IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イリソ電子工業株式会社の特許一覧

特許7454344ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法
<>
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図1
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図2
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図3
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図4
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図5
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図6
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図7
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図8
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図9
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図10
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図11
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図12
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図13
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図14
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図15
  • 特許-ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造及びライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20240314BHJP
   H01R 12/91 20110101ALI20240314BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R12/91
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144064
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021026889
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】杉木 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】浅井 渚
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181495(JP,A)
【文献】特開2017-212025(JP,A)
【文献】特開2019-091649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
H01R 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の基板面に配置されるライトアングルコネクタと、
前記ライトアングルコネクタと嵌合する接続対象物とを備えており、
前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物との嵌合方向及び抜去方向が、前記基板面に対する前記ライトアングルコネクタの高さ方向と交差する方向であり、
前記ライトアングルコネクタは、
前記第1の基板に配置する第1のハウジングと、
前記接続対象物と嵌合する第2のハウジングと、
前記接続対象物と導通接触する接触部と、前記第1のハウジングに保持される固定ハウジング用固定部と、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに対して変位可能に支持する可動部と、前記第2のハウジングに保持される可動ハウジング用固定部とを有する端子とを備えており、
前記第2のハウジングと前記接続対象物とは、前記嵌合方向で近づいて嵌合して初期嵌合状態を形成する
ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造において、
前記可動部は、前記嵌合方向及び前記抜去方向に弾性変形するための弾性力が、前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合した状態での前記接触部と前記接続対象物との間の前記嵌合方向及び前記抜去方向における保持力よりも小さく形成されており、
前記初期嵌合状態における前記第2のハウジングと前記接続対象物との間には、前記第2のハウジングと前記接続対象物とを、前記初期嵌合状態での嵌合位置よりもさらに深い最深嵌合状態での嵌合位置で嵌合させるための嵌合間隙を有し、
前記端子は、
第1の端子と、
前記第1の端子とは前記可動部の形状が相違する第2の端子とを備え、
前記第1の端子の前記可動部及び前記第2の端子の前記可動部のそれぞれは、前記高さ方向で上下二段に配置されており、
前記第1の端子の前記可動部及び前記第2の端子の前記可動部の各々は、
前記固定ハウジング用固定部から伸長する山状波部と、
前記山状波部から伸長する谷状波部と、
前記谷状波部と前記可動ハウジング用固定部とに繋がる伸長部と
を有する波形に形成されており、
前記山状波部は、前記伸長部よりも前記高さ方向で高い位置で屈曲して、前記谷状波部と前記伸長部とを吊下げるように片持ち支持しており、
前記嵌合間隙は、
前記接続対象物を挿入する前記第2のハウジングの嵌合口と、前記接続対象物との間に形成される第1の嵌合間隙と、
前記嵌合口の奥に形成されて前記接続対象物と嵌合接続する嵌合室の室内底面と、前記接続対象物との間に形成される第2の嵌合間隙とを有し、
前記第2の嵌合間隙は、前記最深嵌合状態で、前記接続対象物が前記室内底面と当接するように、前記第1の嵌合間隙よりも短く形成されており、
前記初期嵌合状態にある前記第2のハウジングと前記接続対象物とは、それらに作用する振動、衝撃、共振の何れかの作用により前記嵌合方向で近づいて前記接続対象物と前記室内底面とが当接することにより、前記最深嵌合状態を形成するものであることを特徴とする
ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造。
【請求項2】
前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合時に前記接続対象物に押されて移動する前記第2のハウジングと当接して停止させる当接受け部を有し、
前記初期嵌合状態は、前記当接受け部と当接して停止した前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合することによって形成される
請求項1記載のライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造。
【請求項3】
前記当接受け部は、前記高さ方向に形成されている前記第1のハウジングの壁である
請求項2記載のライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造。
【請求項4】
前記当接受け部は、前記第1の基板又は前記第1のハウジングに設けた受け部材である
請求項2記載のライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造。
【請求項5】
前記接続対象物は、相手コネクタ又は電気素子である
請求項1~請求項4何れか1項記載のライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造。
【請求項6】
第1の基板の基板面に配置されるライトアングルコネクタと接続対象物とを嵌合する嵌合方法であり、
前記ライトアングルコネクタは、前記第1の基板に配置する第1のハウジングと、前記接続対象物と嵌合する第2のハウジングと、前記接続対象物と導通接触する接触部と、前記第1のハウジングに保持される固定ハウジング用固定部と、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに対して変位可能に支持する可動部と、前記第2のハウジングに保持される可動ハウジング用固定部とを有する端子とを備えており、
前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物との嵌合方向及び抜去方向は、前記基板面に対する前記ライトアングルコネクタの高さ方向と交差する方向であり、
前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物とは、前記接続対象物と前記ライトアングルコネクタとが前記嵌合方向で近づいて嵌合するものである
ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法において、
前記可動部は、前記嵌合方向及び前記抜去方向に弾性変形するための弾性力が、前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合した状態での前記接触部と前記接続対象物との間の前記嵌合方向及び前記抜去方向における保持力よりも小さくなるように形成されており、
前記端子は、
第1の端子と、
前記第1の端子とは前記可動部の形状が相違する第2の端子とを備え、
前記第1の端子の前記可動部及び前記第2の端子の前記可動部のそれぞれは、前記高さ方向で上下二段に配置されており、
前記第1の端子の前記可動部及び前記第2の端子の前記可動部の各々は、
前記固定ハウジング用固定部から伸長する山状波部と、
前記山状波部から伸長する谷状波部と、
前記谷状波部と前記可動ハウジング用固定部とに繋がる伸長部と
を有する波形に形成されており、
前記山状波部は、前記伸長部よりも前記高さ方向で高い位置で屈曲して、前記谷状波部と前記伸長部とを吊下げるように片持ち支持しており、
前記第2のハウジングと前記接続対象物との間には嵌合間隙を有し、
前記第2のハウジングに前記接続対象物を嵌合して初期嵌合状態を形成する第1の過程と、
前記第1の過程後に前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物とが近づくことで、前記第1の過程後の前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合位置よりも、前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合位置がさらに深くなる最深嵌合状態を形成する第2の過程と、
前記接触部と前記接続対象物とが前記第2の過程後の接触位置を維持したまま、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングの少なくとも何れか一方が他方に対して離れる方向に移動することで、前記可動部が前記第2のハウジングを少なくとも前記嵌合方向及び前記抜去方向で変位可能に支持する嵌合状態を形成する第3の過程とを有し、
前記嵌合間隙は、
前記接続対象物を挿入する前記第2のハウジングの嵌合口と、前記接続対象物との間に形成される第1の嵌合間隙と、
前記嵌合口の奥に形成されて前記接続対象物と嵌合接続する嵌合室の室内底面と、前記接続対象物との間に形成される第2の嵌合間隙とを有し、
前記第2の嵌合間隙は、前記最深嵌合状態で、前記接続対象物が前記室内底面と当接するように、前記第1の嵌合間隙よりも短く形成されており、
前記初期嵌合状態にある前記第2のハウジングと前記接続対象物とは、それらに作用する振動、衝撃、共振の何れかの作用により前記嵌合方向で近づいて前記接続対象物と前記室内底面とが当接することにより、前記最深嵌合状態を形成することを特徴とする
ライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の開示は、ライトアングルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタの一種としてライトアングルコネクタが知られている。ライトアングルコネクタは、それを実装する基板の基板面と、ライトアングルコネクタに設ける接続対象物の嵌合部(嵌合面)とが交差する配置関係となるコネクタのことを言う。ここでライトアングルコネクタの「嵌合部」とは、接続対象物が挿入されるライトアングルコネクタのハウジングの嵌合口、接続対象物に対して挿入されるライトアングルコネクタのハウジングの挿入部、又は接続対象物に対して挿入される端子を含む。ライトアングルコネクタでは、例えば、ライトアングルコネクタを実装する第1の基板の基板面と、接続対象物としての相手コネクタを実装する第2の基板の基板面とが、それぞれの基板面を延長させた場合に相互に交差するように配置される。従来のライトアングルコネクタの一例としては、例えば特開2011-76755公報(特許文献1)に記載のものが知られている。
【0003】
特開2011-76755号公報に記載のライトアングルコネクタ(フローティングコネクタ100)は、第1の基板(回路基板101)に保持される固定ハウジング(固定ハウジング200)と、固定ハウジングに対して変位可能な可動ハウジング(浮動ハウジング300)と、端子(プラグ端子102)とを含む。端子は、嵌合部(接触部106)と可動部(109)とを有する。嵌合部は、接続対象物(ソケットコネクタ400、接触部407)に挿入される。可動部は、弾性変形可能な金属ばね片でなり、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持する。したがって、ライトアングルコネクタと接続対象物とは、それらを嵌合する際に、嵌合方向に対する交差方向で相互に位置ずれしていても、可動部が弾性変形して可動ハウジングが移動することで、相互の位置ずれを吸収しつつ嵌合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-76755公報、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のライトアングルコネクタは、接続対象物との嵌合方向及びその反対方向である抜去方向への振動や衝撃を受けると、端子と接続対象物との接触部分が接点摺動を起こすおそれがある。この接点摺動が繰り返し起こると、電気抵抗値を低下させるためのめっきが剥がれて電気抵抗値が上昇し、電気コネクタとしての接続信頼性が低下する。
【0006】
本出願の目的は、フローティング機能を有するライトアングルコネクタと接続対象物とが設置環境下で振動を受けても接続信頼性を維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本出願で開示する実施態様は以下の特徴を有することができる。
【0008】
本出願の第1の実施態様は、第1の基板の基板面に配置されるライトアングルコネクタと、前記ライトアングルコネクタと嵌合する接続対象物とを備えており、前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物との嵌合方向及び抜去方向が、前記基板面に対する前記ライトアングルコネクタの高さ方向と交差する方向であり、前記ライトアングルコネクタは、前記第1の基板に配置する第1のハウジングと、前記接続対象物と嵌合する第2のハウジングと、前記接続対象物と導通接触する接触部と、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに対して変位可能に支持する可動部とを有する端子とを備えており、前記第2のハウジングと前記接続対象物とは、前記嵌合方向で近づいて嵌合して初期嵌合状態を形成するライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合構造について、前記可動部は、前記嵌合方向及び前記抜去方向に弾性変形するための弾性力が、前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合した状態での前記接触部と前記接続対象物との間の前記嵌合方向及び前記抜去方向における保持力よりも小さく形成されており、前記初期嵌合状態における前記第2のハウジングと前記接続対象物との間には、前記第2のハウジングと前記接続対象物とを、前記初期嵌合状態での嵌合位置よりもさらに深い嵌合位置で嵌合させるための嵌合間隙を有することを特徴とする。
【0009】
本実施態様によれば、前記可動部は、前記嵌合方向及び前記抜去方向に弾性変形するための弾性力が、前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合した状態での前記接触部と前記接続対象物との間の前記嵌合方向及び前記抜去方向における保持力よりも小さく形成されている。したがって、嵌合しているライトアングルコネクタと接続対象物とが振動及び衝撃を受けても、接触部と接続対象物との接点摺動を抑制することができる。また、前記初期嵌合状態における前記第2のハウジングと前記接続対象物との間には、前記第2のハウジングと前記接続対象物とを、前記初期嵌合状態での嵌合位置よりもさらに深い嵌合位置で嵌合させるための嵌合間隙を有する。このためライトアングルコネクタと接続対象物との初期嵌合状態で、ライトアングルコネクタと接続対象物の設置環境でライトアングルコネクタと接続対象物とを相互に近づける力が作用しても、初期嵌合状態での嵌合位置をえて第2のハウジングと接続対象物との嵌合位置をより深くすることができ、その力を吸収することができる。そして嵌合位置が深くなった後に、第2のハウジングが第1のハウジングに対して変位した際には、前述のように端子の接触部と接続対象物とは接点摺動せずに、保持力によって接触位置を維持するので、接触部分のめっき剥がれによる接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0010】
前記嵌合構造は、前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合時に前記接続対象物に押されて移動する前記第2のハウジングと当接して停止させる当接受け部を有し、前記初期嵌合状態は、前記当接受け部と当接して停止した前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合することによって形成されるように構成できる。
【0011】
この嵌合構造によれば、第2のハウジングが当接受け部に対して当接して停止した状態で接続対象物と嵌合するので、停止した第2のハウジングに対して接続対象物を容易に嵌合させることができる。
【0012】
前記当接受け部は、前記高さ方向に形成されている前記第1のハウジングの壁であるように構成できる。
【0013】
当接受け部が第1のハウジングの壁であるため、嵌合構造を構成する部品点数を増やすことなく、当接受け部を設けることができる。また、当接受け部が第1のハウジングの壁であるため、第1のハウジングとの位置関係で、すなわちライトアングルコネクタの組立差の範囲で初期嵌合状態における嵌合位置を決めることができる。
【0014】
前記当接受け部は、前記第1の基板又は前記第1のハウジングに設けた受け部材であるように構成できる。
【0015】
当接受け部が第1の基板又は第1のハウジングに設けた受け部材であるため、第1の基板及び第1のハウジングの材質及び構造に依存しない第2のハウジングを受け止めるのに適した機能及び特長を有する受け部材とすることができる。一例として、こうした受け部材は金属片にて構成することができる。例えば、金属片は、第1の基板に固定する金属片として構成できる。また、受け部材は、第1のハウジングに固定する金属片として構成できる。さらに、受け部材は、第1のハウジングを第1の基板に固定する金属片として構成できる。
【0016】
前記接続対象物は、相手コネクタ又は電気素子であるように構成できる。
【0017】
接続対象物が相手コネクタ又は電気素子であるため、ライトアングルコネクタを用いる多様な嵌合構造を実現することができる。
【0018】
本出願の第2の実施態様は、第1の基板の基板面に配置されるライトアングルコネクタと接続対象物とを嵌合する嵌合方法であり、前記ライトアングルコネクタは、前記第1の基板に配置する第1のハウジングと、前記第1のハウジングに対して変位可能な第2のハウジングと、前記接続対象物と導通接触する接触部と、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとを相対変位可能に支持する可動部とを有する端子とを備えており、前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物との嵌合方向及び抜去方向は、前記基板面に対する前記ライトアングルコネクタの高さ方向と交差する方向であり、前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物とは、前記接続対象物と前記ライトアングルコネクタとが前記嵌合方向で近づいて嵌合するものであるライトアングルコネクタと接続対象物との嵌合方法について、前記可動部は、前記嵌合方向及び前記抜去方向に弾性変形するための弾性力が、前記第2のハウジングに前記接続対象物が嵌合した状態での前記接触部と前記接続対象物との間の前記嵌合方向及び前記抜去方向における保持力よりも小さくなるように形成されており、前記第2のハウジングの移動が停止するまで、前記第2のハウジングに前記接続対象物を嵌合する第1の過程と、前記第1の過程後に前記ライトアングルコネクタと前記接続対象物とが近づくことで、前記第1の過程後の前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合位置よりも、前記第2のハウジングと前記接続対象物との嵌合位置がさらに深くなる第2の過程と、前記接触部と前記接続対象物とが前記第2の過程後の接触位置を維持したまま、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングの少なくとも何れか一方が他方に対して離れる方向に移動することで、前記可動部が前記第2のハウジングを少なくとも前記嵌合方向及び前記抜去方向で変位可能に支持する嵌合状態を形成する第3の過程とを有することを特徴とする。
【0019】
第1の過程では、第2のハウジングに接続対象物を嵌合する。
【0020】
第2の過程では、第1の過程後にライトアングルコネクタと接続対象物とが近づくことで、第1の過程後の第2のハウジングと接続対象物との嵌合位置よりも、第2のハウジングと接続対象物との嵌合位置がさらに深くなる。このため、第1の過程後にライトアングルコネクタと接続対象物の設置環境でライトアングルコネクタと接続対象物とを近づける力(例えば、振動(共振振動を含む。)、衝撃等の設置環境下で発生しうる外力)が作用しても、第2のハウジングと接続対象物とが第1の過程後の嵌合位置をえてさらに深く嵌合することによって、その力を吸収することができる。
【0021】
第3の過程では、接触部と接続対象物とが第2の過程後の接触位置を維持したまま、第1のハウジングと第2のハウジングの少なくとも何れか一方が他方に対して離れる方向に移動することで、可動部が第2のハウジングを少なくとも嵌合方向及び抜去方向で変位可能に支持する嵌合状態を形成する。ここで、前記嵌合状態を形成するための第1のハウジングと第2のハウジングの離間方向への動きは、具体的には、3つのパターンがある。第1は、第1のハウジングが第2のハウジングに対して離れる方向に移動する場合である。第2は、第2のハウジングが第1のハウジングに対して離れる方向に移動する場合である。第3は、第1のハウジングと第2のハウジングの両方が相互に離れる方向に移動する場合である。そして、第2の過程によって形成された接触部と接続対象物との接触位置は、嵌合方向及び抜去方向に弾性変形するための可動部の弾性力が、接触部と接続対象物との間の嵌合方向及び抜去方向における保持力よりも小さく形成されていることで維持される。このため第3の過程後における接触部と接続対象物との接触位置は、第2の過程によって形成された接触位置と同じであり、接点摺動は発生しない。また、第1のハウジングと第2のハウジングの少なくとも何れか一方が他方に対して離れる方向に移動すると、可動部が第2のハウジングを少なくとも嵌合方向及び抜去方向で変位可能に支持する。このため、接続対象物と嵌合状態にある第2のハウジングが設置環境下で振動、衝撃を受けた場合でも、第2のハウジングが第1のハウジングに対して嵌合方向及び抜去方向に相対的に変位することができる。この際にも、端子の接触部と接続対象物との接触部分での接点摺動の発生は抑制され、保持力によって接触位置を維持するので、接触部分のめっき剥がれによる接続信頼性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本出願の開示によれば、フローティング機能を有するライトアングルコネクタの接続信頼性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態によるライトアングルコネクタの正面、右側面、平面を含む外観斜視図。
図2図1の正面図。
図3図1の底面図。
図4図1のライトアングルコネクタの正面、左側面、底面を含む外観斜視図。
図5】相手コネクタの正面、平面、右側面を含む外観斜視図。
図6】ライトアングルコネクタと相手コネクタとの嵌合接続を模式的に示す説明図で、6Aは嵌合前状態を示す図、6Bは嵌合過程における初期嵌合状態を示す図、6Cは嵌合過程における最深嵌合状態を示す図、6Dは可動嵌合状態を示す図、6Eは可動嵌合状態で相手コネクタが抜去方向に変位した状態を示す図。
図7】ライトアングルコネクタと相手コネクタとの嵌合接続を示す図で、7Aは嵌合過程における最深嵌合状態を示す図、7Bは嵌合状態からライトアングルコネクタが抜去方向に変位した状態を示す図。
図8図1のライトアングルコネクタと図5の相手コネクタとの嵌合前状態を示す断面図。
図9図8に続く初期嵌合状態を示す断面図。
図10図9に続いて嵌合位置が深くなる最深嵌合状態を示す断面図。
図11図10に続く可動嵌合状態を示す断面図。
図12】第1実施形態の変形例によるライトアングルコネクタと相手コネクタとの嵌合接続を模式的に示す説明図で、12Aは第1の変形例を示す図、12Bは第2の変形例を示す図。
図13】第2実施形態によるライトアングルコネクタの正面、左側面、底面を含む外観斜視図。
図14図13の底面図。
図15】第3実施形態によるライトアングルコネクタの正面、左側面、底面を含む外観斜視図。
図16図15の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本出願にて開示する実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して明細書での重複説明を省略する。また、共通する使用方法及び作用効果についても重複説明を省略する。
【0025】
嵌合構造1は、ライトアングルコネクタ10、20、30と「接続対象物」としての相手コネクタ40とを備える。ライトアングルコネクタ10,20,30は、第1の基板P10に配置される。第1の基板P10は、第1の支持部材P11によって支持されている。相手コネクタ40は、第2の基板P20に配置される。第2の基板P20は、第2の支持部材P1によって支持されている。嵌合構造1は、第1の基板P10、第2の基板P20、第1の支持部材P11、第2の支持部材P21を含む。以下の実施形態で示す第1の基板P10、第2の基板P20、第1の支持部材P11、第2の支持部材P21の形状及び構造は例示であって明細書及び図面の記載の内容に限定的に解釈すべきものではない。
【0026】
第1の基板P10、第1の支持部材P11、第2の基板P20、第2の支持部材P21は、電気装置に備えるように構成できる。また、第1の基板P10と第1の支持部材P11は、第1の電気装置に、第2の基板P20と第2の支持部材P21は第2の電気装置に備えるように構成することもできる。即ち、嵌合構造1は、1つの電気装置に備える第1の基板P10と第2の基板P20とを接続する実施態様として構成できる。また嵌合構造1は、複数の電気装置どうしを接続する実施態様として構成できる。
【0027】
本明細書、特許請求の範囲に記載されている「第1」「第2」という用語は、発明や実施形態の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣を示すために用いるものではない。また本明細書、特許請求の範囲では、説明の便宜上、ライトアングルコネクタ10の幅方向、左右方向、端子配列方向、長手方向を「X(方向)」、奥行き方向、前後方向、短手方向、嵌合方向、挿入方向、抜去方向を「Y(方向)」、高さ方向、上下方向を「Z(方向)」として説明する。しかしながら、それらの方向の特定は、ライトアングルコネクタ10、ライトアングルコネクタ10と接続対象物との嵌合構造、及びライトアングルコネクタ10と接続対象物との嵌合方法における、実装方法や使用方法を限定するものではない。
【0028】
第1実施形態〔図1図12
【0029】
第1の実施形態の嵌合構造1は、ライトアングルコネクタ10と、相手コネクタ40と、ライトアングルコネクタ10を実装する第1の基板P10と、第1の支持部材P11と、相手コネクタ40を実装する第2の基板P20と、第2の支持部材P21とを含む。
【0030】
ライトアングルコネクタ10
【0031】
ライトアングルコネクタ10は、「第1のハウジング」としての固定ハウジング11と、「第2のハウジング」としての可動ハウジング12と、端子13とを備える。
【0032】
固定ハウジング11
固定ハウジング11は、樹脂成形体で形成されている。固定ハウジング11は、上壁11a、左右一対の側壁11b、後壁11cを有し、正面と底面には壁が無く開口部が形成されている。固定ハウジング11は、第1の基板P10と対向する底壁が無いため、その分、高さが低背化されており、そのためライトアングルコネクタ10は小型化されている。固定ハウジング11の内側には、収容空間11dが形成されている。収容空間11dには、可動ハウジング12の一部分と端子13の一部分が配置される。収容空間11dを形成する後壁11cの内面には、後述する端子13を固定ハウジング11に固定する複数の固定ハウジング用端子固定溝11eが、端子配列方向Xで並列に形成されている。また、固定ハウジング11の後壁11cの内面には、複数の当接受け部11fが形成されている。当接受け部11fは、左右の側壁11bの内面から端子配列方向Xに沿って伸長する壁面として形成されている。
【0033】
固定ハウジング11の左右の側壁11bには、それぞれ固定金具14を固定する固定金具用固定部11gが形成されている。各固定金具用固定部11gは、側壁11bの底面から固定ハウジング11の高さ方向Zに深さを有する溝として形成されている。固定金具14は、固定金具用固定部11gに圧入により固定される。
【0034】
可動ハウジング12
可動ハウジング12は、樹脂成形体により形成されている。可動ハウジング12は、上壁12a、左右の側壁12b、後壁12c、底壁12dを有する箱形状に形成されている。可動ハウジング12の正面には、相手コネクタ40を挿入する「嵌合部」としての嵌合口12eが形成されている。ライトアングルコネクタ10は、嵌合口12eの先端側の開口縁と第1の基板P10の基板面P10aとが交差する配置関係となっている。可動ハウジング12の内側(嵌合口12eの奥)には、相手コネクタ40と嵌合接続する嵌合室12fが形成されている(図8)。嵌合室12fは可動ハウジング12の内面により構成される。嵌合室12fを形成する上壁12aの内面と底壁12dの内面には、端子13(第1の端子13A、第2の端子13B)の後述する接触部13eと可動ハウジング用固定部13dとを保持する複数の端子収容溝12gが形成されている。端子収容溝12gは、上壁12aにある複数の第1の端子収容溝12g1と、底壁12dにある複数の第2の端子収容溝12g2とで構成される。第1の端子収容溝12g1と第2の端子収容溝12g2とは、端子配列方向Xで交互に位置をずらして形成されている。したがって、第1の端子13Aと第2の端子13Bも、端子配列方向Xで交互に位置をずらして配置されている。それらの端子収容溝12gは、可動ハウジング12の高さ方向Zに深さを有する溝として形成されている。端子収容溝12gの後端部は、後壁12cを前後方向Yで貫通して形成されている。端子13の接触部13eと可動ハウジング用固定部13dは、後壁12cに開口する端子収容溝12gの後端部から挿入されて保持される。
【0035】
可動ハウジング12は、複数の第1の変位規制突起12hを有する。左側の第1の変位規制突起12hは、左側の側壁12bの左方に突出し、後壁12cの後方に突出し、可動ハウジング12の側壁12b及び後壁12cと同等の高さを有する縦壁形状に形成されている。右側の第1の変位規制突起12hは、右側の側壁12bの右方に突出し、後壁12cの後方に突出し、可動ハウジング12の側壁12b及び後壁12cと同等の高さを有する縦壁形状に形成されている。
【0036】
第1の変位規制突起12hは、後部当接面12h1を有する。後部当接面12h1は、平坦面として形成されており、同じく平坦面である当接受け部11fと対向して位置している。後部当接面12h1は、固定ハウジング11の後壁11cと対向する「固定ハウジング用当接部(第1のハウジング用当接部)」として形成されている。例えば、可動ハウジング12が固定ハウジング11の後壁11cに向けて変位すると、後部当接面12h1が当接受け部11fと当接し、可動ハウジング12の変位が停止する。後部当接面12h1を含む第1の変位規制突起12hは、可動ハウジング12の後方への過剰な変位を規制するストッパー部として機能する。また、後部当接面12h1は、後述する第2の変位規制突起12iを除く可動ハウジング12の高さに相応する高さを有する矩形面として形成されている。このため可動ハウジング12の高さ方向Zに亘って当接受け部11fと平面接触できる。後述するように相手コネクタ40を可動ハウジング12に嵌合する際、可動ハウジング12は相手コネクタ40に押されて移動し、後部当接面12h1が当接受け部11fに当接する。このとき後部当接面12h1と当接受け部11fとが相互に平面接触することで、可動ハウジング12を傾きのない姿勢に矯正することができる。これにより可動ハウジング12に対して相手コネクタ40を水平に真っ直ぐに挿入することができ、嵌合作業を容易に行える。
【0037】
また、各第1の変位規制突起12hの側面は、側部当接面12h2として形成されている。側部当接面12h2は、平坦面として形成されており、同じく平坦面である固定ハウジング11の側壁11bの内側側面11b1と対向して位置している。可動ハウジング12が左右方向Xに変位すると、側部当接面12h2が内側側面11b1と当接して、可動ハウジング12の過剰な変位を停止することができる。また、側部当接面12h2は、後述する第2の変位規制突起12iを除く可動ハウジング12の高さに相応する高さを有する矩形面として形成されている。このため可動ハウジング12の高さ方向Zに亘って内側側面11b1と平面接触できる。したがって可動ハウジング12が傾斜姿勢で左右方向Xに変位して内側側面11b1に当接しても、側部当接面12h2と内側側面11b1とが相互に平面接触することで、可動ハウジング12を傾きのない姿勢に矯正することができる。
【0038】
さらに、各第1の変位規制突起12hの前面(正面)は、前部当接面12h3として形成されている。前部当接面12h3は、平坦面として形成されており、同じく平坦面である固定ハウジング11の側壁11bの内側前面11b2と対向して位置している。可動ハウジング12が前後方向Yの前方(抜去方向)へ変位すると、前部当接面12h3が内側前面11b2と当接して、可動ハウジング12の前方Yへの過剰な変位を停止することができる。また、前部当接面12h3は、後述する第2の変位規制突起12iを除く可動ハウジング12の高さに相応する高さを有する矩形面として形成されている。このため可動ハウジング12の高さ方向Zに亘って内側前面11b2と平面接触できる。したがって可動ハウジング12が傾斜姿勢で前方に変位して内側前面11b2に当接しても、前部当接面12h3と内側前面11b2とが相互に平面接触することで、可動ハウジング12を傾きのない姿勢に矯正することができる。
【0039】
以上のように、固定ハウジング11の内側には、係止凹部11h(内側側面11b1、内側前面11b2、当接受け部11f)が形成されている。係止凹部11hの内側には可動ハウジング12の第1の変位規制突起12hが、可動間隙Gを介して対向して配置される。可動ハウジング12が変位すると、第1の変位規制突起12hが可動間隙Gの範囲を可動限界として変位する。そして第1の変位規制突起12hが係止凹部11hに当接することで、可動ハウジング12が左右方向X、前後方向Yへ過剰に変位するのを防ぐことができる。また、可動ハウジング12は、高さ方向Zの上方向及び下方向へも変位可能である。上方向に変位する場合、可動ハウジング12は、上壁12aが固定ハウジング11の上壁11aの内面に当接することで、過剰な変位を規制することができる。他方、下方向に変位する場合、可動ハウジング12の過剰な変位は、第2の変位規制突起12iにより規制される。
【0040】
可動ハウジング12の底壁12dには、底壁12dから下方に向けて突出する複数の第2の変位規制突起12iが形成されている。可動ハウジング12の上壁12a、左右の側壁12b、後壁12c、底壁12dを「可動ハウジング本体」とすると、第2の変位規制突起12iは、可動ハウジング本体から突出する縦壁形状の「脚部」として形成されている。第2の変位規制突起12iは、後壁12cから嵌合口12eに向かう可動ハウジング12の前後方向Yに沿う長さを有している。第2の変位規制突起12iの前後方向Yに沿う長さは、可動ハウジング12の前後方向Yの長さの略半分の長さとされている。第2の変位規制突起12iは、第1の基板P10の基板面P10aと対向するように配置される。第2の変位規制突起12iは、その底部当接面12i1が基板面P10aと当接することで、可動ハウジング12の下方向への過剰な変位を規制することができる。底部当接面12i1は、可動ハウジング12の前後方向Yに沿う略半分の長さを有する矩形面として形成されている。このため底部当接面12i1は、可動ハウジング12の前後方向Yに沿う略半分の長さをもって基板面P10aと平面接触できる。したがって可動ハウジング12が傾斜姿勢で基板面P10aに当接しても、底部当接面12i1と基板面P10aとが相互に平面接触することで、可動ハウジング12を傾きのない姿勢に矯正することができる。
【0041】
固定ハウジング11と可動ハウジング12との間には、可動間隙G1、G3~G5が形成されている。また、可動ハウジング12と第1の基板P10の基板面P10aとの間にも、可動間隙G2が形成されている。つまり可動ハウジング12は、端子13の弾性変形するばね片でなる可動部13cによって三次元方向に変位可能な状態で支持されている。可動ハウジング12は、その周囲に可動間隙G1~G5があることで、前述のように左右方向X、前後方向Y、上下方向Zに変位することができる。
【0042】
端子13
端子13は、複数の第1の端子13Aと、複数の第2の端子13Bとを備える。第1の端子13Aと第2の端子13Bは、後述する可動部13cの形状と、後述する接触部13eが相互に上下逆さに配置されている点で相違する。しかし端子構造は共通する。そこで第1の端子13Aについて説明する。第1の端子13Aと同一の構成については第2の端子13Bにも同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
第1の端子13Aは、導電性金属片でなり、基板接続部13a、固定ハウジング用固定部13b、可動部13c、可動ハウジング用固定部13d、接触部13eを有する。
【0044】
基板接続部13aは、第1の基板P10の回路接点に半田付けされる。
【0045】
固定ハウジング用固定部13bは、固定ハウジング11の固定ハウジング用端子固定溝11eに対して圧入されて保持される(図4参照)。
【0046】
可動部13cは、前後方向Yで後壁11c側から順に山状波部と谷状波部とを有する波形に形成されている。可動部13cは、固定ハウジング用固定部13bから伸長する第1の伸長部13c1と、第1の伸長部13c1に繋がる逆U字形状の第1の屈曲部13c2と、第1の屈曲部13c2から伸長するU字状部13c3、U字状部13c3と可動ハウジング用固定部13dとに繋がる第2の伸長部13c4を有する。
【0047】
第1の端子13Aと第2の端子13Bは、第1の屈曲部13c2が第2の伸長部13c4(可動ハウジング12に対する固定側部位)よりも高さ方向Zで高い位置で屈曲している。これにより第1の屈曲部13c2が、U字状部13c3と第2の伸長部13c4を吊下げるように片持ち支持する端子構造とされている。U字状部13c3の下端部分は、2つの角部13c5の間に前後方向Yに沿う直線形状の横架片13c6を有する角付きの屈曲形状とされている。このため第1の直線部13c7及び第2の直線部13c8を長尺に形成することができ、第1の直線部13c7及び第2の直線部13c8が前後方向Yで弾性変形しやすくなる。つまり可動部13cは比較的小さな弾性力で容易に変形できる。したがって、可動ハウジング12は小さな力で容易に変位できるようにされている。
【0048】
隣接する第1の端子13Aの可動部13cと第2の端子13Bの可動部13cは、相互に端子配列方向Xで重ならないように、前後に位置をずらして配置されている。第2の端子13Bの第1の屈曲部13c2は、第1の端子13AのU字状部13c3の横架片13c6を超える高さに配置されているが、端子配列方向Xで重ならないように、前後方向Yで位置をずらして配置されている。このため可動ハウジング12が左右方向Xに変位し、第1の端子13Aの可動部13cと第2の端子13Bの可動部13cが弾性変形しても、隣接する可動部13cどうしの導通接触は防止される。また、第2の端子13Bの第1の屈曲部13c2が、第1の端子13Aの下端(U字状部13c3)を超える高さに配置されることで、第2の端子13Bの可動部13cのばね長をできるだけ長く確保できる。これにより可動部13cが左右方向X、前後方向Y、高さ方向Zに柔らかく弾性変形できる。また、第2の端子13Bの第1の屈曲部13c2を、第1の端子13Aの下端を超えない高さに配置する実施形態とすることもできるが、この場合には可動ハウジング12をより高く配置する必要があり、固定ハウジング11も高さが高くなり大型化する。これに対して、第2の端子13Bの第1の屈曲部13c2は、第1の端子13Aの下端(U字状部13c3)を超える高さに配置されるので、可動ハウジング12の配置を低くし、固定ハウジング11を低背化することができる。
【0049】
第1の端子13Aの可動部13cと第2の端子13Bの可動部13cは、高さ方向Zで上下二段に配置されており、可動ハウジング12を片持ち梁状に支持する。このため第1の端子13Aの可動部13cと第2の端子13Bの可動部13cは、可動ハウジング12に対する十分な支持力を発揮することができる。これにより可動ハウジング12は、できるだけ水平姿勢を維持しつつフローティング状態で支持される。
【0050】
可動ハウジング用固定部13dは、板厚方向変換部13d1と、固定基部13d2とを有する(図8の第2の端子13Bを参照。)。前述の可動部13cは、端子材料の板面が上面及び下面となる曲げ端子型可動部として形成されている。これに対して固定基部13d2と接触部13eは、端子材料の板面が高さ方向Zに沿う抜き端子型接触部として形成されている。そのため可動部13cと可動ハウジング用固定部13dとで板厚方向を変える必要がある。板厚方向変換部13d1は、そのために板厚方向を90°屈曲させる部分である。固定基部13d2は、可動ハウジング12の端子収容溝12gに対して圧入により保持される部分である。
【0051】
接触部13eは、固定基部13d2から伸長する弾性腕13e1と、接点部13e2とを有する(図8の第2の端子13Bを参照。)。弾性腕13e1は、ばね片であり、端子収容溝12gの中で高さ方向Zに弾性変形することができる。接点部13e2は、端子収容溝12gから嵌合室12fに突出して、相手コネクタ40と導通接触する部分である。接点部13e2は、弾性腕13e1の弾性力によって相手コネクタ40に対して所定の接触圧により押圧接触する。
【0052】
相手コネクタ40
【0053】
相手コネクタ40は、樹脂成形体でなる相手ハウジング41と、導電性金属片でなる複数の相手端子42とを備える。相手ハウジング41は、図5で示すように、本体部41aと、基部41bとを有する。本体部41aは板状に形成されており、その表面には複数の端子配置溝41cが形成されている。基部41bは、左右方向Xにおける両端部に形成されており、高さ方向Zにおける可動ハウジング12の嵌合口12eの高さを超える長さで形成されている。
【0054】
ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合方法
【0055】
ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合方法は、少なくとも以下の過程を含む。
(1)可動ハウジング12に相手コネクタ40を嵌合する「第1の過程」(図6B、初期嵌合状態)。
(2)ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40とが近づくことで、第1の過程後の可動ハウジング12と相手コネクタ40との嵌合位置よりも、可動ハウジング12と相手コネクタ40との嵌合位置がさらに深くなる「第2の過程」(図6C、最深嵌合状態)。
(3)端子13の接点部13e2と相手コネクタ40の相手端子42とが第2の過程後の接触位置を維持したまま、ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40とが離れる方向に、嵌合している可動ハウジング12と相手コネクタ40とが移動する(可動ハウジング12と相手コネクタ40とが戻り方向に移動する)ことで、端子13の可動部13cが可動ハウジング12を嵌合方向Y及び抜去方向Yを含む多方向で変位可能に支持する「可動嵌合状態」を形成する「第3の過程」(図6D)。
【0056】
上記第1~第3の過程を踏まえつつ、ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合方法を、さらに詳細に説明する。ここで図6図7図12は理解を容易にするための模式図であり、各部材の構成を簡略化して示している。図8図11では、図示を簡略化するため第1の支持部材P11と第2の支持部材P21を省略している。
【0057】
ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40とが嵌合するパターンには、以下の3つがある。
〔嵌合態様1〕相手コネクタ40のみが移動して不動状態のライトアングルコネクタ10と嵌合する。
〔嵌合態様2〕ライトアングルコネクタ10のみが動いて不動状態の相手コネクタ40と嵌合する。
〔嵌合態様3〕ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40の双方が動いて相互に嵌合する。
【0058】
嵌合態様1の場合、「嵌合方向Y」とは、例えば図6Aで、相手コネクタ40がライトアングルコネクタ10に近づく方向(図中右から左に向かう方向)を指す。「抜去方向Y」とは、同じく図6Aで、相手コネクタ40がライトアングルコネクタ10から離れる方向(図中左から右に向かう方向)を指す。嵌合態様2の場合、嵌合態様1と逆の方向が嵌合方向Y、抜去方向Yとなる。嵌合態様3の場合、「嵌合方向Y」はライトアングルコネクタ0については図中左から右に向かう方向であり、相手コネクタ40についてはその逆方向となる。「抜去方向Y」は、ライトアングルコネクタ0については図中右から左に向かう方向であり、相手コネクタ40についてはその逆方向となる。以下の説明では、理解を容易にするため、嵌合態様1を例示して説明する。
【0059】
嵌合前状態〔図6A図8
【0060】
図6A図8で示す過程は「嵌合前状態」を示す。図6Aで示すように、ライトアングルコネクタ10は第1の基板P10に実装され、第1の基板P10は第1の支持部材P11により支持されている。第1の支持部材P11は、第1の基板P10を設置する「第1の取付対象物」である。「第1の取付対象物」としては、例えば電気装置の筐体、フレーム、ブラケット等の固定構造物とすることができる。相手コネクタ40は第2の基板P20に実装され、第2の基板P20は第2の支持部材P21により支持されている。第2の支持部材P21は、第2の基板P20を設置する「第2の取付対象物」である。「第2の取付対象物」としては、例えば電気装置の筐体、フレーム、ブラケット等の固定構造物とすることができる。図6A図8で示す嵌合前状態では、ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40は離れており、機械的及び電気的にも接続されていない。
【0061】
嵌合前状態において、可動ハウジング12の周囲には、可動間隙G1~G5が形成されている(図3図6A図8)。可動ハウジング12は、収容空間11dを可動間隙G1~G5の範囲で三次元方向に移動できる。これによりライトアングルコネクタ10の嵌合口12eに対して、相手コネクタ40の相手ハウジング41が上下方向Z、左右方向Xに位置ずれして挿入される場合でも、可動ハウジング12が位置ずれに対応して変位できるので、相手コネクタ40を嵌合口12eに挿入することができる。
【0062】
初期嵌合状態〔図6B図9
【0063】
図6B図9で示す過程は、「第1の過程」としての「初期嵌合状態」である。図6Bで示すように、嵌合前状態から不動状態にある第1の基板P10(又は第1の支持部材P11)に対して第2の基板P20(又は第2の支持部材P21)を、近づける方向(嵌合方向Y)に移動し、ライトアングルコネクタ10の嵌合室12fに、相手ハウジング41の本体部41aを嵌合する。すると、先ず、本体部41aの挿入側端部41a1が、嵌合室12fに突出する第1の端子13Aと第2の端子13Bの接点部13e2に対して押圧接触する。そのまま相手コネクタ40を可動ハウジング12に押し込むと、接点部13e2が相手端子42に乗り上げるための相手コネクタ40の挿入力よりも、可動部13cが弾性変形するための弾性力の方が小さいため、可動部13cが嵌合方向Yで圧縮するように弾性変形して、可動ハウジング12が嵌合方向Yに移動する。可動ハウジング12の嵌合方向Yへの移動は、第1の変位規制突起12hの後部当接面12h1が、固定ハウジング11の当接受け部11fに当接することで、停止する。可動ハウジング12の移動が停止してからさらに相手コネクタ40を押し込むと、挿入側端部41a1の傾斜面が接点部13e2に当接して外向きに押し出し、その後、接点部13e2が相手端子42の挿入側端部と接触する。そのまま相手コネクタ40を嵌合室12fに挿入し続けると(ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合位置を深めていくと)、弾性腕13e1が外向きに撓んで、接点部13e2が相手端子42に乗り上げる。さらに嵌合室12fにおける相手ハウジング41の嵌合位置が深くなるにつれて、接点部13e2の有効嵌合長は徐々に長くなる。そして、第2の基板P20を正規の設置位置に配置されることによって、図6B図9で示すライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との「初期嵌合状態」が形成される。
【0064】
ここで、図6B図9は、後部当接面12h1が当接受け部11fに当接し且つ第1の基板P10(第1の支持部材P11)と第2の基板P20(第2の支持部材P21)が、それぞれ電気装置の正規の設置位置に固定されている状態を示している。初期嵌合状態では、図6B図9で示す状態となる他に、後部当接面12h1が当接受け部11fに対して当接した後も、相手コネクタ40が僅かに嵌合室12fに押し込まれることがある。こうしたケースとしては、例えば、第2の基板P20に嵌合方向Yに突出する反りがある場合、第1の基板P10、第2の基板P20、第1の支持部材P11及び第2の支持部材P21を含む組立て上の累積差によって、第1の基板P10の設置位置が第2の基板P20寄りの位置にずれている場合、第2の基板P20の設置位置が第1の基板P10寄りの位置にずれている場合、第1の基板P10と第2の基板P20の双方の設置位置が互いに近づく位置にずれている場合がある。こうしたケースでは、後部当接面12h1が当接受け部11fと一旦接触した後(図6B図9)、後部当接面12h1が当接受け部11fから僅かに離れることがある。このような場合には、後部当接面12h1が当接受け部11fに対して僅かに離れた状態が初期嵌合状態となる。なお、この場合、可動ハウジング12は初期嵌合状態でも後部当接面12h1が当接受け部11fに対して当接するまで、可動部13cにより変位することができる。
【0065】
図6B図9で示す初期嵌合状態では、第1の基板P10は第1の支持部材P11によって正規の設置位置に固定されている。第2の基板P20も第2の支持部材P21によって正規の設置位置に固定されている。つまり、図6B図9は、電気装置の正規の設置位置に設けられたライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合構造1を示している。
【0066】
初期嵌合状態において、可動部13cは後壁11cに向けて縮むように弾性変形している。したがって可動部13cは、抜去方向Yに向かう復元力を生じているが、前述のように第1の基板P10と第2の基板P20は正規の設置位置で構造的に固定されている。そのため可動ハウジング12が、可動部13cの復元力によって抜去方向Yに押し戻されることはない。
【0067】
初期嵌合状態において、固定ハウジング11と可動ハウジング12との間には、第1の変位規制突起12hと当接受け部11fとの間の可動間隙G4を除き、可動間隙G1~G3、G5が形成されている。このため可動ハウジング12は、左右方向X、上下方向Zで移動することができる。また、可動ハウジング12は、抜去方向Yにも移動することができる。
【0068】
初期嵌合状態において、第1の端子13Aの接点部13e2と第2の端子13Bの接点部13e2は、相手端子42に対して所定の接触圧により押圧接触している。これにより接点部13e2と相手端子42との間には、保持力が発生している。保持力は、より具体的には、接点部13e2と相手端子42とが、ライトアングルコネクタ10と相手コネクタ40との嵌合接続状態で、嵌合方向Y及び抜去方向Yで接点摺動せずに互いの接触位置を維持する力である。嵌合方向Y及び抜去方向Yに弾性変形するための可動部13cの弾性力は、その保持力よりも小さくされている。したがって初期嵌合状態において、接点部13e2と相手端子42は、保持力を発揮する状態で導通接触しており、可動部13cが弾性変形して可動ハウジング12が左右方向X、上下方向Zに変位したり、相手コネクタ40が抜去方向Yに変位したりしても、接点部13e2と相手端子42とは摺動せずに互いの接触位置を維持することができる。
【0069】
初期嵌合状態において、図6B図9で示すように、ライトアングルコネクタ10と接続対象物としての相手コネクタ40は導通接続される。よって第1の基板P10の基板回路と第2の基板P20の基板回路とが導通接続される。
【0070】
初期嵌合状態において、嵌合室12fの室内底面12f1と本体部41aの挿入側端部41a1との間には、嵌合間隙S1が形成されている。また、嵌合口12eと基部41bとの間にも嵌合間隙S2が形成されている。したがって初期嵌合状態では、さらに相手コネクタ40を嵌合室12fの奥に挿入することができる。このように初期嵌合状態で嵌合間隙S1,S2を有する構成にすることで、相手ハウジング4と可動ハウジング12との嵌合する際に、嵌合方向Yで対向する相手ハウジング4の部分と可動ハウジング12の部分とが突き当たらないため、ハウジングの破損を防ぐことができる。また、最深嵌合状態における可動ハウジング12(嵌合室12f)と相手コネクタ40(本体部41a)との嵌合位置の深さについて自由度を持たせることができる。すなわち、初期嵌合状態の嵌合構造1に作用する力(振動、衝撃、共振)の大きさに応じた最深嵌合状態が得られる嵌合構造1を実現することができる。
【0071】
最深嵌合状態〔図6C図10図7A
【0072】
図6C図10で示す過程は、「第2の過程」としての「最深嵌合状態」を示す。初期嵌合状態では嵌合間隙S1,S2が形成されている。初期嵌合状態の嵌合構造1に力(振動、衝撃、共振による振動等)が作用することで、固定ハウジング11と相手コネクタ40とが近づく方向に変位することがある。図6Cで示すのはその一例であり、第2の基板P20がライトアングルコネクタ10に近づく方向に撓んだ状態を示している。第2の基板P20の撓みは、設置環境から伝わる振動や衝撃が第2の支持部材P21を通じて第2の基板P20に作用した場合、そうした振動や衝撃により第2の基板P20が共振した場合などに起こりうる。
【0073】
第2の基板P20の撓みにより、相手コネクタ40が嵌合方向Yに変位すると、可動ハウジング12と相手コネクタ40との嵌合位置が、初期嵌合状態での嵌合位置よりも深くなる。これに伴って初期嵌合状態での接点部13e2と相手端子42との接触位置も、嵌合位置が深くなるのに合わせて移動する。よって、初期嵌合状態から最深嵌合状態に移行する過程では接点摺動が起こる。このようにして嵌合構造1における最深嵌合状態が形成される。
【0074】
図6Cの例示では、第2の基板P20が撓む例を示したが、図7Aで示すように第1の基板P10が不動状態の相手コネクタ40に近づくように移動することによって、最深嵌合状態が形成されることもある。図7Aの例示は、第1の基板P10を支持する第1の支持部材P11が、抜去方向Yに振られるような力(振動、衝撃等)を受けることで、第1の基板P10が第2の基板P20に近づく方向に変位する例を示している。なお、図示は省略するが、図6Cで示すように第2の基板P20が嵌合方向Y(前後方向Yの前方向)に撓むことと、且つ図7Aで示すように第1の基板P10が抜去方向Y(前後方向Yの後方向)に変位することとが同時に起こることで、最深嵌合状態が形成されることもある。
【0075】
嵌合間隙S1,S2については、例えば図12Aで示すように、最深嵌合状態で、挿入側端部41a1が室内底面12f1と当接するように、嵌合間隙S1を嵌合間隙S2よりも短く形成することもできる。このためには嵌合室12fの挿入方向Yに沿う長さを、本体部41aの挿入方向Yに沿う長さよりも短く形成する。このように最深嵌合状態で室内底面12f1に挿入側端部41a1が突き当たるまで嵌合する嵌合構造1とすることで、有効嵌合長(嵌合口12eから接点部13e2の相手端子42との接触位置までの距離)を長く確保することができ、確実な接続信頼性を得ることができる。
【0076】
嵌合間隙S1,S2については、さらに例えば図12Bで示すように、最深嵌合状態(図6C図10)で、室内底面12f1と挿入側端部41a1とが接触しないで嵌合間隙S1が残る一方で、基部41bが嵌合口12eと当接することによって嵌合間隙S2が残らないように形成することもできる。
【0077】
可動嵌合状態〔図6D図11
【0078】
図6D図11で示す過程は、「第3の過程」としての「可動嵌合状態」を示す。図6Cで示す最深嵌合状態では第2の基板P20が撓んでおり、その第2の基板P20の撓みが戻ることで、図6Dで示す可動嵌合状態が形成される。可動嵌合状態では、最深嵌合状態における可動ハウジング12と相手コネクタ40との嵌合位置が維持されている。嵌合位置の維持は、接点部13e2と相手端子42との保持力による。可動嵌合状態では、可動ハウジング12と固定ハウジング11との間に可動間隙G1~G5が形成されており、可動ハウジング12は可動間隙G1~G5の範囲内で、収容空間11dを三次元方向に変位することができる。可動部13cが弾性変形して可動ハウジング12が三次元方向に変位しても、接点部13e2と相手端子42は、保持力を発揮する状態で導通接触している。すなわち、接点部13e2と相手端子42とは、互いに摺動せずに接触位置を維持することができる。このように、ライトアングルコネクタ10であっても、接点部13e2と相手端子42とが互いに接点摺動することなく、可動ハウジング12が固定ハウジング11に対して三次元方向に変位できるので、接点部13e2、相手端子42の接触部分でめっき剥がれが生じることなく、接続信頼性を維持することができる。
【0079】
可動嵌合状態からの抜去方向への変位〔図6E図7B
【0080】
図6Eで示す過程は、「可動嵌合状態」を示す。より具体的には、図6Dの可動嵌合状態から可動ハウジング12が抜去方向Yに変位した状態を示す。可動嵌合状態(図6D)の嵌合構造1に力(振動、衝撃、共振による振動)が作用することで、固定ハウジング11と相手コネクタ40とが相対的に離れることがある。図6Eで示す一例では、第2の基板P20が抜去方向Yに撓むことで、可動ハウジング12が固定ハウジング11に対して離れる方向に変位している。このような場合であっても、可動ハウジング12は、固定ハウジング11に対して相手コネクタ40の抜去方向Yに変位することができる。そして前述のように、接点部13e2と相手端子42とは、互いに摺動せずに接触位置を維持しており接点摺動を起こさない。よって、接点部13e2、相手端子42の接触部分でめっき剥がれが生じることなく、接続信頼性を維持することができる。
【0081】
図6Eでは、第2の基板P20が抜去方向Yに撓むことで、可動ハウジング12が固定ハウジング11に対して離れる方向に変位する一例を示した。しかしながら、例えば図7Bで示すように、第1の基板P10が相手コネクタ40の嵌合方向Yに変位することで、可動ハウジング12が固定ハウジング11に対して離れる方向に変位することもある。図7Bの例示では、第1の基板P10を支持する第1の支持部材P11が、嵌合方向Y(前後方向Yの後方向)に振られるような力(振動、衝撃等)が作用することで、第1の基板P10が第2の基板P20から離れる方向に変位する例を示している。なお、図示は省略するが、図6Eで示すように第2の基板P20が抜去方向Yに撓み、且つ第1の基板P10が嵌合方向Yに変位することが同時に起こることで、可動嵌合状態(図6D)から可動ハウジング12が固定ハウジング11に対して抜去方向Yに変位することもできる。
【0082】
可動嵌合状態からの嵌合方向への変位〔図6C
【0083】
可動ハウジング12は、図6Dの可動嵌合状態又は図6Eの可動嵌合状態から、図6Cで示す状態に変位することが可能である。
【0084】
本実施形態の特徴
【0085】
以上説明してきたように、本実施形態のライトアングルコネクタ10、嵌合構造1及びライトアングルコネクタ10と接続対象物である相手コネクタ40との嵌合方法によれば、フローティング機能を有するライトアングルコネクタ10の接続信頼性を維持できる。具体的には、ライトアングルコネクタ10は、初期嵌合状態及び可動嵌合状態で、可動ハウジング12が三次元方向に変位可能であり、その際に接点摺動の発生を抑制できるため、接続信頼性を維持することができる。
【0086】
第2実施形態〔図13図14
【0087】
第1実施形態のライトアングルコネクタ10では、当接受け部11fを固定ハウジング11の樹脂壁にて構成する例を示したが、本実施形態のライトアングルコネクタ20は、固定ハウジング11の樹脂壁に代えて固定ハウジング11に「受け部材」としての第1の受け具15を設ける点で、第1実施形態と相違する。それ以外は第1実施形態と同じである。
【0088】
第1の受け具15は、平板状の金属片で形成されており、固定ハウジング11に設けた受け具収容溝11iに対して固定ハウジング11の底面側から圧入することで、固定ハウジング11に保持されている(図1)。第1の受け具15を備える本実施形態によれば、固定ハウジング11の材質及び構造に依存しない可動ハウジング12を受け止めるのに適した機能及び特長を有するように構成することができる。
【0089】
なお、第1の受け具15は、平板状の金属片でなるものを例示したが、硬質樹脂板にて形成することもできる。
【0090】
第3実施形態〔図15図16
【0091】
第1実施形態のライトアングルコネクタ10では、当接受け部11fを固定ハウジング11の樹脂壁にて構成する例を示したが、本実施形態のライトアングルコネクタ30は、固定ハウジング11の樹脂壁に代えて固定ハウジング11に「受け部材」としての第2の受け具16を設ける点が第1実施形態と相違する。さらに本実施形態の第2の受け具16は、第1実施形態の固定金具14と同様に、固定ハウジング11を第1の基板P10に固定する固定金具として兼用するものである点で、第1実施形態の固定金具14及び第2実施形態の第1の受け具15と相違する。それ以外は第1実施形態と同じである。
【0092】
第2の受け具16は、金属片で形成されており、基板固定部16aと、固定ハウジング11に圧入される固定片部16bと、可動ハウジング12の第1の変位規制突起12hの後部当接面12h1と当接する受け部16cとを備える。基板固定部16aは、基板面P10aに沿って配置される薄板形状である。固定片部16bは、基板固定部16aから高さ方向Zに屈曲して伸長しており、固定ハウジング11の側壁11bに設けられた受け具用固定部(図示略)に圧入されて保持される。基板固定部16aと固定片部16bとはL字状に形成されている。受け部16cは、固定片部16bの前後方向Yの後縁から左右方向Xに屈曲して伸長する平板状に形成されており、可動ハウジング12の後部当接面12h1と前後方向Yで対向位置している。
【0093】
基板固定部16aは、第1の基板P10に半田付けにより固定される。そして受け部16cは、可動ハウジング12の第1の変位規制突起12hの後部当接面12h1の当接を受ける。本実施形態によれば、第2の受け具16が、固定ハウジング11を第1の基板P10に固定するための固定金具として兼用することができるため、部品点数を減らすことができる。
【0094】
変形例
【0095】
前記第1実施形態~前記第3実施形態では、「接続対象物」として相手コネクタ40を例示したが、「接続対象物」は電子デバイスやバスバーなどの「電気素子」としてもよい。
【0096】
前記第1実施形態~前記第3実施形態では、第1の基板P10、第2の基板P20が硬質基板である例を示したが、フレキシブル基板(FPC)としてもよい。
【0097】
前記第1実施形態~前記第3実施形態では、ライトアングルコネクタ10を「ソケットコネクタ」とし、相手コネクタ40を「ソケットコネクタ」に挿入する「プラグコネクタ」として構成する例を示したが、ライトアングルコネクタ10を「プラグコネクタ」として構成し、相手コネクタ40を「ソケットコネクタ」として構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 嵌合構造
10 ライトアングルコネクタ(第1実施形態)
11 固定ハウジング
11a 上壁
11b 側壁
11b1 内側側面
11b2 内側前面
11c 後壁
11d 収容空間
11e 固定ハウジング用端子固定溝
11f 当接受け部
11g 固定金具用固定部
11h 係止凹部
12 可動ハウジング
12a 上壁
12b 側壁
12c 後壁
12d 底壁
12e 嵌合口(嵌合部)
12f 嵌合室
12f1 室内底面
12g 端子収容溝
12g1 第1の端子収容溝
12g2 第2の端子収容
12h 第1の変位規制突起
12h1 後部当接面
12h2 側部当接面
12h3 前部当接面
12i 第2の変位規制突起
12i1 底部当接面
13 端子
13A 第1の端子
13B 第2の端子
13a 基板接続部
13b 固定ハウジング用固定部
13c 可動部
13c1 第1の伸長部
13c2 第1の屈曲部
13c3 U字状部
13c4 第2の伸長部
13c5 角部
13c6 横架片
13c7 第1の直線部
13c8 第2の直線部
13d 可動ハウジング用固定部
13d1 板厚方向変換部
13d2 固定基部
13e 接触部
13e1 弾性腕
13e2 接点部
14 固定金具
15 第1の受け具
16 第2の受け具
16a 基板固定部
16b 固定片部
16c 受け部
20 ライトアングルコネクタ(第2実施形態)
30 ライトアングルコネクタ(第3実施形態)
40 相手コネクタ(接続対象物)
41 相手ハウジング
41a 本体部
41a1 挿入側端部
41b 基部
42 相手端子
P10 第1の基板
P10a 基板面
P11 第1の支持部材
P20 第2の基板
P21 第2の支持部材
G1~G5 可動間隙
S1,S2 嵌合間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16