30分間殺菌しながらブランチングした前記エンドウを0~5℃で1~2時間急速に冷却した前記エンドウを90~100メッシュに粉砕することを特徴とする、請求項
1に記載のタンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法。
【請求項3】
エンドウ粉末に10倍の精製水を加えて均質化させた後、公知の商業用タンパク質分解酵素で加水分解させ、前記加水分解させた物を熱処理して酵素反応を停止させた後、11,000~12,000×gで14~16分間遠心分離して前記エンドウ酵素分解物を得ることを特徴とする、請求項
1に記載のタンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法。
【請求項4】
前記エンドウ酵素分解物を50~60℃で7~8時間水分含有量8~9%に乾燥させた後、90~100メッシュ以下に篩別して異物を除去することを特徴とする、請求項
1に記載のタンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法。
【請求項5】
前記米混合物(完全米、米グリッツ、米粉末)60~99w%及び前記米糠粉末1~40w%から構成された前記粥プレミックスにおいて、タンパク質含有量40~60w%の前記エンドウ粉末10~50w%、及びロイシン、イソロイシン、バリンが1.0:0.
5:0.5の割合で混合された前記分枝アミノ酸1%~10%を含有し、前記ビタミンとしてビタミンA70~80μgRAE/100g、ビタミンC8~12mg/100g、ビタミンB(リボフラビン)0.14~0.16mg/100gを含み、前記ミネラルとしてはカルシウム70~90mg/100g、亜鉛8~12mg/100g、マグネシウム50~70mg/100gを含んで混合することにより、前記粥プレミックスを作ることを特徴とする、請求項
1に記載のタンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドウと米混合物と米糠とを含有する高タンパク質機能性粥プレミックスの製造方法に関する。より詳細には、完全米、米グリッツ及び米粉末からなる米混合物60~99w%、及び安定化した米糠粉末1~40w%から構成された粥プレミックスにおいて、タンパク質源としてのエンドウ粉末10~50w%、分枝アミノ酸1~10%、ビタミンA70~80μgRAE/100g、ビタミンB2(リボフラビン)0.14~0.16mg/100g、ビタミンC8~12mg/100g、カルシウム70~90mg/100g、亜鉛8~12mg/100g、マグネシウム50~70mg/100gを含むタンパク質高機能性粥プレミックス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粥(rice porridge)は、穀物や澱粉を含有した食材料を粉砕して水と一緒に煮て粒が脆くなるように作ったものであって、消化しやすいという特徴がある。よって、患者又は幼児に提供する食事でもあるが、正常人も、アワビ粥、鶏粥、野菜粥、小豆粥などを保養食又は嗜好食として食べることもある。韓国の場合、医療技術が発達し且つ国民健康保険のサービスが広がることにより、平均寿命が増えて高齢者人口が急増しながら、超高齢化社会に入っている。ほとんどの高齢患者は、老人病院や老人療養院、昼夜間保護施設に頼って、国民健康保険公団の長期療養支援金を受け取っている。このような老人専門療養施設は、全国的に5,000個余りを超えており、急速に増加しつつある。
入院した高齢患者のうち、1日3食を粥で解決する高齢患者は、約30%に迫っている。粥を作る従来の方法は、米を水に浸漬してから煮込むのに時間がかかり、調理する者が必要であって老人療養施設入居者に大量の粥を提供することが難しく、高齢患者の食事代用として栄養成分が不足し、喉越しが不便であるという問題点がある。別の方法としては、米を微粉砕した後、煮込んで粥を製造する方法もあるが、この場合には、重湯のように粥が作られ、飲食者が咀嚼活動をほとんど行わないので咀嚼感が低下して、食事代用食品としての活用度に劣るという問題点がある。
したがって、粥を短時間で作ることができ、柔らかい食感と咀嚼感を同時に感じながら、栄養的な満足と免疫力のある高齢患者の食事代用食や幼児の離乳食として機能性粥が切実に必要な実情である。
【0003】
動植物は、2種類の免疫システムを持っている。すなわち、先天性免疫(innate
immunity)は、非特異的免疫(自然免疫、内在免疫)方法で宿主が感染しないように防御する細胞や免疫メカニズムである。特定の病原体、抗原を記憶せずに即座に反応する免疫システムを持っている。マクロファージなどの食細胞や体内の抗生物質などが体内免疫において重要な役割を果たすが、先天性免疫細胞から分泌される代表的なサイトカインは、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factoralpha;TNF-α)である。
一方、後天性免疫(acquired immunity)は、特異的免疫(適応免疫、獲得免疫)は、抗原に暴露された後に誘導されるが、将来同じ抗原に暴露すると、記憶された免疫作用が誘導される。高等生命体で病原体に曝露された個体の感染初期に後天免疫が働かない期間には、先天免疫が優先的に働き、続いてより効率的な後天免疫が働く。後天免疫過程は、B細胞やT細胞などが主導的な役割を果たすが、後天性免疫細胞から分泌される代表的なサイトカインは、インターロイキン2(IL-2)とインターフェロンガンマ(interferon-gamma、IFN-γ)である。
【0004】
エンドウ(peas)は、双子葉植物であって、マメ科の一・二年草である。エンドウは、小豆やインゲンマメのようにかてとして、餅・お菓子にまぶすマメなどの粉として用いられているだけでなく、未熟の種子であるグリーンピースの場合には缶詰として、幼い莢の場合には野菜として、葉・茎の場合には家畜の飼料として用いられており、タンパク質、複合炭水化物、繊維質、無機質、ビタミン及び抗酸化物質を含有して優秀な栄養供給源として用いられている。
エンドウの一般成分は、水分8.1g、タンパク質20.7g、炭水化物65.1g、脂質1.3g、灰分2.8gである。エンドウ(100gに食物繊維6gを含有)の食物繊維は、老廃物の排出と腸の健康に役立ち、オメガ3脂肪酸が含有されているため脳細胞活動を促進し、脂肪酸としてリノレン酸とオレイン酸が含有されてコレステロール数値を下げ、カリウムやナトリウムの排出を助けて血管の健康に役立ち、イソフラボン成分が抗酸化剤の役目をして有害酸素を取り除き、サポニンとビタミンKが含有されてがん細胞の成長抑制に役立つ。エンドウは、粗タンパク質14~31%、アルブミン15~25%、グロブリン49~70%、グルテリン11%、プロラミン5%、リジン8.9%、グルタミン11%、シスチン、アルギニンなどが含有されており、ミネラル、ビタミンB1が含有されて筋肉の損失を防ぎ、タンパク質合成を助けるアミノ酸が豊富であって筋肉の増加に役立つ。エンドウは、腸健康、脳健康、血管健康、筋肉増加、がん予防などに良いと言われている。
【0005】
大豆(soy bean)は、タンパク質35~47%、炭水化物30%、脂肪15~20%で構成されており、食物繊維、リン、鉄、カルシウム、ビタミンB1に富む栄養食品である。大豆は、アミノ酸の種類も様々であって、生命維持に重要な必須アミノ酸、例えばグリシンやアルギニンなどの含有量が高く、質の高いタンパク質を供給する。胃と腸でグルコースの吸収速度を下げて糖尿病を抑制し、植物性エストロゲンであるイソフラボンが豊富に含まれており、骨粗鬆症の予防にも良い。ビタミンEが豊富であって血液循環を円滑にすることにより老化を防ぎ、腸内の腸運動を促進させるビフィズス菌を活性化して便秘の治療にも効果がある。ゲニステイン、サポニン、フィット酸、ファイトステロールなど、大豆に含有されている機能成分は、乳がん、直腸がん、結腸がん、肺がん、胃がん、前立腺がんの減少に役立つといわれる。大豆のレシチンは、脳の集中力を向上させ、認知症や物忘れを改善し、脳の老化を防ぐという効果がある。大豆のイソフラボンは、体内のコレステロールを減らし、女性ホルモンであるエストロゲンが過剰に分泌されるのを抑制する作用をして、乳がんや卵巣がん等を予防するうえ、更年期症状を緩和する。成人病や脱毛の予防だけでなく、ダイエットにも効果的であり、黒い殻に含有されているアントシアニン色素は、有害な活性酸素を取り除く強力な抗酸化成分があり、抗がん及び老化予防に役立つ。特に、黒豆は、世界10大フードに選ばれており、パワーフードとも呼ばれる。
【0006】
分枝アミノ酸(Branched Chain Amino Acid;BCAA)は、バリン(valine)、ロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)などの側鎖に分枝アルカリがあるアミノ酸であって、疎水性アミノ酸でもある。酵素などである活性中心のポケットにおける結合部位の形成に寄与している。ロイシンはαらせん構造の形成を促進し、バリン、イソロイシンはβ構造に存在することが多い。これらは、ヒトにとっては、栄養面では必須アミノ酸に属する。BCAAの3種は、肝臓を経ずに筋肉に直ちに移行して代謝し、筋肉に必要なエネルギーを与えて筋肉の生成を助け、筋肉細胞の活性を助ける。特に高齢患者や手術患者は、摂取したタンパク質がアミノ酸に分解される割合が低く、筋肉タンパク質に再建される割合が低い。特に、分枝アミノ酸中のロイシンは、筋肉減少症治療の補助剤として使われる。
【0007】
エンドウに関連する従来技術としては、韓国特許第10-2028652号(エンドウ粉末、発酵米糠、米の胚芽、トウキ抽出粉末、高麗人参抽出粉末、蜂蜜粉末及びココア粉
末を含む粉末状の総合栄養補助食品)は、エンドウ粉末、発酵米糠、米の胚芽、トウキ抽出粉末、高麗人参抽出粉末、蜂蜜粉末及びココア粉末を含む粉末状の総合栄養補助食品に関する。
韓国特許公開第10-2021-0008845号(加水分解されたエンドウタンパク質ベースの栄養組成物)では、エンドウタンパク質加水分解物を含む少なくとも1つのタンパク質源は、全体組成物の2.25wt%~6.5wt%を構成し、1つ以上の植物化学抽出物、1つ以上の脂肪酸、1つ以上のオーガニック成分、1つ以上のプレバイオティック繊維を含む栄養組成物である。
韓国特許公開第10-2021-0020080号(完全なエンドウタンパク質ベースの栄養組成物)は、腸内投与、経口投与用の完全なエンドウタンパク質ベースの栄養組成物であって、オーガニック及び植物ベースの成分で作られる。前記栄養組成物は、エンドウタンパク質、植物化学抽出物、脂肪酸、上位8個のアレルゲンがないオーガニック成分、及びプレバイオティック繊維を含む。前記栄養組成物は、腸内投与及び経口投与のために液体として提供される。しかし、これらの従来技術は、本発明とは技術的構成が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許第10-2028652号
【文献】韓国特許公開第10-2021-0020080号
【文献】韓国特許公開第10-2021-0008845号
【非特許文献】
【0009】
【文献】TEXTURIZATION OF PULSE PROTEINS:PEAS, LENTILS, AND FABA BEANS by TAEHOON KIM(dissertation). 2018. Submitted to the Office of Graduate and professional Studies of Texas A&M University in partial fulfillment of the requirements for the degree of DOCTOR OF PHILOSOPHY. p 17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、米混合物及び安定化した米糠を含有する機能性粥プレミックス及びその製造方法に関する韓国特許第10-1441565号を開示したことがある。完全米、米グリッツ(grits)及び米粉末からなる米混合物60~99w%、及び安定化した米糠粉末1~40w%を含む粥プレミックスに関する。
しかし、米混合物に含有されたタンパク質は、7~8g/100g程度であって、1食の粥ではタンパク質含有量が低いため、食事代用では不完全であるという点があった。
したがって、本発明は、前記粥プレミックスに足りないタンパク質を補強するために研究を重ねた結果、粗タンパク質の含有量が高い豆類のうち、物性と味の良いエンドウを添加し、その他に分枝アミノ酸、ビタミン及びミネラルを添加して機能性粥プレミックスを製造する方法を完成した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が開示した韓国特許第10-1441565号(米混合物及び安定化した米糠を含有する機能性粥プレミックス及びその製造方法)は、(S1)米を粉砕して、3つの粒度サイズを有する完全米、米グリッツ及び米粉末に分けて準備するステップと、(S2)前記完全米、米グリッツ及び米粉末を2.5~3.5:4.5~5.5:1.5~2.5の重量比で混合するステップと、(S3)前記混合された米混合物60~99重量%及び安定化した米糠粉末1~40w%を混合して粥プレミックスを得るステップとから構成されている。
本発明者は、上記に開示した韓国特許第10-1441565号の「米混合物及び安定化した米糠を含有する機能性粥プレミックス」の欠点である足りないタンパク質を補うために、動物性タンパク質中の卵タンパク質、乳清タンパク質又は植物性タンパク質中の豆(大豆)、エンドウ及びレンズ豆の中からエンドウを選択した。
エンドウは、餡、又は餅・お菓子にまぶすマメなどの粉として広く用いられて消費者に馴染むだけでなく、栄養性、物性及び味が良く、米混合物との親和力が良い素材である。特に、高齢患者は、消化力に劣り、食べ物を噛む咀嚼感が不足し、喉越しが悪いという点を考慮した。大豆は、脂肪質含有量が高いという利点があるが、プレミックスの素材として使用するには大豆の脂肪を除去しなければならず、脱脂大豆は、組織が硬くて咀嚼性と喉越しが悪いため、大豆よりは柔らかくて味の良いエンドウをプレミックス素材として選択した。
エンドウをブランチング(branching)及び急速冷却させて酵素作用が抑制されることにより、栄養成分の損失を防止し且つ風味を維持させることができる。また、ブランチング及び急速冷却したエンドウを粉砕し、酵素分解して高齢患者に吸収されやすくする。
本発明は、エンドウを精製水で洗浄、浸漬した後、水気を除去して高温で殺菌及びブランチングしたエンドウを低温で急速冷却したエンドウを粉砕するステップと、エンドウ粉末に10倍の精製水を加えて均質化させた後、公知の商業用タンパク分解酵素を用いて加水分解させるステップと、前記加水分解物を熱処理して酵素反応を停止させた後、遠心分離してエンドウ酵素分解物を得るステップと、前記酵素分解物を乾燥させた後、篩別し、異物を除去するステップと、エンドウ粉末、米混合物(完全米、米グリッツ、米粉末)、米糠粉末、分枝アミノ酸、及び微量のビタミンとミネラルを混合して粥プレミックスを作るステップと、を含んでなるタンパク質高機能性粥プレミックスの製造方法である。
【0013】
前記植物性原料の中でもタンパク質含有量の高い豆(大豆)、レンズ豆及び蚕豆の中から選択された少なくとも1つに対して脱脂、粉砕などの前処理を経た後、エンドウの一部を代替してエンドウと一緒に併用することができる。また、分離大豆タンパク質や植物性タンパク質をエンドウと併用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粥プレミックスは、米混合物、米糠、エンドウタンパク質、分枝アミノ酸、ビ
タミン及びミネラルが補強された高機能性タンパク質粥を提供することができる。特に、エンドウを殺菌及びブランチングした後、急冷させて酵素作用を抑制することにより、栄養成分の損失防止及び風味維持に役立てることができる。また、タンパク分解酵素で加水分解させてタンパク質含有量を高めることにより、免疫力と体重が維持されながら、高齢患者に滑らかな喉越しと咀嚼感で吸収が容易であって高齢患者の回復が速い。本発明は、高齢者の保養食、大人の食事代用食、乳幼児の栄養食として用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】粥プレミックスの酸化窒素(NO)生成量を示す。(Nは陰性対照群、RP(1)は(米混合物+米糠)、RP(2)は(米混合物+米糠+エンドウ+分枝アミノ酸+ビタミン+ミネラル)を示す。)
【
図3】先天性免疫に関連してRP(1)とRP(2)のIL-6、IL-12及びTNF-αの発現量を示す。
【
図4】後天性免疫に関連してRP(1)とRP(2)のIL-2、IFN-γの発現量を示す。
【
図5a】高温殺菌ブランチング技術を用いたエンドウ粉末である。
【
図5b】エンドウ粉末が含有された粥プレミックスである。
【
図5c】エンドウ粉末が含有された粥プレミックスで調理された粥である。
【
図6a】走査電子顕微鏡(SEM)1,000倍(S-3400N、日立製作所/日本)で撮った米粉末写真であって、硬質の微粒子が集まる現象を示す。
【
図6b】エンドウ粉末写真であって、軟質の円形粒子が別個に分離された現象を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエンドウのブランチング技術を導入した機能性タンパク質粥プレミックス製造工程は、次の通りである。
エンドウを精製水で洗浄して浸漬した後、エンドウの水気を除去するステップと、エンドウを高温で殺菌しながらブランチしたエンドウを低温で急速に冷却したエンドウを粉砕するステップと、エンドウ粉末に精製水を加えて均質化させた後、商業用タンパク質分解酵素を添加して振盪恒温水槽で加水分解させ、前記加水分解物を高温で熱処理して酵素を失活させた後、遠心分離してエンドウ酵素分解物を得るステップと、前記エンドウ酵素分解物を乾燥させた後、適当なサイズに篩別して異物を除去するステップと、エンドウ粉末、米混合物(完全米、米グリッツ、米粉末)、米糠粉末、分枝アミノ酸、ビタミン及びミネラルを混合して粥プレミックスを作るステップと、を含んでなる。
上記エンドウのブランチングは、豆や野菜類の酵素作用を抑制して栄養成分の損失を防止し、風味を維持させることができる。また、上記でエンドウをブランチングし、急速に冷却した後、破砕して酵素分解させると、エンドウの組織感を向上させることにより、物性と味が良くなり、高齢患者への吸収が容易である。また、酵素処理エンドウは、栄養性に優れるのに対し、炊飯後の硬度が高い方であって、咀嚼及び消化性が改善される。
【0017】
1)エンドウの洗浄、浸漬、脱水
市中で購入(ガラク市場)したエンドウを流水又は精製水で綺麗に洗浄する。洗浄したエンドウを18~25℃の精製水に3~4時間浸漬して十分にふやかした後、エンドウの水気を笊で4~5時間除去する。
【0018】
2)エンドウのブランチング、急速冷却及び粉砕
エンドウを78~82℃で20~30分間ブランチングしながら殺菌したエンドウを0~5℃で1~2時間急速冷却する。上記の急速冷却したエンドウを90~100メッシュに粉砕する。上記におけるエンドウのブランチングは、豆や野菜類の酵素作用を抑制して
栄養成分の損失を防止し、風味を維持させることができる。また、ブランチングした後、急速冷却したエンドウは、柔らかい組織感を与えることができる。
【0019】
3)エンドウ粉末の酵素分解
水とエンドウ粉末を9~10:1に均質化させた後、商業用タンパク分解酵素0.1~1.0%(w/v)を添加してpH4~5、40~50℃にて10~30分間振盪恒温水槽で加水分解させる。
産業用タンパク質分解酵素は、アルカラーゼ(Alcalase)、プロタメックス(Protamex)、ニュートラーゼ(Neutrase)、エスペーラゼ(Esperase)、フレーバーザイム(Flavourzyme)、ブロメライン(Bromelan)、Laminex Super 3G又はマキサジム(Maxazyme)(NovoNordisk Biochem)の中から選択されたタンパク質分解酵素である。
好ましくは、Bromelain 1200GDU、Laminex Super 3G、プロタメックス(Protamex)又はフレーバーザイム(Flavourzyme)の中から選択された少なくとも一つを0.2~0.4%(w/v)添加して酵素分解させた後、95~100℃で30~50/secにて加熱して酵素を失活させる。前記加水分解物の酵素反応を停止させた後、11,000~12,000×gで14~16分間遠心分離してエンドウ酵素分解物を得る。
【0020】
【0021】
エンドウをブランチングして急冷した後、酵素分解時の酵素濃度が高いほど、活性化時間が長いほど、硬度は低くなる現象を示すことが分かる。
【0022】
4)酵素分解物の乾燥、篩別、異物除去
エンドウ酵素分解物を50~60℃で7~8時間水分含有量8~9%に乾燥させた後、0.4~0.6mm以下に篩別し、鉄又はステンレス金属、石、プラスチックなどの異物を除去する。
【0023】
5)粥プレミックスの混合
タンパク質含有量40~60w%のエンドウ粉末10~50w%、米混合物(完全米、米グリッツ、米粉)60~99w%、米糠粉末1~40w%、分枝アミノ酸1%~10%、及び微量のビタミンとミネラルを混ぜて粥プレミックスを作る。
前記分枝アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリンが1:0.5:0.5の割合で混合されて1%~10%を含むことができる。
前記ビタミンは、ビタミンA、B、C、D、E及びKなどを含むことができ、好ましくは、ビタミンA、B、Cの少なくとも一つを含むことができる。前記ビタミンは、粥プレミックス100重量部に対してビタミンA70~80μgRAE/100g、ビタミンC8~12mg/100g、ビタミンB2(リボフラビン)0.14~0.16mg/100gを含むことができる。
前記ミネラルは、セレン、亜鉛(又は酸化亜鉛)、マグネシウム、銅などを含むことができるが、これらに限定されない。好ましくは、カルシウム、亜鉛及びマグネシウムのうちの少なくとも1つを含むことができる。前記ミネラルは、粥プレミックス100重量部に対して、カルシウム70~90mg/100g、亜鉛8~12mg/100g及びマグネシウム50~70mg/100gを混合して粥プレミックスを作る。ミネラルは免疫機
能と抗炎症機能に役立つ。
これらのビタミンとミネラルは、韓国食品医薬品安全処の1日の栄養要求量の10%以上を満たすことができる。
【0024】
【実施例】
【0025】
<実施例1~4>
エンドウ1kgを常温の精製水で洗浄してエンドウと精製水を1:3の割合で3時間浸漬した後、笊で水気を除去して脱水した。
エンドウを80℃で30分間ブランチングして酵素を失活させた。さらに、ブランチングしたエンドウを0℃で1時間急速に冷却した。ブランチング及び急冷冷却したエンドウを55℃で8時間水分含有量8%に乾燥させた後、90~100メッシュに粉砕した。
水とエンドウ粉末を10:1で混合し、均質化させた後、Bromelain 1200GDU、Laminex Super 3G、プロタメックス(Protamex)又はフレーバーザイム(Flavourzyme)の中から選択された少なくとも1つを0.1~1.0%(w/v)添加してpH4~5、40~50℃で10~30分間振盪恒温水槽で加水分解させた後、95~100℃で30~50/sec加熱して酵素を失化させる。
前記加水分解物の酵素反応を停止させた後、11,000~12,000×gで14~16分間遠心分離してエンドウ酵素分解物を得る。粉砕したエンドウ粉末10~50w%を米混合物60~99w%、安定化した米糠1~40w%、分枝アミノ酸1~10%、ビタミン3種のビタミンA75μgRAE/100g以上、ビタミンC10mg/100g以上、ビタミンB2(リボフラビン)0.15mg/100g以上、及びミネラル3種のカルシウム80mg/100g以上、亜鉛10mg/100g以上、マグネシウム60mg/100g以上(混合6種)と混合して粥ミックスを製造した。
本発明の配合比には、高齢者の消化、咀嚼、栄養機能を補うためにビタミン3種及びミネラル3種を、1日栄養要求量の10%以上を満たすことができる量で含んでいる。さらに、本発明の「米混合物、米糠及びエンドウタンパク質BCAAアミノ酸が混合された高タンパク質機能性粥プレミックス(牛肉野菜粥)」に対して韓国機能食品研究院にタンパク質と分枝アミノ酸成分を分析依頼(2021年11月15日)した。粗タンパク質18.08%、ロイシン3028mg/100g、イソロイシン1494.93mg/100g、バリン1665.30mg/100gが含有されたという結果を得た。これらのタンパク質とアミノ酸は、1日栄養要求量の約30%を満たす非常に良好な栄養成分であることが分かる。本発明者が牛肉野菜粥プレミックスを水原女子大学に栄養成分分析依頼(2017年6月13日)したので、タンパク質7.8mg/100gという結果を得たことがある。これと比較すると、エンドウと分枝アミノ酸を用いた本発明は、タンパク質含有量が3.9倍以上高くなって優れた栄養素であることが分かる。
【0026】
本発明の粥プレミックスは、活動性の弱い患者に提供される食品であって、食事給与を介して健康な状態を維持させるためには免疫体系の損傷があってはならず、体重の変化があってはならない。したがって、免疫力試験(in vitro)と体重変化(in vivo)実験を行った。
【0027】
<実験例1>免疫力試験(in vitro)
米混合物と米糠の粥プレミックス(1)と、米混合物に米糠、エンドウ、分枝アミノ酸、ビタミン及びミネラルが混合された高機能性粥プレミックス(2)を対象に、免疫体系の損傷、体重の変化、並びに白血球及びDNAの損傷の有無を実験した。
【0028】
粥プレミックス(1)と本発明の高機能性粥プレミックス(2)の先天性免疫増強効果を分析するために、これらの抽出物の投与による酸化窒素(Nitric oxide)生成量と、先天性免疫に関連したサイトカインであるインターロイキンのIL-6、IL-12及びTNF-α(tumor necrosis factor-alpha)の発現量を測定した。
【0029】
1)Nitric oxide生成量の測定
マウスRAW264.7細胞を1×10
5cell/wellの濃度で48ウェルプレートに入れた後、LPSをポジティブコントロール(positive control)とし、それぞれ試料を100μg/mL処理した。24時間培養した後、細胞培養上清を得、Griess reagentを用いてNO生成量を測定した。RP(1)(米混合物+米糠)、RP(2)(米混合物+米糠+エンドウ+ビタミン+ミネラル)を投与したマウス細胞における酸化窒素(Nitric oxide)生産量測定結果は、
図2に示すように、RP(1)よりもRP(2)でNO生成量が60%以上高いことが分かる。
【0030】
2)先天性免疫関連サイトカインの測定
IL-6の発現量測定は、Mouse RAW264.7細胞を1×105cells/wellの濃度で48ウェルプレートに入れた後、LPSをポジティブコントロール(positive control)とし、試料を100μg/mL処理した。48時間培養した後、細胞培養上清を得、ELISAキットを用いてIL-6生産量を測定した。
【0031】
IL-12の発現量は、Mouse RAW264.7細胞を1×105cells/wellの濃度で48-well cultureplatesに入れた後、LPSをポジティブコントロール(positive control)とし、試料を100μg/mL処理した。48時間培養した後、細胞培養上清を得、ELISAキットを用いてIL-12生産量を測定した。
【0032】
TNF-αの発現量測定は、Mouse RAW264.7細胞を1×105cells/wellの濃度で48ウェルプレートに入れた後、LPSをポジティブコントロール(positive control)とし、試料を100μg/mL処理した。48時間培養した後、細胞培養上清を得、ELISAキットを用いてTNF-α生産量を測定した。
【0033】
RP(1)(米混合物+米糠)、RP(2)(米混合物+米糠+エンドウ+ビタミン+ミネラル)を投与したマウス細胞における先天性免疫サイトカインIL-6、IL-12、TNF-α生産量測定結果を
図3に示した。本発明の粥プレミックスは、IL-6とIL-12サイトカインの発現のみが増加し、TNF-αの発現は少量増加したことを確認した。
【0034】
3)後天性免疫関連サイトカインの測定
粥プレミックスRP(1)(米混合物+米糠)と本発明のタンパク質高機能性粥プレミックスRP(2)(米混合物+米糠+エンドウ+ビタミン+ミネラル)の後天性免疫増進効果を分析するために、これら抽出物の投与によるサイトカインであるIL-2、IFN-γ(interferon-gamma)の発現量を測定した。
【0035】
IL-2の発現量測定は、Mouse脾臓細胞を2×106cells/wellの濃度で48ウェルプレートに入れた後、ConAをポジティブコントロール(positive control)とし、試料を100μg/mL処理した。48時間培養した後、細胞培養上清を得、ELISAキットを用いてIL-2生産量を測定した。
【0036】
IFN-γの発現量測定は、Mouse脾臓細胞を2×10
6cells/wellの濃度で48ウェルプレートに入れた後、ConAをポジティブコントロール(positive control)とし、試料を100μg/mL処理した。48時間培養した後、細胞培養上清を得、ELISAキットを用いてIFN-γ生産量を測定した。RP(1)(米混合物+米糠)、RP(2)(米混合物+米糠+エンドウ+ビタミン+ミネラル)を投与したマウス細胞における後天性免疫サイトカイン生産量測定結果を
図4に示した。根茎複合植物抽出物を投与したマウス細胞における後天性免疫サイトカインIL-2及びIFN-γ発現量はいずれも増加することが分かる。以上の結果から、本発明の粥プレミックスは、酸化窒素生成量及び先天性免疫と後天性免疫の全てのサイトカインの発現量が増加することが分かるので、高齢患者食に適している。
【0037】
<実験例2>体重変化(in vivo)
粥プレミックス(1)と本発明のタンパク質高機能性粥プレミックス(2)を用いて、実験動物(マウス)を用いて体重の変化を試験した。
【0038】
粥プレミックスRP(1)(米混合物+米糠)と本発明のタンパク質高機能性粥プレミックスRP(2)(米混合物+米糠+エンドウ+分枝アミノ酸+ビタミン+ミネラル)で一般飼料(LabDiet、Laboratory Rodent Diet 5001)のそれぞれ20%を代替した飼料と、対照群としての一般飼料を製造した。6週齢、体重20g~25gのオスC57 BL/6マウス10匹を対象に2週間摂取させながら、上記の(1)と(2)及び対照区の1週間後、2週間後の体重の変化を測定し、2週間後のマウスを剖検して血液を採取し、血球分析器を用いて白血球数を測定し、脾臓末梢免疫細胞のDNA損傷の程度をコメットアッセイ(comet assay)を介して分析した。個体当たり1日平均飼料摂取量4.0g/dayなので、14日間摂取量は56.0gであり、全ての実験区(1)と(2)及び対照区の有意な差があった。
【0039】
【0040】
1)体重変化
対照区の一般飼料摂取区に比べて、20%代替した飼料を給与した(1)と(2)は、1%~3%有意な体重増加を示した。上記の結果から、本発明のタンパク質高機能性粥プレミックス(2)を給与した飼料が粥プレミックス(1)と対照群(一般飼料)を給与した群に比べて1%~3%の体重増加を示した。したがって、本発明は、実験用マウスの体重増加をもたらす優れたタンパク質高機能性粥プレミックスであることが分かる。
【0041】
2)白血球数
2週間の実験期間後に剖検して白血球数を測定した結果、実験区と対照区の白血球数は、正常値(1.8~10.7K/μL)の範囲にあった。従って、本発明の実験区(1)と(2)及び対照区の白血球数は、有意差がなかった。
【0042】
3)DNA損傷
DNA損傷の程度を確認するためにコメットアッセイ(comet assay)を行った結果、実験区と対照区は、生体内DNA損傷から変化がないことを確認した。
【0043】
以上の実験結果から、本発明の粥プレミックスは、細胞株実験(in vitro)と動物実験(in vivo)を介して免疫力を提供しながら、体重を増加させることができる優れた粥プレミックスを提供することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、米混合物、米糠、エンドウタンパク質、分枝アミノ酸、及びビタミンとミネラルが補強された高機能性タンパク質粥を提供することができる。特に、エンドウをブランチングして急冷し、粉砕した後、タンパク質分解酵素で加水分解させてタンパク質含有量を高めることにより免疫力と体重が維持されながら、高齢患者への吸収が容易であって回復が速い。特に、保養食、食事代用食、栄養食として利用可能であるので、産業上利用可能性がある。