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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20240314BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240314BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/62
H01L23/02 F
H01L23/02 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020076894
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021174852
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮村 真一
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135696(JP,A)
【文献】特開2006-216817(JP,A)
【文献】特開平04-023383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0031118(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103907249(CN,A)
【文献】特開2017-037908(JP,A)
【文献】特開2005-303242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/02
H01L 31/08-31/10
H01L 31/18
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
H10K 30/60-30/65
H10K 39/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、基板金属層で被覆された基板接合面を有する基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、内縁が円形状のフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光性キャップを有し、
前記フランジ接合面は、表面が金属層であり、平坦部と前記平坦部から突出し当該円形状の前記内縁と同心の円環状凸部である押圧環とを有し、
前記基板金属層及び前記金属層は、前記基板金属層と前記押圧環の頂部とが一定の間隔で接合材によって接合されている、半導体発光装置。
【請求項2】
前記フランジ接合面は円環形状を有し、
前記押圧環は、前記フランジ接合面の当該円環と同心である同心円に沿って設けられている、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記押圧環は、前記フランジ接合面の当該円環の幅の中心を円周とする前記同心円に沿って設けられている、請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記押圧環は、前記同心円の円周に垂直な断面において半円形状、矩形状又は台形状を有する、請求項2または3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記押圧環の頂部及び前記基板金属層は、前記押圧環の頂部の全周に渡って一定の間隙で接合されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記押圧環は、前記押圧環の頂部の全周に渡って前記頂部が前記基板金属層に直接に接している、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記フランジ接合面は、前記押圧環と同心であり、前記平坦部から突出した円環状凸部であって前記押圧環よりも径の大きな補助押圧環を有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記フランジ接合面は矩形状の外縁を有し、
前記フランジ接合面は、前記フランジ接合面の対角線上であって、前記押圧環の外側に、前記平坦部から突出した凸部である補助押圧部をさらに有する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記補助押圧部の突出高さは前記押圧環の突出高さよりも小さい、請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記補助押圧部は、複数の補助押圧要素からなり、前記複数の補助押圧要素のうち少なくとも1つは前記対角線上に位置している、請求項8又は9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記複数の補助押圧要素は、前記押圧環の外側であって、前記押圧環の同心円上に配されている、請求項10に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記半導体発光素子は窒化アルミ系の発光素子である、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記半導体発光素子は、波長265~415nmの紫外光を発光する発光素子である、請求項12に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記透光キャップは、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスからなる、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置、特に紫外光を放射する半導体発光素子が内部に封入された半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を半導体パッケージの内部に封入する半導体装置が知られている。半導体発光モジュールの場合では、半導体発光素子が載置された支持体に、発光素子からの光を透過するガラスなどの透明窓部材が接合されて気密封止される。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、半導体発光素子を収容する凹部が設けられた基板と、窓部材とが接合された半導体発光モジュールが開示されている。
【0004】
また、特許文献3、4には、紫外線発光素子が搭載された実装基板と、スペーサと、ガラスにより形成されたカバーとが接合された紫外光発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-18873号公報
【文献】特開2018-93137号公報
【文献】特開2016-127255号公報
【文献】特開2016-127249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板と窓部材との間の封止性、接合信頼性について一層の向上が求められている。紫外光を放射する半導体発光素子、特にAlGaN系の半導体発光素子は、気密が不十分であると劣化し易く、当該半導体発光素子が搭載された半導体装置には高い気密性が求められる。
【0007】
また、AlGaN系結晶は水分によって劣化する。特に、発光波長が短波長になるほどAl組成が増加して劣化し易い。そこで、発光素子を収めるパッケージ内部に水分が侵入しない気密構造として、基板とガラス蓋を金属接合材で気密する構造が採用されていたが、多湿環境下又は水回りで使用される場合に気密が十分でないという問題があった。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高接合性及び高気密性を有するとともに、高い信頼度及び高い耐環境性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、基板金属層で被覆された基板接合面を有する基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、内縁が円形状のフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光性キャップを有し、
前記フランジ接合面は、表面が金属層であり、平坦部と前記平坦部から突出し当該円形状の前記内縁と同心の円環状凸部である押圧環とを有し、
前記基板金属層及び前記フランジ金属層は、前記基板金属層と前記押圧環の頂部とが一定の間隔で接合材によって接合されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
図1B】半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
図1C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図1D】半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
図1E】第1の実施形態の透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
図2図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図3A】基板11と透光キャップ13の接合前の状態を模式的に示す断面図である。
図3B】基板11と透光キャップ13の接合後の状態を模式的に示す断面図である。
図4A】基板11及びフランジ部13Bの接合部の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図4B】基板11及びフランジ部13Bの接合部の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図5A】第2の実施形態による半導体発光装置30の上面を模式的に示す平面図である。
図5B】半導体発光装置30の側面を模式的に示す図である。
図5C】半導体発光装置30の裏面を模式的に示す図である。
図5D】半導体発光装置30の内部構造を模式的に示す図である。
図5E】第2の実施形態の透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
図6図5AのB-B線に沿った半導体発光装置30の断面を模式的に示す断面図である。
図7A】基板11及びフランジ部13Bの接合部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図7B】接合部の部分拡大断面図であり、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に突き当たっている場合を示している。
図8A】第2の実施形態の改変例を模式的に示す平面図である。
図8B】第2の実施形態の改変例のフランジ部13Bの角部を拡大して示す上面図である。
図8C】第2の実施形態の改変例のフランジ部13Bの角部を拡大して示す上面図である
図9】第2の実施形態の他の改変例を示す上面図である。
図10】フランジ部13Bの底面が平坦面である場合を示す部分拡大断面図である。
図11】押圧環21Aの外側に、押圧環21Aと同心の円環状凸部である補助押圧環21Cが設けられた場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。図1Bは、半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。図1Dは、半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。また、図2は、図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
【0012】
図1A及び図1Bに示すように、半導体発光装置10は、矩形板形状の基板11と、半円球状のガラスからなる透光性窓である透光キャップ13と、が接合されて構成されている。より詳細には、基板11の上面上には、円環状の金属層12(以下、基板金属層12ともいう。)が形成され、透光キャップ13と接合されている。
【0013】
なお、基板11の側面がx方向及びy方向に平行であり、基板11の上面がxy平面に平行であるとして示している。
【0014】
図1E及び図2に示すように、透光キャップ13は、半円球状のドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。なお、図1Eは、透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
【0015】
フランジ部13Bは円環板形状を有している。フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されており、フランジ接合面が形成されている。基板金属層12上に接合層22によってフランジ金属層21が接合されることによって、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
【0016】
基板11は、ガス等を透過しないセラミック基板である。例えば、高い熱伝導率を有し、気密性に優れた窒化アルミニウム(AlN)が用いられる。なお、基板11の基材としては、アルミナ(Al)等の気密性に優れた他のセラミックを用いることができる。
【0017】
透光キャップ13は、半導体発光装置10内に配された発光素子15からの放射光を透過するガラスからなる。例えば、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスを好適に用いることができる。
【0018】
半導体発光装置10内の封入ガスとしては、ドライな窒素ガスや空気などを用いることができ、あるいは内部を真空としてもよい。
【0019】
図1Dに示すように、基板11上には、半導体発光装置10内の配線電極である第1配線電極(例えば、アノード電極)14A及び第2配線電極(例えば、カソード電極)14Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極14と称する。)。発光ダイオード(LED)又は半導体レーザなどの半導体発光素子15が第1配線電極14A上に金属接合層15Aによって接合され、発光素子15のボンディングパッド15Bがボンディングワイヤ18Cを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0020】
発光素子15は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む半導体構造層が形成されたアルミ窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体発光素子(LED)である。また、発光素子15は、半導体構造層が、反射層を介して導電性の支持基板(シリコン:Si)上に形成(接合)されている。
【0021】
発光素子15は、支持基板の半導体構造層が接合された面の反対面(発光素子15の裏面とも称する)にアノード電極を備え(図示せず)、基板11上の第1配線電極14Aに電気的に接続されている。また、発光素子15は、半導体構造層の支持基板が接合された面の反対面(発光素子15の表面とも称する)にカソード電極(カソード電極パッド15B)を備え、ボンディングワイヤを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0022】
発光素子15は、波長265~415nmの紫外光を発光する窒化アルミ系の発光素子であることが好適である。具体的には、発光中心波長が、265nm、275nm、355nm、365nm、385nm、405nm又は415nmの発光素子を用いた。
【0023】
窒化アルミ系の紫外線を放射する発光素子(UV-LED素子)を構成する半導体結晶のAl組成は高く、酸素(O2)や水分(H2O)によって酸化劣化され易い。
【0024】
また、基板11上には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bに接続されたツェナーダイオード(ZD)である保護素子16が設けられ、発光素子15の静電破壊を防止する。
【0025】
図1Cに示すように、基板11の裏面には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bにそれぞれ接続された第1実装電極17A及び第2実装電極17B(以下、特に区別しない場合には、実装電極17と称する。)が設けられている。具体的には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bの各々は、例えば銅(Cu)からなる金属ビア18A、18Bを介してそれぞれ第1実装電極17A及び第2実装電極17Bに接続されている。
【0026】
図2を参照すると、半導体発光装置10は配線回路基板(図示しない)上に実装され、第1実装電極17A及び第2実装電極17Bへの電圧印加によって、発光素子15は発光し、発光素子15の表面(光取り出し面)からの放射光LEは透光キャップ13を経て外部に放射される。
【0027】
次に、基板11と透光キャップ13のフランジ部13Bとの接合について説明する。
(透光キャップ13及びフランジ部13B)
また、図1A及び図1Bに示すように、透光キャップ13は、半円球状の窓部であるドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。フランジ部13Bは円柱状の外形を有している。より詳細には、フランジ部13Bの底面はドーム部13Aの中心と同心の円環形状(中心:C)を有している。すなわち、フランジ部13Bの外縁(外周)は、フランジ部13Bの内縁(内周)と同心である。
【0028】
図3Aは、基板11と透光キャップ13の接合前の状態を模式的に示す断面図である。フランジ部13Bの円環状底面の半径方向(幅方向)の中央部には、フランジ部13Bの底面(フランジ接合面)と同心円の円周に沿って凸部13Cが形成されている。すなわち、フランジ部13Bの底面は、平坦面と当該平坦面から突出した凸部13Cとが形成されている(以後、円環状凸部と称することもある)。また、円環状凸部13Cの当該同心円の円周に垂直な断面形状は半円形であるが、これに限定されない。例えば、矩形状又は台形状であってもよい。
(フランジ金属層21)
また、フランジ部13Bの底面には金属層21が固着されている。凸部13C及びフランジ金属層21によって、フランジ部13Bの底面に沿って、表面が金属で被覆された円環状の凸部である押圧環21Aが形成されている。
(基板金属層12)
図1A及び図1Dに示すように、基板11上には、円環形状を有する金属環体である基板金属層12が固着され、基板接合面が形成されている。より詳細には、基板金属層12が固着されている基板11の接合領域は平坦であり、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面に対応する形状(すなわち、円環形状)及び大きさを有している。
【0029】
また、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面のフランジ金属層21の全体を包含する大きさを有している。基板金属層12は、第1配線電極14A、第2配線電極14B、発光素子15及び保護素子16とは電気的に絶縁され、これらを取り囲むように形成されている。
【0030】
円環状の基板金属層12上に、円環状の接合材が載置され、加熱しつつ、透光キャップ13に力Fを印加し押圧することによって、図3Bに示すように、基板11に透光キャップ13が接合された円環状のキャップ接合層22が形成される。
【0031】
基板金属層12は、基板11上に、順にタングステン、ニッケル、金を積層した構造(W/Ni/Au)あるいは、ニッケルクロム、金、ニッケル、金 を積層した構造(NiCr/Au/Ni/Au)を有している。
【0032】
フランジ部13Bの底面の金属層21は、フランジ部13Bの基材(ガラス)上に、順にクロム、ニッケル、金を積層した構造(Cr/Ni/Au)、あるいはチタン、パラジウム、銅、ニッケル、金を積層した構造(Ti/Pd/Cu/Ni/Au)を有している。
【0033】
キャップ接合層22となる接合材は、例えば、フラックスを含まない円環状のAuSn(金スズ)シートであり、Snを22wt%含有するもの(溶融温度:約300℃)を用いた。金スズ合金シートの両表面に、Au(10~30nm)層を備えることもできる。AuSn合金の酸化を防ぎ、気密性を向上する。また、このAu層は、溶融固化(接合)時に、キャップ接合層22に溶解される。
[発光装置10の製造方法]
以下に、発光装置10の製造方法について、詳細かつ具体的に説明する。
(素子接合工程)
まず、基板11の第1配線電極14A上にAuSn揮発性ソルダーペーストはんだを塗布する。次に、発光素子15を揮発性ソルダーペースト上に載せて、基板を300℃まで加熱して、AuSnを溶融・固化して第1配線電極14A上に発光素子15を接合する。なお、保護素子16を搭載する場合には同時に行う。このとき、揮発性ソルダーペーストに含まれるフラックスは殆ど揮発する。
【0034】
次に、発光素子15の上部電極のボンディングパッド15Bと第2配線電極14Bとの間をボンディングワイヤ18C(Auワイヤ)によって電気的に接続する。
(フラックス追揮発工程)
上記のように発光素子15が接合された基板11をヒーターにセットし、窒素雰囲気下で、アニール温度320℃で20秒加熱して、揮発性ソルダーペーストの残留物(フラックス)を揮発させる。
【0035】
追揮発温度の下限は、残留物(フラックス)が揮発する300℃以上(すなわち、接合層22の溶融温度以上)が好ましい。また、追揮発温度の上限は、接合層22が再溶融しない温度以下、例えば330℃以下が好ましい。
(エキシマ光洗浄工程)
追揮発後の基板11をエキシマ-光照射装置にセットし、2000 mJ/cm2以上のエキシマ光を基板に照射する。これにより、基板11及び発光素子15の表面に吸着している残留物(フラックス)を分解除去した。
(キャップ接合工程)
エキシマ光洗浄工程後の基板11と、透光キャップ13とをキャップ接合装置にセットする。次に、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を真空状態にし、温度275℃で15分加熱処理(アニール処理)する。
【0036】
続いて、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を封入ガスであるドライ窒素(N)ガス、1気圧(101.3kPa)で満たす。次に、基板11の基板金属層12上に環状AuSnシート(キャップ接合層22の接合材)載せ、さらにその上に透光キャップ13を載せ押圧する。
【0037】
図3Aに示すように、透光キャップ13を環状AuSnシートに押圧しつつ、320℃まで加熱する。加熱により、AuSnシートは押圧環21Aに密着した部分から内側および外側に向かって溶融し、金属層12および21の金を若干量溶融しつつ固化する、又は冷却により固化する。以上のように、基板11及び透光キャップ13が接合され、半導体発光装置10が完成する。
[基板11及びフランジ部13Bの接合部]
上記した基板11及びフランジ部13Bの接合によって、図4Aに示すように、押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げた円環状の領域が狭窄接合領域JNを形成する。また、押圧環21Aの内側及び外側、すなわち狭窄接合領域JNの内側及び外側に、上面視において(フランジ部13Bに垂直な方向(z方向)から視たとき)、それぞれ円環状の内側接合領域JIと外側接合領域JOが形成される。
【0038】
この場合、押圧環21Aの頂部及び基板金属層12は、押圧環21Aの頂部の全周に渡って一定の間隔(間隙)GAで接合される。なお、以下においては、説明及び理解の容易さのため、内側領域JI、狭窄接合領域JN及び外側接合領域JOの幅をそれぞれ同一符号(JI、JN、JO)を用いて説明する。
【0039】
なお、上記接合工程において、さらに押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げ、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に突き当たるまで押圧することができる。この場合、図4Bに示すように、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが接する円形状の接続線、すなわち押圧環21A及び基板金属層12の間に接合材(AuSn)が存在しない円形状の接続部JLが形成され、この部分に線状の気密構造が形成される。
【0040】
すなわち、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に密着した円形状の気密構造が形成される。この場合、円形状の接続部JLにおいて、押圧環21Aの頂部及び基板金属層12の間隔(間隙)GA=0である。
【0041】
上記したように、押圧環21Aによって、キャップ接合層22は、押圧環21Aの中心を境に、内側接合領域JI、狭窄接合領域JN及び外側接合領域JOの3領域に区分される。押圧環21Aは、接合材の押圧部であると同時に、キャップ接合層22の領域区分、及び位置決めの機能を有する。
【0042】
また、押圧環21Aは、押圧環21Aの頂部と基板金属層12との間の間隙(ギャップ)GAの制御による接合材のオーバーフロー防止の機能を有する。
【0043】
内側接合領域JI及び外側接合領域JOは、押圧環21Aに対してフィレットとしての機能を有し、シェア強度、すなわち横方向(接合面に平行な方向)の破壊強度を向上する。
【0044】
さらに、間隙GA=0の場合には、狭窄接合領域JNは、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが位置JL(図4B)で線状(円状)に接した線状気密として働き、内側接合領域JI及び外側接合領域JOは、帯状気密として働く。
【0045】
従って、接合結晶部を薄く、もしくは無くすことができ、リーク発生の原因となる金属粒界面の面積を極小化できるため、気密歩留まりを向上できる。
【0046】
また、内側接合領域JI及び外側接合領域JOのキャップ接合層22は、押圧環21Aを起点に内側および外側に向かって溶融しつつ固化するので応力の内在を防ぎ、接合層22を形成する金属粒界間に間隙ができることを防止できるため、気密歩留まりを向上できる。
【0047】
狭窄接合領域を採用し、線状気密又は帯状気密にすることにより、接合不良が発生する領域を小さくできるため、気密性を向上することができる。また、リーク発生の原因となる金属粒界面の面積を極小化できるため、気密性を向上することができる。さらに、狭窄接合領域とその両側に気密構造を有するため高い気密信頼性が得られる。また、さらに、金属粒界間に間隙ができることを防止できるため、気密性を向上することができる。
【0048】
なお、押圧環21Aは、内側接合領域JI及び外側接合領域JOの幅が等しくなる(すなわち、幅JI=JO)ように構成されていることが好ましい。すなわち、押圧環21Aは、円環状のフランジ金属層21(フランジ接合面)の当該円環の幅の中心を円周とする円に沿って設けられている。
【0049】
また、透光キャップ13の窓部であるドーム部13Aの肉厚は、全体が等厚であるように、又は中央部を厚く(凸メニスカスレンズ)して配光を狭くし、又は周囲を厚く(凹メニスカスレンズ)して配光を広くすることができる
[第2の実施形態]
図5Aは、本発明の第2の実施態様による半導体発光装置30の上面を模式的に示す平面図である。図5B及び図5Cは、それぞれ半導体発光装置30の側面及び裏面を模式的に示す図である。図5Dは、半導体発光装置30の内部構造を模式的に示す図である。図5Eは、透光キャップ13の1/4の部分を模式的に示す斜視図である。また、図6は、図5AのB-B線に沿った半導体発光装置30の断面を模式的に示す断面図である。なお、図6は、図面及び説明の明確さのため透光キャップ13の片側1/2の部分を示している。
【0050】
図5A及び図5Bに示すように、半導体発光装置30は、矩形の板形状の基板11と、半円球状のガラスからなる透光性窓である透光キャップ13と、が接合されて構成されている。より詳細には、図5Dに示すように、基板11の上面上には、基板金属層12が形成され、透光キャップ13と接合されている。以下に、基板11と透光キャップ13のフランジ部13Bとの接合について、より詳細に説明する。
(透光キャップ13及びフランジ部13B)
図5A及び図6に示すように、第2の実施形態の透光キャップ13は、半円球状の窓部であるドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。
【0051】
図5A及び図5Eに示すように、本実施形態の透光キャップ13は、第1の実施形態の透光キャップ13とは異なり、フランジ部13Bは角柱状の外形を有している。より詳細には、フランジ部13Bは外縁(外周)が矩形である板形状を有している。ここでは、フランジ部13Bが正方形状の外縁を有している場合について説明する。なお、フランジ部13Bの内縁はドーム部13Aの縁部に接続されており、円形状(中心:C)を有している。
【0052】
図5A及び図6に示すように、フランジ部13Bの底面には、ドーム部13Aと同心円(中心:C)の円環状の凸部13Cが形成されている。円環状凸部13Cの当該同心円の円周に垂直な断面形状は半円形であるが、これに限定されない。例えば、矩形状又は台形状であってもよい。
【0053】
さらに、正方形状の外縁を有するフランジ部13Bの対角線DL上であって、円環状凸部13Cの外側に円環状凸部13Cから離間して半円球状の凸部13Dが設けられている
(フランジ金属層21)
また、図6に示すように、フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されている。すなわち、フランジ接合面は、内縁が円形状を有し、外縁が矩形状を有している。
【0054】
凸部13C及びフランジ金属層21によって、フランジ部13Bの底面に沿った円環状の凸部である押圧環21Aが形成されている。また、凸部13Dの表面がフランジ金属層21によって被覆された凸部である補助押圧部21Bが形成されている。
(基板金属層12)
図5A及び図5Dに示すように、基板11には、外縁が矩形形状の基板金属層12が固着され、基板接合面が形成されている。すなわち、基板金属層12は、内縁(内周)が円形状で外縁が矩形形状のフランジ部13Bの底面に対応する形状を有している。また、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面のフランジ金属層21の全体を包含する大きさを有している。
【0055】
基板金属層12は、第1配線電極14A、第2配線電極14B、発光素子15及び保護素子16とは電気的に絶縁され、これらの周囲を取り囲むように形成されている。
【0056】
基板金属層12上に、フランジ部13Bの底面に対応する形状及び大きさを有する接合シートである接合層22が載置され、加熱しつつ、透光キャップ13に力Fを印加し押圧することによって、図6に示すように、基板11と透光キャップ13とを接合することができる。すなわち、フランジ金属層21が接合層22によって基板金属層12に接合されることによって、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
[基板11及びフランジ部13Bの接合部]
図7Aは基板11及びフランジ部13Bの接合部を拡大して示す部分拡大断面図である。上記した基板11及びフランジ部13Bの接合によって、押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げた円環状の領域が第1の狭窄接合領域JN1を形成する。また、押圧環21Aの内側及び外側、すなわち第1の狭窄接合領域JN1の内側及び外側にそれぞれ内側接合領域JIと中間接合領域JMが形成される。
【0057】
本実施形態の場合、内側接合領域JIは、上面視において円環状形状を有する。また、中間接合領域JMは、フランジ部13Bの対角線DLに沿った帯状の領域として形成される。
【0058】
また、当該接合時に、補助押圧部21Bによって、接合材AuSnが押し広げた第2の狭窄接合領域JN2が形成される。すなわち、補助押圧部21Bが半円球状の場合、フランジ部13Bの対角線DL上であって押圧環21Aの外側に、上面視において(フランジ部13Bに垂直な方向から視たとき)円形の第2の狭窄接合領域JN2が形成される。
【0059】
第2の狭窄接合領域JN2の内側の領域は中間接合領域JMであり、第2の狭窄接合領域JN2の外側には外側接合領域JOが形成される。
【0060】
以下においては、補助押圧部21Bの高さ(突起の高さ)H2は、押圧環21Aの高さH1よりも小さい場合について説明する。しかし、補助押圧部21B及び押圧環21Aが同じ高さを有していてもよい(H1=H2)。
【0061】
押圧環21Aの頂部及び基板金属層12は、間隙GAを有して接合される。また、補助押圧部21B及び基板金属層12は、間隙GBを有して接合され、間隙GAは間隙GBよりも小さい(GA<GB)。
【0062】
なお、第1の実施形態の場合と同様に、上記接合工程において、さらに押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げ、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に突き当たるまで押圧することができる。この場合、図7Bに示すように、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが直接に接する円形の接続線、すなわち押圧環21A及び基板金属層12の間に接合材(AuSn)が存在しない円形の接続部JLが形成され、線状の気密構造が形成される。
【0063】
すなわち、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に密着した円形状の気密構造が形成される。この場合、円形状の接続部JLにおいて、押圧環21Aの頂部及び基板金属層12の間隔(S間隙)GA=0である。
(補助押圧部21Bの機能)
基板11とフランジ部13Bとの接合(すなわち、接合材の溶融及び固化)は、押圧環21Aからフランジ13Bの外側方向へ接合が進むのが好ましい。しかし、フランジ部13Bが矩形の場合では、押圧環21Aから離れた部分において接合、すなわちAuSn接合材の溶融及び固化が押圧環21Aの部分よりも遅れる場合がある。
【0064】
本実施形態においては、押圧環21Aからの距離が遠いフランジ部13Bの角部領域(対角線DL方向)に補助押圧部21Bを設けているので、当該領域における接合遅れを防止でき、フランジ部13Bの全面に渡る安定な接合が可能である。また、接合遅れを防止することでAuSn接合材の結晶粒界間に間隙ができることも防止できる。
[第2の実施形態の改変例]
図8Aは第2の実施形態の改変例であり、半導体発光装置30の上面から視た構成を模式的に示す平面図である。また、図8Bは、フランジ部13Bの角部を拡大して示す上面図である。本改変例においては、当該角部に複数の押圧要素21B1,21B2,21B3からなる補助押圧部21Bが設けられている。
【0065】
より詳細には、上面視において矩形のフランジ部13Bの対角線DL上に配された1つの押圧要素21B1と、対角線DLから外れた位置に複数の(本改変例では2つの)押圧要素21B2,21B3とが設けられている。このように複数の押圧要素21Bn(nは2以上の整数)からなる補助押圧部21Bを設ける場合には、少なくとも1つの押圧要素は対角線DL上に設けられていることが好ましい。また、補助押圧部21Bは、フランジ部13Bの4つの角部の全てに設けられていることが好ましい。
【0066】
あるいは、図8Cに示すように、複数の押圧要素21Bnが、押圧環21Aと同心円CC(中心:C)の円周上に、すなわち押圧環21Aから等距離であるように配されていてもよい。
【0067】
また、図9は、他の改変例を示す上面図である。当該改変例においては、補助押圧部21Bは、押圧環21Aの外側に、押圧環21Aと同心であり、押圧環21Aよりも径の大きな円環の一部である円環部分として対角線DL上に配されている場合を示している。
【0068】
なお、補助押圧部21Bとして、押圧環21Aと同心円環であり、押圧環21Aよりも径の大きな円環全体である補助押圧環を設けてもよい。
【0069】
本改変例においても、第2の実施形態と同様に、フランジ部13Bの全面に渡る安定な接合が可能である。
【0070】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、押圧環21Aによる領域区分、位置決めの機能、及び接合材のオーバーフロー防止の機能を有する。また、内側接合領域JI及び中間接合領域JMは、押圧環21Aに対してフィレットとしての機能を有し、シェア強度の破壊強度を向上する機能を有する点も同様である。
【0071】
さらに、間隙GA=0の場合には、狭窄接合領域JNは、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが位置JLで直接に接し、線状(上面視で円形)に接した線状気密として働く。一方、内側接合領域JI及び中間接合領域JMは帯状気密として働く。
[さらなる改変例]
上記した実施形態においては、フランジ部13Bの外縁が円形状を有する場合(第1の実施形態)、及び矩形の場合(第2の実施形態)について説明したが、フランジ部13Bの外縁はn角形(nは3以上の整数)の多角形状を有する場合であってもよい。
【0072】
フランジ部13Bの外縁が円形状又はn角形状を有する場合、図11に示すように、押圧環21Aの外側に、補助押圧部21Bとして押圧環21Aと同心であり、フランジ部13Bの底面の平坦部から突出した円環状凸部であって押圧環21Aよりも径の大きな補助押圧環21Cを設けてもよい。
【0073】
また、フランジ部13Bの外縁(外形)がn角形状(nは3以上の整数)を有する場合においても、補助押圧部21Bとして押圧環21Aと同心円環であり、押圧環21Aよりも径の大きな補助押圧環を設けてもよい。特に、フランジ部13Bの外形が回転対称性の低い、又は回転対称性を有しない形状を有する場合に、高い気密性を得ることができる。
【0074】
なお、上記した実施形態及び改変例においては、押圧環21A及び補助押圧部21Bが、凸部13C及び13Dを有するフランジ部13Bの底面に金属が被覆された構成として説明したが、これに限定されない。
【0075】
例えば、図10に示すように、フランジ部13Bの底面の全体又は一部が平坦面であって、当該底面上に金属層が押圧環21A又は補助押圧部21Bとして機能する凸部を有するように構成されていてもよい。図10は第2の実施形態の場合について示す断面図であるが、第1の実施形態の場合についても同様に適用可能である。また、当該凸部は、断面が半円状に限らず、矩形状、台形状、逆三角状(V字状)であってもよい。
【0076】
また、上記した半導体材料及び金属材料、数値等は、特記した場合を除いて、例示であり、限定的に解釈されない。また、本明細書において、用語「円環」は、楕円環、長円環、オーバル形の環等を含み、円、円球等についても同様である。また、用語「矩形」は、正方形、長方形、及びこれらの角部が面取りされた形状を含む。
【0077】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、高接合性及び高気密性を有するとともに、多湿などの悪環境下においても高い耐環境性を有する、高信頼度及び長寿命の半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
10,30 半導体発光装置
11 基板
12 基板金属層
13 透光キャップ
13A 窓部
13B フランジ部
13C,13D 凸部
21 フランジ金属層
21A 押圧環
21B 補助押圧部
21B1,21B2,21B3 補助押圧要素
21C 補助押圧環
22 キャップ接合層
C 円中心
CC 同心円
GA,GB 間隙
DL 対角線
JI 内側接合領域
JM 中間接合領域
JN,JN1,JN2 狭窄接合領域
JO 外側接合領域
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11