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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】組換えイスファハンウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/47 20060101AFI20240314BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240314BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20240314BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C12N15/47
A61K35/76
A61K35/768
A61K39/12
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10 ZNA
C12N7/01
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020015937
(22)【出願日】2020-02-03
(62)【分割の表示】P 2016555578の分割
【原出願日】2015-02-27
(65)【公開番号】P2020078318
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】61/946,734
(32)【優先日】2014-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522409253
【氏名又は名称】アウロ ヴァクシーンズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ネイサー ファルーク
(72)【発明者】
【氏名】マタスソフ デメトリアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴルチャコフ ロディオン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハム ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】セイモア ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】エルドリッジ ジョン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】テシュ ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク デビッド ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラザム テレサ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー スコット
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】天野 貴子
【審判官】鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0014990(US,A1)
【文献】国際公開第96/34625(WO,A1)
【文献】米国特許第6168943(US,B1)
【文献】特表2007-535918(JP,A)
【文献】特表2011-51604(JP,A)
【文献】Arch Virol,2005年,Vol.150,pp.671-680
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDream3)
PubMed
BIOSIS/CAPLUS/EMBASE/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/DDBJ/EMBL/GeneSeq, Uniprot/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、異種ウイルス表面タンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子を含む、複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するNタンパク質をコードするNタンパク質遺伝子、配列番号3のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するPタンパク質をコードするPタンパク質遺伝子、配列番号4のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するMタンパク質をコードするMタンパク質遺伝子、および配列番号6のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するLタンパク質をコードするLタンパク質遺伝子を含む、請求項1記載の複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
【請求項3】
異種ウイルス表面タンパク質遺伝子は、転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接している、請求項1記載のイスファハンウイルス。
【請求項4】
異種ウイルス表面タンパク質遺伝子はチクングニアウイルス由来のものである、請求項1記載のイスファハンウイルス。
【請求項5】
異種ウイルス表面タンパク質遺伝子はイスファハンウイルスゲノムのポジション1に配置される、請求項1記載のイスファハンウイルス。
【請求項6】
Nタンパク質遺伝子は、イスファハンウイルスゲノムのポジション4に配置される、請求項1記載のイスファハンウイルス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の複製能を有する組換えイスファハンウイルス、および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含む、免疫原性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の免疫原性組成物を投与することを含む哺乳類対象における異種ウイルス表面タンパク質遺伝子特異的免疫応答の誘導において使用するための、請求項7に記載の複製能を有する組換えイスファハンウイルスを含む免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2014年3月1日に申請された米国仮特許出願第61/946,734号に対する優先権を主張するものであり、それは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府資金による研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所/国立アレルギー感染病研究所(National Institute of Allergy and Infectious Disease)によって授与されたN01-AI-30027、HHSN272201000040I、およびHHSN2720004/D04の下で政府支援によりなされた。政府は、本発明においてある程度の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
米国特許法施行規則1.821~1.825条によって要求される配列表が、本出願とともに電子提出されている。配列表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
背景
組換え水疱性口内炎ウイルス(rVSV)は、広範なヒト病原体に対するベクタープラットフォームとして開発されており(Finke and Conzelmann. Current Topics in Microbiology and Immunology. 2005, 292:165-200(非特許文献1);Jones et al. Nature Medicine. 2005, 11(7):786-90(非特許文献2);Kahn et al. Journal of Virology. 2001, 75(22):11079-87(非特許文献3);Kapadia et al. Virology. 2005, 340(2):174-82(非特許文献4);Reuter et al. Journal of Virology. 2002, 76(17):8900-9(非特許文献5);Roberts et al. Journal of Virology. 1999, 73(5):3723-32(非特許文献6);Roberts et al. J Virol. 1998, 72(6):4704-11(非特許文献7);Rose et al. Cell. 2001, 106(5):539-49(非特許文献8))、かつHIV-1 gagタンパク質を発現する最適化rVSVベクターは、臨床評価を完了させている(HVTN 090:clinicaltrials.gov/のURLにてワールドワイドウェブを介してアクセス可能)。これらの進展にもかかわらず、rVSVベクターによる後続のブースト免疫化に干渉し得る、ベクタータンパク質に対して生み出される潜在的免疫を含めた課題が、rVSVベクタープラットフォームの開発には依然として残る。この潜在的問題は、免疫学的に区別される他のベクターとの異種プライム-ブースト免疫化レジメンにおいてrVSVベクターが用いられた場合に克服され得る(Amara et al. Science. 2001, 292(5514):69-74(非特許文献9);Amara et al. J Virol. 2002, 76(15):7625-31(非特許文献10);Egan et al. AIDS Research and Human Retroviruses. 2005, 21(7):629-43(非特許文献11);Hanke et al. J Virol. 1999, 73(9):7524-32(非特許文献12);Ramsburg et al. Journal of Virology. 2004, 78(8):3930-40(非特許文献13);Santra et al. J Virol. 2007(非特許文献14);Xu et al. Journal of Virology. 2009, 83(19):9813-23(非特許文献15))。表面Gタンパク質を、異なるベシクロウイルス(vesiculovirus)血清型のものと入れ替えることによって達成される、rVSVベクターの血清型切り替えも、マウスにおけるプライム-ブーストレジメンにおいて免疫原性を増強する(Rose et al. Journal of Virology. 2000, 74(23):10903-10(非特許文献16))。しかしながら、rVSVコアタンパク質に対して向けられた細胞免疫応答の交差反応性が、この手法を限定し得る。
【0005】
これらの観察結果および潜在的限定を考慮すると、単独でのまたはrVSVベクターと合わせた使用のための、付加的な異種ベクターの必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Finke and Conzelmann. Current Topics in Microbiology and Immunology. 2005, 292:165-200
【文献】Jones et al. Nature Medicine. 2005, 11(7):786-90
【文献】Kahn et al. Journal of Virology. 2001, 75(22):11079-87
【文献】Kapadia et al. Virology. 2005, 340(2):174-82
【文献】Reuter et al. Journal of Virology. 2002, 76(17):8900-9
【文献】Roberts et al. Journal of Virology. 1999, 73(5):3723-32
【文献】Roberts et al. J Virol. 1998, 72(6):4704-11
【文献】Rose et al. Cell. 2001, 106(5):539-49
【文献】Amara et al. Science. 2001, 292(5514):69-74
【文献】Amara et al. J Virol. 2002, 76(15):7625-31
【文献】Egan et al. AIDS Research and Human Retroviruses. 2005, 21(7):629-43
【文献】Hanke et al. J Virol. 1999, 73(9):7524-32
【文献】Ramsburg et al. Journal of Virology. 2004, 78(8):3930-40
【文献】Santra et al. J Virol. 2007
【文献】Xu et al. Journal of Virology. 2009, 83(19):9813-23
【文献】Rose et al. Journal of Virology. 2000, 74(23):10903-10
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明の態様は、単独でのまたは水疱性口内炎ウイルス(VSV)と組み合わせたイスファハンウイルス(ISFV)など、ベシクロウイルスに関連した免疫原性組成物および方法、ならびに治療法および/または予防法としてのそれらの使用を含む。ある特定の局面は、1種または複数種の異種ポリペプチドをコードする組換えベシクロウイルスを含む方法および免疫原性組成物を含む。「組換えウイルス」とは、野生型ウイルスと同じ、または野生型ウイルスゲノムにおける1個または複数個のヌクレオチドの再編成、欠失、挿入、もしくは置換が理由で野生型ウイルスとは異なる、任意のウイルスゲノムまたはビリオンを指す。とくに、該用語は、ヒトの介入によって生成された組換えウイルスを含む。ある特定の局面において、ベシクロウイルスは組換えイスファハンウイルス(rISFV)である。ある特定の局面において、rISFVは複製能を有するウイルスである。組換えウイルスに適用するとき、「複製能を有する」とは、ウイルスが、細胞感染、ウイルスゲノムの複製、ならびに新たなウイルス粒子の産生および放出の能力がある;とはいえ、これらの特徴のうちの1つまたは複数は、それらが、野生型ウイルスに感染された同じ細胞タイプにおいて生じるのと同じ速度で生じる必要はなく、より速いまたはより遅い速度で生じ得ることを意味する。
【0008】
さらなる局面において、rISFVは、(i)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するNタンパク質、(ii)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するPタンパク質、(iii)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するMタンパク質、(iv)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するGタンパク質、または(v)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列と90、95、98、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有するLタンパク質のうちの1つまたは複数を含む。
【0009】
ある特定の態様は、Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子のうちの4つまたは5つを含むrISFVに向けられている。ある特定の局面において、rISFVは、異種ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の態様において、rISFVは、異種転写単位(TU)をさらに含む。転写単位とは、(a)転写開始シグナルおよび転写終止シグナル(ポリアデニル化配列を含む)と隣接し、かつ(b)1種または複数種の標的異種ポリペプチドをコードする、異種ポリヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様において、異種TUは、ウイルスゲノムにおける第1、第2、第3、第4、第5、または第6のTUである。ある特定の局面において、異種TUは、2種またはそれを上回る種類の異種ポリペプチドをコードする。他の局面において、2つの異種TUがウイルスゲノム内に含まれ、一方の異種TUはウイルスゲノムにおける一方の箇所に挿入され、かつ第二の異種TUはウイルスゲノムにおける異なる箇所に挿入される。
【0010】
異種ポリヌクレオチド配列を発現させるための別のメカニズムは、異種配列をISF遺伝子に2Aペプチドを介して連結させることである。「2A」、「2Aペプチド」、または「2A様ペプチド」という用語は、単一のオープンリーディングフレームから複数のタンパク質を生成するために上手く用いられているペプチドを指す。これらのペプチドは小さく(18~22個のアミノ酸)、かつ相違したアミノ末端配列を有するが、すべてがC末端にPGPモチーフを含有する。リボソームスキップメカニズムにより、2Aペプチドは、該ペプチドのC末端におけるグリシンおよびプロリン残基間の通常のペプチド結合形成を阻止する。これらの2Aおよび2A様配列は、当技術分野において公知であり、かつそのような使用のために容易に選択され得る。数ある中でも、例えばSzymczak-Workman et al, Cold Spring Harbor Protocols 2012, doi 10.1101/pdb.ip067876;およびFriedmann and Rossi (eds), Gene Transfer: Delivery and Expression of DNA and RNA, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY USA, 2007を参照されたい。1つのそのような2AペプチドはT2Aペプチドであり、それはゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルスから単離され、かつ配列
を有する。さらなる局面において、少なくとも2つのポリペプチドをコードする遺伝子内に内部リボソーム進入部位(IRES)を含めて、下流コード領域のキャップ非依存的転写を可能にする。多数のIRES配列が公知であり、かつiresite.orgにてワールドワイドウェブ上で利用可能であるIRESiteデータベースより選択され得る。
【0011】
ある特定の局面において、rISFV G遺伝子は、カルボキシ末端切断、とくに20~25個のアミノ酸の切断を有するGタンパク質をコードする。ある特定の局面において、rISFVゲノムは、rISFVゲノム内の任意の箇所における異種ポリヌクレオチド配列または異種TUとともに、3'から5'に、ISFVリーダー配列、ISFV Pタンパク質オープンリーディングフレーム(ORF)、ISFV Mタンパク質ORF、ISFV Gタンパク質ORF、ISFV Nタンパク質ORF、ISFV Lタンパク質ORF、およびISFVトレーラー配列を含む。ある特定の局面において、異種TUは、rISFVゲノム上のポジション5に配置される。ある特定の局面において、異種ポリヌクレオチドは、免疫原性ポリペプチドをコードする。他の局面において、異種ポリヌクレオチドは、1種または複数種の抗原をコードする。抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍特異的抗原もしくは癌抗原、寄生生物抗原、またはアレルゲンであり得る。
【0012】
ある特定の態様は、(-)センスRNAに対して3'から5'に、
の遺伝子順序を有するrISFVであって、ここで、(H)は、少なくとも1種の異種ポリヌクレオチドを含むTUである、rISFVに向けられている。ある特定の局面において、rISFVは、P-M-G-N-(H)-Lの遺伝子順序を有する。ある特定の局面において、rISFVゲノムは、発現ベクターにおいてコードされる。さらなる態様において、発現ベクターはDNAベクター、例えばプラスミドベクターである。「遺伝子シャッフリング」、「シャッフルされた遺伝子」、「シャッフルされた」、「シャッフリング」、「遺伝子再編成」、および「遺伝子転座」という用語は、互換可能に用いられ、かつウイルスゲノムにおけるベシクロウイルス遺伝子の順序の変更を指す。
【0013】
ある特定の態様は、上記で記載される組換えマイナスセンスRNAをコードする発現ベクターに向けられている。ある特定の局面において、発現ベクターはDNAベクターである。
【0014】
他の態様は、上記で記載される発現ベクターを含む宿主細胞に向けられている。本明細書において使用するとき、「発現ベクター」という用語は、ベクターによってコードされる異種ポリヌクレオチド配列を合成し得るプラスミドまたはウイルスを含むことを意図される。ある特定の局面において、ベクターは、コードされる核酸を複製し得かつ発現し得る。
【0015】
さらに他の態様は、上記で記載される組換えRNAを含むウイルス粒子に向けられている。本明細書において使用するとき、「ウイルス粒子」とは、宿主内で発現される対象となる1種または複数種のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する感染性実体である。
【0016】
免疫原性組成物は、本明細書において記載される組換え核酸を含むウイルス粒子を含み得る。ある特定の局面は、本明細書において記載される免疫原性組成物を投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘導する方法に向けられている。
【0017】
本発明の方法および組成物は、第二の治療用ウイルスを含み得る。第二のウイルスは、組換えのまたは腫瘍溶解性のアデノウイルス、ワクシニアウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヘルペスウイルス、およびラブドウイルス(rhabdovirus)より選択され得る。他の局面において、組成物は、薬学的に許容される組成物である。ある特定の局面において、第二の治療用ウイルスはrVSVである。さらなる局面において、rVSVは、同じ標的細胞または生物の中または上に存在している同じ抗原または関連抗原をコードする。
【0018】
組換えベシクロウイルス(例えば、本明細書において記載されるrISFV)は、治療的または予防的な免疫応答を必要としている対象に投与され得る。組換えベシクロウイルス組成物は、1種または複数種の組換えベシクロウイルスとともに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれを上回る回数投与され得る。投与される組成物は、10、100、1000、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014個、またはそれを上回る数のウイルス粒子またはプラーク形成単位(pfu)を有し得る。投与は、腹腔内、静脈内、動脈内、腫瘍内(固形腫瘍に対して)、筋肉内、皮内、皮下、経口、または鼻腔内の経路によるものであり得る。ある特定の局面において、組成物は、注射、灌流などを含む、とくに血管内投与によって全身的に投与される。
【0019】
本発明の方法は、第二の抗癌療法または抗微生物療法を施す工程をさらに含み得る。ある特定の局面において、第二の抗癌剤は、化学療法薬、放射線療法薬、免疫療法薬、外科手術などである。他の局面において、第二の抗微生物療法は、抗生物質または抗ウイルス薬である。
【0020】
rISFVは、rVSVとは血清学的にかつ系統発生学的に区別される。この区別を利用して、免疫刺激レジメンの防御効力および免疫原性を最適化することができる。rISFVおよびrVSVベクターは、プライム-ブーストレジメンにおいて採用され得る。第一の組換えベシクロウイルスは、第二の組換えベシクロウイルスとの任意の数の組み合わせで用いられ得る。
【0021】
「提供すること」または「投与すること」という用語は、「使用のために供給するまたは与えること」というその通常の意味に従って用いられる。一部の態様において、抗原は直接投与によって(例えば、筋肉内注射によって)提供され、一方で他の態様において、抗原は、該抗原をコードする核酸を投与することによって効果的に提供される。ある特定の局面において、本発明は、核酸、抗原、ペプチド、および/またはエピトープの様々な組み合わせを含む組成物を企図する。
【0022】
ある特定の局面において、ウイルス粒子、ポリペプチド、または核酸は、単離されたウイルス粒子、ポリペプチド、または核酸であり得る。「単離された」という用語は、(例えば、組換えDNA技法によって産生される場合には)それらの由来の供給源の細胞物質、細菌物質、ウイルス物質、もしくは培養培地、または(例えば、化学的に合成される場合には)化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含んでいない、ウイルス粒子、核酸、またはポリペプチドを指し得る。さらに、単離された化合物とは、単離された化合物として対象に投与され得るものを指し;言い換えれば、化合物は、それをカラムに接着させた場合またはアガロースゲル中に埋め込んだ場合、「単離された」とは単純に見なされ得ない。さらに、「単離された核酸フラグメント」または「単離されたペプチド」とは、フラグメントとして天然には存在しないかつ/または典型的には機能的状態にない核酸またはタンパク質フラグメントである。
【0023】
本発明の他の態様は、本出願を通して記述される。本発明の一局面に関して記述される任意の態様は、本発明の他の局面に同様に適用され、かつ逆もまたしかりである。本明細書において記載される各態様は、本発明のすべての局面に適用可能である本発明の態様であると理解される。本明細書において記述される任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行され得、かつ逆もまたしかりであることが企図される。さらに、本発明の組成物およびキットを用いて、本発明の方法を達成することができる。
【0024】
特許請求の範囲および/または本明細書において、「a」または「an」という言葉の使用は、「含む(comprising)」という用語と合わせて用いられる場合、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つを上回る」という意味とも矛盾しない。
【0025】
本出願を通じて、「約」という用語を用いて、値が、該値を決定するために採用されている装置または方法に対する誤差の標準偏差を含むことを示す。
【0026】
特許請求の範囲における「または」という用語は、代替物のみを指すまたは代替物が相互排他的であると明示的に示されていない限り、「および/または」を意味するために用いられる、とはいえ本開示は、代替物のみを指す定義および「および/または」をサポートする。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲において使用するとき、「含む(comprising)」(ならびに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」など、含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに、「有する(have)」および「有する(has)」など、有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに、「含む(includes)」および「含む(include)」など、含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」など、含有する(containing)の任意の形)は、包括的または非制約的であり、かつ付加的な列挙されていない要素または方法工程を除外しない。
【0028】
[本発明1001]
Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子を含み;かつ異種ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチド配列をさらに含む、複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
[本発明1002]
異種ポリヌクレオチド配列は、転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接している、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1003]
異種ポリヌクレオチドは免疫原性ポリペプチドをコードする、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1004]
異種ポリヌクレオチドは1種または複数種の抗原をコードする、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1005]
抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍特異的抗原もしくは癌抗原、寄生生物抗原、またはアレルゲンである、本発明1004のイスファハンウイルス。
[本発明1006]
抗原はウイルス抗原である、本発明1005のイスファハンウイルス。
[本発明1007]
異種ポリヌクレオチド配列は、イスファハンウイルスゲノム上のポジション1、2、3、4、5、または6に配置される、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1008]
Nタンパク質遺伝子は、イスファハンウイルスゲノム上のポジション1、2、3、4、または5に配置される、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1009]
Gタンパク質遺伝子は、カルボキシ末端切断を有するGタンパク質をコードする、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1010]
Gタンパク質は、20~25個のアミノ酸のカルボキシ末端切断を有する、本発明1009のイスファハンウイルス。
[本発明1011]
異種ポリヌクレオチド配列はイスファハンウイルスゲノム上のポジション5に配置され、かつNタンパク質遺伝子はイスファハンウイルスゲノム上のポジション4に配置される、本発明1001のイスファハンウイルス。
[本発明1012]
本発明1001のイスファハンウイルスを含む、宿主細胞。
[本発明1013]
Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子を含み;かつ
異種ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチド配列をさらに含む、複製能を有する組換えイスファハンウイルス;ならびに
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリア
を含む、免疫原性組成物。
[本発明1014]
異種ポリヌクレオチド配列は、転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接している、本発明1013の免疫原性組成物。
[本発明1015]
本発明1014の免疫原性組成物を投与する工程を含む、哺乳類対象において抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する方法。
[本発明1016]
哺乳類対象において抗原特異的免疫応答を誘導するための免疫化キットであって、
(a)Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、Lタンパク質遺伝子、および異種ポリヌクレオチド配列をコードする、複製能を有する組換えイスファハンウイルスであって、該異種ポリヌクレオチド配列は異種ポリペプチドをコードし、該異種ポリヌクレオチド配列は、(i)転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接し、かつ(ii)異種ポリペプチドをコードする、複製能を有する組換えイスファハンウイルス;ならびに薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含む、プライム組成物;ならびに
(b)Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、Lタンパク質遺伝子、および異種ポリヌクレオチド配列をコードする、複製能を有する組換え水疱性口内炎ウイルスであって、該異種ポリヌクレオチド配列は、(i)転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接し、かつ(ii)異種ポリペプチドをコードする、複製能を有する組換え水疱性口内炎ウイルス;ならびに薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含む、ブースト組成物
を含む、免疫化キット。
[本発明1017]
本発明1016の免疫原性組成物を投与する工程を含む、哺乳類対象において抗原特異的免疫応答を誘導する方法。
[本発明1018]
哺乳類対象において抗原特異的免疫応答を誘導するための免疫化キットであって、
(a)Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、Lタンパク質遺伝子、および異種ポリヌクレオチド配列をコードする、複製能を有する組換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)であって、該異種ポリヌクレオチド配列は異種ポリペプチドをコードし、該異種ポリヌクレオチド配列は、(i)転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接し、かつ(ii)異種ポリペプチドをコードする、複製能を有する組換え水疱性口内炎ウイルス;ならびに薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含む、プライム組成物;ならびに
(b)Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、Lタンパク質遺伝子、および異種ポリヌクレオチド配列をコードする、複製能を有する組換えイスファハンウイルス(ISFV)であって、該異種ポリヌクレオチド配列は異種ポリペプチドをコードし、該異種ポリヌクレオチド配列は、(i)転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接し、かつ(ii)異種ポリペプチドをコードする、複製能を有する組換えイスファハンウイルス;ならびに薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含む、ブースト組成物
を含む、免疫化キット。
[本発明1019]
本発明1018の免疫原性組成物を投与する工程を含む、哺乳類対象において抗原特異的免疫応答を誘導する方法。
[本発明1020]
Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、異種ウイルス表面タンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子を含む、複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
[本発明1021]
第二の異種ポリヌクレオチド配列をさらに含み、該異種ポリヌクレオチド配列は第二の異種ポリペプチドをコードする、本発明1020の複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
[本発明1022]
異種ウイルス表面タンパク質遺伝子が、イスファハンウイルスGタンパク質遺伝子と入れ替わっている、本発明1020の複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
[本発明1023]
異種ウイルス表面タンパク質遺伝子は、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質遺伝子である、本発明1020の複製能を有する組換えイスファハンウイルス。
[本発明1024]
Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子を含む、複製能を有する組換えイスファハンウイルスを含み、該イスファハンウイルスは抗癌治療法として用いられる、腫瘍溶解性ウイルス組成物。
[本発明1025]
ウイルス抗原はチクングニアウイルス由来のものである、本発明1006のイスファハンウイルス。
本発明の他の目的、特質、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲の内での様々な変化および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうため、詳細な説明および具体的な例は、本発明の具体的な態様を示すと同時に、例証としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、かつ本発明のある特定の局面をさらに実証するために含まれる。本明細書において提示される具体的な(specification)態様についての詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、本発明はよりよく理解され得る。
【0030】
図1図1は、N遺伝子のヌクレオチド配列に基づく、ベシクロウイルス属の最尤系統樹である。
図2図2は、完全イスファハンゲノムcDNAクローンの生成のためのクローニングストラテジーにおいて用いられた制限部位を描写している。
図3図3Aは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)E3-E2-6K-E1ポリタンパク質をコードするrISFVベクター[rISFV-N4-G3-(VEEV ZPC E3-E1)5とも称される]の略図である;図3Bは、VEEVタンパク質の発現(レーン3)を描写したウェスタンブロットである。
図4図4は、様々なベシクロウイルスのNタンパク質のアミノ酸配列についてのアラインメントである。アミノ酸相同性の領域は、網掛けにされている。
図5図5は、改変されたHIV-1 gagタンパク質を発現する様々なrISFVによって生成される、観察されたプラークサイズの写真である。
図6図6は、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)系統FL93 E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4[rISFV-N4-G3-(EEEV FL93 E3-E1)5とも称される]で免疫化され、その後にEEEV-FL93の致死性の曝露が続いたマウスの生存率パーセントを描写している。
図7図7は、VEEV系統ZPC E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4[rISFV-N4-G3-(VEEV ZPC E3-E1)5とも称される]で免疫化され、その後にVEEV-ZPCの致死性の曝露が続いたマウスの生存率パーセントを描写している。
図8図8は、VEEV-ZPC E3~E1タンパク質を発現する108または107 pfuでのrISFV-N4[rISFV-N4-G3-(VEEV ZPC E3-E1)5とも称される]、およびVEEV-ZPC E3~E1タンパク質を発現する108または107 pfuでのrVSVインディアナ血清型N4CT1(rVSVINN4CT1)[rVSVIN-N4-G3-(VEEV ZPC E3-E1)5とも称される]で免疫化され、その後にVEEV-ZPCの致死性の曝露が続いたマウスの生存率パーセントを描写している。
図9図9は、EEEV-FL93 E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4、およびVEEV-ZPC E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4[まとめて、rISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5/rISFV-N4-G3-(EEEV FL93 E3-E1)5とも称される]で免疫化され、その後にEEEV-FL93の致死性の曝露が続いたマウスの生存率パーセントを描写している。
図10図10は、EEEV-FL93 E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4、およびVEEV-ZPC E3~E1タンパク質を発現するrISFV-N4[まとめて、rISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5/rISFV-N4-G3-(EEEV FL93 E3-E1)5とも称される]で免疫化され、その後にVEEV-ZPCの致死性の曝露が続いたマウスの生存率パーセントを描写している。
図11図11は、生物学的機能に負の影響を及ぼさずに、Nタンパク質配列において変化し得る4個のアミノ酸を図解している。BALB/cマウスにおける公知のエピトープに下線が引かれている。
図12図12は、PBS-Mu-062a実験において試験された組換えウイルスを図解している。
図13図13は、PBS-Mu-062a実験デザインの概要である。
図14図14は、PBS-Mu-062a実験における、HIV-1 gagエピトープに対するインターフェロンガンマ(IFN-γ)ELISpot応答を図解している。
図15図15は、PBS-Mu-062bプライム/ブースト実験において試験されたrISFVを図解している。
図16図16は、PBS-Mu-062b実験デザインの概要である。
図17図17は、PBS-Mu-062b実験における、HIV-1 Gag単一優性エピトープに対するIFN-γ ELISpot応答を図解している。
図18図18は、PBS-Mu-062b実験における、VSV-Nに対するIFN-γ ELISpot応答を図解している。
図19図19は、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたマウス対免疫化されなかったマウスの、CHIKVのレユニオン単離株の曝露後の体重を描写している。
図20図20は、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたマウス対免疫化されなかったマウスの、CHIKVのレユニオン単離株の曝露後の足蹠の腫れを描写している。
図21図21は、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたマウス対免疫化されなかったマウスの、CHIKVのレユニオン単離株の曝露後のウイルス血症を描写している。
図22図22は、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化され、その後にCHIKVのレユニオン単離株の致死性の曝露が続いたマウスの生存率を描写している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
説明
イスファハンウイルス(ISFV)および水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科におけるベシクロウイルス属のメンバーである。原型的ラブドウイルスは、狂犬病ウイルス(RV)およびVSVである。ラブドウイルスは、一本鎖非分節(-)センスRNAゲノムを有する、弾丸の外形をしたウイルスの科である。哺乳類、魚類、昆虫、または植物に感染する250種を上回る種類の公知のラブドウイルスが存在する。該科は、少なくとも5つの属を含む:(1)リッサウイルス(Lyssavirus):RV、他の哺乳類ウイルス、および一部の昆虫ウイルスを含む;(2)ベシクロウイルス:VSVを含む;(3)エフェメロウイルス(Ephemerovirus):ウシ流行熱ウイルスを含む;(4)サイトラブドウイルス(Cytorhabdovirus):レタス壊死性黄変病ウイルスを含む;ならびに(5)ヌクレオラブドウイルス(Nucleorhabdovirus):ジャガイモ黄萎病ウイルスを含む。
【0032】
ラブドウイルスのマイナスセンスウイルスRNA(vRNA)ゲノムは、およそ50ヌクレオチドの3'リーダー配列およびおよそ60ヌクレオチドの非翻訳5'トレーラー配列を有して、長さがおよそ11~15kbである。ラブドウイルスのウイルスゲノムRNA(vRNA)は、一般的に、5種の主要なタンパク質:ヌクレオカプシドタンパク質(N)、ホスホタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、および大型タンパク質(L)(ポリメラーゼとしても知られる)をコードする5種の遺伝子を含有する。ラブドウイルスは、各遺伝子の5'末端に保存されたポリアデニル化シグナル、および5種の遺伝子のそれぞれの間に短い転写されない遺伝子間領域を有する。典型的に、これらの遺伝子は、ウイルスゲノムの3'-N-P-M-G-L-5'という順序にある。遺伝子の順序は、感染細胞におけるタンパク質発現のレベルを決定付ける。感染性ウイルスを産生するためのラブドウイルスゲノムの任意の操作は、高レベルで感染し得かつ複製し得る能力を維持するために、典型的に、主要なウイルスタンパク質のうちの少なくとも4種、通常5種をコードする少なくとも5つの転写単位(TU)を含む。
【0033】
I.組換えベシクロウイルス
ベシクロウイルスゲノムは、少なくとも3キロベース(kb)に及ぶ付加的ヌクレオチド配列である1種を上回る種類の外来遺伝子を収容することが示されている。(例えば、遺伝子シャッフリング、および/またはウイルスタンパク質の切断によって)十分に弱毒化されているベシクロウイルスベクターは遺伝的安定性を実証しており、かつウイルスゲノムは検出可能な組換えを受けない。加えて、ウイルス複製は細胞質性であるため、ウイルスゲノムRNAは、宿主細胞ゲノム内に組み込まれない。また、これらのマイナス鎖RNAウイルスは、堅牢な外来遺伝子発現を可能にする、比較的単純な十分に特徴付けされた転写制御配列を所有する。外来遺伝子発現のレベルは、単一のウイルス3'転写プロモーターに対する外来遺伝子の箇所を変化させることによって変調され得る(数ある中でも、例えば米国特許第6,136,585号および第8,287,878号を参照されたい)。3'から5'への遺伝子発現の勾配は、転写を行っているウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼが、遺伝子接合部で遭遇した各転写終止/開始シグナルを上手く通り抜けるであろう可能性が減少していることを反映する、というのもそれはゲノム鋳型に沿って前進するためである。ゆえに、3'末端転写プロモーターの近位に置かれた外来遺伝子は豊富に発現され、一方でより遠位のゲノム箇所に挿入されたものはそれほどではない。
【0034】
VSVは、種々の細胞タイプについての大規模アレイにおいて高力価まで複製し、かつウイルスタンパク質は非常に豊富に発現される。このことは、VSVが、強力な機能的外来遺伝子発現ベクターとして働くであろうことだけでなく、関連するrVSVベクターが、ヒト生物製剤の産生を認可された細胞株において、製造レベルまで拡大縮小され得ることも意味する。複製能を有するこのウイルスベクターは、実質的なウイルス複製に直面してさえ、健常なヒトにおいてほとんどまたは全くの疾患症状または病変をもたらさない(Tesh, R. B. et al, 1969 Am. J. Epidemiol., 90:255-61)。加えて、VSVによるヒト感染、ゆえにVSVに対する既存の免疫は稀である。したがって、rVSVはベクターとして有用である。
【0035】
野生型VSVのものとは異なるゲノム箇所に「シャッフルされた」それらの遺伝子を有する、多様なrVSVが当技術分野において開示されているものの(米国特許第8,287,878号;米国特許第6,596,529号、および本明細書において引用される参考文献を参照されたい)、N遺伝子が、変異の組み合わせの一部として、VSV遺伝子順序において第4のポジション(N4)にあることが有用であり得、それによってウイルスは十分に弱毒化される。rVSVをさらに弱毒化するために、Gタンパク質の細胞質尾部を切断し得る(G-CT)。
【0036】
上記で記載されるrVSVの様々な態様は、VSVインディアナ血清型に由来するVSV配列を採用する。しかしながら、本明細書の教示を考慮すると、他の公知のベシクロウイルス(例えば、イスファハンウイルス)またはVSV血清型を、記載される態様の例示される配列に代わって容易に置換し得る。
【0037】
本明細書において記載されるベクターを生成することにおける使用のための適切なプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および他より選択され得る。活性において非特異的でありかつ本発明の核酸分子の発現において採用される構成的プロモーターの例には、国際特許出願第WO2004/093906号および米国特許第8,287,878号において同定されたそうしたプロモーターが含まれるが、それらに限定されるわけではない。hCMVプロモーターを用いて、逆遺伝学技法において、rVSVレスキュー目的のためのVSVタンパク質を発現させる。用いられ得る他のpol IIプロモーターには、とりわけ、ユビキチンC(UbiC)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ウシサイトメガロウイルス(bCMV)プロモーター、上流CMV IVエンハンサーを有するβ-アクチンプロモーター(CAGGS)、および伸長因子1αプロモーター(EF1A)が含まれる。ある特定の態様において、T7 RNAポリメラーゼプロモーターが用いられる。
【0038】
本発明のある特定の態様は、例えばプライム/ブーストレジメンにおける、単独でのまたは組換え水疱性口内炎ウイルス(rVSV)と組み合わせた組換えイスファハンウイルス(rISFV)を含めた、組換えベシクロウイルス、それだけでなく組換えベシクロウイルスをコードするベクター、ならびにそのようなベシクロウイルスおよびベクターを用いる方法に向けられている。組換えベシクロウイルスは、(1)cDNAトランスフェクションを用いて、または(2)cDNAを細胞内にトランスフェクトし、それを、組換えベシクロウイルスを産生するために必要とされる残りの構成要素もしくは活性をトランスで提供するミニウイルスにさらに感染させて、産生され得る。これらの方法(例えば、ミニウイルス、ヘルパー細胞株、またはcDNAトランスフェクション)のいずれかを用いると、パッケージされるRNAを産生するための最小限の構成要素は、(1)Nタンパク質によるゲノムRNAのカプシド内包(encapsidation)および(2)ゲノムRNA同等物の複製、のためのシス作用性シグナルを含有するRNA分子を要する。
【0039】
複製しているエレメントまたはレプリコンは、3'および5'末端にベシクロウイルスのリーダー配列およびトレーラー配列を最小限に含有するRNAの鎖であり;(-)センスゲノムにおいて、リーダーは3'末端にあり、かつトレーラーは5'末端にある。これら2つの複製シグナルの間に置かれたRNAは、複製され得る。リーダーおよびトレーラー領域は、Nタンパク質によるカプシド内包の目的のための、ならびに転写および複製を開始するために必要とされるポリメラーゼ結合のための、最小限のシス作用性エレメントを含有する。
【0040】
組換えベシクロウイルスゲノム内に含有される任意の遺伝子に関して、遺伝子は、そうした遺伝子の発現およびコードされるタンパク質産物の産生を可能にする適当な転写開始および終結シグナルと隣接し得る。とくに、天然から単離されたものとしてウイルスによってコードされない、またはウイルスにおいて天然には見出されない箇所、形状、もしくは背景でコード領域を含有する、異種ポリヌクレオチドが用いられる。
【0041】
治療用組成物または免疫原性組成物としての使用のための組換えベシクロウイルスは、ある特定の局面において、ウイルスの遺伝子順序を再編成する工程を含み得る。ある特定の局面において、N遺伝子を、3'プロモーター近位箇所であるポジション1から遠ざける。さらなる局面において、N遺伝子を、ポジション2、3、4、または5に動かす。ある特定の局面において、N遺伝子は、ゲノムにおけるポジション4にある。
【0042】
ある特定の局面において、組換えベシクロウイルスは異種ポリヌクレオチドを含む。ある特定の局面において、異種ポリヌクレオチドは抗原をコードする。他の局面において、異種ポリヌクレオチド、または選択された異種の免疫応答誘導性抗原もしくは抗原をコードする多遺伝子は、遺伝子順序のポジション1、2、3、4、5、または6に配置される。
【0043】
A.組換えベシクロウイルス産生
マイナスセンス一本鎖非分節ウイルスRNAゲノムの転写および複製は、リボ核タンパク質コア(ヌクレオカプシド)に作用する多量体タンパク質複合体の酵素活性を介して達成される。ウイルス配列は、それらがNタンパク質によってヌクレオカプシド構造内にカプシド内包された場合に認識される。ヌクレオカプシド構造のゲノムおよびアンチゲノム末端プロモーター配列が認識されて、転写または複製経路を開始する。
【0044】
ゆえに、本明細書において記載される遺伝子改変されかつ弱毒化された組換えベシクロウイルスは、当技術分野において公知のレスキュー法、およびより具体的には下記で実施例に記載されるレスキュー法に従って産生される。VSVインディアナ、VSVニュージャージー、VSVチャンディプラ(Chandipura)、VSVグラスゴーなどを含むがそれらに限定されない、任意の適切なイスファハンウイルス、VSV系統または血清型が用いられ得る。上記で記載されるように、イスファハンウイルスまたはVSVの弱毒化型をコードするポリヌクレオチド配列に加えて、該ポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列、または選択された異種タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)もコードする。
【0045】
レスキューのための典型的な(とはいえ、必ずしも排他的ではない)環境には、T7ポリメラーゼが細胞質内に存在して、ウイルスゲノムcDNA含有転写ベクターからアンチゲノム(または、ゲノム)一本鎖RNAの転写を駆動する、適当な哺乳類細胞が含まれる。共転写的にまたはその直後に、このウイルスのアンチゲノム(または、ゲノム)RNA転写産物は、機能的鋳型内に核タンパク質によってカプシド内包され、かつ必要なウイルス特異的トランス作用性タンパク質を発現する共トランスフェクトされたプラスミドから同時に産生された必要なポリメラーゼ構成要素が働く。これらの事象および過程は、ウイルスmRNAのあらかじめ必須の転写、新たなゲノムの複製および増幅、ならびにそれによる新規なベシクロウイルス子孫の産生、すなわちレスキューにつながる。
【0046】
転写および発現ベクターは、典型的に、宿主細胞における発現のためにデザインされたプラスミドベクターである。カプシド内包、転写、および複製に必要なトランス作用性タンパク質をコードする少なくとも1種の単離された核酸分子を含む発現ベクターは、1種の発現ベクターまたは少なくとも2種の異なるベクターからこれらのタンパク質を発現する。
【0047】
ベシクロウイルスゲノムのクローン化されたDNA同等物は、適切なDNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーター)と自己切断型リボザイム配列(例えば、デルタ肝炎リボザイム)との間に置かれ得、かつ適切な転写ベクター(例えば、細菌性プラスミド)内に挿入され得る。この転写ベクターは、容易に操作可能なDNA鋳型を提供し、そこからRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)は、5'および3'末端を有する、ベシクロウイルスcDNAの一本鎖RNAコピーを忠実に転写し得る。ウイルスcDNAコピーおよび隣接プロモーターおよびリボザイム配列の配向は、アンチゲノムまたはゲノムRNA同等物が転写されるかどうかを決定する。裸の一本鎖アンチゲノムまたはゲノムRNA転写産物を機能的ヌクレオカプシド鋳型内にカプシド内包するために、かつウイルスの転写および複製を開始するために必要とされるベシクロウイルス特異的トランス作用性サポートタンパク質:ウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質、ポリメラーゼ関連ホスホタンパク質(P)、およびポリメラーゼ(L)タンパク質も、新たなベシクロウイルス子孫のレスキューに要される。
【0048】
簡潔には、組換えベシクロウイルスを生成する一方法は、本明細書において記載される核酸配列を含むウイルスcDNA発現ベクターを宿主細胞内に導入する工程を含む。ある特定の局面において、発現ベクターは、選択された組換えベシクロウイルス核酸配列のポジション1(P1)の上流にT7プロモーター、ならびに最終位の下流にデルタ肝炎ウイルスリボザイム部位(HDV Rz)およびT7ターミネーター配列を含む。T7プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼの存在下にある場合、発現ベクターからのウイルスRNAアンチゲノム転写産物の合成を指示する。
【0049】
一部の態様において、方法は、宿主細胞に、T7 RNAポリメラーゼを発現するプラスミドを一過性にトランスフェクトする工程をさらに含む。他の態様において、方法は、宿主細胞に、ベシクロウイルスの少なくともウイルスタンパク質N、P、およびL(ならびに、任意でMおよびG)を発現する1種または複数種のプラスミドを共トランスフェクトする工程をさらに伴う。一部の態様において、これらのベシクロウイルスタンパク質は、RNA polII依存的発現システムを用いて、宿主細胞内で発現される。他の態様は、プラスミドDNA(pDNA)のトランスフェクション後に、発現ベクター、T7ポリメラーゼ、および組換えベシクロウイルスのウイルスタンパク質を含有する宿主細胞をヒートショックするなどの工程を含む。トランスフェクトされた宿主細胞、またはトランスフェクトされた宿主細胞から得られた上清を、新鮮な拡張用細胞(expansion cell)の培養物中に移し得る。次いで、会合した感染性組換えベシクロウイルスを、培養物から回収し得る。
【0050】
他の局面において、複製能を有する組換えベシクロウイルスは、当技術分野において公知の技法を用いて単離され得かつ「レスキュー」され得る(Ball, L. A. et al. 1999 J. Virol, 73:4705-12;Conzelmann, 1998, Ann. Rev. Genet., 32: 123-162;Roberts and Rose, 1998, Virol, 247: 1-6)。例えば、米国特許第8,287,878号;第6,168,943号;および第6,033,886号;ならびに国際特許公報第WO99/02657号も参照されたく、そのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられる。組換えRNAウイルスを産生する方法は、当技術分野において、「レスキュー」法または「逆遺伝学」法と呼ばれる。VSVのための例示的なレスキュー法は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,033,886号および第6,596,529号、ならびにPCT公報第WO2004/113517号に記載されている。
【0051】
VSVなどのウイルスのレスキューを行うためのさらなる技法は、米国特許第6,673,572号および米国特許出願公開第US2006/0153870号に記載されており、それらは参照により本明細書によって組み入れられる。
【0052】
ベシクロウイルスのレスキューにおいて用いられる宿主細胞は、組換えベシクロウイルスの産生に必要な必須の構成成分の、ベクターからの発現を可能にするものである。そのような宿主細胞は、脊椎動物細胞などの真核細胞より選択され得る。一般的に、宿主細胞は、ヒト胎児腎臓細胞(例えば、293)などのヒト細胞に由来する。米国特許および上記で引用される公開された出願に記載されているように、Vero細胞ならびに他の多くのタイプの細胞も宿主細胞として用いられる。ある特定の態様において、トランスフェクション促進試薬を添加して、細胞によるDNA取り込みを増加させる。これらの試薬の多くは、当技術分野において公知である(例えば、リン酸カルシウム、LIPOFECTAMINE(登録商標)陽イオン性脂質(Life Technologies, Gaithersburg, MD)、およびEFFECTENE(登録商標)陽イオン性脂質(Qiagen, Hilden, Germany)。
【0053】
次いで、レスキューされたベシクロウイルスを、まずインビトロ手段によって、その所望の表現型(プラーク形態、ならびに転写および複製の減衰)について試験する。ベシクロウイルスを、動物神経毒性モデルにおいてインビボでも試験する。例えば、マウスおよび/またはフェレットのモデルが、神経毒性を検出するために確立されている。簡潔には、10匹のマウスの群に、見込みLD50用量(動物の50%に致死性である用量)にまたがる広範なウイルス濃度のそれぞれを頭蓋内(IC)注射する。例えば、ウイルスに対する見込みLD50が103~104 pfuの範囲にある場合、102、103、104、および105 pfuのウイルスを含有するIC接種が用いられる。ウイルス製剤は、精製ウイルスストックのPBSでの連続希釈によって調製される。次いで、マウスに、25μlのPBS中、必要な用量を頭蓋の上端を通じて注射する。動物を、重量喪失、罹患率、および死亡について毎日モニターする。次いで、ウイルスベクターに対するLD50を、試験された濃度の範囲にわたる動物の累積的死亡から算出する。
【0054】
液性免疫応答を検出することによって免疫原性または抗原性を判定するために、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射定量測定アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュー免疫アッセイ(例えば、コロイド金、酵素、または放射性同位体の標識を用いた)、ウェスタンブロット、免疫沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体結合(fixation)アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ、中和アッセイなどの技法を用いた競合および非競合アッセイシステムを含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の様々な免疫アッセイが用いられる。一態様において、抗体結合を、一次抗体上の標識を検出することによって測定する。別の態様において、一次抗体を、該一次抗体への二次抗体または試薬の結合を測定することによって検出する。さらなる態様において、二次抗体を標識する。免疫原性を検出するためのさらに別の態様において、T細胞媒介性応答を、標準的な方法、例えばインビトロもしくはインビボでの細胞毒性(cytoxicity)アッセイ、テトラマーアッセイ、ELISpotアッセイ、またはインビボでの遅延型過敏症アッセイによってアッセイする。
【0055】
ベシクロウイルスを「単離」または「単離すること」という用語は、ウイルス粒子を培養し、かつウイルス粒子を細胞残屑などから精製する過程を意味する。一例は、ベシクロウイルスを産生する細胞培養物のウイルス含有上清を取り出し、かつそれを0.1~0.2ミクロン孔径フィルター(例えば、Millex-GS、Millipore)に通して、細胞残屑を除去することであろう。あるいは、スクロース勾配などの勾配を用いて、ビリオンを精製し得る。次いで、組換えウイルス粒子をペレットにし得、かつ所望されるいずれかの賦形剤またはキャリアの中に再懸濁し得る。力価を、標準的なプラークアッセイによって、または特定のタンパク質に特異的な抗体を用いた間接免疫蛍光法によって決定し得る。
【0056】
ある特定の局面において、1種または複数種のタンパク質構成要素(N、P、M、G、および/またはLタンパク質)および異種ポリヌクレオチドをコードするまたは含有するベシクロウイルスは、該ウイルスが、異種ポリヌクレオチドを発現させるための望ましい特性を有し、一方でもともと単離されたときにはウイルスに存在していない特徴を有するように、野生型ウイルスまたはウイルスタンパク質と比較して1つまたは複数の変異または変動を有して構築されている。本明細書において記載される方法は、本発明の方法および組成物を実行するためのプロトコールの様々な例を提供する。それらは、組換えDNAまたは核酸技術の使用を通じて、変異したまたは変種のウイルスを生成するためのバックグラウンドを提供する。
【0057】
B.イスファハンウイルス(ISFV)構築物
イスファハンウイルス(ISFV)は、ラブドウイルス科におけるベシクロウイルス属のメンバーである。ISFVは、1975年にイランでサシチョウバエ(sand fly)から最初に単離された(Tesh et al. The American journal of tropical medicine and hygiene. 1977; 26(2):299-306)。ISFVは、地理的にイランおよび他の近隣諸国に制限されているように見え、そこではヒト感染の血清学的証拠が存在する(Tesh et al., The American journal of tropical medicine and hygiene. 1977, 26(2):299-306;Gaidamovich et al., Voprosy Virusologii. 1978, (5):556-60)。ISFVによる感染は、ヒト疾患と関連付けされておらず、かつ原型的ベシクロウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)とは違って、ISFVは、家畜においてサイクルせずかつ/または実験的に接種された動物において水疱性病変を引き起こさないように見える(Wilks and House, J Hyg (Lond). 1986, 97(2):359-68)。ISFVは、VSVと形態学的に似ており(Tesh et al. The American journal of tropical medicine and hygiene. 1977; 26(2):299-306)、かつ高度に保存された複製および転写の調節配列を含めた同様のゲノム機構を有する(Marriott, Arch Virol. 2005, 150(4):671-80)。しかしながら、両ウイルスは血清学的に区別され(Tesh et al. The American journal of tropical medicine and hygiene. 1977; 26(2):299-306)、かつベシクロウイルスについての系統発生学的解析は、ウイルスタンパク質のアミノ酸アラインメントに基づき、実質的な進化的分岐を示している(図1)。
【0058】
イスファハンウイルスは、N、P、M、G、およびLと略記される5種の主要なウイルスタンパク質をコードする、およそ11kbの非分節マイナス鎖RNAゲノムを含む。イスファハンウイルスゲノムに対する相補鎖(5'から3'への)のヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:1に提供される。マイナスセンスRNAゲノムにおける3'から5'へのゲノム順序は、ヌクレオカプシド(N)、ホスホタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、膜貫通糖タンパク質(G)、およびポリメラーゼ(L)と称されるタンパク質、すなわち3'-N-P-M-G-L-5'をコードする。ヌクレオカプシドは、ゲノムのカプシド内包に関与する。イスファハンウイルスNタンパク質の例のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2として提供される。Pタンパク質は、RNA合成に関与するホスホタンパク質である。イスファハンウイルスPタンパク質の例のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3として提供される。Mタンパク質はマトリックスタンパク質である。イスファハンウイルスMタンパク質の例のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4として提供される。Gタンパク質は糖タンパク質である。イスファハンウイルスGタンパク質の例のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5として提供される。Lタンパク質は、RNA合成に関与する大型ポリメラーゼである。イスファハンウイルスLタンパク質の例のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6として提供される。
【0059】
ISFVのVSVからの分岐を用いて、(1)rVSVの代わりにrISFVをベクターとして用い、ゆえにVSVベクターの反復投与による潜在的な抗ベクター免疫を回避し;かつ(2)第二のベシクロウイルスベクターを提供して、rVSVとの異種プライム-ブーストレジメンを構成することによって、治療的および予防的なレジメンを補助することができる。
【0060】
C.水疱性口内炎ウイルス(VSV)構築物
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、N、P、M、G、およびLと略記される5種の主要なウイルスタンパク質をコードする、およそ11kbの非分節マイナス鎖RNAゲノムを含む。VSVのG、M、N、P、およびLタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である(Rose and Gallione, 1981, J. Virol. 39, 519-28;Gallione et al., 1981 J. Virol. 39:529-35)。いくつかのVSV血清型が公知であり、かつシーケンシングされている。VSV(インディアナ)のゲノム配列は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号NC001560の下に提供されており(SEQ ID NO:7~12を参照されたい)、それは本出願の優先日の時点で本明細書に組み入れられる。VSV(チャンディプラ)配列を含めた、VSVに対する他の配列はそのデータベースにおいて入手可能であり;例えば、アクセッション番号Ay382603、Af128868、V01208、V01207、V01206、M16608、M14715、M14720、およびJ04350を参照されたく、そのすべては本出願の優先日の時点で本明細書に組み入れられる。ニュージャージーなどのVSV血清型も、メリーランド州ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)などの寄託場所から入手可能である(例えば、アクセッション番号VR-1238およびVR-1239を参照されたく、それらは本出願の優先日の時点で本明細書に組み入れられる)。他の公知のVSV配列および血清型は、当技術分野において記載されており、または本明細書を通じて引用される文献において参照されており、例えば国際特許出願第WO2004/093906号および米国特許第8,287,878号を参照されたく、それらは本出願の優先日の時点で本明細書に組み入れられる。
【0061】
II.免疫原性組成物
ある特定の態様は、哺乳類対象に投与した場合に、抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導するための組換えベシクロウイルス組成物および方法に向けられている。本発明において有用な免疫原性組成物は、複製能を有し、弱毒化された、組換えイスファハンウイルス(rISFV)、またはそれをコードするベクターである。ある特定の態様において、免疫原性組成物は、本明細書において記載される組換えベシクロウイルスを含有する。ある特定の局面は、本明細書において記載されるrISFVに向けられている。さらなる局面において、rISFVは、1種または複数種の抗原をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。
【0062】
A.抗原
ある特定の態様において、ベシクロウイルス(例えば、単独での、またはrVSVとのプライム/ブーストレジメンにおけるrISFV)は、異種抗原をコードする。本明細書において使用するとき、「抗原」または「標的抗原」という用語は、免疫応答の標的であり得る複合抗原(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞など)を含めた、任意の物質を指す。抗原は、例えば、本明細書において記載される免疫原性組成物を投与されたまたは提供された対象の細胞媒介性および/または液性免疫応答の標的であり得る。「抗原」または「標的抗原」という用語は、例えばウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍特異的なもしくは腫瘍関連の抗原、寄生生物抗原、アレルゲンなどのすべてまたは一部を包含する。抗原は、抗体またはT細胞受容体によって結合され得る。抗原は、加えて、Bおよび/またはTリンパ球の産生につながる液性および/または細胞性免疫応答を誘導し得る。生物学的応答を生じさせる、抗原の構造的局面、例えば三次元立体構造または修飾(例えば、リン酸化)は、本明細書において「抗原決定基」または「エピトープ」と呼ばれる。抗原決定基またはエピトープとは、抗体によって、またはMHCの場合にはT細胞受容体によって認識される、抗原の部分である。
【0063】
ウイルス抗原には、例えばラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスを含めたリッサウイルス)、アルファウイルス、A型、B型、C型、D型、およびE型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、パピローマウイルス、エプスタイン・バールウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポバウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス由来の抗原が含まれ;公知のウイルス抗原の一部の非限定的な例には、以下の:nsP1~nsP4、カプシド、E3、E2、6K、およびE1タンパク質など、アルファウイルスに由来する抗原;tat、nef、gp120もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせなど、HIV;gH、gL、gM、gB、gC、gK、gE、もしくはgDなどの抗原、ICP27、ICP47、ICP4、ICP36、およびICP0などの前初期タンパク質、VP16、US6、US8、UL7、UL19、UL21、UL25、UL46、UL47、UL48、UL49、およびUL50、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせを有する、HSV-2などのヒトヘルペスウイルスに由来する抗原;gBまたはその誘導体など、サイトメガロウイルス、とりわけヒトサイトメガロウイルスに由来する抗原;gp350またはその誘導体など、エプスタイン・バールウイルスに由来する抗原;gp1、11、111、およびIE63など、水痘帯状疱疹ウイルスに由来する抗原;B型肝炎、C型肝炎、またはE型肝炎ウイルス抗原など、肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、HCVのenvタンパク質E1もしくはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ);ヒトパピローマウイルスに由来する抗原(例えば、タンパク質、例えばL1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ);呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質、またはそれらの誘導体)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、またはインフルエンザウイルス(例えば、HA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ)など、他のウイルス病原体に由来する抗原が含まれる。
【0064】
腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、または癌抗原には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、それらに限定されるわけではない。rISFVによるそのような抗原の発現は、癌細胞に対する細胞媒介性免疫応答の誘導、およびrISFVによる直接癌細胞溶解の両方を提供する。そのような癌のより特定の例には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、大腸癌、子宮内膜癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌腫、および様々なタイプの頭頸部癌、腎臓癌、悪性黒色腫、喉頭癌、前立腺癌が含まれる。癌抗原は、腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によって、必ずしも発現されるわけではないものの、コードされる。これらの抗原は、正常細胞において通常沈黙している(すなわち、発現していない)もの、分化のある特定の段階においてのみ発現されるもの、ならびに胚性および胎児性抗原などの一時的に発現されるものとして特徴付けされ得る。他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、p53変異体)、内部欠失または染色体転座により生じる融合タンパク質など、細胞遺伝子変異体によってコードされる。さらに他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルス上に担持されるものなど、ウイルス遺伝子によってコードされる。腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原の一部の非限定的な例には、MART-1/メランA、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-0017-1A/GA733、癌胚性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP-1およびCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3-ζ鎖、MACEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-05)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUGファミリー(例えば、MUC-1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、およびγ-カテニン、p120ctn、gp100、Pme1117、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Igイディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物、Smadファミリーの腫瘍抗原、Imp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、ならびにc-erbB-2が含まれる。
【0065】
別の態様において、弱毒化rISFVは、それ自体が、つまり異種ポリヌクレオチド配列の包含なしで、抗癌(腫瘍溶解性)治療法として利用される。ISFVは、インビトロおよびインビボで腫瘍細胞殺傷特性を所有する。「腫瘍溶解性」という用語は、典型的に、癌細胞を殺傷し得る、溶解し得る、または癌細胞の成長を休止させ得る作用物質を指す。腫瘍溶解性ウイルスの観点から、該用語は、癌細胞においてある程度複製し得、癌細胞の死滅、溶解、または癌細胞成長の停止を引き起こし得、かつ典型的に、非癌細胞に対して最小限の有毒作用を有するウイルスを指す。rISFVは、本明細書において記載される方法のいずれかを用いて弱毒化される。
【0066】
細菌抗原には、例えばTBおよびハンセン病を引き超すマイコバクテリウム、肺炎球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ(mycoplasma)、ブドウ球菌(staphylococcus)、レンサ球菌(streptococcus)、サルモネラ(salmonellae)、クラミジア(chlamydiae)、またはナイセリア(neisseriae)由来の抗原が含まれる。
【0067】
他の抗原には、例えばマラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、住血吸虫症、フィラリア症など、寄生生物由来の抗原、ならびにアレルゲンである抗原が含まれる。
【0068】
別の局面において、ISFV G遺伝子は、上記で記載される異種ポリヌクレオチド配列のうちの1種または複数種によって、その全体が置き換えられ得る。さらに別の局面において、ISFV G遺伝子は、第二のベシクロウイルスの異種G遺伝子によって置き換えられ得る、すなわち偽型化され得る。ある特定の局面において、rISFVは、VSV由来のG遺伝子で偽型化され得る。VSV G遺伝子は、上記で挙げられるVSV血清型の中より選択され得る。
【0069】
本発明の変種に従って、免疫原性組成物は、少なくとも2種の標的抗原、もしくは少なくとも2種の標的抗原をコードする異種ヌクレオチド配列、もしくは少なくとも2種の標的抗原をコードする少なくとも2種の異種ヌクレオチド配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0070】
ある特定の態様において、異種抗原はアルファウイルス抗原である。ほとんどのアルファウイルスは、蚊媒介性伝播を介して陸生脊椎動物に感染し、かつ幅広い宿主域を呈する(Strauss et al., 1994 Microbiol Rev. 58(3):491-562)。時折、これらのサイクルは、ヒトおよび飼育動物に波及して疾患を引き起こす。ロスリバーウイルス、チクングニアウイルス、およびSINVなどの旧世界ウイルスによるヒト感染は、典型的に発熱、発疹、および多発性関節炎を特徴とし、一方で新世界ウイルスのベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、および西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)による感染は、致命的な脳炎を引き起こし得る(Strauss et al., 1994 Microbiol Rev. 58(3):491-562)。結果として、後者のウイルスは冷戦中に生物兵器として開発され、かつ霊長類の近年のエアロゾル感染により、それらの高度に消耗性かつ/または致死性の特性が裏付けられている(Reed et al., 2007 The Journal of Infectious Diseases 196:441-450;Reed et al., 2005 The Journal of Infectious Diseases 192:1173-1182;Reed et al., 2004 The Journal of Infectious Diseases 189:1013-1017;Smith et al., 2009 Alphaviruses, p.1241-1274;D. D. Richman, R. J. Whitley, and F. G. Hayden (ed.), Clinical Virology. ASM Press, Washington, D.C.)。EEEVは、高用量のエアロゾル感染後のカニクイザル(cynomolgus macaque)において完全に致死性であり、かつ任意のウイルス感染のうちで最も高い天然のヒト症例での致死率(>50%)の1つを引き起こす(Reed et al., 2007 The Journal of Infectious Diseases 196:441-450)。ヒトのVEEV感染は、典型的に致命的ではないが、このウイルスは、エアロゾルによる最も感染力のあるウイルスの1つでありかつ高度に消耗性ならびに免疫抑制性である(Reed et al., 2004 The Journal of Infectious Diseases 189:1013-1017;Smith et al., 2009 Alphaviruses, p.1241-1274;D. D. Richman, R. J. Whitley, and F. G. Hayden (ed.), Clinical Virology. ASM Press, Washington, D.C.;Weaver et al., 2004. Annu. Rev. Entomol. 49:141-174)。さらに、それはラテンアメリカ全体にわたって広域の風土病を引き起こし、かつそれを意図的に導入すれば、ウマでの増殖および蚊による伝播をもたらして、何十万人もの人に感染し得る。これらの形質は、脳炎性アルファウイルスの、NIAIDによるカテゴリーB病原体リストへの割り当てをもたらしている。
【0071】
アルファウイルス疾患に対する認可された抗ウイルス治療または免疫原性組成物はないため、米国集団は、依然として生物攻撃ならびに3種の脳炎による天然感染の影響を受けやすいままである。一般的に、感染の約1週間後、前駆症状の病気が脳炎に進行した後になって初めて診断が生じるため、有効な抗ウイルス治療の開発はとくに困難である。したがって、免疫化は、致命的な疾患から防御するための最良の手法である。
【0072】
この満たされていない必要性に対処するために、両アルファウイルスに対する独立型の免疫原性組成物としての使用のために、ならびに/またはそのような免疫化モダリティーが最適な効力に必要であるならば、VEEVおよびEEEV E3~E1糖タンパク質を発現するrVSVベクターとの異種プライム-ブースト免疫化レジメンにおける使用のために、rISFVはVEEVおよびEEEVのE3~E1糖タンパク質を発現するように改変されている。
【0073】
B.組換えベシクロウイルスの製剤
本発明において有用な免疫原性組成物、例えば単独での、またはrVSV組成物とのプライム/ブーストレジメンにおけるrISFVは、滅菌水または滅菌等張生理食塩水など、免疫学的にまたは薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアをさらに含む。免疫原性組成物は、また、従来的な様式でそのような希釈剤またはキャリアと混合され得る。本明細書において使用するとき、「薬学的に許容されるキャリア」という言語は、ヒトまたは他の脊椎動物宿主への投与に適合する、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図される。適当なキャリアは、当業者に明白であり、かつ主に投与の経路に依存する。ゆえに、本発明において有用な免疫原性組成物は、Nタンパク質遺伝子、Pタンパク質遺伝子、Mタンパク質遺伝子、Gタンパク質遺伝子、およびLタンパク質遺伝子のうちの1つもしくは複数を含み;かつ異種ポリヌクレオチド配列であって、該異種ポリヌクレオチド配列は、(a)転写開始シグナルおよび転写終止シグナルと隣接し、かつ(b)異種ポリペプチドをコードする、異種ポリヌクレオチド配列をさらに含む、複製可能な組換えISFV;ならびに薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリアを含み得る。
【0074】
防腐剤、界面活性剤、および化学安定剤、懸濁化剤、または分散剤を含むがそれらに限定されない、付加的な構成要素が免疫原性組成物中に存在し得る。典型的に、安定剤、アジュバント、および防腐剤を最適化して、標的ヒトまたは動物における効力にとって最良の製剤を決定する。適切な例示的な防腐剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが含まれる。
【0075】
用いられ得る適切な安定化成分には、例えばカザミノ酸、スクロース、ゼラチン、フェノールレッド、N-Zアミン、二リン酸一カリウム(monopotassium diphosphate)、ラクトース、ラクトアルブミン水解物、および乾燥ミルクが含まれる。適切な界面活性物質には、フロイント不完全アジュバント、キノン類似体、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、ジメチル-ジオクタデシルアンモニウムブロミド、メトキシヘキサデシルグリセロール(methoxyhexadecylgylcerol)、およびプルロニックポリオール;ポリアミン、例えばピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、カーボポール;ペプチド、例えばムラミルペプチドおよびジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン;油エマルジョン;ならびにミネラルゲル、例えばリン酸アルミニウムなど、および免疫刺激複合体(ISCOMS)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。rISFVおよびrVSV、またはそれらのポリペプチド構成要素のいずれかは、また、免疫原性組成物としての使用のために、リポソーム内に組み入れられ得る。免疫原性組成物は、組成物の投与の選択された方式に適した他の添加物も含有し得る。本発明の組成物は、粉末、液体、または懸濁液の剤形を開発するために、他の薬学的に許容される賦形剤とともに用いられ得る凍結乾燥製剤も伴い得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Vol. 2, 19th edition (1995)、例えばChapter 95 Aerosols;および国際特許公報第WO99/45966号を参照されたく、その教示は参照により本明細書によって組み入れられる。
【0076】
これらの免疫原性組成物は、任意の従来的な投与の経路を介した投与に適した添加物を含有し得る。一部の態様において、本発明の免疫原性組成物は、例えば液体、粉末、エアロゾル、錠剤、カプセル、腸溶性の錠剤もしくはカプセル、または坐薬の形状での、ヒト対象への投与のために調製される。ゆえに、免疫原性組成物は、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および埋め込み可能な持続放出性または生分解性の製剤も含み得るが、それらに限定されるわけではない。非経口投与のための製剤の一態様において、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与前の、適切なビヒクル(例えば、発熱物質不含の滅菌水)による再構成のために、乾燥した(すなわち、粉末または顆粒の)形状で提供される。他の有用な非経口投与可能な製剤には、微結晶の形状にある、リポソーム性調製物の状態にある、または生分解性ポリマーシステムの構成要素として、活性成分を含むものが含まれる。持続放出または埋め込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性のポリマー、または難溶性の塩など、薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料を含み得る。
【0077】
本明細書において記載される免疫原性組成物は、上記で記載されるタイプの薬学的調製物において有用な、従来的な生理学的に許容されるキャリア、アジュバント、または他の成分の選択によって限定されない。適当なpH等張性、安定性、および他の従来的な特徴を有する、上記で記載される構成要素からの、これらの薬学的に許容される組成物の調製は、当技術分野における技能の範囲内にある。
【0078】
水溶液での非経口投与に関して、例えば、溶液は、必要な場合には適切に緩衝化され、かつ液体希釈剤は、まず、十分な生理食塩水またはグルコースで等張の状態にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、および腹腔内への投与にとりわけ適している。これに関連して、採用され得る滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1回投薬量を、1mlの等張性NaCl溶液中に溶解し得、かつ1000mlの皮下注入用流体に添加し得るまたは提案される注入の部位に注射し得る(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」15th Edition, pp.1035-1038および1570-1580を参照されたい)。投薬量のいくらかの変動は、治療されている対象の条件に応じて必然的に生じる。いずれにしても、投与に対して責任を負う人が、個々の対象に対する適当な用量を決定する。さらに、ヒト投与に関して、調製物は、組成物が用いられている国の政府によって要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0079】
本明細書において使用するとき、「キャリア」には、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、キャリア溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。薬学的活性物質に対するそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来的な媒体または作用物質が活性成分と不適合である限りを除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。補足的な活性成分も、組成物中に組み入れられ得る。
【0080】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、ヒトに投与した場合に、アレルギー性のまたは同様の厄介な反応をもたらさない分子実体および組成物を指す。ウイルス粒子を活性成分として含有する水性組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射物質として調製され;注射前の、液体中での溶液または懸濁液に適した固体の形状も調製され得る。
【0081】
上記で記載されるように、組換えベシクロウイルスの態様のいずれかを、これらの治療の方法において用い得る。望ましくは、この組成物を、上記で記載される薬学的に許容される希釈剤または他の構成要素と混和する。一態様において、病原体によって引き起こされる感染症の治療または阻止は、1種または複数種の有効量の、本明細書において記載される組換えベシクロウイルスのうちの1種または組み合わせの投与を伴う。
【0082】
C.組換えベシクロウイルスの投与
本発明の抗原性または免疫原性組成物を、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、皮下、静脈内、動脈内、鼻腔内、経口、舌下、口腔内、膣内、直腸、非経口、皮内、および経皮を含むがそれらに限定されない、多様な経路によってヒトまたは他の哺乳類対象に投与する(例えば、国際特許公報第WO98/20734号を参照されたく、それは参照により本明細書によって組み入れられる)。適当な経路は、用いられる免疫原性組成物の性質、ならびに患者の年齢、重量、性別、および全般的健康状態についての評価、ならびに免疫原性組成物中に存在している抗原、ならびに主治医による同様の因子に応じて選択される。
【0083】
下記で提供される実施例において、免疫原性rISFV組成物およびrVSV組成物の両方を、個々にまたはプライム/ブーストレジメンにおいて組み合わせで、筋肉内(i.m.)投与する。他の態様において、rISFV組成物およびrVSV組成物を異なる経路によって投与することが望ましい。例えば、rISFV組成物は、筋肉内および鼻腔内投与を含めた従来的な手段によって投与され得る。しかしながら、投薬量および投与の経路の選択は、本発明に対する限定ではない。
【0084】
免疫原性組成物投与の順序および個々の投与間の期間は、宿主の身体的特徴、および方法の適用に対する宿主の正確な応答に基づいて、主治医または当業者によって選択され得る。そのような最適化は、当技術分野の技能の範囲内に十分にあると予想される。
【0085】
一般的に、本発明の免疫原性組成物の構成要素に関する適当な「有効量」または投薬量の選択も、投与がrISFV単独であるまたはrVSV組成物とのプライム/ブーストであるかどうか、ならびに、何よりもとりわけ、免疫化される対象の全般的健康状態、年齢、および重量を含めた対象の身体的条件に基づく。投与の方法および経路、ならびに免疫原性組成物における付加的構成要素の存在も、rISFVおよびrVSV組成物の投薬量および量に影響を及ぼし得る。そのような選択および有効用量の上方または下方調整は、当技術分野の技能の範囲内にある。防御的応答などの免疫応答を誘導するために、または重大な有害な副作用なしで患者において治療効果をもたらすために要されるrISFVおよびrVSVの量は、これらの因子に応じで変動する。
【0086】
適切な用量が、上記で記載される薬学的組成物中に製剤化され(例えば、約0.1ml~約2mlの生理学的に適合するキャリア中に溶解される)、かつ任意の適切な手段によって送達される。治療は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量とは、所定分量の治療用組成物を含有することとして定義される。投与されるべき分量、ならびに特定の経路および製剤化は、臨床の技術分野における当業者の技能の範囲内にある。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、一定期間にわたる継続的注入を含み得る。本発明の単位用量は、ウイルス構築物に対するプラーク形成単位(pfu)またはウイルス粒子の観点から好都合に記載され得る。単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013 pfuまたは感染性ウイルス粒子(vp)、およびそれよりも高い値に及ぶ。あるいは、ウイルスおよび到達可能な力価に応じて、1~100、10~50、100~1000、または最高約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、もしくは1×1015、またはそれを上回る値のvpを患者にまたは患者の細胞に送達する。適切な用量が、上記で記載される薬学的組成物中に製剤化され(例えば、約0.1ml~約2mlの生理学的に適合するキャリア中に溶解される)、かつ任意の適切な手段によって送達される。
【0087】
一態様において、rISFVに対する単回投薬量またはブースト投薬量は同じである。そのような投薬量は、一般的に、1×107 pfu(またはウイルス粒子として測定されるもの)~1×109 pfu/ウイルス粒子/mlである。しかしながら、任意の適切な用量は、当業者によって容易に決定される。
【0088】
本明細書において記載される方法の第二の態様において、組換えベシクロウイルス(例えば、rISFV)の投与の前に、第一のウイルスによってコードされるものと同じまたは異種の抗原をコードする1つまたは複数のオープンリーディングフレームを含む第二の組換えベシクロウイルス(例えば、rVSV)を含むプライム組成物の有効量を哺乳類対象に投与する工程が先行する。あるいは、第一のウイルスの投与の後に、第二のウイルスの投与が続く。いずれのレジメンにおいても、第一のウイルスおよび/または第二のウイルスの複数回の投薬が施され得る。
【0089】
本発明に従って、例えば、rVSV免疫原性組成物は、宿主に対する1種または複数種の選択された異種抗原を提示するプライムrISFV免疫原性組成物の投与の後で、ブースト組成物として投与され得る。免疫原性rVSV組成物の前に、1種または複数種の異種タンパク質をそれらの発現を指示する調節配列の制御下でコードする1つまたは複数のオープンリーディングフレームを含むrISFV、および薬学的に許容される希釈剤を含むプライム組成物の有効量を哺乳類対象に投与する。プライム組成物として用いられる場合、このrISFV組成物は、ブーストrVSV組成物の前に、1回または複数回投与される。
【0090】
プライム/ブースト法の別の態様において、プライムrISFV組成物を、免疫原性rVSV組成物の前に少なくとも1回投与する、またはrVSV免疫原性組成物の前および後の両方に投与する。
【0091】
プライム/ブーストレジメンのさらにさらなる態様において、複数種のrVSV組成物を、後者のブースターとして投与する。一態様において、少なくとも2種のrVSV組成物を、プライム組成物の後に投与する。
【0092】
後続の各ベシクロウイルス組成物は、公知の血清型より、およびベシクロウイルスGタンパク質の操作によって提供される任意の合成血清型の中より選択される、種々の血清型を有し得る。例えば、一方のrVSVはインディアナ血清型であり得、かつ他方はチャンディプラ血清型またはニュージャージー血清型であり得る。別の態様において、付加的なrVSVブースターは、同じ血清型のものである。ブースト組成物として用いられる場合、rVSV組成物は、プライムrISFV免疫原性組成物の後に、連続的に投与される。所望のバランスの弱毒化および免疫原性を呈示するrISFVおよびrVSVが、本発明において有用である。
【0093】
さらに別の態様において、rISFV免疫原性組成物のうちの1種または複数種の投与の後に、rVSV免疫原性組成物の1回または複数回の投与が続き、次いで、rISFV免疫原性組成物の1回または複数回の付加的投与が続く。
【0094】
なおも別の態様において、rISFV免疫原性組成物のうちの1種または複数種の投与は、1種または複数種のプラスミドDNA免疫原性組成物の投与によって先行されまたは後続され、該プラスミドDNAは、rISFV免疫原性組成物と同じまたは異なる異種ポリペプチドをコードする。
【0095】
III.タンパク質性組成物
本発明のタンパク質性組成物には、ウイルス粒子、およびウイルス粒子を含む組成物が含まれる。ある特定の態様において、ベシクロウイルスは、ウイルスタンパク質N、P、M、G、および/もしくはLのポリペプチド変種;ならびに/または異種ポリヌクレオチドを含むように操作される。本明細書において使用するとき、「タンパク質」または「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基のポリマーを指す。一部の態様において、野生型バージョンのタンパク質またはポリペプチドが採用されるが、多くの態様において、療法にとってウイルスをより有用にするために、ウイルスタンパク質またはポリペプチドのすべてまたは一部は存在しないかまたは変更される。
【0096】
「改変されたタンパク質」もしくは「改変されたポリペプチド」、または「変種タンパク質」もしくは「変種ポリペプチド」とは、その化学的構造またはアミノ酸配列が、野生型または参照のタンパク質またはポリペプチドに対して変更されているタンパク質またはポリペプチドを指す。一部の態様において、改変されたタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1種の改変された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドは、複数種の活性または機能を有し得ると認識して)。改変された活性または機能は、野生型タンパク質もしくはポリペプチドにおけるその活性もしくは機能、またはそのようなポリペプチドを含有するウイルスの特徴に対して、何らかの他のやり方で低下し得る、軽減され得る、排除され得る、増強され得る、向上し得る、または変更され得る。改変されたタンパク質またはポリペプチドは、1種の活性または機能に対して変更され得、他の局面において、野生型のまたは変更されていない活性または機能をなおも保持し得ることが企図される。あるいは、改変されたタンパク質は完全に非機能的であり得る、またはその同族核酸配列は、フレームシフトまたは他の改変の結果として、ポリペプチドがもはや全く発現されない、切断される、もしくは異なるアミノ酸配列を発現するように変更されている可能性がある。
【0097】
ポリペプチドは、それらの対応する非変更型よりもそれらを短くする切断によって、または変更されたタンパク質をより長くし得る融合もしくはドメインシャッフリングによって改変され得ることが企図される。
【0098】
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列変種は、置換、挿入、または欠失の変種であり得る。ポリペプチドをコードする遺伝子における変異は、野生型のもしくは変更されていないポリペプチド、または他の参照ポリペプチドと比較して、ポリペプチドの、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500個またはそれを上回る数の不連続または連続アミノ酸(すなわち、セグメント)に影響を及ぼし得る。ベシクロウイルスによってコードされる様々なポリペプチドは、本出願とともに申請された配列表、または本明細書において提供されるGenBankアクセッション番号および関連する公的データベースのエントリを参照することによって同定され得る。
【0099】
欠失変種は、天然の、変更されていない、または野生型のタンパク質の1個または複数個の残基を欠如している。個々の残基が欠失され得る、またはドメイン(触媒または結合ドメインなど)のすべてもしくは一部が欠失され得る。ベシクロウイルスGタンパク質の細胞質尾部を切断して、ウイルスを弱毒化し得る。例えば、rISFV Gタンパク質は、20~25個のアミノ酸のカルボキシ末端切断を有し得、一方でrVSV Gタンパク質は、20~28個のアミノ酸のカルボキシ末端切断を有し得る。米国特許第8,287,878号に記載されているように、さらなる弱毒化は、ベシクロウイルスゲノムにおけるその天然の第1のポジションからN遺伝子をシャッフルして除くことによっても、またはアミノ酸箇所33および51における非細胞変性(ncp)性M遺伝子変異によって達成され得る。終止コドンをコード核酸配列内に(置換または挿入によって)導入して、切断型タンパク質を生成し得る。挿入変異体は、典型的に、ポリペプチドにおける非末端地点での材料の付加を伴い、特異的なタイプの挿入は、標的タンパク質の関連部分の代わりに、関連タンパク質の相同なまたは同様の部分を含むキメラポリペプチドである。これは、免疫反応性エピトープまたは単に1個もしくは複数個の残基の挿入を含み得る。典型的に融合タンパク質と称される末端付加も生成され得る。
【0100】
置換変種は、典型的に、タンパク質内の1つまたは複数の部位における、1個のアミノ酸と別のものとの交換を含有し、かつ他の機能または特性の喪失の有無にかかわらず、ポリペプチドの1種または複数種の特性を変調するようにデザインされ得る。置換は保存的であり得る、つまり、1個のアミノ酸は、同様の外形および電荷のものと置き換えられる。保存的置換は当技術分野において周知であり、かつそれには、例えばアラニンからセリン;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リジンからアルギニン;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。あるいは、置換は、ポリペプチドの機能または活性が影響を受けるような非保存的であり得る。非保存的変化は、典型的に、非極性または非荷電アミノ酸の代わりに極性または荷電アミノ酸、および逆もまたしかりなど、化学的に似ていないもので残基を置換することを伴う。
【0101】
「機能的に等価のコドン」という用語は、アルギニンまたはセリンに対する6種のコドンなど、同じアミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書において用いられ、かつ生物学的に等価のアミノ酸をコードするコドンも指す。アミノ酸コドンには、アラニン(Ala、A)GCA、GCC、GCG、またはGCU;システイン(Cys、C)UGCまたはUGU;アスパラギン酸(Asp、D)GACまたはGAU;グルタミン酸(Glu、E)GAAまたはGAG;フェニルアラニン(Phe、F)UUCまたはUUU;グリシン(GIy、G)GGA、GGC、GGG、またはGGU;ヒスチジン(His、H)CACまたはCAU;イソロイシン(Ile、I)AUA、AUC、またはAUU;リジン(Lys、K)AAAまたはAAG;ロイシン(Leu、L)UUA、UUG、CUA、CUC、CUG、またはCUU;メチオニン(Met、M)AUG;アスパラギン(Asn、N)AACまたはAAU;プロリン(Pro、P)CCA、CCC、CCG、またはCCU;グルタミン(Gln、Q)CAAまたはCAG;アルギニン(Arg、R)AGA、AGG、CGA、CGC、CGG、またはCGU;セリン(Ser、S)AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、またはUCU;トレオニン(Thr、T)ACA、ACC、ACG、またはACU;バリン(Val、V)GUA、GUC、GUG、またはGUU;トリプトファン(Trp、W)UGG;およびチロシン(Tyr、Y)UACまたはUAUが含まれる。
【0102】
アミノ酸および核酸配列は、付加的なN末またはC末アミノ酸、つまり5'または3'配列などの付加的な残基を含み得、かつ、ある特定の生物学的活性を有することを含めて、なおも依然として本質的に本明細書において示されるとおりであり得ることも理解されるであろう。末端配列の付加は、例えばコード領域の5'もしくは3'部分のいずれかに隣接する様々な非コード配列を含み得る核酸配列、または、遺伝子内で生じることが知られる様々な内部配列、すなわちイントロンを含み得る核酸配列にとくに適用される。
【0103】
以下は、等価のまたは向上さえした分子を創出するために、本明細書において記載されるタンパク質のアミノ酸を変化させることに基づく記述である。例えば、ある特定のアミノ酸は、例えば抗体の抗原結合領域または受容体分子上の結合部位など、構造との相互作用的結合能の感知可能な程度の喪失なしで、タンパク質構造における他のアミノ酸の代わりに置換され得る。そのタンパク質の生物学的な機能的な活性を規定するのは、タンパク質の相互作用的な能力および性質であるため、ある特定のアミノ酸置換は、タンパク質配列においておよびその基礎となるポリヌクレオチド配列において作製され得、かつそれにもかかわらず、類似した特性を有するタンパク質を産生し得る。ゆえに、関心対象の生物学的な実用性または活性の感知可能な程度の喪失なしで、様々な変化を、ベシクロウイルスの核酸配列またはコードされる異種ポリヌクレオチドにおいて作製し得ることが本発明者らによって企図される。
【0104】
そのような変化を作製する際、アミノ酸の疎水性親水性(hydropathic)指数が考慮され得る。タンパク質に生物学的機能を付与することにおける疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、当技術分野において一般的に理解されている(Kyte and Doolittle, 1982)。アミノ酸の相対的な疎水性親水性特徴は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、それが今度は、該タンパク質と他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが認められている。類似したアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に作製され得ることも当技術分野において理解されている。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号は、その近接アミノ酸の親水性によって支配される、タンパク質の最大の局部的平均親水性が、該タンパク質の生物学的特性と相関することを明記している。米国特許第4,554,101号において詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(0.5);ヒスチジン*-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸は、同程度の親水性値を有する別のものに置換され得、かつ依然として生物学的に等価のかつ免疫学的に等価のタンパク質を産生し得ると理解される。そのような変化において、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものはとくに好ましく、かつ±0.5以内のものはさらによりとくに好ましい。
【0105】
上記で概説されるように、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮に入れる置換の例は当業者に周知であり、かつそれには、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンが含まれる。そのような変化を作製する際、機能的に関連するタンパク質についての系統発生学的解析が考慮され得る(図11、およびそこに描写されるrISFV Nタンパク質において作製された4個のアミノ酸変化を参照されたい)。
【0106】
IV.核酸分子
ある特定の態様は、異種タンパク質またはポリペプチドのすべてまたは一部を発現し得るポリヌクレオチドを含む組成物および方法に向けられている。一部の態様において、ウイルスゲノムのすべてまたは一部を変異させてまたは変更して、ある特定の特性および/または特徴を有するウイルス、ウイルスポリペプチド、異種ポリヌクレオチド、または異種ポリペプチドを生成する。ポリヌクレオチドは、ウイルスのもしくは異種のアミノ酸配列のすべてもしくは一部を含有するペプチドもしくはポリペプチドをコードし得る、あるいは、それらがウイルスポリペプチドをコードしないように、または付加された、増加した、低下した、もしくは除去された少なくとも1種の機能もしくは活性を有するウイルスポリペプチドをコードするように操作され得る。
【0107】
本明細書において使用するとき、単離された「RNA、DNA、または核酸セグメント」という用語は、全ゲノムDNAまたは他の混入物から単離されているRNA、DNA、または核酸分子を指す。ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、他の核酸不含で単離されている。「ベシクロウイルスゲノム」、または「VSVゲノム」もしくは「ISFVゲノム」とは、ヘルパーウイルス、または他の因子をトランスで供給する補完的コード領域の存在下または非存在下で、宿主細胞に提供されてウイルス粒子を産出し得るポリヌクレオチドを指す。
【0108】
「相補的DNA」または「cDNA」という用語は、RNAを鋳型として用いて調製されるDNAを指す。全部のまたは部分的なゲノム配列が好ましい場合があり得る。
【0109】
同様に、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コード配列、およびある特定の局面においては、天然に存在する他の遺伝子またはタンパク質コード配列から実質的に単離された調節配列、を含む核酸セグメントを指す。この点において、「遺伝子」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸単位(適正な転写、翻訳後修飾、または局在化に要される任意の配列を含む)を指すように、簡潔性のために用いられる。当業者によって理解されるであろうように、この機能的用語には、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および変異体を発現するまたは発現するように適応させ得るゲノム配列、cDNA配列、およびより小さな操作された核酸セグメントが含まれる。
【0110】
本発明において用いられる核酸セグメントは、コード配列自体の長さにかかわらず、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、付加的制限酵素部位、マルチクローニングサイト、他のコードセグメントなどの他の核酸配列と組み合わされ得、それによってそれらの全体的な長さはかなり変動し得る。したがって、好ましくは、調製のし易さおよび意図される組換え核酸プロトコールにおける使用によって限定されている全体の長さを有する、ほぼ任意の長さの核酸フラグメントを採用し得ることが企図される。
【0111】
本発明の核酸構築物は、任意の供給源由来の全長ポリペプチドをコードし得る、またはポリペプチドの切断されたもしくは改変されたバージョン、例えば異種ペプチドフラグメントをコードし得る。核酸配列は、例えばポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にする、または標的化もしくは効力などの治療的有益性のための、付加的な異種コード配列を有する全長ポリペプチド配列をコードし得る。タグまたは他の異種ポリペプチドを、ポリペプチドコード配列に付加し得る。「異種の」という用語は、改変されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、または天然に存在するウイルスに伴って見出されるもしくはそれによってコードされるものと同じではない、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはそれらのセグメントを指す。
【0112】
非限定的な例において、ベシクロウイルスN、P、M、G、またはL遺伝子など、特定のウイルスセグメントと同一のまたは相補的な連続した一続きのヌクレオチドを含む、1種または複数種の核酸構築物が調製され得る。
【0113】
本発明において用いられる核酸セグメントは、改変されたポリペプチドをコードする改変された核酸を包含する。そのような配列は、コドン冗長性および機能等価性の結果として生じ得る。機能的に等価のタンパク質またはペプチドは、組換えDNA技術の適用によって創出され得、そこでのタンパク質構造の変化は、交換されているアミノ酸の特性についての考慮に基づいて操作され得る。ヒトによってデザインされた変化を、部位指向性突然変異誘発技法の適用を通じて導入して、例えば抗原性の向上またはその欠如を導入し得る。タンパク質を改変して、インビボでの該タンパク質の毒性作用を低下させ得る、または該タンパク質を伴うもしくはそのようなタンパク質を含むウイルスを伴う任意の治療の効力を増加させ得る。
【0114】
組換えベシクロウイルスベクターは、挿入変異、点変異、欠失、および遺伝子シャッフリングを含めた、多様な技法を用いて操作され得る。
【0115】
組換えベシクロウイルスは、N(ヌクレオカプシドタンパク質)遺伝子を、天然3'転写プロモーターから離れている(遠位である)、ゲノムにおける箇所にシャッフルすることによって、ウイルスに感染された細胞におけるN mRNA合成を低下させるようにデザインされ得る。VSVはヒト病原体と見なされず、かつVSVに対する既存の免疫はヒト集団において稀であるため、VSV由来のベクターの開発は、免疫原性組成物および遺伝子療法などのエリアにおける焦点となっている。例えば、研究により、インフルエンザウイルス血球凝集素(Roberts et al., 1999 J. Virol, 73:3723-3732)、麻疹ウイルスHタンパク質(Schlereth et al., 2000 J. Virol, 74:4652-57)、ならびにHIV-1 envおよびgagタンパク質(Rose et al., 2001 Cell, 106:539-549)を発現するVSVは、免疫原性組成物にとっての有効なベクターとして働き得ることが確立されている。
【0116】
ある特定の他の態様において、本発明は、単離された核酸セグメント、および本明細書において同定される(かつ/または参照により組み入れられる)配列に見られるもの由来の連続核酸配列をそれらの配列内に含む組換えベクターに関する。
【0117】
本発明は、これらの同定された配列の特定の核酸およびアミノ酸配列に限定されるわけではないことも理解されるであろう。したがって、組換えベクターおよび単離された核酸セグメントは、ベシクロウイルスコード領域、選択された変更または改変を基本的コード領域に持するコード領域を様々に含み得る、あるいはそれらは、それにもかかわらずやはりベシクロウイルスコード領域を含むより大きなポリペプチドをコードし得る、またはアミノ酸配列変種を有する生物学的に機能等価のタンパク質もしくはペプチドをコードし得る。
【0118】
様々な態様において、ベシクロウイルスポリヌクレオチドおよび/または異種ポリヌクレオチドを、変更し得るまたは変異させ得る。変更または変異は、挿入、欠失、置換、再編成、逆位などを含み得、かつある特定のタンパク質または分子メカニズムの変調、活性化、および/または不活性化、ならびに遺伝子産物の機能、配置、または発現の変更をもたらし得る。採用される場合、ポリヌクレオチドの突然変異誘発は、多様な標準的突然変異誘発手順(Sambrook et al, 2001)によって遂行され得る。変異とは、それによって生物または分子の機能または構造に変化が生じる過程である。変異は、単一遺伝子、遺伝子のブロック、またはゲノム全体のヌクレオチド配列の改変を伴い得る。単一遺伝子における変化は、DNA配列内の単一ヌクレオチド塩基の除去、付加、もしくは置換を伴う点変異の結果であり得る、またはそれらは、多数のヌクレオチドの挿入もしくは欠失を伴う変化の結果であり得る。
【0119】
挿入突然変異誘発は、公知のヌクレオチドまたは核酸フラグメントの挿入による、遺伝子の改変に基づく。それは、何らかのタイプの核酸フラグメントの挿入を伴うため、作出された変異は、一般的に、機能獲得型変異ではなく機能喪失型である。しかしながら、機能獲得型変異を作出する挿入の例が存在する。挿入突然変異誘発は、標準的な分子生物学技法を用いて遂行され得る。
【0120】
構造誘導型の部位特異的突然変異誘発は、タンパク質-リガンド相互作用についての詳細な分析および操作にとっての強力なツールとなる(Wells, 1996;Braisted et al., 1996)。該技法は、1個または複数個のヌクレオチド配列変化を、選択されたDNA内に導入することによって、配列変種の調製および試験を提供する。
【0121】
本明細書において使用するとき、「G-CT」とは、コードされたGタンパク質が、Gタンパク質の「細胞質尾部領域」とも呼ばれる、その細胞質ドメイン(カルボキシ末端)におけるアミノ酸の一部を切断されたまたは欠失された、変異したVSV G遺伝子を指す。G-CT1は、その最後の28個のカルボキシ末端アミノ酸を切断され、29アミノ酸の野生型細胞質ドメイン由来の1個のアミノ酸のみを保持するタンパク質産物がもたらされる。他のG遺伝子切断、例えば、野生型と比べて、細胞質ドメインの最後の20個のカルボキシ末端アミノ酸残基が欠失されたG-CT9が、米国特許第8,287,878号において同定されている。rVSVのGタンパク質を変更するための公知の方法の中には、国際公報第W099/32648号およびRose, N. F. et al. 2000 J. Virol, 74:10903-10に記載されている技法がある。
【0122】
「発現ベクター」という用語は、転写され得る遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。ある場合には、RNA分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産生において、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の転写およびおそらく翻訳に必要な核酸配列を指す、多様な「制御配列」を含有し得る。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、同様に他の機能を果たしかつ下記で記載される核酸配列を含有し得る。
【0123】
「プロモーター」とは、そこで転写の開始および割合が制御される核酸配列の領域である制御配列である。それは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子など、調節タンパク質および分子に結合する遺伝子エレメントを含有し得る。「機能的に配置された」、「機能的にカップルした」、「機能的に連結した」、「制御下にある」、および「転写制御下にある」という語句は、プロモーターが、核酸配列に関して正しい機能的な配置および/または配向にあって、その配列の転写開始および/または発現を制御することを意味する。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す「エンハンサー」と合わせて用いられても用いられなくてもよい。
【0124】
コード配列の効率的な翻訳には、特異的な開始シグナルも要され得る。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは近接配列が含まれる。ATG開始コドンを含めた異種の翻訳制御シグナルが提供される必要があり得る。翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであり得る。発現の効率は、適当な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強され得る。
【0125】
本発明のある特定の態様において、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントを用いて、多重遺伝子、つまりポリシストロン性のメッセージを創出する。IRESエレメントは、5'メチル化Cap依存的翻訳のリボソームスキャンモデルを迂回し得、かつ内部部位での翻訳を始動し得る(Pelletier and Sonnenberg, 1988)。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)由来のIRESエレメント(Pelletier and Sonnenberg, 1988)、ならびに哺乳類メッセージ由来のIRES(Macejak and Sarnow, 1991)が記載されている。効率的な翻訳のために、IRESエレメントのおかげで、各オープンリーディングフレームはリボソームに接近可能である。
【0126】
ベクターは、多数の制限酵素部位を含有する核酸領域であるマルチクローニングサイト(MCS)を含み得、そのうちのいずれかを標準的な組換え技術と合せて用いて、ベクターを消化し得る。(参照により本明細書に組み入れられる、Carbonelli et al., 1999、Levenson et al., 1998、およびCocea, 1997を参照されたい。)「制限酵素消化」とは、核酸分子内の特異的位置でのみ機能する酵素による核酸分子の触媒的切断を指す。これらの制限酵素の多くが市販されている。MCS内で切る制限酵素を用いてベクターを線状化またはフラグメント化して、異種配列がベクターにライゲーションされるのを可能にする。「ライゲーション」とは、互いに連続していても連続していなくてもよい2つの核酸フラグメント間でホスホジエステル結合を形成する過程を指す。
【0127】
ベクターまたは構築物は、少なくとも1つの終結シグナルを含み得る。「終結シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写産物の特異的終結に関与する核酸配列から構成される。ゆえに、ある特定の態様において、RNA転写産物の産生を終わらせる終結シグナルが企図される。望ましいメッセージレベルを達成するために、インビボにおいてターミネーターが必要であり得る。本発明における使用のために企図されるターミネーターには、例えばウシ成長ホルモンターミネーターなどの遺伝子の終結配列、または例えばSV40ターミネーターなどのウイルス終結配列を例えば含むがそれらに限定されない、本明細書において記載されるまたは当業者に公知である、任意の公知の転写のターミネーターが含まれる。ある特定の態様において、終結シグナルは、配列切断などによる、転写可能なまたは翻訳可能な配列の欠如であり得る。
【0128】
ポリアデニル化シグナルを用いて、転写産物の適正なポリアデニル化をもたらし得る。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実践の成功に決定的ではないと思われる。態様は、SV40ポリアデニル化シグナルおよび/またはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化は、転写産物の安定性を増加させ得る、または細胞質輸送を促し得る。
【0129】
本発明のある特定の態様において、本発明の核酸構築物を含有する細胞は、発現ベクター内にマーカーを含めることによって、インビトロまたはインビボで同定され得る。そのようなマーカーは、発現ベクターを含有する細胞の簡単な同定を可能にする、同定可能な変化を細胞に付与する。一般的に、選択可能なマーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。陽性選択可能なマーカーは、マーカーの存在によりその選択が可能となるものであり、一方で陰性選択可能なマーカーは、その存在によりその選択が阻止されるものである。陽性選択可能なマーカーの例は、薬物耐性マーカーである。通常、薬物選択マーカーの包含は、形質転換体のクローニングおよび同定に役立ち、例えばネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択可能なマーカーである。条件の実行に基づいて形質転換体の判別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、その根拠が比色分析であるGFPなどのスクリーニング可能なマーカーを含めた、他のタイプのマーカーも企図される。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのスクリーニング可能な酵素も利用され得る。当業者であれば、おそらくFACS解析と合わせて、どのように免疫学的マーカーを採用するのかも知っているであろう。用いられるマーカーは、それが、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現され得る限り、重要ではないと思われる。選択可能なマーカーおよびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0130】
V.組換えベシクロウイルスに関連したキット
さらに別の態様において、本発明は、免疫原性レジメン、予防的レジメン、または治療的レジメンの容易な施与のための薬学的キットを提供する。このキットは、哺乳類または脊椎動物対象において高レベルの抗原特異的免疫応答を誘導する方法における使用のためにデザインされる。キットは、本明細書において記載されるrISFV組成物を含む少なくとも1種の免疫原性組成物を含有し得る。例えば、多数回の投与のために、あらかじめパッケージされた多数回の投薬量のrISFV免疫原性組成物がキット内に提供される。キットは、本明細書において記載されるrVSV免疫原性組成物を含む少なくとも1種の免疫原性組成物も含有する。一態様において、多数回の投与のために、あらかじめパッケージされた多数回の投薬量のrVSV免疫原性組成物がキット内に提供される。
【0131】
キットは、本明細書において記載されるプライム/ブースト法において免疫原性組成物を用いるための指示書も含有する。キットは、ある特定のアッセイを実施するための指示書、上記で記載される様々なキャリア、賦形剤、希釈剤、アジュバントなど、ならびにシリンジ、エレクトロポレーション装置、スプレー装置など、組成物の投与のための器具も含み得る。他の構成要素には、他の組成物の中でも、使い捨て手袋、除染指示書、塗布用スティック、または容器が含まれ得る。
【実施例
【0132】
VI.実施例
以下の実施例ならびに図は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。実施例または図において開示される技法は、本発明の実践において上手く機能することが本発明者らによって発見された技法に相当し、ゆえにその実践のための好ましい様態をなすと見なされ得ることが、当業者によって解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変化が、開示されている具体的な態様においてもたらされ得、かつ依然として類似したまたは同様の結果を獲得し得ることを解するべきである。
【0133】
実施例1
イスファハンウイルス(ISFV)の解析および回収
ISFVゲノムcDNAをコードするプラスミドDNAからの組換えイスファハンウイルス(rISFV)の回収のためのシステムを開発した。野生型(wt)rISFVおよび弱毒化変種rISFVN4ΔCT25gag1の安全性を、高感度の4~5週齢NIHスイスウェブスターマウス頭蓋内神経毒性モデルで実験した。<10 PFUのLD50を有するwtVSVINとは対照的に、改変されていないrISFV wtは、>103 PFUのLD50を呈した。104のLD50を有するrVSVINN2CT1とは対照的に、rISFVN4ΔCT25gag1は、>107のLD50を呈した。これらの結果は、rISFVが、VSVINよりも根本的に病原性が低く、かつrVSVINベクターと同程度の安全性および免疫原性を達成するために、複数の弱毒化ストラテジー(N-シャッフル、Gタンパク質の細胞質尾部の切断)の利用を要しない可能性があることを示す。
【0134】
イスファハン系統発生学的解析。ベシクロウイルス属の入手可能な配列を、GenBankからダウンロードした。MUSCLEアルゴリズム(Gouy et al., 2010, Molecular Biology and Evolution 27:221-24;Edgar, 2004. Nucleic Acids Research 32:1792-97)を利用して、N遺伝子配列をSeaView(PBIL(Pole Bio-Informatique Lyonnais)、フランス)においてアラインメントした。オープンリーディングフレーム(ORF)からアミノ酸配列を推定し、次いで後続の解析のためにヌクレオチド配列に戻すことによって、配列をアラインメントした(Gouy et al., 2010, Molecular Biology and Evolution 27:221-24;Edgar, 2004. Nucleic Acids Research 32:1792-97)。PHYLIPパッケージ(Felsenstein, 1989, Cladistics 5, 164-1663)を利用して、最大尤度(ML)分析を実施した。ML系統発生の堅牢性を、100回再現のブートストラップ再標本化によって評価した。分析により、属内の2つの主要なクラスターが明らかとなった(図1)。第一のクラスターは、VSVINおよびその亜型、ならびにVSVNJからなり、一方で第二のクラスターは、ISFV、チャンディプラ、およびピリウイルスから構成される。これらのデータは、属内のISFVの関係性を判定する以前の血清学的分析と一致しており、かつまとめると、ISFVはVSVINと遠縁であることを示す(Tesh et al., Am J Trop Med Hyg. 1977, Mar 26(2):299-306)。
【0135】
イスファハンcDNAクローンの生成。テキサス大学医学部(University of Texas Medical Branch)の出現ウイルスおよびアルボウイルスに関する世界リファレンスセンター(World Reference Center for Emerging Viruses and Arboviruses)から、低度の組織培養継代されたISFV単離株を入手した。ウイルスゲノムRNAを培養上清から単離し、かつ完全ISFVゲノムに及ぶcDNAフラグメントを、逆転写(RT)およびPCR増幅(RT-PCR)によって生成した(図2)。RT-PCR産物(フラグメント3~5)を、VSVニュージャージーの全長ゲノムcDNAを含有するプラスミド(pVSVNJN4CT1 HIVgag1)内に段階的にクローニングした(図2)。残りのフラグメント(1~2)を、pBlueScriptプラスミド(Invitrogen)内にクローニングした。
【0136】
それぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)を、pVSVIN PプラスミドのNco IおよびSac I部位にクローニングすることによって、個々のISFVタンパク質(N、P、M、G、およびL)を発現する、レスキューのためのサポートプラスミドを生成した(Witko et al., J Virol Methods. 2006 Jul, 135(1):91-101)。BspH I(NおよびM遺伝子)、Pci I(P遺伝子)、およびBsmB I(GおよびL遺伝子)によって、Nco Iに適合する付着末端を生成した。2つのcDNAフラグメント:フラグメント#1(BsmB I~Avr II)およびフラグメント#2(Avr II~Sac I)をつなぎ合わせることによって、L遺伝子ORFを会合させた。結果として生じるレスキュー用サポートプラスミドを、ヌクレオチド配列解析によって検証した。
【0137】
アルファウイルスエンベロープ遺伝子をコードするrISFVおよびrVSVIN構築物。EEEV系統のFL93およびVEEV系統のZPC738のエンベロープ遺伝子(E3-E2-6K-E1を包含する)をpPBS-ISFV-38内にクローニングした(その構築は下記で記載される)。加えて、VEEV-ZPC E3~E1遺伝子をpVSVIN N4CT1 HIVgag5内にクローニングした。それぞれの場合において、挿入される遺伝子をrISFVまたはrVSV転写酵素の制御下に置くようなやり方で、Xho IおよびNot I制限部位を用いて、アルファウイルス遺伝子をベクターゲノム上の第5のポジションに挿入した(図3A)。すべてのベクターを全長ヌクレオチド配列解析によって検証し、かつアルファウイルスタンパク質の発現をウェスタンブロットによって確認した(図3B)。
【0138】
3'から5'への遺伝子発現の勾配は、ベシクロウイルス(Ball and White, PNAS. 1976, 73(2):442-6;Villarreal et al., Biochemistry. 1976, 15(8):1663-7)、および他のマイナスセンスRNAウイルス(Conzelmann, Annual review of genetics. 1998, 32:123-62)に関して、十分に裏付けられている。したがって、標的抗原の最大発現は、単一の強力な3'転写プロモーターに直に近接した、ゲノム上の第1のポジションにおける導入遺伝子の挿入によって達成される。しかしながら、一部の抗原の高い発現レベルは、rVSV複製にとって有毒であり得、導入遺伝子の不安定性および抗原発現の喪失につながる(非公開)。導入遺伝子(trans gene)を3'転写プロモーターからさらに遠くに動かすことによる、HIV-1 Envタンパク質などの有毒抗原の発現の下方調節は、Env発現、およびrVSVプラットフォームでこれまでに試験された広範な種々の病原体由来のすべての標的抗原の遺伝的安定性を維持することに成功している。E2/E1糖タンパク質は、非常に高レベルで発現した場合に、rVSVおよびrISFV複製にとって有毒であり得るという可能性を考慮に入れるために、ゲノムにおける第5のポジションからE2/E1を発現する、弱毒化rVSVおよびrISFVベクターを生成した。
【0139】
全長組換えイスファハンウイルスpDNAの生成
全長イスファハンウイルス(ISFV)を構築するための開始材料は、以下をコードする2種のサブクローニングプラスミドからなった。
【0140】
UTMBプラスミド#1(pPBS-ISFV-001と改名された):XhoI/KpnI部位を介してpBlueScript II SK+内に挿入された、T7プロモーター、VSVリーダー、ISFVリーダー、N、M、P、G、および部分的配列のLの核酸配列。配列は、3'から5'方向に挿入された。
【0141】
UTMBプラスミド#2(pPBS-ISFV-002と改名された):XhoI/RsrII部位を介してVSVNJ N4CT1骨格内に挿入された、ISFV Lの部分的3'配列およびターミネーターの核酸配列。
【0142】
上記に加えて、T7プロモーターの制御下に、個々のISFV遺伝子(M、P、N、G、およびL)をコードするサポートプラスミドを提供した。
【0143】
全長ISFVゲノムcDNAを含有するpPBS-ISFV-008の構築
ISFV L欠失配列の挿入。ISFV Lの欠落した2.4kbの核酸配列を、pPBS-ISFV-001およびpPBS-ISFV-002内に挿入した。欠落したフラグメントを、鋳型としてのpT7-IRES-ISFV Lサポートプラスミドとともに、プライマー
を用いたPCRによって生成した。用いたPCRサイクルは、95℃、2分間;(95℃、30秒間の変性/50℃、30秒間のアニーリング/72℃、2.5分間の伸長)で40サイクル;72℃、2分間であった。配列の最高の忠実度を確保するために、Pfx50 DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いた。次に、pPBS-ISFV-001と並行して、PCR産物をKpnIおよびNgoMIV制限酵素で消化した。この制限消化産物をライゲーションして、pPBS-ISFV-003を生成した。2.4kbも、鋳型としてのpT7-IRES-Lサポートプラスミドとともに、プライマー
を用いたPCRによって生成し、かつそれぞれXhoIおよびBstBIを介してpPBS-ISFV-002内に挿入して、pPBS-ISFV-005を生成した。XhoI/KpnI制限部位を介してpPBS-ISFV-001とpPBS-ISFV-005とを結び付けることによって全長ISFV Lを復元させて、pPBS-ISFV-006を生成した。
【0144】
ISFVリーダーに近接したT7プロモーターの構築。ISFVレスキューのための適切な構築物を生成するために、T7プロモーター
は、ISFVリーダー配列
のすぐ上流に置かれる必要があった。したがって、ISFVリーダー配列に近接したT7プロモーターのPCR増幅を、鋳型としてのpPBS-ISFV-001とともに、プライマー
を用いて達成した。結果として生じるPCR増幅により、EcoNI/NgoMIV制限部位を創出するプライマー
を用いた第二ラウンドの増幅のための鋳型として働くフラグメントが生成された。次いで、PCR産物をEcoNI/NgoMIV制限部位を介してpPBS-ISFV-001内に挿入して、pPBS-ISFV-007を生成した。
【0145】
全長イスファハンウイルスcDNAを含有するpDNAの構築。pPBS-ISFV-006およびpPBS-ISFV-007をNgoMIV/SanDI制限酵素で消化することによって、全長ISFVゲノムcDNAを含有するpDNAを生成して、核酸配列5'-N1-P2-M3-G4-L5-3'、およびISFVリーダー配列に近接したT7プロモーターを有するpPBS-ISFV-008を構築した。
【0146】
rISFVレスキュー手順
pDNAの調製。各エレクトロポレーションに関して、表1に挙げられる以下のプラスミドDNAを、滅菌条件下にて微量遠心チューブ内で組み合わせた。
【0147】
(表1)
*すべてのウイルスタンパク質は野生型ヌクレオチド配列から発現され、かつ転写はT7プロモーターの制御下にあった。
**pDNA量は、1回のエレクトロポレーションに対して算出されている。
【0148】
DNA容量を、滅菌したヌクレアーゼ不含水で300μLに調整した。次に、60μlの3M酢酸ナトリウムおよび900μLの100%エタノールを添加し、かつ混合液を-20℃で一晩保管した。4℃30分間14000rpmでの遠心分離によって、DNAをペレットにした。上清を吸引し、そしてDNAペレットを空気乾燥させ、かつ各エレクトロポレーションのために、50μLの滅菌したヌクレアーゼ不含水中に再懸濁した。
【0149】
Vero細胞の調製。表2に挙げられる以下の培地を、ISFVのレスキューに用いた。
【0150】
(表2)
【0151】
各エレクトロポレーションは、およそ1.3個のコンフルエント付近のT-150フラスコまたは1個のコンフルエントのフラスコからの細胞を要する。各T150フラスコの細胞単層を、Ca2+またはMg2+を含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄した。DPBSを吸引し、かつ5mlのトリプシン-EDTA溶液でトリプシン処理し、次いで37℃で最高5分間インキュベートした。フラスコをタッピングすることによって細胞を遊離させた(dislodging)後、10mLのレスキュー培地1を各フラスコに添加して細胞を懸濁し、かつ2個のフラスコそれぞれを、10mLのレスキュー培地1を含有する50mLの円錐形チューブに移した。細胞を4℃5分間1200rpmで遠心分離した。上清を吸引し、かつ50mLの円錐形チューブ1本あたり10mLのレスキュー培地2で細胞を再懸濁し、その後に4℃5分間1200rpmでの遠心分離が続いた。洗浄液を廃棄し、かつ細胞ペレットを0.7mLのレスキュー培地2中に再懸濁した。細胞懸濁液を、50μlのプラスミドDNA溶液を分割した微量遠心チューブに移し、かつ穏やかに混合し、その後に細胞/DNAをエレクトロポレーション用キュベットに移す工程が続いた。
【0152】
エレクトロポレーション。細胞を、BTX820エレクトロポレーターで以下のとおりにエレクトロポレーションした。
【0153】
エレクトロポレーションの後、すべてのサンプルを室温で10分間放置し、次いで1mLのレスキュー培地1を穏やかに混合しながらキュベットに添加して、エレクトロポレーションされた細胞を再懸濁した。次いで、細胞懸濁液を、キュベットから10mLのレスキュー培地1を含有する15mL遠心分離チューブに移し、かつ4℃5分間1200rpmで遠心分離した。培地を吸引し、そして細胞を10mLのレスキュー培地1中に再懸濁し、かつ20mLのレスキュー培地1を含有するT-150フラスコに移した。フラスコを37℃(5% CO2)で3時間インキュベートし、その後に43℃(5% CO2)で3~5時間のヒートショックが続き、次いで長期間のインキュベーションのために32℃に戻した。一晩のインキュベーションの後、上清を25mlの新鮮なレスキュー培地1で置き換えた。陽性rISFVレスキューは、5~10日後に、円形化した(rounded up)細胞の領域を特徴とする細胞変性作用(CPE)を示した。レスキュー上清を収集し、エタノール/ドライアイス漕中で急速冷凍し、かつ単一ウイルスクローンをプラーク選抜によって単離し、その後にVero細胞における2ラウンドの増幅が続いて、ウイルスのワーキングストックを生成した。
【0154】
ISFV/ベシクロウイルス核タンパク質のアミノ酸アラインメント
ISFV核タンパク質のアミノ酸配列を、他のベシクロウイルス核タンパク質配列とアラインメントした(表3)。合致パーセントは、ISFV核タンパク質配列とのアミノ酸同一性に基づく。配列における詳細な相同性を、図4に見ることができる。アミノ酸相同性の領域は、網掛けにされている。
【0155】
(表3)
【0156】
実施例2
遺伝子シャッフルおよびISFV Gの細胞質尾部の切断を用いた、弱毒化rISFVベクターの構築
rISFV-N4G5-MCS1の構築。プラスミドpPBS-ISFV-008は、核酸配列5'-N1-P2-M3-G4-L5-3'[rISFVのアンチゲノム]を含む。下付きの数字は、各ISFV遺伝子のP(ホスホタンパク質をコードする)、M(マトリックスタンパク質をコードする)、G(付着タンパク質をコードする)、N(ヌクレオカプシドタンパク質をコードする)、およびL(ポリメラーゼタンパク質をコードする)のゲノム箇所を表す。
【0157】
プラスミドpPBS-ISFV-009は、核酸配列5'-MCS1-N2-P3-M4-G5-L6-3'(ポジション1に付加的転写カセットを有する、rISFVのアンチゲノム)を含む。この式に従うと、MCS(マルチクローニングサイト)は、ISFV Nのすぐ上流のポジション1にある、rISFVアンチゲノムにおける空の転写単位(TU)である。下付きの数字は、各ISFV遺伝子のP(ホスホタンパク質をコードする)、M(マトリックスタンパク質をコードする)、G(付着タンパク質をコードする)、N(ヌクレオカプシドタンパク質をコードする)、およびL(ポリメラーゼタンパク質をコードする)のアンチゲノム箇所を表す。
【0158】
まず、ISFV Lにおける内部NheI部位を、クローニング目的のために除去した:PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつそれぞれAfeI/BsmBIおよびAfeI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-008内に挿入して、pPBS-ISFV-010を生成した。
【0159】
部分的ISFV M-ISFV G-部分的ISFV L配列を含有する第二のPCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成した。このフラグメントをSphI/AgeI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入して、pPBS-ISFV-011を生成した。
【0160】
pPBS-ISFV-011から開始して、2回の逐次的突然変異誘発反応を、プライマーペア
を用いて実施して、pPBS-ISFV-013を生成した。次いで、BsmBI/AgeI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-013を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-009に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-014は、核酸配列5'-MCS1-N2-P3-M4-G5-L6-3'を含んだが、pPBS-ISFV-009とは異なり、ISFV G遺伝子は、例えばISFV Gの細胞質尾部の切断を含むISFV G変種との簡単な交換を可能にするMluI/NheI制限部位と隣接する。
【0161】
N遺伝子をポジション4にシャッフルし、したがってrISFVをベクターとして弱毒化するために、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつHindIII/NotI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入して、pPBS-ISFV-017を生成した。pPBS-ISFV-017由来のBsmBI/NotIインサートを、pPBS-ISFV-014の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-017とpPBS-ISFV-014とを結び付けて、pPBS-ISFV-019を生成した。
【0162】
同時に、プライマー
によるかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いたフラグメントのPCR増幅、ならびにそれをSphI/AgeI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入することによって、pPBS-ISFV-015を生成した。第二のPCRフラグメントを、
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつそれぞれBsmBI/MluIおよびBsaI/MluI制限部位を介してpPBS-ISFV-015内に挿入して、pPBS-ISFV-016を生成した。
【0163】
最後に、pPBS-ISFV-016由来のBsmBI/MluIインサートを、pPBS-ISFV-019の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-016とpPBS-ISFV-019とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-020は、pPBS-ISFV-014と比較した場合にN遺伝子がrISFVのポジション4にシャッフルされている、核酸配列5'-MCS1-P2-M3-N4-G5-L6-3'を含む。
【0164】
rISFV-N4G3-MCS5の構築。pPBS-ISFV-013から開始して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、pPBS-ISFV-022を生成した。次いで、
から生成されたオリゴヌクレオチドリンカーを、pPBS-ISFV-022のNheI/NotIベクターフラグメントとライゲーションして、pPBS-ISFV-023を生成した。PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-016を用いて生成し、かつXhoI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-023内に挿入して、pPBS-ISFV-024を生成した。
【0165】
加えて、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-017を用いて生成し、かつBsmBI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-017内に挿入して、pPBS-ISFV-025を生成した。
【0166】
次いで、それぞれ
から生成された2つのオリゴヌクレオチドリンカーを、pPBS-ISFV-025のNheI/BbsIベクターフラグメントとライゲーションした(pPBS-ISFV-026を生成するために)。核酸配列5'-P1-M2-N3-G4-L5-3'を含むプラスミドであるpPBS-ISFV-030を生成するために、BsmBI/NgoMIV制限酵素を用いてpPBS-ISFV-026を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。
【0167】
最後に、pPBS-ISFV-024由来のBsmBI/AgeIインサートを、pPBS-ISFV-030の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-024とpPBS-ISFV-030とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-031は、pPBS-ISFV-014と比較した場合にN遺伝子がrISFVのポジション4にシャッフルされている、核酸配列5'-P1-M2-G3-N4-MCS5-L6-3'を含む。
【0168】
rISFV-N*4G5-MCS1の構築。rISFVおよびrVSV Nタンパク質のアミノ酸配列アラインメントにより、全体として52%のみの相同性が明らかとなったものの、該アラインメントにより、強力な公知のH2d制限エピトープに対する非常に密接な相同性が実証された(MPYLIDFGL;図11を参照されたい)。したがって、他のベシクロウイルス由来の追加のNタンパク質とのさらなるアラインメントを用いて、この一続きのアミノ酸に関する、rISFVとrVSVとの間の相同性を取り除いたまたは少なくとも低下させた。pPBS-ISFV-016から開始して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、ISFV Nにおける以下のアミノ酸変化:K271Q、A272S、L279M、F282M(ISFV N*)を含有するpPBS-ISFV-033を生成した(図11を参照されたい)。SanDI/BsrGI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-033を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-024に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションして、pPBS-ISFV-037を生成した。最後に、pPBS-ISFV-037由来のNheI/Age1インサートを、pPBS-ISFV-031の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-037とpPBS-ISFV-031とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-038は、pPBS-ISFV-031と同様に、アンチゲノム核酸配列5'-P1-M2-G3-N4-MCS5-L6-3'を含むが、コードされたISFV Nタンパク質は、4個のアミノ酸変化K271Q、A272S、L279M、F282M(ISFV N*)を所持する。
【0169】
モデル抗原HIV-1 gag SDEを発現する弱毒化rISFV Nベクター。プラスミドpPBS-HIV-055は、HIV-1 gag SDE(単一優性エピトープ)と称される切断型HIV-1 gag遺伝子を含む標準的なクローニングベクターである。HIV-1 gag SDEのアミノ酸配列は、以下のとおりである。
数字は、天然HIV-1 gagタンパク質におけるアミノ酸箇所を表す。ペプチド
は、BALB/cマウスにおいてT細胞応答の強力な誘導因子であることが見出され、したがってHIV-1 gag SDEを、種々のベクターデザインの免疫原性を試験するモデル抗原として用いた。
【0170】
まず、XhoI/NotI制限酵素を用いてpPBS-HIV-055を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-014に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-013は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-N2-P3-M4-G5-L6-3'を含み、かつそれを用いて、対応するrISFVを創出した。
【0171】
XhoI/NotI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-HIV-055を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-014は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N4-G5-L6-3'を含む。したがって、対応するrISFVウイルスは、単一の弱毒化マーカーである、rISFVのポジション4へのISFV Nシャッフルを含む。
【0172】
PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-HIV-014を用いて生成し、かつMluI/NheIを介してpPBS-ISFV-HIV-014内に挿入して、pPBS-ISFV-HIV-015を生成し、ここでは核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N4-(GΔCT25)5-L6-3'を含んだ。したがって、対応するrISFVウイルスは、2つの弱毒化マーカー:(1)rISFVアンチゲノム上のポジション4へのISFV Nのシャッフリング、および(2)ISFV Gの細胞質尾部(CT)の遠位末端の25個のアミノ酸分の切断、を含む。ISFV Gタンパク質のCTおよび膜貫通(TM)ドメインの精確な長さは、VSVINのものほど十分には特徴付けされていないが、カルボキシル末端付近のおよそ18アミノ酸(aa)の疎水性ドメインが、ISFV Gタンパク質のTMアンカーとして予測される。残りの下流33aa残基は、Gタンパク質のCTとなる。
【0173】
加えて、BsmBI/MluI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-033を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-015に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-018は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N* 4-(GΔCT25)5-L6-3'を含んだ。rISFV-HIV-015と比較して、対応するrISFV-HIV-003におけるコードされたISFV N遺伝子は、BALB/cマウスに対する公知の強力なT細胞エピトープ内に、4個のアミノ酸変化K271Q、A272S、L279M、F282Mをもつ。
【0174】
MluI/NheI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-HIV-015を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-013に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-017は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-N2-P3-M4-(GΔCT25)5-L6-3'を含んだ。したがって、対応するrISFVウイルスは、単一の弱毒化マーカーである、ISFV G細胞質尾部の切断を含む。
【0175】
最後に、細胞質尾部に28個のアミノ酸の同様の切断を有する、NJ血清型由来の改変型VSV GをコードするVSVNJ GCT1遺伝子によって、切断型ISFV GΔCT25遺伝子が置き換えられた弱毒化rISFVベクターを生成した。pPBS-ISFV-HIV-016[ヌクレオチド配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N4-(VSVNJ GCT1)5-L6-3'を含む]を生成するために、MluI/NheI制限酵素を用いて、pPBS-VSV-HIV-054(MluI/NheI制限酵素部位と隣接したVSVNJ GCT1遺伝子を含有するrVSVクローニングベクター)を消化した。次いで、単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-015に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-016は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-N2-P3-M4-(VSVNJ G CT1)5-L6-3'を含み、かつそれを用いて、対応するrISFVをレスキューした。
【0176】
HIV-1 gag SDEを発現するすべてのrISFVの弱毒化を、プラークアッセイによってインビトロで試験した。観察されたプラークサイズは、以下のとおりであった(図5):rISFV-HIV-013=rISFV-HIV-14>rISFV-HIV-15=rISFV-HIV-017≧rISFV-HIV-018=rISFV-HIV-016。
【0177】
上記で記載されるrISFV構築物に加えて、以下のプラスミドから生成された2種の弱毒化rVSVベクターを、プライム-ブースト免疫化実験において用いた。
【0178】
pPBS-VSV-HIV-106は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N4-(G CT1)5-L6-3'を含み、かつすべてのベクター遺伝子(P、M、N、G CT1、およびL)は、VSVインディアナ血清型に由来する。このプラスミドに由来するrVSVINを、図16に描写される実験において用いた。
【0179】
pPBS-VSV-HIV-122は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-P2-M3-N4-(G CT1)5-L6-3'を含み、ベクター遺伝子(P、M、N、およびL)は、VSVインディアナ血清型に由来し、かつベクター遺伝子G CT1はVSV NJ血清型に由来する。このプラスミドに由来するrVSVNJを、図16に描写される実験において用いた。
【0180】
ISFV Gの細胞質尾部の切断の安定化。ISFV GΔCT25遺伝子を含む数々の弱毒化rISFV(例えば、rISFV-HIV-015およびrISFV-HIV-018)を、Vero細胞培養で広範囲に継代して、この弱毒化マーカーの安定性を判定した。10回目の継代の時点で、事実上すべてのrISFVは、細胞質尾部を2個のアミノ酸分延長させて、rISFV GΔCT23遺伝子を本質的に含有した。それによって、試験されたrISFVは、ISFV GΔCT25遺伝子の終止コドンを、アミノ酸に対するコドンに変化させ、次いで2つのコドンさらに下流で代替的なインフレーム終止コドンを用いた。したがって、ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部の2つの操作を、rISFVにおいて弱毒化マーカーISFV GΔCT25を安定させ得るそれらの能力について調べた。
【0181】
A)ISFV GΔCT25を含有する転写カセットに対して、転写(下線を引かれた)および翻訳(太字)の終止シグナルを結び付ける:
【0182】
ISFV GΔCT25の最後のアミノ酸は、アルギニンからバリンに変化する。
【0183】
B)原型的rVSVIN-N4CT1ベクター内に存在しているVSVIN G CT1の3'-NCRを、ISFV GΔCT25発現カセットに対する3'-NCRとして用いる:
【0184】
結果は、手法(B)のみが、Vero細胞培養において、対応するrISFVウイルス(例えば、rISF-HIV-020)の広範囲な継代の間、ISFV GΔCT25弱毒化マーカーを安定させることを示した。
【0185】
手法A-構築
ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部を操作するために、pPBS-ISFV-HIV-018を、MluI/NheI制限酵素を用いて消化し、かつ改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)に由来する対応するベクターフラグメント内に挿入して、pPBS-ISFV-049を生成した。
【0186】
まず、pPBS-ISFV-049に対して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、pPBS-ISFV-051を生成した。加えて、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-031を用いて生成した。
から生成されたオリゴヌクレオチドリンカーとともに、次いで、PCRフラグメント(MluI/BsmBI)をMluI/NheIを介してpPBS-ISFV-049内に挿入して、pPBS-ISFV-056を生成した。pPBS-ISFV-049と比較して、pPBS-ISFV-056におけるISFV GΔCT25の膜貫通領域をコードするヌクレオチド配列を、A/T豊富度を低下させるように沈黙して改変した。PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-056を用いて生成し、かつMluI/BsmBIを介してpPBS-ISFV-051内に挿入して、pPBS-ISFV-059を生成した。
【0187】
MluI/AgeI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-059を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-018に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-021は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-N* 2-P3-M4-G5-L6-3'を含み、ISFV GΔCT25の膜貫通領域に沈黙のヌクレオチド変化を有して、天然配列と比較してA/T豊富度を低下させ、かつISFV GΔCT25の終止コドンは、ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部における転写終止の一部である。
【0188】
手法B-構築
MluI/NheI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-056を消化し、かつ単離されたインサートを、第一の転写カセットからHIV-1 gagを発現する弱毒化rVSVベクター(N4CT1)のアンチゲノム配列を含有する、pPBS-VSV-HIV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-057は、核酸配列5'-(HIV-1 gag)1-VSV P2-VSV M3-VSV N4-ISFV GΔCT255-VSV L6-3'を含み、かつそれによって、VSV G CT1の3'-NCRは、ISFV GΔCT25をコードするオープンリーディングフレームに連結される。
【0189】
PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-057を用いて生成し、かつMluI/BsmBIを介してpPBS-ISFV-051内に挿入して、pPBS-ISFV-058を生成した。
【0190】
最後に、MluI/AgeI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-058を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-018に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-021は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)1-N* 2-P3-M4-G5-L6-3'を含み、ISFV GΔCT25の膜貫通領域に沈黙のヌクレオチド変化を有して、天然配列と比較してA/T豊富度を低下させ、かつISFV GΔCT25-L遺伝子接合部にVSV GCT1の3'-NCRを含む。
【0191】
実施例3
動物実験
一連のマウス実験を実施して、アルファウイルスタンパク質を発現するrISFVベクターを含む免疫原性組成物の相対的な安全性および効力を検討した。ベシクロウイルスおよび関連ウイルスについての公知の神経毒性特性が理由で、マウス頭蓋内(IC)LD50モデルをベクター安全性の一次査定に用いた(Olitsky et al., Journal of Experimental Medicine. 1934, 59:159-71;Frank et al., Am J Vet Res. 1945, Jan:28-38;Sabin et al., Journal of Experimental Medicine. 1937, 66:15-34;Rao et al., Lancet. 2004, 364(9437):869-74)。ストリンジェントなVEEVおよびEEEV曝露(challenge)モデルにおいて、効力を査定した。
【0192】
rISFVベクターの神経毒性。予備実験を実施して、改変されていないrISFV、およびHIV-1 gagを発現する高度に弱毒化された変種(rISFV-N4 GΔCT25 HIVgag1)の神経毒性特性を検討した。以前の実験から、公知のLD50を有するrVSVIN N2CT1ベクターを陽性対照として利用した(Clarke et al., J Virol. 2007, Feb;81(4):2056-64)。10匹の5週齢雌スイスウェブスターマウスの群に、25μLの連続10倍希釈の各ウイルスを脳内(IC)経路を介してIC接種し、かつ動物を21日間の致死率について観察した。PBSを、注射過程に関する対照として用いた(表4)。
【0193】
rISFVベクターを注射された動物において、限られた致死率が観察され、かつその結果としてLD50は決定され得なかった(表4)。対照的に、rVSVIN N2CT1は致死を引き起こし、かつ以前の実験において決定されたものと同程度のLD50(104 pfu)が決定された(表4)。これらのデータは、rISFVが、その改変されていない型で5~10プラーク形成単位(PFU)のLD50を実証したrVSVIN(Clarke et al., J Virol. 2007, Feb;81(4):2056-64)よりも、生得的に神経毒性が低いことを示唆する。
【0194】
(表4)スイスウェブスターマウスにおける、rISFVおよびrVSVINベクターのLD50力価
【0195】
rISFVベクターの防御効力。一連の実験を実施して、アルファウイルス感染および疾患からの防御について、ベクターとしてのrISFVの可能性を検討した。これらの実験に関して、4~6週齢雌CD-1マウスに、50μL投薬用量を用いて、筋肉内経路によって免疫化した。次いで、マウスに、皮下注射で104 PFUのVEEV-ZPCまたはEEEV-FL93のいずれかを曝露した。すべての動物のケアおよび手順は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)ガイドラインに従った。
【0196】
VEEVおよびEEEV曝露からの短期防御。第5のポジションにある、VEEV-ZPCまたはEEEV-FL93のE3~E1をコードするrISFV-N4G3ベクターが、VEEVおよびEEEVの致死性の曝露から防御し得るかどうかを判定するために、CD-1マウスのコホートに108 PFUのベクターで免疫化し、次いで、免疫化の3~4週間後に曝露した(表5)。免疫化の後、rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で免疫化されたマウスでは、中和抗体応答が容易に検出され、一方でrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC)5で免疫化されたマウスでは、中和抗体はほとんど検出されなかった(表6、7)。抗体応答にかかわらず、すべての動物は、致死性のEEEV-FL93およびVEEV-ZPC曝露から防御された(図6および図7)。
【0197】
(表5)VEEV-ZPCおよびEEEV-FL93曝露実験に関する実験デザイン
【0198】
(表6)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0199】
(表7)rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0200】
用量設定および長期免疫の実験。動物に、108または107 PFUのrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5またはrVSVIN N4G(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5のいずれかで免疫化した(表8)。免疫化の後、両方の用量でrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたほとんどの動物において、VEEV中和抗体応答を検出することができた(表9)。rVSVIN N4G(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたすべての動物において、より堅牢な中和抗体応答が検出された(表10)。しかしながら、以前の実験において観察されたように、VEEVに対する中和抗体応答にかかわらず、すべての動物は、後に続く致死性の曝露から防御された(図8)。
【0201】
(表8)用量設定および長期免疫の実験デザイン
【0202】
(表9)rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0203】
(表10)rVSVIN-N4G(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0204】
混成型免疫原性組成物の効力。免疫原性組成物は、1種を上回る種類のアルファウイルスからの防御を提供すべきであるため、実験をデザインして、rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で同時に免疫化されたマウスが、EEEV-FL93およびVEEV-ZPCの両方に対する致死性の曝露から防御され得るかどうかを検討した(表11)。以前の実験にあるように、EEEV-FL93およびVEEV-ZPCの両方に対する中和抗体が、ほぼすべてのマウスにおいて検出され(表12および13)、かつ免疫化されたすべてのマウスは、致死性のEEEV-FL93(図9)またはVEEV-ZPC(図10)の曝露から防御された。これらの結果は、混成型免疫原性組成物が、複数種のアルファウイルスによる致死性の曝露からの防御を提供し得ることを実証している。
【0205】
(表11)混成型免疫化の実験デザイン
*群1の動物は、108 pfuの各ウイルスで免疫化された。
【0206】
(表12)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける、EEEV-FL93に対する中和抗体応答
【0207】
(表13)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける、VEEV-ZPCに対する中和抗体応答
【0208】
実施例4
BALB/cマウスにおける、rVSVおよびrISFVベクターを用いたプライム/ブースト実験PBS-Mu-062
一連のマウス実験を実施して、Balb/cマウスにおいて、HIV Gag単一優性エピトープ(SDE)をコードするrVSVおよびrISFVを用いたプライム/ブーストレジメンを査定した。これらの実験は、2つの実験目的を満たすようにデザインされた:(a)PBS-Mu-062a:マウスにおいて、2種の新たなrISFV-HIV gag SDEベクターの免疫原性を実験し、かつrVSVIN N4CT1Gagとの将来的なプライム/ブースト実験のための好ましい候補を選択すること、および(b)PBS-Mu-062b:rVSVNJ/rVSVINおよびrISFV/rVSVINのプライム/ブースト組み合わせを用いて誘発される免疫応答を比較すること。
【0209】
PBS-Mu-062a:この実験に関して、最も抗原性の高い構築物を、rVSVINに基づくHIV gag発現ベクターとの将来的なプライム/ブースト実験に進展させることを目標にして、rISFVに基づく2種のHIV gag発現ベクター候補の相対的免疫原性を比較した。PBS-Mu-062a実験デザインの概要は、図13に提供されている。この実験に関して、BALB/cマウス(n=5/群)に、筋肉内注射によって107 pfuの図12に概説されるHIV gag発現ベクターで免疫化し、そして10日後に、脾細胞を収集し、かつHIV gag SDEおよびrVSVIN Nペプチドプールに特異的なIFN-γ分泌について、ELISpot解析によって試験した(図14)。この実験において、rISFV-HIV-016(rISFV)による免疫化は、他方のrISFV-HIV gag候補のrISFV-HIV-018(rISFVN*)によって誘発されたHIV gag SDE特異的ELISpot応答(147±32 SFC/106脾細胞)と有意に異ならない応答である、236±74 SFC/106脾細胞という平均HIV gag SDE特異的インターフェロン-γ ELISpot応答をもたらした(図14、左)。重要なことに、公知のH2d制限エピトープにおける一連の変異を有するウイルスNタンパク質をコードするrISFV-HIV-018ベクターは、野生型ウイルスN遺伝子をコードするrISFV-HIV gag候補のrISFV-HIV-016(140±59 SFC/106脾細胞)と比較して、抗ベクターrVSVIN Nペプチドプール特異的ELISpot応答を誘発する傾向の低下を示した(45±15 SFC/106脾細胞)(図14、右)。これらの結果に基づき、後続のrVSV/rISFVプライム/ブースト実験における使用のために、rISFVN*(rISFV-HIV-018)を選出した。
【0210】
PBS-Mu-062b:この実験に関して、rVSVに独占的に基づくベクター対rISFVおよびrVSVに基づくベクターの組み合わせを用いた様々なプライム/ブースト免疫化レジメンについて、相対的免疫原性を比較した。PBS-Mu-062b実験デザインの概要は、図16に提供されている。この実験に関して、BALB/cマウス(n=5/群)に、rVSVIN HIV gag SDE構築物と組み合わせた、筋肉内注射によって107 pfuの図15に概説されるrISFV HIV gag SDE発現ベクターで免疫化した(図12)。マウスを0および4週間のスケジュールで免疫化した。最後の免疫化の1週間後に、脾細胞を収集し、かつHIV gag SDE特異的な(図17)およびrVSVIN Nペプチドプール特異的な(図18)IFN-γ分泌について、ELISpot解析によって試験した。この実験において、rVSVNJ/rVSVINプライム/ブーストレジメンで免疫化されたマウスは、異種rISFVN*/rVSVINプライム/ブーストレジメンで免疫化されたマウスに見られる応答(4,758±183 SFC/106脾細胞)よりも有意に低い(p<0.05)HIV gag SDE特異的ELISpot応答(2,330±412 SFC/106脾細胞)を実証した(図17)。rVSVNJ/rVSVIN免疫化マウスと比較した、HIV gag SDE特異的IFN-γ ELISpot応答のこの有意な2倍の増加は、異種レジメンの順序を切り替えることによって(rVSVIN/rISFVN*;5,870±1,258 SFC/106脾細胞)、またはrISFVベクターにおける野生型ウイルスN遺伝子の存在によって(rISFV/rVSVIN;5,061±890 SFC/106脾細胞)、影響を受けなかった(図17)。図18に示されるように、異種rISFVN*/rVSVINおよびrVSVIN/rISFVN*プライム/ブーストレジメンは、rVSVNJ/rVSVIN(2,794±456 SFC/106脾細胞)またはrISFV/rVSVIN(1,459±238 SFC/106脾細胞)レジメンと比較して、有意により低い(p<0.05)平均rVSVIN Nペプチドプール特異的IFN-γ ELISpot応答を誘発した(それぞれ、451±67および408±55 SFC/106脾細胞)。
【0211】
上述の実験により、異種rISFV/rVSVINおよびrVSVIN/rISFVプライム/ブースト免疫化レジメンは、マウスにおいて、rVSVNJ/rVSVIN免疫化レジメンが行ったよりも有意に高いIFN-γ ELISpot応答を誘発したことがはっきりと実証されている。さらに、rISFV N*変異は、rVSV Nに対する交差反応性応答を低下させた、とはいえ、これはHIV gag SDE特異的IFN-γ ELISpot応答の増加をもたらさなかった。
【0212】
実施例5
A129マウスにおける、チクングニアウイルス糖タンパク質を発現するrISFVベクターの実験
チクングニアウイルス(CHIKV)は、トガウイルス(Togaviridae)科におけるアルファウイルス属の蚊媒介性ウイルスである。ヒトにおけるCHIKV感染は、高熱、頭痛、嘔吐、皮膚発疹、および痛みを伴う関節炎をもたらす。数ヶ月間または数年間さえ続き得る関節炎(Powers and Logue. J. Gen. Virol. 2007, 88:2363-2377)は、一般的に自己限定的なCHIKV感染の証である。しかしながら、150万人を超える人々に影響を及ぼしたインド亜大陸およびインド洋諸島における近年の蔓延において、一部の人々は、脳炎、出血性疾患、および死を含めたより重度の症状を提示した(Schwartz and Albert. Nature Rev. Microbiol. 2010, 8:491-500)。カリブ海諸島および米州へのCHIKVのより近年のかつ急速な広がり(Powers. J. Gen. Virol. 2015, 96:1-5)は、CHIKVに対する免疫原性組成物のさらにより差し迫った必要性を生み出している。
【0213】
CHIKVは、4種の非構造タンパク質(nsP 1~4)および5種の構造タンパク質(C、E3-E2-6K-E1)をコードする、単一プラスセンスの11.8kb RNAゲノムを有する。構造タンパク質は前駆体から切断されて、カプシドおよびエンベロープ糖タンパク質を生成する(Strauss and Strauss. Microbiol. Rev. 1994, 58:491-562)。E2およびE1タンパク質は安定したヘテロ二量体を形成し、かつE2-E1ヘテロ二量体は相互作用して、ウイルス表面に見出されるスパイクを形成する。E2は、E2およびE3に切断されるPE2またはp62と称される前駆体として形成される。E2とE1との間のリンカーとして産生される、6Kと称される小さな疎水性ペプチドが存在する。E3-E2-6K-E1ポリタンパク質がプロセシングされた場合、E2およびE1糖タンパク質が産生され、それは次いで、E2-E1糖タンパク質ヘテロ二量体を形成する(Strauss and Strauss, pp.497-499)。
【0214】
E2-E1糖タンパク質を発現する弱毒化rISFVベクターを構築するための出発点は、John Rose博士(イェール大学)から受け取ったpVSVΔG-CHIKVと称されるプラスミドであった(Chattopadhyay et al. J. Virol. 2013, 87:395-402)。このプラスミドは、rVSVゲノムcDNA内に、VSV G遺伝子の代わりに、最適化されたチクングニアE3-E2-6K-E1遺伝子配列(Genscript, Inc.)を含有した。CHIKV-E3-E2-6K-E1配列を、以下のプライマーを用いて、PCRによって増幅した。
プライマーアルファ_001:
(XhoI部位およびKozak配列を含有する)(SEQ ID NO:69)
プライマーアルファ_002:61/(NotI部位およびNheI部位を含有する)(SEQ ID NO:70)
【0215】
結果として生じるPCR産物を、Xho/NotI制限酵素で消化し、かつrVSVN4CT1ベクターcDNA内にクローニングした。次いで、このベクターcDNAを増幅しかつXhoI/NotI制限酵素で消化し、そしてCHIKV-E3-E2-6K-E1タンパク質をコードする放出されたインサートを、XhoI/NotI消化されたpPBS-ISFV-HIV-015(上記で実施例2に記載される)内にクローニングした。次いで、CHIKV-E3-E2-6K-E1タンパク質をコードする組換えISFV(rISFV)を、上記で実施例1に記載されるように、このpDNAからレスキューした。結果は、rISFVゲノムにおける第1のポジションからCHIKV-GPを発現する、pPBS-ISF-アルファ-003ウイルスと称されるrISFV-N4 G-CTΔ25(CHIKV GP)1であり、式中、CHIKV-GPはCHIKV-E3-E2-6K-E1を表す。
【0216】
レスキューされたウイルスをプラーク精製し、かつVero E6細胞単層(ATCC CCL-81)上で増幅した。動物実験のために、ウイルスベクターを、10%スクロースクッションを通した遠心分離によって、感染したBHK-21(ATCC CCL-10)細胞上清から精製した。精製されたウイルスをPBS、pH7.0中に再懸濁し、スクロースホスフェート(SP)安定剤(7mM K2HPO4、4mM KH2PO4、218mMスクロース)と混合し、エタノール/ドライアイス中で即時冷凍し、かつ使用するまで(until ready for use)-80℃で保管した。
【0217】
実験を実施して、第1のポジションからCHIKV-GPを発現する、上記で記載されるrISFV-N4G-CTΔ25 (CHIKV GP)1ベクターを含む免疫原性組成物の安全性および効力を検討した。1型インターフェロンに対する受容体を欠如した11~21と番号付けされたマウス(A129マウス)を、1×107 pfuのrISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1でそれらの左足蹠において免疫化した。右足蹠は、対照として働くために注射されなかった。1~10と番号付けされたA129マウスは、さらなる対照として免疫化されなかった。全21匹のマウスに、10μl用量の1×104 pfuのCHIKVのレユニオン単離株を左足蹠において注射し、かつ腫れを測定した。右足蹠の高さも、内部対照として測定した。左足の足蹠の高さを、注射の日には測らなかった。以前のデータにより、左および右の足のサイズは同一であることが示された。
【0218】
図19に示されるように、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたマウス11~21は、曝露後にそれらの体重を維持し、一方で免疫化されなかったマウスは、曝露後4日目に至るまで重量を喪失した。
【0219】
図20に示されるように、免疫化されたマウス11~21は、3日目までにわずかな左足蹠の腫れを有し、それは5日目までに解消した。対照的に、免疫化されなかったマウス1~10は、左足蹠の腫れを有し、それは4日目に至るまで増加し続けた。両群のマウスは、右足蹠の腫れを有しなかった。
【0220】
図21に示されるように、免疫化されたマウス11~21は、1または2日目に血中におけるウイルス血症なし[100 pfu/mlの検出の限度を下回る]を実証した。対照的に、免疫化されなかったマウス1~10は、1日目にウイルス血症の兆候を有し、それは2日までにほぼ1×107 pfu/mlまで増加した。
【0221】
3日目までに、免疫化されなかったすべてのマウスは、足蹠の腫れ、かき乱された毛皮、および不活発状態を含めた、病気の兆候を示した。対照的に、免疫化されたすべてのマウスは、外観および行動において正常であった。図22に示されるように、5日目までに、免疫化されなかった全10匹のマウスは、病気に屈した。対照的に、免疫化された全11匹のマウスは、病気の兆候もなく生き残った。
【0222】
表14(太字の数字は陽性結果を表す)に示される、免疫化後1日目、7日目、および21日目に採取された血清からのプラーク減数中和力価(PRNT80)によって判定されるように、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたすべてのマウスは、21日目までに血清転換した。
【0223】
(表14)チクングニア糖タンパク質を発現するrISFVで免疫化されたマウスにおける、CHIKVに対する中和抗体応答
図1
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【配列表】
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