(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】複合成形品と、前記複合成形品を用いた表示装置、および複合成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20240314BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B22D19/00 P
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020015344
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩昭
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125371(JP,A)
【文献】特開2003-071870(JP,A)
【文献】特開2011-150946(JP,A)
【文献】特開2005-343178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00
B22D 19/00
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造法で成形された金属基材と、前記金属基材の一部に固着された樹脂成形体と、を有する複合成形品において、
前記金属基材は、本体部と、前記本体部から突出して前記樹脂成形体に入り込むアンカー凸部と、を有しており、
前記アンカー凸部は、前記鋳造法で前記本体部を成形するときに溶融金属を導入するゲート部と溶融金属を排出するオーバフロー部の少なくとも一方に位置していることを特徴とする複合成形品。
【請求項2】
前記金属基材は、前方から見た平面視での各方向の幅寸法が前後方向の高さ寸法よりも大きく、幅方向が前後方向に向けられて前後方向と交差する方向が長手方向とされた側面部を有しており、
前記アンカー凸部は、前記側面部から側方へ突出して、前記側面部の前記長手方向に沿って延びており、
前記
樹脂成形体の少なくとも一部が前記側面部に固着している請求項1記載の複合成形品。
【請求項3】
前記金属基材は、前方から見た平面視での各方向の幅寸法が前後方向の高さ寸法よりも大きく、幅方向が前後方向に向けられて前後方向と交差する方向が長手方向とされた側面部を有しており、
前記アンカー凸部は、前記側面部から側方へ突出して、前記側面部の前記長手方向に沿って延び、前記側面部は、前記アンカー凸部よりも前方に位置する前表面と、前記アンカー凸部よりも後方に位置する後表面とを有しており、
前記前表面と前記後表面とが、前記アンカー凸部から前後方向に離れるにしたがって前記本体部の内方へ向かうように傾斜しており、
前記
樹脂成形体の少なくとも一部が前記前表面と前記後表面に固着している請求項1記載の複合成形品。
【請求項4】
前記アンカー凸部よりも前方に位置する前記側面部の前表面と、前記アンカー凸部よりも後方に位置する前記側面部の後表面と、の少なくとも一方にアンカー凹部が形成されており、
前記樹脂成形体の一部が前記アンカー凹部内に入り込んでいる請求項2または3記載の複合成形品。
【請求項5】
前記アンカー凹部は、前記側面部に解放された側方開口部と前後方向に向く高さ方向に解放された高さ方向開口部とを有しており、
前記アンカー凹部の前記長手方向での内幅寸法は、前記側方開口部から凹部内方に向けて徐々に広くなり、前記高さ方向開口部から凹部内方に向けて徐々に狭くなる請求項4記載の複合成形品。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の複合成形品を有し、
前記金属基材の前記側面部で囲まれた収納空間の内部に、表示セルが配置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
鋳造法で金属基材を成形し、前記金属基材に、樹脂成形体を固着する複合成形品の製造方法において、
前記鋳造法では、金型のゲート部からキャビティ内に溶融金属を注入し、前記金型のオーバフロー部から前記溶融金属を排出し、前記キャビティ内の前記溶融金属を固化させて前記金属基材の本体部を成形し、
前記ゲート部と前記オーバフロー部の少なくとも一方で固化された金属の一部を残して、前記本体部から突出するアンカー凸部を形成し、
前記樹脂成形体を成形する際に、前記アンカー凸部を、前記樹脂成形体に入り込ませることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト法などの鋳造法で成形された金属基材を有し、前記金属基材と樹脂成形体とがインサート成形などによって複合された複合成形品と、前記複合成形品を用いた表示装置、および複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された電子機器には、マグネシウム合金などの金属材料で形成された第一部材と、合成樹脂材料で形成された第二部材とが、インサート成形によって複合された筐体が使用されている。
【0003】
特許文献1に記載された発明では、
図6に示されるように、金属材料で形成された第一部材に後壁が立ち上がるように形成され、後壁の内面に後壁の厚さ方向に窪む凹部が形成されている。また、第一部材には、後壁から内側に離れた位置で上下に貫通する開口部が複数か所に設けられている。合成樹脂材料でインサート成形された第二部材は、第一部材の下面と上面に固着して形成され、さらに、樹脂材料の一部が壁部に形成された前記凹部の内部と、上下に貫通する前記開口部の内部に充填されることによって、第一部材と第二部材とが固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された第一部材は、マグネシウム合金などの金属材料を使用してダイカスト法などの鋳造法で成形されたものと予測されるが、第一部材で上下に貫通する開口部を切削加工で形成すると、加工時のバリが合成樹脂材料で成型される第二部材の内部に混入され、そのバリが第二部材の表面に露出するおそれがある。そのため、開口部を切削加工した後に、バリ取りのための仕上げ加工が必要になり、工数が非常に多くなる。
【0006】
また、特許文献1に記載された電子機器では、上下方向の高さ寸法が比較的低い第一部材が使用され、後壁に前記凹部を形成し、さらに上下に貫通する開口部を設けることで、後壁の内側部分に合成樹脂材料による第二部材を固着させている。ただし、特許文献1に記載されているような上下の高さ寸法の小さい第一部材において、後壁の外側に向く表面に体積の小さな第二部材をインサート成形によって強固に固着させることは困難である。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、鋳造法で金属基材を成形する際に、余分なバリ取り工程などを設ける必要がなく、樹脂成形体に入り込むアンカー凸部を形成することが可能な複合成形品と、前記複合成形品を用いた表示装置、および複合成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、平面視の各方向の幅寸法よりも前後方向の高さ寸法の小さい金属基材が使用されているときに、この金属基材に形成された前後の幅寸法が小さく長手方向に延びる側面部に対して、比較的体積の小さい樹脂成形体を強固に固着させることが可能な複合成形品と、前記複合成形品を用いた表示装置、および複合成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鋳造法で成形された金属基材と、前記金属基材の一部に固着された樹脂成形体と、を有する複合成形品において、
前記金属基材は、本体部と、前記本体部から突出して前記樹脂成形体に入り込むアンカー凸部と、を有しており、
前記アンカー凸部は、前記鋳造法で前記本体部を成形するときに溶融金属を導入するゲート部と溶融金属を排出するオーバフロー部の少なくとも一方に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の複合成形品では、前記金属基材は、前方から見た平面視での各方向の幅寸法が前後方向の高さ寸法よりも大きく、幅方向が前後方向に向けられて前後方向と交差する方向が長手方向とされた側面部を有しており、
前記アンカー凸部は、前記側面部から側方へ突出して、前記側面部の前記長手方向に沿って延びており、
前記樹脂成形体の少なくとも一部が前記側面部に固着していることが好ましい。
【0011】
また、本発明の複合成形品では、前記金属基材は、前方から見た平面視での各方向の幅寸法が前後方向の高さ寸法よりも大きく、幅方向が前後方向に向けられて前後方向と交差する方向が長手方向とされた側面部を有しており、
前記アンカー凸部は、前記側面部から側方へ突出して、前記側面部の前記長手方向に沿って延び、前記側面部は、前記アンカー凸部よりも前方に位置する前表面と、前記アンカー凸部よりも後方に位置する後表面とを有しており、
前記前表面と前記後表面とが、前記アンカー凸部から前後方向に離れるにしたがって前記本体部の内方へ向かうように傾斜しており、
前記樹脂成形体の少なくとも一部が前記前表面と前記後表面に固着していることが好ましい。
【0012】
本発明の複合成形品は、前記アンカー凸部よりも前方に位置する前記側面部の前表面と、前記アンカー凸部よりも後方に位置する前記側面部の後表面と、の少なくとも一方にアンカー凹部が形成されており、
前記樹脂成形体の一部が前記アンカー凹部内に入り込んでいることが好ましい。
【0013】
本発明の複合成形品では、前記アンカー凹部は、前記側面部に解放された側方開口部と前後方向に向く高さ方向に解放された高さ方向開口部とを有しており、
前記アンカー凹部の前記長手方向での内幅寸法は、前記側方開口部から凹部内方に向けて徐々に広くなり、前記高さ方向開口部から凹部内方に向けて徐々に狭くなることが好ましい。
【0014】
次に、本発明は、前記いずれかの複合成形品を有し、
前記金属基材の前記側面部で囲まれた収納空間の内部に、表示セルが配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明は、鋳造法で金属基材を成形し、前記金属基材に、樹脂成形体を固着する複合成形品の製造方法において、
前記鋳造法では、金型のゲート部からキャビティ内に溶融金属を注入し、前記金型のオーバフロー部から前記溶融金属を排出し、前記キャビティ内の前記溶融金属を固化させて前記金属基材の本体部を成形し、
前記ゲート部と前記オーバフロー部の少なくとも一方で固化された金属の一部を残して、前記本体部から突出するアンカー凸部を形成し、
前記樹脂成形体を成形する際に、前記アンカー凸部を、前記樹脂成形体に入り込ませることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、鋳造法で金属基材が成形される際に、ゲート部とオーバフロー部に位置する金属の一部を本体部から突出させた状態で残すことによってアンカー凸部が形成されている。ダイカスト法などの鋳造法で金属基材を成形する際には、ゲート部とオーバフロー部で固まった金属材料を切断し、また必要に応じてバリ取り工程を経ることは従来から行われていた工程である。本発明では、従来の金属基材の成形工程とほぼ同じ工数で、バリなどの無いアンカー凸部を成形することが可能になる。インサート成形などで金属基材と樹脂成形体とを複合させるときに、アンカー凸部を樹脂内に介入させることで、金属基材と樹脂成形体とを強固に固定されることが可能になる。
【0017】
また、本発明は、前方から見た平面視での各方向の幅寸法が大きく、側面部の前後方向の幅寸法が小さい平坦状態の金属基材において、前記側面部に、その長手方向に沿って延びるアンカー凸部を形成するとともに、アンカー凸部よりも前方と後方に位置する側面部の表面の少なくとも一方にアンカー凹部を形成している。この構造では、前後方向の幅寸法が小さく長手方向に長く延びる帯状の比較的面積の小さい側面部に対し、比較的体積の小さい樹脂成形体を強固に固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の複合成形品を使用した表示装置を前方から見た斜視図、
【
図3】
図1に示した表示装置に含まれるインサート成形で成形された複合成形品を示す斜視図、
【
図4】
図3に示した複合成形品の金属基材と樹脂成形品とを分離して示す分解斜視図、
【
図5】
図3に示した複合成形品をV-V線で切断した断面を含む斜視図、
【
図6】
図4に示した金属基材をVI-VI線で切断した断面を含む斜視図、
【
図8】金属基材をダイカスト法で成形する際の金型の断面図であり、
図7に示す部分を成形するためのキャビティを示すものであり、
図14をVIII-VIII線で切断した断面図、
【
図9】金属基材の側面部においてアンカー凸部の上方に成形されるアンカー凹部を示すものであり、(A)が部分平面図、(B)が部分側面図、
【
図10】
図3に示した複合成形品をX-X線で切断した断面を含む斜視図、
【
図11】
図4に示した金属基材をXI-XI線で切断した断面を含む斜視図、
【
図13】金属基材をダイカスト法で成形する際の金型の断面図であり、
図12に示す部分を成形するためのキャビティを示すものであり、
図14をXIII-XIII線で切断した断面図、
【
図14】金属基材をダイカスト法で成形しアンカー凸部を残す工程を説明する平面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明の実施形態の表示装置1が示され、
図2に表示装置1の分解斜視図が示されている。
表示装置1は、車載用であり、Z1方向が前方でZ2方向が後方である。車室内に設置された姿勢では、Z1方向が車室内に向けられ、Z2方向が車両の前進方向に向けられる。Y1方向が上方でY2方向が下方、X1方向が画面に向かって左方向で、X2方向が画面に向かって右方向である。
【0020】
図2の分解斜視図に示されるように、表示装置1の筐体2は、前方ケースである複合成形品3と、それよりも後方(Z2方向)に位置する後方ケース4とが組み合わされて構成されている。前方ケースである複合成形品3は、金属基材10の周囲に、合成樹脂材料による樹脂成形体30の少なくとも一部が固着して形成されている。後方ケース4は合成樹脂材料で形成されている。
図1に示されるように、複合成形品3と後方ケース4とが組み合わされると、複合成形品3の樹脂成形体30の外面と、後方ケース4の外面とが連続し、樹脂ケース表面が形成される。
【0021】
図2に示されるように、複合成形品3の金属基材10には前方(Z1方向)に解放された収納空間(収納凹部)11が形成されており、この収納空間11の内部にバックライトユニット5が収納されている。金属基材10は左右両側に支持板部12a,12bを有しており、この支持板部12a,12bの前面に、透光性の前面パネル6が設置されて固定されている。前面パネル6の後方(Z2方向)に向く後面には、液晶表示セル7が固定されている。前面パネル6と液晶表示セル7との間には、静電容量検知式のタッチパネルが介在している。金属基材10の前方に前面パネル6が設置されて固定されると、透過式の液晶表示セル7がバックライトユニット5の前方に重ねられる。また
図1に示されるように、前面パネル6は、樹脂成形体30の前方部分の周壁部31a,32a,33a,34a,35aで囲まれた状態で固定される。
【0022】
図3に、複合成形品3が示されている。複合成形品3は、前方(Z1方向)から後方へ向かって見た平面視において、X-Y平面内での各方向での幅寸法が、どの位置であっても、前後方向(Z1-Z2方向)での高さ寸法よりも大きい。すなわち、複合成形品3は、左右方向(X1-X2方向)の幅寸法と上下方向(Y1-Y2方向)の幅寸法が、前後方向(Z1-Z2方向)の寸法よりも十分に大きい平坦形状である。
【0023】
複合成形品3の金属基材10は鋳造法で成形されたものであり、マグネシウム合金やアルミニウム合金などの金属材料を用いてダイカスト法によって成形されている。金属基材10とその周囲に固着された
樹脂成形体30は複合成形法によって一体に固着されている。複合成形法は、金属基材10を金型内に収納し、金属基材10の周囲に
樹脂成形体30を射出成形するいわゆるインサート成形である。あるいは、金属基材の外部の一部に金型を設置し、金属基材の外部の一部に樹脂成形体
30を固着するいわゆるアウトサート法であってもよい。金属基材10と樹脂成形体30は一体に固着されており、容易に分離することはできないが、
図4では、それぞれの形状を理解しやすくするために、金属基材10と
樹脂成形体30とを、あえて分離した状態で示している。
【0024】
図3と
図4に示されるように、金属基材10は、左右方向(X1-X2方向)の幅寸法と上下方向(Y1-Y2方向)の幅寸法が、前後方向(Z1-Z2方向)の寸法よりも十分に大きい平坦な長方形である。金属基材10は、前方(Z1方向)に開口部が解放された収納空間11を有している。収納空間11は、左右方向(X1-X2方向)の幅寸法が上下方向(Y1-Y2方向)の幅寸法よりも大きい長方形状であり、前述のように、バックライトユニット5が収納空間11の内部に収納される。金属基材10には、前記収納空間11の左側(X1側)に支持板部12aが、右側(X2側)に支持板部12bが形成されている。前記前面パネル6の左右両側部は前記支持板部12a,12bの前面に接着されて固定される。
【0025】
図5に、複合成形品3をV-V線で切断した断面が示され、
図6と
図7に、金属基材10をVI-VI線で切断した断面が示されている。金属基材10には、上側(Y1側)において、収納空間11の底面11aから前方(Z1方向)に向けて立ち上がる上部側壁部13が一体に形成されている。
図10に、複合成形品3をX-X線で切断した断面が示され、
図11と
図12に、金属基材10をXI-XI線で切断した断面が示されている。金属基材10には、下側(Y2側)において、収納空間11の底面11aから前方に向けて立ち上がる下部側壁部14が一体に形成されている。
【0026】
図4に示されるように、上部側壁部13の前端面13aと下部側壁部14の前端面14aは、X-Y平面と平行な同一平面内に位置しており、左右の支持板部12a,12bの前面と、前端面13aおよび前端面14aも、X-Y平面と平行な同一平面内に位置している。
【0027】
図4に示されるように、金属基材10の上方に位置する上部側壁部13は、左右方向(X1-X2方向)に延びる長さ寸法Laの範囲でほぼ同じ構造である。長さ寸法Laは、長方形状の収納空間11の左右方向(X1-X2方向)に延びる長辺の長さとほぼ一致している。
図5と
図6および
図7に、長さ寸法Laの範囲での上部側壁部13の詳細な構造が示されている。金属基材10の下方に位置する下部側壁部14は、左右両側でのそれぞれ長さ寸法Lbの範囲でほぼ同じ構造である。
図10と
図11および
図12に、長さ寸法Lbの範囲での下部側壁部14の詳細な構造が示されている。
【0028】
図4に示されるように、金属基材10では、下部側壁部14の中央の長さ寸法Lcの範囲に、下部側面部14の下方(Y2方向)に向く表面から後方(Z2方向)に向けて延びる延長壁部10aと、延長壁部10aの後端部から下方(Y2方向)に向けて延びる支持部10bとが一体に成形されている。
【0029】
図5と
図6および
図7に示されるように、上部側壁部13は、上方(Y1方向)に向く側面部16を有している。側面部16は、前後方向(Z1-Z2方向)が幅方向で、前後方向と直交する左右方向(X1-X2方向)が長手方向であり、幅方向の寸法よりも長手方向の寸法が十分に大きい帯形状である。側面部16の前後方向(Z1-Z2方向)の中間部には、上方(Y1方向)に向けて突出するアンカー凸部17が一体に形成されている。
図10と
図11および
図12に示されるように、下部側壁部14は、下方(Y2方向)に向く側面部18を有している。側面部18も、前後方向(Z1-Z2方向)が幅方向で、前後方向と直交する左右方向(X1-X2方向)が長手方向であり、幅方向の寸法よりも長手方向の寸法が十分に大きい帯形状である。側面部18の前後方向の中間部には、下方(Y2方向)に向けて突出するアンカー凸部19が一体に形成されている。
【0030】
図4に示されるように、金属基材10の左側に位置する支持板部12aは左方向(X1方向)に向く縁部12cを有しており、右側に位置する支持板部12bも右方向(X2方向)に向く縁部12dを有している。前記縁部12cの全周には左方向に突出するアンカー凸部25が形成され、前記縁部12dの全周にも右方向(X2方向)に突出するアンカー凸部25が形成されている。縁部12c,12dに設けられたアンカー凸部25の前後方向の幅寸法は、下部側壁部14に設けられたアンカー凸部19とほぼ等しい。
【0031】
図6と
図11に示されるように、金属基材10は、上部側壁部13に設けられたアンカー凸部17と下部側壁部14に設けられたアンカー凸部19および支持板部12a,12bの縁部12c,12dに設けられたアンカー凸部25を除く部分であって、さらに延長壁部10aと支持部10bを除く部分が本体部15である。
【0032】
図6に示されるように、上部側壁部13およびその側面部16は、幅方向(Z1-Z2方向)の寸法よりも長手方向(X1-X2方向)の寸法が十分に大きい長尺形状である。アンカー凸部17は、側面部16の前後方向(Z1-Z2方向)の中間に位置し、側面部16の長手方向(X1-X2方向)に沿って設けられている。アンカー凸部17は、前後方向(Z1-Z2方向)が幅方向であり、左右方向(X1-X2方向)が長手方向である。アンカー凸部17は幅方向の幅寸法W1よりも長手方向に向く長さ寸法L1の方が十分に長いレール形状である。長さ寸法L1は幅寸法W1の10倍以上である。アンカー凸部17は、長さ寸法Laのほぼ全長にわたって途切れることなく連続して延びている。あるいは数か所で途切れた状態で左右方向に長く延びているものであってもよい。
【0033】
金属基材10はダイカスト法などの鋳造法で成形されているが、アンカー凸部17は、金型の本体部15を鋳造するキャビティ内に溶融金属を導入するためのゲート部に位置している。
【0034】
図5と
図6および
図7に示されるように、上部側壁部13の側面部16は、アンカー凸部17を挟んで前方(Z1方向)に位置する前表面16aと、アンカー凸部17を挟んで後方(Z2方向)に位置する後表面16bを有している。
図7の断面図に示されるように、前表面16aは、アンカー凸部17から前方(Z1方向)に向けて離れるにしたがって、本体部15の内方(Y2方向)に向けて角度αだけ傾いている。後表面16bは、アンカー凸部17から後方(Z2方向)に向けて離れるにしたがって、本体部15の内方(Y2方向)に向けて角度βだけ傾いている。すなわち、前表面16aは、X-Z平面と平行な前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度αだけ傾いており、後表面16bは、前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度βだけ傾いている。角度αと角度βは同じ角度であっても異なる角度であってもよい。
図7に示されるように、前表面16aと後表面16bは、長手方向である左右方向(X1-X2方向)に延びる傾斜平面であるが、前表面16aと後表面16bは、前記本体部15の内方に向けて傾斜する小さな曲率の凸曲面や凹曲面であってもよい。
【0035】
前表面16aと後表面16bの傾斜角度の基準となる前後平面Kは、収納空間11の底面11aに垂直な面である。
図7に示すように、前後平面Kは前後方向(Z1-Z2方向)に延びているが、この前後方向は、金属基材10をダイカスト法などの鋳造法で成形するときの、一対の金型41,42の分離方向に一致している。
【0036】
アンカー凸部17よりも前方に位置する前表面16aと後方に位置する後表面16bの少なくとも一方に、複数のアンカー凹部が設けられている。
図6と
図9に示されるように、実施形態の金属基材10では、前表面16aにのみアンカー凹部21,22が設けられている。アンカー凹部21,22は、アンカー凸部17の側方(前方)に位置し、アンカー凸部17の長手方向(X1-X2方向)に沿って一定の間隔で配置されている。
【0037】
図9(A)の部分平面図と
図9(B)の部分側面図に示されるように、アンカー凹部21は、側面部16の前表面16aに解放された側方開口部21aと、前後方向である高さ方向において前方(Z1方向)に解放された高さ方向開口部21bを有している。アンカー凹部21の長手方向すなわち左右方向(X1-X2方向)での内幅寸法に関しては、
図9(A)に示されるように、側方開口部21aの幅寸法E1から下方(Y2方向)の奥側の幅寸法E2に向けて(凹部内方に向けて)徐々に広くなる。また、前記内幅寸法は、
図9(B)に示されるように、高さ方向開口部21bの幅寸法G1から後方(Z2方向)の奥側の幅寸法G2に向けて(凹部内方に向けて)徐々に狭くなっている。
【0038】
図6と
図9(A)に示されるように、ほとんどのアンカー凹部21は、側方開口部21aから下方(Y2方向)に向けて、上部側壁部13の肉厚の途中までの深さとなるように形成されている。ただし、
図9(A)に示されるように、一部のアンカー凹部22は、上部側壁部13を上下方向(Y1-Y2方向)に貫通して形成されている。
【0039】
図9(A)(B)に示されるように、上部側壁部13を貫通するアンカー凹部22は、側面部16の前表面16aに解放された側方開口部22aと前後方向である高さ方向において前方(Z1方向)に解放された高さ方向開口部22bを有している。アンカー凹部22の長手方向すなわち左右方向(X1-X2方向)での内幅寸法に関しては、
図9(A)に示されるように、側方開口部21aの幅寸法F1から下方(Y2方向)での開口部の幅寸法F2に向けて(凹部内方に向けて)徐々に広くなる。また、前記内幅寸法は、
図9(B)に示されるように、高さ方向開口部21bの幅寸法H1から後方(Z2方向)の奥側の幅寸法H2に向けて(凹部内方に向けて)徐々に狭くなっている。
【0040】
金属基材10の
図4における長さ寸法Lbの範囲では、
図11に示されるように、下部側壁部14およびその側面部18は、幅方向(Z1-Z2方向)の寸法よりも長手方向(X1-X2方向)の寸法が大きい長尺形状である。アンカー凸部19は、側面部18の前後方向(Z1-Z2方向)の中間部において、側面部18の長手方向(X1-X2方向)に沿って設けられている。アンカー凸部19は、前後方向(Z1-Z2方向)が幅方向で、側面部18の長手方向に沿う左右方向(X1-X2方向)が長尺方向である。アンカー凸部19は前後方向(Z1-Z2方向)の幅寸法W2よりも長手方向に向く長さ寸法L2の方が十分に長いレール形状である。長さ寸法L2は幅寸法W2の10倍以上である。アンカー凸部19は、
図4に示される長さ寸法Lbのほぼ全長にわたって途切れることなく連続して延びている。あるいは長さ寸法Lbの範囲で、数か所で途切れた状態で左右方向に長く延びていてもよい。
【0041】
金属基材10はダイカスト法などの鋳造法で成形されているが、下部側壁部14に設けられたアンカー凸部19は、金型の本体部15を鋳造するキャビティ内に充填された溶融金属の余剰分を排出するためのオーバフロー部に位置している。
【0042】
図10と
図11および
図12に示されるように、下部側壁部14の側面部18は、アンカー凸部19を挟んで前方(Z1方向)に位置する前表面18aと、アンカー凸部19を挟んで後方(Z2方向)に位置する後表面18bを有している。
図12の断面図に示されるように、前表面18aは、アンカー凸部19から前方(Z1方向)に向けて離れるにしたがって、本体部15の内方(Y1方向)に向けて角度αだけ傾いている。後表面18bは、アンカー凸部17から後方(Z2方向)に向けて離れるにしたがって、本体部15の内方(Y1方向)に向けて角度βだけ傾いている。すなわち、前表面18aは、X-Z平面と平行な前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度αだけ傾いており、後表面18bは、前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度βだけ傾いている。角度αと角度βは同じ角度であっても異なる角度であってもよい。前表面16aと後表面16bは、左右方向(X1-X2方向)に延びる傾斜平面であるが、前表面18aと後表面18bは、前記本体部15の内方に向けて傾斜する小さな曲率の凸曲面や凹曲面であってもよい。
【0043】
アンカー凸部19よりも前方に位置する前表面18aと後方に位置する後表面18bの少なくとも一方に、複数のアンカー凹部が左右方向(X1-X2方向)に一定の間隔で並んで形成されている。
図4に示される長さ寸法Lbの範囲では、前表面18aにアンカー凹部21,22が形成されている。アンカー凹部21,22は、
図9(A)(B)に示されている上部側壁部13に形成されたものと同じ構造であり、同じ寸法である。
【0044】
金属基材10の下部側壁部14の中央部の長さ寸法Lcの領域に、延長壁部10aと支持部10bが形成されているが、延長壁部10aと支持部10bは、金型の本体部15を鋳造するためにキャビティ内に充填された溶融金属の余剰分を排出するためのオーバフロー部に位置している。
図4に示されるように、下部側壁部14の長さ寸法Lcの範囲では、延長壁部10aが形成されている部分において、下部側壁部14の上部に、
図9(A)(B)に示されたのと同じ構造および寸法のアンカー凹部21,22が複数か所に形成されている。
【0045】
図4に示すように、金属基材10の支持板部12a,12bの縁部12c,12d、すなわち金属基材10の左右両側の縁部12c,12dにも、縁部の長手方向に沿ってアンカー凸部25が設けられている。縁部12c,12dでは、アンカー凸部25よりも前方に前表面が、アンカー凸部よりも後方に後表面が設けられている。前表面と後表面は、
図7および
図12に示したのと同様に角度αと角度βを有して傾斜している。そして、前表面に、複数のアンカー凹部21が間隔を空けて形成されている。アンカー凹部21の構造および寸法は、
図9(A)(B)に示されているものと同じである。
【0046】
図3には、金属基材10の周囲部分の表面に、樹脂成形体30がインサート成形で固着された複合成形品3が示されている。
図4では、樹脂成形体30を、金属基材10からあえて分離した図として示している。樹脂成形体30はポリカーボネートやアクリル樹脂などの合成樹脂材料で成形されている。
図3と
図4に示されるように、樹脂成形体30は、
図4に示す長さ寸法Laの範囲で、金属基材10における上部側壁部13の側面部16に固着される上部側壁固着部31と、長さ寸法Lbの範囲で、下部側壁部14の側面部18に固着される下部側壁固着部32、および長さ寸法Lcの範囲で、下部側壁部14の側面部および延長壁部10aの下面(Y2側の面)に固着される延長固着部33を有している。さらに、樹脂成形体30は、縁部12c,12dの表面に固着される縁部固着部34,35と、支持板部12a,12bの後方(Z2方向)の表面に固着される基台固着部36,37を有している。
【0047】
図5には、長さ寸法Laの範囲で上部側壁部13に固着された上部側壁固着部31が示されている。上部側壁部13の側面部16に設けられたアンカー凸部17が上部側壁固着部31の内部に入り込み、上部側壁固着部31が、側面部16の前表面16aと後表面16bに固着されている。また、上部側壁固着部31を構成する合成樹脂材料の一部が、上部側壁部13の前表面16aから前端面13aにかけて形成されたアンカー凹部21とアンカー凹部22の内部に入り込んでいる。
図5に示されるように、樹脂成形体30の上部側壁固着部31の前方部分は、上部側壁部13の前端面13aよりも前方(Z1方向)に突出した周壁部31aとなっている。
【0048】
図10には、左右両側の長さ寸法Lbの範囲において、下部側壁部14に固着された下部側壁固着部32が示されている。下部側壁部14の側面部18に設けられたアンカー凸部19が下部側壁固着部32の内部に入り込み、下部側壁固着部32が、側面部18の前表面18aと後表面18bに固着されている。また、下部側壁固着部32を構成する合成樹脂材料の一部が、下部側壁部14の前表面18aから前端面14aにかけて形成されたアンカー凹部21とアンカー凹部22の内部に入り込んでいる。
図10に示されるように、樹脂成形体30の下部側壁固着部32の前方部分は、下部側壁部14の前端面14aよりも前方(Z1方向)に突出した周壁部32aとなっている。
【0049】
図4に示される長さ寸法Lcの範囲では、下部側壁部14の側面部と延長壁部10aの下方(Y2方向)に向く表面に、樹脂成形体30の延長固着部33が固着されている。ここでも、合成樹脂材料の一部がアンカー凹部21,22の内部に入り込んでいる。また、延長固着部33には、下部側壁部14の前端面14aよりも前方に突出した周壁部33aが形成されている。
【0050】
図4に示されるように、複合成形品3の左右両縁部では、樹脂成形体30の縁部固着部34,35が、支持板部12a,12bの縁部12c,12dに固着されている。ここでも縁部12c,12dに沿って設けられたアンカー凸部25が縁部固着部34,35の内部に入り込み、縁部固着部34,35を構成する合成樹脂材料の一部が縁部12c,12dに形成されたアンカー凹部21に入り込んでいる。また、縁部固着部34,35には、支持板部12a,12bよりも前方(Z1方向)に突出する周壁部34a,35aが形成されている。
【0051】
図2に示されるように、表示装置1の前面パネル6は、金属基材10の支持板部12a,12bの前面に固定されるが、このとき、前面パネル6は、周壁部31a,32a,33a,34a,35aに囲まれた空間内に収められる。
【0052】
図5に示されるように、樹脂成形体30の上部側壁固着部31は、細長い表面形状の側面部16の一部に固着されており、上部側壁固着部31は、左右方向に細長く、また、上下方向(Y1-Y2方向)の厚さ寸法も小さく、断面積および体積もきわめて小さくなっている。
図10に示されるように、樹脂成形体30の下部側壁固着部32も、細長い側面部18の一部に固着されており、下部側壁固着部32は、左右方向に細長く、また、上下方向(Y1-Y2方向)の厚さ寸法も小さく、断面積および体積もきわめて小さくなっている。縁部固着部34,35も同様に細長く薄く、断面積が小さいものとなっている。
【0053】
しかしながら、
図5に示されるように、長尺状でレール状のアンカー凸部17が、上部側壁固着部31の長手方向に延びて、長手方向の長い範囲において上部側壁固着部31の内部に入り込み、アンカー凸部17に沿って設けられた複数のアンカー凹部21,22の内部に上部側壁固着部31を構成する合成樹脂材料が入り込んでいる。そのため、上部側壁固着部31が薄く細長くても、上部側壁固着部31は、ヒケや変形あるいは剥離を生じることなく、形状と寸法を維持した状態で、上部側壁部13に強固に固着できるようになる。これは、下部側壁固着部32と延長固着部33および縁部固着部34,35においても同じである。
【0054】
図9(A)に示されるように、アンカー凹部21,22は、側面部16に解放される側方開口部21a,22aの幅寸法E1,F1が小さく、左右方向の内幅寸法は、本体部15の内部に入り込むにしたがって広くなり、幅寸法E2,F2に拡大される。そのため、側面部16に固着される上部側壁固着部31を構成する合成樹脂材料がアンカー凹部21,22の内部に入り込んで固化されると、アンカー凹部21,22で上部側壁固着部31を確実に保持することができるようになり、上部側壁固着部31が側面部16から剥がれにくくなる。
【0055】
次に、金属基材10の鋳造法および複合成形品3の製造方法を説明する。
図8には、金属基材10をダイカスト法で成形するための金型とキャビティの上方部分の断面が示され、
図13には、金型とキャビティの下方部分の断面が示されている。
図14は、金型で形成されるキャビティの平面形状の概略を示す説明図である。なお、
図8は、
図14をVIII-VIII線で切断した断面図に相当し、
図13は、
図14をXIII-XIII線で切断した断面図に相当している。
【0056】
図8と
図13に示されるように、ダイカスト法で使用される金型40は、第1金型41と第2金型42とを有している。第1金型41と第2金型42は、型合わせ面Sで接合される。第1金型41と第2金型42の分離方向は前後方向(Z1-Z2方向)である。
【0057】
第1金型41と第2金型42とが合わせられると、
図14に示されるように、金型40の内部に、金属基材10の本体部15を成形するための本体部成形キャビティC15が形成される。本体部成形キャビティC15には、収納空間11を成形する収納空間成形キャビティC11、上部側壁部13を成形する上部側壁部成形キャビティC13,下部側壁部14を成形する下部側壁部成形キャビティC14、左右両側において支持板部12a,12bを成形する支持板部成形キャビティC12a,C12bが含まれている。また、延長壁部10aと支持部10bを成形するための延長部成形キャビティC10a,10bが、本体部成形キャビティC15から下方(Y2方向)に延長して形成されている。この延長部成形キャビティC10a,10bを形成するために、金型40には、第1金型41と第2金型42以外の入子が必要に応じて設けられる。
【0058】
図14に示されるように、金型40内には、本体部成形キャビティC15の上部側壁部成形キャビティC13に連続するゲート部Cgと、下部側壁部成形キャビティC14に連続するオーバフロー部Cfが設けられている。
図8には、上部側壁部成形キャビティC13とゲート部Cgとの部分断面が示され、
図13には、下部側壁部成形キャビティC14とオーバフロー部Cfとの部分断面が示されている。
【0059】
図14に示されるように、ゲート部Cgには、上部側壁部成形キャビティC13に連続して左右方向(X1-X2方向)に長く延びるアンカーゲート部Cg1と、アンカーゲート部Cg1に連続する複数の分岐ゲート部Cg2が形成されている。オーバフロー部Cfの左右両側部には、下部側壁部成形キャビティC14に連続して左右方向に延びるアンカーオーバフロー部Cf1と、アンカーオーバフロー部Cf1に連続する分岐オーバフロー部Cf2が形成されている。また、金型40内には、延長部成形キャビティC10a,10bに連続する複数の分岐オーバフロー部Cf3が形成されている。さらに、
図14では省略されているが、本体部成形キャビティC15の左右両側に設けられた支持板部成形キャビティC12a,C12bの縁部にもアンカーオーバフロー部が連続して設けられている。
【0060】
第1金型41には、
図6と
図9に示されている上部側壁部13の上部にアンカー凹部21,22を成形するための成形部が設けられている。同様に、第1金型41には、下部側壁部14の上部にアンカー凹部21,22を成形するための成形部、および左右の支持板部12a,12bの縁部12c,12dにアンカー凹部21を成形するための成形部が設けられている。
【0061】
ダイカスト法では、
図8と
図13に示されるように第1金型41と第2金型42とを型合わせ面Sで接合して金型40を組み立てる。このとき、必要に応じて、延長壁部10aと支持部10bを成形するための入子を組み合わせる。
【0062】
図14に示されている分岐ゲート部Cg2からアンカーゲート部Cg1を経て本体部成形キャビティC15内に溶融金属が注入される。本体部成形キャビティC15に充填された溶融金属の余剰分は、アンカーオーバフロー部Cf1から分岐オーバフロー部Cf2に流出し、延長部成形キャビティC10a,10bから分岐オーバフロー部Cf3に流出する。また、本体部成形キャビティC15の左右両側に設けられた支持板部成形キャビティC12a,C12bの縁部にもアンカーオーバフロー部が設けられており、このアンカーオーバフロー部からも溶融金属が流出する。
【0063】
金型40が冷却され、溶融金属が固化した後に、第1金型41と第2金型42がZ1-Z2方向に互いに離され、固化した金属成形体が取り出される。また入子が使用されているときはこの入子も除去される。金型40が開かれると、金属材料で本体部15と延長壁部10aおよび支持部10bが形成されるとともに、アンカーゲート部Cg1と分岐ゲート部Cg2の形状が残され、同様に、アンカーオーバフロー部Cf1と分岐オーバフロー部Cf2の形状が残される。また、分岐オーバフロー部Cf3と、支持板部成形キャビティC12a,C12bから延びるアンカーオーバフロー部の形状も残される。
【0064】
図7に示されるように、上部側壁部13の側面部16では、前表面16aが、X-Z平面と平行な前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度αだけ傾いており、後表面16bが、前後平面Kよりも、本体部15の内方に向けて角度βだけ傾いている。また、
図8に示されるように、第1金型41と第2金型42の型合わせ面Sは、ゲート部Cgの後方(Z2方向)の表面に一致している。そのため、第1金型41と第2金型42は、本体部15、および本体部15に連続するゲート部Cgの形状を残したまま、前後平面Kの方向に向けて支障なく離すことができる。
図12に示されるように、下部側壁部14の側壁部18の前表面18aも前後平面Kから角度αだけ傾き、後表面18bも角度βだけ傾き、型合わせ面Sがオーバフロー部Cfの後側(Z2側)の表面に一致している。そのため、本体部15と、本体部15に連続するオーバフロー部Cfの形状を残したまま、第1金型41と第2金型42の型開きを支障なく行うことができる。
【0065】
図9(B)に示されるように、上部側壁部13の上部と下部側壁部14の上部および、左右両側の縁部12c,12dに設けられたアンカー凹部21は、内幅寸法が前方(Z1方向)に向かうにしたがって、G2からG1へと徐々に広くなり、アンカー凹部22も、前方に向かうにしたがって、H2からH1へと徐々に広くなっている。したがって、アンカー凹部21,22の成形部分においても、第1金型41を、固化された金属成形体から支障なく離すことができる。
【0066】
金型40から取り出された金属成形体の全体形状は、
図14に示される金型内の空間形状と同じである。金属成形体において、アンカーゲート部Cg1に相当する箇所が、
図8と
図14に示す切断線(a)で切断されて、
図6と
図7に示されるように、上部側壁部13の側面部16から上方(Y1方向)に向けて突出するアンカー凸部17が本体部15に連続した状態で残される。金属成形体において、アンカーオーバフロー部Cf1に相当する箇所が、
図13と
図14に示す切断線(b)で切断されると、下部側壁部14の側面部18から下方(Y2方向)に向けて突出するアンカー凸部19が本体部15に連続した状態で残される。
【0067】
また、支持板部成形キャビティC12a,C12bから延びるアンカーオーバフロー部で金属材料が切断されることで、
図4に示されるアンカー凸部25が形成される。さらに、
図14に示される支持板部成形キャビティC12a,C12bで成形された金属部が切断線(c)で切断されて、
図4に示す延長壁部10aと支持部10bが本体部15に連続した状態で残される。
【0068】
金属成形体が各切断線(a)(b)(c)で切断された後に、アンカー凸部17,19,25および支持部10bの切断面のバリ取り加工が行なわれて金属基材10が完成する。
図6と
図9および
図11に示されるように、第1金型41で成形されるアンカー凹部21,22は、表面に露出する全ての角部の断面が曲面形状であるため、第1金型41から分離された状態で、アンカー凹部21,22の表面にバリが残ることはほとんど無い。また前記のように、アンカー凸部17,19,25および支持部10bの切断面のバリ取り加工が行なわれることにより、金属基材10にはバリが全く残らない。そのため、インサート成形によって金属基材10と樹脂成形体30とが固着されるときに、樹脂成形体30を形成する溶融樹脂の内部に金属のバリが混入する不良が発生しにくくなる。
【0069】
金属基材を鋳造法で成形するときには、ゲート部とオーバフロー部で金属成形品を切断し、その切断部のバリ取り加工を行うことが必須であるが、前記実施形態では、ゲート部とオーバフロー部を切断線で切断してバリ取り加工をすることで、バリの存在しないアンカー凸部を成形することが可能である。よって、従来から工数を増やすことなく、バリの無いアンカー凸部を成形することが可能になる。
【0070】
なお、
図6に示されるアンカー凸部17や
図11に示されるアンカー凸部19は、前後方向(Z1-Z2方向)の幅寸法よりも、左右方向(X1-X2)に延びる長手方向の長さ寸法が大きい長尺形状またはレール形状である。ただし本発明では、ゲート部とオーバフロー部の少なくとも一方に位置するアンカー凸部の断面形状が、円形や楕円形などであってもよい。
【0071】
本発明は、側壁部の側面部の後側面にアンカー凹部が形成されていてもよいし、前表面と後表面の双方にアンカー凹部が形成されていてもよい。また、アンカー凸部は、ゲート部のみに位置してもよいし、オーバフロー部のみに位置してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 表示装置
3 複合成形品
10 金属基材
11 収納空間
13 上部側壁部
13a 前端部
14 下部側壁部
14a 前端部
15 本体部
16 側壁面
16a 前表面
16b 後表面
17 アンカー凸部
18 側面部
18a 前表面
18b 後表面
19 アンカー凸部
21 アンカー凹部
21a 側方開口部
21b 高さ方向開口部
22 アンカー凹部
22a 側方開口部
22b 高さ方向開口部
30 樹脂成形体
31 上部側壁固着部
32 下部側壁固着部
40 金型
41 第1金型
42 第2金型
C13 上部側壁部成形キャビティ
C14 下部側壁部成形キャビティ
C15 本体部成形キャビティ
Cg ゲート部
Cf オーバフロー部