(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】梯子兼用脚立
(51)【国際特許分類】
E06C 7/06 20060101AFI20240314BHJP
E06C 1/22 20060101ALI20240314BHJP
E06C 7/42 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
E06C7/06
E06C1/22
E06C7/42
(21)【出願番号】P 2022193229
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2022072809の分割
【原出願日】2018-03-22
【審査請求日】2022-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳彦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-068283(JP,A)
【文献】実開昭56-074200(JP,U)
【文献】米国特許第04299306(US,A)
【文献】米国特許第05429207(US,A)
【文献】特開2019-167693(JP,A)
【文献】特開2022-090144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 7/06
E06C 7/04
E06C 7/42
E06C 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右2本の中空状の支柱と両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟とをそれぞれ備えている2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、2つの梯子体のいずれか一方を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能な梯子兼用脚立であって、
各梯子体は、さらに、各支柱の内部にその下端からスライド自在に挿入されかつ反挿入側の端部に接地部を有している伸縮脚部材、伸縮脚部材を任意のスライド位置でロックするロック機構、および遠隔操作によりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうる遠隔操作機構よりなる伸縮脚装置を備えており、
遠隔操作機構には、所定の動作方向に運動自在に設けられかつ同動作方向に運動させられることでロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうる動作部材と、梯子として使用するために上下反転させられた梯子体において動作部材の前記動作方向への運動を阻止しうるように揺動自在に設けられた揺動ストッパとが含まれており、
揺動ストッパは、所定方向の一端部に揺動軸を有し、同他端部に揺動先端を有しているとともに、揺動軸から揺動先端と反対側に向かって揺動方向両側部間の幅が次第に小さくなされた部分を有している、梯子兼用脚立。
【請求項2】
揺動ストッパは、揺動軸と揺動先端との間に、揺動方向両側部間の幅が最も大きくなされた部分を有している、請求項1記載の梯子兼用脚立。
【請求項3】
揺動ストッパは、前記所定方向の長さおよび揺動方向両側部間の最大幅に対して揺動軸方向の厚みが小さい偏平状となされている、請求項1または2記載の梯子兼用脚立。
【請求項4】
揺動ストッパは、前記所定方向の一端部から突出しかつ梯子体の所定箇所に設けられたストッパ取付孔に緩く差し込まれる差込部を有しており、同差込部によって揺動軸が構成されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の梯子兼用脚立。
【請求項5】
揺動ストッパは、梯子体が上下反転させられると、動作部材の動作を阻止しない第1位置から動作部材の動作を阻止しうる第2位置まで自重により揺動するようになっており、第1位置における揺動ストッパは、その揺動軸と揺動先端とを結ぶ線が、揺動軸を通る鉛直線に対して第2位置への揺動方向側に傾いており、第2位置における揺動ストッパは、その揺動軸と揺動先端とを結ぶ線が、揺動軸を通る鉛直線に対して第1位置への揺動方向側に傾いている、請求項1~4のいずれか1つに記載の梯子兼用脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梯子兼用脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の支柱間に複数の踏桟が段状に渡し止められてなる梯子体を備えた高所作業用構造体として、例えば下記の特許文献1に開示されているように、2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなる脚立が知られている。また、脚立の一形態として、2つの梯子体のいずれか一方を上下反転するように回動させることによって、梯子としても使用可能な梯子兼用脚立が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体において同梯子体に備えられた動作部材が移動するのを阻止しうる機構を有する梯子兼用脚立を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0006】
1)左右2本の中空状の支柱と両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟とをそれぞれ備えている2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、2つの梯子体のいずれか一方を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能な梯子兼用脚立であって、
各梯子体は、さらに、各支柱の内部にその下端からスライド自在に挿入されかつ反挿入側の端部に接地部を有している伸縮脚部材、伸縮脚部材を任意のスライド位置でロックするロック機構、および遠隔操作によりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうる遠隔操作機構よりなる伸縮脚装置を備えており、
遠隔操作機構には、所定の動作方向に運動自在に設けられかつ同動作方向に運動させられることでロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうる動作部材と、梯子として使用するために上下反転させられた梯子体において動作部材の前記動作方向への運動を阻止しうるように揺動自在に設けられた揺動ストッパとが含まれており、
揺動ストッパは、所定方向の一端部に揺動軸を有し、同他端部に揺動先端を有しているとともに、揺動軸から揺動先端と反対側に向かって揺動方向両側部間の幅が次第に小さくなされた部分を有している、梯子兼用脚立。
【0007】
2)揺動ストッパは、揺動軸と揺動先端との間に、揺動方向両側部間の幅が最も大きくなされた部分を有している、上記1)の梯子兼用脚立。
【0008】
3)揺動ストッパは、前記所定方向の長さおよび揺動方向両側部間の最大幅に対して揺動軸方向の厚みが小さい偏平状となされている、上記1)または2)の梯子兼用脚立。
【0009】
4)揺動ストッパは、前記所定方向の一端部から突出しかつ梯子体の所定箇所に設けられたストッパ取付孔に緩く差し込まれる差込部を有しており、同差込部によって揺動軸が構成されている、上記1)~3)のいずれか1つの梯子兼用脚立。
【0010】
5)揺動ストッパは、梯子体が上下反転させられると、動作部材の動作を阻止しない第1位置から動作部材の動作を阻止しうる第2位置まで自重により揺動するようになっており、第1位置における揺動ストッパは、その揺動軸と揺動先端とを結ぶ線が、揺動軸を通る鉛直線に対して第2位置への揺動方向側に傾いており、第2位置における揺動ストッパは、その揺動軸と揺動先端とを結ぶ線が、揺動軸を通る鉛直線に対して第1位置への揺動方向側に傾いている、上記1)~4)のいずれか1つの梯子兼用脚立。
【発明の効果】
【0011】
この発明の梯子兼用脚立によれば、一方の梯子体を上下反転させて梯子として使用する際、同一方の梯子体に設けられた動作部材の動作方向への運動が揺動ストッパにより阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施形態を示すものであって、この発明による揺動ストッパを備えた梯子兼用脚立の全体斜視図である。
【
図2】同梯子兼用脚立に備えられた伸縮脚装置のロック状態を示すものであって、(a)は部分正面図、(b)は(a)のB-B線に沿う断面図である。
【
図3】同伸縮脚装置のロック解除状態を示すものであって、(a)は部分正面図、(b)は(a)のB-B線に沿う断面図である。
【
図5】同伸縮脚装置の下部を分解して示す斜視図である。
【
図6】(a)は同伸縮脚装置の下部を示す垂直縦断面図であり、(b)は(a)のB-B線に沿う断面図である。
【
図8】同伸縮脚装置の上部を分解して示す斜視図である。
【
図9】同伸縮脚装置の上部操作レバーを分解して示す斜視図である。
【
図10】同伸縮脚装置の上部を示す垂直横断面図であって、(a)は上部操作レバーがロック解除非操作位置にある状態を示し、(b)は上部操作レバーがロック解除操作位置にある状態を示し、(c)は梯子体が上下反転させられたときの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、
図1~
図10を参照して、この発明による揺動ストッパを備えた梯子兼用脚立の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において、
図2(b),
図3(b),
図10の各右側を「前」、同左側を「後」といい、また、「左右」は前から見た場合の左右(例えば
図2(a),
図3(a),
図6の左右)をいうものとする。
【0014】
図1に示すように、梯子兼用脚立(1)は、前後2つの梯子体(2F)(2R)の上端部どうしがヒンジ金具(201)により開閉自在に連結されてなり、一方の梯子体(例えば前梯子体(2F))を上下反転するように回動させることによって、梯子としても使用することができるものである。
前後各梯子体(2F)(2R)は、左右2本の中空状の支柱(3)と、両支柱(3)間に上下方向に間隔をおいて段状に渡し止められた複数本(ここでは5本)の踏桟(4A)(4B)(4C)(4D)(4E)とを備えている。最上段の踏桟(4E)は、脚立として使用する際には、天板を構成するものである。
前後梯子体(2F)(2R)の左支柱(3)の上部どうしの間および同右支柱(3)の上部どうしの間に、開き止め金具(202)が渡し止められている。開き止め金具(202)は、一端部どうしが回動自在に連結された2本のリンクよりなり、一方のリンクの他端部に設けられたフックが支柱(3)に設けられた係止ピンに着脱自在に掛け止められるようになっている。
前後各梯子体(2A)(2B)における左右の支柱(3)の下部には、この発明による伸縮脚装置(5)がそれぞれ設けられている。
【0015】
図2~
図10は、前梯子体(2F)の詳細構造を示すものである。なお、後梯子体(2R)は、前梯子体(2F)とほぼ対称形のものであるので、詳しい図示および説明は省略する。
前梯子体(2F)の左右各支柱(3)は、アルミニウム合金形材等の金属形材よりなり、左右方向内方に開口した略コ形の横断面を有している。
各踏桟(4A)(4B)(4C)(4D)(4E)も、アルミニウム合金形材等の金属形材よりなり、略四角形の横断面を有する中空状のものとなされている。
最下段の踏桟(4A)および下から2段目の踏桟(第2上部踏桟)(4B)の左右各端部は、それぞれ前後1対のブラケット(101)(102)を介して、左右各支柱(3)に取り付けられている。これらの踏桟(4A)(4B)の左右各端部と左右各支柱(3)との間には、所要の間隙(S)が形成されている。下から3段目の踏桟(第1上部踏桟)(4C)およびそれよりも上段の踏桟(4D)(4E)の左右各端部は、左右各支柱(3)の内部に差し込まれて、例えばリベット(11)により、支柱(3)の前後側壁部に直接取り付けられている。
【0016】
前梯子体(2F)の左右各支柱(3)の下部に設けられた伸縮脚装置(5)は、各支柱(3)内に下端からスライド自在に挿入されかつ反挿入側の端部に接地部(61)を有している伸縮脚部材(6)と、伸縮脚部材(6)を任意のスライド位置でロックするロック機構(7)とを備えている。
【0017】
伸縮脚部材(6)は、アルミニウム合金形材等の金属形材よりなり、略四角形の横断面を有している。伸縮脚部材(6)の前後壁部は、互いに相手方に向かって突出するように略U形に湾曲させられている。伸縮脚部材(6)の左右方向外側壁部の前後縁にはスライド案内用突条部(63)が延長状に形成されており、これらの突条部(63)が各支柱(3)における前後壁部の内面の左右方向外側縁に形成された垂直凹溝(31)にスライド自在に嵌め込まれている(
図6(b)参照)。伸縮脚部材(6)の左右方向内側壁部には、左右方向内方に開口した内部拡大溝(62)が形成されている。
【0018】
ロック機構(7)は、各伸縮脚部材(6)の左右方向内側面に設けられかつ伸縮脚部材(6)の長さ方向に並んだ多数の歯(711)を有するラック(被係止部)(71)と、前梯子体(2F)における各支柱(3)の下端部付近、より詳細には、最下段の踏桟(4A)の左右各端部を支柱(3)に取り付けるための前後ブラケット(101)に前後方向にのびる揺動軸(720)を中心として揺動自在に取り付けられかつ左右方向外端部にラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる歯(721a)が形成された係止部(721)を有している係止部材(72)と、係止部材(72)をその係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる方向(
図6(a)の反時計回り方向)に向かって付勢するスプリング(付勢部材)(73)とを備えている。
係止部材(72)の左右方向内端部には操作レバー部(722)が設けられており、この操作レバー部(722)を上方に押圧することにより、スプリング(73)のばね弾性力(付勢力)に抗して、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)から外れる方向(
図6(a)の時計回り方向)に係止部材(72)が揺動させられる。
つまり、係止部材(72)は、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)と噛み合うロック位置、および、係止部(721)の歯(721a)とラック(71)の歯(711)との噛み合いが外れるロック解除位置の間で、切り替え可能となされている。
スプリング(73)は、係止部材(72)の左右方向内側部分と最下段の踏桟(4A)の下面との間に、上下方向に介在させられている。係止部材(72)の左右方向内側部分の長さ中間位置には、上方に分岐状にのびるスプリング保持部(724)が形成されており、このスプリング保持部(724)と、揺動軸(720)が挿通されている中心部(723)との間にスプリング(73)の下端部が挿入されて保持されている。
各支柱(3)の下端部には、横断面略コ字形の金属製カバー部材(103)が、各支柱(3)の開口を覆うように嵌め被せられている。前後のブラケット(101)は、カバー部材(103)の前後壁部の上から、支柱(3)の前後壁部にリベット等によって取り付けられている。カバー部材(103)には、ラック(71)の一部の歯(711)を露出させるための縦長方形の連通窓(103a)が形成されている。係止部材(72)の係止部(721)の歯(721a)は、この連通窓(103a)を通じて、ラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる。
なお、ロック機構(7)は、図示のものには限定されず、適宜変更可能である。例えば、係止部材(72)は、上記のように最下段の踏桟(4A)の下方に設ける他、同踏桟(4A)の内部に組み込むか、あるいは同踏桟(4A)の上方に設けてもよい。
【0019】
伸縮脚装置(5)には、以下の構成よりなる遠隔操作機構が備えられている。
すなわち、前梯子体(2F)の下から数えて3段目に位置する踏桟よりなる第1上部踏桟(4C)の背面に、左右各ロック機構(7)による左右各伸縮脚部材(6)のロックを解除するための上部操作部材(8)が、所定の動作を行いうるように設けられているとともに、上部操作部材(8)と各係止部材(72)とを連動させるための左右2つの伝動部材(9)が各支柱(3)に沿って設けられている。そして、上部操作部材(8)を操作して所定の動作を行わせることにより、各伝動部材(9)を介して各係止部材(72)がロック解除位置に切り替えられるようになっている。
上部操作部材(8)が背面側に設けられる第1上部踏桟は、通常の梯子体のサイズを考慮すると、下から3段目の踏桟(4C)が適切であると考えられるが、梯子体のサイズや使用態様等によっては、下から2段目の踏桟や下から4段目以上の踏桟としてもよい。
【0020】
上部操作部材は、第1上部踏桟(4C)の略左半部および略右半部それぞれの背面に左右方向にのびる軸を中心として揺動自在にかつ互いに近接して並ぶように取り付けられた左右2つのフラップ状の上部操作レバー(8)よりなる。これらの上部操作レバー(8)を、第1上部踏桟(4C)の背面に近づくロック解除操作方向(
図10(a)(b)の反時計回り方向)(A)に揺動させることにより、伝動部材(9)を介して係止部材(71)がロック解除位置に切り替えられるようになっている。
各上部操作レバー(8)は、アルミニウム合金形材等の金属形材よりなるレバー本体(81)を有している。レバー本体(81)は、偏平中空状のものであって、その上縁部に前斜め上方にのびる傾斜壁部(811)を有している。傾斜壁部(811)の先端縁部には、後方に湾曲したヒンジ形成用嵌合凸条(811a)が形成されている。
一方、第1上部踏桟(4C)の背面の上縁部に、左右方向にのびるンジ形成用嵌合凹溝(41)が形成されている。ヒンジ形成用嵌合凹溝(41)は、第1上部踏桟(4C)の背面の上縁部から前斜め上方にのびる横断面を有しているとともに、その奥部が後方に向かって湾曲させられている。
そして、レバー本体(81)のヒンジ形成用嵌合凸条(811a)が、第1上部踏桟(4C)のヒンジ形成用嵌合凹溝(41)にその開口から挿入されて回動自在に嵌め合わせられており、それによって、レバー本体(81)が第1上部踏桟(4C)の背面側に嵌合凸条(811a)を中心として揺動可能に取り付けられている。
【0021】
レバー本体(81)の両端部のうち支柱(3)に近い側である左右方向外端部には、第1エンドキャップ(82)が嵌め被せられている。第1エンドキャップ(81)は、合成樹脂成形品よりなり、同エンドキャップ(81)を貫通してレバー本体(81)下部のタッピングビス孔(812)にねじ込まれたタッピングビス(図示略)によりレバー本体(81)に固定されている。
第1エンドキャップ(82)には、その下部から第1上部踏桟(4C)の下方空間に突き出すように前方にのびるアーム部(821)が一体に設けられている。
アーム部(821)の長さの中間位置(または先端位置)には、各支柱(3)の開口内に向かってのびるカム軸(821a)が一体に形成されている。
また、アーム部(821)の基端部には、左右方向にのびる軸を中心として揺動自在な揺動ストッパ(84)が設けられている。揺動ストッパ(84)は、
図10に示すように、側面より見て略釣鐘形のものであって、その一端部から左右方向外方に突出するように形成された半割状の差込部(841)が、アーム部(821)の垂直壁部分にあけられた孔に緩く差し込まれることにより、揺動ストッパ収容部(820)に収容された状態で、差込部(841)(揺動軸)を中心として揺動自在となされている。この揺動ストッパ(84)は、
図10(a)(b)に示すように、梯子兼用脚立(1)が脚立として使用されている状態では、自重により同図の時計回り方向である第1揺動方向に揺動して、その第1揺動方向側の側部に設けられた第1当接部(842)が、アーム部(821)の水平下壁部分よりなる第1被当接部(822)に当接するように横向きに倒れており(第1位置)、上部操作レバー(8)の揺動に際して第1上部踏桟(4C)とは干渉しないようになっている。一方、
図10(c)に示すように、梯子兼用脚立(1)を梯子として使用するために一方の梯子体(例えば前梯子(2F))が上下反転させられた際には、同梯子体の揺動ストッパ(84)が、自重により
図10(c)の反時計回り方向である第2揺動方向に揺動して、その第2揺動方向側の側部に設けられた第2当接部(843)が、第1エンドキャップ(82)の一部(
図10(c)では上部)よりなる第2被当接部(823)に当接させられ、上部操作レバー(8)のレバー本体(81)と第1上部踏桟(4C)の背面との間に挟まるように位置させられる(第2位置)。そのため、図示のように梯子体が上下反転した状態では、揺動ストッパ(84)の他端部に設けられた第3当接部(844)が、第1上部踏桟(4C)における背面と下面との間のコーナー部よりなる第3被当接部(42)に当接させられることによって、上部操作レバー(8)がロック解除操作方向(
図10(c)の反時計回り方向)に揺動するのが阻止されるので、例えば梯子を上り下りする際に上部操作レバー(8)を押してしまった場合でも、ロック機構(7)による伸縮脚部材(6)のロックが誤って解除されることがなく、安全に使用することができる。
【0022】
レバー本体(81)の両端部のうち第1上部踏桟(4C)の長さ中央に近い側である左右方向内端部には、第2エンドキャップ(83)が嵌め被せられている。第2エンドキャップ(83)は、合成樹脂成形品よりなり、その片面から突出するように形成された横断面略十字形の差込部(832)をレバー本体(81)の左右方向内端部内に嵌め込むことにより、同端部に固定されている。
第2エンドキャップ(83)には、レバー戻し用板バネ部(レバー戻し用付勢部材)(831)が一体に形成されている。板バネ部(831)は、正面より見て略舌状のものであって、第2エンドキャップ(83)から左右方向外方に向かって斜め前方に湾曲状にのびて、上部操作レバー(8)と第1上部踏桟(4C)の背面との間に介在されており、そのばね弾性力によって上部操作レバー(8)を第1上部踏桟(4C)の背面から離れる方向に付勢する。
【0023】
各伝動部材(9)は、左右各支柱(3)と最下段の踏桟(4A)および下から2段目に位置する第2上部踏桟(4B)の左右各端部との間隙(S)に通されて各支柱(3)の長さ方向に沿ってスライド自在となされた昇降バー(91)を有している。昇降バー(91)は、前後縁部が左右方向外方に折り曲げられた略帯板状のものである。昇降バー(91)の長さは、支柱(3)の左右方向内側部における第1上部踏桟(4C)の下面から最下段の踏桟(4A)の上面までの長さよりもやや短い程度となされている。昇降バー(91)の幅は、支柱(3)の左右方向内側部の幅よりもやや小さい幅を有している。
昇降バー(91)の下端部には、縦長帯状の連通窓(911)が形成されている。この連通窓(911)は、支柱(3)内に挿入された伸縮脚部材(6)の上端部に抜け止め用キャップ(62)を嵌合固定する際に使用されるものである。抜け止めキャップ(62)は、左右方向内方に突出した抜け止め部(621)を有しており、この抜け止め部(621)がカバー部材(103)の上端縁と当接することによって、伸縮脚部材(6)が支柱(3)から抜け落ちるのが防止される。昇降バー(91)に連通窓(911)を設けることにより、前梯子体(2F)の組立の最終工程で伸縮脚部材(6)の上端部に抜け止めキャップ(62)を嵌合固定することが可能になるので、組立作業が簡単になる。
【0024】
支柱(3)内における第1上部踏桟(4C)の下方部分には、スライダ(92)が支柱(3)の開口を通じてスライド自在に収容されている。また、スライダ(92)は、昇降バー(91)の上端部に連結されている。
スライダ(92)は、略方形ブロック状の合成樹脂成形品よりなり、その左右方向内側面の下部に昇降バー(91)の上端部がリベット等によって連結固定されている。
スライダ(92)の上面には、前上がり傾斜状のカム面(921)が形成されている。このカム面(921)の上を、上部操作レバー(8)の揺動に伴って、カム軸(821a)が摺動させられるようになっている。これらのカム面(921)およびカム軸(821a)が、上部操作レバー(8)の揺動運動をスライダ(92)および昇降バー(91)の上下運動に変換するカム機構(上部連動機構)を構成している。つまり、上部操作レバー(8)をロック解除操作方向(
図10(a)(b)の反時計回り方向)に揺動させると、カム軸(821a)がカム面(921)の上をその下端部から上端部に向かって摺動させられることにより、スライダ(92)が押し下げられ、ひいては昇降バー(91)が下方にスライドさせられる。
スライダ(92)には、カム面の下端部の上方に位置するようにロック状態保持用ストッパ部(922)が設けられている。ストッパ部(922)は、スライダ(92)のカム面(921)の左右方向外側縁から立ち上がった外側壁部に、カム面(921)側に向かって突出するように設けられた略水平棒状のものであって、上部操作レバー(8)が第1上部踏桟(4C)の背面から離れる方向に揺動させられた際に、カム軸(821a)の上方に位置するようになっている。従って、例えば昇降バー(91)に手が触れる等して昇降バー(91)に意図しない下向きの外力が作用した場合であっても、カム軸(821a)にその上方からストッパ部(922)が当接し、それによって、スライダ(92)および昇降バー(91)が下方にスライドして伸縮脚部材(6)のロックが解除されるのが防止される。
【0025】
昇降バー(91)の下端部には、押圧部材(93)が取り付けられている。押圧部材(93)は、略縦長板状のものであって、例えば合成樹脂成形品よりなる。押圧部材(93)は、その裏面の高さ中間位置に昇降バー(91)の下端面を受ける段差部(932)を有しており、例えばリベットによって昇降バー(91)の下端部に連結固定されている。
押圧部材(93)の下端部は、それよりも上方部分よりも幅狭となされており、同下端部が、係止部材(72)の係止部(721)の上面に近接または当接して位置させられる押圧部(931)となされている。
【0026】
次に、上記の遠隔操作機構を使用して、ロック機構(7)による伸縮脚部材(6)のロックを解除する操作の手順を説明する。
すなわち、上部操作レバー(8)を第1上部踏桟(4C)と一緒に片手で握ってロック解除操作方向に揺動させると、カム軸(821a)がカム面(921)上を前方に向かって摺動させられ、それによってスライダ(92)、昇降バー(91)および押圧部材(93)が下方にスライドさせられる。すると、押圧部材(93)の押圧部(931)が係止部材(72)の係止部(721)上面を押圧して、係止部材(72)がロック解除方向に回動させられ、ラック(71)の歯(711)と係止部(721)の歯(721a)との噛み合い(係合)が解除される。これにより、伸縮脚部材(6)が支柱(3)に対してスライド自在となるので、伸縮脚部材(6)を所要長さ分だけ伸縮させることができる。
上部操作レバー(8)から手を離すと、スプリング(73)のばね弾性力によって係止部材(72)がロック方向に回動させられ、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)に噛み合わせられ、伸縮脚部材(6)が再びロックされる。また、係止部材(72)の上記回動により、係止部(721)が押圧部材(93)の押圧部(931)を上向きに押圧する。これに伴い、スライダ(92)、昇降バー(91)および押圧部材(93)が上方にスライドさせられ、さらに、カム軸(821a)がカム面(921)上を後方に向かって摺動させられ、それによって、上部操作レバー(8)が第1上部踏桟(4C)の背面から離れる方向に揺動させられる。上部操作レバー(8)の上記方向への揺動には、レバー戻し用板バネ部(831)のばね弾性力も作用するので、上部操作レバー(8)が非操作時の待機位置まで速やかにかつ確実に戻る。
以上の通り、この実施形態の伸縮脚装置(5)によれば、伸縮脚部材(6)のロック解除操作を、梯子体(2F)(2R)の下から3段目に位置する第1上部踏桟(4C)の背面に設けられた上部操作レバー(8)により行うため、立ったままの楽な姿勢で簡単に行うことができる。
また、上記ロック解除操作は、左右の伸縮脚部材(6)について個別に行われる他、左右の上部操作レバー(8)を第1上部踏桟(4C)と一緒に片手で同時に握れば、左右の伸縮脚部材(6)のロック解除を同時に行うことも可能であるので、利便性に優れている。
さらに、この実施形態の伸縮脚装置(5)によれば、梯子兼用脚立(1)をその一方の梯子体(2F)を上下反転させて梯子として使用する場合でも、上部操作レバー(8)が第1上部踏桟(4C)の正面や上面(踏面)に現れないので、梯子の使用に支障を来すおそれがない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、梯子兼用脚立として好適に使用されるものである。
【符号の説明】
【0028】
(1):梯子兼用脚立
(2F):前梯子体
(2R):後梯子体
(3):支柱
(4A):最下段の踏桟
(4B):第2上部踏桟(下から数えて2段目の踏桟)
(4C):第1上部踏桟(下から数えて3段目の踏桟)
(41):ヒンジ形成用嵌合凹溝
(42):第3被当接部
(5):伸縮脚装置
(6):伸縮脚部材
(61):接地部
(7):ロック機構
(71):ラック(被係止部)
(711):(ラックの)歯
(72):係止部材
(721):係止部
(73):スプリング(付勢部材)
(8):上部操作レバー(上部操作部材)
(81):レバー本体
(811a):ヒンジ形成用嵌合凸条
(82):第1エンドキャップ
(820):揺動ストッパ収容部
(821):アーム部
(821a):カム軸(カム機構、上部連動機構)
(822):第1被当接部
(823):第2被当接部
(83):第2エンドキャップ
(831):レバー戻し用板バネ(レバー戻し用付勢部材)
(84):揺動ストッパ
(841):差込部(揺動軸)
(842):第1当接部
(843):第2当接部
(844):第3当接部
(9):伝動部材
(91):昇降バー
(92):スライダ
(921):カム面(カム機構、上部連動機構)
(922):ロック状態保持用ストッパ部
(10)(11):ブラケット
(S):最下段の踏桟の左右各端部ならびに第2上部踏桟の左右各端部と各支柱との間隙