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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/14 20060101AFI20240314BHJP
   F16G 11/00 20060101ALI20240314BHJP
   E04G 1/04 20060101ALI20240314BHJP
   E04G 7/32 20060101ALI20240314BHJP
   E04G 21/16 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
E04G1/14 Z
F16G11/00 Q
E04G1/04
E04G7/32 A
F16G11/00 N
E04G21/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023097569
(22)【出願日】2023-06-14
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592178303
【氏名又は名称】東阪工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】松下 正文
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝則
(72)【発明者】
【氏名】内藤 賢
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180463(JP,A)
【文献】特開2014-009453(JP,A)
【文献】実開平04-045845(JP,U)
【文献】特開2021-008767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/14
E04G 1/04
E04G 7/32
B66C 1/10
B66C 1/14
B66C 1/34
B66C 1/36
B66C 1/62
F16G 11/00
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱を含む複数の足場構成部材からなる足場ユニットを吊るして移動させるための吊り作業装置に前記足場ユニットを連結する際に用いられる連結具であって、
前記支柱の所定高さの外面に接合されている受金具の下方に配置されるベース部と、
前記ベース部から上方に延び、前記受金具に上下方向へ貫通するように形成されている挿入孔に下方から挿入される挿入部と、
前記ベース部に水平軸を中心に揺動自在に取り付けられて、前記吊り作業装置に連結される連結部とを備え、
前記挿入部は、前記挿入孔に挿入された状態において前記受金具から上方に突出させられる上方突出部を有しており、
前記上方突出部に、前記挿入部が前記挿入孔から抜け落ちるのを防止するための抜け止め手段が設けられており、
前記抜け止め手段は、前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合して前記挿入部が前記挿入孔から抜け落ちるのを防止するための係合状態と、前記挿入部の前記挿入孔への挿入および前記挿入孔からの抜去を可能とするための係合解除状態とに切り替え可能に構成されている係合部材を含んでおり、
さらに、前記ベース部の上面に凸部が形成されており、前記凸部は、前記挿入部を前記挿入孔に下方から挿入した場合は前記受金具の下面に当接せず、かつ、前記挿入部を前記挿入孔に上方から挿入した場合は受金具の上面に当接するように構成されており、それにより、前記挿入部を前記挿入孔に下方から挿入した場合は、前記係合部材が係合解除状態から係合状態へ切り替えられて前記抜け止め手段が機能する位置まで挿入可能であり、かつ、前記挿入部を前記挿入孔に上方から挿入した場合は、前記係合部材が係合解除状態から係合状態へ切り替えられる位置まで挿入できないため、前記抜け止め手段が機能せず、前記挿入部が前記挿入孔から上方に抜けるように構成されている、連結具。
【請求項2】
前記係合部材は、その一部が前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合する係合部位とされ、前記係合部位が平面より見て前記挿入孔から外側に突出している係合位置において前記抜け止め手段は前記係合状態となり、前記係合部位が平面より見て前記挿入孔の内側に収まっている係合解除位置において前記抜け止め手段は前記係合解除状態となりうるように構成されており、
前記抜け止め手段は、前記係合部位を前記係合位置へ位置させるように前記係合部材を付勢するための付勢部材を含んでいる、請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記係合部材は、前記上方突出部に側方へ開口するように形成されたピン孔に抜き差し自在に差し込まれる係合ピンからなり、前記係合ピンは、前記ピン孔に差し込まれた状態において少なくとも一方の端部が、前記上方突出部から側方へ突出させられて前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合しうるように構成されている、請求項1に記載の連結具。
【請求項4】
前記ピン孔は、その両端が開口するように貫通状に形成されており、
前記係合ピンは、前記ピン孔に差し込まれた状態においてその両端部が前記上方突出部から側方へ突出させられるように構成されており、さらに、一端部が前記ピン孔の一方の開口縁に係合するように形成されたピン頭部とされ、かつ、他端部が、前記上方突出部から側方へ突出させられた状態において、その先端が折れ曲げられて前記ピン孔の他方の開口縁に係合させられることで、前記係合ピンが前記ピン孔から抜けるのが防止されるように構成されている、請求項3に記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築工事現場等で組み立てられる仮設足場において、大組・大バラシと呼ばれる工法に用いられる連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設足場は、建築工事現場において、例えば、家屋、ビル等の建築物の建築作業、メンテナス作業、解体作業のために建築物の周囲に設置される作業用の足場である。そして、建築工事作業、メンテナンス作業が完了すると仮設足場は撤去される。従って、仮設足場は、建築工事現場において作業者が容易に組み立て可能かつ容易に解体可能となるように、支柱、水平材、足場板および筋交い等の複数の足場構成部材から構成されている。
【0003】
仮設足場の設置作業においては、予め地上において部分的に組み立てた足場(以下、部分的に組み立てられた足場を「足場ユニット」という。)を、クレーン等の吊り作業装置によって吊り上げ、既設の仮設足場に積み上げる工法、いわゆる大組工法が用いられる。また、撤去作業においては、足場ユニット単位でクレーン等の吊り作業装置によって吊り上げて既設の仮設足場から取り外して、地上に降ろし、地上において各足場構成部材に解体する工法、いわゆる大バラシ工法が用いられる。大組工法および大バラシ工法は、足場ユニットの組み立ておよび解体を地上で行うため、仮設足場を構成する各足場構成部材を1つ1つ昇降させる必要がなくなり、仮設足場の設置および撤去における作業効率が向上するとともに、作業者による高所での作業機会が減り、組み立て時および解体時の安全性が向上する。大組工法および大バラシ工法において、足場ユニットはクレーン等の吊り作業装置によって吊り上げられ、移動させられるが、その際、足場ユニットと吊り作業装置のワイヤロープ等とを連結するための連結具が用いられる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、係合孔を有するフランジが設けられた支柱に取り付けられる連結具が開示されている。この連結具は、一対の台形部材からなる本体部と、くさび部材とを備えている。本体部は、ワイヤロープ等を接続するシャックルを支持している。また、本体部は、くさび部材を支持する第1支持ピンおよび第2支持ピンと、フランジが挿入される凹部と、一対の台形部材同士を結合する結合部材とを有する。くさび部材は、一対の台形部材に挟まれながら本体部に対して上下方向に移動可能に支持されている。連結具を支柱に取り付ける場合、連結具は、くさび部材が上方に引き上げられた状態で、本体部の凹部にフランジが挿入される。そして、凹部から挿入されたフランジの係合孔にくさび部材が上方から挿入され、くさび部材の上端をハンマー等で衝打されることにより、くさび部材がフランジの係合孔に緊結される。これにより、連結具の本体部がフランジを覆うようにして支柱に連結される。この連結具を用いて足場ユニットを吊り上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6395207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された連結具は、くさび部材を係合孔に嵌入することにより、足場ユニットの吊り上げ作業において連結具に吊り上げ荷重がかかった際に本体部およびフランジの連結が保たれうるように構成されている。すなわち、くさび部材がなければ、本体部とフランジとの連結が解除され、上記連結具はその機能を果せず、足場ユニットを吊り上げることができなくなるため、くさび部材が必須の構成とされている。加えて、吊り上げ荷重はくさび部材にもかかるため、かつ、くさび部材は本体部の内部で上下移動自在に保持される必要があるため、上記連結具は簡易でコンパクトな構成とすることが難しい。また、くさび部材は、ハンマー等で打ち込まれてフランジの係合孔に嵌め込まれ、くさび効果による摩擦力によってフランジの係合孔内に保持されている。従って、上記連結具は、ハンマー等の打ち込み力、くさび部材およびフランジの形状等によってフランジとくさび部材との間に発生している摩擦力が変動するため、フランジとくさび部材との緊結状態の管理が難しい。さらに、ハンマーなどの打ち込みの力が弱いと、くさび部材に下から上に押し上げる力が加わった場合等に意図せずにくさび部材がフランジの係合孔から抜けてしまう可能性があり、これが足場ユニットの吊り上げ作業中の上記連結具に吊り上げ荷重がかかっている状態であれば、連結具がフランジから外れ、大きな事故につながるおそれもあった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で、足場ユニットと吊り作業装置とを確実に連結する連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)複数の支柱を含む複数の足場構成部材からなる足場ユニットを吊るして移動させるための吊り作業装置に前記足場ユニットを連結する際に用いられる連結具であって、
前記支柱の所定高さの外面に接合されている受金具の下方に配置されるベース部と、
前記ベース部から上方に延び、前記受金具に上下方向へ貫通するように形成されている挿入孔に下方から挿入される挿入部と、
前記ベース部に水平軸を中心に揺動自在に取り付けられて、前記吊り作業装置に連結される連結部とを備えている、連結具。
【0010】
2)前記挿入部は、前記挿入孔に挿入された状態において前記受金具から上方に突出させられる上方突出部を有しており、
前記上方突出部に、前記挿入部が前記挿入孔から抜け落ちるのを防止するための抜け止め手段が設けられている、上記1)に記載の連結具。
【0011】
3)前記抜け止め手段は、前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合して前記挿入部が前記挿入孔から抜け落ちるのを防止するための係合状態と、前記挿入部の前記挿入孔への挿入および前記挿入孔からの抜去を可能とするための係合解除状態とに切り替え可能に構成されている係合部材を含んでいる、上記2)に記載の連結具。
【0012】
4)前記係合部材は、その一部が前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合する係合部位とされ、前記係合部位が平面より見て前記挿入孔から外側に突出している係合位置において前記抜け止め手段は前記係合状態となり、前記係合部位が平面より見て前記挿入孔の内側に収まっている係合解除位置において前記抜け止め手段は前記係合解除状態となるように構成されており、
前記抜け止め手段は、前記係合部位を前記係合位置へ位置させるように前記係合部材を付勢するための付勢部材を含んでいる、上記3)に記載の連結具。
【0013】
5)前記係合部材は、前記上方突出部に側方へ開口するように形成されたピン孔に抜き差し自在に差し込まれる係合ピンからなり、前記係合ピンは、前記ピン孔に差し込まれた状態において少なくとも一方の端部が、前記上方突出部から側方へ突出させられて前記受金具における前記挿入孔の上端縁に係合しうるように構成されている、上記3)に記載の連結具。
【0014】
6)前記ピン孔は、その両端が開口するように貫通状に形成されており、
前記係合ピンは、前記ピン孔に差し込まれた状態においてその両端部が前記上方突出部から側方へ突出させられるように構成されており、さらに、一端部が前記ピン孔の一方の開口縁に係合するように形成されたピン頭部とされ、かつ、他端部が、前記上方突出部から側方へ突出させられた状態において、その先端が折れ曲げられて前記ピン孔の他方の開口縁に係合させられることで、前記係合ピンが前記ピン孔から抜けるのが防止されるように構成されている、上記5)に記載の連結具。
【0015】
7)前記挿入部を前記挿入孔に上方から挿入した状態での前記吊り作業装置および前記足場ユニットの連結が防止されうるように構成されている、上記3)に記載の連結具。
【発明の効果】
【0016】
上記1)の連結具によれば、挿入部を受金具に下方から挿入する構成であるため、足場ユニットの吊り作業において連結具に上方へ吊り上げ荷重がかかった際、連結具が受金具から抜け落ちるおそれがなく、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で、足場ユニットと吊り作業装置とを確実に連結する。
【0017】
上記2)の連結具によれば、抜け止め手段を備えているため、連結具に上方へ吊り上げ荷重がかかっていない状態でも連結具が受金具から抜け落ちるおそれがない。さらに、挿入部を受金具に下方から挿入する構成、かつ、挿入部の上方突出部に抜け止め手段を備えている構成であるため、足場ユニットの吊り作業においても抜け止め手段に吊り上げ荷重がかからず、抜け止め手段を形成した連結具であっても簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成とすることができる。
【0018】
上記3)の連結具によれば、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で連結具が受金具から抜け落ちるのを確実に防止することができる。
【0019】
上記4)の連結具によれば、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で連結具が受金具から抜け落ちるのをより確実に防止することができるうえ、受金具への連結具の付け外しの作業を単純化することができる。
【0020】
上記5)の連結具によれば、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で連結具が受金具から抜け落ちるのを確実に防止することができる。
【0021】
上記6)の連結具によれば、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で連結具が受金具から抜け落ちるのを確実に防止することができる。
【0022】
上記7)の連結具によれば、挿入部を挿入孔に上方から挿入した状態で足場ユニットが吊り上げられるのを防止することができ、誤挿入による不完全な連結状態等を原因とする事故を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施形態に係る連結具を使用して吊り作業装置で足場ユニットを吊り上げた状態を示す概略図である。
図2図1のII―II線に沿う水平断面図である。
図3】この発明の第1の実施形態に係る連結具を示し、(A)は側面図、(B)は受金具に挿入された状態の正面図であり、(C)は受金具に挿入されて吊り作業装置に連結された状態の側面図である。
図4】この発明の第2の実施形態に係る連結具を示し、(A)は側面図、(B)は受金具に挿入された状態の正面図であり、(C)は受金具に挿入されて吊り作業装置に連結された状態の側面図である。
図5】この発明の第3の実施形態に係る連結具を示し、(A)は側面図、(B)は受金具に挿入された状態の正面図であり、図中、一点鎖線Vで囲まれた部分は一点鎖線vで囲まれた部分の詳細を示す拡大断面図であり、(C)は受金具に挿入されて吊り作業装置に連結された状態の側面図である。
図6】この発明の第4の実施形態に係る連結具を示し、(A)は側面図、(B)は受金具に挿入された状態の正面図であり、図中、一点鎖線VIで囲まれた部分は一点鎖線viで囲まれた部分の詳細を示す拡大断面図であり、(C)は受金具に挿入されて吊り作業装置に連結された状態の側面図である。
図7】この発明の第5の実施形態に係る連結具を示し、(A)は受金具に下方から挿入された状態の側面図、(B)は受金具に上方から挿入された状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態に係る連結具について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、図3図4図5および図6の(A)および(C)の上下を「上下」、同各左右を「前後」といい、「左右」は前から見た場合の左右をいうものとし、「垂直」および「水平」との用語には垂直から若干傾いた角度、および、水平から若干傾いた角度も含まれるものとする。ただし、これらの図面上での方向による構成部品等の方向の指称は便宜的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。この実施例に記載されている各構成部品の形状、寸法、それらの相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
まず、図1および図2を参照して、この発明の実施形態に第1の係る連結具(101)が用いられる大組工法および大バラシ工法について説明する。まず、予め地上において足場ユニット(U)が形成される。足場ユニット(U)は、仮設足場の一部分を構成するユニットであり、複数の支柱(P)、水平材、足場板および筋交い等の複数の足場構成部材を組み立てて形成される。支柱(P)は、例えば、上下方向に延びる金属製の円筒状部材であり、足場ユニット(U)に前後左右方向へ所定の間隔をおいて立設されている。また、支柱(P)は接続部材を介して上下方向へ他の支柱(P)に連続させられていてもよい。支柱(P)の外周面には、上下方向におよび周方向において所定の間隔をあけて複数の受金具(B)が設けられている。詳細は後述するが、受金具(B)には上下方向へ貫通するように挿入孔(H)が形成されている。支柱(P)と他の足場構成部材とを接続する際、他の足場構成部材の端部、あるいは、他の足場構成部材および受金具(B)を緊結するためのくさび部材が挿入孔(H)に挿入される。このため、受金具(B)は、仮設足場の使用による荷重に耐えうるように、支柱(P)の外周面に溶接等の方法によって接合されているのが好ましい。
【0026】
大組工法および大バラシ工法においては、足場ユニット(U)を吊り上げて移動させるための吊り作業装置として、例えばクレーン(C)と、クレーン(C)のフックに吊り下げられたワイヤロープ(W)とが使用される。ワイヤロープ(W)と足場ユニット(U)とを連結するために、連結具(101)が足場ユニット(U)を構成する支柱(P)に設けられた受金具(B)に取り付けられる。連結具(101)にワイヤロープ(W)を連結し、連結具(101)に連結されたワイヤロープ(W)を介して、クレーン(C)を操作して足場ユニット(U)を吊り上げる。吊り上げられた足場ユニット(U)は、既設の仮設足場の所定の箇所に上方に移動させられ、積み上げられる。また、大バラシ工法においては、設置された仮設足場の所定の足場ユニット(U)を構成する支柱(P)に設けられた受金具(B)に連結具(101)を取り付け、連結具(101)にワイヤーロープ(W)を連結し、取り外す足場ユニット(U)をクレーン(C)で吊り上げて仮設足場から外し、外した足場ユニット(U)を移動させて地上に降ろし、各部材に分解する。上記の大組工法および大バラシ工法においては、クレーン(C)で足場ユニット(U)を吊り上げた際に足場ユニット(U)のバランスを保ちやすいように、複数の連結具(101)(この実施形態においては4つ)がそれぞれ複数の支柱(P)に取り付けられるのが好ましい。
【0027】
次に、図3を参照して、この発明の第1の実施形態に係る連結具(101)の詳細を説明する。連結具(101)は、受金具(B)の下方に配置されるベース部(103)と、ベース部(103)から上方に延び、受金具(B)の挿入孔(H)に下方から挿入される挿入部(102)と、ベース部(103)に水平軸(141)を中心に揺動自在に取り付けられて、ワイヤーロープ(W)に連結される連結部(104)とを備えている。受金具(B)は、平面より見て略コ字形の形状を有し、中央壁および中央壁の側縁部からそれぞれ延びた1対の側壁からなり、両側壁の先端が支柱(P)の外周面に接合されている。受金具(B)の中央壁および両側壁によって画定された空間によって挿入孔(H)が形成されている。受金具(B)の両側壁の上端部はその中程に所要長さの凹部が形成されている。
【0028】
ベース部(103)は、略直方体状の形状を有している。挿入部(102)が受金具(B)の挿入孔(H)に挿入された状態において、ベース部(103)の上面は受金具(B)の下面に接触するように構成されているのが好ましく、面接触するように構成されているのがより好ましい。また、挿入部(102)が受金具(B)の挿入孔(H)に挿入された状態において、ベース部(103)の後面は支柱(P)に接触するように構成されているのが好ましく、支柱(P)の外周面に沿う形状とされて支柱(P)に面接触するように構成されているのがより好ましい。このような構成とすることで、足場ユニット(U)を吊り上げて連結具(101)に吊り上げ荷重がかかった際のがたつきが軽減される。
【0029】
挿入部(102)は、略縦長板状の形状を有し、その下端部がベース部(103)に接合されている。挿入部(102)は、挿入部(102)が受金具(B)の挿入孔(H)に挿入された状態において前記受金具(B)から上方に突出させられる上方突出部(121)を有している。挿入部(102)は、挿入部(102)が受金具(B)の挿入孔(H)に挿入された状態において、挿入部(102)の後面が支柱(P)の外周面に接触するように構成されているのが好ましく、線接触するように構成されているのがより好ましい。また、挿入部(102)の前面は受金具(B)の中央壁の内面に接触するように構成されているのが好ましい。このような構成とすることで、足場ユニット(U)を吊り上げて連結具(101)に吊り上げ荷重がかかった際のがたつきが軽減される。なお、挿入部(102)を挿入孔(H)に下方から挿入しやすいように、挿入部(102)はその前面が上下方向中程から上面に向かって後方へ傾斜させられていてもよい。
【0030】
連結部(104)は水平軸(141)およびU字状部材(143)を含んでいる。詳しい図示は省略するが、U字状部材(143)はその両端部が左右から見て円形の円柱端部とされ、左側円柱端部(144)は左右方向へ貫通状の挿通孔が形成されており、右側円柱端部(145)には内面に雌ネジを有するネジ孔が形成されている。右側円柱端部(145)のネジ孔は左右方向に貫通状に形成されていてもよいし、左側面から左右方向の中程にわたって形成されていてもよい。水平軸(141)は棒状部材とされ、一端部に雄ネジ部が形成されている。水平軸(141)は、一端部側から左側円柱端部(144)の挿通孔に挿通させられて、さらに、ベース部(122)に左右方向へ貫通状に形成された挿通孔に挿通させられ、雄ネジ部が右側円柱端部(145)のネジ孔に螺着される。このようにして、連結部(104)は、ベース部(103)に水平軸(141)を中心として揺動自在に取り付けられている。すなわち、水平軸(141)およびU字状部材(143)から連結部(104)(シャックル)が構成されており、その水平軸(141)にベース部(122)を介して連結具(101)が揺動自在に取り付けられていると言い換えることもできる。水平軸(141)の他端部は、作業者による螺着作業を容易にするためにドーナツ状の把持部(142)とされているのが好ましい。また、連結部(104)、挿入部(102)、ベース部(103)および受金具(B)は、それぞれ連結部(104)の揺動が干渉されない寸法、構成とされるのが好ましい。
【0031】
上記の通り、第1の実施形態に係る連結具(101)によれば、挿入部(102)を受金具(B)に下方から挿入する構成であるため、足場ユニット(U)の吊り作業において連結具(101)に上方へ吊り上げ荷重がかかった際、連結具(101)が受金具(B)から抜け落ちるおそれがなく、簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で、足場ユニット(U)とワイヤロープ(W)とを確実に連結することができる。特に、連結部(104)の揺動軸となる水平軸(141)が受金具(B)の直下に配置される構成とされていることで、吊り作業中にワイヤロープ(W)の角度が変化して、それによりワイヤロープ(W)に連結された連結部(104)が揺動した場合であっても安定して足場ユニット(U)を吊ることができるとともに、受金具(B)に対して下方から荷重がかかることで、受金具(B)および支柱(P)の接合強度を生かすことができ、耐荷重強度の面でも有利である。
【0032】
次に、図4を参照して、この発明の第2の実施形態に係る連結具(201)の詳細を説明する。なお、第1の実施形態に係る連結具(101)と同様の構成については、説明の重複を避けるためにその説明を省略する。
【0033】
連結具(201)は、上方突出部(221)に、挿入部(202)が挿入孔(H)から抜け落ちるのを防止するための抜け止め手段(222)を備えている。詳細には、挿入部(202)の上方突出部(221)に平面より見て前方開口コ字形状の収容部(227)が形成されており、収容部(227)には係合部材(223)が配置されており、係合部材(223)の上端部が収容部(227)の左右の両壁間に貫通孔(224)を介して渡し留められた棒状の支持部材(225)によって揺動自在に支持されている。抜け止め手段(222)は、係合部材(223)が支持部材(225)を軸に揺動させられることで、受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合状態と、挿入部(201)の挿入孔(H)への挿入および挿入孔(H)からの抜去を可能とするための係合解除状態とに切り替え可能に構成されている。より詳細には、係合部材(223)の一部(この実施形態においては下端部)が受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合部位(228)とされ、係合部位(228)が平面より見て挿入孔(H)から外側に突出している係合位置において抜け止め手段(222)は係合状態となり、係合部位(228)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置において抜け止め手段(222)は係合解除状態となりうるように構成されている。抜け止め手段(222)は、さらに、係合部位(228)を係合位置へ位置させるように係合部材(223)を付勢するための付勢部材(226)(この実施形態においては板バネ)を含んでいる。板バネ(226)は左右よりみて略弧形状を有し、一端が係合部材(223)の下端部における後面に当接させられ、他端が後方へ折り曲げられて、収容部(227)の後壁の上部に形成された差し込み孔に差し込み固定されている。上記の構成により、係合部位(228)、すなわち、係合部材(223)の下端部が板バネ(226)によって前方へ付勢されて、受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合位置に位置させられた状態で、係合部材(223)は上方突出部(221)に保持されている。
【0034】
挿入部(202)の挿入時および抜去時、ならびに、挿入された状態における抜け止め手段(222)の操作および作用について以下に説明する。
【0035】
挿入部(202)を受金具(B)に下方から挿入する際、挿入部(202)の上端部を挿入孔(H)へ差し込んでいくと、係合部材(223)の前面が受金具(B)における挿入孔(H)の下端前縁に当接する。そのまま挿入部(221)を上方へ移動させると、係合部材(223)の前面が挿入孔(H)の下端前縁に押され、板バネ(226)の付勢力に抗して係合部材(223)の下端部、すなわち、係合部位(228)が後方に押し込まれていき、さらに挿入部(202)を上方へ移動させると、係合部材(223)の係合部位(228)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置に移動させられて、抜け止め手段(222)は係合解除状態となり、挿入部(202)が挿入孔(H)へ挿入可能となる。この状態で挿入部(202)を上昇させていくと、係合部材(223)が受金具(B)の中央壁に押圧された状態であるため、係合部位(228)は平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置のままとされ、挿入部(202)の上昇は妨げられない。挿入部(202)の挿入孔(H)への挿入が完了し、上方突出部(221)が受金具(B)の上方へ突出させられると、係合部材(223)は受金具(B)の中央壁の押圧から解放され、板バネ(226)の付勢力によって係合部材(223)の下端部、すなわち、係合部位(228)は上方突出部(202)から前方へ突出させられて、係合位置へと戻り、抜け止め手段(222)は係合状態となる。この状態で、意図せずに連結具(201)に下方への力が作用して挿入部(202)が下降しても、係合部位(228)が受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合するため、挿入部(202)の下降が規制され、連結具(201)が受金具(B)から抜け落ちるのを確実に防止することができる。また、挿入部(202)を受金具(B)から抜去する際は、作業者が手指で係合部位(228)を後方に押し込んで係合解除位置へ移動させることで、抜け止め手段(222)は係合解除状態となり、その状態で挿入部(202)を下降させると容易に挿入部(202)を受金具(B)から抜去することができる。
【0036】
上記の通り、第2の実施形態に係る連結具(201)によれば、抜け止め手段(222)を備えているため、連結具(201)に上方へ吊り上げ荷重がかかっていない状態でも連結具(201)が受金具(B)から抜け落ちるおそれがない。さらに、挿入部(202)を受金具(B)に下方から挿入する構成、かつ、挿入部(202)の上方突出部(221)に抜け止め手段(222)を備えている構成であるため、足場ユニット(U)の吊り作業時においても抜け止め手段(222)に吊り上げ荷重がかからず、抜け止め手段(222)を備えた連結具(201)であっても簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成とすることができる。付勢部材(226)は板バネではなく、コイルバネであってもよい。また、上方突出部(221)および係合部材(223)の構成および形状は特に限定されず、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能である。
【0037】
次に、図5を参照して、この発明の第3の実施形態に係る連結具(301)の詳細を説明する。なお、第1および第2の実施形態に係る連結具(101)(201)と同様の構成については、説明の重複を避けるためにその説明を省略する。
【0038】
連結具(301)は、上方突出部(321)に、挿入部(302)が挿入孔(H)から抜け落ちるのを防止するための抜け止め手段(322)を備えている。詳細には、挿入部(302)の上方突出部(321)に水平方向(この実施形態においては左右方向)へ貫通状にする貫通孔(324)が形成されており、貫通孔(324)の左右端それぞれに係合部材(323)が配置されている。係合部材(323)はボールまたはピン(この実施形態においてはボール)とされ、その一部(係合部位(328))が平面より見て挿入孔(H)から外側に突出して受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合位置と、係合部位(328)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっていて受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合しない係合解除位置との間を移動自在となるように構成されているとともに、貫通孔(324)の左右の開口は係合部材(323)が通過できない大きさに絞られており、両係合部材(323)が係合位置からさらに外側へ移動するのが規制されている。両係合部材(323)の係合部位(328)が平面より見て挿入孔(H)から外側に突出して受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合位置において、抜け止め手段(322)は係合状態となり、係合部位(328)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっていて受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合しない係合解除位置において、抜け止め手段(322)は係合解除状態となるように切り替え可能に構成されている。抜け止め手段(322)は、さらに、貫通孔(324)内に付勢部材(326)(この実施形態においてはコイルバネ)が配置されており、両係合部材(323)がコイルバネ(326)によってそれぞれ貫通孔(324)の外側へ向かって付勢されて、両係合部材(323)の係合部位(328)が受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合する係合位置に位置させられた状態で、係合部材(323)は上方突出部(321)に保持されている。
【0039】
挿入部(302)の連挿入時および抜去時、ならびに、挿入された状態における抜け止め手段(322)の操作および作用について以下に説明する。
【0040】
挿入部(302)を受金具(B)に下方から挿入する際、挿入部(302)の上端部を挿入孔(H)へ差し込んでいくと、両係合部材(323)の係合部位(328)が受金具(B)における挿入孔(H)の下端の左右縁に当接する。そのまま挿入部(302)を上方へ移動させると、両係合部材(323)は挿入孔(H)の下端の左右縁に押され、コイルバネ(326)の付勢力に抗して、貫通孔(324)内に押し込まれていき、さらに挿入部(302)を上方へ移動させると、両係合部材(323)の係合部位(328)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まる係合解除位置へと移動させられ、抜け止め手段(322)は係合解除状態となり、挿入部(302)が挿入孔(H)へ挿入可能となる。この状態で挿入部(302)を上昇させていくと、両係合部材(323)が受金具(B)の左右側壁に押圧された状態であるため、係合部位(328)は平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置のままとされ、挿入部(302)の上昇は妨げられない。挿入部(302)の挿入孔(H)への挿入が完了し、上方突出部(321)が受金具(B)の上方へ突出させられると、両係合部材(323)は受金具(B)の左右側壁の押圧から解放され、コイルバネ(326)の付勢力によって両係合部材(323)の係合部位(328)は係合位置へと戻り、抜け止め手段(322)は係合状態となる。この状態で、意図せずに連結具(301)に下方への力が作用して挿入部(302)が下降しても、係合部位(328)が受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合するため、挿入部(302)の下降が規制され、連結具(301)が受金具(B)から抜け落ちるのを確実に防止することができる。また、挿入部(302)を受金具(B)から抜去する際、作業者がコイルバネ(326)の付勢力よりも強い力で挿入部(302)を押し下げることで、両係合部材(323)が受金具(B)の左右側壁に押圧され、両係合部材(323)の係合部位(328)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まる係合解除位置へと移動させられ、抜け止め手段(322)は係合解除状態となり、その状態で挿入部(302)をさらに下降させると容易に挿入部(302)を受金具(B)から抜去することができる。
【0041】
上記の通り、第3の実施形態に係る連結具(301)によれば、抜け止め手段(322)を備えているため、連結具(301)に上方へ吊り上げ荷重がかかっていない状態でも連結具(301)が受金具(B)から抜け落ちるおそれがない。さらに、挿入部(302)を受金具(B)に下方から挿入する構成、かつ、挿入部(302)の上方突出部(321)に抜け止め手段(322)を備えている構成であるため、足場ユニット(U)の吊り作業時においても抜け止め手段(322)に吊り上げ荷重がかからず、抜け止め手段(322)を備えた連結具(301であっても簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成とすることができる。また、挿入部(302)の受金具(B)への挿入および受金具(B)からの抜去が容易となり、作業効率が向上する。
【0042】
次に、図6を参照して、この発明の第4の実施形態に係る連結具(401)の詳細を説明する。なお、第1ないし第3の実施形態に係る連結具(101)(201)(301)と同様の構成については、説明の重複を避けるためにその説明を省略する。
【0043】
連結具(401)は、上方突出部(421)に、挿入部(402)が挿入孔(H)から抜け落ちるのを防止するための抜け止め手段(422)を備えている。詳細には、抜け止め手段(422)は、挿入部(402)の上方突出部(421)に側方へ開口するように形成されたピン孔(424)に抜き差し自在に差し込まれる係合部材(423)(この実施形態においては係合ピン)からなり、係合ピン(423)は、ピン孔(424)に差し込まれた状態において少なくとも一方の端部が上方突出部(421)から側方(この実施形態においては左右方向)へ突出し、さらに、平面より見て挿入孔(H)から外側に突出して受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合しうるように構成されている。好ましくは、ピン孔(424)は、その両端が開口するように上方突出部(402)に左右方向へ貫通状に形成されており、係合ピン(423)は、ピン孔(424)に差し込まれた状態において、両端部が上方突出部(421)から左右方向へ突出し、さらに、平面より見て挿入孔(H)から外側に突出して受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合しうるように構成されている。より好ましくは、係合ピン(423)は、一端部が、ピン孔(424)の開口面積よりも大きい垂直断面積を有することでピン孔(424)の一方の開口縁に係合するように形成されたピン頭部(426)とされ、かつ、他端部が、係合ピン(423)がピン孔(424)に差し込まれた状態において、折れ曲げられてピン孔(424)の他方の開口縁に係合させられることで、係合ピン(423)がピン孔(424)から抜けるのが防止されるように構成されている。詳細には、係合ピン(423)の他端部に二股部(427)が形成されており、二股部(427)に、係合ピン(423)の他端部を構成する抜け止め片(428)が揺動自在に支持されている。より詳細には、抜け止め片(428)は、係合ピン(423)の軸線方向に延びた長孔が形成されており、その長孔を介して支持ピン(429)によって二股部(427)に支持され、係合ピン(423)の軸線方向とそれに直交する方向との間で揺動自在に構成されている。係合ピン(423)がピン孔(424)に差し込まれた状態において、抜け止め片(428)が係合ピン(423)の軸線方向に直交する方向へ揺動させられてピン孔(424)の開口縁に係合することで係合ピン(423)が貫通孔(424)から抜けるのが防止される。抜け止め手段(422)は、係合ピン(423)がピン孔(424)に差し込まれた係合状態と、係合ピン(423)がピン孔(424)から引き抜かれた係合解除状態とに切り替え可能に構成されている。
【0044】
挿入部(402)の挿入時および抜去時、ならびに、挿入された状態における抜け止め手段(422)の操作および作用について以下に説明する。
【0045】
挿入部(402)を受金具(B)に下方から挿入する際、予め係合ピン(423)をピン孔(424)から引き抜いておくと、抜け止め手段(422)は係合解除状態となり、容易に挿入部(402)を挿入孔(H)へ挿入することができる。挿入部(402)の挿入が完了した後、抜け止め片(428)を係合ピン(423)の軸線方向へ揺動させた状態で係合ピン(423)をピン孔(424)に差し込み、その後、抜け止め片(428)を係合ピン(423)の軸線方向に直交する方向(この実施形態においては上下方向)へ揺動させる。この状態で、意図せずに連結具(401)に下方への力が作用して挿入部(402)が下降して分離位置へ移動しようとしても、係合ピン(423)が受金具(B)における挿入孔(H)の上端縁に係合するため、挿入部(402)の下降が規制され、連結具(401)が受金具(B)から抜け落ちるのを確実に防止することができる。また、ピン頭部(426)および抜け止め片(428)によって係合ピン(423)がピン孔(424)から抜けるのが防止されているため、抜け止め手段(422)の係合状態が確実に保たれる。また、挿入部(402)を受金具(B)から抜去する際は、抜け止め片(428)を係合ピン(423)の軸線方向へ揺動させ、係合ピン(423)をピン孔(424)から引き抜き、これにより抜け止め手段(422)が係合解除状態に切り替えられるため、容易に挿入部(402)を受金具(B)から抜去することができる。
【0046】
上記の通り、第4の実施形態に係る連結具(401)によれば、抜け止め手段(422)を備えているため、連結具(401)に上方へ吊り上げ荷重がかかっていない状態でも連結具(401)が受金具(B)から抜け落ちるおそれがない。さらに、挿入部(402)を受金具(B)に下方から挿入する構成、かつ、挿入部(402)の上方突出部(421)に抜け止め手段(422)を備えている構成であるため、足場ユニット(U)の吊り作業時においても抜け止め手段(422)に吊り上げ荷重がかからず、抜け止め手段(422)を備えた連結具(401)であっても簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成とすることができる。また、係合ピン(423)がピン頭部(426)および抜け止め片(428)を有しているため、連結具(401)が受金具(B)から抜け落ちるのをより確実に防止することができる。
【0047】
次に、図7を参照して、この発明の第5の実施形態に係る連結具(501)の詳細を説明する。なお、第1ないし第4の実施形態に係る連結具(101)(201)(301)(401)と同様の構成については、説明の重複を避けるためにその説明を省略する。
【0048】
連結具(501)は、ベース部(503)の上面における前端部に凸部(531)が形成されており、その他の部分は、第2の実施形態に係る連結具(201)と同様の構成を有している。連結具(501)は、挿入部(202)を挿入孔(H)に下方から挿入した場合は、抜け止め手段(222)が係合解除状態から係合状態へ切り替えられる位置まで挿入可能であり、挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入した場合は、凸部(531)が受金具(B)の上面に当接することで、抜け止め手段(222)が係合状態と係合解除状態から係合状態へ切り替えられる位置まで挿入ができないように構成されている。より詳細には、受金具(B)の中央壁は後ろ下がりに傾斜しており、受金具の上面の前後長さは下面のそれよりも長く構成されているとともに、凸部(531)が、挿入部(202)を挿入孔(H)に下方から挿入した場合は受金具(B)の下面に当接せず、かつ、挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入した場合は受金具(B)の上面に当接する位置に配置されている。さらに、凸部(531)の高さは、挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入した場合に、受金具(B)の上面に凸部(531)が当接することで上方突出部(221)が受金具(B)から下方に完全に突出せず、係合部材(223)が部分的に受金具(H)内に位置させられるように設定されている。
【0049】
挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入した際の凸部(531)の作用について以下に説明する。
【0050】
挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入する際に、挿入部(202)の上端部を挿入孔(H)へ差し込んでいくと、係合部材(223)の前面が受金具(B)における挿入孔(H)の上端前縁に当接する。そのまま挿入部(221)を下方へ移動させると、係合部材(223)の前面が挿入孔(H)の上端前縁に押され、板バネ(226)の付勢力に抗して係合部材(223)の係合部位(228)が後方に押し込まれていき、さらに挿入部(202)を下方へ移動させると、係合部位(228)が平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置に移動させられて、抜け止め手段(222)は係合解除状態となり、挿入部(202)が挿入孔(H)へ挿入可能となる。この状態で挿入部(202)を下降させていくと、係合部材(223)が受金具(B)の中央壁に押圧された状態であるため、係合部位(228)は平面より見て挿入孔(H)の内側に収まっている係合解除位置のままとされ、挿入部(202)の下降は妨げられない。しかし、挿入部(202)を下降させていくと、ベース部(503)上面に形成された凸部(531)が受金具(B)の上面に当接し、係合部位(228)を含む係合部材(223)の一部が受金具(H)内に位置した状態で挿入部(202)のさらなる下降が規制される。すなわち、挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入する際に係合解除状態に切り替えられた抜け止め手段(222)が係合状態に切り替えられない位置で挿入部(202)の下降が規制される。この構成により、作業者が誤って挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入して、吊り作業装置で足場ユニット(U)を吊り上げようとした場合であっても、抜け止め手段(222)が機能せずに連結具(501)が受金具(B)から上方に抜けて外れる。これにより、誤挿入による不完全な連結状態で足場ユニット(U)が吊り上げられるのを防止することができ、事故を未然に防ぐことができる。
【0051】
なお、凸部(531)は、ベース部(503)の上面の前端部に側面から見て略台形形状を有する突条が左右方向に延びるように形成されているが、その配置や形状は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能である。また、凸部(531)を他の実施形態に係る連結具(301)(401)のベース部(303)(403)に形成することもできる。それらの場合、例えば、挿入部(302)(402)を挿入孔(H)に上方から挿入した場合に、受金具(B)の上面に凸部(531)が当接することで上方突出部(321)(421)が受金具(B)から下方に完全に突出せず、係合部位(328)を含む係合部材(323)の一部が受金具(H)内に位置させられて、抜け止め手段(222)が係合解除状態に切り替えられた状態で挿入部(302)の下降が規制されるように、あるいは、ピン孔(424)が完全に受金具(B)から露出せず、係合ピン(423)をピン孔(424)に差し込めない状態で挿入部(302)の下降が規制されるように、凸部(531)の高さが設定される。
【0052】
また、挿入部(202)を挿入孔(H)に上方から挿入した状態での吊り作業装置および足場ユニット(U)の連結を防止する手段は、凸部(531)のように挿入部(202)の下降を所定位置で規制するものに限定されず、挿入孔(H)に上方から挿入部の先端部が挿入できないように構成されていてもよいし、作業者の注意を喚起するような表示、例えば、挿入部(202)に上下を記載する等、を付してもよい。
【0053】
なお、上述した各実施形態は例示にすぎず、特許請求の範囲に記載されたこの発明の要
旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えた上で、この発明を実施することも勿論可
能である。例えば、受金具(B)は上記のものに限定されず、平板状のフランジ部材とされていてもよいし、形成される挿入孔(H)の平面から見た形状も矩形に限定されず、例えば円形や、多角形とされていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、例えば建築工事現場等で組み立てられる仮設足場において、大組・大バラシと呼ばれる工法に用いられる連結具として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0055】
(101)(201)(301)(401)(501):連結具
(102)(202)(302)(402):挿入部
(121)(221)(321)(421):上方突出部
(103)(503):ベース部
(104):連結部
(141):水平軸
(142):把持部
(143):U字状部材
(144):左側円柱端部
(145):右側円柱端部
(222)(322)(422):抜け止め手段
(223)(323):係合部材
(224)(324):貫通孔
(225):支持部材
(226)(326):付勢部材
(227):収容部
(228)(328):係合部位
(423):係合ピン
(424):ピン孔
(426):ピン頭部
(427):二股部
(428):抜け止め片
(429):支持ピン
(531):凸部
(U):足場ユニット
(P):支柱
(B):受金具
(H):挿入孔
(C):クレーン
(W):ワイヤロープ
【要約】
【課題】簡易、かつ、軽量、かつ、コンパクトな構成で、足場ユニットと吊り作業装置とを確実に連結する連結具を提供する。
【解決手段】、連結具101は、複数の支柱Pを含む複数の足場構成部材からなる足場ユニットUを吊るして移動させるための吊り作業装置に足場ユニットUを連結する際に用いられ、支柱Pの所定高さの外面に接合されている受金具Bの下方に配置されるベース部103と、ベース部103から上方に延び、受金具Bに上下方向へ貫通するように形成されている挿入孔Hに下方から挿入される挿入部102と、ベース部103に水平軸141を中心に揺動自在に取り付けられて、吊り作業装置に連結される連結部104とを備えている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7