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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】車両用信号灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/241 20180101AFI20240314BHJP
   B62J 6/04 20200101ALI20240314BHJP
   F21S 43/249 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 43/15 20180101ALI20240314BHJP
   F21W 107/17 20180101ALN20240314BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20240314BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20240314BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240314BHJP
【FI】
F21S43/241
B62J6/04
F21S43/249
F21S43/14
F21S43/15
F21W107:17
F21W103:00
F21W103:35
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020054310
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021157870
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】出井 健吾
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021313(JP,A)
【文献】特開2018-026214(JP,A)
【文献】特開2000-231813(JP,A)
【文献】特開2015-193287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/241
B62J 6/04
F21S 43/249
F21S 43/14
F21S 43/15
F21W 107/17
F21W 103/00
F21W 103/35
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に装備され、後部方向に向けて開口する灯室部を設けたハウジングと、
前記開口部を覆い、前部側に位置する内面と後部側に位置する外面が対向するアウターレンズと、
前記灯室部内に配置されるLED光源が搭載された基板と、
前記LED光源と前記アウターレンズとの間に位置し、照射方向正面視で上下方向に沿った端面を出射部とする板状の導光部を有するインナーレンズと、を備えた車両用信号灯であって、
記導光部は、透光性樹脂材料からなる中実体であり、前記LED光源側に位置する入射側導光体と前記アウターレンズ側に位置する出射側導光体からなり、
前記入射側導光体の端面には、入射面が形成されており、
記出射側導光体の端面には、前記出射部が形成されており、
前記LED光源は、前記入射面に対向して並んで配置された複数の第1LEDを含み、
前記出射部には、3列の上下方向に延びるプリズム面が形成されており、
前記アウターレンズは、当該車両用信号灯の非点灯時において少なくとも前記出射部を当該車両用信号灯の外側から視認可能とする素通し領域と、当該素通し領域の周囲に位置し複数のレンズ素子を設けたレンズ素子群領域と、を備え、
前記3列のプリズム面は、前記入射面から前記導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、車両後方に向けて出射する第1プリズム面と、前記第1プリズム面の左側で且つ前記第1プリズム面より車両前方側に位置する第2プリズム面と、前記第1プリズム面の右側で且つ前記第1プリズム面より車両前方側に位置する第3プリズム面であり、
前記第2プリズム面は、前記入射面から当該導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、前記第3プリズム面側に向かって内面反射させる反射面を含み、
前記第3プリズム面は、前記入射面から当該導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、前記第2プリズム面側に向かって内面反射させる反射面を含み、
前記第1プリズム面からの出射光は、前記素通し領域を通って正面方向を照射し、前記第2プリズム面および前記第3プリズム面にて内面反射した光は、前記レンズ素子群領域を通って前記車両の車幅方向を照射することを特徴とする車両用信号灯。
【請求項2】
前記第1プリズム面は、前後方向に沿った断面が階段状とされ、前記アウターレンズの前記素通し領域に対向しており、
前記第2プリズム面の反射面および前記第3プリズム面の反射面は、前記第1プリズム面から離れるに従って車両後方側から車両前方側に向かって傾斜した傾斜面であり、
前記第2プリズム面の反射面は、前記第3プリズム面の反射面に向かって反射する内面反射面であることを特徴とする請求項1に記載の車両用信号灯。
【請求項3】
前記アウターレンズの内面は、前記導光部の前記出射部と対向する位置において前記導光部の前記出射部の外周面形状に沿って配設されており、
前記アウターレンズの外面には車両後方側に向かって突き出て屈曲した稜線部が形成されており、
記稜線部は、前記車両の車幅方向の中央を通る鉛直面上に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用信号灯。
【請求項4】
前記基板の同一面側には、前記導光部の前記入射面に対向する位置と異なる位置に第2LEDが搭載されており、
前記インナーレンズは、前記導光部と、前記導光部の板面に対し垂直方向に延びる底板部が一体に形成されており、
前記底板部には、前記第2LEDからの出射光を集光するレンズカットが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用信号灯。
【請求項5】
前記第1LEDおよび第2LEDは、それぞれを独立して点灯制御可能とするための配線に接続されており、
前記第2LEDが点灯した場合には、ストップランプとして機能することを特徴とする請求項4に記載の車両用信号灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部に取り付ける信号灯に関し、特に自動二輪車の後部に設けられるテールランプ、ストップランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のテールランプ、ストップランプなどの信号用の車両用灯具では、光源としてLED光源を用いたものが普及している。LED光源は白熱バルブに比べて指向性が高い。そのため、信号灯として必要な斜め横方向からの視認性を高めるために多数のLED光源を使用していることが多い。
【0003】
特許文献1には、発光面をストップランプの発光領域とテールランプの発光領域を上下方向に分割し、それぞれの領域を受け持つ専用の複数個のLED光源を複数列並べたテール・ストップランプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-187611号公報
【0005】
上記特許文献1に記載の車両用信号灯では、上側の列の発光領域および下側の列の発光領域のそれぞれの発光領域において、複数個のLED光源を左右方向に並べるとともに、アウターレンズにシリンドリカルレンズカットと魚眼レンズカットを設けることで所定の配光を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のテール・ストップランプでは、所定の配光を実現するとともに斜め方向からの視認性も満たすために、それぞれの発光領域に応じて各列で車幅方向に6個以上のLED光源を間隔を空けて配置している。さらに、アウターレンズに設けるレンズカットは発光面のほぼ全面に形成している。そのため、ランプ全体の左右方向の発光面積が大きくなっている。また、発光面積が大きくLED光源の点光りが目立つ意匠となっている。
【0007】
一方、近年のオートバイのデザインは、スリムな車体のデザインが多い。そのため、特許文献1に記載のテール・ストップランプでは、特に左右方向に延びた発光面が必要なため、車体後部の車幅方向をスリムにしたデザインのオートバイに設置することが難しい、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、特に車幅方向(左右方向)にコンパクトに構成することができる導光体を用いた車両用信号灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、前記課題を達成するために、下記[1]から[5]の車両用信号灯を提供する。
【0010】
[1] 車両後部に装備され、後部方向に向けて開口する灯室部を設けたハウジングと、
前記開口部を覆い、前部側に位置する内面と後部側に位置する外面が対向するアウターレンズと、
前記灯室部内に配置されるLED光源が搭載された基板と、
前記LED光源と前記アウターレンズとの間に位置し、照射方向正面視で上下方向に沿った端面を出射部とする板状の導光部を有するインナーレンズと、を備えた車両用信号灯であって、
記導光部は、透光性樹脂材料からなる中実体であり、前記LED光源側に位置する入射側導光体と前記アウターレンズ側に位置する出射側導光体からなり、
前記入射側導光体の端面には、入射面が形成されており、
記出射側導光体の端面には、前記出射部が形成されており、
前記LED光源は、前記入射面に対向して並んで配置された複数の第1LEDを含み、
前記出射部には、3列の上下方向に延びるプリズム面が形成されており、
前記アウターレンズは、当該車両用信号灯の非点灯時において少なくとも前記出射部を当該車両用信号灯の外側から視認可能とする素通し領域と、当該素通し領域の周囲に位置し複数のレンズ素子を設けたレンズ素子群領域と、を備え、
前記3列のプリズム面は、前記入射面から前記導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、車両後方に向けて出射する第1プリズム面と、前記第1プリズム面の左側で且つ前記第1プリズム面より車両前方側に位置する第2プリズム面と、前記第1プリズム面の右側で且つ前記第1プリズム面より車両前方側に位置する第3プリズム面であり、
前記第2プリズム面は、前記入射面から当該導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、前記第3プリズム面側に向かって内面反射させる反射面を含み、
前記第3プリズム面は、前記入射面から当該導光部に入射した前記第1LEDからの出射光の一部を、前記第2プリズム面側に向かって内面反射させる反射面を含み、
前記第1プリズム面からの出射光は、前記素通し領域を通って正面方向を照射し、前記第2プリズム面および前記第3プリズム面にて内面反射した光は、前記レンズ素子群領域を通って前記車両の車幅方向を照射することを特徴とする車両用信号灯。
[2] 前記第1プリズム面は、前後方向に沿った断面が階段状とされ、前記アウターレンズの前記素通し領域に対向しており、
前記第2プリズム面の反射面および前記第3プリズム面の反射面は、前記第1プリズム面から離れるに従って車両後方側から車両前方側に向かって傾斜した傾斜面であり、
前記第2プリズム面の反射面は、前記第3プリズム面の反射面に向かって反射する内面反射面であることを特徴とする[1]に記載の車両用信号灯。
[3] 前記アウターレンズの内面は、前記導光部の前記出射部と対向する位置において前記導光部の前記出射部の外周面形状に沿って配設されており、
前記アウターレンズの外面には車両後方側に向かって突き出て屈曲した稜線部が形成されており、
記稜線部は、前記車両の車幅方向の中央を通る鉛直面上に位置するように形成されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の車両用信号灯。
[4] 前記基板の同一面側には、前記導光部の前記入射面に対向する位置と異なる位置に第2LEDが搭載されており、
前記インナーレンズは、前記導光部と、前記導光部の板面に対し垂直方向に延びる底板部が一体に形成されており、
前記底板部には、前記第2LEDからの出射光を集光するレンズカットが形成されていることを特徴とする[1]から[3]の何れかに記載の車両用信号灯。
[5] 前記第1LEDおよび第2LEDは、それぞれを独立して点灯制御可能とするための配線に接続されており、
前記第2LEDが点灯した場合には、ストップランプとして機能することを特徴とする[4]に記載の車両用信号灯。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上下方向に延びる所定の導光部を備えたインナーレンズを備えているので、特に車幅方向(左右方向)にコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、テール・ストップランプの正面図である。
図2図2は、テール・ストップランプの側面図である。
図3図3は、インナーレンズの正面図である。
図4図4は、インナーレンズの側面図である。
図5図5は、インナーレンズの下面図である。
図6図6は、基板を示す概略正面図である。
図7図7は、テール・ストップランプの水平方向の断面図である。
図8図8は、テール・ストップランプの鉛直方向の断面図である。
図9図9は、入射側導光体の要部を拡大して示す断面図である。
図10図10は、導光部の後方側の端面を導光部の側面方向から観視した側面図である。
図11図11は、図7の一部を拡大して第2プリズム面から出射する光の光線を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明では、特に指示のない限り「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、車両用信号灯を車両に取り付けた状態において運転席に着座した運転者を基準とする。従って、「前」は車両の進行方向前方(車両の走行方向)に相当し、「後」は車両進行方向と反対側方向に相当する。「左」は車両の進行方向を基準として左方に相当し、「右」は車両の進行方向を基準として右方方向に相当する、「上」は車両の地面と反対側に相当し、「下」は車両が走行する地面側方向に相当する。
【0014】
図1図11を用いて実施形態の車両用信号灯として、車両後方に設けるテールランプについて説明する。本実施形態では、車両用信号灯を取り付ける車両としてオンロード型の鞍乗り型の自動二輪車として説明するが、これに限定されるものではない。スクータ型の自動二輪車でも、自動三輪車等でも良い。また、複数の信号灯機能を有するリアコンビネーションランプでも良い。
【0015】
テール・ストップランプ1は図示しない自動二輪車の車両の後方中央部に設け、車両後方に向かって照射する。これにより後続車に対して夜間の車両位置を知らしめ、制動(ストップ)を働かせたときの車両の挙動を知らしめるための信号灯であって、車両後方側に向かって光を照射する。
【0016】
図1はテール・ストップランプ1の正面図であり、後方側から観視した状態を示す。図2はテール・ストップランプ1の側面図である。図1および図2に示すように、車体後部に取り付けられるハウジング4と、ハウジング4の開口2を覆う透光性のアウターレンズ5により灯室3が形成されている。灯室3の内部にはランプユニット9を備える。ランプユニット9からの照射光は、アウターレンズ5を通過してランプ外を照射する。
【0017】
次にランプユニット9について説明する。
ランプユニット9は、LED光源6と、LED光源6から光を入射してアウターレンズ5を介して光を出射するインナーレンズ10を有する。
【0018】
LED光源6は、図6に示すように基板7に複数個のLED光源6が2行×3列のマトリクス状に並んで同一の表面側に実装されている。基板7は、プリント基板や絶縁層を設けた金属配線基板などのLED光源6に電力を供給する配線が設けられた基板7を用いる。左右方向の中央列に位置する2個のLED光源が、後述する導光部11に対応する第1LED(テール&ストップランプ用LED)6aで、左側列の2個および右側列の2個の合計4個のLEDが後述する底板部12に対応する第2LED(テール&ストップランプ用LED)6bとなる。複数個のLED光源6は、第1の明るさで発光したときにテールランプ用LEDとして機能し、第1の明るさよりも明るい第2の明るさで発光したときにストップランプ用LEDとして機能するように、図示しない点灯制御ICなどの回路部品によりそれぞれの点消灯が制御される。それぞれのLED光源6は、基板7の法線方向がそれぞれのLED光源6の発光中心(光軸)となるように実装されている。また、基板7がハウジング4に取り付けられた場合には、光軸が車両の前後方向と平行となるように位置決めされて取り付けが行われる。
【0019】
基板7には、インナーレンズ10と基板7との相対的な位置決めを行うための位置決め孔7aが対角して設けられるとともに、インナーレンズ10とともにハウジング4に固定するためのネジ孔7bが四角形状の基板7の四隅に形成されている。基板7とインナーレンズ10との位置決めを行うことでLED光源6から照射される光をインナーレンズ10の入射面に対して正しい位置から入射させることができる。
【0020】
インナーレンズ10は、図3から図5に示したように、第1LED6a(テールランプ用LED)の光軸に沿って前後方向に延びる板状の導光部11と、導光部11の板面に対し垂直方向に延びる底板部12が、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂材料によって一体に形成されている。導光部11は、底板部12から後方側に向かって延びた出射側導光体11bと底板部12から前方側に向かって延びた入射側導光体11aからなる中実体である。出射側導光体11bと入射側導光体11aとで、第1LED6aの光軸に沿って延びる一枚の板形状をなしている。
【0021】
底板部12は、左右方向および上下方向に延びた平面からなり、第2LED6bからの出射光が透過する発光面となる。底板部12の外周縁には、図4および図5に示したように前側に延びる側面12bが形成されている。側面12bの前方側端部には、前記した基板7の四隅に形成されたネジ孔7bに対応する位置に固定部12cが底板部12と平行な方向に延びて形成されている。4か所の固定部12cのそれぞれにもネジ孔が設けられている。ネジ8により固定部12cを基板7を介してハウジング4に共締めして固定する(図6参照)。4か所の固定部12cのうち、対角の2箇所の固定部12cには、前側に延びる位置決めボス12dが形成されており、基板7に設けられた位置決め孔7aに嵌合して位置決めが行われるように構成されている。なお、図3から図6において細かな斜線を用いて塗りつぶした領域が、底板部12および出射側導光体11bであり、アウターレンズ5の素通し領域TAを通して外方から主に観視される部分である。
【0022】
図7は、テール・ストップランプ1の水平方向の断面図である。図7において、左右方向における中央領域がテール・ストップランプ1の中心線の水平方向断面(図3のB-B線の断面の一部に相当)、左側領域および右側領域は、インナーレンズ10のハウジング4に対する固定部分がわかるようにするために中心部に対して上側にシフトした位置(図3の固定部12cの領域に相当)の水平方向断面である。図8は、テール・ストップランプ1の鉛直方向の断面図である。なお、図面において中央領域のアウターレンズが素通し領域TAであり、左側領域および右側領域のアウターレンズにはレンズ素子群領域PAが形成されている。
【0023】
図7および図8を用いてインナーレンズ9の導光部11、特に入射側導光体11aについて説明する。入射側導光体11aと出射側導光体11bは、図7および図8に示したように前後方向に直線状に延びる中実の板形状の導光体として構成されている。導光部11の側面の前方側の位置には、左右方向に延びる底板部12が導光部11と直交して一体に形成されている。入射側導光体11aには、前方側の端面13に導光部入射面13aが形成されている。導光部入射面13aは、第1LED6aの発光面から出射した光を効率良く導光部11内に導くために、第1LED6aのそれぞれの発光面に対向して設けられている。なお、図4および図5に図示したインナーレンズ10では、入射側導光体11aは底板部12の側面12により隠れているので外観上露出していない。
【0024】
図9図8のD部、すなわち導光部入射面13aを拡大して示す断面図である。第1LED6aの光軸AX上の位置に、第1LED6aに向かって凸の第1入射面21がV字状に形成されている。第1入射面21から入射した光は、光軸AXに対してほぼ平行とした光線L1となって導光部11内を導光する。第1入射面21の外方には、光軸AXから離れた方向に向かい第1入射面21で捕らえられない第1LED6aから放射されるた光を導光部11内に導くための第2入射面22が形成されている。図9に示したように第2入射面22は光軸AXを中心として僅かに拡開した形状とされている。また、第2入射面22から導光部11内に入射した光を内面反射させて光軸AXと平行光線L2に変換する第1反射面23が第2入射面22より光軸AXから離れた位置に形成されている。本実施形態においては2箇所の導光部入射面13aから光が入射して、平行光線L2,L3となって導光部出射面16のそれぞれの導光部入射面13aに対応する領域に向かって進むことになる。なお、平行光線とは、光軸AXと厳密な意味での平行な光線のみでなく、一方の導光部入射面13aから光が入射した光が、隣接する他の導光部入射面13aに対応する導光部出射面16の領域にも広がって進む場合も含んでいる。また、導光部11の左右方向に位置する側面にて1回もしくは複数回繰り返し反射して導光しながら進行する場合も含んでいる。
【0025】
出射側導光体11bは、側面視において図4および図8のように上辺が水平方向に延び、底板部12側の辺が鉛直線方向に延びる直角三角形形状をなしている。その斜辺は後ろ上がりに形成されている。後ろ上がりの斜辺は、図2に示したように側面視において後方側に行くに従って次第に先細りとなる後ろ上がりの形状で、アウターレンズ2の内面形状に近似する。斜辺は、導光部12の後方側の端面14であり、導光部出射面16となる。後方側の端面14には、導光部入射面13aから入射して導光部11内を導光してきた第1LED6aからの光を拡散させるための複数のレンズカット(プリズム)が形成されている。導光部出射面16は、アウターレンズ2の左右方向の中央の位置において、アウターレンズの内面5a近傍に位置する。
【0026】
図3に示したように出射側導光体11bの車両後方側の端面14には、正面視(車両後方からテール・ストップランプ1を見た状態)において、インナーレンズ10の左右方向の中央となる位置で上下方向に延びる3列のプリズム面15が形成されている。各列のプリズム面から出射する光をそれぞれ所定の方向に向かって出射するように制御することで、3列のプリズム面15によってテールランプとして機能するための規格に合致するための主たる配光を形成する。導光部出射面16となる車両後方側の端面14は、正面視において上下方向に延びるライン状の出射面となる。ハウジング4の開口2および灯室3は、導光部出射面16が車幅方向の中央に位置するように形成されている。これにより、正面視において縦長形状の意匠として車幅方向の寸法を狭くしたコンパクトな形状とすることができる。
【0027】
図3に示した3列のプリズム面15のうち、中央に位置する第1プリズム面15aは、導光部入射面13aから導光部11に入射した第1LED6aからの出射光の一部を、車両後方に向けて出射する。第1プリズム面15aから出射した光はアウターレンズ5の素通し領域TAを通って車両後方を照射する。車両後方に照射した光が形成する配光パターンは、テール・ストップランプ1からの照射方向前方所定位置(例えば25m)に配置された仮想鉛直スクリーン上に法規(例えばECE)が求める中央位置(H線とV線との交点)を中心として上下幅の配光パターンを形成する。
【0028】
図8は、第1プリズム面15aを通る前後方向に沿った鉛直面(図3のA-A線断面に相当する位置)で切断した断面図である。第1プリズム面15aの複数のレンズカットは、上下方向において階段状に形成されている。階段状のレンズカットは、鉛直方向および左右方向に延びる面と、水平方向および左右方向に延びる面からなる。これにより鉛直方向および左右方向に延びる面から正面方向に向けて殆ど屈折させることなく出射させることができる。
【0029】
図3に示した3列のプリズム面15のうち、左側に位置する第2プリズム面15bは、導光部入射面13aから導光部11に入射した第1LED6aからの出射光の一部を、第2プリズム面全体として車両後方の斜め右側面方向に向けて出射する。車両後方の斜め右側面方向に向けて出射した光は、仮想鉛直スクリーン上の中央位置(H線とV線との交点)より右側にシフトして側方側の配光パターンを形成する。第2プリズム面15bから出射した光はアウターレンズ5のレンズ素子群領域PAを通って車両後方を照射する。
【0030】
左側に位置する第2プリズム面15bから、仮想鉛直スクリーン上の中央位置(H線とV線との交点)より右側にシフトした領域を照射する点について、さらに説明する。
【0031】
第2プリズム面15bは、図4図5および図7に示したように、第1プリズム面15aより車両前方側に位置する。換言すると、第1プリズム面15aは第2プリズム面15bより車両後方、すなわちアウターレンズ2側に向かって突出している。第2プリズム面15bの複数のレンズカットは、上下方向において階段状に形成されている。図10に、第2プリズム面15bを拡大して示す。第2プリズム面15bの階段状のレンズカットは、第1プリズム面15aの階段状のレンズカットに比べて大きなピッチとしている。図7および図10に示すように、第2プリズム面15bの階段状のレンズカットは、鉛直方向および左右傾斜方向に延びる傾斜面17bと、水平方向および左右方向に延びる面からなる。なお、左右傾斜方向とは、左右方向を基準として傾斜した方向をいう。傾斜面17bは第1プリズム面15aから左側に離れるに従って車両後方側から車両前方側に向かって傾いていた平面であり、鉛直方向においては鉛直面である。傾斜面17bの傾斜角度は、左右方向に平行な鉛直面に対して約60度に形成されている。なお、図10は側面図であり、図4の先細りの後方側の部分を格段して示している。紙面において左側の階段状の部分が第1プリズム面15aの階段状のレンズカットで、紙面において第1プリズム面15aの階段状のレンズカットの右側に示す階段状のレンズカットが第2プリズム面15bの階段状のレンズカットである。また、符号17bの斜線で囲った部分が第2プリズム面15bにおける傾斜面である。
【0032】
また、第3プリズム面15cは、第1プリズム面15aを中心として左右対象形状とされている。具体的には、図4図5および図7に示したように、第1プリズム面15aより車両前方側に位置する。第3プリズム面15cの複数のレンズカットは、上下方向において階段状に形成されている。第3プリズム面15cの階段状のレンズカットも、第1プリズム面15aの階段状のレンズカットに比べて大きなピッチとしている。第3プリズム面15bの階段状のレンズカットは、鉛直方向および左右傾斜方向に延びる傾斜面17cと、水平方向および左右方向に延びる面からなる。なお、左右傾斜方向とは、左右方向を基準として傾斜した方向をいう。傾斜面17cは第1プリズム面15aから右側に離れるに従って車両後方側から車両前方側に向かって傾いていた平面であり、鉛直方向においては鉛直面である。傾斜面17cの傾斜角度は、左右方向に平行な鉛直面に対して約60度に形成されている。
【0033】
図11は、図7の一部を拡大したもので、第2プリズム面15bから出射する光の光線L3を記載して示している。図11においては、導光部入射面13aから導光部11内に入射した第1LED6aからの光L1,L2が、導光部11から外部に出射してアウターレンズ5を通過して光線L3として側方に向けて出射する様子を矢印にて記載している。傾斜面17bは、傾斜面17bに到達した光線L1,L2が内面反射する角度に形成している。
【0034】
したがって、傾斜面17bは光線L1,L2に対する反射面となる。内面反射した光線L1,L2は、導光部11の反対側の側面に向かって進む。具体的には、第3プリズム面15cの傾斜面17cに向かって進行して出射する。導光部11から出射した光は、アウターレンズ5の周囲領域に向かって進行する。アウターレンズ5の内面5aに対して斜め方向から入射するため、アウターレンズの内面5aで反射される成分が多くなりアウターレンズ5から外部に出る光が少なくなる。そこで、本実施形態では、アウターレンズの周囲領域のうち、傾斜面17b(第2プリズムの反射面)にて内面反射した光がアウターレンズに到達する領域に、断面を鋸歯形状としたレンズカットを形成して、仮想鉛直スクリーン上の中央位置(H線とV線との交点)より右側にシフトした領域(車両斜め側方)を照射するように形成されている。このレンズカットを形成したレンズ素子群領域PAは、素通し領域TAの周囲に位置する(図1参照)。本実施形態のアウターレンズ5の意匠の場合には、アウターレンズの外周領域に形成している。
【0035】
同様に、導光部入射面13aから導光部11に入射した第1LED6aからの出射光のうち、第3プリズム面15cの傾斜面17cに到達した光線は、傾斜面17cにて内面反射する。内面反射した光線は、導光部11の反対側の側面に向かって進む。具体的には、第2プリズム面15bの傾斜面17cに向かって進行して出射する。導光部11から出射した光線は、アウターレンズ5の周囲領域に向かって進行する。本実施形態では、アウターレンズの周囲領域のうち、傾斜面17c(第3プリズムの反射面)にて内面反射した光がアウターレンズに到達する領域に、断面を鋸歯形状としたレンズカットを形成して、仮想鉛直スクリーン上の中央位置(H線とV線との交点)より右側にシフトした領域を照射するように形成されている。
【0036】
これにより第2プリズム面15bの傾斜面17bは、反射面であると同時に第3プリズム面15cの傾斜面17cにて反射してきた光の出射面としても機能する。同様に、第3プリズム面15cの傾斜面17cは、反射面であると同時に第2プリズム面15bの傾斜面17bにて反射してきた光の出射面としても機能する。
【0037】
第1プリズム面15a、第2プリズム面15bおよび第3プリズム面15cの3つのプリズム面15が形成された導光部11の後方側の端面14は、アウターレンズ5の内面5aの近傍に位置する。アウターレンズ5の外面5bは、側面視において車両後方側に向かって突き出て屈曲した稜線部5cが形成されている。稜線部5cは、テール・ストップランプ1を搭載する前記自動二輪車の車幅方向の中央を通る前後方向に延びる鉛直面上に位置するように形成されている。従って、図2および図7に示したように稜線部5cが素通し領域TAにおいて最も車両後方側となる位置となる。
【0038】
このように稜線部5cを最も車両後部側とすることで、インナーレンズの導光部11も後方側の端面14が、図7に示すように素通し領域TAが斜め後方から視認されやすくなる。すなわち、第1LED6aが点灯した場合において、導光部11も後方側の端面14が発光面となるため、車両の真後ろの後続車両の運転者のみならず、斜め後ろ方向に位置する後続車両の運転者にとっても視認性を向上させることができる。さらに、上下方向に延びる発光面であるため、テール・ストップランプ1の車幅方向の寸法を小さくしたコンパクトなものとした場合であっても視認性を確保することができる。さらに、素通し領域TAの周囲にレンズ素子群領域PAが設けられており、レンズ素子群領域PAからは第2プリズム面15bおよび第3プリズム面15cからの光が出射する発光面となる。従って、後続車両の運転者にとって、より一層視認性を向上させることができ、テール・ストップランプ1を搭載した自動二輪車の存在を知らしめることができる。
【0039】
次に、第2LED6b(第2LED)を点灯させた場合について説明する。
【0040】
第2LED6bの出射方向前方には、インナーレンズ10の底板部12が位置する。底板部12は基板7と平行に配設されている。基板7側の表面には、複数の第2LED6bのそれぞれに対応して、上下方向および左右方向のマトリクス状に配列した複数のレンズカットが形成されている。マトリクス状に配列した複数のレンズカットはフレネルレンズを基本とした形状とし、対応する第2LED6bから放射状に出射した光を集光する。なお、集光とは、第2LED6bから放射状に出射した光を一点に集めることではなく、全体としてLEDからの放射角度よりも狭くなるようにすることをいう。本実施形態では、第2LED6bの光軸上のレンズカットは、素通しに近い傾斜度合いの小さい湾曲面とし、光軸から離れたレンズ素子のレンズカットは光軸に平行な方向もしくは光軸に対して数度傾けた方向に向けて出射するように大きな傾斜としたレンズカットが形成されている。
【0041】
第2LED6bからの放射光は、多くが底板部12を通ってアウターレンズ5の素通し領域TAに向かって進む。放射光の一部の光がレンズ素子群領域PAに向かって進む。アウターレンズ5を介して外部に出射した光は、複数の第2LED6bからの光の合成光が仮想鉛直スクリーン上において、テールランプ用の配光パターンとストップランプ用の配光パターンの双方の配光特性を満足するように出射する。
【0042】
本実施形態によれば、アウターレンズ5の左右方向の中央部において上下方向に延びる稜線部5cに対応する位置に延びるようにインナーレンズ10の導光部11を形成したので、導光部11の先端領域が発光部となって、後方車両の運転者から視認させやすくすることができる。また、左右方向の寸法を小さくすることができコンパクトなテール・ストップランプ1とすることができる。
【0043】
本実施形態によれば、導光部の車両後方側の端面に3列の上下方向に延びるプリズム面を含む導光部出射面を形成し、3列のプリズム面15a、15b、15cのうち中央の第1プリズム面を階段状に形成し、第1プリズム面の両側に設けた第2プリズム面15bおよび第3プリズム面のそれぞれに傾斜面17b,17cを設けたので、傾斜面17b,17cが内面反射面として機能するとともに出射面として機能する。これにより、後続車両の運転者等がアウターレンズ5を通して3列のプリズム面15a、15b、15cを視認しやすくなり、その存在を後続車の運転手に知らしめることができる。
【0044】
さらに、アウターレンズ5には、素通し領域TAと、素通し領域TAの周囲に位置し複数のレンズ素子を設けたレンズ素子群領域PAを設けたので、素通し領域TAから第1プリズム面15aから出射する光を光量の低減を抑制して出射させることができるとともに、レンズ素子群領域PAにより、光を照射するのが難しい側面方向に向けても照射することができ、テールランプとしての機能を満たすための配光パターンを形成しやすくすることができる。
【0045】
また、基板7の同じ表面側に第1LED6aと、第2LED6bを、夫々のLEDの光軸を基板7に対して垂直方向を向くように並べることができるので、ランプ構造および組み立て工程を簡素化することができコストを削減することができる。さらに、上記実施形態では、第1LED6aおよび第2LED6bの両方のLEDを第1の明るさで同時に発光したときにテールランプ用LEDの配光規格に合致した配光パターンの照射光を出射し、第2の明るさで同時に発光したときにストップランプ用LEDの配光規格に合致した配光パターンの照射光を出射するものとしたが、第1LED6aと第2LED6bをそれぞれが独立して点灯制御可能なように配線して、第1LEDをテール&ストップランプ用LEDとして機能させ第2LED6bをストップランプ用LED専用に機能させるようにしても良い。
【0046】
以上に、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその趣旨から逸脱することなく他の様々な形で構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。例えば、ハウジング4の灯室3内に他の機能を奏するランプユニットとしてターンランプユニットやナンバー照射ランプ用のユニットを設けたコンビネーションランプとした構成としてもよい。また、インナーレンズ10に形成した板状の導光部11は、第1LED6aの光軸に沿って延びる1枚のみを設けているが、2枚以上を左右方向に並べて形成し、それぞれの導光部11に対応してLED光源6aも複数設ける構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
自動二輪車用のテール・ストップランプや、他の信号照明機能を発揮する車両用灯具にも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1…テールランプ
2…開口
3…灯室
4…ハウジング
5…アウターレンズ
5c…稜線部
6…LED光源
7…基板
8…ネジ
9…ランプユニット
10…インナーレンズ
11…導光部
12…底板部
13…前方側の端面
13a…導光部入射面
14…後方側の端面
15a…第1プリズム面
15b…第2プリズム面
15c…第3プリズム面
16…導光部出射面
17…反射面
21…第1入射面
22…第2入射面
23…第1反射面
L1,L2,L3…光線
AX…光軸
TA…素通し領域
PA…レンズ素子群領域
図1
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図11