(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】スノーボードビンディング用プレート
(51)【国際特許分類】
A63C 10/28 20120101AFI20240314BHJP
【FI】
A63C10/28
(21)【出願番号】P 2022574943
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2021000998
(87)【国際公開番号】W WO2022153429
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517127366
【氏名又は名称】株式会社 JP TIGHT
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】粟國 朝嗣
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-300713(JP,A)
【文献】米国特許第07966154(US,B2)
【文献】国際公開第2018/189984(WO,A1)
【文献】[Online]これまでにない滑りを体感!新スノーボード用品を特別先行販売!,2019年12月20日,https://web.archive.org/web/20191220132648/https://readyfor.jp/projects/platepia,[2021年3月25日検索]
【文献】サーフィンやスケボーもデータ記録が可能に!ボードに取り付けられる「TRACE」が優秀!,[Online]HACKTSU,2017年10月13日,https://hacktsu.com/sports_outdoor/sports/2189/,[2021年3月25日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 10/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板形状のボード本体に取付けられるべきビンディングの足底部に形成されている貫通孔であるセンターホールに対して噛合するリングと、
該リングに対して係合されているカップであって、該カップの底面を形成する底部と、該底部の外周縁から上方に延びている側部と、該側部の上端から外方に向けて広がるように延びているフランジ部とを含むカップと、
前記底部を貫通して設けられて前記ボード本体に対して螺合するビスが挿通されるためのビス孔と、
該ビス孔に対応する挿通孔を有して前記カップ内に収容されているケースとを備えたことを特徴とするスノーボードビンディング用プレート。
【請求項2】
前記底部はその中心から前記ビス孔を含む部分まで円形状に広がる表面が面一な平坦領域を有し、
前記ケースの底面はその全面が面一な平坦に形成されていて、
前記平坦領域と前記ケースの底面とは密着していることを特徴とする請求項1に記載のスノーボードビンディング用プレート。
【請求項3】
前記底部はその中心部分に貫通孔である孔部を有し、
該孔部を横断する少なくとも1本の橋架部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスノーボードビンディング用プレート。
【請求項4】
前記リングの周方向に対して連続した凹凸形状となるような凸部及び凹部が形成されていて、該凸部及び凹部は前記リングの上面から内側面にかけて連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスノーボードビンディング用プレート。
【請求項5】
前記リングの上面であって外周縁側に係止片が上方に向けて突出し、
前記フランジ部の外周縁側には前記係止片が収まる形状に切欠かれた切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスノーボードビンディング用プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スノーボードビンディング用プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
スノーボーダーに対して、本来的なビンディングの柔軟性を与えることを目的としたスノーボードビンディング用プレートが知られている(例えば特許文献1参照)。このような従来のプレートは、ビンディングの足底部に予め形成されている貫通孔であるセンターホールに対して噛合により固定されている。特に特許文献1のプレートは、その構造を市販のものから見直し、利用者に対して新規な感覚で柔軟性を与えるものであった。
【0003】
近年では、スノーボード走行中のボード本体の回転角や滑降速度等、走行中のデータを取得するためのセンサをボード本体に取付けたいという要望がある。あるいは、ボード本体に付随して何らかの小物を収容させておきたいという要望もある。あるいは、盗難防止等の目的でボード本体にGPS装置を取付けておきたいという要望もある。これらはすなわち、何らかのケースをボード本体に取付けたいという要望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボード本体はほぼ板形状であるため、ボード本体を加工してそのようなケースを取付けることは困難である。また、ボード本体に取付けられているビンディングについても、必要最小限の構造体で形成されているので、そのようなケースを取付けることは困難である。ボード本体やビンディングに加工を施してそのようなケースを取付ける箇所を形成することは、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えるおそれがある。このため、ボード本体やビンディングに対して現在の外形を変化させるような加工を施すことは好ましくない。したがって、現在においてセンサや小物入れ、あるいはGPS装置を走行性に影響を与えずにボード本体あるいはビンディングに取付けるということは困難である。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えることなく、ボード本体及びビンディングにスペースを形成でき、そのスペースに確実にケースを収容することができるスノーボードビンディング用プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、略板形状のボード本体に取付けられるべきビンディングの足底部に形成されている貫通孔であるセンターホールに対して噛合するリングと、該リングに対して係合されているカップであって、該カップの底面を形成する底部と、該底部の外周縁から上方に延びている側部と、該側部の上端から外方に向けて広がるように延びているフランジ部とを含むカップと、前記底部を貫通して設けられて前記ボード本体に対して螺合するビスが挿通されるためのビス孔と、該ビス孔に対応する挿通孔を有して前記カップ内に収容されているケースとを備えたことを特徴とするスノーボードビンディング用プレートを提供する。
【0008】
好ましくは、前記底部はその中心から前記ビス孔を含む部分まで円形状に広がる表面が面一な平坦領域を有し、前記ケースの底面はその全面が面一な平坦に形成されていて、前記平坦領域と前記ケースの底面とは密着している。
【0009】
好ましくは、前記底部はその中心部分に貫通孔である孔部を有し、該孔部を横断する少なくとも1本の橋架部が形成されている。
【0010】
好ましくは、前記リングの周方向に対して連続した凹凸形状となるような凸部及び凹部が形成されていて、該凸部及び凹部は前記リングの上面から内側面にかけて連続して形成されている。
【0011】
好ましくは、前記リングの上面であって外周縁側に係止片が上方に向けて突出し、前記フランジ部の外周縁側には前記係止片が収まる形状に切欠かれた切欠き部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケースはビンディングの足底部に収容されるプレートを構成するカップ内のスペースに収容されるため、従来用いられているボード本体やビンディングが加工されることはない。このため、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えることなく、ボード本体及びビンディングにスペースを形成でき、そのスペースに確実にケースを収容することができる。また、ケースにはビス孔に対応した挿通孔が形成されているため、ビス孔に配されたビスの頭が挿通孔内に突出してケースの位置を固定することになり、ケースが周方向に回転してしまうことが防止される。このとき、ビス孔が真円形状であればカップとともにケースの回転も抑制される。
【0013】
また、カップの底部に配された平坦領域とケースの底面とが面一な平坦にて密着するので、プレートが足で踏まれることにより押圧されたとしてもその力を平面の全面で受けることができ、ケースが破損してしまうことを極力防止できる。また、平坦領域を設けることでケースがぐらつくことはなく、ケースの高さも側部の高さと同程度にすることができ、カップ内の空間を効率よく利用することができる。
【0014】
また、孔部を設けることでプレート全体として柔軟性を付与することができ、さらにここに橋架部を設けることである程度の剛性も付与することができる。すなわち、孔部のみでは柔らかすぎて操作性に影響が出てしまったが、橋架部を少なくとも1本設けることで剛性を付与でき、柔らかすぎず固すぎない操作性を与えることができる。これは、ケースを収容するためのスペースをプレートに設けたとしても、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えないことに寄与している。
【0015】
また、リングに凸部及び凹部を設けることで、リング自体が捻られやすくなり、プレートにある程度の柔軟性を付与することができる。このため、利用者にちょうどよい操作性を与えることができる。これは、ケースを収容するためのスペースをプレートに設けたとしても、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えないことに寄与している。またこの凸部及び凹部があることで、金型による成型の際に収縮して形状が多少変化してもいいようになっている。これは、生産性の向上につながる。
【0016】
また、係止片と切欠き部がリング及びフランジ部の外周縁側に形成されているため、フランジ部に孔を設けてここにリングから突出した突起を嵌め込むことよりも強度を向上させることができる。すなわち、そのような突起を樹脂のリングに形成することはすぐに折れてしまうため、強度が弱いため好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るスノーボードビンディング用プレートがビンディングに収められた状態を示す概略図である。
【
図2】本発明に係るスノーボードビンディング用プレートの分解斜視図である。
【
図4】ビンディングを介してボード本体に嵌め込まれた状態のカップ及びリングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明に係るスノーボードビンディング用プレート1は、スノーボードをする際に用いられる略板形状のボード本体(不図示)に対して取付けられるべきビンディングBに収容されるものである。ビンディングBは利用者が履いているスノーブーツを固定するためのものであり、これにより利用者はボード本体と一体となって雪面を滑走することができる。ビンディングBはその足底部にボード本体と密着するベースプレートB1を有し、プレート1はこのベースプレートB1に形成されている貫通孔であるセンターホールB2に収容される。なお、プレート1がセンターホールB2に収容された後、その上には柔軟性素材からなるカバー材(不図示)が覆われる。このカバー材はフットカバーやパッドと称されている。
【0019】
その他、ビンディングBは足首からふくらはぎを支えるハイバックB3や、このハイバックB3の下側に配されて足首やかかとを固定するためのヒールカップB4を備えている。スノーブーツの前側は、足首廻りはアンクルストラップB5にて、つま先廻りはトゥーストラップB6にて覆われて固定される。なお、本発明に係るスノーボードビンディング用プレート1は、センターディスクと称される場合もある。
【0020】
図2~
図8を用いて本発明に係るスノーボードビンディング用プレート1を説明する。センターホールB2の外周には、細かい凹凸形状からなる歯(不図示)が形成されている。プレート1はリング2を有し、このリング2には、この歯に噛合するための歯部3がその外周下面(底面)に形成されている。このリング2には、カップ4が係合される。このカップ4は、その底面を形成する底部4aと、この底部4aの外周縁から上方に延びている側部4bと、この側部4bの上端から外方に向けて広がるように延びているフランジ部4cとを備えている。
【0021】
プレート1は、ビス5を介してボード本体に固定される。ビス5はカップ4の底部4aを貫通して設けられたビス孔6を挿通してボード本体に螺合される。そして、カップ4内にはケース7が収容されている。ケース7にはビス孔6に対応する挿通孔8が形成されていて、この挿通孔8内にはビス5の頭が配設されている。例えば、図のようにビス孔6が4つの場合はケース7にも同じ位置に4つ挿通孔8が形成される。
【0022】
このように、本発明によれば、ケース7はビンディングBの足底部であるベースプレートB1に収容されるプレート1を構成するカップ4内のスペースに収容されるため、従来用いられているボード本体やビンディングBが加工されることはない。このため、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えることなく、ボード本体及びビンディングBにスペースを形成でき、そのスペースに確実にケース7を収容することができる。また、ケース7にはビス孔6に対応した挿通孔8が形成されているため、ビス孔6に配されたビス5の頭が挿通孔8内に突出してケース7の位置を固定することになり、ケース7が周方向に回転してしまうことが防止される。このとき、ビス孔6が真円形状であればカップ4とともにケース7の回転も抑制される。すなわち、ビス孔6が真円形状であれば、ビス5はビス孔6の位置で確実に固定されるので、このビス5により固定されるケース7も確実にその位置が固定されることになる。リング2及びカップ4は樹脂や金属、カーボン素材等で形成することができる。なお、リング2とカップ4とを別々の素材、例えばリング2を樹脂製、カップ4を金属製(例えばチタン)とすれば、これら材質の異なるものが互いに係止してプレートを形成することでよりよい操作性が付与されるため好ましい。
【0023】
底部4aは、その中心からビス孔6を含む部分まで円形状に広がる表面が面一な平坦領域9を有している(
図5の点線で示す平坦領域9)。換言すれば、平坦領域9には底面のある溝のようなものや隆起しているような凹凸形状がなく、貫通孔であるビス孔6や後述する孔部10のようなものが配されているのみである。そして、ケース7の底面もその全面が面一な平坦に形成されている。したがって、ケース7をカップ4内に収容した際に、平坦領域9とケース7の底面とは密着される。
【0024】
このように、カップ4の底部に配された平坦領域9とケース7の底面とが面一な平坦にて密着するので、プレート1が足で踏まれることにより押圧されたとしてもその力を平面の全面で受けることができ、ケース7が破損してしまうことを極力防止できる。また、平坦領域9を設けることでケース7がぐらつくことはなく、ケース7の高さも側部4bの高さと同程度にすることができ、カップ4内の空間を効率よく利用することができる。
【0025】
一方で、カップ4の底部4aには、その中心部分に貫通孔である孔部10が配されている。この孔部10があることで、カップ4もある程度撓むことができるので、利用者にとっての操作性が向上する。また、この孔部10を横断するように、少なくとも1本の橋架部11が形成されていてもよい。すなわち、少なくとも1本の橋架部11が配されるので、孔部10は少なくとも2つあることになる。なお、
図5を参照すれば明らかなように、この例では1本の橋架部11の途中が枝分かれしている例を示し、したがって孔部10は3つある。橋架部11は直線形状でもいいし、図の例のように曲線でもよい。
【0026】
このような孔部10を設けることで、プレート1全体としての柔軟性を付与することができ、さらにここに橋架部11を設けることで、ある程度の剛性も付与することができる。すなわち、孔部10のみでは柔らかすぎて操作性に影響が出てしまったが、橋架部11を少なくとも1本設けることで剛性を付与でき、柔らかすぎず固すぎない操作性を与えることができる。これは、ケース7を収容するためのスペースをプレート1に設けたとしても、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えないことに寄与している。
【0027】
また、リング2には、その周方向に対して連続した凹凸形状となるような凸部12及び凹部13が形成されている。この凸部12及び凹部13は、リング2の上面から内側面にかけて連続して形成されている。
【0028】
このように、リング2に凸部12及び凹部13を設けることで、リング2自体が捻られやすくなり、プレート1にある程度の柔軟性を付与することができる。このため、利用者にちょうどよい操作性を与えることができる。これは、ケース7を収容するためのスペースをプレート1に設けたとしても、スノーボードの操作性や走行性に影響を与えないことに寄与している。またこの凸部12及び凹部13があることで、金型による成型の際に収縮して形状が多少変化してもいいようになっている。これは、生産性の向上につながる。
【0029】
また、リング2の上面であって外周縁側には、係止片14が上方に向けて突出している。そして、カップ4のフランジ部4cの外周縁側には、係止片14が収まる形状に切欠かれた切欠き部15が形成されている。
【0030】
このように、係止片14と切欠き部15がリング2及びフランジ部4cの外周縁側に形成されているため、フランジ部4cに孔を設けてここにリング2から突出した突起を嵌め込むことよりも強度を向上させることができる。すなわち、そのような突起を樹脂のリングに形成することはすぐに折れてしまうため、強度が弱いため好ましくない。また、係止片14及び切欠き部15はリング2及びカップ4の外周縁側に形成されているので、加工が容易であり生産性の観点からも好ましい。なお、図のように他と異なる大きさの係止片14及び切欠き部15を少なくとも1個(図では90°ごとに大きな係止片14及び切欠き部15が4個、その間30°ごとに小さな係止片14及び切欠き部15が12個)設けておくことで、リング2とカップ4との係合に際しての位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
図8を参照すれば明らかなように、ケース7に加速度センサ、回転角検出センサ、あるいは速度センサを収容した場合は、外部接続用のコネクタ部16を設けてもよい(例えばUSBコネクタ)。また本発明では、このケース7として、小物入れやGPS装置も適用可能である。カップ4がボード本体に取付けられた状態では、ビス5の頭が底部4aから上方に突き出しているので、ビス孔6をこれに合わせて落とし込むだけで容易にケース7をカップ4内に収容できる。この点でも取り扱いが容易である。そして、ビス5の頭によりビス孔6が回転方向に引っかかるので、一度ケース7を収容した後は、ケース7が回転することはない。このため、ケース7が回転してしまうことにより影響を受けてしまうようなセンサであっても(例えば進行方向に対する回転角度センサ)、このケース7内に収容して適用可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1:スノーボードビンディング用プレート、2:リング、3:歯部、4:カップ、4a:底部、4b:側部、4c:フランジ部、5:ビス、6:ビス孔、7:ケース、8:挿通孔、9:平坦領域、10:孔部、11:橋架部、12:凸部、13:凹部、14:係止片、15:切欠き部、16:コネクタ部、B:ビンディング、B1:ベースプレート、B2:センターホール、B3:ハイバック、B4:ヒールカップ、B5:アンクルストラップ、B6:トゥーストラップ