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特許7454378巻きスーパーキャパシタ及び製造プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】巻きスーパーキャパシタ及び製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/36 20130101AFI20240314BHJP
   H01G 11/02 20130101ALI20240314BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240314BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20240314BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20240314BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240314BHJP
【FI】
H01G11/36
H01G11/02
H01G11/06
H01G11/10
H01G11/50
H01G11/84
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019560736
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018025109
(87)【国際公開番号】W WO2018208382
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-01-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】15/591,483
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュエ
(72)【発明者】
【氏名】チャイ,ソン-ハイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0234680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0213677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを電子的に隔てる多孔性セパレーターと、前記アノード及び前記カソードとイオン接触している電解質とを含む巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノードが、アノードロール長さ、アノードロール幅、及びアノードロール厚さを有するアノード活物質の巻取りアノードロールを含有し、前記アノード活物質が、前記アノードロール長さ及び前記アノードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及び前記カソードが、カソードロール長さ、カソードロール幅、及びカソードロール厚さを有するカソード活物質の巻取りカソードロールを含有し、前記カソード活物質が、前記カソードロール長さ及び前記カソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及び前記アノードロール幅及び前記カソードロール幅が前記多孔性セパレーターに略垂直であり、前記巻取りアノードロールと前記巻取りカソードロールが、ロールされていない平板状の前記多孔性セパレーターによって分離されていて、ロールされていない平板状の前記多孔性セパレーターが、前記巻取りアノードロールおよび前記巻取りカソードロールと接する面積よりも大きい表面積を有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記単離されたグラフェンシートが純粋なグラフェン又は非純粋なグラフェン材料から選択され、前記非純粋なグラフェン材料が、2重量%超の非炭素元素の含有量を有し、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学的官能化グラフェン、ドープトグラフェン、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項3】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記単離されたグラフェンシートが、固有導電性ポリマー、遷移金属酸化物、及び/又は有機分子から選択されるレドックス対相手材のナノスケールのコーティング又は粒子に付着されるか又は結合され、前記レドックス対相手材と前記グラフェンシートとが疑似静電容量のためのレドックス対を形成することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項4】
請求項3に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記固有導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、スルホン化ポリアニリン、スルホン化ポリピロール、スルホン化ポリチオフェン、スルホン化ポリフラン、スルホン化ポリアセチレン、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項5】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノードに接続されるか又は一体化されるアノードタブ及び前記カソードに接続されるか又は一体化されるカソードタブをさらに含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項6】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノード、前記カソード、前記セパレーター、及び前記電解質をその中に密閉してシールドバッテリーを形成するケーシングをさらに含むことを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項7】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、アノード活物質の前記巻取りアノードロールが、(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において前記主表面の一方又は両方のどちらかが前記アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)前記アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項8】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、カソード活物質の前記巻取りカソードロールが(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において前記主表面の一方又は両方のどちらかが前記カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)前記カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項9】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノード又は前記カソード内の前記電解質及び前記単離されたグラフェンシートが、前記アノードロール又は前記カソードロールに巻き取られる電解質含浸層状グラフェン構造物に組み立てられ、前記単離されたグラフェンシートが、0.4nm~10nmの厚さを有する薄い電解質層によって交互に離隔され、前記層状グラフェン構造物が、前記電解質が除去された前記層状構造物の乾燥された状態において測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項10】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記液体電解質が水性電解質、有機電解質、イオン性液体電解質、又は有機電解質とイオン性電解質との混合物を含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項11】
アノード集電体と、アノードと、カソードと、カソード集電体と、前記アノード及び前記カソードを電子的に隔てるイオン透過セパレーターと、前記アノード及び前記カソードとイオン接触している電解質とを含む巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノード及び前記カソードが、厚さ5nm未満の薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成される電解質含浸層状グラフェン構造物の巻取りロールを含有し、前記複数のグラフェンシートが前記セパレーターに垂直な所望の方向に沿って略整列され、前記アノードの巻取りロールと前記カソードの巻取りロールが、ロールされていない平板状のイオン透過セパレーターによって分離されており、ロールされていない平板状の前記イオン透過セパレーターが、前記アノードの巻取りロールおよび前記カソードの巻取りロールと接する面積よりも大きい表面積を有し、前記層状グラフェン構造物が、前記電解質が除去された前記層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項12】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、リチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタであり、前記カソードが、前記カソードロール長さ及び前記カソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを有するカソード活物質の前記巻取りカソードロールを含有し、前記アノードが、プレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質を含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項13】
請求項12に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノードが、固体又は多孔性支持基材上にコートされるプレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質層の1層又は2層のロールを含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項14】
請求項11に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、リチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタであり、前記カソードが、前記カソードロール長さ及び前記カソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを有するカソード活物質の前記巻取りカソードロールを含有し、前記アノードが、プレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質を含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項15】
請求項14に記載の巻きスーパーキャパシタにおいて、前記アノードが、固体又は多孔性支持基材上にコートされるプレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質層の1層又は2層のロールを含有することを特徴とする巻きスーパーキャパシタ。
【請求項16】
直列に内部接続される請求項1に記載の複数の巻きスーパーキャパシタを含有することを特徴とするスーパーキャパシタ。
【請求項17】
並列に内部接続される請求項1に記載の複数の巻きスーパーキャパシタを含有することを特徴とするスーパーキャパシタ。
【請求項18】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタを製造するための方法であって、
(A)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってアノードロールを作製するステップと、
(B)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、少なくとも前記アノードロール又は前記カソードロールが、前記アノードロール厚さ又はカソードロール厚さに垂直に配向される単離されたグラフェンシートを含有するステップと、
(C)前記アノードロール幅及び前記カソードロール幅方向がセパレーター平面に略垂直であるように前記アノードロール、前記カソードロール、及び前記アノードロールと前記カソードロールとの間のイオン導電性セパレーター層を整列及び充填してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップであって、前記カソードロールおよび前記アノードロールが、ロールされていない平板状の前記イオン導電性セパレーター層によって分離されるステップと、
(D)前記スーパーキャパシタ組立体が保護ケーシングに挿入される前又は後に電解質をバッテリー組立体に含浸させて前記巻きスーパーキャパシタを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、多孔性支持基材が、金属フォーム、金属箔又はスクリーン、穴あき金属シートをベースとした構造物、金属繊維マット、金属ナノワイヤーマット、導電性ポリマーナノファイバーマット、導電性ポリマーフォーム、導電性ポリマーをコートした繊維フォーム、炭素フォーム、黒鉛フォーム、炭素エーロゲル、炭素キセロゲル、グラフェンフォーム、酸化グラフェンフォーム、還元酸化グラフェンフォーム、炭素繊維フォーム、黒鉛繊維フォーム、剥離黒鉛フォーム、又はそれらの組合せから選択される電気導電性多孔性層を含有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタを製造するための方法であって、(a)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーを含有するアノードを作製するステップと、(b)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、前記カソード活物質が、前記カソードロール長さ及び前記カソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有するステップと、(c)カソードロール幅方向がセパレーター平面に略垂直であるように前記アノード、前記カソードロール、及び前記アノードと前記カソードロールとの間のイオン導電性セパレーター層を整列及び充填してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップであって、前記カソードロールおよび前記アノードロールが、ロールされていない平板状の前記イオン導電性セパレーター層によって分離されるステップと、(d)前記スーパーキャパシタ組立体が保護ケーシングに挿入される前又は後に電解質を前記スーパーキャパシタ組立体に含浸させて前記巻きスーパーキャパシタを形成するステップを含む方法。
【請求項21】
請求項1に記載の巻きスーパーキャパシタを製造するための方法であって、(a)電解質含浸層状グラフェン構造物の層をアノードロール長さ、アノードロール幅、及びアノードロール厚さを有するロール形状に巻き取ることによってアノードロールを作製するステップにおいて、前記電解質含浸層状グラフェン構造物が、厚さ0.3nm~10nmの薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成され、複数のグラフェンシートが、前記アノードロール長さ及びアノードロール幅に平行な且つ前記アノードロール厚さに垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び前記層状グラフェン構造物が、前記電解質が除去された前記層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有するステップと、(b)電解質含浸層状グラフェン構造物の層をカソードロール長さ、カソードロール幅、及びカソードロール厚さを有するロール形状に巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、前記電解質含浸層状グラフェン構造物が、厚さ0.3nm~10nmの薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成され、複数のグラフェンシートが、前記カソードロール長さ及びカソードロール幅に平行な且つ前記カソードロール厚さに垂直な所望の方向に沿って略整列されるステップと、(c)アノードロール幅及びカソードロール幅方向が前記セパレーター平面に略垂直であるように前記アノードロール、前記カソードロール、及び前記アノードロールと前記カソードロールとの間のイオン導電性セパレーターを一緒に整列してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップであって、前記カソードロールおよび前記アノードロールが、ロールされていない平板状の前記イオン導電性セパレーターによって分離されるステップと、(d)前記スーパーキャパシタ組立体を保護ケーシング内に封止して前記巻きスーパーキャパシタを形成するステップとを含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記アノードロール又は前記カソードロール内の電解質含浸層状グラフェン構造物の前記層が、
(A)複数の単離されたグラフェンシートが液体又はゲル電解質中に分散されているグラフェン分散体を調製するステップと、
(B)前記グラフェン分散体を強制組立手順に供し、前記複数のグラフェンシートと前記電解質とを層平面及び層厚さを有する前記電解質含浸層状グラフェン構造物の層に組み立てるようにさせるステップにおいて、前記複数のグラフェンシートが、0.4nm~10nmの厚さを有する薄い電解質層によって交互に離隔され、前記複数のグラフェンシートが、前記層平面に平行な且つ前記層厚さ方向に垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び前記層状グラフェン構造物が、前記電解質が除去された前記層状構造物の乾燥された状態において測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有するステップと、
(C)前記電解質含浸層状グラフェン構造物の前記層をロール形状に巻き取るステップを含む手順によって作製されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記強制組立手順が、前記グラフェン分散体の第1の層を支持コンベヤーの表面上に導入する工程と、前記コンベヤー上に支持されたグラフェン懸濁液の前記層を少なくとも一対の加圧ローラーに通して前記グラフェン分散体層の厚さを低減する工程と、前記複数のグラフェンシートを前記コンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させて電解質含浸層状グラフェン構造体の層を形成する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記グラフェン分散体の第2の層を電解質含浸層状グラフェン構造体の前記層の表面上に導入して2層層状構造体を形成し、前記2層層状構造体を少なくとも一対の加圧ローラーに通させてグラフェン分散体の前記第2の層の厚さを低減し、前記複数のグラフェンシートを前記コンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させて電解質含浸層状グラフェン構造体の層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、前記電解質含浸層状構造体を圧縮又はロールプレス加工して前記含浸層状構造体中の薄い電解質層の厚さを低減し、グラフェンシートの配向を改良し、過剰な電解質を前記含浸層状グラフェン構造体から押し出して前記スーパーキャパシタ電極を形成する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、ロールツーロール法であって、前記強制組立手順が、前記支持コンベヤーを連続フィルムの形態でフィーダーローラーから堆積領域に供給する工程と、前記グラフェン分散体を前記支持コンベヤーフィルムの表面上に連続的に又は不連続に堆積させてその上にグラフェン分散体の前記層を形成する工程と、コンベヤーフィルム上に支持された電解質含浸層状グラフェン構造体の前記層をコレクターローラー上に集める工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法において、複数のロールに巻き取られる前に前記電解質含浸層状グラフェン構造物を所望の寸法の複数のシートに切断又はスリットするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法において、前記電解質含浸層状グラフェン構造体を集電体に付着させる工程をさらに含み、前記グラフェンシートが前記集電体の主表面に平行に整列されることを特徴とする、方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法において、前記グラフェン分散体が、前記グラフェン分散体を得るために十分な長さの時間の間反応温度において反応器内の酸化性液体中に粉末又は繊維形態の黒鉛材料を浸漬することによって調製された酸化グラフェン分散体を含有し、前記黒鉛材料が、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択され、前記酸化グラフェンが5重量%以上の酸素含有量を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年5月10日に出願された米国特許出願第15/591,483号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般的に、スーパーキャパシタの分野に関し、より詳しくは、グラフェンをベースとした巻き電極、このような電極を備える巻きスーパーキャパシタに関し、及び同スーパーキャパシタを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ウルトラキャパシタ又はスーパーキャパシタとしても知られる、電気化学キャパシタ(EC)は、ハイブリッド電気車(EV)においての使用が考えられており、そこでそれらは電気自動車において使用されるバッテリーを補い、商業的に実行可能であるバッテリー式自動車の製造の最大の技術的障害である、急速な加速のために必要とされる爆発的な力を提供することができる。バッテリーは経済速度での走行のためにさらに使用されるが、スーパーキャパシタ(バッテリーよりもずっと急速にエネルギーを放出するそれらの能力を有する)は、合流、通過、緊急操縦、及びヒルクライミングのために車が加速する必要があるときにはいつでも始動する。また、スーパーキャパシタは十分なエネルギーを貯えて許容範囲の駆動範囲を提供しなければならない。付加的なバッテリー容量と比べて費用効果、体積効果、及び重量効果が高くなるためにそれらは、十分なエネルギー密度(体積エネルギー密度及び質量エネルギー密度)並びに出力密度(体積出力密度及び質量出力密度)と長いサイクル寿命とを組み合わせなければならず、コスト目標も同様に達成しなければならない。
【0004】
また、システム設計者はそれらの特性及び利益に精通しているので、電気化学キャパシタはエレクトロニクス産業に受け入れられている。電気化学キャパシタは本来、軌道レーザーのためのエネルギーを駆動する大きな爆発を提供するために開発された。相補型金属酸化物半導体(CMOS)メモリーバックアップ用途において、例えば、1/2立方インチしか体積を有しない1ファラドの電気化学キャパシタがニッケルカドミウムバッテリー又はリチウムバッテリーに取って代わることができ、数ヶ月間にわたってバックアップ電源を提供することができる。与えられた印加電圧について、与えられた電荷に対応する電気化学キャパシタ内の貯蔵エネルギーは、同じ電荷の通過のために相当するバッテリーシステム内に貯蔵可能な貯蔵エネルギーの半分である。それにもかかわらず、電気化学キャパシタは極めて魅力的な電源である。バッテリーと比較して、それらはメンテナンスを必要とせず、ずっと高いサイクル寿命を提供し、非常に簡単な充電回路を必要とし、「メモリ効果」を受けず、一般的にずっと安全である。化学的ではなく物理的エネルギー貯蔵は、それらの安全な作業及び極めて高いサイクル寿命の主要な理由である。おそらく最も重要なことには、キャパシタは、バッテリーよりも高い出力密度を提供する。
【0005】
従来のキャパシタに対して電気化学キャパシタの高い体積静電容量密度(従来のキャパシタより10~100倍高い)は、多孔性電極を使用して大きな有効「プレート領域」を作ること及び拡散二重層内にエネルギーを貯えるにより得られる。電圧が加えられるときに固体-電解質界面に自然に作られるこの二重層は、約1nmしか厚さを有さず、したがって極めて小さな有効「プレート分離」を形成する。このようなスーパーキャパシタは一般的に電気二重層キャパシタ(EDLC)と称される。二重層キャパシタは、液体電解質中に浸漬された、例えば活性炭などの高表面積電極材料に基づいている。分極二重層が電極-電解質界面に形成され、高い静電容量を提供する。これは、スーパーキャパシタの比静電容量が電極材料の比表面積に正比例していることを意味する。この表面積は、電解質によって接触可能でなければならず、得られた界面領域は、いわゆる電気二重層の電荷を吸収するほど十分に大きくなければならない。
【0006】
いくつかの電気化学キャパシタにおいて、貯蔵エネルギーは、疑似静電容量効果によってさらに増加され、酸化還元電荷移動などの電気化学現象のために固体-電解質界面に再び生じる。このようなスーパーキャパシタは一般的に、疑似キャパシタ又はレドックススーパーキャパシタと称される。第3のタイプのスーパーキャパシタは、予備リチウム化された黒鉛アノードと、EDLCカソード(例えば典型的に活性炭粒子をベースとする)と、リチウム塩電解質とを含有するリチウムイオンキャパシタである。
【0007】
しかしながら、現在の最新技術スーパーキャパシタに伴ういくつかの重大な技術的問題がある:
【0008】
(1)活性炭電極の基づいたスーパーキャパシタの実績は、実験的に測定された静電容量が常に、ダイポール層の測定された表面積及び幅から計算された幾何形状静電容量よりもずっと低いことを示す。非常に高表面積の活性炭のために、典型的に「理論」静電容量の約20~40パーセントだけが観察された。この期待はずれの性能は、微小細孔(<2nm、主に<1nm)の存在に関連しており、電解質によっていくつかの細孔が接触可能でないこと、湿潤欠陥、及び/又は反対電荷をもつ表面が約1~2nm未満離れている細孔内に二重層を良好に形成することができないことに帰せられる。活性炭において、炭素の供給源及び熱処理温度に応じて、驚くべき量の表面が、液体電解質に接触可能でないこのような微小細孔の形態であり得る。
【0009】
(2)公開文献及び特許文書にしばしば請求されているように(活物質の重量だけに基づいた)電極レベルにおいて高い質量静電容量にもかかわらず、これらの電極は残念なことに、(全セル重量又はパック重量に基づいた)スーパーキャパシタセル又はパックレベルにおいて高い容量を有するエネルギー蓄積デバイスを提供することができない。これは、これらの報告において、電極の実際の質量負荷及び活物質の見掛密度は非常に低いという見解による。多くの場合、電極の活物質の質量負荷(面密度)は10mg/cmよりも著しく低く(面密度=活物質の量/電極の厚さ方向に沿う電極の断面積)、活物質の見掛体積密度又はタップ密度は典型的に、活性炭の比較的大きな粒子についても0.75g/cm-3未満(より典型的には0.5g/cm-3未満及び最も典型的には0.3g/cm-3未満)である。
【0010】
低い質量負荷は第一に、従来のスラリーコーティング手順を使用してより厚い電極(150μmよりも厚い)を得ることができないためである。これは、想像に難くないと思われるが些細な課題ではなく、実際は電極厚さはセル性能を最適化する目的のために任意に且つ自由に変えることができる設計パラメーターではない。反対に、より厚い試料は極めて脆くなるか又は不十分な構造統合性になる傾向があり、そしてまた、多量の結合剤樹脂の使用を必要とする。これらの問題は、グラフェン材料系電極については特に深刻である。100μmよりも厚く液体電解質に十分に接触可能なままである細孔を有する高度に多孔性のままであるグラフェンをベースとした電極を製造することはこれまで可能ではなかった。低い面密度及び低い体積密度(薄い電極及び不十分な充填密度に関係がある)は、スーパーキャパシタセルの比較的低い体積静電容量及び低い体積エネルギー密度をもたらす。
【0011】
より小型で携帯用のエネルギー貯蔵システムに対する需要が拡大しており、エネルギー蓄積デバイスの体積の利用度を高める大きな目的がある。高い体積静電容量及び高い質量負荷を可能にする新規な電極材料及び設計は、改良されたセル体積静電容量及びエネルギー密度を達成するために不可欠である。
【0012】
(3)これまでの十年間の間、グラフェン、カーボンナノチューブ系複合材、多孔性黒鉛酸化物、及び多孔性メソカーボンなどの多孔性炭素系材料を利用して増加した体積静電容量を有する電極材料を開発する多くの試みがなされている。このような電極材料を特徴とするこれらの実験的なスーパーキャパシタは高いレートで充放電され得ると共に、また、電極の大きな体積静電容量(電極体積に基づいて、大抵の場合、50~150F/cm)を示すが、<1mg/cmのそれらの典型的な活性質量負荷、<0.2g/cm-3のタップ密度、及び数十マイクロメートル(<<100μm)までの電極厚さは大抵の市販の電気化学キャパシタ(すなわち10mg/cm、100~200μm)において使用されるものよりもさらに著しく低く、それは、比較的低い面積及び体積静電容量並びに低い体積エネルギー密度を有するエネルギー蓄積デバイスをもたらす。
【0013】
(4)グラフェン系スーパーキャパシタについて、以下に説明される、依然として解決されなければならないさらに別の問題がある:
【0014】
ナノグラフェン材料は最近、非常に高い熱伝導率、高い電気導電率、及び高い強度を示すことがわかった。グラフェンの別の著しい特性はその非常に高い比表面積である。単一グラフェンシートは、相当する単層CNT(内表面は電解質によって接触可能でない)によって提供される約1,300m/gの外表面積とは対照的に、(液体電解質によって接触可能である)約2,675m/gの比外表面積を提供する。グラフェンの電気導電率はCNTの電気導電率よりもわずかに高い。
【0015】
本出願人(A.Zhamu及びB.Z.Jang)並びに彼らの同僚が初めて、スーパーキャパシタ用途のためのグラフェン-及びその他のナノ黒鉛系ナノ材料を検討した[以下の文献1~5を参照されたい。最初の特許出願は2006年に提出され、2009年に発行された]。2008年の後、研究者らはスーパーキャパシタ用途のためのグラフェン材料の意義を理解し始めた。
【0016】
文献のリスト:
1. Lulu Song,A.Zhamu,Jiusheng Guo、及びB.Z.Jang “Nano-scaled Graphene Plate Nanocomposites for Supercapacitor Electrodes” 米国特許第7,623,340号明細書(11/24/2009)。
2. Aruna Zhamu及びBor Z.Jang、“Process for Producing Nano-scaled Graphene Platelet Nanocomposite Electrodes for Supercapacitors”、米国特許第20090092747号明細書(2009/04/09)。
3. Aruna Zhamu及びBor Z.Jang、“Graphite-Carbon Composite Electrodes for Supercapacitors”米国特許第20090059474号明細書(2009/03/05)。
4. Aruna Zhamu及びBor Z.Jang、“Method of Producing Graphite-Carbon Composite Electrodes for Supercapacitors”米国特許第20090061312号明細書(2009/03/05)。
5. Aruna Zhamu及びBor Z.Jang、“Graphene Nanocomposites for Electrochemical cell Electrodes”、米国特許第20100021819号明細書(2010/01/28)。
【0017】
しかしながら、個々のナノグラフェンシートは、再積層される傾向が大きく、スーパーキャパシタ電極内の電解質によって接触可能である比表面積を事実上低減する。このグラフェンシートの重なり問題の重要性は以下のように説明されてもよい:l(長さ)×w(幅)×t(厚さ)の寸法及び密度ρを有するナノグラフェンプレートリットについて、推定表面積/単位質量はS/m=(2/ρ)(1/l+1/w+1/t)である。ρ≅2.2g/cm、l=100nm、w=100nm、及びt=0.34nm(単一層)によって、2,675m/gのすばらしいS/m値が得られ、それは最新技術のスーパーキャパシタにおいて使用される大抵の市販のカーボンブラック又は活性炭材料のS/m値よりもずっと大きい。2つの単一層グラフェンシートが積層して二重層グラフェンを形成する場合、比表面積は1,345m/gに低減される。3層グラフェン、t=1nmについては、S/m=906m/gが得られる。より多くの層が一緒に積層される場合、比表面積はさらに著しく低減される。
【0018】
これらの計算は、個々のグラフェンシートが再積層するのを防ぐ方法を見出すことが極めて重要であり、それらが部分的に再積層しても、得られた複数層構造体が十分なサイズの層間細孔を有することを示唆する。これらの細孔は、電解質による接触容易性を可能にすると共に電気二重層電荷の形成を可能にするために十分に大きくなければならず、それはおそらく、少なくとも1~2nmの細孔径を必要とする。しかしながら、これらの細孔又はグラフェン間の間隔は、大きいタップ密度(したがって、単位体積当たりの大きい静電容量又は大きい体積エネルギー密度)を確実にするために十分に小さくなければならない。残念なことに、従来のプロセスにより製造されたグラフェンをベースとした電極の典型的なタップ密度は0.3g/cm未満、及び最も典型的には<<0.2g/cmである。多くは、大きな細孔径及び高い多孔性レベルを有する要件と高いタップ密度を有する要件とは、スーパーキャパシタにおいて互いに排他的であると考えられる。
【0019】
グラフェンシートをスーパーキャパシタ電極活物質として使用する別の主な技術的障害は、従来のグラフェン-溶剤スラリーコーティングプロセスを使用して固体集電体(例えばAl箔)の表面上に厚い活物質層を形成するという課題である。このような電極において、グラフェン電極は典型的に、多量の結合剤樹脂を必要とする(したがって、非活物質又はオーバーヘッド物質/成分に対して著しく低減された活物質の比率)。さらに、50μmよりも厚いこのようにして作製されたどのグラフェン電極も脆く、弱い。これらの問題に対する有効な解決策はなかった。
【0020】
したがって、高い活物質の質量負荷(高い面密度)、高い見掛密度(高いタップ密度)を有する活物質、大きな電極体積、高い体積静電容量、及び高い体積エネルギー密度を有するスーパーキャパシタが明らかに且つ切実に必要とされている。グラフェンをベースとした電極については、グラフェンシートの再積層、大きな比率の結合剤樹脂の必要性、及び厚いグラフェン電極層を製造する難しさなどの問題もまた克服しなければならない。
【0021】
我々の研究グループは、グラフェンを発見する最初のものであった[B.Z.Jang及びW.C.Huang、“Nano-scaled Graphene Plates”、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,473号明細書;現在は米国特許第7,071,258号明細書(07/04/2006)]。NGP及びNGPナノ複合体を製造するための方法は最近、我々によって検討された[Bor Z.Jang及びA Zhamu、“Processing of Nano Graphene Platelets (NGPs)and NGP Nanocomposites:A Review,”J.Materials Sci.43(2008)5092-5101]。
【0022】
本出願の請求の範囲を定義する目的のために、グラフェン材料(又はナノグラフェンプレートリット、NGP)には、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン(例えばB又はNによってドープされた)の単一層及び複数層(典型的に10層より少ない)の離散シート/プレートリットが含まれる。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは典型的に、0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOなど)は0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェン以外、全てのグラフェン材料は、0.001重量%~50重量%の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等々)を有する。これらの材料はここでは、非純粋なグラフェン材料と称される。
【0023】
おそらく、グラフェンフォーム構造体は、大きな厚さを有するように製造することができ、したがって可能性としては良いスーパーキャパシタ電極材料である。一般的に言えば、フォーム又は発泡材料は、細孔(又はセル)及び細孔壁(固体材料)から構成される。細孔は相互接続されて連続気泡フォームを形成することができる。グラフェンフォームはグラフェン材料を含有する細孔及び細孔壁から構成される。しかしながら、グラフェンフォーム構造体の使用は、著しい欠点がないわけではない。例えば、連続気泡形態であってもグラフェンフォームの細孔構造中に液体電解質を含浸することは非常に難しい(製造されると、液体電極によって独立気泡フォームを含浸することは不可能である)。これらの連続気泡(細孔)はサイズが非常に大きくなければならず、相互接続されて電解質が入ることができなければならない。残念なことに、これはまた、非常に低いタップ密度、したがって、不十分な体積静電容量及びエネルギー密度を意味する。
【0024】
さらに、グラフェン系フォーム構造体の製造は、以下に説明される、他の問題も有する。グラフェンフォームを製造する3つの主な方法がある:
【0025】
第1の方法は、酸化グラフェン(GO)水性懸濁液を高圧オートクレーブ内で封止する工程と、GO懸濁液を高圧(数十又は数百気圧)下で典型的に180~300℃の範囲の温度において長時間にわたって(典型的に12~36時間)加熱する工程とを典型的に必要とする酸化グラフェンヒドロゲルの熱水還元である。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Y.Xu,et al.、“Self-Assembled Graphene Hydrogel via a One-Step Hydrothermal Process” ACS Nano 2010,4,4324~4330。この問題に伴なういくつかの主要な問題がある:(a)高圧要件によって、それは工業規模の製造のために実用的でない方法になる。1つには、この方法は、連続的に実施することができない。(b)不可能ではないにしても、得られた多孔性構造体の細孔径及び多孔度のレベルの制御を行なうことは困難である。(c)得られた還元酸化グラフェン(RGO)材料の形状及び大きさを変化させるという観点から柔軟性はない(例えばそれをフィルム形状に製造することはできない)。(d)この方法は、水中に懸濁された超低濃度のGOの使用を必要とする(例えば2mg/mL=2g/L=2kg/kL)。非炭素元素の除去によって(50%まで)、2kg未満のグラフェン材料(RGO)/1000リットルの懸濁液を製造することができるだけである。さらに、高温及び高圧の条件に耐えなければならない1000リットル反応器を運転することは実質的に不可能である。明らかに、これは、多孔性グラフェン構造体の大量生産のためのスケーラブルな方法ではない。
【0026】
第2の方法はテンプレート支援触媒CVD法に基づいており、それは、犠牲テンプレート(例えばNiフォーム)上のグラフェンのCVD堆積を必要とする。グラフェン材料は、Niフォーム構造体の形状及び寸法に合致する。それ故、エッチング剤を使用してNiフォームをエッチングにより除去し、本質的に連続気泡フォームであるグラフェン骨格のモノリスを後に残す。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Zongping Chen,et al.、“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapour deposition,” Nature Materials,10(June 2011)424-428。このような方法に伴なういくつかの問題がある:(a)触媒CVDは本質的に、非常に緩慢な、高度にエネルギー集約的な、且つ費用がかかる方法である。(b)エッチング剤は典型的に非常に望ましくない化学物質であり、得られたNi含有エッチング溶液は汚染源である。溶解されたNi金属をエッチング剤溶液から回収又は再循環させることは非常に難しく且つ費用がかかる。(c)Niフォームがエッチングにより除去されているときにセル壁に損傷を与えずにグラフェンフォームの形状及び寸法を維持することは難題である。得られたグラフェンフォームは典型的に非常に脆く壊れやすい。(d)犠牲金属フォーム内の特定の箇所はCVD前駆体ガスに接触可能でない場合があるので、金属フォームの内部へのCVD前駆体ガス(例えば炭化水素)の輸送は難しいことがあり、不均一な構造体をもたらすことがある。
【0027】
また、グラフェンフォームを製造する第3の方法は、自己集合法を使用して酸化グラフェンシートでコートされる犠牲材料(例えばコロイドポリスチレン粒子、PS)を利用する。例えば、Choiらは、化学的に改質したグラフェン(CMG)紙を2つの工程において作製した:CMGとPS(2.0μmのPS球)との混合水性コロイド懸濁液の真空濾過によって自立PS/CMGフィルムを製造し、その後に、PSビードを除去して3Dマクロ細孔を生成する。[B. G. Choi,et al.、“3D Macroporous Graphene Frameworks for Supercapacitors with High Energy and Power Densities,”ACS Nano,6(2012)4020-4028.]Choiらは、濾過によって整列自立PS/CMG紙を製造し、それは負に帯電したCMGコロイド懸濁液及び正に帯電したPS懸濁液を別々に調製することから開始した。CMGコロイド懸濁液とPS懸濁液との混合物を制御されたpH(=2)下で溶液中に分散させ、そこで2つの化合物は同じ表面電荷を有した(CMGについては+13±2.4mV及びPSについては+68±5.6mVのゼータ電位値)。pHが6に上昇するとき、それらの間の静電相互作用及び疎水性特性のためにCMG(ゼータ電位=-29±3.7mV)及びPS球(ゼータ電位=+51±2.5mV)が集められ、これらはその後、濾過プロセスによってPS/CMG複合紙に統合された。また、この方法はいくつかの欠点を有する:(a)この方法は、酸化グラフェン及びPS粒子の両方の非常に時間のかかる化学処理を必要とする。(b)トルエンによるPSの除去はまた、弱化したマクロ多孔性構造体をもたらす。(c)トルエンは高度に調節された化学物質であり、非常に注意して処理されなければならない。(d)細孔径は典型的に過度に大きく(例えば数μm)、多くの有用な用途のために大きすぎる。
【0028】
上記の考察は明らかに、高い比表面積を有するグラフェン電極(例えばグラフェンフォーム構造体)を製造するためのあらゆる先行技術の方法又はプロセスが大きな欠陥を有することを示す。したがって、従来のグラフェンフォーム系電極のこれらの一般的な問題を有さない高導電性、機械的に強靭なグラフェン系電極を多量に製造するための費用効果が高いプロセスを提供することが本発明の目的である。このプロセスはまた、多孔度のレベル及び細孔径の柔軟な設計及び制御を可能にしなければならない。具体的に、このプロセスは、グラフェンの再積層、低いタップ密度、小さい達成可能な電極厚さ、低い達成可能な活物質の質量負荷、(単位重量又は体積当たりの)低い比静電容量、及び低い質量エネルギー密度及び体積エネルギー密度の問題を克服するグラフェン系電極の製造を可能にする。
【0029】
本発明の別の目的は、大きい電極体積、高いタップ密度、高い活物質の質量負荷、グラフェンの再積層がほとんど又は全くないこと、高い比静電容量、及び高いエネルギー密度を有するグラフェン系電極を含有するスーパーキャパシタを提供することである。
【発明の概要】
【0030】
本発明は、上記の要件のすべてを満たす巻きスーパーキャパシタを提供する。巻きスーパーキャパシタは、アノードと、カソードと、アノード及びカソードを電子的に隔てる多孔性セパレーターと、アノード及びカソードとイオン接触している電解質とを含み、そこでアノードが、アノードロール長さ、アノードロール幅、及びアノードロール厚さを有するアノード活物質の巻取りアノードロールを含有し、アノード活物質が、アノードロール長さ及びアノードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及び/又はカソードが、カソードロール長さ、カソードロール幅、及びカソードロール厚さを有するカソード活物質の巻取りカソードロールを含有し、カソード活物質が、カソードロール長さ及びカソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及びアノードロール幅及び/又はカソードロール幅がセパレーター平面に略垂直である。
【0031】
特定の実施形態において、単離されたグラフェンシートは、純粋なグラフェン又は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン、又はそれらの組合せから選択される、2重量%超の非炭素元素の含有量を有する、非純粋なグラフェン材料から選択される。
【0032】
疑似キャパシタを形成するために、単離されたグラフェンシートは、本質的導電性ポリマー、遷移金属酸化物、及び/又は有機分子から選択されるレドックス対の相手のナノスケールのコーティング又は粒子に付着されるか又は結合されてもよく、レドックス対の相手及び前記グラフェンシートは疑似静電容量のためのレドックス対を形成する。本質的導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、スルホン化ポリアニリン、スルホン化ポリピロール、スルホン化ポリチオフェン、スルホン化ポリフラン、スルホン化ポリアセチレン、又はそれらの組合せから選択されてもよい。
【0033】
液体又はゲル電解質が水性電解質、有機電解質、イオン性液体電解質、又は有機電解質とイオン性電解質との混合物を含有する。使用することができる電解質のタイプに特に制限はない。先行技術のスーパーキャパシタにおいて使用される任意の電解質を当該巻きスーパーキャパシタにおいて使用するために導入することができる。
【0034】
典型的に、巻きスーパーキャパシタはさらに、アノードに接続されるか又は一体化されるアノードタブ及びカソードに接続されるか又は一体化されるカソードタブを含有する。好ましくは及び典型的に、巻きスーパーキャパシタはさらに、アノード、カソード、セパレーター、及び電解質をその中に密閉してシールドバッテリーを形成するケーシングを含む。
【0035】
巻きスーパーキャパシタの特定の実施形態(本明細書においてタイプI巻きスーパーキャパシタと称される)において、アノード活物質の巻取りアノードロールは、(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において主表面の一方又は両方のどちらかがアノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有する。特定の実施形態において、カソード活物質の巻取りカソードロールは、(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において主表面の一方又は両方のどちらかがカソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有する。
【0036】
特定の好ましい実施形態において、本発明の巻きスーパーキャパシタのアノード又はカソード内の電解質及び単離されたグラフェンシートは、アノードロール又はカソードロールに巻き取られる電解質含浸層状グラフェン構造物に組み立てられ、単離されたグラフェンシートは、0.4nm~10nmの厚さを有する薄い電解質層によって交互に離隔され、層状グラフェン構造物は、前記電解質が除去された層状構造物の乾燥された状態において測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有する。
【0037】
したがって、本発明の特に望ましい実施形態は、アノード集電体と、アノードと、カソードと、カソード集電体と、アノード及びカソードを電子的に隔てるイオン透過セパレーターと、アノード及びカソードとイオン接触している電解質とを含む巻きスーパーキャパシタ(タイプII巻きスーパーキャパシタ)であり、そこでアノード及び/又はカソードが、厚さ5nm未満(典型的に0.3nm~5nm)の薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成される電解質含浸層状グラフェン構造物の巻取りロールを含有し、複数のグラフェンシートがセパレーターに垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び層状グラフェン構造物が、電解質が除去された層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有する。
【0038】
また、本発明は、スーパーキャパシタのアノード又はカソードにおいて使用するための電極ロール(又は巻き電極)を提供する。電極ロール(アノードロール又はカソードロール)は、ロール長さ、ロール幅、及びロール厚さを有し、厚さ0.3nm~10nmの薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成される電解質含浸層状グラフェン構造物を含有し、そこで複数のグラフェンシートが、ロール長さ及びロール幅に平行な且つロール厚さに垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び層状グラフェン構造物が、電解質が除去された層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有する。
【0039】
巻きスーパーキャパシタ(タイプI又はタイプIIのどちらか)は、電気二重層キャパシタ(EDLC)、疑似又はレドックススーパーキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、又はナトリウムイオンキャパシタであってもよい。一実施例において、スーパーキャパシタはリチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタであり、そこでカソードが、カソードロール長さ及びカソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを有するカソード活物質の巻取りカソードロールを含有し、アノードが、プレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質を含有する。好ましくは、アノードは、固体又は多孔性支持基材上にコートされるプレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質層の1層又は2層のロールを含有する。
【0040】
特定の実施形態において、巻きスーパーキャパシタはリチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタであり、そこでカソードが、カソードロール長さ及びカソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを有するカソード活物質の巻取りカソードロールを含有し、アノードが、プレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質を含有する。好ましくは、アノードが、固体又は多孔性支持基材上にコートされるプレリチウム化アノード活物質又はプレナトリウム化アノード活物質層の1層又は2層のロールを含有する。
【0041】
さらに、本発明は、直列に内部接続される複数の本発明の巻きスーパーキャパシタを含有するスーパーキャパシタを提供する。また、本発明は、並列に内部接続される複数の本発明の巻きスーパーキャパシタを含有するスーパーキャパシタを提供する。
【0042】
また、本発明は、タイプI巻きスーパーキャパシタを製造するための方法を提供する。方法は、
(a)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってアノードロールを作製するステップと、
(b)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、少なくともアノードロール又はカソードロールが、アノードロール厚さ又はカソードロール厚さに垂直に配向される単離されたグラフェンシートを含有するステップと、
(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅方向がセパレーター平面に略垂直であるようにアノードロール、カソードロール、及びアノードロールとカソードロールとの間のイオン導電性セパレーター層を整列及び充填してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップと、
(d)スーパーキャパシタ組立体が保護ケーシングに挿入される前又は後に電解質をバッテリー組立体に含浸させて巻きスーパーキャパシタを形成するステップを含む。
【0043】
本発明の別の実施形態は、巻きスーパーキャパシタ(例えばリチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタ)を製造するための方法である。方法は、(a)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーを含有するアノード(必ずしもロール形状ではない)を作製するステップと、(b)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコート又は含浸された固体又は多孔性支持基材の層をロール形状に巻くか又は巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、カソード活物質が、カソードロール長さ及びカソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有するステップ(層又はロールは、平面を一緒に画定する長さ及び幅を有する)と、(c)カソードロール幅方向がセパレーター平面に略垂直であるようにアノード、カソードロール、及びアノードとカソードロールとの間のイオン導電性セパレーター層を整列及び充填してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップと、(d)スーパーキャパシタ組立体が保護ケーシングに挿入される前又は後に電解質をスーパーキャパシタ組立体に含浸させて巻きスーパーキャパシタを形成するステップを含む。
【0044】
好ましくは、多孔性支持基材は、金属フォーム、金属箔又はスクリーン、穴あき金属シートをベースとした構造物、金属繊維マット、金属ナノワイヤーマット、導電性ポリマーナノファイバーマット、導電性ポリマーフォーム、導電性ポリマーをコートした繊維フォーム、炭素フォーム、黒鉛フォーム、炭素エーロゲル、炭素キセロゲル、グラフェンフォーム、酸化グラフェンフォーム、還元酸化グラフェンフォーム、炭素繊維フォーム、黒鉛繊維フォーム、剥離黒鉛フォーム、又はそれらの組合せから選択される電気導電性多孔性層を含有する。
【0045】
別の好ましい実施形態は、タイプII巻きスーパーキャパシタを製造するための方法である。方法は、(a)電解質含浸層状グラフェン構造物の層をアノードロール長さ、アノードロール幅、及びアノードロール厚さを有するロール形状に巻き取ることによってアノードロールを作製するステップにおいて、電解質含浸層状グラフェン構造物が、厚さ0.3nm~10nmの薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成され、複数のグラフェンシートが、アノードロール長さ及びアノードロール幅に平行な且つアノードロール厚さに垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び層状グラフェン構造物が、電解質が除去された層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有するステップと、(b)電解質含浸層状グラフェン構造物の層をカソードロール長さ、カソードロール幅、及びカソードロール厚さを有するロール形状に巻き取ることによってカソードロールを作製するステップにおいて、電解質含浸層状グラフェン構造物が、厚さ0.3nm~10nmの薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成され、複数のグラフェンシートが、カソードロール長さ及びカソードロール幅に平行な且つ前記カソードロール厚さに垂直な所望の方向に沿って略整列されるステップと、(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅方向がセパレーター平面に略垂直であるようにアノードロール、カソードロール、及びアノードロールとカソードロールとの間のイオン導電性セパレーターを一緒に整列してスーパーキャパシタ組立体を形成するステップと、(d)スーパーキャパシタ組立体を保護ケーシング内に封止して巻きスーパーキャパシタを形成するステップを含む。
【0046】
上記の方法において、アノードロール又はカソードロール内の電解質含浸層状グラフェン構造物の層は、(i)複数の単離されたグラフェンシートが液体又はゲル電解質中に分散されているグラフェン分散体を調製するステップと、(ii)グラフェン分散体を強制組立手順に供し、複数のグラフェンシートと電解質とを層平面及び層厚さを有する電解質含浸層状グラフェン構造物の層に組み立てるようにさせるステップにおいて、複数のグラフェンシートが、0.4nm~10nmの厚さを有する薄い電解質層によって交互に離隔され、複数のグラフェンシートが、層平面に平行な且つ層厚さ方向に垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び層状グラフェン構造物が、電解質が除去された層状構造物の乾燥された状態において測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有するステップと、(iii)前記電解質含浸層状グラフェン構造物の前記層をロール形状に巻き取るステップとを含む手順によって作製されてもよい。
【0047】
強制組立手順は、好ましくは、グラフェン分散体の第1の層を支持コンベヤーの表面上に導入する工程と、コンベヤー上に支持されたグラフェン懸濁液の層を少なくとも一対の加圧ローラーに通してグラフェン分散体層の厚さを低減する工程と、複数のグラフェンシートをコンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させ、電解質含浸層状グラフェン構造体の層を形成する工程とを含む。
【0048】
方法は好ましくはさらに、グラフェン分散体の第2の層を電解質含浸層状グラフェン構造体の層の表面上に導入して2層層状構造体を形成し、2層層状構造体を少なくとも一対の加圧ローラーに通させてグラフェン分散体の第2の層の厚さを低減すると共に複数のグラフェンシートをコンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させて電解質含浸層状グラフェン構造体の層を形成する工程を含む。コンベヤーを第3の組の加圧ローラーの方向に移動させ、グラフェン分散体の付加的な(第3の)層を2層構造体上に堆積させ、得られた3層構造体を第3の組の2つのローラーの間の間隙を通り抜けさせてさらに圧縮された電解質含浸層状グラフェン構造体を形成することによって同じ手順を繰り返してもよい。
【0049】
方法はさらに、電解質含浸層状構造体を圧縮又はロールプレス加工して含浸層状構造体中の電解質層の厚さを低減し、グラフェンシートの配向を改良し、過剰な電解質を含浸層状グラフェン構造体から押し出してスーパーキャパシタ電極を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0050】
方法は好ましくは、ロールツーロール(リールツーリール)法であって、そこで強制組立手順は、支持コンベヤーを連続フィルムの形態でフィーダーローラーから堆積領域に供給する工程と、グラフェン分散体を支持コンベヤーフィルムの表面上に連続的に又は不連続に堆積させてグラフェン分散体の層をその上に形成する工程と、コンベヤーフィルム上に支持された電解質含浸層状グラフェン構造体の層をコレクターローラー上に集める工程とを含む。
【0051】
方法はさらに、複数のロールに巻き取られる前に電解質含浸層状グラフェン構造物を所望の寸法の複数のシートに切断又はスリットするステップを含んでもよい。
【0052】
方法はさらに、電解質含浸層状グラフェン構造物を集電体に付着させるステップを含んでもよく、そこでグラフェンシートは、集電体の主表面に平行に整列される。
【0053】
グラフェン分散体は、グラフェン分散体を得るために十分な時間にわたって反応温度において反応器内の酸化性液体中に粉末又は繊維形態の黒鉛材料を浸漬することによって調製された酸化グラフェン分散体を含有してもよく、そこで黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択され、酸化グラフェンは5重量%以上の酸素含有量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A図1(A)は、純粋なグラフェンフォーム40a又は酸化グラフェンフォーム40bを製造するための方法と共に、剥離黒鉛製品(可撓性黒鉛箔及び膨張黒鉛フレーク)を製造する様々な先行技術の方法を説明するフローチャートである。
図1B図1(B)は、単に塊状の黒鉛フレーク(厚さ>100nm)又はグラフェンシート(厚さ<10nm、より好ましくは<2nm、最も好ましくは単一層グラフェン)の従来の紙、マット、フィルム、及び膜を製造するための方法を説明する略図である。全ての方法は、黒鉛材料(例えば天然黒鉛粒子)のインターカレーション及び/又は酸化処理から開始する。
図2A図2(A)は、従来の活性炭系スーパーキャパシタセルの略図である。
図2B図2(B)は、先行技術の円筒形スーパーキャパシタセルの内部構造の一部の略図であり、ロールが、アノード集電体上にコートされるアノード層、多孔性セパレーター、及びカソード集電体上にコートされるカソード層の積層構造物を含有し、それが巻き取られて円筒ロールを形成することを示す。
図2C図2(C)は、本発明の巻きスーパーキャパシタの略図である。
図2D図2(D)は、アノード又はカソード活物質をコートした固体基材をマンドレル(60又は62)の周りに巻き取って円筒ロール58又は立方ロール54を形成する方法の略図である。
図2E図2(E)は、直列に内部接続される複数の巻きセルを含有する本発明のスーパーキャパシタの略図である。
図2F図2(F)は、並列に内部接続される複数の巻きセルを含有する本発明のスーパーキャパシタの略図である。
図3図3は、電解質含浸層状グラフェン構造体の層を製造するためのロールツーロール(リールツーリール)法である。グラフェンシートは支持基材平面上に十分に整列される。次に、構造物をロール形状に巻き取る。
図4図4は、電極密度の関数としてプロットされた(従来の及び本発明の)2つの一連のスーパーキャパシタの電極の比静電容量の値である。
図5図5は、電極活物質としての分離された窒素ドープトグラフェンシート又はグラフェンフォームとEMIMBF4イオン性液体電解質とを含有する対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのラゴーンプロット(質量及び体積出力密度対質量及び体積エネルギー密度)である。スーパーキャパシタは、本発明の実施形態(巻きスーパーキャパシタ)に従って、及び比較のために、電極の従来のスラリーコーティングによって作製された。
図6図6は、集電体表面平面に対してそれぞれ、平行な及び垂直なグラフェンシートを有する2つの純粋なグラフェン系EDLCスーパーキャパシタのラゴーンプロットである。
図7図7は、電極材料としてグラフェン/ポリアニリン(PANi-Gn)を有する2つのグラフェン-導電性ポリマーレドックススーパーキャパシタ(疑似キャパシタ)のラゴーンプロットである。従来のスーパーキャパシタ(巻かれない)及び巻きスーパーキャパシタの両方を調べた。
図8図8は、電極活物質としての純粋なグラフェンシートとリチウム塩-PC/DEC有機液体電解質とを含有するリチウムイオンキャパシタ(LIC)セルのラゴーンプロットである。スーパーキャパシタは、本発明の実施形態に従って及び電極の従来のスラリーコーティングによって作製された。
図9図9は、スーパーキャパシタセル内の達成可能な活物質の比率(活物質重量/全セル重量)についてプロットされたセルレベルの質量エネルギー密度である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図2(A)に図解的に説明されるように、先行技術のスーパーキャパシタセルは典型的に、アノード集電体202(例えば厚さ12~15μmのAl箔)、アノード活物質層204(活性炭粒子232などのアノード活物質とPVDFなど、樹脂結合剤によって接着される導電性添加剤とを含有する)、多孔性セパレーター230、カソード活物質層208(活性炭粒子234などのカソード活物質と、図示しないが、樹脂結合剤によって全て接着される導電性添加剤とを含有する)、カソード集電体206(例えばAl箔)、並びにアノード活物質層204(単に「アノード層」とも称される)とカソード活物質層208(又は単に「カソード層」)との両方に配置される液体電解質から構成される。セル全体は、薄いプラスチック-アルミニウム箔積層体をベースとした封体などの保護ハウジングに入れられる。先行技術のスーパーキャパシタセルは典型的に、以下の工程を含む方法によって製造される:
a)第1の工程は、アノード活物質(例えば活性炭)の粒子、導電性充填剤(例えば黒鉛フレーク)、樹脂結合剤(例えばPVDF)を溶剤(例えばNMP)中で混合してアノードスラリーを形成する工程である。別個に、カソード活物質(例えば活性炭)の粒子、導電性充填剤(例えばアセチレンブラック)、樹脂結合剤(例えばPVDF)を溶剤(例えばNMP)中で混合して分散させてカソードスラリーを形成する。
b)第2の工程は、アノードスラリーをアノード集電体(例えばCu又はAl箔)の一方又は両方の主表面上にコートする工程と、溶剤(例えばNMP)を気化させることによってコートされた層を乾燥させて、Cu又はAl箔上にコートされた乾燥されたアノード電極を形成する工程とを含む。同様に、カソードスラリーをコートして乾燥させ、Al箔上にコートされた乾燥カソード電極を形成する。
c)第3の工程は、アノード/Al箔シート、多孔性セパレーター層、及びカソード/Al箔シートを一緒に積層して3層又は5層組立体を形成し、それを所望の大きさに切断してスリットし、積み重ねて(形状の例として)矩形構造体を形成するか又は円筒形セル構造に巻き上げる工程を含む。
d)次に、矩形又は円筒形積層構造体を積層アルミニウム-プラスチック封体又は鋼ケーシングに入れる。
e)次に、液体電解質を積層ハウジング構造体内に注入してスーパーキャパシタセルを形成する。
【0056】
この従来の方法及び得られたスーパーキャパシタセルに伴ういくつかの重大な問題がある:
1)100μmよりも厚い電極層(アノード層又はカソード層)を製造することは非常に難しく、200μmよりも厚い電極層を製造することは事実上不可能であるか又は実際的でない。これが事実であるいくつかの理由がある。厚さ100μmの電極は典型的に、スラリーコーティング設備内に少なくとも長さ30~50メートルの加熱領域を必要とし、それは非常に時間がかかり、非常にエネルギー集約的であり、費用効果が高くない。100メートルよりも長い加熱領域は珍しくはない。
2)グラフェンシートなどのいくつかの電極活物質については、50μmよりも厚い電極を実際の製造環境において連続的に製造することは可能でなかった。これは、公開のすなわち特許文献においてより厚い電極がいくつか権利請求されているという見解にもかかわらずであり、それらは実験室において小規模で作製された。実験室設定において、おそらく新しい材料を層に繰り返し加え、手作業で層を固めて電極の厚さを増加させることができる。しかしながら、このような手順を使用しても、得られた電極は非常に脆く壊れやすくなる。繰り返される圧縮はグラフェンシートの再積層をもたらし、したがって、比表面積を著しく低減し、比静電容量を低減するので、これはグラフェンをベースとした電極についてはいっそう悪い。
3)図2(A)に示されるように、従来のスーパーキャパシタによって、電極の実際の質量負荷及び活物質の見掛密度は非常に低い。多くの場合、電極の活物質の質量負荷(面密度)は10mg/cmよりも著しく低く、活性炭の比較的大きい粒子についても活物質の見掛嵩密度又はタップ密度は典型的に、0.75g/cm未満(より典型的には0.5g/cm未満及び最も典型的には0.3g/cm未満)である。さらに、セル容量に寄与せずに付加的な重量及び体積を電極に加える非常に多くの他の非活物質(例えば導電性添加剤及び樹脂結合剤)がある。これらの低い面密度及び低い嵩密度は、比較的低い体積静電容量及び低い体積エネルギー密度をもたらす。
4)従来の方法は、電極活物質(アノード活物質及びカソード活物質)を液体溶剤(例えばNMP)中に分散させて湿潤スラリーを製造する工程を必要とし、液体溶剤は、集電体表面上にコートしたとき、除去されて電極層を乾燥させなければならない。セパレーター層と共にアノード層及びカソード層を一緒に積層してハウジング内にパッケージしてスーパーキャパシタセルを製造すると、次いで液体電解質をセル内に注入する。実際において、2つの電極を湿潤させ、次に電極を乾燥させ、最後にそれらを再び湿潤させる。このような湿潤-乾燥-湿潤法は明らかに全く良い方法ではない。
5)現在のスーパーキャパシタ(例えば対称スーパーキャパシタ又は電気二重層キャパシタ、EDLC)はまだ、比較的低い質量エネルギー密度及び低い体積エネルギー密度の難点がある。市販のEDLCは約6Wh/kgの質量エネルギー密度を示し、試験EDLCセルは室温において(セルの全重量に基づいて)10Wh/kgよりも高いセルレベルエネルギー密度を示さないことが報告されている。実験的なスーパーキャパシタは、電極レベルにおいて電極の大きな体積静電容量(多くの場合50~100F/cm)を示すことができるが、これらの試験セルにおけるそれらの典型的な活性質量負荷<1mg/cm、タップ密度<0.1g/cm及び数十マイクロメートルまでの電極厚さは、大抵の市販の電気化学キャパシタにおいて使用されるものよりも著しく低いままであり、セル(デバイス)重量に基づいて比較的低い面積容量及び体積容量並びに低い体積エネルギー密度を有するエネルギー蓄積デバイスをもたらす。
【0057】
文献において、活物質の重量だけ又は電極重量のどちらかに基づいて報告されるエネルギー密度のデータは、実用スーパーキャパシタセル又はデバイスのエネルギー密度に直接に変換することができない。「オーバーヘッド重量」又は他のデバイス成分(結合剤、導電性添加剤、集電体、セパレーター、電解質、及びパッケージング)の重量もまた、考慮されなければならない。従来の製造プロセスでは、活物質の比率はセルの全重量の30重量%未満になる(いくつかの場合、<15%、例えばグラフェン系活物質の場合)。
【0058】
図2(B)に図解的に示されているのは先行技術の円筒形スーパーキャパシタセルの内部構造の一部であり、それぞれのセルはロールを備え、それは、アノード集電体108上にコートされたアノード層110、多孔性セパレーター112、及びカソード集電体116上にコートされたカソード層114の積層体から構成されることを示す。それぞれのロールは、アノード及びカソード活物質層の両方をその中に備える。1つの単位セルに1つだけのロールがある。
【0059】
対照的に、本発明の巻きスーパーキャパシタ(図2(C))において、1つの単位セルは、少なくとも2つの別個のロール:カソードロール50とアノードロール54とを備え、それらは多孔性膜又はアルカリ金属イオン導電性セパレーター層52によって隔てられている。図2(D)に図解的に示されるように、アノードロールは、アノード活物質をコートしたフィルム又は層56を円60又は矩形62などの所望の横断面形状を有するマンドレルの周りに巻き取ってそれぞれシリンダーロール58又は立方ロール64を形成することによって形成されてもよい。アノード活物質をコートしたフィルム又は層は、従来のスラリーコーティング方法によって製造される、アノード活物質層をコートしたAl箔であってもよい。アノード活物質層は、導電性添加剤及び樹脂結合剤を含有してもよい。コートしたフィルム又は層は、(コートしたフィルム/層がロールに巻き取られた後にロール幅になる)所望の幅にスリット/切断されてもよい。次に、コートした層は所望の形状のアノードロールに巻かれるか又は巻き取られる。カソードロールは同様な方法で製造されてもよい。図2(C)に説明されるように、1つのアノードロール、1シートの多孔性セパレーター、及び1つのカソードロールを一緒に組み立てて、1つの巻きバッテリーセルを形成してもよく、そこでロール幅はセパレーター平面に垂直である。
【0060】
ロール層幅をセパレーターに垂直に配置することによって、集電体にもともと平行な細孔チャネルを整列して、電極層のイオン導電性を促進することができる。本発明は、大きいロール幅(従来の電極の厚さに相当する)と、したがって、活物質の高い質量負荷とを有する巻きスーパーキャパシタセルを提供する。また、セルは、低いオーバーヘッド重量及び体積、高い容積キャパシタンス、並びに高い容積エネルギー密度を有する。さらに、本発明の方法によって製造される本発明の巻きスーパーキャパシタの製造費は、従来の方法による製造費よりも著しく低くなり得る。
【0061】
本発明は、高い電極層(ロール)幅(本発明の方法を使用して製造することができる電極ロール幅に理論的制限はない)、活物質の高い質量負荷(並びに高い全電極質量及び体積)、低いオーバーヘッド重量及び体積、高い容積キャパシタンス、並びに高い容積エネルギー密度を有する巻きスーパーキャパシタセルを提供する。
【0062】
本発明の巻きスーパーキャパシタは、アノードと、カソードと、アノード及びカソードを電子的に隔てる多孔性セパレーターと、アノード及びカソードとイオン接触している電解質とを含み、そこでアノードが、アノードロール長さ、アノードロール幅、及びアノードロール厚さを有するアノード活物質の巻取りアノードロールを含有し、アノード活物質が、アノードロール長さ及びアノードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及び/又はカソードが、カソードロール長さ、カソードロール幅、及びカソードロール厚さを有するカソード活物質の巻取りカソードロールを含有し、カソード活物質が、カソードロール長さ及びカソードロール幅によって画定される平面に略平行に配向される単離されたグラフェンシートを含有し、及びアノードロール幅及び/又はカソードロール幅がセパレーター平面に略垂直である。セパレーター平面に垂直であるグラフェンシートの好ましい配向は、得られたスーパーキャパシタの大量充電の迅速な応答と、したがって、高い出力密度とに資することがわかっている。
【0063】
典型的に、巻きスーパーキャパシタはさらに、アノードに接続されるか又は一体化されるアノードタブ及びカソードに接続されるか又は一体化されるカソードタブを含有する。好ましくは及び典型的に、巻きスーパーキャパシタはさらに、アノード、カソード、セパレーター、及び電解質をその中に密閉してシールドバッテリーを形成するケーシングを含む。
【0064】
いくつかの場合(本明細書において便宜上、タイプII巻きスーパーキャパシタと称される)において、アノードロール又はカソードロールは、固体又は多孔性支持基材上に支持されずに(電解質とともに)単独で存在している電極活物質(すなわち配向グラフェンシート)を含有してもよい。他の場合(タイプI)、配向グラフェンシートは、場合により或る任意選択の導電性添加剤及び任意選択のバインダー樹脂とともに、固体基材上にコートされるか又は多孔性基材の細孔に含浸される。
【0065】
これらの後者の巻きスーパーキャパシタ(タイプI)において、アノード活物質の巻取りアノードロールは、(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において主表面の一方又は両方のどちらかがアノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)アノード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有する。特定の実施形態において、カソード活物質の巻取りカソードロールは、(a)2つの主表面を有する支持固体基材の層において主表面の一方又は両方のどちらかがカソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーでコートされる層又は(b)カソード活物質、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択のバインダーで含浸される細孔を有する支持多孔性基材の層を含有してもよい。
【0066】
前者の場合(タイプII)において、本発明の巻きスーパーキャパシタのアノード又はカソード内の電解質及び単離されたグラフェンシートは、アノードロール又はカソードロールに巻き取られる電解質含浸層状グラフェン構造物に組み立てられ、単離されたグラフェンシートは、0.3nm~10nmの厚さを有する薄い電解質層によって交互に離隔され、層状グラフェン構造物は、前記電解質が除去された層状構造物の乾燥された状態において測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有する。これらの場合において、製造された電極は、電解質(水性、有機、イオン性液体、又はポリマーゲル)で予備含浸されており、そこで全てのグラフェン表面は電解質の薄い層で湿潤されており(したがって乾燥部分はない)、全てのグラフェンシートは一方向に沿って十分に整列されており一緒に密に充填されている。グラフェンシートは、電解質の極薄層(0.3nm~<10nm、より典型的には<5nm、最も典型的には<2nm)で交互に離隔される。方法は、先行技術の方法の長くかかり且つ環境に優しくない湿潤-乾燥-湿潤手順を経る必要性を取り除く。
【0067】
本発明の特に望ましい実施形態は、アノード集電体と、アノードと、カソードと、カソード集電体と、アノード及びカソードを電子的に隔てるイオン透過セパレーターと、アノード及びカソードとイオン接触している電解質とを含む巻きスーパーキャパシタ(タイプII)であり、そこでアノード及び/又はカソードが、厚さ5nm未満(典型的に0.3nm~5nm)の薄い電解質層によって交互に離隔されている複数のグラフェンシートから構成される電解質含浸層状グラフェン構造物の巻取りロールを含有し、複数のグラフェンシートがセパレーターに垂直な所望の方向に沿って略整列され、及び層状グラフェン構造物が、電解質が除去された層状グラフェン構造物の乾燥された状態で測定されるとき、0.5~1.7g/cmの物理的密度及び50~3,300m/gの比表面積を有する。
【0068】
図2(C)に示されるように、多孔性セパレーターによって隔てられた1つのアノードロールと1つのカソードロールとを組み立てて、単位セルを形成する。図2(F)に説明されるように、複数の単位セル(それぞれアノードロール50、セパレーター52、及びカソードロール54を備える)を直列に内部接続してケーシング74(例えば円筒形ステンレス鋼ハウジング)内に封止して、増倍又はかなり高めの出力電圧レベルのスーパーキャパシタを形成してもよい。例えば、電圧Vを有する単位セル1、電圧Vを有する単位セル2等々(電圧Vを有する単位セルnまで)を内部接続して出力電圧V=V+V+…+Vを形成してもよい。V=V=V=…=Vである場合、全出力電圧はV=nVである。1つの単位バッテリーセルが3.0ボルトの出力電圧を有すると仮定すると、直列に接続された6単位セルを含有する1つのシリンダーは、18ボルトのバッテリー出力電圧を提供する。円筒形スーパーキャパシタが4.5ボルトより高いバッテリー電圧を与えることができるということはスーパーキャパシタ産業にはない。さらに、本発明は、本質的に任意の出力電圧を有することができるスーパーキャパシタの設計及び構築を可能にする。これらは、本発明の巻きスーパーキャパシタのいくつかの追加の驚くべきそして有用な特徴である。
【0069】
代わりに、複数の単位セルを並列に内部接続して、大出力及びエネルギーを与えることができるスーパーキャパシタを形成してもよい。このようなスーパーキャパシタの好ましい且つ独自の形態が図2(F)に説明されるが、そこで互いに平行である複数のカソードロール124を一緒に充填して大出力スーパーキャパシタのおよそ最初の半分126を形成する。また、複数のアノードロール120の相当するパックを互いに平行であるように配置して、スーパーキャパシタのおよそもう半分118を形成する。次に、2つのパックを一緒に組み合わせるが、多孔性セパレーター122によって隔てて、完全なスーパーキャパシタを形成する。このようなスーパーキャパシタ内のアノードロール又はカソードロールの数に理論的制限はない。出力電圧は典型的に、(これらの単位セルが組成及び構造において同一であるならば)構成セルの出力電圧と同じである。しかしながら、このようなスーパーキャパシタに含有される多量の活物質があるので、出力電流は大きくなり得る。図2(F)には四角形形状が示されているが、アノードロール又はカソードロールは任意の断面形状(例えば円形、四角形、矩形等)をとることができることを指摘しておいてもよいだろう。
【0070】
タイプI巻きスーパーキャパシタを製造するための方法は、従来のスーパーキャパシタを製造するために一般的に使用されるいくつかの初期手順と、その後に、巻き電極を作るための付加的なステップとを含んでもよい。最初のステップは、単離されたグラフェンシート、任意選択の導電性充填剤(例えば黒鉛フレーク)、樹脂結合剤(例えばPVDF)を溶媒(例えばNMP)中で混合して、アノードスラリーを形成するステップである。別の基準に基づいて、単離されたグラフェンシート、任意選択の導電性充填剤(例えばアセチレンブラック)、樹脂結合剤(例えばPVDF)を溶媒(例えばNMP)中で混合及び分散させて、カソードスラリーを形成する。
【0071】
第2のステップは、アノードスラリーをアノード集電体(例えばAl箔又はNiフォーム)の一方又は両方の主表面上にコートし、溶媒(例えばNMP)を気化させることによってコートした層を乾燥させてAl箔又はNiフォーム上にコートされた乾燥アノード電極を形成し、2層又は3層アノード層構造物を形成するステップを含む。次に、アノード層構造物をロール形状に巻き取ってアノードロールを形成する。同様に、カソードスラリーをコートして乾燥させ、Al箔又はNiフォーム上にコートされた乾燥カソード電極を形成する。次に、得られた2層又は3層カソード層構造物をロール形状に巻き取ってカソードロールを形成する。ロールを要望通りに所望のサイズ及び形状に切断及びスリットしてもよい。
【0072】
第3のステップは、アノードロール、多孔性セパレーター層、及びカソードロールを組み立ててスーパーキャパシタ組立体を形成し、次にそれをアルミニウムプラスチック積層エンベロープ又は鋼ケーシング内に入れるステップを含む。次に、液体電解質を積層ハウジング構造物に注入し、次に封止して巻きスーパーキャパシタセルを製造する。
【0073】
代わりに、タイプII巻きスーパーキャパシタの製造のために、方法は電解質含浸層状グラフェン構造物の製造から開始し、次にそれをスーパーキャパシタ電極として使用するためにロール形状を巻き取る。好ましい実施形態において、方法は、(a)複数の単離されたグラフェンシートが液体又はゲル電解質中に分散されたグラフェン分散体を調製する工程と、(b)グラフェン分散体を強制組立手順に供して、複数のグラフェンシートを電解質含浸層状グラフェン構造体に組み立てるようにさせる工程において、複数のグラフェンシートが、10nm未満(好ましくは<5nm)の厚さの薄い電解質層によって交互に離隔され、複数のグラフェンシートが所望の方向に沿って実質的に整列され、層状グラフェン構造体が、電解質が除去された層状構造体の乾燥された状態において測定されるときに0.5~1.7g/cmの物理的密度(より典型的には0.7~1.3g/cm)及び50~3,300m/g(グラフェンシートが化学的に活性化されていない場合は、50~2,630m/g)の比表面積を有する工程を含む。
【0074】
いくつかの所望の実施形態において、強制組立手順は、液体又はゲル電解質中によく分散された単離されたグラフェンシートを含有する、グラフェン分散体を調製するステップを含む。この分散体において、実質的にそれぞれ全ての単離されたグラフェンシートは、グラフェン表面に物理的に吸着されるか又は化学結合される電解質種によって囲まれる。後続の圧密及び整列操作の間、単離されたグラフェンシートは単離されたままであるか又は電解質(グラフェンシートの接触及び再積層を防ぐスペーサーとして役立つ電解質)によって互いに分離したままである。過剰な電解質を除去したとき、グラフェンシートは電解質によって離隔したままであり、電解質で満たされたこの空間は、わずか0.3nmであり得る(典型的に0.3nm~2nm、しかしより大きいことができる)。活性炭粒子中又はグラフェンシート間の細孔は、液体電解質の流入及び電解質相中の(しかし電解質-固体界面付近の)電荷の電気二重層の形成を可能にするために少なくとも2nmでなければならないという先行技術の教示とは反対に、わずか0.3nmの電解質スペーサーが電荷を蓄えることができること及びグラフェンシートが電解質で予備湿潤されているのでもはや電解質の流入問題は全くないことを我々は発見した。別の言葉で言うと、電解質が単離されたグラフェンシート間の空間に予備添加されているので、本発明のスーパーキャパシタにおいて電解質の到達不可能性の問題はない。本発明は、スーパーキャパシタ電極活物質としてグラフェンを使用する全ての著しい、長年にわたる欠点を本質的に克服した。
【0075】
図3は、電解質含浸層状グラフェン構造体の層を製造するためのロールツーロール法を示す。この方法は、連続した固体基材332(例えばPETフィルム又はステンレス鋼シート)をフィーダーローラー331から供給することによって開始する。ディスペンサー334を操作して、単離されたグラフェンシートと電解質との分散体336を基材表面上に分配して堆積された分散体338の層を形成し、それは、2つの圧縮ローラー340a及び340bの間の間隙を通って供給されて、電解質含浸高度配向グラフェンシートの層を形成する。グラフェンシートは支持基材平面上に十分に整列される。所望に応じて、次いで第2のディスペンサー344を操作して、予め圧密された分散体層の表面上に分散体348の別の層を分配する。次に、2層構造体を2つのロールプレス加工ローラー350a及び350bの間の間隙を通過させて電解質含浸層状グラフェン構造体のより厚い層352を形成し、それを巻上ローラー354によって巻き取る。特定の実施形態において、電解質含浸層状グラフェン構造物の層を巻出し、PETフィルムから剥離し、層を所望の長さ及び幅の単一シートに切断/スリットすることができる。これらのシートは、所望の形状及び寸法の電極ロールに別々に巻き取ることができる。
【0076】
このように、いくつかの好ましい実施形態において、強制組立手順は、グラフェン分散体の第1の層を支持コンベヤーの表面上に導入する工程と、コンベヤー上に支持されたグラフェン懸濁液の層を少なくとも一対の加圧ローラーに通してグラフェン分散体層の厚さを低減する工程と、複数のグラフェンシートをコンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させ、電解質含浸層状グラフェン構造体の層を形成する工程とを含む。
【0077】
必要ならば、方法は、グラフェン分散体の第2の層を電解質含浸層状構造体の層の表面上に導入して2層層状構造体を形成し、2層層状構造体を少なくとも一対の加圧ローラーに通させてグラフェン分散体の第2の層の厚さを低減すると共に複数のグラフェンシートをコンベヤー表面に平行な方向に沿って整列させて電解質含浸層状構造体の層を形成する工程をさらに含んでもよい。コンベヤーを第3の組の加圧ローラーの方向に移動させ、グラフェン分散体の付加的な(第3の)層を2層構造体上に堆積させ、得られた3層構造体を第3の組の2つのローラーの間の間隙を通り抜けさせてさらに圧縮された電解質含浸層状グラフェン構造体を形成することによって同じ手順を繰り返してもよい。
【0078】
図3についての上の段落は、電解質の薄い層によって離隔された高度配向及び密充填グラフェンシートを含有する電解質含浸層状グラフェン構造体を製造するために適用できるかもしれない装置又は方法の多くの実施例のうちの1つだけである。また、従来の製紙手順は、電解質含浸グラフェン紙を製造するように適合されてもよく、その場合それは、一対の2つのローラーの間で圧縮されるか又はロールプレスされて、(層状平面に沿って配向されている)高配向グラフェンシートを含有する電解質含浸層状グラフェン構造物を製造する。次に、この構造物をロール形状に巻き取って電極ロールを製造し、それはここで、ロール長さ及びロール幅によって画定される平面上に且つロール厚さに垂直に配向されるグラフェンシートを含有する。
【0079】
好ましい実施形態において、分散体中のグラフェン材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン、又はそれらの組合せから選択される。上記のグラフェン材料のいずれか一つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択されてもよい。
【0080】
例えば、酸化グラフェン(GO)は、ある期間(出発原料の性質及び使用される酸化剤のタイプに応じて典型的に0.5~96時間)、所望の温度の反応器内で酸化性液体媒体(例えば硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウムの混合物)中に出発黒鉛材料の粉末又はフィラメント(例えば天然黒鉛粉末)を浸漬することによって得られてもよい。次に、得られた黒鉛酸化物粒子を熱剥離又は超音波による剥離に供して単離されたGOシートを製造してもよい。
【0081】
純粋なグラフェンは、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相製造としても知られる)又は超臨界流体剥離によって製造されてもよい。これらの方法は本技術分野に公知である。界面活性剤の補助によって複数の純粋なグラフェンシートを水又は他の液体媒体中に分散させて懸濁液を形成してもよい。次に、化学発泡剤を分散体中に分散させてもよい(図1(A)の38)。次に、この懸濁液を固体基材(例えばガラスシート又はAl箔)の表面上に流延又はコートする。所望の温度に加熱されるとき、化学発泡剤が活性化又は分解されて揮発性ガス(例えばN又はCO)を発生させ、それらが作用して固体グラフェンシートの他の状態の塊に気泡又は細孔を形成し、純粋なグラフェンフォーム40aを形成する。このようなフォームを多孔性支持基材として使用してもよい。
【0082】
フッ素化グラフェン又はフッ化グラフェンがここにおいてハロゲン化グラフェン材料の群の例として使用される。フッ素化グラフェンを製造するために用いた2つの異なった方法がある:(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この方法は、機械的剥離によって又はXeFなどのフッ素化剤を使用するCVD成長、又はF系プラズマによって作製されたグラフェンを処理することを必要とする。(2)複数層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離及び液相剥離の両方とも容易に達成することができる[F.Karlicky,et al. “Halogenated Graphenes: Rapidly Growing Family of Graphene Derivatives” ACS Nano, 2013, 7 (8),pp 6434-6464]。
【0083】
高温でのFと黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)又は(CF)をもたらすが、低温では黒鉛層間化合物(GIC)CF(2≦x≦24)が形成される。(CF)において炭素原子は、sp3-混成であり、したがってフルオロカーボン層は波形であり、トランス結合シクロヘキサンいす形からなる。(CF)においてC原子の半分だけがフッ素化され、隣接した炭素シートの全ての対がC-C共有結合によって一緒に連結される。得られたF/C比は一般に、フッ素化温度、フッ化ガス中のフッ素の分圧の他、黒鉛化度、粒度、及び比表面積などの黒鉛前駆体の物理的特性に依存していることをフッ素化反応に関する組織的な研究は示した。フッ素(F)の他に、他のフッ素化剤を使用してもよいが、入手できる文献の大部分は、場合によってはフッ化物の存在下での、Fガスによるフッ素化を含む。
【0084】
層状前駆体材料を単独層又は数層の状態に剥離するために、隣接した層間の引力を克服すると共に層をさらに安定化することが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によるか又は特定の溶剤、界面活性剤、ポリマー、又はドナー-アクセプター芳香族分子を使用する非共有結合修飾によるかどちらによって達成されてもよい。液相剥離の方法には、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理が含まれる。
【0085】
グラフェンの窒化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)のアンモニアに暴露することによって行なうことができる。また、窒素化グラフェンをより低温において熱水法によって、例えばGO及びアンモニアをオートクレーブ内に封止することによって形成し、次に温度を150~250℃に上昇させることができる。窒素ドープトグラフェンを合成する他の方法には、グラフェンの窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件での酸化グラフェンの加安分解、及び異なった温度での酸化グラフェン及び尿素の熱水処理が含まれる。
【0086】
前述の特徴はさらに、以下のように詳細に記述及び説明される:図1(B)に示されるように、黒鉛粒子(例えば100)は典型的に、複数の黒鉛微結晶又は結晶粒から構成される。黒鉛微結晶は、炭素原子の六方晶網目構造の層面から構成される。六方晶整列炭素原子のこれらの層面は実質的に平らであり、特定の微結晶において互いに実質的に平行且つ等距離であるように配向又は秩序化される。グラフェン層又は基礎面と一般的に称される、六方晶構造炭素原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力によってそれらの厚さ方向(c軸結晶方向)において弱く接合され、微結晶においてこれらのグラフェン層の群は整列される。黒鉛微結晶構造体は通常、2つの軸又は方向:c軸方向及びa軸(又はb軸)方向の観点から特徴づけられる。c軸は基礎面に垂直な方向である。a軸又はb軸は、(c軸方向に垂直な)基礎面に平行な方向である。
【0087】
高度に秩序化された黒鉛粒子は、a軸結晶方向に沿うLの長さ、b軸結晶方向に沿うLの幅、及びc軸結晶方向に沿う厚さLを有する、かなりのサイズの微結晶からなり得る。微結晶の構成グラフェン面は互いに対して高度に整列又は配向され、したがって、これらの異方性構造は、高度に方向性である多くの性質を生じる。例えば、微結晶の熱伝導率及び電気導電率は面方向(a軸又はb軸方向)に沿って非常に大きいが、垂直な方向(c軸)において比較的低い。図1(B)の上左部分に示されるように、黒鉛粒子中の異なった微結晶は典型的に、異なった方向に配向され、したがって、多微結晶黒鉛粒子の特定の性質は、全ての構成微結晶の方向性の平均値である。
【0088】
平行なグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力のために、グラフェン層間の間隔がかなり広がってc軸方向の顕著な膨張をもたらし、したがって、炭素層の層状特性が実質的に保持される膨張黒鉛構造体を形成するように天然黒鉛を処理することができる。可撓性黒鉛を製造するための方法は本技術分野に公知である。一般的には、天然黒鉛のフレーク(例えば図1(B)の100)を酸溶液中にインターカレートして黒鉛層間化合物(GIC、102)を製造する。GICを洗浄し、乾燥させ、そして次に、短時間の間高温に暴露することによって剥離する。これは、フレークを黒鉛のc軸方向においてそれらの元の寸法の80~300倍まで膨張又は剥離させる。剥離黒鉛フレークは外観が細長く、したがって、一般的にワーム104と称される。非常に膨張した黒鉛フレークのこれらのワームを、結合剤を使用せずに、大抵の用途のために約0.04~2.0g/cmの典型的な密度を有する膨張黒鉛、例えばウェブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マット等(典型的に「可撓性黒鉛」106と称される)の凝集又は統合シートに形成することができる。これは、当該ロール電極を製造するときに固体又は多孔性支持基材として使用され得る。
【0089】
図1(A)の上左部分は、可撓性黒鉛箔を製造するために使用される先行技術の方法を説明するフローチャートを示す。この方法は典型的に、黒鉛粒子20(例えば、天然黒鉛又は合成黒鉛)をインターカラント(典型的に強酸又は酸混合物)でインターカレートして黒鉛層間化合物22(GIC)を得ることから開始する。水中で洗浄して過剰な酸を除去した後、GICが「膨張性黒鉛」になる。次に、GIC又は膨張性黒鉛を短時間の間(典型的に15秒~2分)高温環境(例えば、800~1,050℃の範囲の温度に予め設定された管状炉内で)に暴露する。この熱処理は黒鉛をそのc軸方向において30~数百倍膨張させてワーム状虫食い形構造体24(黒鉛ワーム)を達成し、それは、大きな細孔がこれらの相互接続フレークの間に挟まれた剥離された、しかし分離されていない黒鉛フレークを含有する。
【0090】
先行技術の一方法において、カレンダリング又はロールプレス加工技術を使用することによって剥離黒鉛(又は黒鉛ワームの塊)を再圧縮して可撓性黒鉛箔(図1(A)の26又は図1(B)の106)を得るが、それらは典型的に厚さ100~300μmである。別の先行技術の方法において、剥離黒鉛ワーム24を樹脂で含浸し、そして次に圧縮及び硬化して可撓性黒鉛複合物を形成してもよく、それは通常、同様に低い強度である。さらに、樹脂含浸したとき、黒鉛ワームの電気及び熱伝導率は二桁低下され得る。
【0091】
代わりに、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル、又は超音波デバイスを使用して剥離黒鉛を高強度機械的剪断/分離処理に供して、分離されたナノグラフェンプレートリット33(NGP)を製造してもよく、全てのグラフェンプレートリットは100nmよりも薄く、主に10nmよりも薄く、そして、多くの場合、単一層グラフェンである(図1(B)において112としても示される)。NGPは、グラフェンシート又は複数のグラフェンシートから構成され、各々のシートは炭素原子の二次元の、六方晶構造体である。フィルム製造又は紙製造法を使用して複数のNGP(単一層及び/又は数層グラフェン又は酸化グラフェンの離散シート/プレートリットなどを含む、図1(A)の33)の塊をグラフェンフィルム/紙(図1(A)の34又は図1(B)の114)に製造してもよい。
【0092】
さらに代わりに、低強度剪断によって、黒鉛ワームは、厚さ>100nmを有するいわゆる膨張黒鉛フレーク(図1(B)の108に分離される傾向がある。紙製造又はマット製造法を使用してこれらのフレークを黒鉛紙又はマット106に形成することができる。この膨張黒鉛紙又はマット106は、欠陥、割り込み、及びこれらの離散フレーク間の誤配向を有する離散フレークのごく単純な集合体又は積層体である。
【0093】
単離されたグラフェンシートはさらに、電解質に分散される前に、以下の処理に別々に又は組み合わせて供されてもよい:
(a)原子種、イオン種、又は分子種で化学官能化又はドープされる。有用な表面官能基には、キノン、ヒドロキノン、四級化芳香族アミン、メルカプタン、又は二硫化物が含まれてもよい。官能基のこのクラスは、疑似静電容量をグラフェン系スーパーキャパシタに与えることができる。
(b)本質的導電性ポリマー(例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びそれらの誘導体などの導電性ポリマーが、本発明において使用するために良い選択である)でコート又はグラフトされる。これらの処理は、レドックス反応などの疑似静電容量効果によって静電容量値をさらに増加させることを意図している。
(c)グラフェンシートとレドックス対を形成する目的のために、RuO、TiO、MnO、Cr、及びCoなどの遷移金属酸化物又は硫化物を堆積されて、それによって疑似静電容量を電極に与える。及び
(d)化学的又は物理的な活性化処理(カーボンブラック材料の活性化に類似している)に供して付加的な表面を作り、場合により官能性化学基をこれらの表面に与える。活性化処理は、CO物理的活性化、KOH化学的活性化、又は硝酸、フッ素、又はアンモニアプラズマへの暴露によって達成され得る。
【0094】
本発明において、スーパーキャパシタにおいて使用できる液体又はゲル電解質のタイプに制限はない:水性、有機系、ゲル、及びイオン性液体。典型的に、スーパーキャパシタのための電解質は、溶剤と、陽イオン(カチオン)及び陰イオン(アニオン)に解離し、電解質を電気導電性にする溶解された化学物質(例えば塩)とからなる。電解質がより多くのイオンを含有すればするほど、その導電率はより良くなり、それはまた静電容量に影響を与える。スーパーキャパシタにおいて、電解質は、ヘルムホルツ二重層(電気二重層)中の分離単層のための分子を提供し、疑似静電容量のためのイオンを供給する。
【0095】
水は、無機化学物質を溶解するための比較的良い溶剤である。硫酸(HSO)などの酸、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ、又は第四ホスホニウム塩、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸リチウム(LiClO)又は六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)などの塩と一緒に添加されるとき、水は比較的高い導電率の値を提供する。水性電解質は、電極1本当たり1.15Vの解離電圧及び比較的低い運転温度範囲を有する。水電解質をベースとしたスーパーキャパシタは低いエネルギー密度を示す。
【0096】
代わりに、電解質は、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどの有機溶剤と、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(N(Et)BF)又はトリエチル(メチル)テトラフルオロボレート(NMe(Et)BF)などの第四アンモニウム塩又はアルキルアンモニウム塩を有する溶質とを含有してもよい。有機電解質は水性電解質よりも費用がかかるが、それらは、電極1本当たり典型的に1.35Vの高めの解離電圧(2.7Vのキャパシタ電圧)、及び高めの温度範囲を有する。エネルギー密度は電圧の二乗に比例するので、有機溶剤の電気導電率が低くなると(10~60mS/cm)出力密度が低くなるが、エネルギー密度は高くなる。
【0097】
イオン性液体は、イオンだけから構成される。イオン性液体は、所望の温度を超えるときに溶融状態又は液体状態である低融解温度塩である。例えば、塩は、その融点が100℃未満である場合イオン性液体であると考えられる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温のイオン性液体(RTIL)と称される。IL塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せのために、弱い相互作用を特徴としている。これによって、可撓性(アニオン)及び非対称(カチオン)のために結晶化する傾向は低い。
【0098】
典型的な及び公知のイオン性液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって形成される。この組合せは、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率及び低い分解傾向並びに約300~400℃までの低い蒸気圧を有する流体をもたらす。これは、一般的に低い揮発性及び不燃性、したがって、バッテリーのためにずっと安全な電解質を意味する。
【0099】
イオン性液体は、非常に多種多様なそれらの成分の調製の容易さのために本質的に無制限の数の構造的異形になる有機イオンから根本的に構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、与えられた用途のための所望の性質を有するイオン性液体を設計することができる。これらには、とりわけ、カチオンとしてイミダゾリウム、ピロリジニウム及び第四アンモニウム塩並びにアニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、及びヘキサフルオロホスフェートが含まれる。それらの組成物に基づいて、イオン性液体は、各々のタイプが特定の用途に適している、非プロトン、プロトン及び双性イオンタイプが基本的に含まれる異なったクラスになる。
【0100】
室温のイオン性液体(RTIL)の一般的なカチオンには、限定されないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、及びテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、及びトリアルキルスルホニウムが含まれる。RTILの一般的なアニオンには、限定されないが、BF 、B(CN) 、CHBF 、CH2CHBF 、CFBF 、CBF 、n-CBF 、n-CBF 、PF 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(SOF) 、N(CN) 、C(CN) 、SCN、SeCN、CuCl 、AlCl 、F(HF)2.3 等々が含まれる。比較して言えば、イミダゾリウム系又はスルホニウム系カチオンとハロゲン化物錯アニオン、例えばAlCl 、BF 、CFCO 、CFSO 、NTf 、N(SOF) 、又はF(HF)2.3 などとの組合せは、良い作業導電率を有するRTILをもたらす。
【0101】
RTILは、高い固有イオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(ほとんどゼロ)蒸気圧、不燃性、室温を超える及び室温未満の広範囲の温度で液体のままである能力、高い極性、高い粘度、及び広い電気化学窓などの典型的な性質を有することができる。高い粘度以外これらの性質は、スーパーキャパシタ中の電解質の構成成分(塩及び/又は溶剤)としてRTILを使用する場合、望ましい特質である。
【0102】
疑似キャパシタ(レドックス対の形成による疑似静電容量の発生時に機能するスーパーキャパシタ)を製造するために、アノード活物質又はカソード活物質は、グラフェンシートと、金属酸化物、導電性ポリマー(例えば共役鎖ポリマー)、非導電性ポリマー(例えばポリアクリロニトリル、PAN)、有機材料(例えばヒドロキノン)、非グラフェン炭素材料、無機材料、又はそれらの組合せから選択されるレドックス対の相手材とを含有するように設計されてもよい。還元酸化グラフェンシートと対になることができる材料の多くは本技術分野に公知である。この研究において、グラフェンハロゲン化物(例えばフッ化グラフェン)、水素化グラフェン、及び窒素化グラフェンが多種多様な相手材と作用してレドックス対を形成し、疑似静電容量を発生することができることが発見された。
【0103】
例えば、このような役割において役立つ金属酸化物又は無機材料には、RuO、IrO、NiO、MnO、VO、V、V、TiO、Cr、Co、Co、PbO、AgO、MoC、MoN、又はそれらの組合せが含まれる。一般的には、無機材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属硼化物、金属ジカルコゲン化物、又はそれらの組合せから選択されてもよい。好ましくは、所望の金属酸化物又は無機材料は、ナノワイヤー、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートリット形態のニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ジカルコゲン化物、トリカルコゲン化物、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択される。コーティング又はフィルム形成手順の前にこれらの材料又はそれらの前駆体をコーティングスラリー中に混入することができる。代わりに、溶液中のそれらの分子前駆体をグラフェンフォームの細孔中に含浸してもよく、次に、前駆体を所望の無機種(例えば遷移金属酸化物)に熱的又は化学的に変換する。次に、液体又はゲル電解質をフォーム中に含浸する。
【実施例
【0104】
以下の実施例は、本発明を実施する最良の方式についていくつかの具体的な詳細を説明するために使用され、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0105】
実施例1:単離された酸化グラフェンシートの調製
12μmの平均直径を有する細断した黒鉛繊維及び天然黒鉛粒子を出発原料として別々に使用し、それを(化学インターカレート及び酸化剤として)濃硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウムの混合物中に浸漬して黒鉛層間化合物(GIC)を調製した。最初に出発原料を24時間の間80℃で真空炉内で乾燥させた。次いで、(4:1:0.05の重量比の)濃硫酸、発煙硝酸、及び過マンガン酸カリウムの混合物を、適切な冷却及び撹拌下で、繊維セグメントを含有する三首フラスコにゆっくりと添加した。5~16時間の反応後に、酸処理黒鉛繊維又は天然黒鉛粒子を濾過し、溶液のpHレベルが6に達するまで脱イオン水で十分に洗浄した。一晩100℃で乾燥された後、得られた黒鉛層間化合物(GIC)又は黒鉛酸化物繊維を水及び/又はアルコール中に再分散させてスラリーを形成した。
【0106】
1つの試料において、黒鉛酸化物繊維5グラムを15:85の比でアルコール及び蒸留水からなるアルコール溶液2,000mlと混合してスラリー塊を得た。次いで、混合物スラリーを様々な長さの時間の間200Wの出力で超音波照射に供した。20分の音波処理の後、GO繊維を有効に剥離し、約23重量%~31重量%の酸素含有量を有する薄い酸化グラフェンシートに分離した。得られた懸濁液は、水中に懸濁されているGOシートを含有する。懸濁液を乾燥させ、得られたGOシートを24時間の間300℃で熱還元して還元酸化グラフェン(RGO)シートを得た。
【0107】
RGOシートの一部をNMPと混合してスラリーを形成し、次にそれをAl箔(集電体として役立つ)のシートの両方の主表面上にコートした。Al箔の各面にコートされたRGOの最大厚さは約70μmであり、それを超えると電極層は、NMPが除去されるときに亀裂を生じるか又は剥離する傾向がある。多孔性セパレーターによって離隔され、それぞれRGOでコートされたAl箔を有する2つの電極(+5%のアセチレンブラック及び7%のPVDF結合剤樹脂)を積層して従来のスーパーキャパシタセルを形成した。セルをナイロン-Al積層ハウジング(封体)内に封入し、液体電解質を注入し、次いで封止した。これは、従来の対称EDLCグラフェンスーパーキャパシタである。
【0108】
RGOシートの残りの部分を同じ液体電解質中に直接分散させて分散体を形成した。分散体の一部を図3に説明される方法に従って電解質含浸、圧縮及び高度配向されたグラフェンシートの層(電解質含浸層状グラフェン構造体)に圧縮及び圧密した。これは、グラフェンシートをAl箔平面に平行に整列させて、集電体(Al箔)に接合された。この2層構造物は、タイプI巻きスーパーキャパシタにおいて使用するためにロール形状に巻き取られた。分散体の残りを、整列グラフェンシートを有する電解質含浸層状グラフェン構造物の層に製造したが、次にこの層を集電体から剥離した。電解質含浸層状グラフェン構造物の層をタイプII巻きスーパーキャパシタにおいて使用するためにロール形状に巻き取った。
【0109】
実施例2:メソカーボンマイクロビード(MCMB)からの単一層グラフェンシートの調製
メソカーボンマイクロビード(MCMB)は、China Steel Chemical Co.(Kaohsiung,Taiwan)から供給された。この材料は、約2.24g/cmの密度並びに約16μmのメジアン粒度を有する。MCMB(10グラム)を48~96時間にわたって酸溶液(4:1:0.05の比の硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウム)でインターカレートした。反応の終了時に、混合物を脱イオン水中に流し込み、濾過した。インターカレートされたMCMBをHClの5%溶液中で繰り返して洗浄して硫酸イオンの大部分を除去した。次に、ろ液のpHが4.5以上になるまで試料を脱イオン水で繰り返して洗浄した。次に、スラリーを10~100分にわたって超音波処理に供してGO懸濁液を製造した。GOシートの大部分は、酸化処理が72時間を超えるときに単一層グラフェンであり、酸化時間が48~72時間であるときに2層又は3層グラフェンであることをTEM及び原子間力顕微鏡研究は示す。次に、本発明の方法(図3に示されるような)及び従来の製造方法(NMP-GOスラリーの調製、コーティング、乾燥、セルの積層、及び電解質注入)の両方を使用してGOシートをスーパーキャパシタ電極及びスーパーキャパシタセルに製造した。
【0110】
実施例3:純粋なグラフェン(0%の酸素)の調製
GOシートの高い欠陥群が単独グラフェン面の伝導率を低下させるように作用する可能性を認識して、純粋なグラフェンシート(酸化されない及び酸素を含有しない、ハロゲン化されない及びハロゲンを含有しない等々)の使用は、より高い電気導電率及びより低い等価直列抵抗を有するグラフェンスーパーキャパシタをもたらすことができるかどうかを我々は調べることに決めた。純粋なグラフェンシートは、直接超音波処理方法(液相剥離方法とも呼ばれる)を使用して製造された。
【0111】
典型的な手順において、約20μm以下のサイズに微粉砕された5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散助剤、DuPont製のZonyl(登録商標)FSOを含有する)中に分散させて懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450ウルトラソニケーター)を15分~2時間の間グラフェンシートの剥離、分離、及びサイズ低減のために使用した。得られたグラフェンシートは、全く酸化されておらず酸素を含有せず比較的欠陥がない純粋なグラフェンである。他の非炭素元素はない。次に、(図3に説明されるような)本発明の方法を使用して純粋なグラフェンシートをスーパーキャパシタ電極及び巻きスーパーキャパシタセルに製造した。また、従来の製造方法(NMP-グラフェンスラリーの調製、コーティング、乾燥、セルの積層、及び電解質注入)に従い、比較のために従来の(巻かれない)スーパーキャパシタを製造した。
【0112】
実施例4:天然黒鉛からの酸化グラフェン(GO)懸濁液の調製及び後続のGO電極の調製
黒鉛酸化物は、黒鉛フレークを4:1:0.05の比の硫酸、硝酸ナトリウム、及び過マンガン酸カリウムからなる酸化剤液体で30℃で酸化することによって調製された。天然黒鉛フレーク(14μmの粒度)が48時間にわたって酸化剤混合物液体中に浸漬及び分散されるとき、懸濁液又はスラリーは光学的に不透明且つ暗くみえ、そのままである。48時間後に、反応塊を水で3回洗浄してpH価を少なくとも3.0に調節した。次に、最終的な量の水を添加して、超音波処理を使用して一連のGO-水懸濁液を調製した。次に、5%のGOシートを含有する懸濁液を噴霧乾燥させて、単離されたGOシートを形成し、それを1時間の間1,500℃で熱還元した。次に、これらのGOシートのいくつかを電解質中に分散させていくつかの分散体試料を形成し、次に、本発明の方法(図3に示されるようにロールプレス加工に基づいている)を使用してそれをスーパーキャパシタ電極に製造した。先行技術のスラリーコーティング方法を使用していくつかを従来のスーパーキャパシタに製造した。
【0113】
比較例4:熱水還元酸化グラフェンからのグラフェンフォーム
比較のために、自己組織化グラフェンヒドロゲル(SGH)試料を一段階熱水法によって作製した。手順において、SGHは、12時間にわたって180℃のテフロン内張りオートクレーブ内に封止された2mg/mLの均質な酸化グラフェン(GO)水性分散体を加熱することによって容易に調製された。得られたSGHは、約2.6%(重量による)のグラフェンシートと97.4%の水とを含有する。乾燥させて1,500℃で熱処理したとき、得られたグラフェンフォームは高い多孔度のレベルを示した。スーパーキャパシタ電極としてのSGH系フォームの適性を決定するために、フォーム構造体は、電解質の含浸の前にある程度及び後にある程度、機械的圧縮に供された。
【0114】
SGH系フォーム構造体を0.7g/cmよりも高いタップ密度に圧縮することができず、0.4g/cmよりも高いタップ密度を有するそれらのフォーム構造体を液体電解質で完全に含浸することができないことを我々は予想外に発見した。液体電解質による不完全な含浸はまた、電荷の電気二重層を形成することができない電極の乾燥した箇所の存在を意味する。本発明の方法は、これらの低いタップ密度又は電解質の到達不可能性の問題を有さない。新しいスーパーキャパシタは、高い質量エネルギー密度及び高い体積エネルギー密度の両方を与えることができる。
【0115】
黒鉛フォーム又はグラフェンフォームを製造する全ての先行技術の方法は、約0.01~0.6g/cmの範囲の物理的密度を有するマクロ多孔性フォームを提供すると思われ、細孔径が典型的に非常に大きい(例えば10~300μm)ことを指摘しておくべきである。対照的に、本発明は、0.5g/cm~1.7g/cmもあり得るタップ密度を有する電解質含浸層状グラフェン構造体を生成する方法を提供する。細孔径は0.5nm~10nmの間で変化することができ、電解質はグラフェンシート間に予備添加済みである(したがって、先行技術の活性炭又はグラフェン系スーパーキャパシタ電極におけるように乾燥した箇所又は電解質が到達できない細孔はない)。様々なタイプのグラフェン系スーパーキャパシタ電極を設計する際のこのレベルの柔軟性及び多角性は、先行技術のいずれの方法によっても前例がなく、他に並ぶものがない。
【0116】
実施例5:多孔性フッ化グラフェン(GF)構造の調製
GFを製造するためにいくつかの方法が使用されたが、本明細書において実施例としてただ1つの方法が説明される。典型的な手順において、高度剥離黒鉛(HEG)は、インターカレートされた化合物СF・xClFから調製された。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化高度剥離黒鉛(FHEG)をもたらした。予備冷却されたテフロン反応器に20~30mLの液体予備冷却ClFを入れ、反応器を閉じて、液体窒素温度に冷却した。次に、1g以下のHEGをClFガスが入っていく孔を有する容器内に置き、反応器内に配置した。7~10日で、近似式CFを有する灰色-ベージュ色の生成物が形成された。
【0117】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶剤(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、イソアミルアルコール)と混合し、30分間にわたって超音波処理(280W)に供し、均質な黄色がかった分散体を形成した。5分の音波処理は比較的均質な分散体を得るために十分であったが、より長い音波処理の時間はより良い安定性を確実にした。これらのGFシートのいくつかを電解質中に分散させていくつかの分散体試料を形成し、次に、本発明の方法(図3(A)に説明されるようにロールプレス加工に基づいている)を使用してそれらをスーパーキャパシタ電極に製造した。先行技術のスラリーコーティング方法を使用していくつかを従来のスーパーキャパシタに製造した。
【0118】
実施例6:窒素化グラフェン系スーパーキャパシタの作製
実施例2において合成された酸化グラフェン(GO)を異なった比率の尿素と共に微粉砕し、ペレット化された混合物をマイクロ波反応器(900W)内で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法において酸化グラフェンは同時に、窒素で還元及びドープされる。それぞれ1:0.5、1:1及び1:2のグラフェン/尿素の質量比によって得られた生成物、及びこれらの試料の窒素含有量はそれぞれ、元素分析によって確認されるとき14.7、18.2及び17.5wt%であった。これらの窒素化グラフェンシートは水中に分散可能なままである。次に、得られた懸濁液にNaSO塩及び若干の脱イオン水を添加して(水性電解質として)NaSOの1M水溶液を製造した。次に、図3に記載された手順を使用して懸濁液を圧縮及び圧密に供した。
【0119】
実施例7:本質的導電性ポリマー-グラフェンレドックス対の調製
この一連の実施例において、本質的導電性ポリマー(例えばポリアニリン、ポリポリピロール、及びポリチオフェン)及びそれらのスルホン化別型は、それらの有効性のためにグラフェン材料に対するレドックス対相手材として評価されている。
【0120】
スルホン化ポリアニリン(S-PANi)の化学合成は、ポリアニリンを濃硫酸と反応させることによって達成される。手順はEpsteinら(米国特許第5,109,070号明細書、1992年4月28日)によって使用される手順と同様である。得られたS-PANiは以下の式1によって表わすことができ、R、R、R、及びR基はH、SO 又はSOH(R=H)であり、後者2つの含有量は30%~75%の間で変化する(すなわち、スルホン化度は30%~75%の間で変化する)。
【0121】
これらのSO 又はSOH系S-PANi組成物の電子導電率は、スルホン化度が約30%~75%であるとき(yが約0.4~0.6である)0.1S/cm~0.5S/cmの範囲であった。S-PANi/水溶液がGO/水溶液と1/5~1/2のS-PANi/GO重量比で混合され、水の除去時に、S-PANiが沈殿し、レドックス対を形成するためにグラフェンシート上にコートされた。次に、ポリマーによってコートされたグラフェンシートが電解質中に分散され、本発明の方法及び従来の方法の両方を使用して疑似静電容量電極に製造された。
【0122】
スルホン化ピロール系ポリマー(以下の式においてX=NH及びY=SO 、m=1、及びA=H)は、Aldissiらの米国特許第4,880,508号明細書(1989年11月14日)から転用された手順に従って合成された。
【0123】
溶液の含浸のために、一例として、約5.78gの得られたスルホン化ポリピロールを100mlの蒸留水中に溶解した。次いで、水溶液をGO/水溶液と混合し、得られた液体混合物を乾燥させてスルホン化ポリピロールをグラフェンシートの表面上に沈殿及び堆積させてレドックス対を形成した。次に、本発明の方法及び従来の方法の両方を使用して、導電性ポリマーによってコートされたグラフェンシートを液体電解質中に分散させ、疑似静電容量電極に製造した。
【0124】
Aldissiら(米国特許第4,880,508号明細書、1989年11月14日)から転用された方法に従って、上記の式2においてチオフェン環(X=硫黄)と4個の炭素原子を含有するアルキル基(m=4)とを有する水溶性導電性ポリマーを調製した。これらのポリマーの界面活性剤分子は、ナトリウムを有するスルホネート基であった。自己ドープ状態のこのポリマーの導電率は、約10-3~約10-2S/cmであった。
【0125】
12.5S/cmの電子導電率を示す式2においてY=SOH及びA=Hであるドープトポリ(アルキルチオフェン)(PAT)を過酸化水素(H)水溶液中に溶解した。得られたポリマー溶液をGO/水溶液と混合し、乾燥させてレドックス対を形成した。次に、本発明の方法及び従来の方法の両方を使用して、導電性ポリマーによってコートされたグラフェンシートを液体電解質中に分散させ、疑似静電容量電極に製造した。
【0126】
グラフェン材料と対にされ、本発明の圧縮、圧密及び巻き取り方法(巻き電極を作成するための)によって調製されたスルホン化導電性ポリマー(例えばS-PANi)は、従来の方法によって調製された相当する材料と比較したときに著しく高い疑似静電容量値をもたらすことを我々は驚くべきことに発見した。例えば803F/g対627(S-PANi)、766F/cm対393F/cm(S-PPy)、及び689F/g対354F/g(S-PAT)。
【0127】
実施例8:MnO-グラフェンレドックス対の調製
MnO粉末は純粋なグラフェンの存在下で合成された。この方法において、0.1モル/LのKMnO水溶液は、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解することによって調製された。一方では高純度ナトリウムビス(2-エチルヘキシル)スルホサクシネートの界面活性剤13.3gを300mLのイソ-オクタン(油)中に添加し、十分に撹拌して光学透明な溶液を得た。次に、0.1モル/LのKMnO溶液32.4mLを溶液中に添加し、その後に、純粋なグラフェンシートを溶液中に分散させた。得られた懸濁液を30分間にわたって超音波処理してMnOの暗褐色の沈殿物をグラフェンシートの表面上にコートした。生成物を回収し、蒸留水及びエタノールで数回洗浄し、12時間にわたって80℃で乾燥させた。試料は、MnOによってコートされたグラフェンシートであり、それらを液体電解質中に再分散させて分散体を形成した。次に、このグラフェン-電解質分散体を電解質含浸層状グラフェン構造体に圧密した(図3)。このような構造体において、グラフェン及びMnOはレドックス対を形成し、スーパーキャパシタにおいて疑似静電容量を生じるように機能する。比較のために、従来のスラリーコーティング、乾燥、パッケージング、及び電解質注入を使用して相当するスーパーキャパシタが製造された。グラフェン表面上にコートされたMnO相が存在しても、本発明の方法は、コートされたグラフェンシートを密充填及び高度配向して、コートされたグラフェンシート間に薄い電解質層が相互に離隔された高タップ密度の電極にすることができる。得られたスーパーキャパシタの比静電容量値は466F/g及び595F/cmであり、それらは、スラリーコーティング、乾燥、積層、及び電解質注入を組み合わせた従来の手順によって作製されたその従来の対応品の324F/g及び244F/cmよりも著しく高かった。差は非常に大きく且つ予想外である。
【0128】
実施例9:様々なスーパーキャパシタセルの評価についての詳細
調査された実施例の大部分において、本発明の巻きスーパーキャパシタセル及びそれらの従来の対応物の両方を製造し、評価した。比較目的のために、後者のセルは、電極のスラリーコーティング、電極の乾燥、アノード層、セパレーター、及びカソード層の組立、組み立てられた積層体のパッケージ化、及び液体電解質の注入の従来の手順によって作製された。従来のセルにおいて、電極(カソード又はアノード)は典型的に、85%の電極活物質(例えばグラフェン、活性炭、無機ナノディスク等々)、5%のSuper-P(アセチレンブラック系導電性添加剤)、及び10%のPTFEから構成され、それらは混合されてAl箔上にコートされた。電極の厚さは約100μmである。各々の試料のために、コインサイズ及びパウチセルの両方をグローブボックス内で組み立てた。容量はArbin SCTS電気化学試験装置を使用して定電流実験で測定された。サイクリックボルタンメトリー(CV)及び電気化学インピーダンス分光法(EIS)は電気化学ワークステーション(CHI 660 System、USA)で実施された。
【0129】
定電流充電/放電試験を試料について実施し、電気化学的性能を評価した。定電流試験のために、比容量(q)は、
q=I*t/m (1)
として計算され、
式中、IはmA単位の一定電流であり、tはh単位の時間であり、及びmはグラム単位のカソード活物質質量である。電圧Vを用いて、比エネルギー(E)は、
E=∫Vdq (2)
として計算される。
比出力(P)は、
P=(E/t)(W/kg) (3)
として計算することができ、
式中、tはh単位の全充電又は放電ステップ時間である。
セルの比静電容量(C)は、電圧対比容量プロットの各点における傾きによって表される。
C=dq/dV (4)
それぞれの試料について、いくつかの電流密度(充電/放電率を表わす)を課して電気化学応答を決定し、ラゴーンプロット(出力密度対エネルギー密度)の構成の必要とされるエネルギー密度及び出力密度値の計算を可能にした。
【0130】
実施例10:達成可能な電極タップ密度及びスーパーキャパシタセルの電気化学的性能へのその効果
本発明の方法によって、0.1~1.7g/cmの任意の実用タップ密度のグラフェン電極を調製することができる。従来の方法によって作製されるグラフェン系スーパーキャパシタ電極は<0.3g/cm、より典型的に<<0.2g/cm、最も典型的に<<0.1g/cmに限定されることを指摘しておいてもよいだろう。さらに、先に考察したように、これらの従来の方法を使用して、より薄い電極だけを作製することができる。基準点として、活性炭をベースとした電極は、典型的に0.3~0.5g/cmのタップ密度を示す。
【0131】
様々なタップ密度を有する一連のEDLC電極を電解質含浸グラフェン層状構造体の同じバッチから作製したが、異なった程度にロールプレスし、ロール型に巻き取られた。電解質の除去前と後及びロールプレスの前と後に電極の体積及び重量を測定した。これらの測定値によって、乾燥された電極のタップ密度(湿潤電極体積/重量-実際に吸収された電解質の量)を推定することができる。比較目的のために、同等の厚さ(70~75μm)のグラフェンをベースとした電極もまた、従来のスラリーコーティング法(湿潤-乾燥-湿潤手順)を使用して作製された。有機電解質(アセトニトリル)を使用するこれらのスーパーキャパシタの電極の比静電容量値を図4にまとめる。これらのデータから行なうことができるいくつかの重要な観察がある:
(A)同等の電極厚さが与えられたとすると、本発明のグラフェンスーパーキャパシタは、従来の方法によって作製された相当するグラフェンをベースとした電極の質量比静電容量(138~150F/g)と比較して著しく高い質量比静電容量(270~333F/g)を示し、全てEDLCだけに基づく。
(B)従来の方法によって作製された電極の最も高い達成可能なタップ密度は0.14~0.28g/cmである。対照的に、本発明の方法は、0.35~1.64g/cm3(一連の試料だけに基づく)のタップ密度を達成することを可能にする。これらの前例のない値は、活性化炭素電極の値(0.3~0.5g/cm)を大幅に上回りさえする。
(C)本発明のグラフェン電極は、531F/cmまでの体積比静電容量を示し、それもまた前例のない値である。対照的に、従来の方法に従って作製されたグラフェン電極は、21~40F/cmの範囲の比静電容量を示し、差は顕著である。
【0132】
図5に示されるのは、電極活物質として窒素ドープトグラフェンシートと電解質としてEMIMBF4イオン性液体とを含有する2組の対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのラゴーンプロット(質量及び体積出力密度対質量及び体積エネルギー密度)である。2組のスーパーキャパシタのうちの一方は本発明の実施形態に従って作製された巻きグラフェン電極に基づいており、他方は、電極の従来のスラリーコーティングによるものであった。いくつかの重要な観察をこれらのデータから行なうことができる:
(A)本発明の方法によって作製されるスーパーキャパシタセル(巻きセル)の質量及び体積エネルギー密度と質量及び体積出力密度の両方が、(「従来のもの」として示される)従来の方法によって作製されるそれらの対応物の質量及び体積エネルギー密度と質量及び体積出力密度よりも著しく高い。差は非常に顕著であり、主に、本発明の巻きセルに伴う高い活物質の質量負荷(>20mg/cm)、活物質の重量/体積に対してオーバーヘッド成分(非活性)の比率の低減、結合剤樹脂がないこと、本発明の方法がグラフェンシートの再積層をせずに及びいかなる乾燥した箇所(液体電解質に接触しない空間)も生成せずにグラフェンシートを一緒に有効に充填できること(予備含浸された電解質がスペーサーとして役立つため)のためである。
(B)従来の方法によって作製されるセルについては、体積エネルギー密度及び体積出力密度の絶対量は、従来のスラリーコーティング方法によって作製される単離されたグラフェンシートをベースとした電極の非常に低いタップ密度(0.28g/cmの充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度及び質量出力密度の絶対量よりも著しく低い。
(C)対照的に、本発明の方法によって作製されたセルについては、体積エネルギー密度及び体積出力密度の絶対量は、本発明の方法によって作製されたグラフェンをベースとした電極の比較的高いタップ密度(1.2g/cmの充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度及び質量出力密度の絶対量よりも高い。
【0133】
図6は、一方は巻きセルであり、他方は従来のセルである、2つの純粋なグラフェン系EDLCスーパーキャパシタのラゴーンプロットを示す。集電体平面に垂直に導入されているロール幅を有するロール電極は、従来の電極と比較したとき電荷の電気二重層を急速に形成するのにいっそう有効であることをデータは示す。いくつかの従来の方法(例えばCVD)は集電体表面上に且つそれに垂直にグラフェンシートを堆積させることができるかもしれないが、これらの方法は、高いタップ密度及び十分に大きな厚さを有する電極を形成することができない。このようなCVD電極を備えるスーパーキャパシタは高い比静電容量/活物質の重量を示すことができるが、静電容量及び貯蔵されるエネルギー/単位セル重量は非常に低く、セル体積に基づいたエネルギー密度はさらに低い。対照的に、本発明の実施形態に従って作製されたスーパーキャパシタセルは、並外れたエネルギー密度及び出力密度/単位セル重量及び/単位セル体積(例えば21.4Wh/L及び25.0kW/L)を与える。
【0134】
図7には、グラフェン-ポリアニリン(PANi-Gn)レドックス対に基づいた、巻かれた及び巻かれていない電極をそれぞれ有する2つのグラフェン-導電性ポリマーレドックススーパーキャパシタ(疑似キャパシタ)のラゴーンプロットがまとめられる。両方とも、NaSO水性電解質を含有する。また、巻きスーパーキャパシタは、従来のセルと比較してより高いエネルギー密度及びより高い出力密度を示す。
【0135】
図8に示されるのは、カソード活物質として純粋なグラフェンシートと、アノード活物質としてプレリチウム化黒鉛粒子と、有機液体電解質としてリチウム塩(LiPF)-PC/DECとを含有するリチウムイオンキャパシタ(LIC)セルのラゴーンプロットである。データは両方のLICについてであり、そこでカソードは本発明の電解質グラフェン圧縮及び圧密方法によって作製され(巻きセル)、それらは、電極の従来のスラリーコーティングによって作製される。巻きLICセルの質量エネルギー及び体積エネルギー密度と出力密度の両方が従来の方法によって作製されるそれらの対応物のそれらよりも著しく高いことをこれらのデータは示す。また、差は非常に大きく、主に、本発明の巻きセルに伴う高い活物質の質量負荷(カソード側で>25mg/cm)、活物質の重量/体積に対してオーバーヘッド(非活性)成分の比率の低減、結合剤樹脂が無いこと、本発明の方法が再積層をせずに及び電解質が不足した乾燥した箇所を有さずにグラフェンシートを一緒により有効に充填できることに帰せられる。
【0136】
従来の方法によって作製されたLICセルについて、体積エネルギー密度及び体積出力密度の絶対量は、従来のスラリーコーティング方法によって作製されたグラフェンをベースとしたカソードの非常に低いタップ密度(0.28g/cmの充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度及び質量出力密度の絶対量よりも著しく低い。対照的に、本方法によって作製されたLICセルについては、体積エネルギー密度及び体積出力密度の絶対量は、本発明の方法によって作製されたグラフェンをベースとしたカソードの比較的高いタップ密度のために、それらの質量エネルギー密度及び質量出力密度の絶対量よりも高い。
【0137】
多くの研究者がしたように、ラゴーンプロット上で活物質重量の単位だけに対するエネルギー密度及び出力密度を記録することは、組み立てられたスーパーキャパシタセルの性能の現実的な見方を与えない場合があることを指摘することは重要である。また、他のデバイス成分の重量もまた考慮しなければならない。集電体、電解質、セパレーター、結合剤、コネクター、及びパッケージングなどのこれらのオーバーヘッド成分は非活物質であり、電荷蓄積量に寄与しない。それらは、重量及び体積をデバイスに付加するにすぎない。したがって、オーバーヘッド成分重量の相対比率を低下させ、活物質の比率を増加させることが望ましい。しかしながら、従来のスーパーキャパシタ製造プロセスを使用してこの目標を達成することは可能でなかった。本発明は、スーパーキャパシタの本技術分野においてこの長年の最も重大な問題を克服する。
【0138】
150μmの電極厚さを有する商用スーパーキャパシタにおいて、活物質(すなわち活性炭)の重量は、パッケージ化セルの全質量の約30%を占める。したがって、しばしば3ないし4の係数を使用して、活物質の重量だけに基づいた性質からデバイス(セル)のエネルギー密度又は出力密度を外挿する。大抵の科学誌において、報告される性質は典型的に、活物質の重量だけに基づいており、電極は典型的に非常に薄い(<<100μm、及び主に<<50μm)。活物質重量は典型的に全デバイス重量の5%~10%であり、それは、実際のセル(デバイス)エネルギー密度又は出力密度が、活物質重量に基づいた相当する値を10ないし20の係数で割ることによって得られてもよいことを意味する。この係数が考慮された後、これらの科学誌において報告される性質は、商用スーパーキャパシタの性質ほどあまり良く見えない。このように、科学誌及び特許出願において報告されたスーパーキャパシタの性能データを読んで解釈するときには非常に注意深くなければならない。
【0139】
スーパーキャパシタの電極厚さはデバイス性能の最適化のために自由に調節することができる設計パラメーターであると考えたいかもしれないが、実際は、スーパーキャパシタの厚さは製造によって制限され、特定の厚さレベルを超える良い構造統合性の電極を製造することはできない。我々の研究はさらに、この問題はグラフェンをベースとした電極に関してはさらにより深刻であることを示す。本発明は、スーパーキャパシタに関連したこの極めて重要な問題を解決する。
【0140】
本発明の方法によって、典型的にμm~cm(又はさらにもっと厚い)大きいロール幅(セパレーター平面に垂直であり、したがって、従来のセルの電極厚さに等しい)を有するグラフェン系巻き電極を作製することが可能になる。ロール幅に制限はない。しかしながら、実際には、典型的に、300μm~数cmのロール幅を有するグラフェン電極ロールを作製する。それと対照して、従来の湿潤-乾燥-湿潤法では、200μmより厚いグラフェン電極を製造することはできない。
【0141】
実施例11:セル内の達成可能な活物質の重量パーセント及びスーパーキャパシタセルの電気化学的性能へのその効果
活物質の重量は、パッケージ化商用スーパーキャパシタの全質量の約30%までを占めるので、30%の係数を使用して、活物質だけの性能データからデバイスのエネルギー密度又は出力密度を外挿しなければならない。したがって、活性炭(すなわち、活物質の重量だけに基づいた)20Wh/kgのエネルギー密度は、パッケージ化セル約6Wh/kgということになる。しかしながら、この外挿は、商用電極の厚さ及び密度と同様な厚さ及び密度を有する電極(炭素電極1cm当たり150μm又は約10mgまで)に有効であるにすぎない。より薄い又はより軽い同じ活物質の電極は、全セルの重量に基づいてさらに低いエネルギー密度又は出力密度を意味する。したがって、高い活物質の比率を有するスーパーキャパシタセルを製造することが望ましい。残念なことに、活性炭系スーパーキャパシタについて40重量%超又はグラフェン系スーパーキャパシタについて20重量%超の活物質の比率を達成することはこれまで可能でなかった。
【0142】
本発明の巻きセル手順は、検討された全ての活物質のこれらの限度をスーパーキャパシタがかなり上回ることを可能にする。実のところ、本発明は、望ましいならば活物質の比率を90%を上回らせることを可能にするが、典型的には20%~85%、より典型的には30%~80%、さらにより典型的には40%~75%、最も典型的には50%~75%にすることを可能にする。例えば、図9は、グラフェンをベースとしたEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質を有する)内の達成可能な活物質の比率(活物質の重量/セルの全重量)についてプロットされたセルレベルの質量エネルギー密度を示す。53.4Wh/kg及び64.5Wh/Lの並外れたセルレベルのエネルギー密度が達成されており、それらは、全てのEDLCスーパーキャパシタ(単にグラフェン系ではない)についてこれまで報告された最も高い値である。
【0143】
結論として、イオン輸送及び電気二重層の形成に資する好ましい方向に整列されている高導電性及び配向グラフェンシートを含有する巻き電極を有するスーパーキャパシタの絶対的に新しい、新規な、予想外の、及び明白に区別されるクラスを我々は成功裏に開発した。電解質で離間され、セパレーター平面に垂直であるロール幅を有する細密充填及び高配向グラフェンシートを含有するこれらの電極は、セル重量又はセル体積の1単位当たりに基づく驚くべきそして前例なく高いエネルギー密度及び出力密度を示す巻きスーパーキャパシタをもたらす。
図1A
図1B
図2A-2C】
図2D-2E】
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9