(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20240314BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240314BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20240314BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20240314BHJP
C12G 3/06 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/00 E
A23L2/54
C12C5/02
C12G3/06
(21)【出願番号】P 2019238498
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 史子
(72)【発明者】
【氏名】蛸井 潔
(72)【発明者】
【氏名】二関 倫太郎
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-027309(JP,A)
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2016年,Vol.64,p.2325-2332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12C
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桂皮酸を含有する、ノンアルコール
ビールテイスト飲料。
【請求項2】
桂皮酸を含有する、非発酵
ビールテイスト飲料。
【請求項3】
桂皮酸を含有し、前記桂皮酸の含有量が1μg/L以上50μg/L以下である
、ビールテイスト飲料。
【請求項4】
前記桂皮酸の含有量が100μg/L以下である、請求項1
又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
前記桂皮酸の含有量が1μg/L以上50μg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
前記桂皮酸の含有量が5μg/L以上30μg/L以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
前記桂皮酸の含有量が10μg/L以上30μg/L以下である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
桂皮酸を
ノンアルコールビールテイスト飲料に含有させることを含む、
ノンアルコールビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法。
【請求項9】
桂皮酸を非発酵ビールテイスト飲料に含有させることを含む、非発酵ビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料のビールらしさを向上させる方法として、各種香気成分を添加する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビールに含まれる香味物質である高級アルコール類及びエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種をアルコール系成分とし、ビールに含まれる香味物質であるフラノン類及びラクトン類からなる群から選択される少なくとも一種を甘味系成分とし、ビールに含まれる香味物質であるアルデヒド類からなる群から選択される少なくとも一種をアルデヒド系成分とした場合に、該アルコール系成分と、該甘味系成分及び該アルデヒド系成分からなる群から選択される少なくとも一種とを、含有するビール様飲料用風味改善剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術手段によっても未だ充分な効果が得られているとはいえず、ビールらしさ(例えば、発酵感、コク)を向上させ得る更なる成分の探索が求められる。
【0006】
本発明は、発酵感及びコクが優れるビールテイスト飲料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、桂皮酸を含有させたビールテイスト飲料は、発酵感及びコクが向上することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
【0008】
本発明は、桂皮酸を含有する、ビールテイスト飲料に関する。
【0009】
本発明に係るビールテイスト飲料は、桂皮酸を含有しているため、発酵感及びコクに優れる。
【0010】
上記ビールテイスト飲料において、上記桂皮酸の含有量は、100μg/L以下であることが好ましく、1μg/L以上50μg/L以下であることがより好ましく、5μg/L以上30μg/L以下であることが更に好ましく、10μg/L以上30μg/L以下であることが更により好ましい。桂皮酸の含有量がこの範囲内にあると、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクがより一層優れたものになる。
【0011】
上記ビールテイスト飲料は、ノンアルコール飲料(ノンアルコールビールテイスト飲料)であってよい。ノンアルコールビールテイスト飲料は、発酵感及びコクの向上が特に求められることから、本発明による効果がより一層発揮される。
【0012】
上記ビールテイスト飲料は、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってよい。
【0013】
本発明はまた、桂皮酸をビールテイスト飲料に含有させることを含む、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法にも関する。桂皮酸は、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクを向上させることができるので、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクを向上させる用途に好適に使用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発酵感及びコクに優れるビールテイスト飲料を提供することができる。本発明によればまた、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
〔ビールテイスト飲料〕
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、桂皮酸を含有する。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、桂皮酸を含有するため、優れた発酵感及びコクを有する。
【0017】
本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0018】
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(令和元年法律第三十七号)上のビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュール、スピリッツに分類されるものが挙げられる。
【0019】
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、又は5v/v%以上であってよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、又は3v/v%以下であってよい。
【0020】
ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しないビールテイスト飲料である。ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。ノンアルコールビールテイスト飲料は、発酵感及びコクの向上が特に求められることから、本発明による効果がより一層発揮される。
【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビール(酒税法(令和元年法律第三十七号)上のビールを指す。以下同じ。)であってもよく、ビール様飲料(ビール以外のビールテイスト飲料を指す。)であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵感及びコクの向上が特に求められることから、ビール様飲料であることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の桂皮酸含有量は、例えば、0μg/L超400μg/L以下であってよい。ビールテイスト飲料の発酵感及びコクがより一層向上するという観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料の桂皮酸含有量は、1μg/L以上、2μg/L以上、3μg/L以上、4μg/L以上、5μg/L以上、6μg/L以上、7μg/L以上、8μg/L以上、9μg/L以上、10μg/L以上、又は15μg/L以上であってよい。同様の観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料の桂皮酸含有量は、300μg/L以下、200μg/L以下、100μg/L以下、90μg/L以下、80μg/L以下、70μg/L以下、60μg/L以下、50μg/L以下、45μg/L以下、40μg/L以下、35μg/L、30μg/L以下、又は25μg/Lであってよい。
【0023】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の桂皮酸含有量は、例えば、桂皮酸そのものを原料液に添加すること、桂皮酸を含む香料組成物を原料液に添加すること等により調整することができる。また、例えば、桂皮酸を含有する植物原料又は食品添加物等を原料液に添加することによっても調整することができる。
【0024】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の桂皮酸含有量は、例えば、GC-MS法により測定することができる。桂皮酸の定量は、例えば、標準点添加法によって実施することができる。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率(水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合)が0重量%以上100重量%以下であってよい。麦芽比率は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、67重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上、又は100重量%であってよい。また、麦芽比率は、100重量%未満、90重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、DL-リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、0.0以上50.0以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料のBUは、例えば、40.0以下、30.0以下、20.0以下,又は10.0以下であってよく、1.0以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、又は5.0以上であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲で適宜設定することができる。
【0030】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度としてもよい。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってもよく、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。なお、非発酵飲料には、酵母等による発酵を行わず、アルコール(例えば、スピリッツ、原料用アルコール等の蒸留アルコール)を配合して製造されるビールテイスト飲料も含まれる。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、桂皮酸を含有させることの他は、常法に従って製造することができる。桂皮酸は、例えば、桂皮酸を原料液に添加することにより含有させることができる。本明細書において、原料液とは、ビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液(例えば、後述する、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液)が含まれる。
【0034】
一実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。桂皮酸は、ビールテイスト飲料の製造工程中のいずれかの段階で原料液に添加すればよく、例えば、仕込工程で原料に添加してもよく、発酵工程で添加してもよく、発酵工程を経て得られた発酵後液に添加してもよい。含有量の調整がより容易になることから、桂皮酸は発酵後液に添加することが好ましい。添加する桂皮酸の形態は特に限定されず、例えば、桂皮酸そのものであってもよく、桂皮酸を含む香料組成物であってもよく、桂皮酸を含む植物原料又は食品添加物であってもよい。
【0035】
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。
【0036】
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
【0037】
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0038】
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。
【0039】
発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
【0040】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0041】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。桂皮酸を発酵後液に添加する場合は、例えば、上記各種添加剤と一緒に添加してもよい。
【0042】
ビールテイスト飲料がノンアルコールビールテイスト飲料である場合は、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって製造してもよく、発酵期間を短くする等してアルコールの生成を抑えることによって製造してもよく、また、発酵工程を行うことなく製造してもよい。
【0043】
ビールテイスト飲料が非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)である場合は、上記発酵工程を行うことなく製造してもよい。
【0044】
他の実施形態における製造方法は、例えば、水と、桂皮酸と、必要に応じて、蒸留アルコール(例えば、スピリッツ、原料用アルコール)及び各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。
【0045】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0046】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。
【0047】
〔ビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法〕
本発明は、桂皮酸の新規な使用方法(ビールテイスト飲料の発酵感及びコクを向上させる用途への使用)を提供するものと捉えることもできる。すなわち、本発明の一実施形態において、桂皮酸をビールテイスト飲料に含有させることを含む、ビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法が提供される。
【0048】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の発酵感及びコクの向上方法は、例えば、桂皮酸を原料液に添加すること等により、桂皮酸をビールテイスト飲料に含有させることで実施することができる。添加する桂皮酸は、例えば、桂皮酸そのものであってもよく、桂皮酸を含む香料組成物であってもよく、桂皮酸を含む植物原料又は食品添加物であってもよい。含有させる量は、上述したビールテイスト飲料中の含有量の態様を参考にして、設定すればよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0050】
(ビールテイスト飲料の調製)
水溶性食物繊維、乳酸、リン酸、ホップエキストラクト、アセスルファムK及びカラメルI類を水に溶解し、そこに桂皮酸を添加した。炭酸水でガス圧を2.3kg/cm2に調整し、容器に充填して実施例1~6及び比較例1のビールテイスト飲料を調製した。調製したビールテイスト飲料の組成は、表1に示すとおりである。
【0051】
(官能評価)
実施例1~6及び比較例1のビールテイスト飲料に対して、「発酵感」及び「コク」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル5名により実施した。いずれの評価項目も評点1~5の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
【0052】
「発酵感」は、酵母による代謝により、好ましい香気成分が生成され、味に複雑味がある感覚であり、評点が高いほど発酵感を強く感じることを示す。「コク」は、複雑さと広がりと持続性を併せ持つ感覚であり、評点が高いほどコクを強く感じることを示す。なお、「発酵感」及び「コク」の官能評価は、比較例1のビールテイスト飲料の評点をそれぞれ1点及び3点として固定し、これを基準として他のビールテイスト飲料を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
桂皮酸を含有する実施例1~6のビールテイスト飲料は、発酵感及びコクともに評価が高かった。