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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】空中搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240314BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240314BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240314BHJP
   B64U 40/20 20230101ALI20240314BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J5/00 Z
B25J11/00 D
B25J19/00 D
B64U40/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036346
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137901
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】593058190
【氏名又は名称】ダブル技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】和田 博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌彦
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008320(JP,A)
【文献】特開昭63-272476(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087101(WO,A1)
【文献】特許第6591098(JP,B1)
【文献】特開2000-313590(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1796541(KR,B1)
【文献】特開平03-036191(JP,A)
【文献】特開2015-009287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0050750(US,A1)
【文献】特開2018-034284(JP,A)
【文献】特開平10-071999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B64U 40/00 - 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドを備えた空中搬送装置において、前記ロボットハンドは空中搬送装置本体に対し水平軸を介して支持され、この水平軸は第1のモータによって回動せしめられ、また前記水平軸には直交する方向にカンターバランス装置が取付けられ、このカンターバランス装置はウェイトとこのウェイトを前記水平軸と直交する方向に移動せしめる第2のモータを備え、この第2のモータはロボットハンドを水平軸廻りに回動することで生じる第1のモータに係る負荷トルクがゼロになる位置にウェイトを移動させるように駆動が制御され、また前記空中搬送装置本体は4つのフライホイールを備え、これら4つのフライホイールは交差干渉を防止すべく上下にずれて配置された2本の軸に対向配置され、対向配置された2つのフライホイールの一方はモータを兼用し、他方は兼用しないことを特徴とする空中搬送装置
【請求項2】
請求項1に記載の空中搬送装置において、前記空中搬送装置本体はワイヤーによって支持されワイヤーを巻取り及び繰出すことで空間を移動可能とされたことを特徴とする空中搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空中搬送装置において、前記空中搬送装置本体はドローンであることを特徴とする空中搬送装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を空中搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫内や工場内などにおける荷物の搬送手段として、現在ではフォークリフト、搬送コンベア或いは台車が一般的に用いられているが、三次元的な空間を利用した搬送手段としてドローンも提案されている。
【0003】
搬送手段としてのドローンには機体の割に重い荷物を搬送することができず、また搭載バッテリーの寿命、搬送中の騒音、更には墜落の危険性などの問題がある。
【0004】
そこで、本発明者は特許文献1として、ワイヤーを用いた空中搬送手段を提案した。この特許文献1では、例えば搬送空間の4箇所に支柱を立設し、この支柱の頂点から搬送空間の中央に向かってワイヤーを伸ばし、これらワイヤーの先端にロボットハンドを連結し、またワイヤーを巻取り及び繰出し可能とし、特に前記ワイヤーのうち少なくとも1本はロボットハンドの移動用兼ロボットハンドの開閉用として機能し、他のワイヤーはロボットハンドの移動用として機能するように構成した内容が開示されている。
【0005】
ワイヤーを用いた空中搬送手段は特許文献1の出願前にも提案されており、特許文献2には、気球の下に重量物を吊り下げるフックを取付け、このフックに4か所に設置した巻取機から繰り出したワイヤーの先端を連結し、ワイヤーの繰出しと巻取りをコントロールすることで重量物を吊り下げた状態でフックが空中を移動する内容が開示され、また特許文献3には固定翼を備えた飛行体に回転半径の小さな旋回動を行わせ、飛行体から垂下するワイヤーの下端に取付けたフックに重量物を引っ掛け、飛行体に上昇旋回動を行わせることで重量物を持ち上げて空中移動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6591098号公報
【文献】特開2001-354196号公報
【文献】特開2006-290014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワイヤーの先端にロボットハンドを連結した構成の搬送手段にあっては、特許文献1に開示されたものを含め、荷物を把持した際にロボットハンド自体が空中に浮いているため、姿勢が不安定になることである。
【0008】
例えば、ロボットハンドにて把持する物が液体を入れた容器である場合には、液体がこぼれたり、また把持する物の形状が長尺或いは変則的な形状の場合はバランスが崩れて他の物にぶつかるなどの問題が生じる。更に縦向きに置かれていた物を横向きにした状態で移動で搬送することを従来の機構では達成できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る空中搬送装置は、ロボットハンドを備え、このロボットハンドは空中搬送装置本体に対し水平軸を介して支持され、この水平軸は第1のモータによって回動せしめられ、また前記水平軸には直交する方向にカンターバランス装置が取付けられ、このカンターバランス装置はウェイトとこのウェイトを前記水平軸と直交する方向に移動せしめる第2のモータを備え、この第2のモータはロボットハンドを水平軸廻りに回動することで生じる第1のモータに係る負荷トルクがゼロになる位置にウェイトを移動させるように駆動が制御される構成である。
【0010】
本発明に係る空中搬送装置はワイヤーによって支持されるもの或いはドローンの何れにも適用できる。また、空中での姿勢維持用のフライホイールを備えることも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空中搬送装置によれば、ロボットハンドによって被搬送物を把持したり持ち上げた際の空中搬送装置の傾きや振れを最小限に抑えることができる。
その結果、安定して被搬送物を搬送でき、また被搬送物の破損や落下も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る空中搬送装置を適用したシステムの一例を示す全体図
図2】同空中搬送システムの平面図
図3】同空中搬送システムの側面図
図4】本発明に係る空中搬送装置の全体斜視図
図5図5の要部拡大図
図6】別実施例に係る空中搬送装置のロボットハンドを省略した空中搬送装置本体の斜視図
図7図6に示した空中搬送装置本体のカウンターバランス装置の動きを説明した図
図8】同空中搬送装置本体を斜め上方から見た図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように空中搬送システムは、搬送空間の4隅に支柱1を立設し、各支柱1の基部にはステッピングモータにてドラム(ウィンチ)が回転する巻取り・繰出し装置2が設けられ、各ドラムにはステンレス製ワイヤー3、4、5、6が巻回され、各ワイヤーは各支柱1の上端部に設けられたプーリ7を介して搬送空間の中央に向かって伸びている。
【0014】
空中搬送装置を移動させるのに必要なワイヤーの本数は2本以上であるので、4本のうち1本は光ファイバーケーブルとし、空中搬送装置にカメラを搭載した際の信号の伝送に用いることもできる。また、ワイヤーを二重と芯の部分を電力供給用とすることもできる。このようにすることで、バッテリーを搭載せずに済み空中搬送装置の軽量化が図れる。
【0015】
前記プーリ7の上方にはレーザ光の発信及び受信を行う位置検出装置8が取り付けられ、前記ワイヤー3、4、5、6の先端に連結された空中搬送装置10のミラー11からの反射光により空中搬送装置10の位置をリアルタイムで検出するようにしている。
【0016】
空中搬送装置10は前記ワイヤーに支持される装置本体12と、この装置本体12に連結部13を介して着脱自在に支持されるロボットハンド14からなる。被搬送物の形状や重量に合わせてロボットハンド14を交換可能とすることで汎用性が高まる。
【0017】
ワイヤー3、4、5、6はプーリ15にガイドされ、ブレーキ部材にてワイヤーをプーリ15に押し付けることでロックされる。ロック機構としてはブレーキ機構以外の構造であってもよい。
【0018】
ワイヤー3、4、5、6を繰り出したり、巻き取ることで空中搬送装置10を移動させる際は、ブレーキを効かせた状態で行い、目的の位置まで移動した時点で例えばワイヤー5,6のブレーキを解除する。ワイヤー5,6のブレーキを解除してもワイヤー3、4はロボットハンド14に結合しているためロボットハンド14の位置は変わらない。
【0019】
また、装置本体12の枠状フレームには4つのフライホイール装置16が対向して取り付けられ、移動する際の空中搬送装置10の急激な姿勢変化をジャイロの原理で緩和する構成としている。このフライホイール装置16を設けることでワイヤー2本でも空中搬送装置10の姿勢を維持できる。
【0020】
ロボットハンド14は3本のフィンガー17を備え、外部からの信号或いは前記ワイヤーのうちの1本を操作することで開閉動作を行う。また、ロボットハンド14は水平軸を中心として上下方向に回動可能とされ、更に上下方向に回動した際の振れが小さくなるようにカウンターバランス装置を備えている。カウンターバランス装置の詳細は図6図8の別実施例の空中搬送装置10において説明する。
【0021】
図6図8で示した別実施例に係る空中搬送装置10では、図面を見やすくするためロボットハンド14は省略している。
【0022】
空中搬送装置10の装置本体12の上部にはバッテリーケース18が配置され、このバッテリーケース18の下方にフライホイール装置16が設けられている。前記実施例では4つのフライホイールを対向配置しているが、この実施例では対向するフライホイールの一方はモータを兼用している。このようにすることでモータの個数が2つになり部品点数の削減が図れる。但し隣接するフライホイール(モータ)の軸との交差干渉するのを防止するため、隣接するフライホイール(モータ)同士の軸を上下方向にずらしている。
【0023】
フライホイール装置16の下方には二股状の支持ブラケット19が設けられ、この支持ブラケット19に左右一対の水平軸20が回動自在に支持されている。一対の水平軸20のそれぞれにカンターバランス装置21が取付けられている。
【0024】
二股状の支持ブラケット19の内側に突出する水平軸20間には支持プレート22が取り付けられ、この支持プレート22は水平軸20と一体的に回動する。
支持プレート22の中央には軸23を介して円盤24が回転自在に取り付けられ、この円盤24の下面にはロボットハンド(この図面では図示していない)を着脱自在に保持するチャック25が設けられている。
【0025】
二股状の支持ブラケット19から外側に突出する一方の水平軸20にはプーリ26が固着され支持ブラケット19に取り付けた第1のモータ27の駆動力をタイミングベルト28を介して水平軸20に伝達し、水平軸20とともにカンターバランス装置21を水平軸20廻りに回動せしめる構造になっている。ここで、他方の水平軸20にはプーリ26を固着せずフリーの状態になっているが、左右一対の水平軸20は支持プレート22を介して連結しているため、左右のカンターバランス装置21は同じ動きをする。
【0026】
カンターバランス装置21は図7に示すように第2のモータ29と、この第2のモータ29によって回転せしめられるスクリュー30と、このスクリュー30に螺合し、スクリュー30の回転によって筒体内を直線的に進退動するウェイト31とからなる。
【0027】
また前記支持プレート22には第3のモータ32が取り付けられ、この第3のモータ32の駆動力はタイミングベルト33及びプーリ34を介して前記円盤24に伝達され、チャック25を介して円盤24に支持されているロボットハンドを軸23廻りに回動せしめる。
【0028】
したがって、ロボットハンドは第1のモータ27によって水平軸20廻りに回動し、第3のモータ29によって軸23廻りに回動し、全体としてこれらが合成された動きをなす。
【0029】
例えば、床に置いてある被搬送物を空中搬送装置10の垂直状態にあるロボットハンド14でつかみ、そのままの状態で空中搬送装置10が上昇し所定の場所まで移動してロボットハンド14の把持状態を解除するのが最も単純な搬送方法である。
【0030】
一方、被搬送物の形状或いは障害物を避けるため、ロボットハンド14で掴んだ状態から横向き或いはある程度角度を持たせて搬送することが考えられる。この場合には第1のモータ27を駆動してロボットハンド14を水平軸20廻りに回動させることになる。
【0031】
ロボットハンド14が水平軸20廻りに回動すると空中搬送装置10全体の重心位置が変化し空中搬送装置10が大きく振れ、安定した移動ができなくなる。そこで、本発明にあっては、第2のモータ29を駆動し、空中搬送装置10全体のバランスが狂わないようにする。具体的には、ロボットハンド14が斜めになることで生じる第1のモータ27に作用する負荷トルクがゼロになる位置にウェイト31がくるように第2のモータ29を駆動しウェイト31を移動する。
尚、第1のモータ27に作用する負荷トルクは第1のモータ27の軸に取り付けたセンサにて測定する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上の実施例ではワイヤーによって空中を移動する搬送装置を示したが、本発明の主要部分であるロボットハンドの傾きによるバランスをカンターバランス装置で修正する構成は、ドローンによる搬送にも応用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…支柱、2…巻取り・繰出し装置、3、4,5、6…ワイヤー、7…プーリ、8…位置検出装置、10…空中搬送装置、11…ミラー、12…空中搬送装置の装置本体、13…連結部、14…ロボットハンド、15…プーリ、16…フライホイール装置、17…フィンガー、18…バッテリーケース、19…二股状の支持ブラケット、20…水平軸、21…カンターバランス装置、22…支持プレート、23…軸、24…円盤、25…チャック、26…プーリ、27…第1のモータ、28…タイミングベルト、29…第2のモータ、30…スクリュー、31…ウェイト、32…第3のモータ、33…タイミングベルト、34…プーリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8