(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】マスクトレイ、及び、太陽電池セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240314BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240314BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L31/04 266
H01L31/04 420
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2019200069
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】福田 将典
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-335587(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105155(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078164(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/047101(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0249306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の半導体基板と、前記半導体基板における少なくとも一方の主面のうち、外縁領域を除いた領域上、及び、一の辺に略平行な直線で複数の矩形状の小区画を画定する境界線領域を除いた領域上にデポアップ方式で製膜される透明導電層と、前記透明導電層上に形成された複数の集電電極と、を有する太陽電池セルの製造工程で用いるマスクトレイであって、
前記マスクトレイは、蒸着源の上方を、搬送方向に平行な辺が搬送支持手段に支持された状態で搬送されることに伴い前記製膜がされるように構成されており、
前記製膜の際に前記半導体基板に覆われる、上下方向に空間が貫通した開口部と、前記製膜の際に前記半導体基板の下方に位置するように前記開口部に一体的に固定されるように装着されるマスク体とを有し、
前記開口部は、前記製膜の際に、前記半導体基板の前記マスク体と反対側の面が前記
半導体基板の上方に位置する空間に面するように構成されており、
前記マスク体は、前記開口部に対して着脱可能であって、装着時に前記開口部の内縁部に下方から支持され、前記半導体基板の前記外縁領域を下方から保持するマスク枠と、前記半導体基板の前記境界線領域を下方から保持する境界線領域保持部と、を有し、
前記境界線領域保持部は、前記マスクトレイの前記搬送方向に対して垂直に延びるように設けられたマスクトレイ。
【請求項2】
矩形状の半導体基板における少なくとも一方の主面のうち、外縁領域を除いた領域上、及び、一の辺に略平行な直線で複数の矩形状の小区画を画定する境界線領域を除いた領域上に透明導電層を製膜し、前記透明導電層上に複数の集電電極を形成する太陽電池セルの製造方法であり、
前記透明導電層は、マスクトレイの上方に前記半導体基板を載置し、前記マスクトレイの下方に蒸着源を配置して、前記マスクトレイを、搬送方向に平行な辺が搬送支持手段に支持された状態で、前記蒸着源の上方にて搬送させることにより製膜され、
前記マスクトレイは、前記製膜の際に前記半導体基板に覆われる、上下方向に空間が貫通した開口部と、前記製膜の際に前記半導体基板の下方に位置するように前記開口部に一体的に固定されるように装着されるマスク体とを有し、
前記製膜の際に、前記開口部に対して前記半導体基板を、前記マスク体と反対側の面が前記
半導体基板の上方に位置する空間に面するように配置し、
前記マスク体は、前記開口部に対して着脱可能であって、装着時に前記開口部の内縁部に下方から支持され、前記半導体基板の前記外縁領域を下方から保持すると共に、前記半導体基板の前記境界線領域を下方から保持するものであり、
前記マスク体における、前記境界線領域を下方から保持する境界線領域保持部を、前記マスクトレイの前記搬送方向に対して垂直に延びるように設ける、太陽電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの製造工程で用いるマスクトレイ、及び、これを用いた太陽電池セルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板の主面に透明導電層を形成するにあたり、デポアップ方式で製膜することが開示されている。デポアップ方式はフェースダウン方式とも言い、製膜しようとする面が下方を向くように半導体基板を配置し、半導体基板の下方に位置する蒸着源から上方に飛来する蒸着粒子を半導体基板に着膜させる製膜方式である。デポアップ方式では、厚さ方向に空間が貫通した開口部を有するマスクトレイを用い、このマスクトレイの上方に半導体基板を載置し、マスクトレイの下方に蒸着源を配置して製膜を行う。
【0003】
特許文献1には、マスクトレイに対して載置時に生じる半導体基板の撓みに着目し、開口部における縁部(半導体基板と接触する部分)にテーパ面を設けることが開示されている。このようにテーパ面を設けることにより、半導体基板でマスクトレイにより遮蔽された領域における、半導体基板とマスクトレイとの間の空隙を減少させられる。このため、マスクトレイに載置した半導体基板に撓みが生じている場合であっても、半導体基板において本来マスクトレイに遮蔽されるべき領域に着膜してしまい、意図しない製膜がされてしまうことで太陽電池の性能が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたようにマスクトレイにテーパ面を設ける手法では、テーパ面に高い寸法精度が要求される。また、半導体基板の厚みに応じて撓み量が変わることから、マスクトレイの開口部に対する半導体基板(主面)の角度が変わるため、半導体基板の厚みごとに別個のマスクトレイが必要となる。更に、マスクトレイの自重によりマスクトレイ自体にも撓みが生じる。このような事情から、テーパ面を設ける手法では、半導体基板においてマスクトレイに遮蔽されるべき領域に意図しない製膜がされてしまうことを効果的に防止できない可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、デポアップ方式で製膜する際に、半導体基板においてマスクトレイに遮蔽されるべき領域に意図しない製膜がされてしまうことを効果的に防止できるマスクトレイ、及び、これを用いた太陽電池セルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、矩形状の半導体基板と、前記半導体基板における少なくとも一方の主面のうち、外縁領域を除いた領域上、及び、一の辺に略平行な直線で複数の矩形状の小区画を画定する境界線領域を除いた領域上にデポアップ方式で製膜される透明導電層と、前記透明導電層上に形成された複数の集電電極と、を有する太陽電池セルの製造工程で用いるマスクトレイであって、前記製膜の際に前記半導体基板に覆われる、上下方向に空間が貫通した開口部と、前記製膜の際に前記半導体基板の下方に位置するように前記開口部に装着されるマスク体とを有し、前記マスク体は、前記開口部に対して着脱可能であって、装着時に前記開口部の内縁部に下方から支持され、前記半導体基板の前記外縁領域を下方から保持するマスク枠と、前記半導体基板の前記境界線領域を下方から保持する境界線領域保持部と、を有するマスクトレイである。
【0008】
また、本発明は、矩形状の半導体基板における少なくとも一方の主面のうち、外縁領域を除いた領域上、及び、一の辺に略平行な直線で複数の矩形状の小区画を画定する境界線領域を除いた領域上に透明導電層を製膜し、前記透明導電層上に複数の集電電極を形成する太陽電池セルの製造方法であり、前記透明導電層は、マスクトレイの上方に前記半導体基板を載置し、前記マスクトレイの下方に蒸着源を配置することにより製膜され、前記マスクトレイは、前記製膜の際に前記半導体基板に覆われる、上下方向に空間が貫通した開口部と、前記製膜の際に前記半導体基板の下方に位置するように前記開口部に装着されるマスク体とを有し、前記マスク体は、前記開口部に対して着脱可能であって、装着時に前記開口部の内縁部に下方から支持され、前記半導体基板の前記外縁領域を下方から保持すると共に、前記半導体基板の前記境界線領域を下方から保持する、太陽電池セルの製造方法である。
【0009】
これらの構成によれば、マスクトレイの開口部が、半導体基板の外縁領域を下方から保持する外縁保持部と、半導体基板の境界線領域を下方から保持する境界線領域保持部とを有することから、保持された分、マスクトレイに対する載置時の半導体基板の撓みを従来よりも小さくできる。このため、従来のテーパ面を設ける手法よりも簡単な構成でありながら、半導体基板とマスクトレイとの間の空隙を減少させられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来のテーパ面を設ける手法よりも簡単な構成でありながら、半導体基板とマスクトレイとの間の空隙を減少させられる。よって、デポアップ方式で製膜する際に、半導体基板においてマスクトレイに遮蔽されるべき領域に意図しない製膜がされてしまうことを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によって製造された太陽電池セルの一例を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマスクトレイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0013】
太陽電池モジュールを形成するために、太陽電池セルが分割して形成された、短冊状である複数の素子小片を、例えば屋根板を葺くようにして、各素子小片における長辺が重なるように順次配置していく「シングリング接続(shingling connection)」を行うことのできる太陽電池セルがある。このタイプの太陽電池セルは、例えば特表2017-517145号公報に記載されている(
図1、
図2A等参照)。本実施形態に係る製造工程では、前記シングリング接続を行うことのできる太陽電池セルを好適に製造できる。
【0014】
次に、本実施形態に係る製造工程で製造される太陽電池セルの層構造について説明する。ただし、この層構造は公知であるため簡単に説明する。本実施形態に係る太陽電池セルはヘテロ接合太陽電池に属する。ヘテロ接合太陽電池は、半導体基板(単結晶シリコン基板)の両面に、導電型シリコン系薄膜を備える結晶シリコン太陽電池である。この太陽電池は、結晶シリコン基板上の一方の面にn型シリコン系薄膜を備え、他方の面にp型シリコン系薄膜を備え、結晶シリコン基板と前記n型シリコン系薄膜または前記p型シリコン系薄膜との間に真性(i型)シリコン薄膜を有するヘテロ接合太陽電池が一例として挙げられる。本実施形態では、n型シリコン系薄膜が太陽電池セルにおける受光面側に備えられている。
【0015】
ヘテロ接合太陽電池は、前記導電型シリコン系薄膜を備えた光電変換部上に透明導電層(「TCO層」とも言う)を有する。この透明導電層は、光電変換部において光生成キャリアを集電電極へ輸送する。透明導電層は、CVD法や、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法により形成される。
【0016】
ここで、透明導電層を形成する際に、何らの対策も施さないと、透明導電層が本来形成されるべき側の製膜面を表面とした場合、透明導電層が側面や裏面にも回り込んで意図しない形成がされてしまう。そうなると、表裏の透明導電層がつながって、太陽電池の表面と裏面との間で短絡を生じてしまい不都合である。このような透明導電層間の短絡を防止するため、本実施形態に係る製造工程では、透明導電層3を形成する際にマスクトレイ5を用いる。このマスクトレイ5で半導体基板2の外縁領域21を遮蔽しつつ、デポアップ方式で製膜を行うことにより透明導電層3を形成する。
【0017】
本実施形態に係る太陽電池セル1は、例えば、
図1(a)(b)に示すような形態である。この太陽電池セル1は、矩形状の半導体基板2と、前記透明導電層3と、前記透明導電層3上に形成された複数の集電電極4とを有する。なお、前記「矩形」には、長方形または正方形のほか、角部に面取りやアールを有する形状も含む。集電電極4としては、
図1(b)において上下方向に示されたバスバー電極41と、バスバー電極41に接続される多数のフィンガー電極42が含まれる。また、図示していないが、太陽電池セル1において集電電極4が形成された面と逆側の面には裏面電極が形成されている。
【0018】
透明導電層3は、半導体基板2における少なくとも一方の主面のうち、当該主面における外縁領域21(
図1(b)に二点鎖線で示す領域のうち外周部分)、及び、境界線領域22(
図1(b)に二点鎖線で示す領域のうち内側部分)を除いた領域上に設けられている。本実施形態の透明導電層3は両方の主面に設けられている。境界線領域22は、主面における一の辺(
図1(b)において上下方向に延びる辺のうち一方)に略平行な直線で複数の矩形状の小区画を画定する領域である。シングリング接続を行うための短冊状である素子小片13は、
図1(b)に一点鎖線で示した直線である切断線Cの位置において、太陽電池セル1における境界線領域12(
図1(a)参照、半導体基板2における境界線領域22の相当部分)を切断することにより形成される。すなわち、前記複数の矩形状の小区画が個々に切り分けられることで、複数の素子小片13が形成される。
【0019】
図1(b)に示した例は、1枚の太陽電池セル1につき境界線領域12が2箇所に設けられており、境界線領域12が切断線Cで分割されて3枚の素子小片13を形成できるものである。ただし、境界線領域12(22)の形成数及び素子小片13の分割数は特に限定されない。また、図示の例では3枚の素子小片13は略同一形状であるが、例えば半導体基板2の一の辺に近い素子小片13、他の辺に近い素子小片13、半導体基板2の内側部分である素子小片13の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
【0020】
本実施形態のマスクトレイ5は
図2に示すような板状体であって、枠部51とマスク体52とを備える。枠部51は、デポアップ方式においてマスクトレイ5の下方に位置する蒸着源から上方に飛来する蒸着粒子が通過する空間5Sを囲むように形成されている。空間5Sの平面視における形状は、半導体基板2において外縁領域21を除いた部分の形状と一致しており、本実施形態では矩形状である。
【0021】
平面視において枠部51に囲まれており前記空間5Sを含む部分が開口部53である。
図2に示すように、各開口部53に対して半導体基板2が載置される(1枚だけを図示)。つまり各開口部53は、製膜の際に半導体基板2が覆う、上下方向(
図2のZ方向)に空間5Sが貫通した部分である。このように半導体基板2を載置するため、各開口部53は、半導体基板2の外縁領域21を下方から保持する外縁保持部531を有する。本実施形態の外縁保持部531は、開口部53に装着されたマスク体52を介して、間接的に半導体基板2を保持する。外縁保持部531は、
図3(b)に示すように、枠部51における空間5Sに面した部分で他の部分(空間5Sから離れた部分)よりも一段低く形成された部分である。この外縁保持部531の上面5311は、枠部51の上面よりも下方に位置した水平面(
図2のX及びY方向に沿う面)を有している。
【0022】
なお説明の都合上、マスクトレイ5の形状を、
図2に示すように、開口部53が4箇所であって平面視で漢字の「田」形に示したが、マスクトレイ5の形状はこれに限定されるものではなく、開口部53の行方向(
図2に示すX方向)及び列方向(
図2に示すY方向)の形成数は適宜設定することができる。
【0023】
マスク体52は平板状であって、各開口部53に装着される。具体的に、マスク体52は各開口部の外縁保持部531の上面に載置される。本実施形態のマスクトレイ5では開口部53が4箇所形成されているため、マスク体52は開口部53の形成数に一致した数量の4枚が用いられる。マスク体52は、枠部51において空間5Sを上方から覆うように設けられている。
【0024】
マスク体52は、四角枠状(本実施形態では正方形枠状)のマスク枠521と、マスク枠521のうち対向する2辺を結び、対向する他の2辺に対して平行に延びる境界線領域保持部522とを有している。本実施形態では、1枚の太陽電池セル1が分割されて3枚の素子小片13を形成できるように構成されていることから、境界線領域保持部522はこれに一致して2本形成されている。マスク枠521の4辺に対応する部分は一体に形成されている。また、マスク枠521と境界線領域保持部522は一体に形成されている。このため、マスク体52は一体の板状体である。マスク体52は、例えば、ステンレス合金やアルミニウム合金等の金属板から形成される。太陽電池セル1が角部に面取りやアールを有する形状である場合、それに合わせてマスク体52も、マスク枠521における角部に前記面取りやアールに対応した形状とできる。
【0025】
マスク体52は開口部53への装着状態において、平面視及び底面視で前記空間5Sを分断している。本実施形態では、1箇所の開口部53に2本の境界線領域保持部522が位置するため、空間5Sは3つに分断されている。
【0026】
マスク体52は平板状であることから、マスク体52の上面も平坦面となっている。このマスク体52の上面が半導体基板2の下面に当接することで、マスク体52が枠部51と共に半導体基板2を保持する。これにより、マスクトレイ5において半導体基板2を安定的に保持できる。マスク体52の上面は開口部53への装着状態において、枠部51の上面よりも一段低く形成されている。このため、マスクトレイ5において低部である外縁保持部531(マスク体52が位置した状態)に半導体基板2が嵌り込むことによって、半導体基板2を面方向(
図2のX及びY方向)にずれないように保持できる。
【0027】
このように構成されたマスクトレイ5において、枠部51における外縁保持部531、及び、マスク体52のマスク枠521は、半導体基板2の外縁領域21を下方から保持する。これにより、半導体基板2における外縁領域21が蒸着源から確実に遮蔽される。このため製膜後、太陽電池セル1における外縁領域11において、透明導電層3が形成されないようにできる。更に、境界線領域保持部522は、半導体基板2の境界線領域22を下方から保持する。これにより、半導体基板2における境界線領域22が蒸着源から確実に遮蔽される。このため製膜後、太陽電池セル1における境界線領域12において、透明導電層3が形成されないようにできる。本実施形態の透明導電層3は両方の主面に設けられる。このため、本実施形態のマスクトレイ5を用いて一方の主面に対して透明導電層3を形成した後、半導体基板2を裏返し、他方の主面に対して透明導電層3を形成する。
【0028】
本実施形態のマスクトレイ5を用いることで、枠部51における外縁保持部531、及び、マスク体52のマスク枠521が半導体基板2の外縁領域21を下方から保持できると共に、マスク体52の境界線領域保持部522が半導体基板2の境界線領域22を下方から保持できる。このため、マスクトレイ5に対する載置時の半導体基板2の撓み(特に半導体基板2の平面視における中央部での撓み)を従来よりも小さくできる。よって、本実施形態では、外縁保持部531の上面5311は水平面で足りることから、従来のように(例えば特許文献1に記載)、高い寸法精度が要求されるテーパ面を設ける手法よりも簡単な構成で、半導体基板2とマスクトレイ5との間の空隙を減少させられる。空隙の減少により、半導体基板2において本来マスクトレイ5に遮蔽されるべき領域(具体的には外縁領域21)に着膜してしまい、意図しない製膜(太陽電池セル1の機能の観点で余計な製膜)がされてしまうことで、太陽電池モジュールの性能が低下することを抑制できる。
【0029】
また特に、シングリング接続を行うことのできる太陽電池セル1を製造する際には、本実施形態のマスクトレイ5を用いることにより、シングリング接続用の各素子小片13において外縁となる領域(具体的には外縁領域21及び境界線領域22)に透明導電層3を形成しないようにすることと、半導体基板2(複数の素子小片13に分離する前)の撓み防止とが同時に行えるため有利である。
【0030】
また、本実施形態では、
図1(b)に示すように、外縁領域21及び境界線領域22によって、透明導電層3が複数(具体的には3つ)の領域に分かれて形成される。複数の透明導電層3の各々が物理的に離れていることから、複数の素子小片13を形成すべく切断線Cの位置で切断を行う際においても、透明導電層3の存在しない箇所を切断すればよいため、切断に伴って意図しない表裏導通が発生することがない。この点でも本実施形態は有利である。
【0031】
また、開口部53に対してマスク体52が着脱可能とされているため、仮に枠部51が撓んだとしても、半導体基板2に当接するマスク体52に前記撓みが伝播しにくく、平らな状態を維持できる。このため、意図しない製膜を有効に防止できる。また、マスク体52は枠部51に対して載置しているだけなので、マスク体52の交換が容易である。このため例えば、成膜条件に合わせて、形状の異なるマスク体52に交換できる。また、枠部51からマスク体52を取り外して、枠部51またはマスク体52を清掃できる。このため、清掃の作業性が良い。更に、必要な場合は、マスク体52を装着せずに枠部51単独で製膜を行うこともできる。このため、多様な製膜条件に対応させられる。
【0032】
また、枠部51(開口部53)に対して装着状態のマスク体52を一体的に固定することも可能である。この場合、マスクトレイ5自体の剛性を向上させられる。例えばマスクトレイ5を支持するためのレール等によりマスクトレイ5の周縁部が支持された状態において、マスクトレイ5の平面視における中央部が、マスクトレイ5の自重によって下方に撓むことを抑制できる。従って、マスクトレイ5自体の撓みによる、半導体基板2とマスクトレイ5との位置ずれが生じにくいことから、精度の高い製膜が可能である。
【0033】
このことに関し更に説明する。蒸着源の上方をマスクトレイ5が搬送されることに伴い透明導電層3の製膜がなされる場合、マスクトレイ5の辺のうち搬送方向(ここでは
図2のX方向とする)に平行な一対の辺5X,5Xの近傍部が搬送支持手段(ローラーコンベア等、図示しない)により支持された状態で搬送される。この際、マスクトレイ5の辺のうち搬送方向に垂直な方向(ここでは
図2のY方向とする)の一対の辺5Y,5Yは下方から支持されずに浮いた状態となる。このため、マスクトレイ5の前記交差する各辺5Y,5Yを搬送方向(X方向)から見た場合、マスクトレイ5のY方向における中央部が下方向に撓みがちである。これに対し、本実施形態のように境界線領域保持部522を搬送方向に対して垂直に延びるように設けることで、マスクトレイ5の曲げ強度を向上させられる。従って、マスクトレイ5の前記撓みを抑制できる。
【0034】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 太陽電池セル
11 太陽電池セルの外縁領域
12 太陽電池セルの境界線領域
13 素子小片
2 半導体基板
21 半導体基板の外縁領域
22 半導体基板の境界線領域
3 透明導電層
4 集電電極
41 バスバー電極
42 フィンガー電極
5 マスクトレイ
5S 空間
51 枠部
52 マスク体
521 マスク枠
522 境界線領域保持部
53 開口部
531 外縁保持部
C 切断線