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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】流体輸送パイプ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/06 20060101AFI20240314BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240314BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240314BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240314BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240314BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240314BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F16L11/06
C08L77/00
C08L23/02
C08L25/04
C08L53/00
B32B1/08 Z
B32B27/34
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019226412
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2020101281
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】18214857.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ カフィーツェル
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189736(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/094564(JP,A1)
【文献】米国特許第11254083(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/06
C08L 77/00
C08L 23/02
C08L 25/04
C08L 53/00
B32B 1/08
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液輸送パイプであって、
冷却液と接触する内層:これは、少なくとも1種の脂肪族ポリアミドと少なくとも1種の耐衝撃性改良剤とを含む成形材料から形成され、前記少なくとも1種のポリアミドは、30~90mmol/kgのアミン末端基濃度を有且つ、PA12、PA11、及びそれらのコポリアミド、混合物、及びブレンドからなる群より選択される、及び
・前記内層と直接接する少なくとも1つの外層;これは、少なくとも1種の難燃剤とともに、PA12、PA11、及びそれらのコポリアミド、混合物、及びブレンドからなる群より選択される少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含む成形材料から形成される
を含む、冷却液輸送パイプ。
【請求項2】
前記内層及び外層が、同種のポリアミドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項3】
前記ポリアミドが、30~80mmol/kgのアミノ末端基濃度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項4】
前記少なくとも1種の難燃剤が、以下からなる群より選択されるハロゲンフリーの難燃剤である:
・シアヌル酸とメラミンの反応生成物
・メラミンの縮合生成物
・ポリリン酸とメラミンの反応生成物
・ポリリン酸とメラミン縮合生成物の反応生成物
・ホスフィン酸金属塩
・リン酸エステル
及び/又はこれらの混合物
ことを特徴とする、請求項13のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項5】
前記外層が、前記成形材料の重量に対して、5~30重量%の、少なくとも1種の難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項6】
前記少なくとも1種の耐衝撃性改良剤が、エチレン-プロピレン・コポリマー、エチレン-1-ブテン・コポリマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン・コポリマー、スチレンコポリマー、スチレンブロック・コポリマー、及びそれらの混合物からなる群より選択される官能化耐衝撃性改良剤であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項7】
前記少なくとも1種の耐衝撃性改良剤が、0.1~30重量%の量で、前記内層に含まれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項8】
前記外層が、以下からなる群より選択されるさらなる添加剤を含み:
(i)0~15重量%の、少なくとも1種の可塑剤、
(ii)0.1~2重量の、少なくとも1種の安定剤、
(iii)0~5重量%の、少なくとも1種のさらなる添加剤であって、UV-安定剤、熱伝導性添加剤、難燃性相乗剤、加工助剤、潤滑剤、着色-及びマーキング剤、無機色素、有機色素、IR-吸収剤、膨張剤、及び/又はそれらの混合物からなる群より選択されるもの
ここで、添加剤(i)~(iii)の合計が、成形材料の重量に対して、0.1~22重量%となることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項9】
前記外層を形成する成形材料が、ISO307に従って測定した際、1.6~1.9の相対粘度を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項10】
前記内層を形成する成形材料が、ISO307に従って測定した際、1.8~2.3の相対粘度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項11】
前記外層が、0.1~1.5mmの範囲の厚みを有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項12】
前記冷却液輸送パイプが、その内層と外層の間に、接着剤層を有さないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項13】
前記冷却液が、水-アルコール混合物あることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項14】
前記冷却液輸送パイプが、平滑パイプ又は波形パイプの形で存在することを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項15】
前記冷却液輸送パイプが、内層及び外層のための成形材料から、共押出、ブロー成形及び射出成形によって製造されるものであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプ。
【請求項16】
液を供給するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の冷却液輸送パイプの使用。
【請求項17】
前記冷却液輸送パイプが、モーターにおける又はバッテリーにおける冷却液の供給のために使用されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内層と少なくとも1つの外層を有する流体輸送パイプに関し、内層は、流体と接触するものであり、少なくとも1種の脂肪族ポリアミドと少なくとも1種の耐衝撃性改良剤を含んでおり、外層は、内層と直接接するものであり、脂肪族ポリアミドと少なくとも1種の難燃剤から形成される。前記内層は、輸送されるべき流体に対する耐薬品性と、機械的強度(機械抵抗)とを確保する一方、前記外層により、難燃性が確保される。
【背景技術】
【0002】
特に自動車分野において、液体の輸送は、特定の物質の使用を必要とする。物質と仕様に応じて、そのような輸送パイプは、一連の試験をパスしなければならない。特に、冷却液の輸送の場合は、満たすべき要求が厳しい。水溶液(通常、水-グリコール混合物)の供給は、水溶液と接触する成分の耐加水分解性を要求する。
【0003】
特に高度な仕様は、電気自動車分野にも関係する。リチウム-イオン-バッテリーの電気化学反応は、既定の温度範囲内でのみ可能である。電気自動車のそのようなアキュムレータは、一般的に20~30℃の温度範囲で作動する。温度が30℃を超える場合、そのようなバッテリーの老化が、急激に増加する。40℃以上の温度では、バッテリーの持続的なダメージも生じ得る。さらに、バッテリーの過熱は、火災の危険をもたらし、これは車両に望まないダメージをもたらし得る。
【0004】
一般に、このようなパイプは、難燃性材料からなるか、あるいは少なくとも難燃剤を含む層(複数)を有する。このような多層パイプは、EP1265749において知られており、ポリオレフィンをベースとする難燃性の層が使用されている。
【0005】
特開平1-269536には、ポリアミドをベースとする柔軟性を備えたパイプが開示されている。このパイプは、2層構成を有し、外層がPA11又はPA12から、内層は難燃性エラストマーコポリアミドから形成されている。
【0006】
このような多層構成の場合は、一般的に、難燃性材料とコア材料の間の接合を可能にするために、接着剤層が使用されている。しかしながら、これは、必然的に、これらのコンポーネントのかなり複雑な製造、及びコンポーネントの高重量をもたらす。そのようなコンポーネントの軽量化は、特に自動車産業における用途において、製造における特に重量な側面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP1265749
【文献】特開平1-269536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここから出発して、本発明の目的は、当該技術分野で知られている欠点を克服し、輸送されるべき流体に対する良好な耐薬品性を示し、同時に良好な機械的及び難燃特性を有し、流体パイプの重量が小さい流体輸送パイプを提供することであった。さらに、これらのパイプの製造における複雑性は、できるだけ低く保たれるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する流体輸送パイプによって、及び請求項16の特徴を有するこの流体輸送パイプの使用によって、達成される。さらなる従属請求項は、有利な実施形態を明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、以下の層を有する流体輸送パイプが提供される:
・流体と接触する内層であって、少なくとも1種の脂肪族ポリアミドと少なくとも1種の耐衝撃性改良剤とを含む成形材料から形成され、前記少なくとも1種のポリアミドは、30~90mmol/kgのアミン末端基濃度を有する、及び
・前記内層と直接接する少なくとも1つの外層であって、少なくとも1種の難燃剤とともに少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含む成形材料から形成される
【0011】
本発明の意味において、用語「ポリアミド」(略称PA)は一般的な用語と理解され、ホモポリアミドとコポリアミドを含む。ポリアミド及びそのモノマーのために選択される表記と略語は、ISO規格16396-1(2015, (D))において規定されているものと一致する。そこで使用される略語は、以下において、モノマーのIUPAC名と同義的に使用される。
【0012】
前記内層と外層のポリアミドは、PA12、PA612、PA1010、PA106、PA1016、PA1012、PA614、PA615、PA616、PA618、PA1212、PA610、PA11、及びそれらのコポリアミド、混合物、及びブレンドからなる群より選択されることが好ましく、より好ましくは、PA12、PA11、PA610、PA612、及びPA11からなる群より選択され、特に好ましくはPA12であり、前記内層及び外層は、好ましくは同種のポリアミドを含む。
【0013】
好ましくは、前記ポリアミドは、30~80mmol/kg、より好ましくは35~75mmol/kg、特に好ましくは40~60mmol/kgのアミノ末端基濃度を有する。末端基濃度の測定は、電位差滴定によって行う。好ましくは、アミノ末端基濃度は、カルボキシル末端基濃度より高い。
【0014】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1種の難燃剤は、ハロゲンフリーの難燃剤である。この際、有機難燃剤が特に好ましい。特に、以下からなる群より選択される難燃剤が使用される:
・シアヌル酸とメラミンの反応生成物
・メラミン、特に、メレム、メラム、メロンの縮合生成物
・ポリリン酸とメラミンの反応生成物
・ポリリン酸とメラミン縮合生成物の反応生成物
・ホスフィン酸金属塩
・リン酸エステル
及び/又はこれらの混合物
【0015】
特に、前記難燃剤は、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メレムホスフェート、メレムピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、ジメラミンホスフェート、メロンポリホスフェート、ホスファフェナントレン類、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0016】
好ましくは、前記少なくとも1種のホスフィン酸金属塩は、ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。特に好ましくは、一般式(I)及び/又は一般式(II)のホスフィン酸塩、及び/又はそのポリマーであり、
【化1】
式中、R1及びR2は、同じであっても異なってもよく、好ましくは、直鎖もしくは分岐鎖C1~C8-アルキル、及び/又はアリールであり;
R3は、直鎖もしくは分岐鎖C1~C10アルキレン、C6~C10-アリーレン、-アルキルアリーレン、又はアリールアルキレンであり;
Mは、周期表の第2あるいは第3主族もしくは亜族(IUPAC表記では2,3,12,13族に対応)の金属イオンであり、
mは、2あるいは3を意味し、
nは、1あるいは3を意味し、
xは、1あるいは2を意味する。
金属イオンMとしては、好ましくはAl,Ca及びZnが使用される。
【0017】
前記外層は、前記成形材料の重量に対して、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、特に好ましくは11~20重量%の、少なくとも1種の難燃剤を含む。
【0018】
前記少なくとも1種の耐衝撃性改良剤が、エチレン-プロピレン・コポリマー、エチレン-1-ブテン・コポリマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン・コポリマー、スチレンコポリマー、スチレンブロック・コポリマー、及びそれらの混合物からなる群より選択される官能化(機能化)耐衝撃性改良剤であることが好ましい。
【0019】
耐衝撃性改良剤は、共重合によって又はグラフティングによって官能化することができる。本発明の意味において、共重合による官能化は、成分(C)の主鎖内に、この主鎖の構成成分として、官能化化合物を組み込むことを意味する。これに対して、グラフティングによる成分(C)の官能化は、側鎖が形成されるように、主鎖に官能化化合物を結合することと理解される。
【0020】
好ましくは、前記少なくとも1種の耐衝撃性改良剤は、0.1~30重量%、好ましくは5~25重量%、特に好ましくは10~20重量%の量で、前記内層に含まれる。
【0021】
さらに好ましくは、前記外層は、以下からなる群より選択されるさらなる添加剤を含む:
(i)0~15重量%、好ましくは2~12重量%、特に好ましくは4~10重量%の、少なくとも1種の可塑剤、
(ii)0.1~2重量%、好ましくは0.2~1.5重量%、特に好ましくは0.3~1重量%の、少なくとも1種の安定剤、特に熱安定剤、
(iii)0~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、特に好ましくは0.2~3.5重量%の、少なくとも1種のさらなる添加剤であって、UV-安定剤、熱伝導性添加剤、難燃性相乗剤、加工助剤、潤滑剤、着色-及びマーキング剤、無機色素、有機色素、IR-吸収剤、膨張剤からなる群より選択されるもの、
及び/又はそれらの混合物、
ここで、添加剤(i)~(iii)の合計は、成形材料の重量に対して、0.1~22重量%となる。
【0022】
成分(i)の可塑剤は、好ましくは、炭素原子数2~12のアリールスルホン酸のアミド、p-ヒドロキシ安息香酸の炭素原子数2~20(アルコール成分)のエステル、ホスホネート又はホスフェートからなる群より選択され、好ましくは、前記可塑剤は、アリールスルホンアミドからなる。
【0023】
好ましいリン含有可塑剤は、とりわけ、ジフェニルクレシルホスフェート(Disflamol DPK)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、トリクレシルホスフェート、アルキル-又はアリールホスホネート、ジエチルホスホネート、又は環状ホスホネート(例えば、Aflammit PLF 710など)である。
【0024】
好ましい4-ヒドロキシ安息香酸のエステルは、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸-i-ヘキサデシルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸-2-ヘキシルデシルエステルである。
【0025】
前記外層を形成する成形材料は、ISO307に従って測定した際、1.6~1.9の相対粘度を有し、前記内層を形成する成形材料は、ISO307に従って測定した際、1.8~2.3の相対粘度を有することが好ましい。
【0026】
前記外層は、好ましくは0.1~1.5mm、より好ましくは0.12~1.4mm、特に好ましくは0.15~1.3mmの範囲の厚みを有する。
【0027】
前記内層の厚み又は構造は、成形品の種類(例えばパイプ又はホース)に依存し、それに従って選択できる。0.5~2.5mm、特に好ましくは0.75~1.6mmの範囲の厚みが好ましい。
【0028】
さらに、流体輸送パイプは、その内層と外層の間に、接着剤層を有さないことが好ましく、より好ましくは、内層と外層のみから構成される。これは特に、その内層と外層のために同種のポリアミド、例えばPA12が使用されることによって達成される。これにより、内層と外層の間の独立した接着が達成される。
【0029】
流体としては、液体、好ましくは冷却液、特に好ましくは水-アルコール混合物、特に水-グリコール混合物が好ましく使用される。
【0030】
流体輸送パイプは、好ましくは、平滑パイプ又は波形パイプの形で存在する。
【0031】
流体輸送パイプは、好ましくは、内層及び外層のための成形材料から、共押出、ブロー成形及び射出成形によって製造可能である。
【0032】
本発明に係る流体輸送パイプは、流体又は液体、好ましくはある種の水溶液、特に好ましくは冷却液、特に水-アルコール混合物を供給するために使用される。
【0033】
流体輸送パイプは、モーターにおける又はバッテリーにおける流体の供給のために、特に電動の乗り物(電気自動車)のために使用されることが好ましい。
【0034】
後続の実施例を参照して、本発明に係る主題がより詳細に説明されるが、前記主題は、ここに示される特定の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
実施例および比較例で使用したマトリクス材と、その特性を表1に示す。
【表1】
【0036】
本発明の範囲において、以下の測定方法が使用された:別のことが記載されない限り、試験片は乾燥状態で試験した:
【0037】
相対粘度
相対粘度は、ISO307に従って、100mLの適切な溶媒(例えば、ポリアミド12のためにはm-クレゾール)中の0.5gのポリマーを用いて、温度20℃にて測定した。
【0038】
押出法
パイプは、Nokia Maillefer COEX5パイプ押出成形機を用いて、材料温度240~250℃で、165mbarの真空下で、押出速度9.5m/分で、共押出された。試験片として、外径15mm、内径12mm、肉厚1.5mmのパイプを使用した。
【0039】
難燃性試験:
押出パイプの燃焼特性は、UL-94測定法を修正して測定した。試験片は、50%相対湿度で、23℃・48時間又は70℃・7日間貯蔵した。各構造物のために、少なくとも3回の実験を実施した。押出パイプ(外径15mm;肉厚1.5mm)は、150mmの長さにした。パイプをその後垂直に固定し、垂直燃焼性試験を実施した。
【0040】
振り子式衝撃
DIN 73378に従って、23±2℃で測定した。
【0041】
電位差滴定法によるNH 2 -末端基の測定
ポリアミドのNH2-末端基の測定のために、撹拌しながら100℃にて、0.5gのサンプルを、50mLのm-クレゾール中に溶解した。25mLのイソプロパノールと3mLの添加溶液(氷酢酸中、6g/Lのアミノカプロン酸)を添加した後、0.05Mのエタノール性過塩素酸溶液を用いて、電位差滴定を行った。
【0042】
NH2-末端基の計算は、以下の式に従って行った。
【数1】
aは、添加溶液とサンプルのための、0.05mol/Lのエタノール性過塩素酸の消費量(mL)
bは、添加溶液のための、0.05mol/Lエタノール性過塩素酸の消費量(mL)
cは、エタノール性過塩素酸の濃度(0.05mol/L)
Fは、0.05mol/Lのエタノール性過塩素酸のファクター
Eは、ポリマー重量(g)
【0043】
表2において、本発明に係る試験片と比較例の試験片の機械的特性及び難燃特性を比較する。
【表2】
【0044】
結果の考察
本発明の実施例は、機械的特性及び難燃特性の特に良好な組み合わせを示す。加水分解抵抗性熱可塑性物質からなる内層によってのみ、その用途における機械的特性の維持が確保される。しかしながら、もし加水分解抵抗性成形材料に難燃剤が添加された場合、機械的特性は、有意に負の影響を受ける。良好な機械的特性は、比較例1で実際に達成できるが、難燃特性が犠牲になる。比較例3に示されるように難燃剤の添加は、UL94において最も良い等級であるV0を達成するが、やはり機械的特性を犠牲にする。
【0045】
他方、本発明に係る試験片だけが、良好な機械的特性を示し、同時にUL94による最も良い等級であるV0を達成する。