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特許7454345半導体装置及びその製造方法、ならびに電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法、ならびに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L21/92 602M
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019145989
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021027264
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光章
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大輔
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-258281(JP,A)
【文献】特開2006-128606(JP,A)
【文献】特開2011-100987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 1/02
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有する配線と、
前記配線上のバンプと、
前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、
前記スリットに隣接する領域において、前記配線が前記バンプと接し、
前記スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である
半導体装置。
【請求項2】
前記スリットに隣接する領域における前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スリットの長手方向の辺は、前記配線の長手方向の辺に平行である請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、90°である請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バンプの一部は、前記スリットと重畳する請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スリットの短手方向の辺の長さに対する前記スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1スリット及び第2スリットを有する配線と、
前記配線上のバンプと、
前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接し、
前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である
半導体装置。
【請求項8】
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域における前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域における前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第2スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1スリット及び前記第2スリットは、同一形状である請求項7~9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1スリットの長手方向の辺は、前記配線の長手方向の辺に平行である請求項7~10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、90°である請求項7~11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バンプの一部は、前記第1スリットと重畳する請求項7~12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1スリットの短手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である請求項7~13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記バンプの長手方向の辺の長さは、25~35μmである請求項1~14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記配線の短手方向の辺の長さは、30~400μmであり、かつ前記チップより短い請求項1~15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに1項に記載の半導体装置を備える電子機器。
【請求項18】
第1スリット及び第2スリットを有する配線と、チップと接するバンプと、を圧着する工程を有し、
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接し、
前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である
半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域における前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比が2.4以上である請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域における前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第2スリットの長手方向の辺の長さの比が2.4以上である請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記第1スリット及び前記第2スリットは、同一形状である請求項18~20のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記バンプの一部は、前記第1スリットと重畳する請求項18~21のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記第1スリットの短手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である請求項18~22のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、90°である
請求項18~23のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置及びその製造方法、ならびに当該半導体装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置を備える電子機器の高機能化及び小型化の要求に伴い、半導体集積回路等の電子部品の高密度集積化及び高密度実装化が進んでいる。小型化、及び多ピン化された電子部品の電気的な接続を行うために、一般的に、はんだでの接合、又は異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)等のフィルムでの実装等を用いる。
【0003】
ACFを用いた工法は、はんだを用いた工法に比べて実装時の処理温度が低く、狭ピッチ電極を一括して概略電極高さに実装することができるが実装時に圧力を加える必要があり、複数の電子部品を一括して実装すること、及び大きさの異なる電子部品を隣接して実装することは困難であった。
【0004】
また、はんだでの接合は、電気の導通がACFの圧着と比較して接続抵抗が小さく、信頼性が高い。当該接合工法は、バンプを形成したチップをFPC(Flexible printed circuits)の実装部に仮置きした後、リフローでバンプを加熱溶融して電気的に接続させている。バンプの接続部はアンダーフィルという封止樹脂をチップとFPCとの間に充填及び硬化させて保護されている。しかし、はんだを用いた工法では、ACFを用いた工法に対して、実装時の加工温度が高く、フィルム上の銅などの配線の熱膨張によってチップ上のバンプに過剰な応力が加わり、チップ表面を保護しているパッシベーション膜にクラックが生じる。
【0005】
パッシベーション膜に生じるクラックは、外部からの水分の侵入経路となり、水分によって配線を腐食させたり、チップの特性の変動を生じさせたりしてチップの歩留まりの低下や信頼性の低下などを引き起こす。このため、バンプを用いた工法においてもチップの歩留まりや信頼性を確保することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-173005号公報
【文献】特開2003-100809号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】DARVIN R. EDWARDS et al.、“Shear Stress Evaluation of Plastic Packages”、IEEE TRANSACTIONS ON COMPONENTS, HYBRIDS, AND MANUFACTURING TECHNOLOGY、VOL. CHMT-12、NO.4 p618-627、DECEMBER 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本実施形態は、パッシベーション膜に生じるクラックの発生を抑制するためにバンプと接している配線にスリットを設ける。当該スリットとバンプのレイアウトを調整することでチップの加熱圧着時におけるバンプ周辺の配線の応力が軽減され、当該応力がバンプを介してチップ表面のパッシベーション膜にかかる負荷を軽減することができる。これにより、パッシベーション膜に生じるクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0009】
本実施形態の一態様は、チップ表面のパッシベーション膜に生じるクラックの発生を抑制し、歩留まり及び信頼性を確保した半導体装置を提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該半導体装置の製造方法を提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該半導体装置を備える電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の一態様は、スリットを有する配線と、前記配線上のバンプと、前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、前記スリットに隣接する領域において、前記配線が前記バンプと接し、前記スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である半導体装置である。
【0011】
また、本実施形態の他の一態様は、第1スリット及び第2スリットを有する配線と、前記配線上のバンプと、前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接し、前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である半導体装置である。
【0012】
また、本実施形態の他の一態様は、上記半導体装置を備える電子機器である。
【0013】
また、本実施形態の他の一態様は、第1スリット及び第2スリットを有する配線と、チップと接するバンプと、を圧着する工程を有し、前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接し、前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本実施形態によれば、チップ表面のパッシベーション膜に生じるクラックの発生を抑制し、歩留まり及び信頼性を確保した半導体装置を提供することができる。また、当該半導体装置の製造方法を提供することができる。また、当該半導体装置を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態の一態様の半導体装置の平面模式図である。
図2図2は、本実施形態の一態様の半導体装置の断面模式図である。
図3図3は、本実施形態の一態様の半導体装置のチップ周辺の平面レイアウト図である。
図4図4は、本実施形態の一態様の半導体装置のチップ周辺部における配線の拡大平面レイアウト図である。
図5図5は、本実施形態の一態様の半導体装置におけるバンプ周辺の断面模式図である。
図6図6は、本実施形態の一態様の半導体装置におけるスリットとバンプとの位置関係を説明する平面レイアウト図である。
図7図7は、本実施例の半導体装置のチップ周辺の平面レイアウト図である。
図8図8は、本実施例の半導体装置における平面レイアウト図であり、(a)スリットを設けていない配線を備えるサンプル1の半導体装置、及び(b)Lが73μm、Wが50μm、スリットの短手方向の辺の長さが25μmのサンプル2の半導体装置である。
図9図9は、本実施例の半導体装置における平面レイアウト図であり、(a)Lが73μm、Wが40μm、スリットの短手方向の辺の長さが30μmのサンプル3の半導体装置、及び(b)Lが73μm、Wが30μm、スリットの短手方向の辺の長さが35μmのサンプル4の半導体装置である。
図10図10は、本実施例の半導体装置におけるクラック発生頻度の評価結果を説明する図であり、(a)サンプル1のクラック画像、及び(b)サンプル2のクラック画像である。
図11図11は、本実施例の半導体装置におけるクラック発生頻度の評価結果を説明する図であり、(a)サンプル3のクラック画像、及び(b)サンプル4のクラック画像である。
図12図12は、本実施例の半導体装置における平面レイアウト図である。
図13図13は、従来の半導体装置の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0019】
[1]スリットを有する配線と、前記配線上のバンプと、前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、前記スリットに隣接する領域において、前記配線が前記バンプと接する半導体装置。
【0020】
[2]前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である[1]に記載の半導体装置。
【0021】
[3]前記スリットの長手方向の辺は、前記配線の長手方向の辺に平行である[1]又は[2]に記載の半導体装置。
【0022】
[4]前記スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である[1]~[3]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0023】
[5]前記バンプの一部は、前記スリットと重畳する[1]~[4]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0024】
[6]前記スリットの短手方向の辺の長さに対する前記スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である[1]~[5]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0025】
[7]第1スリット及び第2スリットを有する配線と、前記配線上のバンプと、前記バンプ上の、パッシベーション膜を表面に含むチップと、を備え、前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接する半導体装置。
【0026】
[8]前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である[7]に記載の半導体装置。
【0027】
[9]前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第2スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.4以上である[8]に記載の半導体装置。
【0028】
[10]前記第1スリット及び前記第2スリットは、同一形状である[7]~[9]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0029】
[11]前記第1スリットの長手方向の辺は、前記配線の長手方向の辺に平行である[7]~[10]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0030】
[12]前記第1スリットの長手方向の辺と前記バンプの長手方向の辺との間でなす角度は、45°~135°である[7]~[11]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0031】
[13]前記バンプの一部は、前記第1スリットと重畳する[7]~[12]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0032】
[14]前記第1スリットの短手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である[7]~[13]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0033】
[15]前記バンプの長手方向の辺の長さは、25~35μmである[1]~[14]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0034】
[16]前記バンプは、金を含む[1]~[15]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0035】
[17]前記配線は、銅を含む[1]~[16]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0036】
[18]前記配線の短手方向の辺の長さは、30μm~400μmであり、かつ前記チップより短いである[1]~[17]のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0037】
[19][1]~[18]のいずれかに1項に記載の半導体装置を備える電子機器。
【0038】
[20]第1スリット及び第2スリットを有する配線と、チップと接するバンプと、を圧着する工程を有し、前記第1スリットと前記第2スリットとの間の領域において、前記配線が前記バンプと接する半導体装置の製造方法。
【0039】
[21]前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比が2.4以上である[20]に記載の半導体装置の製造方法。
【0040】
[22]前記バンプの長手方向の辺の長さに対する前記第2スリットの長手方向の辺の長さの比が2.4以上である[21]に記載の半導体装置の製造方法。
【0041】
[23]前記第1スリット及び前記第2スリットは、同一形状である[20]~[22]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0042】
[24]前記バンプの一部は、前記第1スリットと重畳する[20]~[23]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0043】
[25]前記第1スリットの短手方向の辺の長さに対する前記第1スリットの長手方向の辺の長さの比は、2.1以下である[20]~[24]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0044】
本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を用いて説明する。
【0045】
図1~6は、本実施形態の一態様の半導体装置を示している。本実施形態の一態様の半導体装置は、フィルム1、バンプ2、レジスト3、アンダーフィル材4、チップ10、配線12、出力リード14、及び入力リード16を備える。
【0046】
図1は本実施形態の一態様の半導体装置の平面模式図であり、図2は本実施形態の一態様の半導体装置の断面模式図であり、図3は本実施形態の一態様の半導体装置のチップ周辺の平面レイアウト図であり、図4は本実施形態の一態様の半導体装置のチップ周辺部における配線の拡大平面レイアウト図であり、図5は本実施形態の一態様の半導体装置におけるバンプ周辺の断面模式図であり、図6は本実施形態の一態様半導体装置におけるスリットとバンプとの位置関係を説明するための平面レイアウト図である。
【0047】
本実施形態の一態様の半導体装置は、図1に示すように、チップ10のそれぞれの入力端子に個別に接続する複数の入力リード16と、チップ10のそれぞれの出力端子に個別に接続する複数の出力リード14と、チップ10と重畳し、かつ、当該チップ10に含まれる回路部の電源に直接信号を供給する配線12と、を備えている。
【0048】
従来の半導体装置は、図13に示すように配線12を設けられていない構成であるが本実施形態の一態様の半導体装置は、従来構成に加えて配線12が設けられている。配線12は、入力リード16及び出力リード14より太い配線であり、配線12の長手方向におけるインピーダンスを下げることでき、配線12から供給される信号にノイズが発生することを抑制することができる。
【0049】
配線12は、図3に示すように、チップ10と重畳している。図4に示すように、チップ10周辺部における配線12は、複数存在し、本実施形態の一態様では5本の配線がチップ10と重畳している。なお、本実施形態の一態様において、配線12は複数存在しているがこれに限られず、配線12は1本のみ存在し、チップ10と重畳している構成であってもよい。配線12の短手方向の辺の長さ(太さ)は30~400μmであり、かつチップ10より短い。
【0050】
チップ10自体の内部配線を介さずに配線12を用いてチップ10内の回路部の電源に直接信号を供給することできるため、チップ10を備える半導体装置の高速動作及び電気的安定性を確保することができる。
【0051】
配線12上には、バンプ2が設けられている。図4に示す電源配線領域18のバンプ2は電源配線(図示せず)と電気的に接続され、電源配線領域18以外の領域のバンプ2は、フィルム1を支える支持体としての機能を有する。電源配線領域18以外の領域のバンプ2が多すぎるとチップ10全体にかかる圧力が大きくなってしまい、チップ10表面のパッシベーション膜にクラックが生じてしまう。また、アンダーフィル材4を形成する際にアンダーフィル材4となる樹脂を流して封止するがこのときに気泡が樹脂に混入したり、バンプ2の裏側(樹脂が流れる先の方向側)にまで樹脂が入りにくいためボイドが生じることがあり、これらが半導体装置の信頼性に影響を及ぼす恐れがある。さらに、バンプ2は金などの材料で形成されるためコスト面からもあまり多く設けないほうが好ましい。一方、電源配線領域18以外の領域のバンプ2が少なすぎるとバンプ2の間隔が広くなり、フィルム1が撓んでしまい、フィルム1を支えることができず、チップ10とフィルム1とが接触してしまう。これらを考慮して、バンプ2の配置及び個数等は適切に調整することが好ましい。バンプ2のピッチ間隔は、例えば、500~800μmである領域を有し、100~600μmである領域を有することが好ましい。
【0052】
また、図5に示すように、配線12はフィルム1とバンプ2との間に挟まれて設けられている。フィルム1は、例えば、厚さ35μmのポリイミドを用いることができる。配線12は、例えば、厚さが8μmの銅やアルミニウムを用いることができ、導電性の観点から銅を用いることが好ましい。バンプ2は、例えば、厚さ12~18μmの金を用いることができる。
【0053】
チップ10は、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)などの半導体集積回路を含む。チップ10表面にはパッシベーション膜が設けられており、当該パッシベーション膜がチップ10を保護している。
【0054】
レジスト3は、電気的な接続をとる接点以外にはんだが付着しショートを起こすのを防止する機能を有する。また、レジスト3は、チップ10とフィルム1表面との隙間を調整するスペーサーとしても機能する。レジスト3は、例えば、厚さが5~40μmであり、10~30μmであることが好ましい。
【0055】
アンダーフィル材4は、はんだ材料の種類とその融点に応じて適宜選択することができる。アンダーフィル材4は、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0056】
ここで、配線12について詳細に説明する。配線12はスリットを有しており、当該スリットはチップ10の熱圧着時における配線の応力を軽減する機能を有している。図6は、スリット20とバンプ2との位置関係を説明する平面レイアウト図である。
【0057】
本実施形態において、配線12は、複数のスリット20を有し、各スリット20において短手方向の辺の長さに対する長手方向の辺の長さLの比は、2.1以下である。また、各スリット20の長手方向の辺は、配線12の長手方向の辺に平行である。なお、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、各スリット20の一とその他の一とが互いに離間して平行に設けられていてもよい。
【0058】
バンプ2は、スリット20に隣接する領域22において、配線12と接する。領域22におけるバンプ2の長手方向の辺の長さWに対するスリット20の長手方向の辺の長さLの比は2.4以上である。また、領域22におけるバンプ2の長手方向の辺の長さWは、25~35μmである。また、バンプ2自体の長手方向の辺の長さは、50~200μmである。なお、本実施形態において、1つのバンプ2は、2つのスリット20の間の領域22の配線12と接し、かつ、スリット20と重畳している領域を有しているがこれに限られず、チップ10の熱圧着時における配線12の応力を軽減する構成であれば、バンプ2がスリット20と重畳しない構成や1つスリット20に1つのバンプ2が隣接する構成であってもよく、スリット20の長手方向の辺とバンプ2の長手方向の辺との間でなす角度が45°~135°であってもよい。また、各スリット20において、同一形状であっても異なる形状であってもよいが、製造工程の簡略化の観点から同一形状であるほうが好ましい。
【0059】
前述したフィルム上に太い配線を用いると高温処理を行うチップの熱圧着時に配線が熱膨張して応力が大きくなり、バンプを介してチップ表面のパッシベーション膜に負荷がかかってしまうが本実施形態のように配線にスリットを設け、当該スリットとバンプとのレイアウトを調整することでチップ表面のパッシベーション膜にかかる負荷を軽減し、パッシベーション膜に生じるクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0060】
ここで、本実施形態の半導体装置の製造方法について、説明する。
【0061】
フィルム1上に前述のスリットを有する配線12及びレジスト3を形成する。
【0062】
次に、チップ10に接するバンプを形成する。
【0063】
次に、配線12のスリット20を相対するチップと接するバンプ2と位置合わせをしてチップを搭載する。上述のようにバンプ2は、スリット20に隣接する領域22において、配線12と接する。なお、チップ10の搭載時の圧着の圧力、温度、及び時間等は適宜調整する。
【0064】
次に、リフロー炉内で、窒素などの不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行い、バンプ2の溶融、フィルム1及びチップの間に充填したアンダーフィル材4となる樹脂を熱硬化させてアンダーフィル材4を形成する。
【0065】
以上の工程を経て、本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0066】
本実施形態の半導体装置は、配線にスリットを設け、スリットとバンプとの位置を調整することでチップの熱圧着時におけるチップ表面のパッシベーション膜のクラックの発生を抑制し、歩留まり及び信頼性を確保することができる。
【0067】
また、本実施形態の半導体装置を電子機器に備えることもでき、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ウェアラブル端末、データ端末、バーコードスキャナ、バッテリー充電器、監視カメラ、ガス警報器、医療機器、ヘルスケア機器、ロボット等の産業機器、カーナビゲーション、エンジンコントロールユニット、電動パワーステアリング、車載カメラモジュール等の車載機器、TV、ホームシアター、オーディオ等のAV機器、インクジェットヘッドプリンター、エアコン、冷蔵庫、炊飯器、ドライヤー等の家電製品等、様々な用途において用いることができる。本実施形態の半導体装置を備えることで歩留まり及び信頼性を確保した電子機器を提供することができる。
【0068】
[その他の実施形態]
上述のように、いくつかの実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【実施例
【0069】
以下に、実施例により上記実施形態をさらに具体的に説明するが、上記実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
本実施例では、前述の半導体装置におけるスリットとバンプとの位置の違いによるチップ表面のパッシベーション膜に生じるクラックの発生頻度を評価した。
【0071】
本評価で用いた半導体装置は、前述の実施形態で示したように、フィルム1、バンプ2、レジスト3、チップ10、及び配線12を備える。図7に本評価で用いた半導体装置のチップ周辺の平面レイアウト図を示す。
【0072】
フィルム1は厚さが8μmのポリイミドフィルムを用いた。バンプ2は長手方向の辺の長さが80μm、短手方向の辺の長さが33μm、厚さが15±3μmである金バンプを用いた。レジスト3は配線回路を外部からの異物や湿気から保護する絶縁性インクを用いた。配線12は太さが200~400μm、厚さが8μmの銅配線を用いた。
【0073】
前述の実施形態で示したように、配線12にチップ10を搭載した。
【0074】
なお、図8(a)に示す配線12にスリットを設けていないサンプル1、図8(b)に示すスリット20の長手方向の辺の長さLが73μm、領域22(図6参照)におけるバンプ2の長手方向の辺の長さWが50μm、スリット20の短手方向の辺の長さが25μmのサンプル2、図9(a)に示すLが73μm、Wが40μm、スリットの短手方向の辺の長さが30μmのサンプル3、及び図9(b)に示すLが73μm、Wが30μm、スリットの短手方向の辺の長さが35μmのサンプル4を用意してそれぞれ評価した。また、サンプル2のL/Wは1.5、サンプル3のL/Wは1.8、及びサンプル4のL/Wは2.4であった。さらに、スリット20において短手方向の辺の長さに対する長手方向の辺の長さLの比は、サンプル2が2.9、サンプル3が2.4、サンプル4が2.1であった。
【0075】
配線12にチップ10を搭載した後におけるチップ10表面のパッシベーション膜を光学顕微鏡を用いて観察した。得られた光学顕微鏡写真を図10および図11に示す。図10(a)はサンプル1の表面であり、図10(b)はサンプル2の表面であり、図11(a)はサンプル3の表面であり、図11(b)はサンプル4の表面である。
【0076】
図10及び図11に示すように、配線12にスリットを設けていないサンプル1は広範囲に渡ってクラック30が発生している。サンプル1のクラックの発生頻度は92%であった。また、配線12にスリットを設けているサンプル2及びサンプル3においてもクラック30が発生している。サンプル2及びサンプル3の発生頻度は、それぞれ78%及び57%であった。一方、配線12にスリットを設けているサンプル4はクラックの発生は確認できなかった。サンプル4のクラックの発生頻度は14%であり、実用化レベルであることが確認できた。上記の評価結果から、配線12にスリットを設け、かつ、L/Wを大きくすることによってクラックの発生頻度が低減していることが確認できた。
【0077】
例えば、図12に示すような構成にすることでL/Wを実用化レベルであるサンプル4より大きくすることができ、クラックの発生頻度を低減できることが示唆された。
【符号の説明】
【0078】
1…フィルム、2…バンプ、3…レジスト、4…アンダーフィル材、10…チップ、12…配線、14…出力リード、16…入力リード、18…電源配線領域、20…スリット、22…領域、30…クラック
図1
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