(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】DKK1産生促進剤及びその製造方法、DKK1産生促進用美容組成物及びその製造方法、並びにDKK1産生促進方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240314BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/02
(21)【出願番号】P 2019198164
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018244971
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 沙予
(72)【発明者】
【氏名】綱井 良恵
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/104171(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/152384(WO,A1)
【文献】特開平08-092057(JP,A)
【文献】特開2005-104938(JP,A)
【文献】特開2017-048155(JP,A)
【文献】特開平10-265322(JP,A)
【文献】特開2006-347995(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107714541(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107653107(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107629900(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106667803(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106619303(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2015-0108545(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99、31/00-80、36/00-9068
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クチナシ果実エキス、アセンヤクエキス及びコーヒー種子エキスから成る群より選択される少なくとも一種を
有効成分として含むことを特徴とする、DKK1産生促進剤。
【請求項2】
皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1産生を促進する、請求項1に記載のDKK1産生促進剤。
【請求項3】
スキントーン向上のために用いられる、請求項1
又は2に記載のDKK1産生促進剤。
【請求項4】
クチナシ果実エキス、アセンヤクエキス及びコーヒー種子エキスから成る群より選択される少なくとも一種を
有効成分として含むことを特徴とする、DKK1産生促進用美容組成物。
【請求項5】
皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1産生を促進する、請求項
4に記載のDKK1産生促進用美容組成物。
【請求項6】
スキントーン向上のために用いられる、請求項
4又は5に記載のDKK1産生促進用美容組成物。
【請求項7】
クチナシ果実エキス、アセンヤクエキス及びコーヒー種子エキスから成る群より選択される少なくとも一種を
有効成分として配合することを特徴とする、DKK1産生促進剤の製造方法。
【請求項8】
DKK1産生促進剤が、皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1産生促進剤である、請求項7に記載のDKK1産生促進剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DKK1産生促進剤及びその製造方法、DKK1産生促進用美容組成物及びその製造方法、並びにDKK1産生促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DKK1(Dickkopf1; an inhibitor of the canonical Wnt signaling pathway)は、皮膚の真皮に存在する線維芽細胞から分泌される因子であり、表皮のメラノサイトの分化・増殖を抑制することによりメラニンの合成を抑えることが知られている。また、DKK1は、表皮のケラチノサイトに作用し、メラノサイトからのメラニンの取り込みを抑制することも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
そこで、このDKK1の発現量を高めることで表皮における色素沈着を抑制しようとする研究も行われている。例えば特許文献1には、月桃葉部、甘草葉部、タイソウ、ローヤルゼリー及びビワからなる群より選択される1種又は2種以上の天然物からの抽出物を含有するDKK1発現促進剤や美白剤が記載されている。また、特許文献2には、水性媒体を基剤とし、有効成分としてL-アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含んでなるアンチエイジング用皮膚外用組成物が記載されており、アスコルビン酸2-グルコシドが、正常ヒト皮膚線維芽細胞からのDKK1産生を濃度依存的に促進させることが示されている。
【0004】
一方、肌の美容や健康に対する人々の要求は日々高まっているのが現状であり、新しいタイプの化粧料、より効果のある化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-48155号公報
【文献】国際公開2014/104171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、細胞からのDKK1の産生促進能に優れると共に、美白効果も奏する美容組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物の中からDKK1産生促進作用を有するものを見出した。特筆すべきは、それらの天然由来抽出物が、皮膚線維芽細胞からのDKK1産生促進能のみならず、脂肪組織に存在する間葉系幹細胞からのDKK1産生促進能も有する点である。得られた研究結果に基づき、本発明者らは、それらの天然由来抽出物を含有するDKK1産生促進剤、及びそれを含有するDKK1産生促進作用に基づく美容組成物を提供する。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1]モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を含むことを特徴とする、DKK1産生促進剤。
[2]皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1産生を促進する、[1]に記載のDKK1産生促進剤。
[3]天然由来抽出物が、植物由来抽出物である、[1]又は[2]に記載のDKK1産生促進剤。
[4]植物由来抽出物が、キョウチクトウ科、アカネ科、マチン科、ヌマミズキ科及びクロタキカズラ科から成る群より選択される少なくとも一種の植物の抽出物である、[3]に記載のDKK1産生促進剤。
[5]スキントーン向上のために用いられる、[1]から[4]のいずれかに記載のDKK1産生促進剤。
[6]モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を含むことを特徴とする、DKK1産生促進用美容組成物。
[7]皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1産生を促進する、[6]に記載のDKK1産生促進用美容組成物。
[8]天然由来抽出物が、植物由来抽出物である、[6]又は[7]に記載のDKK1産生促進用美容組成物。
[9]植物由来抽出物が、アカネ科、キョウチクトウ科、マチン科、ヌマミズキ科及びクロタキカズラ科から成る群より選択される少なくとも一種の植物の抽出物である、[8]に記載のDKK1産生促進用美容組成物。
[10]スキントーン向上のために用いられる、[6]から[9]のいずれかに記載のDKK1産生促進用美容組成物。
[11]モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする、DKK1産生促進方法。
[12]モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする、DKK1産生促進剤の製造方法。
[13]モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする、DKK1産生促進用美容組成物の製造方法。
[14]トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分をさらに含む、[1]から[5]のいずれかに記載のDKK1産生促進剤。
[15]トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分をさらに含む、[6]から[10]のいずれかに記載のDKK1産生促進用美容組成物。
[16]トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分をさらに使用することを特徴とする、[11]に記載のDKK1産生促進方法。
[17]トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分をさらに使用することを特徴とする、[12]に記載のDKK1産生促進剤の製造方法。
[18]トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分をさらに使用することを特徴とする、[13]に記載のDKK1産生促進用美容組成物の製造方法。
[19]トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を含む、DKK1産生促進剤。
[20]トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を含む、DKK1産生促進用美容組成物。
[21]トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を使用することを特徴とする、DKK1産生促進方法。
[22]トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を使用することを特徴とする、DKK1産生促進剤の製造方法。
[23]トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を使用することを特徴とする、DKK1産生促進用美容組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の、特定の天然由来抽出物を含有するDKK1産生促進剤は、真皮の皮膚線維芽細胞に対してDKK1産生促進効果を奏するのみならず、真皮よりも深部の脂肪組織に存在する間葉系幹細胞に対してもDKK1産生促進効果も奏する。そのため、本発明によると、真皮における美白やスキントーン向上効果のみならず、真皮の更に奥からの美白やスキントーン向上効果も得ることができる。また、本発明のDKK1産生促進用剤は美容組成物として好適に用いられ、肌の美白、スキントーン向上を目的とした製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
【0011】
<DKK1産生促進剤>
本発明のDKK1産生促進剤は、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を含むことを特徴とする。本発明のDKK1産生促進剤は、特定の天然由来抽出物を有効成分として含むことにより、真皮の皮膚線維芽細胞に対してDKK1産生促進効果を奏するのみならず、真皮よりも深部の脂肪組織に存在する間葉系幹細胞に対してもDKK1産生促進効果も奏する。
【0012】
DKK1は表皮でメラノサイトやケラチノサイトに作用し、メラニンによる肌外観の美観の低下を抑制することが知られているが、表皮は外的な刺激やダメージを受けやすいことから機能低下しやすい。一方、表皮より奥にある真皮や、さらに奥深くにある皮下脂肪組織は、表皮と比べて外的な刺激やダメージを受けにくい。そのため、本発明のDKK1産生促進剤のように、真皮の線維芽細胞やさらに深部の脂肪由来間葉系幹細胞に作用してDKK1産生を促進させることができると、肌の美白やスキントーン向上の優れた効果をより一層安定的に発揮させることができる。また、線維芽細胞や間葉系幹細胞は、表皮のケラチノサイトに比べてターンオーバーに要する時間が長いため、線維芽細胞や間葉系幹細胞のDKK1産生促進能を高めると、より一層持続的に肌の美白やスキントーン向上の優れた効果を発揮させることができる。
【0013】
さらに、線維芽細胞や間葉系幹細胞のDKK1産生を促進すると、ケラチノサイトの増殖能が亢進するため、表皮のターンオーバーが促進される。それにより、肌の美観を低下させる要因ともなり得る表皮のメラニンが体外へ排出され、しみ等の改善効果も得られる。また、メラニンが排出されることで、肌の透明感向上や血色改善も生じ、美白、スキントーン向上、ブライトニング向上が見られる。
【0014】
従って、本発明のDKK1産生促進剤は、皮膚の表面部位である表皮から、真皮、さらに深部の皮下組織に渡り、3次元的にDKK1産生促進効果を奏するため、肌外観の美白やスキントーン向上の効果がより一層発揮される。
【0015】
上記天然由来抽出物が含有するモノテルペンインドールアルカロイドとしては、例えば、アジマリン、レセルピン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、リンコフィリン、ストリキニーネ、ブルシン、ヨヒンビン等のモノテルペンインドールアルカロイド;キニジン、キニーネ、カンプトテシン等のキノリン骨格を有する変形モノテルペンインドールアルカロイド等が挙げられる。なお、本発明のDKK1産生促進剤においては、天然由来抽出物が含むモノテルペンインドールアルカロイドが有効成分であってもよいし、それ以外の成分が有効成分であってもよい。
【0016】
本発明における抽出物(エキス)には、天然物を抽出原料として得られる抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0017】
本発明における抽出物(エキス)は、抽出原料を乾燥後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出により得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。
【0018】
抽出溶媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することができる。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る水としては、精製水、熱水、イオン交換水等が挙げられ、さらにこれらに浸透圧調整、緩衝化等の処理をして得られる生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。抽出溶媒として使用し得る有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。なお、上記例示した溶媒のうち、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用してもよい。
【0020】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0021】
上記モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物としては、例えば、植物由来抽出物、動物由来抽出物、細菌由来抽出物等が挙げられるが、これらのうち、植物由来抽出物であることが好ましい。
【0022】
上記植物由来抽出物の抽出部位としては、例えば葉、花、実、根、茎、皮、枝、果実、果皮、種子などが挙げられる。抽出に際しては植物原料をそのまま用いてもよく、乾燥させて用いてもよい。植物原料は粉砕して用いることもできる。化粧品原料等として市販されている植物エキスを使用してもよい。
【0023】
上記植物抽出物における植物としては、例えば、クチナシ、アセンヤク、カギカズラ、アカキナノキ、チャボイナモリ、コーヒー、アカネ、サンタンカ、シマギョクシンカ、ベニマツリ、ハクチョウゲ、ソナレムグラ、ヘクソカズラ、カワラマツバ、キヌタソウ、スイートウッドラフ、ヤエムグラ、ヨツバムグラ、レディースベッドストロー等のアカネ科の植物;ラウオルフィア(インドジャボク)、ニチニチソウ、チョウジソウ、キョウチクトウ、アラマンダ(ネリーフォリア)、ツルニチニチソウ、ヒメツルニチニチソウ、アスクレピアス、ガガイモ、イケマ、クサタチバナ、テイカカズラ等のキョウチクトウ科の植物;マチン、ルソンカ、ホウライカズラ、チトセカズラ、オガサワラモクレイシ、ヒメナエ、アイナエ等のマチン科の植物;エゾリンドウ、ハルリンドウ、フデリンドウ、リンドウ、アケボノソウ、センブリ、ツルリンドウ、ムラサキセンブリ等のリンドウ科の植物;カロライナジャスミン等のゲルセミウム科の植物;カンレンボク、ハンカチノキ等のヌマミズキ科の植物;サンシュユ、ハナミズキ、ミズキ、ヤマボウシ、クマノミズキ、ゴゼンタチバナ、ウリノキ等のミズキ科の植物;アマチャ、アジサイ、ガクアジサイ、コアジサイ、ノリウツギ、ヤマアジサイ、イワガラミ、ウツギ、バイカウツギ、マルバウツギ等のアジサイ科の植物;シレンゲ等のシレンゲ科の植物;カーティシア科の植物;グラッビア科の植物;ヒドロスタキス科の植物;クサミズキ、クロタキカズラ等のクロタキカズラ科の植物;アルカネット、セリンセ、ヘリオトロープ、モンパノキ、コンフリー(ヒレハリソウ)、ラングワート、ボリジ、ワスレナグサ、キュウリグサ、スナビキソウ、チシャノキ、ムラサキ、ヤマルリソウ、シコン、ヒキオコシ(エンメイソウ)等のムラサキ科の植物;メッテニウサ科の植物;オンコテカ科の植物;ホプレスティグマ科の植物;バーリア科の植物;オウゴン、オドリコソウ、シソ、セージ、セイヨウハッカ、タイム、マヨラナ、ムラサキシキブ、メリッサ(レモンバーム)、ラベンダー、ローズマリー等のシソ科の植物;モクセイ科の植物;キツネノマゴ科の植物;クマツヅラ科の植物;ゴマノハグサ科の植物;ノウゼンカズラ科の植物;ハマウツボ科の植物;アシタバ、ウイキョウ、カロット、クミン、オランダミツバ、センキュウ、ツボクサ、トウキ、ニンジン、パセリ、コレウスバルバツス等のセリ科の植物;エゾウコギ等のウコギ科の植物;アーティチョーク、アルニカ、エーデルワイス、エチナシ、カミツレ(カモミス)、カワラヨモギ、ゴボウ、ステビア、セイヨウノコギリソウ、トウキンセンカ、フキタンポポ、マリアアザミ、ヤグルマギク、ヨモギ、ローマカミツレ、クリサンテルムインジクム、フキ、アルゲ、カレンデュラ(マリーゴールド)等のキク科の植物;キキョウ科の植物;ウワウルシ等のツツジ科の植物;レンプクソウ科の植物;スイカズラ科の植物;トチュウ科の植物;ガリア科の植物;の植物等が挙げられる。これらのうち、細胞に対するDKK1産生促進能に優れる観点から、アカネ科、キョウチクトウ科、マチン科、リンドウ科、ゲルセミウム科等のリンドウ目の植物、ヌマミズキ科、ミズキ科、アジサイ科などのミズキ目の植物、クロタキカズラ科、ムラサキ科などのシソ群の植物、シソ科、モクセイ科、キツネノマゴ科、クマツヅラ科、ゴマノハグサ科、ノウゼンカズラ科、ハマウツボ科などのシソ目の植物、セリ科、ウコギ科などのセリ目の植物、キク科、キキョウ科などのキク目の植物、ツツジ科などのツヅジ目の植物、レンプクソウ科、スイカズラ科などのマツムシソウ目の植物、トチュウ科、ガリア科などのガリア目の植物が好ましい。また、アカネ科、キョウチクトウ科、マチン科、リンドウ科、ゲルセミウム科、ヌマミズキ科、ミズキ科、アジサイ科、クロタキカズラ科、ムラサキ科、シソ科、セリ科、ウコギ科、キク科、ツツジ科、の植物がより好まく、アカネ科、キョウチクトウ科、マチン科、ヌマミズキ科、クロタキカズラ科の植物がさらに好ましい。
【0024】
本発明のDKK1産生促進剤は、上述の天然由来抽出物の作用で、皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪組織中に存在する間葉系幹細胞におけるDKK1発現を促進し、DKK1のWntシグナル経路阻害作用により、表皮におけるメラノサイトの分化及び増殖を抑制し、メラニンの産生を抑制することができる。さらにケラチノサイトにおけるメラノサイトからのメラニン取り込みも抑制することができる。特に、本発明のDKK1産生促進剤が、皮膚線維芽細胞及び脂肪組織中の間葉系幹細胞の両方のDKK1発現を促進する場合には、真皮からのみならず、真皮の更に奥からの美白やスキントーン向上効果も得ることができる。
【0025】
ここで、スキントーン向上とは、シミやソバカス、加齢に伴う肌のくすみや色素沈着を改善し、より自然で均一な肌色に近づけること(スキントーン改善)に加えて、本来よりの肌色のトーンが濃い肌の肌トーンをアップさせることも含まれる。
【0026】
本発明のDKK1産生促進剤による効果は、細胞のDKK1遺伝子発現、タンパク発現のいずれかにより確認することができるが、タンパク発現により確認するのが好ましい。本発明のDKK1産生促進剤の効果は、細胞におけるDKK1遺伝子発現及び/又はDKK1タンパク発現を、当業者に公知の方法により測定することができる。具体的には、DKK1遺伝子発現を測定する場合には、例えば、本発明のDKK1産生促進剤の効果を確認したい組織、細胞のトータルRNAを抽出し、DKK1及び内部標準であるGAPDH等についてmRNA発現量を測定する。検出はリアルタイムPCR装置等を用いることができる。また、本発明のDKK1産生促進剤の効果を確認したい組織、細胞からのDKK1タンパクの分泌量は、ELISA等の方法により測定することができる。
【0027】
本発明のDKK1産生促進剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の天然由来抽出物以外に、その他の成分(基剤又は担体、添加剤等)を含んでいてもよい。本発明のDKK1産生促進剤における上記天然由来抽出物の含有量としては、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.5質量%以上、5.0質量%以上、8.0質量%以上、10.0質量%以上でありえる。100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下でありえる。また、その含有量としては、0.0001質量%以上100質量%以下が好ましく、0.001質量%以上95質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上90質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以上80質量%以下が特に好ましい。なお、本発明のDKK1産生促進剤は、上記天然由来抽出物を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。本発明のDKK1産生促進剤が上記天然由来抽出物を2種以上含む場合、これら2種以上の天然由来抽出物の含有量の合計を上記天然物由来抽出物の含有量とする。
【0028】
[DKK1産生促進剤の製造方法]
本発明のDKK1産生促進剤の製造方法は特に制限されず、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする方法であればよい。即ち、必須成分であるモノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物、必要に応じて配合されるその他の成分(基剤又は担体、添加剤等)を適宜選択、配合して、常法により製造することができる。
【0029】
[DKK1産生促進剤の用途]
本発明のDKK1産生促進剤は、DKK1産生促進により治療又は予防効果が得られる医薬品、医薬部外品、化粧品、食品として用いられてもよいし、後述する美容組成物に用いられてもよい。また、本発明のDKK1産生促進剤は優れたDKK1産生促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に用いられ得る。
【0030】
<DKK1産生促進用美容組成物>
本発明は、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を含むことを特徴とする美容組成物であって、DKK1産生促進用に用いられるものも含む。本発明のDKK1産生促進用美容組成物は、上述のDKK1産生促進剤を含む美容組成物であると表現することもできる。モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物又はDKK1産生促進剤については、上述の項の記載をそのまま適用できる。なお、本発明のDKK1産生促進用美容組成物におけるモノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物の含有量は、0.0000001質量%以上、0.000001質量%以上、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.5質量%以上、5.0質量%以上でありえる。50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、でありえる。また、その含有量としては、0.00001質量%以上100質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上50質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上40質量%以下がさらに好ましく、0.005質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
【0031】
本発明のDKK1産生促進用美容組成物は、上記モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。以下に、その他の任意成分について説明する。
【0032】
本発明のDKK1産生促進用美容組成物が含む任意成分としては、例えば、上述の天然物由来抽出物以外の美白有効成分、ターンオーバー促進剤、抗糖化成分、抗酸化成分、老化防止成分、抗炎症剤、清涼化剤、殺菌剤、ビタミン類、有機酸、保湿成分、多価アルコール、乳化剤、スクラブ剤、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、収斂成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、洗浄成分、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、血行促進作用成分、浸透剤等が挙げられる。なお、本発明のDKK1産生促進用美容組成物において、これらの成分は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記美白有効成分としては、例えば、トコフェロール、ビタミンC及びその誘導体、アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、エラグ酸、ニコチン酸アミド、トラネキサム酸及びその誘導体、ハイドロキノン、4-n-ブチルレゾルシノール、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、リノール酸及びその誘導体等が挙げられる。これらのうち、本発明の効果(DKK1産生促進効果)を向上させる観点から、トラネキサム酸、プラセンタエキス及び4-n-ブチルレゾルシノールが好ましい。
【0034】
上記ターンオーバー促進剤としては、例えば、後述するビタミン類、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、血行促進成分等が挙げられる。
【0035】
上記抗糖化成分としては、例えば、ブドレジャアキシラリス葉エキス等の植物エキス、月見草油、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物、L-アルギニン、L-リジン、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カルノシン等が挙げられる。
【0036】
上記抗酸化成分としては、例えば、植物(例えば、ブドウ、オタネニンジン、及びコンフリー等)に由来する成分;プロアントシアニジン、トコフェロール及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、へスペリジン及びその誘導体、エルゴチオネイン、亜硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸及びその塩、フラボノイド、グルタチオン等が挙げられる。
【0037】
上記老化防止成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド(レチノール及びその誘導体、レチノイン酸、及びレチナール等)、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N-メチル-L-セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0038】
上記抗炎症剤としては、例えば、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、酸化亜鉛、酢酸トコフェロール、等が挙げられる。
【0039】
上記清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ゲラニオール、等のテルペン類(これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。);ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、等の精油等が挙げられる。
【0040】
上記殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、エタノール、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸及びその誘導体、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、ピロクトオラミン、ミコナゾール等が挙げられる。
【0041】
上記ビタミン類としては、水溶性ビタミン及び油溶性ビタミンのいずれであってもよく、例えば、ビタミンB6類、パントテン酸類、ニコチン酸類、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビオチン類葉酸類、ビタミンB12類、水溶性のビタミンC類、油溶性のビタミンC類、ビタミンK類;フェルラ酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0042】
上記有機酸としては、例えば、グルコン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、プロピオン酸、リンゴ酸、サリチル酸、グリコール酸、フィチン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、硫酸、塩酸又はリン酸等の鉱酸の塩、マレイン酸又はメタンスルホン酸等の有機酸の塩、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
上記保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン、プロテオグリカン等の高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質等の脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキス等の植物抽出エキス、グリセリンなどの多価アルコール等が挙げられる。
【0044】
上記多価アルコールとしては、炭素数2~10のものが好ましく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0045】
上記乳化剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン等のポリエーテル系のシリコーン;POE(5)、POE(7.5)、POE(10)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ジポリヒドロキシステアリン酸エステル類:ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2、PEG30ジポリヒドロキシステアレート等の高分子量親油性活性剤;セチルジメチコンコポリオール等が挙げられる。
【0046】
上記スクラブ剤としては、例えば、アプリコット核粉末、アーモンド殻粉末、アンズ核粉末、塩化ナトリウム粒、オリーブ核粉末、海水乾燥物粒、キャンデリラワックス、くるみ殻粉末、さくらんぼ核粉末、サンゴ粉末、炭粉末、はしばみ殻粉末、ポリエチレン末、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0047】
上記紫外線吸収成分としては、例えば、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、ホモサレート、ポリシリコーン-15、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等が挙げられる。
【0048】
上記紫外線散乱成分としては、例えば、含水ケイ酸、ケイ酸亜鉛、ケイ酸セリウム、ケイ酸チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、無水ケイ酸等の無機化合物、これらの無機化合物を含水ケイ酸、水酸化アルミニウム、マイカやタルク等の無機粉体で被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコーン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したもの等が挙げられる。
【0049】
上記収斂成分としては、例えば、ミョウバン、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸等が挙げられる。
【0050】
上記ペプチド又はその誘導体としては、例えば、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)等が挙げられる。
【0051】
上記アミノ酸又はその誘導体としては、例えば、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等が挙げられる。
【0052】
上記洗浄成分としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム又はステアリン酸カリウム等のアルカリ金属塩、アルカノールアミド塩又はアミノ酸塩等から選ばれる石けん類;ココイルグルタミン酸Na、ココイルメチルタウリンNa等のアミノ酸系界面活性剤;ラウレス硫酸Na等のエーテル硫酸エステル塩;ラウリルエーテル酢酸Na等のエーテルカルボン酸塩;アルキルスルホコハク酸エステルNa等のスルホコハク酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のモノアルキルリン酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等のベタイン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
上記角質柔軟成分としては、例えば、乳酸、サリチル酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、フルーツ酸、フィチン酸、尿素、イオウ等が挙げられる。
【0054】
上記細胞賦活化成分としては、例えば、γ-アミノ酪酸等のアミノ酸類;レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類等のビタミン類;グリコール酸、乳酸等のα-ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、感光素301号等が挙げられる。
【0055】
上記血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、ショウガ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、リョクチャ、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ等)に由来する成分;アセチルコリン、イクタモール、カンタリスチンキ、ガンマーオリザノール、セファランチン、トラゾリン、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン等が挙げられる。
【0056】
上記浸透剤としては、例えば、エタノール、1,3-ブチレングリコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、イソプロピルミリステート、メチルラウレート、グリセロールモノオレエート、プロピレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
【0057】
[DKK1産生促進用美容組成物の製造方法]
本発明のDKK1産生促進用美容組成物の製造方法は特に制限されず、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする方法であればよい。即ち、必須成分であるモノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物、必要に応じて配合されるその他の成分(上記任意成分、後述する基剤又は担体、添加剤等)を適宜選択、配合して、常法により製造することができる。
【0058】
[DKK1産生促進用美容組成物の用途]
本発明のDKK1産生促進用美容組成物は、肌の美白、スキントーン向上効果が得られることを目的として用いられる。また、肌のくすみ、ハリのなさ、毛穴目立ち、乾燥などのエージング症状の改善(スキントーン改善)にも効果を奏する。このように、本発明のDKK1産生促進用美容組成物は、例えば、美容液、化粧水、乳液、クリーム、ジェルクリーム、美容マスク(フェイスマスク)、化粧下地、ファンデーション、日焼け止め、クレンジング、洗浄剤等の外用組成物として好適に使用することができ、より好ましくは、美容液、化粧水、乳液、クリーム、ジェルクリーム等のスキンケア製品として使用することができる。
【0059】
また、本発明のDKK1産生促進用美容組成物は、食品組成物とすることができる。この食品組成物は、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメントなどを含む)として好適に用いることができる。また、保健機能食品(特定保健用食品(疾病リスク低減表示、規格基準型を含む))に好適である。
【0060】
[製剤(外用組成物)]
本発明のDKK1産生促進用美容組成物が外用組成物である場合は、その必須成分及び上記で説明したその他の任意成分等を、化粧品、医薬品、医薬部外品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて、後述する添加剤と共に常法に従い混合して、必要に応じて乳化又は可溶化を行い、各種の製剤形態の美容組成物とすることができる。
【0061】
上記基剤又は担体としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィン等の炭化水素;メチルポリシロキサン、環状シリコーン、変性シリコーン、シリコーンレジン等のシリコーン油;ヤシ油、オリーブ油、コメヌカ油、シアバター等の油脂;ホホバ油、ミウロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等のロウ類;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール、コレステロール等の高級アルコール;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ポリエチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のエステル類;デキストリン、マルトデキストリン等の多糖類;エタノール等の低級アルコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等のグリコールエーテル;水等が挙げられる。
【0062】
以上説明した基剤又は担体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。またそれらの使用量は当業者に公知の範囲から適宜選択される。
【0063】
[添加剤(外用組成物)]
本発明の美容組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬品、医薬部外品に添加される公知の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、着色剤、パール光沢付与剤、キレート剤、pH調整剤、保存剤、増粘剤、等を添加することができる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0064】
上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のいずれでもよく、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミン等のアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩等が挙げられる。
【0066】
上記着色剤としては、例えば、無機顔料、天然色素等が挙げられる。
【0067】
上記キレート剤としては、例えば、EDTA・2ナトリウム塩、ヒロドキシエタンジホスホン酸・カルシウム・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0068】
上記pH調整剤としては、例えば無機酸(塩酸、硫酸等)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等が挙げられる。
【0069】
上記保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、カプリルヒドロキサム酸、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等のアルカンジオール類等が挙げられる。
【0070】
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系増粘剤、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系増粘剤、グアーガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等が挙げられる。
【0071】
[製剤形態(外用組成物)]
本発明のDKK1産生促進用美容組成物が外用組成物である場合の製剤形態は特に限定されず、例えば、液剤(化粧水、ローション、美容液等)、クリーム製剤(乳液、クリーム、ジェルクリーム、バーム等)、ジェル製剤、ゼリー製剤、シャーベット製剤、エアゾール剤、フォーム製剤、スプレー製剤、貼付剤、スティック製剤、その他軟膏剤、固形剤等が挙げられる。これらの製剤は、常法、例えば第17改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。また目的とする安定性、使用感等を考慮し、適宜、W/O、O/W、W/O/W、O/W/O型エマルション等の剤型が選択できる。なお、貼付剤は、例えば、不織布シート、ゲルシート等に、美容液組成物、化粧水組成物、乳液組成物等を含浸させたものであってもよい。
【0072】
[製剤(食品組成物)]
本発明のDKK1産生促進用美容組成物が食品組成物である場合、その必須成分及び上記で説明したその他の任意成分等を、食品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて、油脂、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、増粘剤、甘味料、着色剤、香料、保存料、酸化防止剤、有機酸などの食品添加剤と共に混合して、製剤化すればよい。なお、食品添加剤は、上記のもの及び後述する具体的成分に限定されるわけではなく、適宜目的や必要性に応じて選択することができる。また、これらの食品添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。さらに、製剤には、その他の活性成分を添加することができる。
【0073】
上記油脂としては、落花生油、ココアバター、コメ胚芽油、シソ油、亜麻仁油、オリーブ油などの天然植物油等やこれらの硬化油、脂肪酸(中鎖脂肪酸を含む)のグリセリド(グリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなど)、ミツロウ等が挙げられる。中でも、ミツロウが好ましい。
【0074】
上記乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールのような多価アルコール;グリセリン脂肪酸エステル;カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。中でも、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。
【0075】
上記増粘剤としては、ローカストビーンガム、グアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナンなどが挙げられる。中でも、キサンタンガムが好ましい。
【0076】
上記甘味料としては、ショ糖、果糖、麦芽糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、甘草抽出物、ステビア加工甘味料、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。
【0077】
上記保存料としては、安息香酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチルなどが挙げられる。
【0078】
上記酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、亜硫酸水素塩、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、EDTAカルシウム二ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、トコフェロールなどが挙げられる。中でも、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、トコフェロールが好ましい。
【0079】
有機酸としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、アスパルギン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0080】
[pH]
本発明の美容組成物のpHは、通常pH3.0~8.0であり、pH3.5~7.5であることが好ましい。なお、このpHは、例えば、添加剤(外用組成物)として上述したpH調整剤の使用により調整することができる。ただし、pH測定が不能又は困難な製剤形態については、この限りではない。
【0081】
本発明のDKK1産生促進剤或いはDKK1産生促進用美容組成物の、投与方法或いは適用方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類、使用目的に応じて好適な方法を適宜選択すればよい。
【0082】
<DKK1産生促進方法>
本発明は、モノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物を使用することを特徴とする、DKK1産生促進方法も含む。ここで、上記使用においては、外用、内服等、いずれの方法による使用であってもよい。モノテルペンインドールアルカロイドを含有する特定の天然由来抽出物がDKK1産生促進作用を有することは、本発明者らが初めて見出したことである。特に、天然由来抽出物が、皮膚線維芽細胞からのDKK1産生促進能のみならず、脂肪組織に存在する間葉系幹細胞からのDKK1産生促進能も有するものである場合には、本発明の方法によると、真皮の皮膚線維芽細胞に対してDKK1産生促進効果を奏するのみならず、真皮よりも奥の脂肪組織に存在する間葉系幹細胞に対してもDKK1産生促進効果も奏する。そのため、本発明によると、真皮における美白やスキントーン向上効果のみならず、真皮の更に奥からの美白やスキントーン向上効果も得ることができる。なお、DKK1産生促進作用を有するモノテルペンインドールアルカロイドを含有する天然由来抽出物についての具体的な説明は、DKK1産生促進剤の項における説明をそのまま適用できる。
【0083】
本発明は、トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を含有するDKK1産生促進剤、DKK1産生促進用美容組成物も含む。さらに、トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分を使用することを特徴とする、DKK1産生促進方法、DKK1産生促進剤の製造方法、DKK1産生促進用美容組成物の製造方法も含む。本発明者らは、トラネキサム酸、プラセンタエキス、4-n-ブチルレゾルシノール及びハイドロキノンから成る群より選択される少なくとも1種の美白有効成分が、皮膚線維芽細胞からのDKK1産生促進能を有することを見出した。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
【0085】
[試験1:脂肪由来間葉系幹細胞におけるDKK1の産生]
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(KURABO社製KW-4109)を5×103cells/wellとなるようにStemLife(KURABO社製LWC-LL0034)を用いて96ウェルプレート(Corning社製3596)に播種し、37℃、5%CO2条件で一晩培養した。細胞の生育に問題がないことを顕微鏡観察により確認した後、表に示す植物抽出液を培地に添加し、37℃、5%CO2条件で3日間培養した。植物抽出液の添加は終濃度が、クチナシ果実エキス1が0.1%、クチナシ果実エキス2が0.1%、クチナシ果実エキス3が0.5%、アセンヤクエキスが0.02%、コーヒー種子エキスが0.5%となるようにした。培養上清を採取し、Human Dkk-1 Quantikine ELISA Kit(R&D Systems社製DKK100)を用いてDKK1を定量し、濃度を算出した。また、培養上清を採取した後の96ウェルプレートに、培地により1,000倍希釈した細胞核染色剤(DOJINDO社製Hoechst33342)を100uL/well添加し、30分後にイメージング機器を用いて核を計数し、細胞数を得た。細胞数あたりのDKK1濃度を算出し、DKK1産生能とした。対照としては、植物抽出液を添加していないものを用いた。対照におけるDKK1産生能に対する各植物抽出液におけるDKK1産生能を算出し、その値を各植物抽出液のDKK1産生促進能とし、下記表1に示した。
【0086】
【0087】
表1中の各植物エキスは、クチナシ果実エキス1及びアセンヤクエキスはエタノールを含有し、クチナシ果実エキス2、クチナシ果実エキス3及びコーヒー種子エキスは1,3-ブチレングリコールを含有する。
【0088】
表1に示すとおり、各種クチナシ果実エキス、アセンヤクエキス、コーヒー種子エキスは、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞に対して、顕著なDKK1産生促進能を示すことがわかった。
【0089】
[試験2:皮膚線維芽細胞におけるDKK1の産生]
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞に替えて、ヒト皮膚線維芽細胞(KURABO社製KF-4009)と10%FBS含有DMEM(Thermo社製11995)を用いたことを除いて、試験1と同様の方法で試験を行った。植物抽出液の添加は終濃度をクチナシ果実エキス1が0.1%、クチナシ果実エキス2が0.1%、アセンヤクエキスが0.05%となるようにした。対照におけるDKK1産生能に対する各植物抽出液におけるDKK1産生能を算出し、その値を各植物抽出液のDKK1産生促進能とし、下記表2に示した。
【0090】
【0091】
表2中の各植物エキスは、表1と同様のものを使用した。
【0092】
表2に示すとおり、各種クチナシ果実エキス、アセンヤクエキスは、ヒト皮膚線維芽細胞に対して、顕著なDKK1産生促進能を示すことがわかった。
【0093】
[試験3:皮膚線維芽細胞におけるDKK1の産生]
試験2と同様の方法で試験を行った。下記表3に示す試験成分について、対照におけるDKK1産生能に対する各成分におけるDKK1産生能を算出し、その値を各試験成分のDKK1産生促進能とし、下記表3に示した。
【0094】
【0095】
[試験4:皮膚線維芽細胞におけるDKK1の産生]
試験2と同様の方法で試験を行った。下記表4に示す濃度の植物抽出液と、試験成分及び植物抽出液の混合液について、対照におけるDKK1産生能に対する植物抽出液又は試験成分及び植物抽出液の混合液におけるDKK1産生能を算出した(DKK1産生促進能)。次に式1によりDKK1産生促進能の向上能を算出した。
[式1]DKK1産生促進能の向上能=植物抽出液又は試験成分及び植物抽出液の混合液のDKK1産生促進能-1
次に、式2によりDKK1産生促進能の向上率を算出し、下記表4に示した。
[式2]DKK1産生促進能の向上率(%)=試験成分及び植物抽出液の混合液のDKK1産生促進能の向上能/植物抽出液のDKK1産生促進能の向上能×100
【0096】
【0097】
表4に示すとおり、各種成分と共にクチナシエキスを含む美容組成物は、皮膚線維芽細胞に対して、DKK1産生促進能を向上させることがわかった。各種成分と共にクチナシエキスを含む美容組成物は相乗的にDKK1産生促進能を高め、クチナシエキス又は各種成分の美容組成物におけるDKK1産生促進能をより一層向上させた。このことからも、本発明のDKK1産生促進剤は、皮膚の表面部位である表皮から、真皮、さらに深部の皮下組織に渡り、3次元的にDKK1産生促進効果を奏することがわかった。
【0098】
[試験5:皮膚線維芽細胞におけるDKK1の産生]
試験2と同様の方法で試験を行った。下記表5に示す植物抽出液について、対照におけるDKK1産生能に対する各成分におけるDKK1産生能を算出し、その値を各試験成分のDKK1産生促進能とし、下記表5に示した。表5中の各植物エキスは、表2と同様のものを使用した。各植物抽出液の添加は終濃度が、アセンヤクエキスが0.1%、アセンヤクエキス0.1%及びコーヒー種子エキス0.125%となるようにした。
【0099】
【0100】
表5に示すとおり、アセンヤクエキスとコーヒー種子エキスの組合せは、ヒト皮膚線維芽細胞に対して、顕著なDKK1産生促進能を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の、特定の天然由来抽出物を含有するDKK1産生促進剤は、真皮の皮膚線維芽細胞に対してDKK1産生促進効果を奏するのみならず、真皮よりも奥の脂肪組織に存在する間葉系幹細胞に対してもDKK1産生促進効果も奏する。そのため、本発明によると、真皮における美白やスキントーン向上効果のみならず、真皮の更に奥からの美白やスキントーン向上効果も得ることができる。また、本発明のDKK1産生促進用剤は美容組成物として好適に用いられ、肌の美白、スキントーン向上を目的とした製品を提供することができる。
【0102】
本発明の美容組成物の処方例(製剤実施例)を以下に示す。以下は全て美容組成物であり、常法により調製することができる。なお、本発明はこれらの製剤処方例に限定されるものではない。
【0103】
処方例1(美容液)
3-O-エチルアスコルビン酸 3.0(w/w%)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 30.0
プロピレングリコール 20.0
グリセリン 4.0
クチナシ果実エキス 2.0
ローズマリー葉エキス 1.0
コンフリーエキス 0.05
精製水 残量
合計 100.0%
【0104】
処方例2(化粧水)
リン酸L-アスコルビルマグネシウム 3.0(w/w%)
プラセンタエキス 0.5
トリメチルグリシン 3.0
ヒアルロン酸 0.05
アセンヤクエキス 0.3
1,3-ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.05
ツボクサエキス 0.01
スイカズラエキス 0.01
カミツレ花エキス 5.0
精製水 残量
合計 100.0%
【0105】
処方例3(乳液)
トラネキサム酸 2.0(w/w%)
β-アルブチン 0.1
サリチル酸 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
ジプロピレングリコール 5.0
1,3-ブチレングリコール 8.0
グリセリン 3.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
キサンタンガム 0.05
メドウフォーム油 5.0
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5.0
メチルポリシロキサン 1.0
トリエタノールアミン 0.1
トコフェロール 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
エデト酸ナトリウム 0.05
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
着香剤 0.05
コーヒー種子エキス 0.5
アマチャエキス 0.1
ゲンチアナエキス 0.05
精製水 残量
合計 100.0%
【0106】
処方例4(美容ドリンク)
プラセンタ抽出物 180mg
コラーゲンペプチド 1000mg
アーティチョークエキス 50mg
プロテオグリカン 20mg
コーヒー種子エキス 1g
ウワウルシエキス 0.1g
ポリソルベート80 0.1g
エリスリトール 3g
寒天 0.5g
水あめ 0.6g
果糖 2g
酸味料 0.5g
香料 0.1g
水 残量
合計 20mL