(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】車両走行条件評価方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240314BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
G01M17/02
(21)【出願番号】P 2019223865
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【復代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】諫山 直生
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-020430(JP,A)
【文献】特開2019-127196(JP,A)
【文献】特開2015-229433(JP,A)
【文献】特開2011-016483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 -17/10
G01C 21/00 -21/36
B60W 10/00 -60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を複数の区画領域に分割し、
車両の位置情報と
速度を含む走行情報とを互いに関連付けしながら複数取得し、
取得した複数の前記位置情報および前記走行情報を記憶し、
記憶された複数の前記位置情報および前記走行情報に基づいて、前記区画領域単位で走行シビアリティに関連する複数の指標値として摩擦エネルギーを算出し、
前記区画領域毎に前記複数の指標値を平均化し、
平均化した指標値を走行シビアリティとして画面に表示した地図上に識別可能に表示する
ことを含み、
前記区画領域毎の前記複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて前記複数の指標値のそれぞれに重み付けを行
い、
前記区画領域は、三角形、六角形、または八角形である、車両走行条件評価方法。
【請求項2】
前記重み付けを行うための走行条件は、走行距離を含む、請求項1に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項3】
前記重み付けを行うための走行条件は、車両情報を含む、請求項1または請求項2に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項4】
前記重み付けを行うための走行条件は、タイヤ情報を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項5】
前記位置情報および前記走行情報は、前記車両内に設置したモバイル機器から取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項6】
前記モバイル機器は、スマートフォンであり、
前記位置情報は、衛星測位システムおよび前記スマートフォンの基地局の両方から取得する、請求項5に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項7】
前記複数の指標値は、前記スマートフォンがインターネット上で取得した、前記車両が位置する場所の環境情報によって補正される、請求項6に記載の車両走行条件評価方法。
【請求項8】
車両の位置情報を検出する受信部と、
前記車両の
速度を含む走行情報を計測する計測部と、
地図情報と、前記地図情報に基づいて画面上に表示する地図を分割してなる複数の区画領域と、互いに関連付けた前記位置情報および前記走行情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した前記地図情報に基づいた地図を表示する表示部と、
前記記憶部に記憶された複数の前記位置情報および前記走行情報に基づいて複数の指標値として摩擦エネルギーを算出し、算出した前記複数の指標値を前記区画領域毎に平均化して走行シビアリティとして前記表示部に表示した地図中に識別可能に表示させる処理部と
を備え、
前記処理部は、前記区画領域毎の前記複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて前記指標値に重み付けを行
い、
前記区画領域は、三角形、六角形、または八角形である、車両走行条件評価システム。
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行条件評価方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の加速度を測定し、測定した加速度からタイヤの耐摩耗性能評価指標として走行シビアリティ(DSN:Driving Severity Number)を算出するようにした耐摩耗性能評価方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1では、走行シビアリティとして加速度のみを考慮するにとどまる。また、車両の走行場所の違いで走行シビアリティがどのように変化するのかまでは考慮されていない。さらに、走行条件についても考慮されておらず、測定された加速度が走行条件によらずに全て一律に取り扱われるため、走行距離、車両情報、およびタイヤ情報などの走行条件に応じた精度の高い評価がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両走行条件評価方法及びシステムにおいて、車両の走行場所および走行条件に応じて走行シビアリティを評価することにより、評価精度を向上し、視覚化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、地図情報を複数の区画領域に分割し、車両の位置情報と速度を含む走行情報とを互いに関連付けしながら複数取得し、取得した複数の前記位置情報および前記走行情報を記憶し、記憶された複数の前記位置情報および前記走行情報に基づいて、前記区画領域単位で走行シビアリティに関連する複数の指標値として摩擦エネルギーを算出し、前記区画領域毎に前記複数の指標値を平均化し、平均化した指標値を走行シビアリティとして画面に表示した地図上に識別可能に表示することを含み、前記区画領域毎の前記複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて前記複数の指標値のそれぞれに重み付けを行い、前記区画領域は、三角形、六角形、または八角形である、車両走行条件評価方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、複数の位置情報および走行情報に基づいて算出した複数の指標値の平均値を走行シビアリティとして地図上で区画領域毎に識別可能に表示させることができる。これにより、区画領域毎に一目で走行シビアリティを把握することができる。そして、タイヤの摩耗状態の推測などの種々の用途に対して、得られた情報を利用することができる。走行情報とは、車両が走行した際に得られる情報全般を示し、例えば車両の加速度、速度、および方位角などを示す。走行条件とは、走行情報に影響を与え得る条件のことをいい、例えば後述するように走行距離、車両情報、タイヤ情報などを含む。上記方法では、複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて複数の指標値のそれぞれに重み付けを行うことで、特定の走行条件を満たす指標値のデータ価値を高めることができる。従って、車両の走行場所および走行条件に応じて走行シビアリティを評価することにより、評価精度を向上し、視覚化することができる。
【0008】
前記重み付けを行うための走行条件は、走行距離を含んでもよい。
【0009】
この方法によれば、走行条件として走行距離を考慮できる。走行距離の考慮は、例えば相対的に長距離を走った走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしてもよい。相対的に長距離を走った走行情報は、データとしての信頼性が高いためである。
【0010】
前記重み付けを行うための走行条件は、車両情報を含んでもよい。
【0011】
この方法によれば、走行条件として車両情報を考慮できる。車両情報は、車両メーカ、車種、車名、およびエンジン種類などを含む。例えば、販売台数の多い車両情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしてもよい。これにより、市場のメイン層が優位となる評価を行うことができ、市場に即した評価を行うことができる。
【0012】
前記重み付けを行うための走行条件は、タイヤ情報を含んでもよい。
【0013】
この方法によれば、走行条件としてタイヤ情報を考慮できる。タイヤ情報は、タイヤメーカ、タイヤ名、タイヤ種類、タイヤ幅、扁平率、リム径、ロードインデックス、速度記号、および空気圧などを含む。例えば、販売本数の多いタイヤ情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしてもよい。これにより、市場のメイン層が優位となる評価を行うことができ、市場に即した評価を行うことができる。
【0014】
前記位置情報および前記走行情報は、前記車両内に設置したモバイル機器から取得してもよい。
【0015】
この方法によれば、位置情報および走行情報を取得するための専用機器を準備する必要がなく、位置情報および走行情報を簡易に取得できる。モバイル機器は、例えばスマートフォン、ノートパソコン、その他のポータブル端末であり得る。
【0016】
前記モバイル機器は、スマートフォンであってもよく、前記位置情報は、衛星測位システムおよび前記スマートフォンの基地局の両方から取得してもよい。
【0017】
この方法によれば、トンネルや地下などの衛星測位システムを使用し難い場所においてもスマートフォンの基地局から位置情報を取得できるので、取得する位置情報の精度を向上できる。
【0018】
前記複数の指標値は、前記スマートフォンがインターネット上で取得した、前記車両が位置する場所の環境情報によって補正されてもよい。
【0019】
この方法によれば、環境情報を考慮して走行シビアリティを評価できる。環境情報は、車両が位置する地域の気温、湿度、天気、季節、および気候などを含む。走行シビアリティは、このような環境情報によって大きく影響を受けるため、走行シビアリティの評価において環境情報を考慮できることは有用である。
【0020】
本発明の第2の態様は、車両の位置情報を検出する受信部と、前記車両の速度を含む走行情報を計測する計測部と、地図情報と、前記地図情報に基づいて画面上に表示する地図を分割してなる複数の区画領域と、互いに関連付けた前記位置情報および前記走行情報とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した前記地図情報に基づいた地図を表示する表示部と、前記記憶部に記憶された複数の前記位置情報および前記走行情報に基づいて複数の指標値として摩擦エネルギーを算出し、算出した前記複数の指標値を前記区画領域毎に平均化して走行シビアリティとして前記表示部に表示した地図中に識別可能に表示させる処理部とを備え、前記処理部は、前記区画領域毎の前記複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて前記指標値に重み付けを行い、前記区画領域は、三角形、六角形、または八角形である、車両走行条件評価システムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両走行条件評価方法及びシステムにおいて、車両の走行場所および走行条件に応じて走行シビアリティを評価することにより、評価精度を向上し、視覚化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両走行条件評価システムのブロック図である。
【
図2】
図1の第2表示部に地図を表示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る車両走行条件評価システムを示す。このシステムは、各車両に設置されるクライアント装置1と、インターネットなどの通信ネットワーク2を介して接続されるサーバ装置3とを備える。
【0025】
クライアント装置1は、例えば、スマートフォン、ノートパソコン、その他のポータブル端末などのモバイル機器または車両に固定設置される専用機器であり得る。本実施形態では、クライアント装置1がスマートフォンである場合を例に以下説明する。
【0026】
クライアント装置(スマートフォン)1は、後述する各センサの計測値を処理しやすいように車両内でスマートフォン1の頭部を車両前方へ向けて水平に固定される。ただし、スマートフォン1の設置態様は、これに限定されない。スマートフォン1が車両前方または水平方向から傾斜して固定された場合でも傾斜角度に応じて後述する各センサの測定値を補正することで正確な計測値が得られる。
【0027】
スマートフォン1は、受信部4、計測部5、第1記憶部6、第1表示部7、第1処理部8、および第1通信部9を備える。
【0028】
受信部4は、衛星測位システムの衛星から送信される信号を受信し、受信した信号のデコードなどの処理を行い、第1処理部8に出力する。衛星測位システムは、全地球航法衛星システムまたは地域衛星系のシステムであってもよく、特にその種類を限定されない。例えば、衛星測位システムは、GPS(Global Positioning System)、GLONAS(Global Navigation Satellite System)、BNSS(BeiDou Navigation Satellite System)、Galileo、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、NavIC(Navigation Indian Constellation)、および、DORIS(Doppler Orbitography and Radiopositioning Integrated by Satellite)などを含む。また、衛星測位システムは、これらのうちの複数のシステムを併用してもよい。受信部4は、車両の位置情報を取得するためのものである。また、位置情報の変化に基づいて車両の速度および方位角を算出できる。速度および方位角の算出は、第1処理部8にて行われる。また、スマートフォン1は、方位角を測定可能な地磁気センサを別途備えてもよい。
【0029】
計測部5は、加速度センサ11およびジャイロセンサ12を備える。加速度センサ11およびジャイロセンサ12は、一般的なスマートフォンに搭載されているものであり得る。
【0030】
加速度センサ11は、静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式、熱検知方式など、いずれの方式のものであってもよい。加速度センサ11によって、直交する3軸方向の加速度を計測できる。本実施形態では、車両内においてスマートフォン1の頭部を車両前方へ向けて水平に固定するため、上記3軸方向は車両前後方向と車幅方向と車高方向とを示す。
【0031】
ジャイロセンサ12は、スマートフォン1の姿勢を感知するセンサである。本実施形態では、ジャイロセンサ12によって、上記3軸周りの角速度を計測する。また、ジャイロセンサ12によって計測された角速度から、公知の方法により上記方位角を補正できる。方位角の補正は、第1処理部8にて行われる。
【0032】
本実施形態では、上記のようにして、上記3軸方向の加速度、速度、および方位角を計測または算出し、走行情報として第1記憶部6に記憶する。走行情報とは、車両が走行した際に得られる情報全般を示す。上記車両の加速度、速度、および方位角などは走行情報の例である。
【0033】
第1通信部9は、基地局10を介して通信ネットワーク2に接続し、車両が位置する場所の環境情報をインターネットから取得する部分である。環境情報は、気温、湿度、天気、季節、および気候などを含む。走行シビアリティは、このような環境情報によって影響を受けるため、本実施形態では走行シビアリティの評価において後述するように環境情報を考慮する。
【0034】
本実施形態では、第1通信部9が基地局10を介して通信ネットワーク2に接続することから、衛星測位システムだけでなく基地局10からも位置情報を取得できる。例えば、通常は受信部4を介して衛星測位システムを利用することにより位置情報を取得するが、衛星測位システムが利用し難いトンネルまたは地下などの場所においては第1通信部9を介して基地局10から位置情報を取得するようにしてもよい。
【0035】
第1記憶部6は、地図情報、位置情報、走行情報、および環境情報を格納するものであり、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリ(CD-ROMなどのような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されることができる。
【0036】
第1記憶部6には、予め、地図情報が複数の区画領域に分割された状態で記憶されている。区画領域は、正方形に限らず、長方形、三角形、六角形、八角形など均等に分割できる種々の形状を採用できる。区画領域は、例えば、一辺1kmの正方形とし、これを最小単位とすることができる。また区画領域は、これらの形状に限らず、雲形などの自由な形状を採用することもできる。さらに区画領域は、全て同一形状としなくても、種々の形状を組み合わせることもできる。また、第1記憶部6は、後述するように、区画領域毎に車両の位置情報、走行情報、および環境情報を関連付けて時系列データとして記憶する。
【0037】
第1処理部8は、CPU(Central Processing Unit)を備え、受信部4、計測部5、第1記憶部6、第1表示部7、および第1通信部9と接続されている。
【0038】
第1処理部8は、受信部4および第1通信部9(即ち基地局10)から入力された信号に基づいて、第1記憶部6に記憶したプログラムを実行し、車両の現在位置を特定する。また第1処理部8は、車両の現在位置と、その周辺の地図とを第1表示部7に表示させる。さらに第1処理部8は、車両の現在位置と計測部5で得られた車両の走行情報とを互いに関連付け、区画領域毎に第1記憶部6に時系列データとして記憶させる。このとき、天気および気温などの環境情報もこれらに関連付けられて時系列データとして第1記憶部6に記憶される。第1記憶部6に記憶された情報は、走行終了後に第1通信部9を介してサーバ装置3へと自動的に送信される。
【0039】
第1表示部7は、地図、状態表示画面、および入力画面などを表示するためのものであり、例えばタッチパネルディスプレイである。
【0040】
第1表示部7に表示する地図は自由に、拡大、縮小及び移動させることができる。
【0041】
第1表示部7に表示する状態表示画面には、位置情報として、例えば緯度、経度、国、地域、位置情報の精度(例えば、誤差として推定される距離)、および衛星測位システムまたは基地局10のいずれから位置を推定しているかなどが表示される。また、状態表示画面には、走行情報として、例えば3軸の加速度、速度、および方位角などが表示される。また、状態表示画面には、環境情報として、天気および気温などが表示される。また、状態表示画面には、走行条件が表示されてもよい。走行条件とは、走行情報に影響を与え得る条件のことをいう。本実施形態では、走行条件は、走行距離と、車両情報と、タイヤ情報とを含む。走行距離は衛星測位システムからの情報に基づいて取得され、車両情報とタイヤ情報はユーザが後述するように入力することによって得られる。
【0042】
第1表示部7に表示する入力画面には、例えば車両情報と、タイヤ情報と、その他情報とを入力する入力欄が表示される。車両情報は、車両メーカ、車種、車名、およびエンジン種類などを含む。タイヤ情報は、タイヤメーカ、タイヤ名、タイヤ種類、タイヤ幅、扁平率、リム径、ロードインデックス、速度記号、およびタイヤ空気圧などを含む。その他情報は、乗車人数などを含む。これらの入力情報は、選択式またはフリー入力式で入力画面上の入力欄に入力可能となっている。また、これらの入力情報は、必ずしもすべて入力する必要はなく、入力されない場合でも走行シビアリティの評価は可能である。
【0043】
サーバ装置3は、第2通信部13、第2記憶部14、第2表示部15、および第2処理部16を備える。
【0044】
第2通信部13は、通信ネットワーク2を介してスマートフォン1の第1通信部9から送信された情報を受信する。また、後述するようにしてプログラムを実行して得られた結果を、通信ネットワーク2を介してスマートフォン1の第1通信部9へと送信する。
【0045】
第2記憶部14は、スマートフォン1の第1記憶部6と同様の構成とすることができる。第2記憶部14には、コンピュータプログラムが格納され、各スマートフォン1から送信されてきた車両の位置情報、走行情報、および環境情報が関連付けられた状態で記憶される。
【0046】
第2表示部15は、第1表示部7と同様に、例えばタッチパネルディスプレイで構成され、地図などを表示できるようになっている。地図を表示する場合、自由に拡大、縮小及び移動させることができる点も同様である。
【0047】
第2処理部16は、CPUを備え、第2記憶部14とは互いに接続されている。また第2処理部16は、第2記憶部14に記憶したプログラムに従って以下の処理を実行する。
【0048】
各スマートフォン1から送信された車両の位置情報、走行情報、および環境情報を第2記憶部14に記憶させる。第2記憶部14に記憶させたこれらの情報に基づいて、区画領域毎に複数の指標値を算出して平均化する。ここでは、区画領域単位で検出された走行情報を、RMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)により指標化している。
【0049】
走行情報のうち速度に基づいて指標化を行う場合、次のようにして指標値を算出する。速度が大きいと、タイヤの回転数が多くなるため、走行抵抗RSが増大する。走行抵抗RSが増大すると、それに伴い摩擦エネルギーEも増大する。すなわち、走行距離Dとスリップ率Sとから、E=RS×D×Sによって摩擦エネルギーEが算出される。そこで、算出された摩擦エネルギーEをRMSにより指標化する。このようにして得られた指標値は、タイヤの摩耗量の予測に利用できる。摩擦エネルギーEの大きさに比例してタイヤの摩耗量が大きくなるので、得られた指標値はタイヤの摩耗量として捉えることができる。
【0050】
走行情報のうち加速度に基づいて指標化を行う場合、検出された加速度を単位距離当たりの摩擦エネルギーEに換算し、得られた摩擦エネルギーEをRMSにより指標化する。このようにして得られた指標値は、タイヤの摩耗量の予測に利用できる。摩擦エネルギーの大きさに比例してタイヤの摩耗量が大きくなるので、得られた指標値はタイヤの摩耗量として捉えることができる。この場合も、上記速度の場合と同様、得られた指標値はタイヤの摩耗量として捉えることができる。
【0051】
上記指標値の算出に際して全ての指標値は一律に平均化されるのではなく、走行条件に応じて重み付けが行われる。本実施形態では、走行条件として、前述のように、走行距離、車両情報、およびタイヤ情報を考慮している。
【0052】
走行距離に応じた重み付けでは、計測したデータの信頼性の観点から、相対的に長距離を走った走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けを行う。また、著しく短い走行距離や著しく長い走行距離を走った走行情報の指標値の価値が低くなるように重み付けを行ってもよい。
【0053】
例えば、ある区画領域において、走行距離が30kmの走行情報の指標値が0.8、走行距離が50kmの走行情報の指標値が1、走行距離が10kmの走行情報の指標値が0.9、および走行距離が15kmの走行情報の指標値が0.7のデータを取得したとする。その場合、以下の式(1)に示すように、走行距離に応じた係数を積算することにより、その区画領域における平均の指標値Z1を算出し、指標値Z1をその区画領域における走行シビアリティとして評価する。
【0054】
【0055】
車両情報に応じた重み付けでは、販売台数の多い車両情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けを行う。
【0056】
例えば、ある市場において車種別の販売台数を比較すると、セダンが150万台、SUV(Sport Utility Vehicle)が400万台、ミニバンが50万台の販売台数であったとする。また、セダンの走行情報の指標値が0.8、SUVの走行情報の指標値が1、およびミニバンの走行情報の指標値が0.9のデータを取得したとする。その場合、以下の式(2)に示すように、車種別の販売台数に応じた係数を積算することにより、その区画領域における平均の指標値Z2を算出し、指標値Z2をその区画領域における走行シビアリティとして評価する。
【0057】
【0058】
タイヤ情報に応じた重み付けでは、販売台数の多い車両情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けを行う。
【0059】
例えば、ある市場においてタイヤ種類別の販売台数を比較すると、サマータイヤが4000万本、ウインタータイヤが3000万本、およびオールシーズンタイヤが3000万本の販売台数であったとする。また、サマータイヤの走行情報の指標値が0.8、ウインタータイヤの走行情報の指標値が1、およびオールシーズンタイヤの走行情報の指標値が0.9のデータを取得したとする。その場合、以下の式(3)に示すように、タイヤ種類別の販売台数に応じた係数を積算することにより、その区画領域における平均の指標値Z3を算出し、指標値Z3をその区画領域における走行シビアリティとして評価する。
【0060】
【0061】
上記3つの走行条件による重み付けは、走行条件別に単独で行われもよいし、複合的に行われてもよい。
【0062】
上記処理は、第2処理部16に限らず、第1処理部8で行うこともできる。この場合、第1処理部8で演算した結果を第2処理部16で利用すればよい。
【0063】
なお、得られた情報の指標化は、RMSに限らず、最小二乗法または標準偏差などによって行うようにしてもよい。
【0064】
また、上記のようにして走行情報が指標化されれば、環境情報に基づいて指標値を補正してもよい。すなわち、得られた指標値に、環境情報から決定された補正係数を乗算することにより補正してもよい。これにより、指標値をより一層、タイヤの摩耗量を予測するのに適した値とすることができる。当該補正は、第2処理部16によって行われてもよい。
【0065】
環境情報に基づく指標値の補正では、例えば、天気が雨である場合には路面が滑りやすくなっているため、タイヤの摩耗は少なくなると推測することができる。天気が雪である場合には、路面がさらに滑りやすく、タイヤの摩耗はさらに少なくなると推測できる。また、温度が変化すれば、タイヤの摩耗性能も変化することが知られている。したがって、得られた環境情報に基づいて、走行情報から算出された指標値を補正する。例えば、あるタイヤにおいて実験などで得られた環境情報とタイヤの摩耗量との関係に基づいて補正係数を決定することで、指標値(タイヤの摩耗量)を精度良く推定することが可能となる。
【0066】
このようにして走行情報および環境情報に基づいて区画領域毎の指標値が算出及び補正されて蓄積されれば、画面に表示した地図上に、設定範囲毎に指標値に対する重み付きの平均値を走行シビアリティとして識別表示する。
【0067】
設定範囲は、自由に変更することができる。設定範囲を区画領域よりも大きいサイズとする場合、設定範囲中に含まれる全ての区画領域の指標値の重み付き平均値をさらに平均化するなどにより対応すればよい。
【0068】
図2は広域地図、
図3はその一部を拡大した詳細地図である。詳細地図では、設定範囲と区画領域とが合致している。設定範囲毎に、走行シビアリティが識別可能に表示されている。
【0069】
例えば、指標値(詳細には指標値の重み付き平均値)が大きい、つまりタイヤの摩耗量が大きいと判断される範囲では地図の背景色を「赤」などとし、指標値が小さくなるに従って背景色を薄くしたり、背景色を他の色としたりすることができる。背景色を徐々に薄くする場合、指標値の違いを濃淡の違いとして表現できる。色彩を変更する場合、指標値の違いによる複数の範囲を設定し(0~100,100~200など)、範囲毎に異なる色彩を設定する。そして、各区画領域の指標値がいずれの範囲に属するのかで、画面上に表示する色彩を変更すればよい。
図3では、ハッチングの間隔の違いにより背景色の濃淡が相違していることを示している。
【0070】
また、地図を縮小して広域を表示させるのであれば、自動的に設定範囲を拡大するようにしてもよい。この場合、設定範囲には複数の区画領域が含まれるので、これら全ての区画領域の指標値を平均すればよい。設定範囲内の全ての走行情報から指標値を算出し直すこともできる。
図2では、各設定範囲に複数(4つ)の区画領域が含まれており、それら区画領域の指標値の重み付き平均値に基づいて設定範囲における走行シビアリティが識別可能に表示されている。ハッチングの間隔が狭くなっている設定範囲が背景色の濃淡が濃いところであり、指標値が大きくなっている。ハッチングの間隔が広くなるに従って濃淡が薄くなり、指標値が小さくなっていることを示している。
【0071】
地図上での走行シビアリティの識別可能な表示は、道路単位で行うこともできる。
図4では、道路単位で走行シビアリティを識別表示している。前記同様、図中、ハッチングの間隔が狭くなるに従って濃淡が濃くなっており、走行シビアリティが大きくなっていることを示している。
【0072】
第2記憶部14に蓄積される走行情報および環境情報は国単位で管理するようにしてもよい。国単位での管理により、例えば、各国での道路事情(路面粗さや道路交通法の違いなど)を考慮することができる。環境情報は、国毎に大きく相違するため、車両の速度や加速度は同じでもタイヤの摩耗状態は大きく異なり得る。そこで、国毎に走行情報に対する補正係数を相違させるようにすればよい。また、画面に表示する地図は、国毎に表示方法を異ならせるようにしてもよい。
【0073】
上記車両走行条件評価システムを使用した車両走行条件評価方法について説明する。
【0074】
まず、ユーザは、車両情報と、タイヤ情報と、その他情報とを手動でスマートフォン1に入力する。そして、スマートフォン1を車両内でスマートフォン1の頭部を車両前方へ向けて水平に固定する。その状態で実際に車両を走行させて走行情報および環境情報を取得する。
【0075】
走行中には、位置情報と走行情報と環境情報とが関連付けられてスマートフォン1の第1記憶部6に自動的に記録され、時系列データが蓄積される。
【0076】
走行が終了すると、記録された位置情報と走行情報と環境情報とが関連付けられた状態で自動的にサーバ装置3に送信され、第2記憶部14に蓄えられる。サーバ装置3では、第2記憶部14に蓄えられた情報に基づいて走行シビアリティに関連する指標値およびその補正値が算出され、第2記憶部14に蓄積される。
【0077】
特定の区画領域の走行シビアリティとしては、蓄積された指標値またはその補正値が上記の所定の重み付けを行った上で平均化されたものが、第2表示部15に表示される。ユーザは、第2表示部15に表示される走行シビアリティを確認し、タイヤの摩耗状態の推測などの種々の用途に対して、得られた情報を利用できる。
【0078】
本実施形態によれば、複数の位置情報および走行情報に基づいて算出した複数の指標値の平均値を走行シビアリティとして地図上で区画領域毎に識別可能に表示させることができる。これにより、区画領域毎に一目で走行シビアリティを把握することができる。そして、タイヤの摩耗状態の推測などの種々の用途に対して、得られた情報を利用することができる。特に、本実施形態では、複数の指標値の平均化に際して走行条件に応じて複数の指標値のそれぞれに重み付けを行うことで、特定の走行条件を満たす指標値のデータ価値を高めることができる。従って、車両の走行場所および走行条件に応じて走行シビアリティを評価することにより、評価精度を向上し、視覚化することができる。
【0079】
走行条件に走行距離を含めているため、走行距離を考慮して走行シビアリティを評価できる。走行距離の考慮は、相対的に長距離を走った走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしている。相対的に長距離を走った走行情報は、データとしての信頼性が高いためである。
【0080】
走行条件に車両情報を含めているため、車両情報を考慮して走行シビアリティを評価できる。特に販売台数の多い車両情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしているため、市場のメイン層が優位となる評価を行うことができ、市場に即した評価を行うことができる。
【0081】
走行条件にタイヤ情報を含めているため、タイヤ情報を考慮して走行シビアリティを評価できる。特に販売本数の多いタイヤ情報を使用して取得した走行情報の指標値の価値が高くなるように重み付けしているため、市場のメイン層が優位となる評価を行うことができ、市場に即した評価を行うことができる。
【0082】
クライアント装置1としてスマートフォン1を使用しているため、位置情報および走行情報を取得するための専用機器を準備する必要がなく、位置情報および走行情報を簡易に取得できる。また、トンネルや地下などの衛星測位システムを使用し難い場所においてもスマートフォン1の基地局10から位置情報を取得できるので、取得する位置情報の精度を向上できる。
【0083】
走行シビアリティの評価に際して環境情報による補正を行っている。走行シビアリティは、環境情報によって大きく影響を受けるため、走行シビアリティの評価において環境情報を考慮できることは有用である。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0085】
前記実施形態では、得られた走行情報に基づいてタイヤの摩耗量を予測する例について説明したが、これに限らず、他の情報を予測するようにしてもよい。例えば、車両がカーブを走行する場合などの情報に基づいてタイヤの偏摩耗量を予測するようにしてもよい。
【0086】
走行シビアリティの評価は、特定の属性を持つデータを抽出して行ってもよい。特定の属性としては、例えば、走行距離、車両情報、タイヤ情報、および環境情報を利用してもよい。また、これらの特定の属性によるデータの抽出条件は、複数の属性を組み合わせて設定されてもよい。例えば、走行距離が所定距離以上であり、特定のタイヤ種類を使用し、天気が晴れのときのデータを抽出して走行シビアリティの評価を行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…クライアント装置(スマートフォン)
2…通信ネットワーク
3…サーバ装置
4…受信部
5…計測部
6…第1記憶部
7…第1表示部
8…第1処理部
9…第1通信部
10…基地局
11…加速度センサ
12…ジャイロセンサ
13…第2通信部
14…第2記憶部
15…第2表示部
16…第2処理部