IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー・ファインケム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】含フッ素ホスホン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
C07F9/38 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020066681
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161087
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-528446(JP,A)
【文献】特開平01-066194(JP,A)
【文献】特開昭58-109448(JP,A)
【文献】特開昭55-040629(JP,A)
【文献】特開2011-204520(JP,A)
【文献】特開2011-56835(JP,A)
【文献】特開昭58-210096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107267(US,A1)
【文献】Bulletin of the Chemical Society of Japan,1981年,54,267-273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素ホスホン酸の製造方法であって、下記一般式(2)で示される含フッ素ホスホン酸アルキルエステルと、クロロトリメチルシラン及びヨウ化物塩を、溶媒中、10℃~30℃で反応させ、加溶媒分解する工程を含む、含フッ素ホスホン酸の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Rfは、炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~10の整数である。)
【化2】
(式(2)中、Rfは、炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~10の整数であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または水素原子である。ただし、R及びRの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、R及びRは同時に水素原子でない。)
【請求項2】
前記Rfが、水素原子数の10%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の含フッ素ホスホン酸の製造方法。
【請求項3】
前記Rfが、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または下記一般式(3)で示されるフッ素化脂肪族炭化水素基である、請求項1または請求項2に記載の含フッ素ホスホン酸の製造方法。
2m+1-CH=CH-C2l- (3)
(式(3)中、m及びlはそれぞれ独立して、2~6の整数である。)
【請求項4】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素ホスホン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ホスホン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ホスホン酸は、例えば表面改質剤、離型剤、撥水撥油剤、界面活性剤、防汚材、剥離剤、自己組織化単分子膜材料等の機能性材料として用いられている。
従来、含フッ素ホスホン酸の製造方法としては、含フッ素ホスホン酸ジアルキルエステルを、塩酸で加水分解する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。しかしこの方法では、大過剰量の塩酸を必要とし、高温で長時間反応させる必要がある。
特許文献2及び特許文献3には、ジクロロメタン中で含フッ素ホスホン酸アルキルエステルとブロモトリメチルシランを反応させ、含フッ素ホスホン酸を得る方法が開示されている。しかし、この方法では高価なブロモトリメチルシランと、毒性及び環境負荷の高いジクロロメタンを使用する上、長い反応時間を要するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4506893号公報
【文献】特許第4317125号公報
【文献】特許第5986745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、温和な条件下、短時間で反応が実施でき、経済的かつ工業的に実施可能な含フッ素ホスホン酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、含フッ素ホスホン酸アルキルエステルと、クロロトリメチルシラン及びハロゲン化物塩を、溶媒中で反応させ、加溶媒分解することで、効率よく含フッ素ホスホン酸を得る製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で示される含フッ素ホスホン酸の製造方法であって、下記一般式(2)で示される含フッ素ホスホン酸アルキルエステルと、クロロトリメチルシラン及びハロゲン化物塩を、溶媒中で反応させ、加溶媒分解する工程を含む、含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
【化1】
(式(1)中、Rfは、炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~10の整数である。)
【化2】
(式(2)中、Rfは、炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~10の整数であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または水素原子である。ただし、R及びRの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、R及びRは同時に水素原子でない。)
【0007】
また本発明は、上記の製造方法における一般式(1)において、Rfが、水素原子数の10%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である、含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
【0008】
また本発明は、上記の製造方法における一般式(1)において、Rfが、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または下記一般式(3)で示されるフッ素化脂肪族炭化水素基である、請含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
2m+1-CH=CH-C2l- (3)
(式(3)中、m及びlはそれぞれ独立して、2~6の整数である。)
【0009】
また本発明は、上記の製造方法において、ハロゲン化物塩が、ヨウ化物塩である、含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
【0010】
また本発明は、上記の製造方法において、溶媒が有機溶媒である、含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
【0011】
また本発明は、上記の製造方法において、反応を0℃~60℃で行う、含フッ素ホスホン酸の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温和な条件下、短時間で反応が実施でき、工業生産に適した含フッ素ホスホン酸の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る含フッ素ホスホン酸が示される一般式(1)において、Rfは直鎖、分岐または環状構造を含んでいてもよい炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、さらに直鎖または分岐の炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基が好ましく、特に直鎖の炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基が好ましい。
本発明に係る含フッ素ホスホン酸が示される一般式(1)において、nは1~10の整数であり、1~4が好ましく、2がより好ましい。
また好ましくは、本発明に係る含フッ素ホスホン酸が示される一般式(1)において、Rfは水素原子数の10%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子数の50%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子数の70%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である。
【0014】
また好ましくは、本発明に係る含フッ素ホスホン酸が示される一般式(1)において、Rfは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または下記一般式(3)で示されるフッ素化脂肪族炭化水素基である。
2m+1-CH=CH-C2l- (3)
(式(3)中、m及びlはそれぞれ独立して、2~6の整数である。)
【0015】
本発明に係る含フッ素ホスホン酸が示される一般式(1)において、Rfの具体的構造としては、C-、C-、C13-、C17-、C1021-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C12-、(CFCF-、(CFCF-(CF-、(CFCF-(CF-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、Rfは直鎖、分岐または環状構造を含んでいてもよい炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、さらに直鎖または分岐の炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基が好ましく、特に直鎖の炭素数1~20のフッ素化脂肪族炭化水素基が好ましい。
本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、nは1~10の整数であり、1~4が好ましく、2がより好ましい。
また好ましくは、本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、Rfは水素原子数の10%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子数の50%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子数の70%~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である。
【0017】
また好ましくは、本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、Rfは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または下記一般式(3)で示されるフッ素化脂肪族炭化水素基である。
2m+1-CH=CH-C2l- (3)
(式(3)中、m及びlはそれぞれ独立して、2~6の整数である。)
【0018】
本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、Rfの具体的構造としては、C-、C-、C13-、C17-、C1021-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C12-、(CFCF-、(CFCF-(CF-、(CFCF-(CF-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または水素原子である。さらに好ましくは炭素数1~8の直鎖または分岐のアルキル基または水素原子であり、特に好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキル基または水素原子である。
ただし、R及びRの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、R及びRは同時に水素原子でない。
【0020】
炭素数1~10のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、iso-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1-プロピルブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルブチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-3-メチルブチル基、2-エチル-1-メチルブチル基、2-エチル-1-メチルブチル基、2-エチル-2-メチルブチル基、2-エチル-3-メチルブチル基、1,1-ジエチルプロピル基、n-オクチル基、iso-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-プロピルヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも、原料の入手性及び化合物の合成の容易性から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基がさらに好ましい。
【0021】
本発明に係る含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが示される一般式(2)において、R及びRはそれぞれ異なっていてもよいが、原料の入手性及び化合物の合成の容易性から、同一であることが好ましい。
【0022】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、反応に用いられるクロロトリメチルシランの量は、反応に具する含フッ素ホスホン酸アルキルエステルに対して、好ましくは1当量~5当量、さらに好ましくは1.5当量~4当量、特に好ましくは2当量~3当量である。このように本発明では大過剰量の塩酸等を用いない点で有用である。
【0023】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、ハロゲン化物塩は、好ましくはヨウ化物塩であり、入手性の観点からより好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物塩であり、さらに好ましくはアルカリ金属のヨウ化物塩である。具体的には例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、反応に用いられるハロゲン化物塩の量は、反応に具する含フッ素ホスホン酸アルキルエステルに対して、好ましくは1当量~5当量、さらに好ましくは1.5当量~4当量、特に好ましくは2当量~3当量である。
【0024】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、溶媒としては有機溶媒を用いることができる。反応に不活性なものであれば特に限定はされないが、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が使用できる。中でも反応性が高く、環境負荷が比較的小さいことから、アセトニトリルが好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、反応に用いられる溶媒の量は、反応に具する含フッ素ホスホン酸アルキルエステルに対して、好ましくは1重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは1重量倍量~10重量倍量、特に好ましくは1重量倍量~3重量倍量である。
【0025】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、反応温度は0℃~60℃の範囲が好ましく、0℃~40℃の範囲がより好ましく、10℃~30℃の範囲がさらに好ましい。温和な条件下で反応が進行するため、熱エネルギーの消費が少ない点で有用である。
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、反応時間は10分~6時間の範囲が好ましく、10分~4時間の範囲がさらに好ましく、10分~2時間の範囲が特に好ましい。短時間で反応が完結する点で有用である。
【0026】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、加溶媒分解の操作としては、例えば、上記反応の後に水またはプロトン性溶媒を加えることで実施できる。プロトン性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール等のアルコール類等が挙げられる。水またはプロトン性溶媒の中でも水を加えることが好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
加溶媒分解は、前記したように、含フッ素ホスホン酸アルキルエステルと、クロロトリメチルシラン及びハロゲン化物塩を、溶媒中で反応させ、反応後の混合物に水またはプロトン性溶媒を加えることで実施してもよく、前記反応後の混合物を空気中の水分と接触させることで実施してもよい。
【0027】
本発明による含フッ素ホスホン酸の製造において、精製の操作としては、例えば、濃縮、再結晶、濾過、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法を用いることにより、目的物を得ることができる。
【実施例
【0028】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0029】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
H-NMR,19F-NMR:ブルカー製AVANCE II 400
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC-2014
GC-MS:島津製作所製GCMS-QP2010 Ultra
【0030】
参考例1
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8 -トリデカフルオロオクタン-1-イルホスホン酸ジイソプロピル(a)の合成
【化3】
撹拌子を備えた100mLのナスフラスコに化合物(a)20.00g(BLD Pharmatech製、42.19mmol)及び亜リン酸トリイソプロピル30.75g(東京化成工業製、147.68mmol)を仕込み、150℃で10時間反応した。反応液を100℃、1.0kPaで減圧濃縮し、化合物(a)17.90gを無色液体として取得した。収率は82.8%(モル換算、以下同じ)であった。
【0031】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):4.64(m,2H,CHCH),2.27(m,2H,CH CF),1.84(m,2H,CH P),1.23(dd,J=6.4Hz,2.4Hz,CHCH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.35(t,J=8.0Hz,3F,CF),-115.70(m,2F,CF CH),-122.36(m,2F,CF),-123.32(m,2F,CF),-123.79(m,2F,CF),-126.63(m,2F,CF
【0032】
参考例2
1-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン(a)の合成
【化4】
撹拌子を備えた150mLのSUS製オートクレーブに1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ペンタコサフルオロ-1-ヨード-7-テトラデセン(a)100.00g(東ソー・ファインケム製、0.130mol)及びジターシャリブチルペルオキシド0.13g(日油製、0.003mol)を仕込み、密閉後内部を窒素置換した。その後115℃に昇温し、エチレン2.00g(エア・ウォーター製、0.142mol)を0.5~1.0MPaの圧力を保ちながら添加した。さらに115℃で1時間反応した後、冷却して化合物(a)103.50gを白色固体として取得した。収率は99.9%であった。
【0033】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C13 CH=CH12),3.17(m,2H,CH I),2.65(m,2H,CH CF
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.41(t,J=9.8Hz,3F,CF),-114.39(m,4F,CF CH), -115.50(m,2F,CF CH),-122.08(m,6F,CFCFCF), -123.33(m,2F,CF),-123.89(m,6F,CFCFCF),-126.69(m,2F,CF
【0034】
参考例3
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン-1-イルホスホン酸ジエチル(a)の合成
【化5】
撹拌子を備えた100mLの3つ口フラスコに化合物(a)10.00g(12.50mmol)及び亜リン酸トリエチル31.15g(富士フイルム和光純薬製、187.5mmol)を仕込み、150℃で20時間反応した。反応液をジイソプロピルエーテル50g(富士フイルム和光純薬製)で希釈し、水30gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、ヘプタン(富士フイルム和光純薬製)で再結晶して化合物(2)7.61gを取得した。収率は75.1%であった。
【0035】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C13 CH=CH12),4.13(m,4H,CH CH),2.41(m,2H,CH CF),1.99(m,2H,CH P),1.33(m,6H,CH CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.39(t,3F,CF),-114.36(m,4F,CF CH), -115.76(m,2F,CF CH),-122.05(m,6F,CFCFCF), -123.30(m,2F,CF),-123.83(m,6F,CFCFCF),-126.64(m,2F,CF
【0036】
参考例4
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン-1-イルホスホン酸ジイソプロピル(a)の合成
【化6】
撹拌子を備えた50mLの3つ口フラスコに化合物(a)10.00g(12.50mmol)及び亜リン酸トリイソプロピル9.11g(東京化成工業製、43.75mmol)を仕込み、150℃で12時間反応した。反応液を140℃、1.0kPaで減圧濃縮し、化合物(a)9.25gを無色油状物として取得した。収率は88.3%であった。
【0037】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.50(m,2H,C13 CH=CH12),4.74(m,2H,CHCH),2.42(m,2H,CH CF),1.95(m,2H,CH P),1.34(m,6H,CH CH
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.30(t,J=10.4Hz,3F,CF),-114.41(m,2F,CF CH), -115.86(m,2F,CF CH),-122.15(m,6F,CFCFCF), -122.42(m,2F,CF),-123.43(m,2F,CFCFCF),-123.94(m,6F,CFCFCF),-126.72(m,2F,CF
【0038】
実施例1
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8 -トリデカフルオロオクタン-1-イルホスホン酸(1)の合成
【化7】
撹拌子を備えた10mlのガラス管に化合物(a)1.00g(1.19mmol)、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬製)2g及びヨウ化ナトリウム0.45g(富士フイルム和光純薬製、3.0mmol)を仕込み、25℃でクロロトリメチルシラン0.32g(富士フイルム和光純薬製、3.0mmol)を加えて1時間反応した。反応混合物に水0.10gを加え、析出した固体をろ過し、水洗して化合物(1)0.80gを白色固体として取得した。収率は96%であった。
【0039】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:メタノール-d4、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):2.47(m,2H,CH CF),1.97(m,2H,CH P)
19F-NMR (溶媒:メタノール-d4、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.43(t,J=12.0Hz,3F,CF),-115.34(m,2F,CF CH),-121.92(m,2F,CF),-122.90(m,2F,CF),-123.46(m,2F,CF),-126.36(m,2F,CF
【0040】
実施例2
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン-1-イルホスホン酸(2)の合成
【化8】
50mlのナスフラスコに化合物(a)5.00g(6.17mmol)、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬製)10g及びヨウ化ナトリウム2.31g(富士フイルム和光純薬製、15.4mmol)を仕込み、25℃でクロロトリメチルシラン1.68g(富士フイルム和光純薬製、15.4mmol)を加えて1時間反応した。反応混合物に水0.50gを加え、析出した固体をろ過し、水洗して化合物(2)4.43gを白色固体として取得した。収率は95.2%であった。
【0041】
生成物の分析結果を下記に示す。
H-NMR (溶媒:メタノール-d4、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm)::6.93(m,2H,C13 CH=CH12),3.31(m,2H,CH CF),1.95(m,2H,CH P)
19F-NMR (溶媒:メタノール-d4、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.41(t,3F,CF),-113.85(m,4F,CF CH), -115.50(m,2F,CF CH),-121.57(m,6F,CFCFCF), -122.93(m,2F,CF),-123.46(m,6F,CFCFCF),-126.40(m,2F,CF
【0042】
実施例3
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン-1-イルホスホン酸(2)の合成
【化9】
実施例2において、化合物(a)に替えて化合物(a)を用いた以外、同様の操作を実施し、化合物(2)4.20gを白色固体として取得した。収率は93.4%であった。
【0043】
比較例1
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン-1-イルホスホン酸(2)の合成
【化10】
還流冷却器を備えた100mlのナスフラスコに化合物(a)5.00g(6.17mmol)及び35wt%塩酸20gを仕込み、100℃で48時間反応した。室温に冷却後吸引ろ過し、水洗して化合物(2)4.56gを白色固体として取得した。収率は98.0%であった。本方法では大過剰量の塩酸を用いて高温で長時間反応させる必要があるうえ、H-NMR分析から未反応の含フッ素ホスホン酸アルキルエステルが2重量%残存していることが判明した。
なお残存した未反応の含フッ素ホスホン酸アルキルエステルを目的物と分離するのは難しく、未反応分をいかに少なくするかが重要である。
【0044】
比較例2
実施例1において、クロロトリメチルシランを用いなかった場合、反応が全く進行しなかった。
【0045】
比較例3
実施例1において、ヨウ化ナトリウムを用いなかった場合、反応が全く進行しなかった。
【0046】
実施例2では、非プロトン性溶媒であるアセトニトリルの存在下で、反応原料(6.17mmol)を、クロロトリメチルシラン(14.9mmol)及びハロゲン化物塩のヨウ化ナトリウム(14.9mmol)を加えて25℃という温和な条件で1時間反応させ、その後に水を加えて目的物を得ることができた。これに対し比較例1では、実施例2と同じ反応原料(6.17mmol)を、35wt%塩酸(HClとして192mmol)を加えて100℃という高温条件で48時間反応させて目的物を得ることができた。このことより、本発明による方法は、温和で、かつ短時間で目的物を得る工業的に好適な方法であることが分かる。
【0047】
比較例2及び比較例3から、本発明の製造方法では、クロロトリメチルシランとヨウ化ナトリウム等のハロゲン化物塩とを共存させて反応させることで反応を効率化できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の製造方法で得られる含フッ素ホスホン酸は、表面改質剤、離型剤、撥水撥油剤、界面活性剤、防汚材、剥離剤、自己組織化単分子膜材料等の機能性材料として有用である。