(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240314BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240314BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240314BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240314BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240314BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20240314BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240314BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/291
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M10/647
(21)【出願番号】P 2020036621
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】田鍬 幸司
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0326565(US,A1)
【文献】国際公開第2013/002090(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165493(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109411667(CN,A)
【文献】特開2018-170211(JP,A)
【文献】特開2014-086342(JP,A)
【文献】特開2019-192486(JP,A)
【文献】特開2019-029086(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173860(WO,A1)
【文献】特開2019-106319(JP,A)
【文献】特開2018-060684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池が配列された電池積層体と、
前記電池積層体を収容するケースと、
前記電池積層体および前記ケースの隙間に充填される熱伝導性充填剤で構成される熱伝導層と、
前記電池積層体および前記ケースの間に配置されて前記電池積層体を挟む一対の位置決め板であって、それぞれ前記熱伝導性充填剤が流入する少なくとも1つの孔部を有する一対の位置決め板と、
を備える電池パック。
【請求項2】
前記一対の位置決め板は、前記複数の電池が配列される第1方向と交わる第2方向で前記電池積層体を挟む請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記ケースは、前記位置決め板が嵌め込まれる第1凹部を側面に有する請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記ケースは、前記電池積層体の下面と対向する底板を有し、
前記底板は、前記熱伝導性充填剤が溜まる第2凹部を有し、
前記第2凹部における前記電池積層体の下面側を向く開口は、前記電池積層体の下面よりも小さい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記ケースは、冷却液が流れる中空部を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池積層体をケースに収容した電池パックが知られている。このような電池パックに関して、例えば特許文献1には、複数のバッテリセルと、複数のバッテリセルを格納するモジュール筐体と、バッテリセルとモジュール筐体の間に充填されてバッテリセルの発熱をモジュール筐体に伝える熱伝導性充填剤と、を備えるバッテリモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の電池パックでは、熱伝導性充填剤を充填する隙間を電池積層体とケースとの間に設ける必要がある。しかしながら、電池積層体とケースとの間に隙間があると、電池積層体の位置がケース内で偏る場合がある。電池積層体が偏ると隙間の厚みが不均一となり、電池積層体とケースとの間に介在する熱伝導性充填剤の量に場所による差が生じて、電池積層体の冷却にばらつきが生じるおそれがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、電池積層体をより均一に冷却する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、電池パックである。この電池パックは、複数の電池が配列された電池積層体と、電池積層体を収容するケースと、電池積層体およびケースの隙間に充填される熱伝導性充填剤で構成される熱伝導層と、電池積層体およびケースの間に配置されて電池積層体を挟む一対の位置決め板であって、それぞれ熱伝導性充填剤が流入する少なくとも1つの孔部を有する一対の位置決め板と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池積層体をより均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電池パックの斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、ケースの破線領域の拡大図である。
図4(B)は、ケースに位置決め板を組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、電池パックの組み立て工程を示す図である。
【
図8】
図8(A)および
図8(B)は、電池パックの組み立て工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る電池パックの斜視図である。
図2は、ケースおよび位置決め板の斜視図である。
図1および
図2では、ケースの内部を透視した様子を図示している。電池パック1は、電池積層体2と、ケース4と、熱伝導層6と、一対の位置決め板8と、を備える。
【0012】
電池積層体2は、複数の電池10が配列された構造を有する。各電池10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。各電池10はいわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶12を有する。外装缶12の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶12に電極体14(
図8(B)参照)や電解液等が収容される。外装缶12の開口には、開口を塞ぐ略長方形状の封口板16が嵌め合わされる。
【0013】
封口板16には、一対の出力端子18が配置される。具体的には、長手方向の一端寄りに正極端子18aが配置され、他端寄りに負極端子18bが配置される。以下では、一対の出力端子18の極性を区別する必要がない場合、正極端子18aと負極端子18bとをまとめて出力端子18と称する。
【0014】
外装缶12、封口板16および出力端子18は導電体であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。外装缶12と封口板16とは、例えばレーザー溶接により接合される。各出力端子18は、封口板16に形成された貫通孔に挿通される。各出力端子18と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材が介在する。外装缶12は、シュリンクチューブ等の図示しない絶縁フィルムで被覆されてもよい。また、外装缶12および封口板16は、絶縁性の樹脂で構成されてもよい。
【0015】
各電池10は、封口板16に弁部20を有する。弁部20は、封口板16における一対の出力端子18の間に配置される。弁部20は、電池10の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、電池10の内部のガスを放出できるように構成される。弁部20は、例えば、封口板16の一部に設けられる他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、電池10の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで弁部20が開弁する。
【0016】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板16を電池10の上面、封口板16と対向する外装缶12の底面を電池10の下面とする。また、電池10は、上面と下面をつなぐ4つの側面を有する。4つの側面のうち2つは、封口板16の対向する2つの長辺に接続される一対の長側面である。各長側面は、電池10が有する面のうち面積の最も大きい面、すなわち主表面である。2つの長側面を除いた残り2つの側面は、封口板16の短辺に接続される一対の短側面である。
【0017】
また、便宜上、電池積層体2において電池10の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池10の下面側の面を電池積層体2の下面とし、各電池10の短側面が集合した面を電池積層体2の長側面とし、電池10の長側面側の面を電池積層体2の短側面とする。電池積層体2の長側面は第1方向Xおよび第3方向Zに広がり、電池積層体2の短側面は第2方向Yおよび第3方向Zに広がる。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本開示において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0018】
複数の電池10は、隣り合う電池10の主表面どうしが対向するようにして所定の間隔で配列される。本実施の形態では、電池10は水平方向に配列されている。以下では適宜、電池10が配列される方向を第1方向Xとし、第1方向Xと交わる水平方向を第2方向Yとし、第1方向Xおよび第2方向Yと交わる鉛直方向を第3方向Zとする。本実施の形態では、第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは互いに直交する。
【0019】
各電池10は、出力端子18が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池10は、出力端子18が鉛直方向上方を向くように配置される。また、各電池10は、隣接する電池10を直列に接続する場合、一方の電池10の正極端子18aと他方の電池10の負極端子18bとが隣り合うように配列される。また、隣接する電池10を並列に接続する場合、一方の電池10の正極端子18aと他方の電池10の正極端子18aとが隣り合うように配列される。
【0020】
隣接する2つの電池10の間には、図示しないセパレータが配置される。これにより、当該2つの電池10間が電気的に絶縁される。セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂シートからなる。セパレータを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂が例示される。
【0021】
複数の電池10は、第1方向Xに延びる図示しない一対の拘束部材によって第1方向Xに拘束される。拘束部材は、バインドバーとも呼ばれ、第1方向Xに長い長尺状の部材である。本実施の形態では、第2方向Yに一対の拘束部材が配列される。各拘束部材は、例えば鉄やステンレス鋼等の金属で構成される。
【0022】
複数の電池10は、複数のセパレータと交互に配列された状態で、図示しない一対のエンドプレートで第1方向Xに挟まれる。一対のエンドプレートは、第1方向Xにおける両端に位置する電池10とセパレータを介して隣り合う。一対の拘束部材は、複数の電池10、複数のセパレータおよび一対のエンドプレートを第2方向Yに挟むように配置され、各拘束部材の両端が一対のエンドプレートに固定される。例えば、拘束部材は第1方向Xの両端に、エンドプレートの主表面と重なる折曲部を有し、この折曲部がエンドプレートにねじ止め等により固定される。複数の電池10は、一対の拘束部材によって第1方向Xに拘束されて、第1方向Xに位置決めされる。
【0023】
隣り合う電池10の出力端子18どうしは、図示しないバスバーによって電気的に接続される。バスバーは、銅やアルミニウム等の金属で構成される略帯状の部材である。バスバーの一方の端部は、隣接する2つの電池10のうち一方の電池10の正極端子18aに接続され、他方の端部は他方の電池10の負極端子18bに接続される。出力端子18とバスバーとは、例えばレーザー溶接等によって接合される。なお、バスバーは、隣接する複数個の電池10における同極性の出力端子18どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0024】
電池積層体2の上面は、図示しないカバープレートで覆われる。カバープレートで電池積層体2の上面を覆うことで、出力端子18やバスバー等への結露水や塵埃等の接触を抑制することができる。
【0025】
電池積層体2は、下面がケース4側を向くように姿勢が定められて、ケース4に挿入される。ケース4は、第1方向Xに長い矩形状の筐体であり、上面に開口22を有する。この開口22を介して、電池積層体2、熱伝導層6および一対の位置決め板8がケース4に収容される。開口22には図示しない上蓋が嵌め合わされ、これにより開口22が塞がれる。ケース4は、アルミニウム等の熱伝導性の高い材料で構成される。なお、本実施の形態では、電池積層体2の上面を絶縁する目的で上蓋を開口22に嵌め合わせているが、特にこの構成に限定されず、上蓋以外の構成で絶縁を図ってもよい。例えば、ケース4に電池積層体2等を配置した状態でケース4内に絶縁樹脂を充填する等によっても、電池積層体2の絶縁を図ることができる。
【0026】
ケース4は、電池積層体2の2つの長側面および2つの短側面のそれぞれと対向する4つの側板4aと、電池積層体2の下面と対向する底板4bと、を有する。電池積層体2の各側面と各側板4aとの間には、熱伝導層6が介在する。熱伝導層6は、熱伝導性充填剤6a(
図7(B)、
図9等参照)で構成される。電池積層体2の各側面とケース4の各側板4aとの間に隙間が設けられ、この隙間に熱伝導性充填剤6aが充填されることで熱伝導層6が得られる。
【0027】
熱伝導層6を構成する熱伝導性充填剤6aとしては、例えば、高熱伝導性シリコーン系接着剤等の熱伝導接着剤が例示される。熱伝導接着剤は、熱伝導性に優れ、加熱によって固着する接着剤である。熱伝導層6が電池積層体2とケース4との間に介在することで、電池積層体2からケース4への熱伝導を促進しながら、電池積層体2をケース4に固定することができる。なお、熱伝導性充填剤6aとしては、空気中に暴露されることで自然に硬化する常温湿気硬化型の熱伝導接着剤を使用することもできる。
【0028】
また、電池積層体2の側面は、電池10の寸法公差や位置公差によって、必ずしも平坦ではない。このため、電池積層体2をケース4に収容した状態で、一部の電池10の側面が側板4aに接触しない場合がある。これに対し、電池積層体2とケース4との隙間に熱伝導性充填剤6aを充填して熱伝導層6を設けることで、電池積層体2の側面の凹凸を熱伝導層6で吸収して、各電池10とケース4との間の熱伝導を均一化することができる。
【0029】
また、底板4bは、熱伝導性充填剤6aが溜まる第2凹部24を有する。したがって、電池積層体2の下面と底板4bとの間にも熱伝導層6が介在する。第2凹部24における電池積層体2の下面側を向く開口26は、電池積層体2の下面よりも小さい。本実施の形態では、第1方向Xにおいて、開口26の寸法が電池積層体2の下面の寸法よりも小さくなっている。これにより、電池積層体2が第2凹部24内に入り込むことを抑制でき、電池積層体2の下面と底板4bとの間により確実に熱伝導層6を介在させることができる。この結果、電池積層体2をより均一に冷却することができる。
【0030】
ケース4に収容された電池積層体2は、電池積層体2およびケース4の間に配置される一対の位置決め板8によって挟まれる。位置決め板8は、好ましくはポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の絶縁性材料で構成される。また、位置決め板8としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属の表面に絶縁処理が施されたものも採用することができる。金属表面の絶縁処理としては、絶縁フィルムの貼り付け等が挙げられる。本実施の形態の一対の位置決め板8は、複数の電池10が配列される第1方向Xと交わる第2方向Yで電池積層体2を挟む。各位置決め板8は、第1方向Xで電池積層体2の一端側から他端側にかけて延在し、各電池の短側面、言い換えれば電池積層体2の長側面と対向する。
【0031】
一対の位置決め板8は、第2方向Yにおける互いの距離が電池積層体2の第2方向Yの寸法と略同一となるように設置される。これにより、一対の位置決め板8によって電池積層体2が第2方向Yに位置決めされる。電池積層体2は、第2方向Yにおいてケース4の略中央に配置される。また、各位置決め板8の厚みは、電池積層体2の長側面と側板4aとの隙間の寸法よりも小さい。したがって、位置決め板8は、熱伝導層6に埋め込まれている。
【0032】
図3は、位置決め板8の一部分の拡大図である。
図3に示すように、各位置決め板8は、熱伝導性充填剤6aが流入する少なくとも1つの孔部28を有する。本実施の形態の位置決め板8は、複数の孔部28を有する。各孔部28は、電池積層体2とケース4とが並ぶ第2方向Yに位置決め板8を貫通している。各孔部28に熱伝導性充填剤6aが流入することで、熱伝導層6で構成される熱伝導経路を電池積層体2からケース4にかけて延在させることができる。
【0033】
本実施の形態では、複数の孔部28はそれぞれ第3方向Zに長い略直線状であり、第1方向Xに所定の間隔をあけて配列されている。複数の孔部28は、第2方向Yから見て各電池10の短側面と重なる領域8aにおいて、隣り合う電池10の間の領域8b、言い換えればセパレータと重なる領域8bに比べて密に配置される。一方、領域8bでは疎に配置されるか、あるいは配置されない。これにより、熱伝導層6を介した電池積層体2とケース4との間の熱伝導を確保しながら、位置決め板8の強度を高めることができる。なお、電池積層体2を位置決めできさえすれば、位置決め板8の第3方向Zの寸法は特に限定されない。
【0034】
図4(A)は、ケース4の破線領域Rの拡大図である。
図4(B)は、ケース4に位置決め板8を組み付ける様子を示す斜視図である。
図4(A)に示すように、ケース4は、位置決め板8が嵌め込まれる第1凹部30を側面に有する。本実施の形態では、各位置決め板8が第1方向Xに延在しているため、第1方向Xで対向する2つの側板4aの内側面に第1凹部30が設けられている。したがって、第3方向Zから見て、ケース4の四隅に第1凹部30が設けられている。各第1凹部30は、第3方向Zにおいて側板4aの上端から下端にかけて延在するスリット状である。
【0035】
図4(B)に示すように、各位置決め板8は、第1方向Xの両端部が第1凹部30と重なるように位置合わせされて、開口22を介して上方からケース4に挿入される。各位置決め板8は、第1方向Xの端部が第1凹部30内をスライドしながらケース4内に進入し、底板4bに突き当たって止まる。各位置決め板8は、両端部が第1凹部30で支持されることで、ケース4内に位置決めされる。
【0036】
図5は、ケース4の内部構造を示す図である。
図6は、冷却液の流れを説明するための図である。
図5に示すように、ケース4は、冷却液Wが流れる中空部32を有する。つまり、各側板4aおよび底板4bは中空であり、その内部を冷却液Wが流れることができる。冷却液Wとしては、水やロング・ライフ・クーラント等が例示される。典型的なロング・ライフ・クーラントとしては、エチレングリコールが挙げられる。
【0037】
図5および
図6に示すように、第1方向Xで対向する2つの側板4aのうち、一方の側板4aには流入管34が接続され、他方の側板4aには流出管36が接続される。流入管34が接続される側板4aは、冷却液Wの流れの上流側の側板4aとなり、流出管36が接続される側板4aは、冷却液Wの流れの下流側の側板4aとなる。冷却液Wは、流入管34から上流側の側板4aの中空部32に流入する。上流側の側板4a内に流入した冷却液Wは、底板4bの中空部32と、第2方向Yで対向する(したがって第1方向Xに延在する)2つの側板4aの各中空部32とを流れて、下流側の側板4a内に流入する。そして、下流側の側板4aの中空部32から流出管36に排出される。ケース4内に冷却液Wを流通させることで、電池積層体2の冷却効率をより高めることができる。
【0038】
図7(A)および
図7(B)、
図8(A)および
図8(B)ならびに
図9は、電池パック1の組み立て工程を示す図である。なお、
図8(B)および
図9では、電池10の内部構造を簡略化して図示している。
【0039】
まず、
図7(A)に示すように、ケース4を用意する。次に、
図7(B)に示すように、第2凹部24に熱伝導性充填剤6aを注入する。続いて、
図8(A)に示すように、ケース4に一対の位置決め板8を差し込む。各位置決め板8は、第1方向Xの両端部が第1凹部30に嵌合することでケース4に支持される。
【0040】
続いて、
図8(B)に示すように、予め組み立てておいた電池積層体2を下面からケース4に挿入する。この状態で、電池積層体2の下面は、第2凹部24に注入された熱伝導性充填剤6aと接触する。また、第2方向Yで対向する電池積層体2の2つの長側面は、それぞれ位置決め板8に当接する。これにより、電池積層体2は、第2方向Yについて位置決めされる。
【0041】
続いて、
図9に示すように、電池積層体2の側面とケース4の側板4aとの隙間に熱伝導性充填剤6aを充填する。このとき、一部の熱伝導性充填剤6aは、位置決め板8の孔部28に流入する。その後、所定の硬化処理が施されることで、熱伝導性充填剤6aが硬化して熱伝導層6となる。以上の工程により、電池パック1が得られる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係る電池パック1は、複数の電池10が配列された電池積層体2と、電池積層体2を収容するケース4と、電池積層体2およびケース4の隙間に充填される熱伝導性充填剤6aで構成される熱伝導層6と、電池積層体2およびケース4の間に配置されて電池積層体2を挟む一対の位置決め板8であって、それぞれ熱伝導性充填剤6aが流入する少なくとも1つの孔部28を有する一対の位置決め板8と、を備える。
【0043】
熱伝導層6を電池積層体2およびケース4の隙間に介在させることで、各電池10の熱をより均等にケース4に伝達することができる。これにより、熱伝導層6を設けない場合に比べて、電池積層体2をより均一に冷却することができる。また、電池積層体2とケース4との間に挿入した一対の位置決め板8で電池積層体2を挟むことで、ケース4内での電池積層体2の偏在を抑制して、電池積層体2を囲む熱伝導層6の厚みを均一化することができる。この結果、電池積層体2をより均一に冷却することができる。また、位置決め板8に孔部28を設けることで、熱伝導層6を介した電池積層体2とケース4との間の熱伝導が位置決め板8によって阻害されることを抑制できる。
【0044】
また、本実施の形態の一対の位置決め板8は、複数の電池10が配列される第1方向Xと交わる第2方向Yで電池積層体2を挟む。これにより、各電池10とケース4との間の熱伝導層6の厚みを均一化することができ、各電池10をより均一に冷却することができる。
【0045】
また、本実施の形態のケース4は、位置決め板8が嵌め込まれる第1凹部30を側面に有する。これにより、一対の位置決め板8による電池積層体2の位置決め精度を向上させることができる。また、電池パック1の組み立て作業を簡略化することができる。
【0046】
また、本実施の形態のケース4は、電池積層体2の下面と対向する底板4bを有し、底板4bは、熱伝導性充填剤6aが溜まる第2凹部24を有する。そして、第2凹部24における電池積層体2の下面側を向く開口26は、電池積層体2の下面よりも小さい。これにより、電池積層体2の下面と底板4bとの間により確実に熱伝導層6を介在させることができ、電池積層体2をより均一に冷却することができる。
【0047】
また、本実施の形態のケース4は、冷却液Wが流れる中空部32を有する。つまり、ケース4は、冷却プレートとしての機能を備える。これにより、ケース4の周囲温度が高い場合でも電池積層体2を迅速に冷却することができる。また、冷却プレートを別途設ける場合に比べて、電池パック1の小型化を図ることができる。
【0048】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。
【0049】
電池パック1が備える電池10の数は特に限定されない。複数の電池10の拘束構造等を含む、電池積層体2の各部の構造は特に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1 電池パック、 2 電池積層体、 4 ケース、 6 熱伝導層、 6a 熱伝導性充填剤、 8 位置決め板、 10 電池、 24 第2凹部、 26 開口、 28 孔部、 30 第1凹部、 32 中空部。