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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/502 20150101AFI20240314BHJP
   F21S 45/42 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 41/145 20180101ALI20240314BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20240314BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 45/33 20180101ALI20240314BHJP
   F21V 29/60 20150101ALI20240314BHJP
   F21V 29/74 20150101ALI20240314BHJP
   F21V 29/83 20150101ALI20240314BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20240314BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20240314BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240314BHJP
【FI】
F21V29/502
F21S45/42
F21S41/145
F21V9/14
F21V9/40 400
F21S45/47
F21S45/33
F21V29/60
F21V29/74
F21V29/83
F21V29/503 100
F21W102:00
F21Y115:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019235303
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103672
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮晃
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚子
(72)【発明者】
【氏名】高木 豪朗
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131054(WO,A1)
【文献】特開2008-151899(JP,A)
【文献】特開2000-180963(JP,A)
【文献】特開2018-203197(JP,A)
【文献】実開平03-040704(JP,U)
【文献】特開2017-212060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00 - 45/00
F21V 29/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射される光の光路上に配置される配光制御装置と、
前記光源および前記配光制御装置が配置される位置を風下として気流を生じさせ、該光源および該配光制御装置に空気を吹き付ける機能を有する送風ファンと、
を備える車両用灯具であって、
前記送風ファンと前記配光制御装置との間に配置されて、該送風ファンから該配光制御装置への空気の流れを遮る気流制御機構を備え、
前記気流制御機構は、熱膨張係数の異なる2種以上の材料板を接合した部材により気流の開閉状態を制御する、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記配光制御装置は、
前記光源から出射される光の光路上に配置される液晶素子と、
前記光路上において、前記液晶素子を挟む一対の偏光板と、
前記液晶素子および前記一対の偏光板を支持するとともに、該液晶素子および該一対の偏光板による発熱を放熱する筺体と、
を含む請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源は、
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が生じる熱を効率的に放出するヒートシンクであって、貫通孔が設けられた板状のベース部を含むヒートシンクと、
を含む、請求項1または2の何れかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および液晶素子を含む車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、周辺(特に進行方向前方)を明るくするための照明装置(前照灯・ヘッドライト)が取り付けられる。車両用前照灯は、主に、白色光を出射する光源と、光源から出射された光を拡大する投影光学系と、それらを支持するハウジングと、を具備する。
【0003】
近年、車両用の前照灯において、前方の状況、即ち対向車や前走車等の有無及びその位置に応じて配光形状をリアルタイムで制御する技術(ADB,adaptive driving beam等と呼ばれる)が注目されている。また、ハンドルの舵角に合わせて進行方向の配光を調整する前照灯システム(AFS,adaptive front-lighting system等と呼ばれる)が一般化されつつある。ADBやAFSの配光制御素子として、液晶素子を利用することが可能である(たとえば特許文献1)。
【0004】
なお、光源に半導体発光素子(LED素子)を用いた場合、通常、光源が発熱し、高温となる。このような場合、光源を冷却するための送風ファンを設けることが好ましい(たとえば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-191346号公報
【文献】特開2014-056792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、新規な構造を有する車両用灯具を提供することにある。また、系全体の温度を最適化することができる車両用灯具を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な観点によれば、光源と、前記光源から出射される光の光路上に配置される配光制御装置と、前記光源および前記配光制御装置が配置される位置を風下として気流を生じさせ、該光源および該配光制御装置に空気を吹き付ける機能を有する送風ファンと、を備える車両用灯具、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
車両用灯具全体の温度制御を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例による車両用灯具の基本形を示す断面図である。
図2】実施例による車両用灯具の発展形(第1の実施形態)を示す拡大断面図である。
図3】車両用灯具の発展形における1つの形態を示す拡大断面図である。
図4】車両用灯具の発展形における他の形態を示す拡大断面図である。
図5】実施例による車両用灯具の第2の実施形態を示す断面図である。
図6】実施例による車両用灯具の第3の実施形態の要部を示す拡大断面図である。
図7】実施例による車両用灯具の第4の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(基本形)
図1は、実施例による車両用灯具(ヘッドライト)100の基本構造を示す断面図である。ヘッドライト100は、主に、白色光L(図中、破線矢印で示す)を放出する半導体発光素子(LED素子)を含む光源10と、光源10から出射された白色光Lを反射する反射ミラー20と、反射ミラー20により反射された白色光Lの配光を制御(光の透過領域と非透過領域とを選択)する配光制御装置30と、配光制御装置30を通過した白色光Lを拡大投影する投影レンズ40と、高温になりうる光源10および配光制御装置30を共に冷却するための送風ファン50と、を含む。これらの構成要素は、通常、容器状のハウジングおよび蓋状の透光性カバーレンズ(アウターレンズ)により画定される灯室内に配設される。灯室内にはターンランプなどのヘッドランプ以外の照明もしくは信号機能を担う灯具も配設される。なお、図1においてはハウジング、カバーレンズおよびヘッドランプ以外の図示については省略している。
【0011】
光源10は、LED素子が搭載されたLED回路基板12と、回路基板12(特にLED素子)の発熱を効率的に放出する放熱部材(ヒートシンク)14と、を含む。LED素子は、たとえば、青色光を出射するGaN系半導体、および、青色光を吸収して黄色光を放出するYAG蛍光体、を含み、合成白色光を放出する。ヒートシンク14は、回路基板12と密接する、熱伝導性に優れるベース部14A、および、効率的に熱を放出するフィン部14B、を有する。
【0012】
配光制御装置30は、主に、光の偏光方向を変換することができる液晶素子32、液晶素子32を挟む一対の偏光板34(入力側偏光板34Aおよび出力側偏光板34B)、および、それらを支持し、熱伝導率の高い部材で形成された筺体36、を含む。液晶素子32および一対の偏光板34には、一般に知られたもの、たとえば特許文献1に開示されるものを用いることができる。筐体36には、風通しを良好にするための通気孔(通気溝)36Hが設けられている。
【0013】
送風ファン50は、主に、光源10(特にフィン部14B)および配光制御装置30(特に液晶素子32および入力側偏光板34Aの近傍)に空気を吹き付けて、それらを冷却する。送風ファン50には、たとえば軸流ファンや遠心ファンなど、一般に知られた送風ファンを用いることができる。
【0014】
反射ミラー20および投影レンズ40については、一般に車両用灯具に用いられるものを用いればよい。これらの構造・構成については、特に限定されることはない。
【0015】
ヘッドライト100には、さらに、光源10(LED素子)、配光制御装置30(特に液晶素子32)および送風ファン50を主に制御する制御装置60が設けられている。制御装置60は、光源10におけるLED素子の駆動(光出射のON/OFF)、および、液晶素子32の駆動を制御(配光制御装置30として光を透過させる領域と透過させない領域とを選択)する。また、送風ファン50の駆動ないし回転数(風量)を制御する。制御装置60は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータシステムにおいて所定のプログラムを実行させることによって構成される。
【0016】
車両用のヘッドライトでは、出力光の強度を大きくするために、比較的大きな電力がLED素子に投入される。このため、LED素子が高温に発熱しうる。LED素子の周辺部材ないしLED素子自体の性能や長期信頼性等の観点から、熱源となるLED素子ないしそれを含む光源は、効果的に冷却されることが望ましい。
【0017】
また、配光制御装置30の入力側偏光板34Aは、入射される自色光のうち、所定(第1の方向)の偏光成分を有する光のみを透過させ、その他(第1の方向と直交する第2の方向)の偏光成分を有する光を遮光する。遮光される光のエネルギーは、一般に、熱エネルギーに変換される(入射光の少なくとも50%以上のエネルギーが熱エネルギーに変換される)。
【0018】
LED素子から出射される光(入力側偏光板34Aに入射される光)の強度が比較的大きい場合、入力側偏光板34Aにおいて変換される熱エネルギーも大きくなる。このため、入力側偏光板34Aが高温に発熱しうる。入力側偏光板34Aの近傍に配置される液晶素子32ないし入力側偏光板34A自体の性能や長期信頼性等の観点から、特に液晶素子32および入力側偏光板34Aは、効果的に冷却されることが望ましい。
【0019】
送風ファン50から送られる空気が、ヒートシンク14、特にフィン部14Bにあたることにより、効果的に光源10(LED素子)が冷却される。また、送風ファン50から送られる空気が、筺体36の通気孔36Hを通って、直接、液晶素子32および一対の偏光板34にあたることにより、効果的に液晶素子32および一対の偏光板34が冷却される。さらに、送風ファン50から送られる空気により筺体36自体も冷却されるため、熱的に接続する液晶素子32および一対の偏光板34が、間接的にも冷却される。
【0020】
筐体36には、熱伝導性・放熱性に優れる、たとえばアルミ合金やマグネシウム合金などの金属部材を用いることが好ましい。または、熱伝導性樹脂部材を用いることもできる。
【0021】
なお、配光制御装置30に用いられる液晶素子32は、低温において応答速度が低下することが知られている。このため、低温環境下においてヘッドライト100を使用する場合には、配光制御装置30、特に液晶素子32を加熱できたほうがよい。
例えば、環境温度が低い場合には、光源10の発光時に生じた熱がヒートシンク14によって灯室内部に放出され、その熱が筐体36を介して液晶素子32へ伝わる。これにより、低温時においては液晶素子32の液晶層が加温されることで、液晶素子32の応答性を向上させることができる。この効果は、ファン50を動作させることで更に高まる。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明者らは、状況によって、配光制御装置を加熱できるヘッドライトについて検討を行った。以下に、基本形のヘッドライトを発展させたヘッドライトについて説明する。図2において、主にヘッドライトに追加された各構成要素の構造を説明し、図3および図4において、主に当該構成要素の機能を説明する。
【0023】
図2は、実施例によるヘッドライトの発展形102を示す拡大断面図である。このヘッドライト102は、基本形によるヘッドライト100(図1参照)に、さらに、通気管(ダクト機構)72、第1ダンパ機構74および第2ダンパ機構76を設けた構造である。なお、便宜のため、各種機構72,74,76の説明に不要な構成要素の図示は省略している。
【0024】
通気管72は、たとえば筒状の形状を有し、一方の開口端に光源10(特にフィン部14B)および配光制御装置30(特に液晶素子32および入力側偏光板34Aの近傍)を収め、他方の開口端に送風ファン50を収めるように配設される。通気管72を設けることで、送風ファン50により生じた空気の流れ(風)・気流が、有効に光源10(特にフィン部14B)および配光制御装置30(特に液晶素子32および入力側偏光板34Aの近傍)に送られる。また、通気管72は、少なくとも一方の開口端が配光制御装置30の下方に位置するように設ける。
【0025】
第1ダンパ機構74は、一方の開口端側に設けた通気孔14Hの開閉を行う。本実施形態では通気管72に取り付けられている。ヒートシンク14のベース部14Aに設けられた通気孔14Hと合わせて、気流制御機構を構成する。なお、第1ダンパ機構74は、ヒートシンク14のベース部14Aに取り付けられていてもよい。
【0026】
ダンパ機構74は、バイメタル材からなる可動部を備えており、バイメタル材からなる可動部の屈曲運動により通気孔14Hの開閉を行う。バイメタル材は、熱膨張係数の異なる2種またはそれ以上の合金板を接合した部材であり、温度変化に伴いわん曲する性質を有する。例えば高温膨張側のNi-Mn-Feと低温膨張側のNi-Feとを接合した低温用バイメタルを可動部に使用する。表面層を高温膨張側と低温膨張側のどちらの側にするかによって湾曲する方向が異なる。この材料の場合には比例温度範囲がマイナス20℃~150℃のバイメタルとすることができる。
【0027】
ダンパ機構74は、その開閉状態に応じて、ヒートシンクの通気孔14H内を吹き抜ける空気の流れ(流動方向)を制御することができる。つまり、開状態(実線で示す状態)において通気孔14Hを通る気流を通気管72の外部に排出し、閉状態(破線で示す状態)において通気孔14Hを通る気流を滞らせる。図2においては開状態を実線で示しており、破線が閉状態を示す。また、符号62は通気管72内の空間である。
【0028】
第2ダンパ機構76も第1ダンパ機構74と同様に一方の開口端側に設けた通気孔36Hの開閉を行う。通気孔36Hは、通気孔14Hよりも上側に位置し、配光制御機構30の筐体36に設けられている。通気孔36Hは、液晶素子32の下側から液晶素子32と入力側偏向板34Aとの間の空間に繋がり、液晶素子32の下側から、液晶素子32と出力側偏向板34Bとの間の空間に繋がる2つの経路を有する。第2ダンパ機構76は、たとえば通気管72に取り付けられており、配光制御機構30の筐体36に設けられた通気孔36Hと合せて、気流制御機構を構成する。また、光源10から配光制御装置30に熱を伝導する伝熱制御機構も兼ねる。
【0029】
ダンパ機構76は、その開閉状態に応じて、配光制御装置30の筐体36内を吹き抜ける空気の流れ(流動方向)を制御することができる。つまり、開状態(実線で示す状態)において送風ファンからの気流を筺体36内に通し、閉状態(破線で示す状態)において筺体36内に吹き込む気流を遮る。
【0030】
さらに、ダンパ機構76は、その開閉状態に応じて、光源10(特にヒートシンクのベース部14A)から配光制御装置30(特に筐体36、ないし、筺体36を介して液晶素子32および入力側偏光板34A)への熱伝導も制御することができる。つまり、閉状態(破線で示す状態)においてベース部14Aと筺体36とを熱的に接続し、開状態(実線で示す状態)においてベース部14Aと筺体36とを熱的に切り離す。
【0031】
図3に、第1および第2ダンパ機構74,76がともに、閉状態であるときを示す。第1および第2ダンパ機構74,76の夫々に使用するバイメタル材として低温環境(例えばマイナス10℃)において閉状態の位置となるように片持ち構造の可動部を用いる。マイナス10℃の低温環境下において、光源10(LED素子)を点灯したとする。点灯直後、光源10は急速に高温に達するが、液晶素子32は光源20に比べて昇温速度が遅い。たとえば0℃以下では液晶素子32の応答速度は低下し、マイナス20℃以下の低温環境下ではより一層液晶素子32の応答速度が著しく低下する。従って、低温環境下では液晶素子32を加熱する(温める)ことが好ましい。
【0032】
第2ダンパ機構76を閉状態とし、光源10のベース部14Aと配光制御装置30の筐体36とを熱的に接続することにより、LED素子で生じる熱が、筺体36を介して、液晶素子32に伝導し、液晶素子32が加熱される。これにより、低温環境下において、液晶素子32の応答速度を早めることができる。
【0033】
なお、第1ダンパ機構74も閉状態とすることにより、フィン部14Bから放出される熱により温められた空気は、通気管72の外部に排気されず、通気管72内部に留まる、ないし、配光制御装置30(第2ダンパ機構76)の方向に流動する。これにより、配光制御装置30(液晶素子32の近傍)がさらに効果的に温められ、液晶素子32の応答速度を早めることができる。
【0034】
液晶素子の応答速度が低下する低温環境下においては、図3に示したように第1および第2ダンパ機構74,76がともに、閉状態とすることが好ましい。バイメタル材は、温度に応じて湾曲する性質を有するものであるため、図示したような片持ち構造においては、温度上昇に伴って閉状態から、すこしずつ隙間が生じる。そこでバイメタル材からなる可動部の先端もしくは可動部の先端が当接する部分にスポンジ状の弾性部材を設けておくことが好ましい。これにより閉状態を維持する温度範囲を大きくとることが可能となる。
【0035】
また、低温環境とは一般的には0℃以下が相当するが、この温度は絶対的なものではない。車両用灯具100に使用する液晶素子32の応答速度が実際の利用シーンにおいて問題となるほど遅延する速度となる温度が、低温環境の温度である。従って、利用する液晶素子32に含まれる液晶層の材料、車両用灯具による照射パターンの配光状態の切り替え速度などを考慮して、液晶素子32を効率的に加熱できるように第1および第2ダンパ機構74,76の開閉切り替えを行う温度を定め、その温度に適したバイメタル材を用いる。なお、第1ダンパ機構74に用いるバイメタル材と、第2ダンパ機構76に用いるバイメタル材は同一である必要はなく、異なる材料であってもかまわない。また、低温環境下においては送風ファン50による送風は停止していても構わない。
【0036】
図4に、第1および第2ダンパ機構74,76がともに、開状態であるときを示す。光源10(LED素子)が点灯してから所定の時間が経過すると、入力側偏光板34Aおよび液晶素子32も高温に達する。このとき、第2ダンパ機構76として所定温度で開状態となるバイメタル材を用いることで、光源10のベース部14Aと配光制御装置30の筐体36とを熱的に切り離す。
【0037】
第2ダンパ機構76を開状態にすると、送風ファン50から送られる空気が、直接、液晶素子32および一対の偏光板34、さらには筺体36にあたるようになる。これにより、配光制御装置30(特に液晶素子32および入力側偏光板34A)を冷却することができる。
【0038】
なお、第1ダンパ機構74も開状態とすることにより、フィン部14Bから放出される熱により温められた空気は、通気管72内の空間62から通気管72の外部に排気される。このため、その温められた空気により配光制御装置30が温められる可能性は低減される。
【0039】
以上のように、気流制御機構である第1および第2ダンパ機構74,76を設けることにより、必要に応じて、配光制御装置30を加熱する(温める)ことができる。なお、第2ダンパ機構76がベース部14Aおよび筺体36に接する面積は、できるだけ大きいほうが好ましい。この面積を大きくすることにより、より効率的に光源10で生じる熱を配光制御装置30に伝えることができる。第1および第2ダンパ機構74,76には、バイメタル材を使用して開状態と閉状態の制御を行う。バイメタル材を用いることで環境温度に応じてバイメタル材が屈曲する。温度上昇に伴って開状態となるようにバイメタル材を配設する。したがって、環境温度の上昇に伴って閉状態から開状態に変化して気流を制御するので第1および第2ダンパ機構74,76を駆動するために特別な制御装置を必要としない。
【0040】
また、第1および第2ダンパ機構74,76の開閉状態の組み合わせは、上記に示した組み合わせに限られない、第1ダンパ機構74を閉状態、第2ダンパ機構76を開状態にした組み合わせ、ないし、第1ダンパ機構74を開状態、第2ダンパ機構76を閉状態にした組み合わせ、としてもよい。これにより、光源10および配光制御装置30について、より細かい温度調整ができるであろう。
【0041】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態を示す断面図である。第2の実施形態は、実施例によるヘッドライトの第1の実施形態の変形例である。たとえば、通気管72は、送風ファン50による光源10および配光制御装置30各々への送風を分別する仕切りガイド72Gを具備していてもよい。さらに、通気管72には、第1および第2ダンパ機構74,76とは異なる第3ダンパ機構77を設けてもよい。第3ダンパ機構77を開状態とすることで、通気管72内の空間62と、通気管72の外部空間、特に配光制御装置30と投影レンズ40との間の空間に流れる空気の流れを形成することができる。
【0042】
また、第1、第2および第3ダンパ機構74,76,77も、光源10および配光制御装置30の配置位置や形状・構造などに応じて、送風ファン50による送風が良好に循環するように、配置位置や形状・構造などを調整してもかまわない。
【0043】
また、送風ファン50は、光源10および配光制御装置30の配置位置を風下として気流を生じさせ、光源10および配光制御装置30に空気を吹き付けるように設定してもよいし、光源10および配光制御装置30の配置位置を風上として気流を生じさせ、光源10および配光制御装置30の近傍の空気を、通気管72の外部に排出するように設定してもかまわない。送風・気流の方向は、送風ファン50の回転方向(右回転/左回転)を変化させることで調整することができる。
【0044】
なお、光源10で生じる熱により温められる空気を通気管72の外部に排気する場合、その温められた空気を、配光制御装置30に吹き付けて、配光制御装置30を加熱しても(温めても)よい。この場合、たとえば、通気管72の外部に排出した温風を、配光制御装置30に誘導する気流誘導機構80を設けてもよい。気流誘導機構80は、たとえば一般的なダクトを用いてもよいし、車両用灯具に一般的に用いられるエクステンション機構を利用してもかまわない。このとき、第1、第2および第3ダンパ機構74,76,77は、ともに開状態であること好ましい。
【0045】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態を示す断面図である。第3の実施形態は、実施例によるヘッドライト106の第3の実施形態であり、第1の実施形態のヘッドライトにおける片持ち構造の第1ダンパ機構74の代わりに、螺旋形状のバイメタル部材を用いた第1ダンパ機構174を用いている点のみが異なる。他の構成は第1の実施形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0046】
図6は、ヘッドライト106を液晶素子32を通る鉛直平面で切断したときの断面図で投影レンズ側から見た概略図である。図6(A)が第1ダンパ機構174が閉状態、図6(A)が第1ダンパ機構174が開状態の場合を示す。第1ダンパ機構174は、螺旋形状とした左側バイメタル174Lと右側バイメタル174Rを有し、図6(B)に示したように、開状態においては左側バイメタル174Lおよび右側バイメタル174Rが、中央部に通気管72内の空間62と通気孔36Hとの間の扉を開いて、両方の空間を大きな開口で連結する。低温状態においては閉状態となる。閉状態においては左側バイメタル174Lおよび右側バイメタル174Rが、中央部にて通気管72内の空間62と通気孔36Hとの間の扉を閉めるように屈曲する。左側バイメタル174Lおよび右側バイメタル174Rを螺旋形状とすることで変形量を大きくとることができる。これにより図6(B)のように扉を開くように可動したときに開いて、両方の空間を大きな開口で連結することができる。
【0047】
左側バイメタル174Lおよび右側バイメタル174Rは、渦巻部の中心を回転軸とし、直線部(板状)により開閉を行うように構成されている。開状態となったとき(非低温状態)に、図6(B)に示したように液晶素子32の中央に向かって傾斜した直線部となるようにすることが好ましい。液晶素子32の中央部側が細い開口となるように傾斜した直線部とすることで、送風ファン50から送られる気流が、バイメタル174L,174Rの直線部がガイドとなって液晶素子32の中央部に向かって気流を集中的に向かわせることができる。ヘッドライト106においては、その配光パターンの中央部、具体的には、ヘッドライトの規格で定められたヘッドライト正面の仮想スクリーンにおける水平線と垂直線の交点、すなわち中央部分を明るく照射することが必要である。中央部を明るく照明するために、中央部には周辺部に比べて熱が集中し易い。そこで、図6(B)のように傾斜した直線部を有することで液晶素子32の中央部を周辺部に比べて早く送風して、液晶素子を効率よく冷却することが好ましい。また、図6に示すように、直線部を液晶素子や偏光板の面に対して回転軸が略直交するように取り付けることにより、板状の直線部を送風路を形成する壁として機能させることができる。
【0048】
(第4の実施形態)
図7は、実施例によるヘッドライトの変形例108を示す断面図である。
光源10は、LED10Aをヒートシンク14のベース部14Aの上に搭載され、斜め後方の上向きに光を放出する。LED10Aは、制御装置60に含まれるLED駆動部によって駆動されて光を放出する。反射ミラー20は、光源10から放出される光を集光および反射させて配光制御装置130(特に液晶素子132)へ入射させる。
【0049】
光源10から出射し、上側反射ミラー20Aによって反射された光の殆どは、入力側偏向板134Aに入射した後に液晶素子132へ入射する。光源10から出射し、上側反射ミラー20Aによって反射された光の残りの光は、入力側偏向板134Aに入射した後に液晶素子132へ入射する。下側反射ミラー20Bに向かって反射された後に1/2波長板131へ入射し、その偏光方向が変換されて、入力側偏向板134A、液晶素子132へ入射する。液晶素子132に入射した光は位相差板(Cプレート)135および出力側偏向板134Bを通過して投光レンズ40を通して照射される。
【0050】
液晶素子132は、制御装置60に含まれる液晶駆動部によって駆動されて、入射する光に変調を与えることにより種々の配光パターンに対応する像を形成する。この液晶素子132において、一対の偏光板134A,134Bは、液晶パネル132を挟んで対向配置されている。各偏光板134A,134Bと液晶パネル132との間は密着しておらず所定の間隙が設けられている。本実施形態では、一対の偏光板134A,134Bは、各々の吸収軸を略直交させるように配置されている。各偏光板134A,134Bとしては、例えばワイヤーグリッド偏光板を用いることが好ましい。入力側偏光板134Aをポリマービームスプリッタとすることもできる。なお、偏光板134A,134Bは、機能上必須の要素ではなく、無くてもよい。
【0051】
また、液晶パネル132としては、垂直配向型の液晶パネルが用いられている。すなわち、液晶素子132は、電圧無印加時において光透過率が極めて低い減光状態(実質的に遮光状態)となるノーマリーブラック型の液晶素子として構成されている。
【0052】
投影レンズ40は、液晶素子132によって形成される光の像を車両前方へ投影する。それにより、光の像に対応した配光パターンが車両前方に形成される。
【0053】
本実施形態においては、液晶素子132の両側に配置されている位相差板(Cプレート)135および入力側偏向板134Aに、ダンパ機構170が配設されている。ダンパ機構170は送風ファン50と液晶素子132の間の空間を開状態と閉状態とに変更する。ダンパ機構170には、第1の実施形態と同様に板形状のバイメタル材が用いられている。低温環境下においてはバイメタル材により閉状態(実線で示す)とされ、非低温環境下においてはバイメタル材により開状態(破線で示す)となる。
【0054】
ダンパ機構170が開状態(破線で示す)となる温度。例えば0℃より高い温度で隙間が開き始め、より高い温度になると一対のバイメタルが互いに開くように配置されている。したがって、高温になるほど液晶素子を冷却する気流の流量が増加することになり、効率的に冷却できる。
【0055】
以上、実施例に沿って、本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。たとえば、配光制御装置において、筺体は設けられていなくてもよい。ただし、高温になりうる液晶素子ないし一対の偏光板を効果的に冷却したい場合には、熱伝導率が高く、放熱性に優れた筺体を設けたほうが好ましいだろう。
【0056】
また、第1および第2ダンパ機構74,76は、通気管72に取り付けられていなくてもかまわず、それぞれ独立した機構であってもかまわない。各種機構72,74,76は、すべて具備されていなくてもよく、いずれかが具備されていればよい。また、第2ダンパ機構は、気流制御の機能を有する部分と、伝熱制御の機能を有する部分とを、別々の機構として含んでいてもよい。第3ダンパ機構77も独立した機構であってもかまわない。また、それぞれのダンパ機構は、同一の温度で開閉状態が切り替わるものでなくてもよく、配置する場所、気流、冷却対象に応じてそれぞれのダンパ機構に用いるバイメタル材を選択することで、任意の温度の組み合わせで開閉状態が切り替わるようにして構わない。
【0057】
また、ダンパ機構に用いるバイメタル材は、本出願においては金属同士に限るものではない。例えば、セラミックと金属、樹脂と金属の組み合わせでもよい。ダンパ機構をバイメタルから構成することにより、温度環境を測定するセンサ等を備えなくても、材料特性に対応する温度にて開閉を行うことができる。
その他種々変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0058】
10…光源、12…LED回路基板、14…放熱部材(ヒートシンク)、20…反射ミラー、30…配光制御装置、32…液晶素子、34…偏光板(入力側偏光板および出力側偏光板)、36…筐体、40…投影レンズ、50…送風ファン、60…制御装置、62…制御素子、72通気管、74…第1ダンパ機構(気流制御機構)、76…第2ダンパ機構(気流制御機構、兼、伝熱制御機構)、77…第3ダンパ機構(気流制御機構)、100…ヘッドライト(基本形)、102,104,106,108…ヘッドライト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7