(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ハット形状成形部品の製造方法、および金型
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20240314BHJP
B21D 22/22 20060101ALI20240314BHJP
B21D 24/04 20060101ALI20240314BHJP
B21D 22/24 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D22/22
B21D24/04 A
B21D22/24
(21)【出願番号】P 2020070393
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 輝
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-046637(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194963(WO,A1)
【文献】特開2019-089132(JP,A)
【文献】特開2009-131878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/22
B21D 24/04
B21D 22/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の長辺部分および対向する一対の短辺部分を有する金属板をプレス成形して、ハット形状成形部品を製造する方法であって、
前記金属板の少なくとも前記一対の長辺部分をブランクホルダによって保持した状態で、上型および下型を用いて前記金属板をハット形状に成形する絞り加工を行うと共に、
前記金属板における前記ブランクホルダによって保持しない前記一対の短辺部分の少なくとも一方を、前記上型および前記下型を用いて上下方向に曲げる曲げ加工を行
い、
前記絞り加工を前記曲げ加工より先行して開始する、
ハット形状成形部品の製造方法。
【請求項2】
下死点における前記上型と前記下型との隙間は、前記曲げ加工により前記金属板を上下方向に曲げる箇所よりも金型外側において、前記金属板の厚さよりも大きい、請求項
1に記載のハット形状成形部品の製造方法。
【請求項3】
前記絞り加工および前記曲げ加工を行う工程の後に、前記金属板における前記曲げ加工により曲げた部分を切断して除去するトリムカット加工を行う、請求項1
又は2に記載のハット形状成形部品の製造方法。
【請求項4】
対向する一対の長辺部分および対向する一対の短辺部分を有する金属板をプレス成形して、ハット形状成形部品を製造するための金型であって、
上下方向に互いに対向する上型および下型と、
前記金属板の少なくとも前記一対の長辺部分を保持するブランクホルダと、を備え、
前記上型および前記下型は、
前記金属板を前記ブランクホルダによって保持しながら成形する絞り加工と、前記金属板における前記ブランクホルダによって保持しない前記一対の短辺部分の少なくとも一方
を上下方向に曲げる
曲げ加工と、が行われ、且つ、前記絞り加工が前記曲げ加工より先行して開始されるように構成され、
下死点における前記上型と前記下型との隙間は、前記曲げ加工により前記金属板を上下方向に曲げる箇所よりも金型外側において、前記金属板の厚さよりも大きい
、
金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハット形状成形部品の製造方法、および金型に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用い、略矩形状の金属板(鋼板)をプレス成形して、ハット形状成形部品を製造する方法が公知である。
【0003】
特許文献1には、周縁にアール部を有する下型および上型で、略矩形状の板材をプレス成形するプレス成形方法が開示されている。このプレス成形方法は、板材のうち対向する二辺の端部をブランクホルダで押さえ、他の二辺の端部を押さえず、他の二辺の端部を下型のアール部よりも内方に且つトリムラインよりも外方にセットすることにより、プレス成形品の歩留りを向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような略矩形状板材のプレス成形品の製造方法では、金属板の全周をブランクホルダで押さえた場合よりもプレス成形品の歩留りは向上する。しかしながら、ハット形状成形部品において、ブランクホルダで押えない金属板の端部近傍(製品内)に、へこみまたは出っ張り等の部材余りが発生する成形がある場合、しわの発生を制御できない。さらに、製品外(トリムラインよりも金型外側の製品外の部分)においても、しわが発生し、金属板に発生したしわを上型と下型とで潰すことにより、金型を損傷する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、ブランクホルダで押さえない金属板の端部近傍における製品内のしわの発生を低減し、且つ製品外に発生するしわを上型と下型とで潰すことによる金型の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るハット形状成形部品の製造方法は、対向する一対の長辺部分および対向する一対の短辺部分を有する金属板をプレス成形して、ハット形状成形部品を製造する方法である。金属板の少なくとも一対の長辺部分をブランクホルダによって保持した状態で、上型および下型を用いて金属板をハット形状に成形する絞り加工を行う。また、金属板におけるブランクホルダによって保持しない一対の短辺部分の少なくとも一方を、上型および下型を用いて上下方向に曲げる曲げ加工を行う。
【0008】
本発明の一態様に係る金型は、対向する一対の長辺部分および対向する一対の短辺部分を有する金属板をプレス成形して、ハット形状成形部品を製造するための金型である。金型は、上下方向に互いに対向する上型および下型と、金属板の少なくとも一対の長辺部分を保持するブランクホルダと、を備える。上型および下型は、金属板におけるブランクホルダによって保持しない一対の短辺部分の少なくとも一方を、上下方向に曲げるように構成される。下死点における上型と下型との隙間は、曲げ加工により金属板を上下方向に曲げる箇所よりも金型外側において、金属板の厚さよりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係るハット形状成形部品の製造方法、および金型によれば、ブランクホルダによって保持しない金属板の端部近傍(製品内の部分)にへこみまたは出っ張り等の部材余りが発生する成形がある場合でも、しわの発生が低減され、精度の高いプレス成形品を得ることができる。さらに、製品外の部分にしわが発生しても、そのしわを上型と下型とで潰すことによる金型の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る金型を用いてプレス成形したハット形状成形部品の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る金型の断面図である。
【
図3A】下型およびブランクホルダの斜視図である。
【
図3B】プレス成形後のブランク材、下型およびブランクホルダの斜視図である。
【
図4A】金属板に対して曲げ加工を行う工程の説明図である。
【
図4B】金属板に対して曲げ加工を行う工程の説明図である。
【
図4C】金属板に対して曲げ加工を行う工程の説明図である。
【
図4D】金属板に対して曲げ加工を行う工程の説明図である。
【
図5】下死点における上型および下型の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
以下、ハット形状断面を持つハット形状成形部品1(
図1参照)を製造する方法、およびハット形状成形部品1のプレス成形に用いる金型10(
図2参照)を一例として説明する。
【0013】
図1に示すハット形状成形部品1は、センターピラーアウターリンフォースメントと称されるものであって、車両のセンターピラーの内部に形成される補強部品であり、一般的に高張力鋼板等から構成される。
【0014】
なお、
図1において、符号20は、センターピラーアウターリンフォースメント(ハット形状成形部品1)が結合されるプレス成形品であって、ルーフサイドレールアウターと称されるものを示す。
【0015】
図1に示すように、ハット形状成形部品1は、ハット形状成形部品1の素材となるブランク材2と同様に、対向する一対の長辺部分3a,3bと、対向する一対の短辺部分4a,4bとを有して略矩形状に形成される。
【0016】
ハット形状成形部品1は、全体形状としては、天板部5と、一対の側壁部6と、側壁部6からハット形状成形部品1の短手方向外側へとそれぞれ延出するフランジ部7とを有してハット形状断面に形成される。
【0017】
本実施形態に係るハット形状成形部品1の製造方法は、以下の工程から構成される。本実施形態に係るハット形状成形部品1の製造方法における工程は、全て金型を用いるプレス加工によるものである。
【0018】
具体的には、本実施形態に係るハット形状成形部品1の製造方法は、ブランク加工を行う工程、プレス成形(絞り加工、曲げ加工)を行う工程、トリミング加工を行う工程、並びにその他の加工を行う工程とを有して構成される。
【0019】
以下、各工程について説明する。
【0020】
1.ブランク加工
この工程では、細長い略矩形状のハット形状成形部品1を成形するために、平面視で略矩形状の平板である金属板(ブランク材)2を準備(製作)する。このブランク材2としては、例えば、SPFC(自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板)等の鋼板であって、引張強さが340N/mm
2以上で、厚さ(板厚)T(
図5参照)が1.0mm~2.3mmの鋼板が用いられる。
【0021】
本実施形態では、ブランク材2として、引張強さが1470N/mm2で、板厚Tが1.6mmのSPFC(自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板)を用いる。
【0022】
ブランク材2は、製品(完成品)であるハット形状成形部品1の形状から平板状に展開した外形形状を有する。このため、ブランク材2は、少なくとも、対向する一対の長辺部分3a,3bと、対向する一対の短辺部分4a,4bとを有して略矩形状に形成される。
【0023】
このブランク加工を行う工程は、通常行われる工程であり一般的なものであるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
2.プレス成形(絞り加工、曲げ加工)
この工程では、ブランク材2を、金型10(上型11および下型13)を用い、プレス成形により、細長い略矩形状のハット形状成形部品1に成形する。
【0025】
図2及び
図3Aに示すように、プレス成形(絞り加工、曲げ加工)に用いる金型10は、例えば、上下方向に互いに対向する上型11(ダイ12)および下型13(ポンチ14)と、ブランクホルダ15と、クッションピン16とを有して構成される。
【0026】
本実施形態における絞り加工は、上記構成を用いた上向き絞り金型により実施される。
【0027】
本実施形態では、ブランク材2の全周をブランクホルダ15によって保持(ブランクホールド)してプレス成形するのではない。本実施形態では、ブランク材2の対向する一対の長辺部分3a,3bをブランクホルダ15によって保持し、対向する一対の短辺部分4a,4bはブランクホルダ15によって保持せずにプレス成形する。
【0028】
ブランク材2をブランクホルダ15によって保持しながらハット形状断面にプレス成形する工程は、絞り加工を行う工程である。本実施形態における絞り加工は、一工程(一段階)で行うが、ハット形状断面の深さが深い(側壁部6の高さが高い)場合は、多段工程(多段階)に分けて実施することも可能である。
【0029】
以下に、ブランク材2における絞り加工が実施される一対の長辺部分3a,3bの加工手順を
図3Aおよび
図3Bを用いて説明する。
【0030】
図3Aには、ブランク材2の一対の長辺部分3a,3bを保持するブランクホルダ15が示される。
【0031】
プレス機(図示なし)にセットされた上型11(ダイ12)および下型13(ポンチ14)が開いている状態において、ブランク材2がブランクホルダ15上に保持される。
【0032】
プレス機の作動により、ブランク材2は対向する一対の長辺部分3a,3bがダイ12とブランクホルダ15によって挟持される。
【0033】
次いで、プレス成形が開始され、ダイ12とブランクホルダ15によって挟持されたブランク材2がポンチ14を用い絞り加工される。この絞り加工は、後述する曲げ加工より先行して開始される。
【0034】
そして、さらに絞り加工が進み、上型11がプレス下死点の位置(下死点)に到達すると、
図3Bに示すように、プレス成形(絞り加工)が完了する。
【0035】
ブランク材2の対向する一対の短辺部分4a,4bのうち、一方の短辺部分4bはブランクホルダ15によって保持せずに曲げ加工が行われる。本実施形態における曲げ加工は、一方の短辺部分4bのみに対して行うが、ハット形状成形部品1の形状(製品形状)によっては(例えば、バンパーリンフォースメント)、一対の短辺部分4a,4bの両方に対して行うことも可能である。
【0036】
以下に、ブランク材2における曲げ加工が実施される短辺部分4bの加工手順を
図4Aから
図4Dを用いて説明する。
【0037】
図4Aから
図4Dは、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持せずに曲げ加工が行われる短辺部分4b(天板部5の長手方向)の概略的な断面図であり、プレス成形開始からプレス成形完了までの曲げ加工の加工手順を示す。
【0038】
図4Aに示すように、プレス成形が開始され、ダイ12とブランクホルダ15によって挟持されたブランク材2の絞り加工が曲げ加工より先行して開始されて、下型13(ポンチ14)における凸状の頂点部(下型頂点部)17がブランク材2に当接する。
【0039】
図4Bに示すように、さらに絞り加工が進み、下型13(ポンチ14)と上型11(ダイ12)とにより、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない短辺部分4bが凸状に持ち上げるように曲げられる曲げ加工が開始される。
【0040】
図4Cに示すように、さらに曲げ加工が進み、上型11(ダイ12)における凸状の頂点部(上型頂点部)18がブランク材2に当接する。
【0041】
図4Dに示すように、さらに曲げ加工が進み、上型11がプレス下死点の位置に到達すると、プレス成形(曲げ加工)が完了する。
【0042】
図3Bで示したようにブランク材2がプレス成形されるときに、
図4Aから
図4Dに示すように、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持されない短辺部分4bが上下方向に曲げられて凸状に形成される。このようにすることにより、ブランク材2は、ブランクホルダ15によって保持されない短辺部分4bの凸状部と、ダイ12とブランクホルダ15によって挟持される一対の長辺部分3a,3bとで長手方向に引っ張りながらプレス成形される。
【0043】
ブランク材2の短手方向のブランクホールド並びに長手方向の引っ張りにより、ハット形状成形部品1の端部近傍の天板部5または側壁部6等にへこみまたは出っ張り等の部材余りが生じる場合でも、端部近傍(製品内の部分)のしわの発生が低減される。このため、本実施形態によれば、精度の高いプレス成形品(ハット形状成形部品1)を得ることが可能である。
【0044】
ハット形状成形部品1の長手方向の端部(短辺部分4b)においては、短手方向に対して絞り加工を行いながら長手方向に対して曲げ加工を実施することにより材料余りが発生し、凸状の下型頂点部17よりも金型外側においてしわが多く発生し得る。ただし、プレス成形後のブランク材2にしわが多く発生した部分は、最終的に切断されて製品となるハット形状成形部品1から除去される(トリムカット)。
【0045】
図5に示すように、本実施形態では、プレス下死点の位置における上型11および下型13の隙間(間隔)は、曲げ加工によりブランク材2を凸状に曲げる下型頂点部17では、ブランク材2の厚さTと同等である(隙間Ga)。この隙間(金型接線方向と直角方向での隙間)は、下型頂点部17からブランク材2の長手方向外側(金型外側)に向けて徐々に増加され、金型最外部では「板厚T+所定厚さ」の隙間Gbとされる。
【0046】
本実施形態では、前述の所定厚さが3.0mmとされて、プレス下死点の位置における上型11と下型13との隙間は、金型最外部において、4.6mm(1.6mm(板厚T)+3.0mm(所定厚さ))とされる(隙間Gb)。
【0047】
その一方、プレス下死点の位置における上型11および下型13の隙間は、曲げ加工によりブランク材2を凸状に曲げる下型頂点部17よりもブランク材2の長手方向内側(金型内側)では、ブランク材2の厚さTと同等とされる(隙間Gc)。ブランク材2における下型頂点部17よりも金型内側の部分は、ダイ12とブランクホルダ15によって挟持され、幅方向に引っ張られながらプレス成形されるため、部材が伸びて、当該部分ではしわが発生し難いためである。
【0048】
前述のプレス成形は、ブランク材2の対向する一対の長辺部分3a,3bをダイ12とブランクホルダ15によって挟持し、一対の短辺部分4a,4bの一方(短辺部分4b)に対して曲げ加工を行う例を示した。これに限定はされず、ハット形状成形部品1の形状(製品形状)によっては、ブランク材2の対向する一対の長辺部分3a,3bをダイ12とブランクホルダ15によって挟持し、一対の短辺部分4a,4bの両方に対して曲げ加工を行うことも可能である。
【0049】
3.トリミング加工
この工程では、プレス成形後のハット形状成形部品1の短辺部分4bにおける不要な外周部分(製品外の部分)が、金型を用いてトリミング加工(切断、除去)されて、製品の外形形状が定まる。
【0050】
本実施形態では、プレス成形後のハット形状成形部品1における短辺部分4bにおいて、下型頂点部17よりも金型内側のトリムラインTL(
図3B参照)でトリミング加工が実施される。
【0051】
このトリミング加工を行う工程自体は、通常行われる工程であり一般的なものであるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
4.その他の加工
前述の工程以外にも、その他の工程を行う。
【0053】
その他の工程では、例えば、トリムカット加工を行う工程の後に、ハット形状成形部品1に残留しているひずみを矯正し、ハット形状成形部品1における他の部品との組み付け部の面精度を高めるためのリストライク加工が実施される。また、例えば、他の部品との組み付けのときに使用するピアス孔をハット形状成形部品1に形成するピアス孔加工等も実施される。
【0054】
その他の工程の一例であるリストライク加工およびピアス孔加工は、通常行われる工程であり一般的なものであるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0056】
(1)本実施形態に係るハット形状成形部品1の製造方法は、対向する一対の長辺部分3a,3bと対向する一対の短辺部分4a,4bとを有するブランク材2をプレス成形して、ハット形状成形部品1を製造する方法である。ブランク材2の少なくとも一対の長辺部分3a,3bをブランクホルダ15によって保持した状態で、上型11および下型13を用いてブランク材2をハット形状に成形する絞り加工を行う。ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない一対の短辺部分4a,4bの少なくとも一方を、上型11および下型13を用いて上下方向に曲げる曲げ加工を行う。
【0057】
プレス成形の工程においてハット形状成形部品1の短辺部分4bを凸状に曲げる曲げ加工を行うことにより、ブランク材2を長手方向に引っ張りながらプレス成形(絞り加工)をすることができる。このため、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない短辺部分4bの端部近傍(製品内の部分)でのしわの発生が低減され、精度の高いプレス成形品であるハット形状成形部品1を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るハット形状成形部品1の製造方法によれば、ポンチ14、ダイ12、およびブランクホルダ15といった一般的な金型構造を用いてプレス成形を行うことができ、生産性を落とさずに高品質のハット形状成形部品1を生産することができる。
【0059】
(2)絞り加工を曲げ加工より先行して開始する。
【0060】
このようにすることにより、ブランク材2を長手方向に引っ張りながらプレス成形(絞り加工)をすることができ、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない短辺部分4b(製品内の部分)に部材余りが発生する成形がある場合でもしわの発生が低減される。
【0061】
(3)下死点における上型11と下型13との隙間は、曲げ加工によりブランク材2を上下方向に曲げる箇所(下型頂点部17)よりも金型外側において、ブランク材2の厚さTよりも大きい(隙間Gb)。
【0062】
プレス成形の工程においてハット形状成形部品1の短辺部分4b(製品外の部分)にしわが発生しても、そのしわを金型10(上型11および下型13)によって潰すことが回避されるため、金型10の損傷を効果的に抑制することができる。
【0063】
(4)絞り加工および曲げ加工を行う工程の後に、ブランク材2における曲げ加工により曲げた部分を切断して除去するトリムカット加工を行う。
【0064】
プレス成形の後に、ハット形状成形部品1の短辺部分4bにおける不要な外周部分(製品外の部分)を切断して除去することにより、ハット形状成形部品1の製品品質の向上を図ることが可能である。
【0065】
(5)本実施形態に係る金型10は、対向する一対の長辺部分3a,3bと対向する一対の短辺部分4a,4bとを有するブランク材2をプレス成形して、ハット形状成形部品1を製造するためのものである。金型10は、上下方向に互いに対向する上型11および下型13と、ブランク材2の少なくとも一対の長辺部分3a,3bを保持するブランクホルダ15と、を備える。上型11および下型13は、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない一対の短辺部分4a,4bの少なくとも一方を、上下方向に曲げるように構成される。下死点における上型11と下型13との隙間は、曲げ加工によりブランク材2を上下方向に曲げる箇所(下型頂点部17)よりも金型外側において、ブランク材2の厚さTよりも大きい(隙間Gb)。
【0066】
プレス成形の工程においてハット形状成形部品1の短辺部分4bを凸状に曲げる曲げ加工を行うことにより、ブランク材2を長手方向に引っ張りながらプレス成形(絞り加工)をすることができる。このため、ブランク材2におけるブランクホルダ15によって保持しない短辺部分4b(製品内の部分)でのしわの発生が低減され、精度の高いプレス成形品であるハット形状成形部品1を得ることができる。
【0067】
プレス成形の工程においてハット形状成形部品1の短辺部分4b(製品外の部分)にしわが発生しても、そのしわを金型10(上型11および下型13)によって潰すことが回避されるため、金型10の損傷を効果的に抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る金型10によれば、ポンチ14、ダイ12、およびブランクホルダ15といった一般的な金型構造を用いてプレス成形を行うことができ、生産性を落とさずに高品質のハット形状成形部品1を生産することができる。
【0069】
ところで、本発明のハット形状成形部品の製造方法は前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ハット形状成形部品(センターピラーアウターリンフォースメント)
2 ブランク材(金属板)
10 金型
11 上型
13 下型
15 ブランクホルダ
17 凸状の頂点部(下型頂点部)
T 厚さ(板厚)
Gb 隙間
TL トリムライン