(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】米飯様食品
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240314BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240314BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L5/10 C
(21)【出願番号】P 2023126920
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2023121911の分割
【原出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592211688
【氏名又は名称】株式会社はくばく
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 智恵
(72)【発明者】
【氏名】金子 真吾
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064538(JP,A)
【文献】特開2015-228820(JP,A)
【文献】特開昭61-141849(JP,A)
【文献】特開2008-118943(JP,A)
【文献】米国特許第05391388(US,A)
【文献】特開昭58-166941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷でん粉含有量が
7質量%~30質量%である圧扁された大麦を含有する、電子レンジ調理用の米飯様食品(
但し、レトルト処理された大麦を用いる場合を除く)。
【請求項2】
前記圧扁された大麦の平均厚みが、0.5~1.2mmである、請求項1に記載の米飯様食品。
【請求項3】
前記電子レンジ調理は、前記圧扁された大麦に対して加水された後に行われるものである、請求項1に記載の米飯様食品。
【請求項4】
前記圧扁された大麦1質量部に対する前記加水量が、1~5質量部である、請求項3に記載の米飯様食品。
【請求項5】
加水後の浸漬処理が1分以内である、請求項3に記載の米飯様食品。
【請求項6】
前記電子レンジ調理の加熱条件が、出力500w以上、且つ、加熱時間20秒~3.5分である、請求項1に記載の米飯様食品。
【請求項7】
沸騰水を2分間吸水させた場合の吸水率が、前記圧扁された大麦1質量部に対して2.1質量部超である圧扁された大麦を用いることを特徴とする、請求項1に記載の米飯様食品。
【請求項8】
圧縮試験による硬さの平均値が、1300g以下である圧扁された大麦を用いることを特徴とする、請求項1に記載の米飯様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯様食品に関する。より詳細には、電子レンジ調理用の米飯様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大麦は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とを含有しており、これらのバランスや他の含有成分により、整腸効果、血糖値改善効果、抗肥満効果等の種々の健康機能も有することが知られている。
【0003】
近年の健康志向の高まりも相俟って、大麦は、麦ご飯、粥、リゾット、スープ等の食品で用いられることが多くなってきた。しかしながら、これらの調理方法では喫食までに多大な時間を要し、即席麺やパックご飯など短時間で調理可能な食品と比較して利便性を満足するものではなかった。
【0004】
短時間での穀物の調理方法としては、例えば、特許文献1では電子レンジ調理可能なα化穀物の製造方法が、特許文献2では圧扁した大麦を用いた比較的短時間での麦粥の製造方法が提案されている。しかしながら、これらの技術を用いた場合であっても、調理前のα化度が高いこと等の理由により、米飯様の粒感が低下してしまい、食感を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-195655号公報
【文献】特開昭61-141849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、大麦は食物繊維による多様な健康機能を有しており、日常的に摂取したいニーズがある。しかしながら、大麦を含む穀物を、例えば米飯の様に食したい場合、利便性の高い調理が困難である。また、単に大麦を用いた際の調理時間を短縮できるだけでなく、食感や風味等を損ねずに調理する手段については、未だに充分な報告がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、損傷でん粉含有量が5質量%~30質量%である圧扁された大麦を用い、電子レンジ調理用として用いることにより、調理時間を短縮し、且つ、食感を満足できることを見出し、簡便に大麦の健康機能を享受することが可能な米飯様食品を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる米飯様食品を提供する。
[1]
損傷でん粉含有量が5質量%~30質量%である圧扁された大麦を含有する、電子レンジ調理用の米飯様食品。
【0009】
[2]
前記圧扁された大麦の平均厚みが、0.5~1.2mmである、[1]に記載の米飯様食品。
【0010】
[3]
前記電子レンジ調理は、前記圧扁された大麦に対して加水された後に行われるものである、[1]又は[2]に記載の米飯様食品。
【0011】
[4]
前記圧扁された大麦1質量部に対する前記加水量が、1~5質量部である、[3]に記載の米飯様食品。
【0012】
[5]
加水後の浸漬処理が実質的に不要である、[3]又は[4]に記載の米飯様食品。
【0013】
[6]
前記電子レンジ調理の加熱条件が、出力500w以上、且つ、加熱時間20秒~3.5分である、[1]~[5]のいずれかに記載の米飯様食品。
【0014】
[7]
沸騰水を2分間吸水させた場合の吸水率が、前記圧扁された大麦1質量部に対して2.1質量部超である圧扁された大麦を用いることを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の米飯様食品。
【0015】
[8]
圧縮試験による硬さの平均値が、1300g以下である圧扁された大麦を用いることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の米飯様食品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大麦を用いて短時間で喫食可能な状態に調理が可能であり、且つ、食感を満足できる米飯様の食品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】試験例2における、平均厚みの測定方法の概略図である。
【
図2】試験例2における、平均厚みの測定方法の概略図である。
【
図3】試験例6における、硬さの測定方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[米飯様食品]
本明細書において、米飯様食品とは、米以外の食材を用いて製造した代替米であり、米飯と同様の方法で喫食し得るものをいう。限定はされないが、例えば、通常の米飯の様に、炊飯されたご飯や、お粥(全粥、7分粥、5分粥、3分粥)の他、炒飯やリゾット等の調理において、米飯の代替として又は米飯や他の穀物に加えて用いることも可能である。
【0019】
本発明の米飯様食品は、損傷でん粉含有量が5質量%~30質量%である圧扁された大麦を含有し、電子レンジ調理に好適に用いられる。
【0020】
大麦は、公知の方法により、圧扁(あっぺん)して薄く加工することが可能である。圧扁の方法は、特に限定されないが、公知の方法においては、例えば、大麦に対して任意に蒸気を当て、ローラーで挽き、薄く引き伸ばす方法が挙げられる。上記のほか、圧扁の方法は、例えば、杵を用いて、打ち付けて引き伸ばす方法が挙げられる。
【0021】
圧扁された大麦は、組織が破壊されるため、大麦中の損傷でん粉含有量が増加する。後述の実施例において、本発明者らは、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量が、電子レンジ調理に好適な米飯様食品を調製するための指標となることを見出している。本発明の米飯様食品は、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量が指標となるため、大麦の品種は特に限定されず、例えば、二条大麦、六条大麦、はだか麦等の公知の大麦が挙げられる。
【0022】
本発明の効果を奏するための詳細なメカニズムは不明であるが、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量が所定の範囲にあるように組織の破壊の程度を調整することにより、適切に水分が大麦中に浸透し、電子レンジを用いることにより、米飯と同様の方法で喫食し得る程度にまで調理されるものと推測される。
【0023】
損傷でん粉含有量は、AACC Method 76-31に従って測定することが可能である。具体的には、大麦中に含まれている損傷でん粉のみをカビ由来α-アミラーゼでマルトオリゴ糖とα-制限デキストリンに分解し、次いでアミログルコシダーゼでグルコースにまで分解し、生成されたグルコースを定量することにより測定する。また、市販のキット(例えば、MegaZyme社製、Starch Damage Assay Kit、型式:K-SDAM)を用いて測定してもよい。
【0024】
圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、5質量%~30質量%とすることができる。また、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量は、例えば、5.5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、7質量%以上、7.5質量%以上、8質量%以上、8.5質量%以上、9質量%以上、9.5質量%以上、10質量%以上、10.5質量%以上、11質量%以上、11.5質量%以上、12質量%以上、12.5質量%以上、13質量%以上、13.5質量%以上、14質量%以上等が挙げられる。
【0025】
また、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量は、例えば、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、20質量%以下等が挙げられる。
【0026】
また、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、5~30質量%とすることができ、例えば、5~29質量%、5~28質量%、5~27質量%、5~26質量%、5~25質量%、5~24質量%、5~23質量%、5~22質量%、5~21質量%、5~20質量%、6~29質量%、6~28質量%、6~27質量%、6~26質量%、6~25質量%、6~24質量%、6~23質量%、6~22質量%、6~21質量%、6~20質量%、7~29質量%、7~28質量%、7~27質量%、7~26質量%、7~25質量%、7~24質量%、7~23質量%、7~22質量%、7~21質量%、7~20質量%、8~29質量%、8~28質量%、8~27質量%、8~26質量%、8~25質量%、8~24質量%、8~23質量%、8~22質量%、8~21質量%、8~20質量%、9~29質量%、9~28質量%、9~27質量%、9~26質量%、9~25質量%、9~24質量%、9~23質量%、9~22質量%、9~21質量%、9~20質量%、10~29質量%、10~28質量%、10~27質量%、10~26質量%、10~25質量%、10~24質量%、10~23質量%、10~22質量%、10~21質量%、10~20質量%、11~29質量%、11~28質量%、11~27質量%、11~26質量%、11~25質量%、11~24質量%、11~23質量%、11~22質量%、11~21質量%、11~20質量%、12~29質量%、12~28質量%、12~27質量%、12~26質量%、12~25質量%、12~24質量%、12~23質量%、12~22質量%、12~21質量%、12~20質量%、13~29質量%、13~28質量%、13~27質量%、13~26質量%、13~25質量%、13~24質量%、13~23質量%、13~22質量%、13~21質量%、13~20質量%、14~29質量%、14~28質量%、14~27質量%、14~26質量%、14~25質量%、14~24質量%、14~23質量%、14~22質量%、14~21質量%、14~20質量%等が挙げられる。
【0027】
圧扁された大麦の平均厚みは、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、0.5~1.2mmであることが好ましく、例えば、0.5~1.1mm、0.5~1.0mm、0.6~1.2mm、0.6~1.1mm、0.6~1.0mm、0.7~1.2mm、0.7~1.1mm、0.7~1.0mm、0.75~1.2mm、0.75~1.1mm、0.75~1.0mm等が挙げられる。
【0028】
圧扁された大麦の平均厚みは、公知の方法にて測定が可能であるが、例えば、ダイヤルゲージ厚み計(TECLOCK社、型番SM-112)で測定することができる。無作為に選んだ大麦20粒を測定し、平均値を求める。測定誤差を低減させるため、大麦の黒条線により分けた片側を、黒条線を覆わないよう、ダイヤルゲージのステージに差し込みその厚さを測定する。
【0029】
限定はされないが、本発明において、電子レンジ調理は、圧扁された大麦に対して加水された後に行われることが好ましい。限定はされないが、圧扁された大麦に水分が浸透し、電子レンジを用いることによって、大麦が喫食に適する程度に軟化されることが好ましい。
【0030】
本明細書において、加水は、圧扁された大麦に対して水分を付与することをいう。加水は、例えば、圧扁された大麦に対して、水分を含む液体を作用させることで行い得る。当該液体としては、限定されないが、水の他、出汁、つゆ、醤油、その他の液体調味料、味噌汁、スープ、牛乳、豆乳、ジュース類、炭酸水、酒類等が挙げられる。
【0031】
圧扁された大麦1質量部に対する加水量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、1~5質量部であることが好ましく、例えば、1~4.5質量部、1~4質量部、1~3.5質量部、1~3質量部、1.5~5質量部、1.5~4.5質量部、1.5~4質量部、1.5~3.5質量部、1.5~3質量部、2~5質量部、2~4.5質量部、2~4質量部、2~3.5質量部、2~3質量部等が挙げられる。
【0032】
従来技術においては、米飯様食品を調理する際、穀物等の食材に対して加水を行い、十分に時間をかけて浸漬処理を行うことが必要とされていた。しかしながら、本発明においては、圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量が所定の範囲となるように組織の破壊の程度を調整することにより、適切に水分が大麦中に浸透するため、加水した場合の浸漬処理が実質的に不要である。
【0033】
加水した場合の浸漬時間は、実質的に不要であるが、例えば、1分以内とすることができ、30秒以内が好ましく、15秒以内がより好ましく、特に浸漬時間を設けずに電子レンジ調理を行うことが更に好ましい。
【0034】
電子レンジ調理の加熱条件は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、出力500w以上、且つ、加熱時間20秒~3.5分とすることが可能である。
【0035】
限定されないが、電子レンジ調理の加熱条件が、出力500wの場合、加熱時間を20秒以上とすることができ、25秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、1分30秒以上、2分以上等が挙げられる。
電子レンジ調理の加熱条件は、出力500wの場合、加熱時間を3.5分以内とすることができ、3分以内、2.5分以内、2分以内等が挙げられる。
電子レンジ調理の加熱条件は、出力500wの場合、加熱時間を20秒~3.5分、20秒~3分、20秒~2.5分、20秒~2分、30秒~3.5分、30秒~3分、30秒~2.5分、30秒~2分、40秒~3.5分、40秒~3分、40秒~2.5分、40秒~2分、50秒~3.5分、50秒~3分、50秒~2.5分、50秒~2分、1分~3.5分、1分~3分、1分~2.5分、1分~2分等が挙げられる。
【0036】
また、別の実施態様において、電子レンジ調理の加熱条件が、出力750wの場合、加熱時間を3.5分以内とすることができ、3分以内、2.5分以内、2分以内等が挙げられる。
電子レンジ調理の加熱条件は、出力750wの場合、加熱時間を20秒~3.5分、20秒~3分、20秒~2.5分、20秒~2分、30秒~3.5分、30秒~3分、30秒~2.5分、30秒~2分、40秒~3.5分、40秒~3分、40秒~2.5分、40秒~2分、50秒~3.5分、50秒~3分、50秒~2.5分、50秒~2分、1分~3.5分、1分~3分、1分~2.5分、1分~2分等が挙げられる。
【0037】
圧扁された大麦中の損傷でん粉含有量が所定の範囲にあるように組織の破壊の程度を調整することにより、適切に水分が大麦中に浸透し得る。このような圧扁された大麦としては、限定されないが、沸騰水を2分間吸水させた場合の吸水率が、圧扁された大麦1質量部に対して2.1質量部超であることが好ましく、2.2質量部以上がより好ましく、2.3質量部以上が更に好ましく、2.4質量部以上が特に好ましく、2.5質量部以上が最も好ましい。
【0038】
上記の吸収量は、公知の方法にて測定が可能であるが、例えば、網状の容器に大麦5gを添加し、沸騰水中で大麦同士が付着、滞留しないように維持し、2分後に湯切りして速やかに重量を測定することで、試験開始前と比較した水の吸収量を評価することが可能である。
【0039】
また、圧扁された大麦としては、限定されないが、圧縮試験による硬さの平均値が、1300g以下であることが好ましく、1200g以下、1100g以下、1000g以下、900g以下、800g以下、700g以下、600g以下、500g以下、450g以下等が挙げられる。
【0040】
上記の硬さは、テクスチャーアナライザー(SMS社製 テクスチャーアナライザーTA.XTplus)を用いて物性データを測定した。
【0041】
三点曲げ治具に大麦を黒条線を下向きに載せ、黒条線に対して垂直となるように、大麦の中央部をプローブで押し割った際の、最大のピークの上限値を「硬さ」として読み取った。
【0042】
〈測定条件〉
プローブ:HDP/BS(くさび型のナイフ)、厚み3mm、先端の角度60度
台座:三点曲げ治具の間の間隙2mm
ロードセル:5kg
テストモード:圧縮試験
テストスピード(測定前、測定中):2.00mm/sec
テストスピード(戻り):10mm/sec
Strain:105%(大麦に触れてから底面までの105%を押す)
【0043】
10粒測定したうち、各測定データにおいてピークがない場合はデータなしとして除外、グラフの形状が他の測定データと明らかに異なる場合にはなにかしらの異常(サンプルが折れていた、厚みが均一ではなかった等)があるものとして主観的に判断して除外した。また、ピークが複数ある場合には、上記に従いグラフの形状によって除外するか、除外しない場合には最大のピークの上限値を読み取った。その後、残ったデータから外れ値を除外したデータの平均値を、硬さの平均値とした。
【0044】
また、圧扁された大麦としては、限定されないが、圧縮試験による硬さの平均値が、50g以上であることが好ましく、100g以上、150g以上、200g以上、250g以上、300g以上等が挙げられる。
【0045】
また、圧扁された大麦としては、限定されないが、圧縮試験による硬さの平均値が、100~1300gであることが好ましく、100~1200g、100~1100g、100~1000g、100~900g、100~800g、100~700g、100~600g、150~1300g、150~1200g、150~1100g、150~1000g、150~900g、150~800g、150~700g、150~600g、200~1300g、200~1200g、200~1100g、200~1000g、200~900g、200~800g、200~700g、200~600g等が挙げられる。
【0046】
本発明の米飯様食品における、圧扁された大麦の含有量は、米飯様食品の実施態様や他の配合物の種類や量等により、適宜設定され限定されないが、例えば、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下等が挙げられる。
【0047】
本発明の米飯様食品における、圧扁された大麦の含有量は、例えば、1~100質量%、1~90質量%、1~80質量%、1~70質量%、1~60質量%、1~50質量%、1~40質量%、1~30質量%以下、1~20質量%、1~10質量%、5~100質量%、5~90質量%、5~80質量%、5~70質量%、5~60質量%、5~50質量%、5~40質量%、5~30質量%以下、5~20質量%、5~10質量%等が挙げられる。
【0048】
(他の穀物)
圧扁された大麦の他、米飯様食品には、本発明の効果を奏する範囲や態様において、他の穀物を含有していてもよい。
【0049】
他の穀物としては、小麦、米(玄米、精白米、赤米、黒米等)、ハト麦、ライ麦、燕麦
(オーツ麦)、そば、アマランサス、ヒエ、アワ、キビ、タカキビ、トウモロコシ、ホワイトソルガム、大豆、緑豆、小豆、ひよこ豆、ゴマ(金ゴマ、黒ゴマ、白ゴマ等)、キヌア、チアシード等が挙げられる。これらの他の穀物は、1種であってもよく、2種以上の任意の組合せであってもよい。
【0050】
これらの他の穀物は、全粒のままであってもよく、又は必要に応じて脱皮、脱胚芽等の分離精製(分離した外皮等を用いてもよい)、焙煎、脱脂等の前処理後、所望の厚さに圧扁した圧扁物、所望の大きさにせん断したせん断物、所望の粒度に粉砕した粉砕物、又はそれらを焙煎したもの、及びそれらの組合せや混合物であってもよい。
【0051】
本発明の米飯様食品における、圧扁された大麦と、他の穀物との含有比率は、特に限定されないが、例えば、圧扁された大麦1質量部に対する、他の穀物の含有量が、例えば、0.1~50質量部、0.1~40質量部、0.1~30質量部、0.1~20質量部、0.1~10質量部、0.5~50質量部、0.5~40質量部、0.5~30質量部、0.5~20質量部、0.5~10質量部、1~50質量部、1~40質量部、1~30質量部、1~20質量部、1~10質量部等が挙げられる。
【0052】
(他の配合物)
本発明の米飯様食品は、本発明の効果を奏する限り、更に、糖類、食塩、酢、醤油、味噌、エキス類、ケチャップ等の調味料;コショウ、唐辛子、にんにく、山椒、ハーブ等の香辛料;油分等の調味成分;保存剤、pH調整剤、抗酸化剤、アミノ酸、核酸、有機酸、甘味料、着色料、安定剤、発色剤、増粘剤等の食品添加物;野菜、肉類、魚介類、キノコ類、上記以外の豆類、上記以外のゴマ類等の具材等と含有していてもよい。
【0053】
(食品の形態)
本発明の米飯様食品の形態は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されず、液部のないドライパック形態でも、液部のあるウェットパック形態でもよい。例示的な、米飯様食品の形態としては、例えば、圧扁された大麦等を含有する穀物加工品;シリアル食品;粥、パエリア、ピラフ、リゾット、雑炊等の飯食品;コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ、味噌汁等のスープ状食品;グラタン等のペースト状食品;シチュー、カレー、ハヤシ、ハッシュドビーフ、たれ、パスタソース等のソース状食品等が挙げられる。
【0054】
(容器)
容器は、特に限定はされないが、例えば、耐熱性容器であることが好ましく、酸素バリア性容器であってもよく、電子レンジ加熱対応性容器であってもよい。容器の種類としては、平袋、スタンディングパウチ、トレイなどの成形容器であってもよい。
【0055】
当該容器への充填方法は、公知の方法であれば特に限定はされない。当該容器への充填後は、例えば、平袋であれば熱板方式、インパルス方式などの方法で容器を密封する。
【0056】
容器の材質には特に制限がないが、例えば、紙製、合成樹脂製の容器等を使用することができ、不透明、透明、半透明の合成樹脂製の容器を使用することが好ましい。このような合成樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等が挙げられる。金属製の容器としては、アルミニウム製容器、スチール製容器等が挙げられる。また、合成樹脂とアルミニウムを組み合わせた、アルミラミネートフィルムやアルミ蒸着フィルム等からなる袋状の容器等も挙げられる。
【0057】
容器への充填の後、さらに、容器の開口部を包装フィルム等により封じる密閉を行うことが好ましい。包装フィルム等の材質は、特に制限されず、例えば、アルミラミネートや、SUSラミネートを用いることができる。限定はされないが、容器の開口部が包装フィルムによりヒートシールされることが好ましい。
【0058】
電子レンジ加熱対応性容器に充填後密閉されている場合は、例えば、使用時に開封し、必要に応じて加水を行い、電子レンジ調理を行うことが可能である。
【0059】
電子レンジ加熱対応性容器を用いていない場合には、例えば、使用時に必要量を電子レンジ加熱対応性容器に取り出し、必要に応じて加水を行い、電子レンジ調理を行うことが可能である。
【0060】
[米飯様食品の製造方法]
本発明はまた、以下の態様を有する、米飯様食品の製造方法に関する。
損傷でん粉含有量が5質量%~30質量%である圧扁された大麦を調製する工程、及び、
前記圧扁された大麦を容器に充填して密封する工程、
を含む、米飯様食品の製造方法。
【0061】
本方法の実施態様は、上記の[米飯様食品]の実施態様、及び使用方法に準じる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、「質量%」であることを意味する。
【0063】
[圧扁された大麦の穀物の調製]
大麦原料から異物や異種穀粒を除去し、精麦機によって外皮および種皮を除去した。前記大麦を、蒸気噴出機を用いて蒸気によって加熱し、圧接ローラーを備えた圧扁機を用いて圧扁した。圧扁する程度を変更し、得られた圧扁大麦を実施例1、及び、実施例2として、以下の試験例にて用いた。
【0064】
上記の他、比較例として市販品の押麦を、比較例1(押麦800g(六条)、はくばく社製)、比較例2(押麦800g(二条)、はくばく社製)、比較例3(九州産押麦800g、石橋工業社製)、比較例4(かもめ印自然食押麦1kg、日本精麦社製)として、以下の試験例にて用いた。
【0065】
[試験例1.損傷でん粉含有量の測定]
Starch Damage Assay Kit(MegaZyme社製、型式:K-SDAM)を用いて、添付のマニュアルに従い、無作為に選択した圧扁大麦の損傷でん粉含有量を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
[試験例2.平均厚みの測定]
ダイヤルゲージ厚み計(TECLOCK社、型番SM-112)を用いて、無作為に選択した圧扁大麦20粒の厚みを測定した。測定誤差を低減するため、大麦の黒条線により分けた片側を、黒条線を覆わないよう、ダイヤルゲージのステージに差し込みその厚さを測定した。測定方法の概略図を
図1及び
図2に示す。測定した結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
[試験例3.米飯様食品における食感評価1]
上記の圧扁大麦に対して加水を行った後、直ちに、600W、1分半にて電子レンジ調理を行い、米飯様食品としての官能評価試験を行った。本発明は、粥状に電子レンジ調理を行うことを除外するものではないが、本試験例では下記の基準に従い、米飯としてのより高度な評価を行った。
【0070】
大麦の評価において十分に訓練された分析型パネル6名は、事前に市販品の電子レンジ調理用サンプルを用いて、以下の評価基準の確認と評価結果の擦り合わせを行った。実施例及び比較例の米飯様食品を電子レンジ調理後に喫食し、以下の評価基準に従い官能評価を行った。官能評価の結果、×と評価されたものについては、米飯様食品として調理できていないと判断した。結果を表3に示す。
【0071】
(評価基準)
◎:全体に水が行き渡り、十分に加熱できており、米飯様食品と言える。
〇:加水量や加熱の過不足等はあるものの、喫食するのに問題がない。
△:加水量の過不足や、吸水が不十分な点はあるが、喫食するのに十分に加熱できている状態である。または、著しく加水が多く水がかなり残っているが、喫食するのに十分に加熱できている状態である。
×:明らかに加水が不足している、加熱が不十分である等で生の状態である。または、加熱しすぎで糊状もしくは塊状である。
【0072】
【0073】
[試験例4.米飯様食品における食感評価2]
上記の圧扁大麦に対して加水を行った後、直ちに、500W又は750W、種々の時間条件にて電子レンジ調理を行い、米飯様食品としての官能評価試験を行った。官能評価試験の方法は、試験例3と同様である。500Wにおける結果を表4、750Wにおける結果を表5にそれぞれ示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表3~表5に示す通り、損傷でん粉含有量が5質量%以上である圧扁された大麦を含有する実施例1及び2では、電子レンジにより加熱することで、米飯様に調理できることが確認された。
【0077】
大麦を圧扁することで押麦は得られるが、単に平均厚みを薄くするだけではなく、損傷でん粉含有量を指標として大麦を薄く押す(物理的に組織破壊する)ことにより、電子レンジ調理用の米飯様食品が得られることが示唆された。
【0078】
詳細なメカニズムは未だ不明であるが、損傷でん粉含有量が5質量%以上である圧扁された大麦を用いることで、大麦の組織が一定程度物理的に破壊されているため、短時間で吸水させることができ、短時間の電子レンジ加熱において喫食するのに十分な加熱を行うことができるものと推測される。
【0079】
[試験例5.吸水率の測定]
上記の圧扁大麦において、短時間での吸水能力を評価した。網状の容器に、実施例又は比較例の大麦5gをそれぞれ添加し、沸騰水中で大麦同士が付着、滞留しないように維持し、2分後、又は、6分後に湯切りして速やかに重量を測定した。吸水後の重量が、吸水前の重量5gに対して何倍量であるかを、吸水率として算出した。結果を表6に示す。
【0080】
【0081】
表6に示す通り、損傷でん粉含有量が5質量%以上である圧扁された大麦を含有する実施例1及び2では、沸騰水を2分間吸水させた場合の吸水率が、前記圧扁された大麦1質量部に対して2.1質量部超であることが確認された。
【0082】
[試験例6.硬さの測定]
テクスチャーアナライザー(SMS社製 テクスチャーアナライザーTA.XTplus)を用いて上記の圧扁大麦における硬さを評価した。三点曲げ治具に大麦を黒条線を下向きに載せ、黒条線に対して垂直となるように、大麦の中央部をプローブで押し割った際の、最大のピークの上限値を「硬さ」として読み取った。測定方法の概略図を
図3に示す。
【0083】
(測定条件)
プローブ:HDP/BS(くさび型のナイフ)、厚み3mm、先端の角度60度
台座:三点曲げ治具の間の間隙2mm
ロードセル:5kg
テストモード:圧縮試験
テストスピード(測定前、測定中):2.00mm/sec
テストスピード(戻り):10mm/sec
Strain:105%(大麦に触れてから底面までの105%を押す)
【0084】
無作為に選択した10粒の測定結果のうち、各測定データにおいてピークがない場合はデータなしとして除外した。グラフの形状が他の測定データと明らかに異なる場合にはなにかしらの異常(サンプルが折れていた、厚みが均一ではなかった等)があるものとして主観的に判断して除外した。また、ピークが複数ある場合には、上記に従いグラフの形状によって除外するか、除外しない場合には最大のピークの上限値を読み取った。その後、残ったデータから外れ値を除外したデータの平均値を、硬さの平均値とした。結果を表7に示す。
【0085】
【0086】
表7に示す通り、損傷でん粉含有量が5質量%以上である圧扁された大麦を含有する実施例1及び2では、圧縮試験による硬さの平均値が、1300g以下であることが確認された。
【要約】
【課題】大麦を含む穀物を、例えば米飯の様に食したい場合、利便性の高い調理が困難である。また、単に調理時間を短縮できるだけでなく、食感や風味等を損ねずに調理する手段については、未だに充分な報告がなされていない。
【解決手段】損傷でん粉含有量が5質量%~30質量%である圧扁された大麦を含有する、電子レンジ調理用の米飯様食品を提供する。
【選択図】なし