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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】溶接鋼管のスパッタ除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 13/00 20060101AFI20240314BHJP
   B21C 37/08 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B23K13/00 Z
B21C37/08 Z
B21C37/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020069760
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021164944
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博文
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-001325(JP,A)
【文献】実開昭52-104625(JP,U)
【文献】実開昭60-011115(JP,U)
【文献】実開昭61-012504(JP,U)
【文献】特開平08-112678(JP,A)
【文献】実開平03-031076(JP,U)
【文献】特開2011-020159(JP,A)
【文献】特開2008-137030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 13/00
B21C 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から連続的に供給される帯鋼をオープン管に成形し、前記オープン管のV字状開先を加熱するワークコイルと、加熱された前記V字状開先を圧着して溶接するスクイズロールと、を有する溶接鋼管の製造装置における前記溶接時に生じるスパッタを除去する溶接鋼管のスパッタ除去装置であって、
前記スクイズロールの少なくとも前記上流側の上方を覆うように配置されるカバー部材と、前記スクイズロールの外周に接するスクレーパとを備え
前記スクレーパは、前記スクイズロールの前記上流側及び下流側にそれぞれ配置される上流側のスクレーパと下流側のスクレーパを備え、
前記下流側のスクレーパは、前記スクイズロールの溝内に接する第2のスクレーパを備え、
前記上流側のスクレーパは、前記スクイズロールの溝内に接する第3のスクレーパを備え、
前記第2のスクレーパまたは前記第3のスクレーパの少なくともいずれか一方は、前記溝と接する不織布を有することを特徴とする溶接鋼管のスパッタ除去装置。
【請求項2】
請求項に記載の溶接鋼管のスパッタ除去装置において、
前記下流側のスクレーパは、前記スクイズロールの上縁部に接する第1のスクレーパを備えることを特徴とする溶接鋼管のスパッタ除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶接鋼管のスパッタ除去装置において、
前記スクイズロールと前記スクイズロールの下流側に配置される成形ロールとの間に前記溶接鋼管の外周に接する拭上手段を有することを特徴とする溶接鋼管のスパッタ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接鋼管の製造装置における溶接時に生じるスパッタを除去するスパッタ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接鋼管の製造装置として、連続的に供給される帯鋼の両端部を管状に丸めてオープン管を成型し、該オープン管のV字状開先をワークコイルによって加熱し、加熱されたV字状開先を圧着して溶接するスクイズロールとを有する溶接鋼管の製造装置が知られている。
【0003】
ワークコイルは、高周波誘導加熱コイルが用いられており、当該ワークコイルによって加熱されたV字状開先を一対のスクイズロールによって両端部が押されて突き合わされることで溶接される。このスクイズロールでの溶接の際に、スパッタが発生することが知られている。このスパッタがスクイズロールや溶接鋼管に付着したまま固化し、成形ロールで成形されると、固化したスパッタによって溶接鋼管の表面に圧痕キズができてしまい、外観不良となることがある。
【0004】
このようなスパッタによる外観不良を防止するために、種々の方法が知られており、例えば、特許文献1に記載されているように、溶接時に排出飛散するスパッタに向けて酸化性ガスを噴射し、スパッタを酸化による燃焼又は溶融させる方法や、特許文献2に記載されているように、ダクトを通してサイクロン集塵装置で分離回収する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-80661号公報
【文献】特開2002-321070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスパッタの除去方法は、全てのスパッタを燃焼、溶融及び回収することが難しく、いずれの方法によってもスクイズロールにスパッタが付着することを確実に防止することが難しく、依然として外観不良の発生が生じてしまうという問題があった。また、ガス噴射装置やサイクロン集塵装置など、溶接鋼管の製造装置の周囲に大型の装置を設ける必要があり、省スペース化や設置コストを抑制することが難しいといった問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、より確実にスパッタを除去して溶接鋼管の外観不良を低減することができるとともに、溶接鋼管の製造装置へ容易に取り付けることができ、省スペース化を図ることができるスパッタ除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置は、上流側から連続的に供給される帯鋼をオープン管に成形し、前記オープン管のV字状開先を加熱するワークコイルと、加熱された前記V字状開先を圧着して溶接するスクイズロールと、を有する溶接鋼管の製造装置における前記溶接時に生じるスパッタを除去する溶接鋼管のスパッタ除去装置であって、前記スクイズロールの少なくとも前記上流側の上方を覆うように配置されるカバー部材と、前記スクイズロールの外周に接するスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記スクイズロールの前記上流側及び下流側にそれぞれ配置される上流側のスクレーパと下流側のスクレーパを備え、前記下流側のスクレーパは、前記スクイズロールの溝内に接する第2のスクレーパを備え、前記上流側のスクレーパは、前記スクイズロールの溝内に接する第3のスクレーパを備え、前記第2のスクレーパまたは前記第3のスクレーパの少なくともいずれか一方は、前記溝と接する不織布を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置において、前記下流側のスクレーパは、前記スクイズロールの上縁部に接する第1のスクレーパを備えると好適である。
【0014】
また、本発明に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置において、前記スクイズロールと前記スクイズロールの下流側に配置される成形ロールとの間に前記溶接鋼管の外周に接する拭上手段を有すると好適である。
【0015】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置によれば、スクイズロールの少なくとも上流側の上方を覆うように配置されるカバー部材と、スクイズロールの外周に接するスクレーパとを備えるので、溶接時に発生するスパッタがスクイズロールに付着することを防止することができ、スパッタがスクイズロールに付着した場合でも、スクレーパによってスパッタを除去することができるので、容易かつ安価にスパッタ除去装置を設置するとができるとともに、溶接鋼管にスパッタが付着することを防止することで、溶接鋼管の外観不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る溶接鋼管の製造装置を示す概念図。
図2】本発明の実施形態に係るスパッタ除去装置の概要を説明するための平面図。
図3】第1のスクレーパの構成を説明するための図。
図4】第2及び第3のスクレーパの構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る溶接鋼管の製造装置を示す概念図であり、図2は、本発明の実施形態に係るスパッタ除去装置の概要を説明するための平面図であり、図3は、第1のスクレーパの構成を説明するための図であり、図4は、第2及び第3のスクレーパの構成を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る溶接鋼管の製造装置1は、上流側から連続的に供給される帯鋼の両端を丸めてオープン管2に形成し、当該オープン管2のV字状開先を加熱するワークコイル3と、加熱されたV字状開先を圧着して溶接するスクイズロール10と、スクイズロール10によって管状に溶接された溶接鋼管7の外周及び内周の溶接バリを除去するバリ取り装置6と、溶接鋼管7を成形する成形ロール8および、溶接鋼管7を所定の長さに切断する図示しない切断装置を有している。
【0021】
ワークコイル3は、高周波誘導電流をオープン管2のV字状開先に集中させるインピーダと、インピーダの冷却用ノズルとを有している。スクイズロール10は、図3及び図4に示すように、上縁部11と周方向に延びる溝12とを有する概略鼓状の部材であって、溝12間にオープン管2を通過させてワークコイル3で加熱されたV字状開先を互いに圧着させて溶接している。
【0022】
このとき、図1に示すように、スクイズロール10の下流側には、スパッタ5が飛散する。このスパッタ5は、溶接鋼管7に付着しないように、成形ロール8とスクイズロール10の間に遮蔽板4を設けることで、溶接鋼管7へのスパッタ5の付着を防止している。
【0023】
次に、本実施形態に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置について説明を行う。溶接時に飛散したスパッタ5は、スクイズロール10の回転力によって、上流側にも少なからず飛散する。この上流側に飛散したスパッタ5がオープン管2に付着することを防止するために、スクイズロール10の少なくもの上流側の上方を覆うカバー部材20が設けられている。
【0024】
さらに、スクイズロール10にスパッタ5が付着した場合に、スパッタ5がスクイズロール10とオープン管2との間に噛み込んで圧痕を生じることを防止するために、スクイズロール10の外周と接するスクレーパ21,22,23を備えている。
【0025】
図2に示すように、スクレーパは、スクイズロール10の外周面に接するように複数形成されており、スクイズロール10の下流側に第1のスクレーパ21,第2のスクレーパ22が取り付けられており、上流側に第3のスクレーパ23が取り付けられている。なお、図2は、説明のために一方のスクイズロール10のみにスクレーパ21,22,23を接するように設置した場合を図示し、他方のスクイズロール10に接するスクレーパは、省略して図示している。
【0026】
第1のスクレーパ21は、一対のスクイズロール10の最も近接した部位の下流に設置されており、図3に示すように、スクイズロール10の上縁部11に接触している。第1のスクレーパ21は、例えばステンレス鋼の平板が好適に用いられる。
【0027】
図2に示すように、第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23は、それぞれスクイズロール10の上流側と下流側にそれぞれ配置されており、第1のスクレーパ21、第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23は、スクイズロール10の回転方向に沿って第1のスクレーパ21、第2のスクレーパ22、第3のスクレーパ23の順に配置されている。
【0028】
図4に示すように、第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23は、互いに同様の形状を有しており、スクイズロール10の溝12内に接するように先端が溝12の形状に対応して円弧状に形成されたスクレーパ本体24と、スクレーパ本体24の上縁に沿って延びる上片部25とを備えている。
【0029】
また、第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23の先端には、不織布26が取り付けられている。不織布26は、スクイズロール10の溝12と第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23の先端との間に摩耗などによって隙間が生じた場合に、この隙間を埋めることで、確実にスクイズロール10の溝12に付着したスパッタ5を除去するために設けられており、好適には研磨剤などを含有すると好適である。なお、第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23も第1のスクレーパ21と同様にステンレス鋼によって構成されていると好適である。
【0030】
なお、第1のスクレーパ21,第2のスクレーパ22及び第3のスクレーパ23は、スクイズロール10の径方向に沿って移動可能に取り付けられており、スクイズロール10への接触具合を調整可能となっている。
【0031】
また、図1に示すように、本実施形態に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置は、スクイズロール10で溶接された後、成形ロール8の直前で溶接鋼管7の外周面に直接接触して外面を拭き上げる拭上手段30が取り付けられている。拭上手段30は、布などのクロス部材が好適に用いられ、スクレーパ21,22,23で取り切れなかったスパッタ5を除去している。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置によれば、スクイズロール10の上流側の上方を覆うカバー部材20によって飛散したスパッタ5がオープン管2に付着することを防止するとともに、スクイズロール10の上縁部11や溝12内に接するスクレーパ21,22,23を上流側及び下流側に設けているので、スクイズロール10に付着したスパッタ5を除去して、スクイズロール10に付着したスパッタ5による圧痕の発生を抑制することができる。また、成形ロール8の直前に拭上手段30を有しているので、溶接鋼管7の外周に付着したスパッタ5を除去して成形ロール8による圧痕の発生を防止することができ、溶接鋼管の外観不良の低減を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る溶接鋼管のスパッタ除去装置は、従来のスパッタ除去方法のように、大掛かりな設備を加えることなく、容易かつ安価にスパッタ除去装置を設置するとができる。
【0034】
なお、以上の実施の形態では、スクレーパ21,22,23は、スクイズロール10の外周に3つ設けた場合について説明を行ったが、その数は必要に応じて適宜変更可能である。また、カバー部材20は、スクイズロール10の上流側の上方を覆う場合について説明を行ったが、スクイズロール10の下流側に延設しても構わないし、スクイズロール10全体を覆うように形成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 溶接鋼管の製造装置, 2 オープン管, 3 ワークコイル, 4 遮蔽板, 5 スパッタ, 6 バリ取り装置, 7 溶接鋼管, 8 成形ロール, 10 スクイズロール, 11 上縁部, 12 溝, 20 カバー部材, 21 第1のスクレーパ, 22 第2のスクレーパ, 23 第3のスクレーパ, 24 スクレーパ本体, 25 上片部, 26 不織布, 30 拭上手段。
図1
図2
図3
図4