(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】繊維製品用処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 11/83 20060101AFI20240314BHJP
D06M 23/08 20060101ALI20240314BHJP
D06M 13/192 20060101ALI20240314BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240314BHJP
D06M 23/12 20060101ALI20240314BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240314BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240314BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240314BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20240314BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
D06M11/83
D06M23/08
D06M13/192
D06M15/263
D06M23/12
A01N59/16 A
A01P3/00
A01N25/10
A01N25/08
A01N25/34 B
(21)【出願番号】P 2019082559
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 美和子
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 晋
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 寛也
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-289452(JP,A)
【文献】特開2011-042642(JP,A)
【文献】特開2016-124984(JP,A)
【文献】特開2013-023774(JP,A)
【文献】特開2000-073277(JP,A)
【文献】特表2017-505838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00-11/84
D06M13/00-16/00
D06M19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
ポリマーと錯体化された銀である少なくとも1種の銀系抗菌剤、
(B)キレート剤、及び
(C)アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含有する共重合体(銀と錯体化したものを除く)
を含み、
(A)成分の含量が0.001質量%~1質量%であり、(C)成分/(A)成分で表される質量比が5~300である、繊維製品用処理剤組成物。
【請求項2】
(B)成分が、メチルグリシンジ酢酸もしくはクエン酸、又はそれらの塩である、請求項
1に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項3】
(A)成分として、ポリマーと錯体化された銀を0.001~1質量%、(B)成分として、メチルグリシンジ酢酸もしくはクエン酸、又はそれらの塩を0.01~1質量%、(C)成分として、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含有する架橋型共重合体(銀と錯体化したものを除く)を0.02~5.0質量%含む、請求項1
又は2に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項4】
(D)カプセル香料を更に含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用処理剤組成物に関する。詳細には、本発明は、保存安定性、抗菌性及び/又は消臭性が良好な繊維製品用処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、除菌、消臭、防臭、香り、しわとりなど、家庭用の繊維製品用スプレーが多数発売されており、その市場は年々増加している。その中でも、ニオイに対する関心や衛生意識の高まりから、いずれの繊維製品用スプレーにおいても抗菌性能や消臭性能は必須性能である。
しかしながら、抗菌性能や消臭性能の付与を目的として、抗菌剤である銀やカチオン性界面活性剤と消臭剤であるキレート剤とを配合する方法が挙げられるものの(特許文献1~3)、銀とキレート剤の組み合わせは保存安定性の悪化(変色)が著しく、店頭での販売場面やお客様の実使用場面において不具合が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/090580号
【文献】特開2014-9245号公報
【文献】特開2018-12816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本発明は、保存安定性、抗菌性及び消臭性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に対し、特定のアクリル酸系高分子を銀系抗菌剤及びキレート剤と組み合わせて用いることで、保存安定性、抗菌性及び消臭性を満たす組成を見出した。
即ち、本発明は、下記〔1〕~〔5〕に関するものである。
〔1〕(A)錯体銀、担体に担持された銀、及び無機銀塩から選ばれる少なくとも1種の銀系抗菌剤、
(B)キレート剤、及び
(C)アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含有する共重合体(銀と錯体化したものを除く)
を含む、繊維製品用処理剤組成物。
〔2〕(A)成分が、ポリマーと錯体化された銀である、前記〔1〕に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔3〕(B)成分が、メチルグリシンジ酢酸もしくはクエン酸、又はそれらの塩である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔4〕(A)成分として、ポリマーと錯体化された銀を0.001~1質量%、(B)成分として、メチルグリシンジ酢酸もしくはクエン酸、又はそれらの塩を0.01~1質量%、(C)成分として、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含有する架橋型共重合体(銀と錯体化したものを除く)を0.02~5.0質量%含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔5〕(D)カプセル香料を更に含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、保存安定性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、抗菌性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、消臭性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、保存安定性、抗菌性及び消臭性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[(A)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(A)成分として、錯体銀、担体に担持された銀、及び無機銀塩から選ばれる少なくとも1種の銀系抗菌剤を含有する。(A)成分は、主に抗菌性能付与のために配合される。
【0008】
〈(A-1)成分:錯体銀〉
(A-1)成分としては、銀とアミノ酸(ヒスチジン、アルギニン、クレアチニン等)との錯体、銀とカルボン酸(ピルビン酸、グリコール酸、酢酸、酪酸、サリチル酸等)との錯体、銀とカルボン酸とアミノ酸との錯体、銀とイミダゾール誘導体との錯体等が挙げられる。このような錯体銀は市販品を使用することができ、例えば、大和化学工業株式会社製AA-125Agを使用することができる。
なお、(A-1)成分は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0009】
(A-1)成分としては、また、ポリマーと錯体化した銀を用いることができる。このような場合、ポリマーと錯体化した銀中の銀元素の含有量は、その総質量に対し、例えば、0.1~60質量%、あるいは0.5~15質量%、あるいは20~100,000ppm、あるいは少なくとも20ppm、あるいは20~4,000ppm、あるいは20~1,500ppm、あるいは30~75ppm、あるいは少なくとも50ppmである。
ポリマーと錯体化した銀としては、下式(1)で表される単位A、下式(2)で表される単位B、及び下式(3)で表される単位Cからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー単位を含有するポリマーが挙げられる(但し、前記ポリマーの総質量に対し、前記単位Bの割合は99.5質量%以下である)。
【0010】
【化1】
式(1)~(3)中、Xは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を有する不飽和又は芳香族複素環から選択され、
nは、0又は1であり、
R
1は、H、CH
3、及びCO
2R
4から選択され、
R
4は、H、CH
3、C
2H
5、及びC
3~C
24アルキル基から選択され、
R
2は、H、CH
3、C
2H
5、フェニル基、CH
2CO
2R
5、及びCO
2R
5から選択され、
R
5は、H、グリシジル基、(CH
2CHR
11O)
mH、(CH
2CHR
11O)
m-COCH
2COCH
3、及びCH
2CH(OH)CH
2Qから選択され、
R
11は、H、CH
3、及びフェニル基から選択され、
mは、1~20の整数であり、
Qは、OH、SO
3Z、及びXから選択され、
Zは、H、Na、K、及びNH
4
+から選択され、
R
3は、H、CH
3、フェニル基、スルホン化フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アセテート基、ヒドロキシ基、フラグメントO-R
1、CO
2R
12、及びCONR
6R
7から選択され、
R
12は、H、CH
3、C
2H
5、及びC
3~C
24アルキル基から選択され、
R
6及びR
7は、それぞれ独立に、H、CH
3、C
2H
5、C(CH
3)
2CH
2SO
3Z、及びC
3~C
8アルキル基から選択され、
R
8及びR
9は、それぞれ独立に、H、CH
3、C
2H
5、及びC
3~C
24アルキル基から選択され、
R
10は、C
1~C
8アルキレン基、C
2~C
8アルケニレン基、C
6~C
10不飽和非環式基、C
6~C
10環式基、C
6~C
10の芳香族基、オキシC
2~C
4アルキレン基、及びポリ(オキシC
2~C
4アルキレン)
b基から選択され、
bは、2~20の整数であり、
但し、前記ポリマーに前記単位B及び前記単位Cが含有されていない場合、R
2はCH
2CO
2R
5又はCO
2R
5であり、R
5はCH
2CH(OH)CH
2Qであり、QはXである。
【0011】
上記式(1)~(3)において、「アルキル」には、直鎖、分枝鎖及び環式アルキル基が含まれ、「アルキレン」には、直鎖、分枝鎖及び環式アルキレン基が含まれ、「アルケニレン」には、直鎖及び分枝鎖アルケニレン基が含まれる。
不飽和又は芳香族複素環には、例えば、不飽和結合を有する5員~7員の複素環;N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を有する芳香族複素環;このような複素環の異性体及びこれらの組合せが含まれる。更に、適切な複素環には、例えば、一緒に縮合して、少なくとも1個のN、O又はS原子を有する、より大きな9員~14員の複素環を形成する5員~7員の複素環;このような複素環の異性体及びこれらの組合せを含むことができる。
【0012】
(A-1)成分中のポリマーは、複素環含有ポリマーを含むものであってよい。
複素環としては、例えば、イミダゾール、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール及びそれらのそれぞれの異性体(例えば、チアゾール-4-イル、チアゾール-3-イル及びチアゾール-2-イル)、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、アゾール、インダゾール、トリアゾール及びそれらのそれぞれの異性体(例えば、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾール)、並びにイミダゾール1,2,3-トリアゾール-1,2,4-トリアゾールのようなこれらの組合せ、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、メチルベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール並びにメチルベンズイミダゾールが挙げられる。
複素環含有ポリマーとしては、例えば、複素環含有モノマーに由来する単位を含有するポリマーが挙げられる。複素環含有モノマーとしては、例えば、ビニルイミダゾールやビニルピリジンが挙げられる。
複素環含有ポリマーは、複素環含有モノマーに由来する単位のほかに、非複素環含有モノマーに由来する単位を含有していてもよい。
【0013】
(A-1)成分中のポリマーは、典型的には、架橋剤に由来する単位を含む。架橋剤に由来する単位の割合は、ポリマーの総質量に対し、0.5~60質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましく、5~8質量%がさらに好ましい。
架橋剤としては、通常使用されるものであればよく、例えば、ジ-、トリ-、テトラ-及びより高級の多官能性エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。より具体的には、トリビニルベンゼン;ジビニルトルエン;ジビニルピリジン;ジビニルナフタレン;ジビニルキシレン;エチレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;ジエチレングリコールジビニルエーテル;トリビニルシクロヘキサン;アリルメタクリレート(「ALMA」);エチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」);ジエチレングリコールジメタクリレート(「DEGDMA」);プロピレングリコールジメタクリレート;プロピレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」);ジビニルベンゼン(「DVB」);2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジメタクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコール200ジアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;ポリエチレングリコール600ジメタクリレート;ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート;グリセリルプロポキシトリアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリトールテトラメタクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート;ジビニルシラン;トリビニルシラン;ジメチルジビニルシラン;ジビニルメチルシラン;メチルトリビニルシラン;ジフェニルジビニルシラン;ジビニルフェニルシラン;トリビニルフェニルシラン;ジビニルメチルフェニルシラン;テトラビニルシラン;ジメチルビニルジシロキサン;ポリ(メチルビニルシロキサン);ポリ(ビニルヒドロシロキサン);ポリ(フェニルビニルシロキサン)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0014】
(A-1)成分中のポリマーは、典型的には、粒子状である。ポリマーの平均粒子径は1~200nmが好ましく、1~50nmがより好ましく、10nm未満がさらに好ましい。平均粒子径は、光散乱法により測定される数平均粒子径である。ポリマーの分子量は、例えば500~5000である。
本発明の一態様において、(A-1)成分は、架橋剤に由来する単位の割合が10質量%未満で、複素環含有モノマーとしてビニルイミダゾールを含み、平均粒子径が10nm未満であるポリマーと錯体化された銀が好ましい。
(A-1)成分の具体例としては、例えば、ダウケミカル・ジャパン株式会社から提供されているSILVADUR(登録商標)900 Antimicrobial、SILVADUR(登録商標)930 Antimicrobial、SILVADUR(登録商標)930FLEX Antimicrobial;Goulston Technologies,Inc.から提供されているLurol(登録商標)Ag-1500;松本油脂製薬株式会社から提供されているブリアンBG-1(登録商標)が挙げられ、SILVADUR(登録商標)930FLEXがより好ましい。
【0015】
〈(A-2)成分:担体に担持された銀〉
(A-2)成分において、担体の具体例としては、リン酸塩類(リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジリコニウム等)、無機化合物(ゼオライト、粘土鉱物、シリカゲル等)等が挙げられる。これらの担体は、単独または2種以上を用いてもよい。
(A-2)成分は粒子状であり得る。その平均粒子径は0.1~100μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、2~4μmがさらに好ましい。平均粒子径は、光散乱法により測定される数平均粒子径である。
本発明の一態様において、(A-2)成分は、多孔質球状シリカに銀及びリン酸3カルシウムを担持させたものが好ましい。更に、(A-2)成分は、多孔質球状シリカに銀及びリン酸3カルシウムを担持させたものであって、銀含有量が0.01~0.2質量%であり、平均粒子径が2~4μmのものがより好ましい。
(A-2)成分の具体例としては、例えば、鈴木油脂工業株式会社製のPCボールAG-6Hが挙げられる。
【0016】
〈(A-3)成分:無機銀塩〉
(A-3)成分としては、銀の酸化物、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩等が挙げられる。このような無機銀塩は市販品を使用することができ、例えば、東洋化学工業株式会社から提供されている硫酸銀等の市販品を使用することができる。
なお、(A-3)成分は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
(A)成分としては、ポリマーと錯体化された銀がより好ましく、具体的な製品としてはSILVADUR(登録商標)930FLEX等が挙げられる。
(A)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.001質量%~1質量%であり、好ましくは0.01質量%~0.8質量%、より好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。(A)成分の含量が0.001質量%以上であると抗菌性能を良好に付与し得、1質量%以下であると(C)成分による保存安定性の向上が得られやすい。
【0018】
[(B)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(B)成分として、キレート剤を含有する。(B)成分は、主に消臭性能付与のために配合される。
本発明において用いることのできるキレート剤としては、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラホスフォニックアシッド、ジエチレントリアミン-N,N,N’,N”,N”-ペンタキス(メタンホスホネート)等の有機フォスフォン酸化合物、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリアセテート、エチレンジアミンテトラプロピオネート、エチレンジアミン-N,N’-ジグルタメート、2-ヒドロキシプロピレンジアミン-N,N’-ジスクシネート、トリエチレンテトラアミンヘキサアセテート、ジエチレントリアミンペンタアセテート、エチレンジアミンジコハク酸、メチルグリシンジ酢酸、イミノジコハク酸、ヒドロキシイミノジコハク酸、アスパラギン酸等のアミノカルボン酸化合物、クエン酸、カプトカテキュ酸、及びそれらの塩、例えばそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩のようなそれらの水溶性の塩等が挙げられる。
【0019】
また、(B)成分は、下記式(I)~(III)で表される化合物から選択され得る。(B)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【化2】
式(I)中、A
Iは炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、水素原子又はCOOM
Iを表す。A
Iとしては、CH
3、OH、H、COOM
Iが好ましく、CH
3、Hがより好ましく、CH
3が特に好ましい。
M
Iは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、アルカノールアミンからなる群より選ばれる1種を示す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。M
Iとしては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
m
I及びn
Iは、それぞれ0~2の整数である。m
Iは、好ましくは0又は1である。n
Iは、好ましくは0又は1である。m
Iとn
Iとがいずれも0の場合、A
Iは、CH
3である。
前記式(I)で表される化合物のなかで好適なものとしては、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β-アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、又はこれらの塩が挙げられる。なかでもMGDA又はその塩が好ましい。
【0020】
【化3】
式(II)中、X
II-1~X
II-4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、アルカノールアミンからなる群より選ばれる1種を表す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。X
II-1~X
II-4としては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
Q
IIは、水素原子又は炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基を表す。
R
IIは、水素原子又は水酸基を表す。
n
IIは、0又は1を表す。
前記式(II)で表される化合物のなかで好適なものとしては、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、又はこれらの塩が挙げられ、なかでもIDS又はその塩が好ましい。
【0021】
【化4】
式(III)中、R
IIIは、炭素数8~22、好ましくは12~18の直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基を表す。
A
IIIは、H、メチル基又は(CH
2)m
III-COOX
IIIを表す。A
IIIとしては、(CH
2)m
III-COOX
IIIが好ましい。
m
IIIは、1~3のいずれかの数を表す。
X
IIIは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はNH
4
+を表わす。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
n
IIIは、1~3のいずれかの数を表す。
【0022】
前記式(III)で表わされる化合物の具体例としては、オクチルアミノ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノ酢酸ナトリウム、パルミチルアミノ酢酸ナトリウム、オレイルアミノ酢酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノ酢酸塩;
オクチルアミノプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノプロピオン酸塩;
N‐オクチルグリシンナトリウム、N‐デシルグリシンナトリウム、N‐ラウリルグリシンナトリウム、N‐ミリスチルグリシンナトリウム、N‐パルミチルグリシンナトリウム、N‐オレイルグリシンナトリウム等のN‐アルキル及びアルケニルグリシン塩;
N‐オクチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐デシル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐ドデシル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐ミリスチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐パルミチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐オレイル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム等のN‐アルキル及びアルケニル‐N‐メチル‐β‐アラニン塩;
オクチルアミノジ酢酸ナトリウム、デシルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム、パルミチルアミノジ酢酸ナトリウム、オレイルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノジ酢酸塩;及び オクチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノジプロピオン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、保存安定性から考えて、アルキル及びアルケニルアミノジ酢酸塩が好ましく、その中でもデシルアミノジ酢酸、ラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩が好ましく、特にラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩がより好ましい。
【0023】
(B)成分としては、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物が特に好ましい。また、組成物の変色を抑制する効果が高いことから、MDGA、クエン酸又はそれらの塩がより好ましい。
(B)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.01質量%~1質量%であり、好ましくは0.05質量%~1質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%である。(B)成分の含量が0.01質量%以上であると消臭性能を良好に付与し得、1質量%以下であると(C)成分による保存安定性の向上が得られやすい。
【0024】
[(C)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(C)成分として、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含む共重合体を含有する。但し、(C)成分には、銀と錯体化したものは含まれない。(C)成分は、主に保存安定性の向上(変色抑制)のために配合され、また、構造粘性付与にも有益である。
(C)成分としては、下記式(c2)で表されるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、下記式(c1)で表されるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【化5】
式(c1)中、R
5は水素原子又はメチル基であり、R
6は水素原子である。
式(c2)中、R
7は水素原子又はメチル基であり、R
8は炭素数1~40のアルキル基である。R
8におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、又は環状の構造(シクロアルキル環または芳香族環)を含んでいてもよい。R
8におけるアルキル基の炭素数は1~40であり、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。
【0025】
式(c1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(c1)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(c1)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(c1)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。式(c1)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(c2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(c2)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(c2)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(c2)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イコシル等のアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イコシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。式(c2)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(C)成分は、架橋されているものでもよく、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。(C)成分の架橋されているものとしては、例えば、架橋剤により架橋されているもの(高分子架橋体)が挙げられる。
前記の架橋剤としては、例えばアリルエーテル化合物が好適に挙げられる。
アリルエーテル化合物としては、アリルエーテル、糖のアリルエーテル、糖アルコールのアリルエーテル等が挙げられる。
糖のアリルエーテルにおける糖としては、例えばスクロース等が挙げられる。
糖アルコールのアリルエーテルにおける糖アルコールとしては、例えばペンタエリスリトール等が挙げられる。
(C)成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(C)成分は、式(c1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位及び式(c2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位以外の繰り返し単位(他の繰り返し単位)を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、他のモノマーから誘導された繰り返し単位が挙げられる。他のモノマーとしては、式(c1)で表されるモノマー及び式(c2)で表されるモノマーと共重合可能であれば特に制限されず、1種以上を用いることができる。
【0027】
(C)成分の具体例としては、例えば以下の商品名が挙げられる。
架橋タイプの(C)成分の市販品としては、例えば、Lubrizol社製のアクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol Aqua30」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)及びメタクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とからなる架橋型共重合体である「Carbopol Aqua SF-1」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C10~C30)及びメタクリル酸アルキル(C10~C30)から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸のモノマー単位とからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol EZ-4」;DOW社製のアクリル酸アルキルから選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーに由来する1種以上のモノマー単位とからなる架橋型共重合体である商品名「ACUSOL830」等が挙げられる。
【0028】
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.02質量%~5質量%、好ましくは0.03質量%~3質量%、より好ましくは0.3質量%~2.7質量%である。(C)成分の含量が0.02質量%以上であると、構造化の面で良好であり、5質量%以下であると、増粘による配合性の悪化を防止し得る。
(A)成分と(C)成分の配合割合は、(C)成分/(A)成分で表される質量比が、0.3~1100が好ましく、1.5~300がより好ましい。
【0029】
[(D)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(D)成分としてカプセル香料を含有してもよい。(D)成分は、香りを持続させる目的で配合され得る。
カプセル香料は、芯物質と、当該芯物質を覆う壁物質とから構成されるマイクロカプセルであり、芯物質は香料や精油を含む。このような芯物質の香料及び精油は、本発明の技術分野において周知の成分を用いることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。
カプセル香料の壁物質は、高分子物質から構成され、繊維製品用処理剤組成物等に含有されるカプセルに一般的に使用される材料を用いることができる。壁物質として、例えば、ゼラチン、寒天等の天然系高分子、油脂、ワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、ポリウレア系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質などを挙げることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。壁物質は、カプセルが破壊された際の発香性の観点から、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂或いは尿素-ホルムアルデヒド樹脂からなるアミノプラストポリマー、ポリアクリル酸系或いはポリメタクリル酸系ポリマーであることが好ましい。特に、特開2010-520928号に記載されているようなアミノプラストポリマーが好ましい。具体的には、ポリアミン由来の部分/芳香族ポリフェノール由来の部分/メチレン単位、ジメトキシメチレン及びジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなるターポリマーであることが好ましい。
マイクロカプセルの表面電荷は正電荷、負電荷のどちらでもよく、2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
カプセル香料は、市販の製品から適宜選択することができるが、具体的には、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」、IMPACTPOPSCENT「197593BMHN2911」、及びAPPLEPOPSCENT「113285FBMHN2911」;ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS、及びCOSMICCAPS;IFF社製のUNICAP101、及びUNICAP503等が挙げられる。
(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
(D)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.005~5質量%、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。(D)成分の含量が0.005質量%以上であると充分な発香性が達成でき、5質量以上であってもコスト面から考えてメリットは少ない。(D)成分の含量が0.01~5質量%の範囲内であると、発香性、費用対効果の点で好ましい。
【0031】
[任意成分]
繊維製品用処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記(A)、(B)、(C)成分、及び(D)成分以外の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、各種界面活性剤、シリコーン化合物、再汚染防止剤、高分子、防腐剤、(A)成分以外の抗菌剤、防カビ剤、忌避剤、天然物などのエキス、分散剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、紫外線吸収剤など、安全性が高くしかも通常の繊維製品用処理剤に使用されるものであればどのようなものでもよく、特に限定されるものではない。本発明における任意成分の配合量は、上限が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。本発明の繊維製品用処理剤組成物の安定性を高めるために、非イオン性界面活性剤が好ましい。
本発明において使用できる非イオン性界面活性剤としては、炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1~3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が20~100モルである硬化ヒマシ油、などが挙げられる。中でも、炭素数10~14のアルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が5~20モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が30~50モルである硬化ヒマシ油が好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物における非イオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。この範囲にあると、繊維製品用処理剤組成物の分散安定性を高めることができる。
【0032】
例えば、繊維製品上での菌の増殖を抑制し、不快臭の発生を抑制する観点から、有機系防菌防カビ剤、無機系防菌防カビ剤の中から1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。有機系防菌防カビ剤としては、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、糖質系、トロポロン系、有機金属系のものが挙げられる。また、無機系防菌防カビ剤としては、金属酸化物が挙げられる。例えばダイクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの抗菌剤或いは除菌剤を繊維製品用処理剤組成物中に0.05~1質量%の範囲で配合することができる。
シリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、なかでもHLBが13以下、好ましくは10以下、更に好ましくは7以下のポリエーテル変性シリコーンが、着用じわを減少させる観点から好ましい。具体的には東レ・ダウコーニング社製のSH3775C、SH3772CやSH3775Mなどの化合物が好適である。
シリコーン化合物の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~5質量%であり、しわ減少効果と経済性の観点からより好ましくは0.1~1質量%である。
【0033】
また、繊維製品用処理剤組成物中に含まれる成分の保存安定性を確保するために、pH調整剤を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。酸として、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。アルカリとして、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
さらに、繊維製品用処理剤組成物そのもの、または繊維製品用処理剤組成物により処理された繊維製品に香り付けをするために、香料を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。本発明の分野において通常使用されているいかなる香料も使用でき、例えば特開2008-7872号公報に記載されているような香料成分、溶剤、安定化剤を含有する香料組成物が挙げられる。香料は、繊維製品用処理剤組成物中に0.005~5質量%配合することができ、香り付けの効果と経済性の観点から、0.01~1質量%配合することが好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、好ましくは水性組成物であり、水を含むことが好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水など、いずれも用いることができる。中でもイオン交換水が好適である。
水は、本発明の繊維製品用処理剤組成物中に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上配合される。水の含有割合が前記下限値以上であれば、ハンドリング性が良好となる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、水に加えて、水溶性溶剤を含むことが好ましい。水溶性溶剤としては、低級(炭素数1~4)アルコール、グリコールエーテル系溶剤、多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、エタノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等がより好ましい。
【0034】
[繊維製品用処理剤組成物の製造方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物の製造方法は特に限定されず、本発明の繊維製品用処理剤組成物は定法により製造することができる。
例えば、水に(B)成分及び(C)成分を加え、pH調整剤を用いて組成物のpHを中性にし、混合する。その後、任意成分を添加して混合後、必要であれば水酸化ナトリウムや塩酸、硫酸等のpH調整剤を用い、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で、配合物をスターラーにて攪拌したままpHを調整した後、(A)成分を添加することにより製造することができる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物のpHは、保存安定性を確保するために6以上~9以下であると好ましく、6.5以上~8以下であるとより好ましい。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物の粘度は、200mPa・s以下であることが好ましい。本発明の繊維製品用処理剤組成物をスプレー容器に入れて使用する場合には、150mPa・s以下であることがより好ましい。なお、本明細書で示す粘度はB型粘度計(トキメック社製)を用いて、原液を25℃で測定した場合の数値である。
【0035】
[繊維製品用処理剤組成物の使用方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物を、繊維製品に使用する方法としては、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。
スプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。トリガースプレー容器の例としては、特開平9-268473号公報、特開平9-256272号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器の例としては、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物は、プラスチック製容器に収納することができる。プラスチック製容器としては、ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000-72181号公報に記載のものが挙げられるが、材質としては、内層に100~250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15~30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物を使用する対象の繊維製品としては、特に限定されないが、例えば、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、靴、トイレマット、バスマット、玄関マット、カーペット、ラグ、絨毯等が挙げられる。また、対象とする繊維製品の素材も、特に限定されないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられ、その中でも、普段の手入れが困難なウール及びその混紡品において、本発明の組成物の効果が顕著に発揮される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例において、成分配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0037】
[(A)成分]
下記の銀系抗菌剤を使用した。
・A-1:錯体銀
(A-1-1):抗菌剤「SILVADUR 930 FLEX Antimicrobial」(ダウケミカル・ジャパン株式会社製)
(A-1-2):抗菌剤「SILVADUR 930 Antimicrobial」(ダウケミカル・ジャパン株式会社製)
(A-1-3):抗菌剤「Lurol Ag-1500」(Goulston Technologies,Inc.製)
(A-1-4):抗菌剤「AA-125Ag」(大和化学工業株式会社製)
・A-2:担体に担持された銀
(A-2):抗菌剤「PCボール AG-6H」(鈴木油脂工業株式会社製)
・A-3:無機銀塩
(A-3):抗菌剤「硫酸銀」(東洋化学工業株式会社製)
【0038】
[(B)成分]
下記のキレート剤を使用した。
(B-1):メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム「MGDA」(BASF社製)
(B-2):クエン酸3ナトリウム(関東化学株式会社製)
(B-3):エチレンジアミン4酢酸「EDTA」(関東化学株式会社製)
【0039】
[(C)成分]
下記のアクリル酸系ポリマーを使用した。
(C-1):架橋型アクリル酸系高分子「Carbopol AQUA 30」(Lubrizol社製)
(C-2):架橋型アクリル酸系高分子「Carbopol AQUA SF-1」(Lubrizol社製)
(C-3):架橋型アクリル酸系高分子「Carbopol EZ4」(Lubrizol社製)
比較例として下記のC-4を使用した。
(C-4):ポリアクリル酸「sokalan CP10」(BASF社製)
【0040】
[(D)成分]
下記のカプセル香料を使用した。
(D-1):カプセル香料「VELVET UP」(Givaudan社製)
【0041】
[共通成分]
共通成分A
・95%合成エタノール(日本アルコール販売製) 10%
・ポリエーテル変性シリコーン(SH3775M)(東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.5%
・下記表1で示される香料組成物 0.03%
【表1】
【0042】
[繊維製品用処理剤組成物の調製方法]
下記手順に従って、表2及び3に示される組成を有する実施例1~18及び比較例1~7の組成物をそれぞれ調製した。
水(残部に相当)、エタノール、表1で示される香料組成物、ポリエーテル変性シリコーン、(B)成分、(C)成分を混合し十分に攪拌後、pH調整剤を用いて所定のpHに調整し、(A)成分、(D)成分を混合し繊維製品用処理剤組成物を調製した。
【0043】
[評価方法]
<保存安定性>
上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物を軽量PSガラスビン(PS-No.6、田辺硝子工業所製)に50ml入れて密栓して50℃条件下で2週間保管し、液色を下記評価基準に従って目視で評価を行った。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
◎◎:液色の変色が全く認められない
◎:極わずかに液色に変色が認められる
○:やや液色に変色が認められる
×:液色に明らかな変色が認められる
【0044】
<抗菌性>
(1)処理方法
綿布(15cm×15cm)に対して、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物をディスペンサーポンプスプレー(スタイルガード しわもニオイもすっきりスプレー、ライオン(株)製)を用いて一定量噴霧した後、乾燥させた。乾燥後、該綿布を試験布として抗菌効果の評価に用いた。また、未処理布は組成物を噴霧していない綿布を用いた。
【0045】
(2)黄色ブドウ球菌に対する抗菌性の評価
本評価に用いた器具、水などは、予めオートクレーブにより滅菌処理を施したものを用いた。また、本評価では、菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いた。
JIS L1902に準じて培養を行った黄色ブドウ球菌を用い、ニュートリエント培地を20倍に希釈し、菌数が1±0.3×105個/mLとなるように、黄色ブドウ球菌母液を調製した。
前記試験布0.4gに、前記黄色ブドウ球菌母液200μLずつを接種し、37℃の恒温槽にて18時間培養して、試験布上で増殖又は静菌した。
その後、抽出液(JIS L1902に記載の洗い出し用生理食塩水)にて試験布から菌を抽出し、その抽出液を生理食塩水によって10倍に希釈した。得られた希釈液をさらに10倍に希釈する操作を4回繰り返し、100,000倍の希釈液を得た。なお、「洗い出し用生理食塩水」とは、精製水1,000mLに対し、塩化ナトリウム8.5gを採取し、これらをフラスコに入れて充分に溶解させ、さらに非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(関東化学社製、商品名「ポリソルベート80、Tween80」)2gを加えて溶解させた後、高圧蒸気殺菌(オートクレーブ処理)したものである。
【0046】
次いで、SCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製)上に、得られた100,000倍の希釈液から1mLを採取し、予めオートクレーブにより滅菌処理し48℃に保温したSCDLP寒天培地15mLをシャーレ上で混釈し、37℃の恒温槽内で1~2日間培養した後、コロニー数をカウントし、生菌数を求めた。未処理布についても試験布と同様の操作を行って生菌数を測定し、これらの測定値を用いて抗菌活性値を下記式(ii)より算出した。
抗菌活性値=log10(未処理布の生菌数/試験布の生菌数) ・・・(ii)
下記基準により抗菌性付与効果の評価を行った。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
◎:抗菌活性値が2.0以上であった。
○:抗菌活性値が1.0以上~2.0未満であった。
×:抗菌活性値が1.0未満であった。
【0047】
<消臭性>
(1)試験用布の前処理
試験用布として、市販の肌シャツ(綿100%、白色、丸首、BVD社製)を用いた。家庭用の二槽式洗濯機(VH-30S、東芝株式会社製)に20℃の水道水30Lを入れ、ここに市販の衣類用粉末洗剤(消臭ブルーダイヤ(商品名)、ライオン株式会社製)15gを加え、よく分散させた後、試験用布5枚を投入し、15分間洗浄した。洗剤液を排水後、試験用布を脱水機で1分間脱水し、20℃の水道水30Lで3分間濯ぐという脱水・濯ぎ工程を2度行なった後、3分間脱水しハンガーで吊り干しにて一晩風乾した。
【0048】
(2)汗臭消臭評価
40歳代の男性2名が、前処理を施した試験用布を着用し、晴天時にランニングを30分間行った。ランニング後に試験用布を回収し、背中部分及び前部分からそれぞれ7cm×7cm(0.85g/枚)を27枚採取し、採取した試験用布をチャック付きポリ袋に入れ一晩放置した(試験用布の採取処理)。これを汗臭モデル試験用布とした。
この汗臭モデル試験用布に対し、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物をディスペンサースプレー容器(「スタイルガード しわもニオイもすっきりスプレー」(ライオン株式会社製)用の容器)を用いて0.2g/枚噴霧し、噴霧直後に、10人のパネラーにより以下に示す評価基準で臭気の評価を行った。その後、試験用布を洗濯ばさみで1枚ずつ物干し竿に吊るして風乾し、噴霧2時間後に臭気評価を行った。10人のパネラーの点数の平均が3点未満のものを合格(◎、○)とした。平均値が低いほど、消臭効果が高いと評価できる。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
×:
5点:汗臭が非常に強い。
4点:汗臭がかなりある。
○:
3点:汗臭がわかる。
2点:汗臭がややわかる。
◎:
1点:汗臭がかすかにわかる。
0点:まったく汗臭がしない。
【0049】
【表2】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。
【表3】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。