(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】硫化検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20240314BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20240314BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20240314BHJP
G01N 17/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01N27/04 E
H01C13/00 R
G01N27/12 B
G01N17/04
(21)【出願番号】P 2020081372
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-003310(JP,A)
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】特開2020-034384(JP,A)
【文献】特開2019-101342(JP,A)
【文献】米国特許第04399424(US,A)
【文献】特許第7283983(JP,B2)
【文献】特許第7219146(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/24
G01N 17/00 - G01N 17/04
H01C 13/00 - H01C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に形成された硫化検出導体と、を備え、
前記硫化検出導体は硫化ガスと反応可能な複数層の硫化検出部を有しており、これら複数層の硫化検出部のうち、上層の硫化検出部が
、下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向
かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記複数層の硫化検出部のうち、上層の硫化検出部と下層の硫化検出部は互いのシート抵抗値を異にする材料で形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硫化検出センサにおいて、
前記上層の硫化検出部を規定する一対の硫化ガス非透過性の保護膜と、一方の前記表電極と前記下層の硫化検出部との間に接続された第1の抵抗体と、他方の前記表電極と前記下層の硫化検出部との間に接続された第2の抵抗体と、前記第1の抵抗体の全体を覆う硫化ガス非透過性の絶縁層と、をさらに備え、
前記上層の硫化検出部は前記第2の抵抗体を介して一対の前記表電極に導通されており、前記上層の硫化検出部が
、前記絶縁層の一部と前記下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向
かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の硫化検出センサにおいて、
前記下層の硫化検出部といずれか一方の前記表電極との間に抵抗体が接続されており、前記抵抗体の全体が硫化ガス非透過性の絶縁層によって覆われていると共に、前記上層の硫化検出部が
、前記絶縁層の一部と前記下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向
かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記複数層の硫化検出部が、前記一対の表電極間に所定のギャップを存して配置されて、累積的な硫化量によって前記ギャップ間が短絡する下層の第1硫化検出部と、前記第1硫化検出部を覆うように配置されて、累積的な硫化量によって断線する上層の第2硫化検出部と、を備えていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の硫化検出センサにおいて、
前記第1硫化検出部が銅を主成分とする材料からなると共に、前記第2硫化検出部が銀を主成分とする材料からなることを特徴とする硫化検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化を検出するための硫化検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに晒されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPd(パラジウム)やAu(金)を添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極を硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が硫化ガス中に長期間晒された場合や高濃度の硫化ガスに晒された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性のある保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共にプリント基板上に実装した後、該プリント基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体を構成する銀が硫化銀に変化し、それに伴って硫化検出体の抵抗値が上昇していき、最終的に硫化検出体の断線に至る。したがって、硫化検出体の抵抗値の変化や断線を検出することにより、硫化の度合いを検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された硫化検出センサでは、硫化検出体として比抵抗の低い銀を主体とした材料が使用されているため、累積的な硫化量に伴う硫化検出体の抵抗値変化は微量となり、硫化検出体の抵抗値の変化に基づいて硫化の度合いを段階的に検出することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、段階的な硫化の度合いを容易に検出することができる硫化検出センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に形成された硫化検出導体と、を備え、前記硫化検出導体は硫化ガスと反応可能な複数層の硫化検出部を有しており、これら複数層の硫化検出部のうち、上層の硫化検出部が、下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していることを特徴としている。
【0010】
このように構成された硫化検出センサは、複数層に積層された硫化検出部を電流方向と直交する方向の断面積についてみると、上層の硫化検出部より下層の硫化検出部の断面積が小さくなっており、上層の硫化検出部が硫化完了したときに、抵抗値の変化量が大きいものとなるため、硫化の度合いを段階的に検出することができる。また、下層の硫化検出部が上層の硫化検出部によって完全に覆われており、上層の硫化検出部が硫化完了するまで下層の硫化検出部は硫化されないため、硫化検出の精度を高めることができる。
【0011】
上記構成の硫化検出センサにおいて、上層の硫化検出部と下層の硫化検出部は互いのシート抵抗値を異にする材料で形成されていると、累積的な変化量を明確に検出することができて好ましい。
【0012】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、前記上層の硫化検出部を規定する一対の硫化ガス非透過性の保護膜と、一方の前記表電極と前記下層の硫化検出部との間に接続された第1の抵抗体と、他方の前記表電極と前記下層の硫化検出部との間に接続された第2の抵抗体と、前記第1の抵抗体の全体を覆う硫化ガス非透過性の絶縁層と、をさらに備え、前記上層の硫化検出部は前記第2の抵抗体を介して一対の前記表電極に導通されており、前記上層の硫化検出部が、前記絶縁層の一部と前記下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していると、硫化検出センサの抵抗値は、上層の硫化検出部が硫化完了するまで第2の抵抗体の抵抗値相当分となるが、上層の硫化検出部が硫化完了した時点で第1の抵抗体の抵抗値と第2の抵抗体の抵抗値を加算した分となるため、累積的な硫化を抵抗値の大きな変化量によって確実に検出することができる。
【0013】
あるいは、上記構成の硫化検出センサにおいて、前記下層の硫化検出部といずれか一方の前記表電極との間に抵抗体が接続されており、前記抵抗体の全体が硫化ガス非透過性の絶縁層によって覆われていると共に、前記上層の硫化検出部が、前記絶縁層の一部と前記下層の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向かつ前記絶縁基板の主面と平行な方向へ突出していると、上層の硫化検出部が硫化完了するまで、下層の硫化検出部は上層の硫化検出部を介して一対の表電極と導通状態となっているが、上層の硫化検出部が硫化完了した時点で、下層の硫化検出部は抵抗体を介して一対の表電極に導通された状態となるため、累積的な硫化を抵抗値の大きな変化量によって確実に検出することができる。
【0014】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、複数層の硫化検出部が、一対の表電極間に所定のギャップを存して配置されて、累積的な硫化量によってギャップ間が短絡する下層の第1硫化検出部と、この第1硫化検出部を覆うように配置されて、累積的な硫化量によって断線する上層の第2硫化検出部と、を備えている構成であると、上層の第2硫化検出部が累積的な硫化量によって断線すると導通状態からオープン状態へと変化し、その後に下層の第1硫化検出部が有するギャップが累積的な硫化量によって短絡すると、オープン状態から導通状態へと変化するため、導通からオープンもしくはオープンから導通といった硫化検出が可能となり、周囲環境による誤差の少ない高精度な硫化検出を行うことができる。
【0015】
この場合において、硫化速度が遅い銅を主成分とする材料によって第1硫化検出部を形成し、銅に比べて硫化速度が速い銀を主成分とする材料によって第2硫化検出部を形成すると、上層の第2硫化検出部の断線に基づく短時間の硫化検出と下層の第1硫化検出部の導通に基づく長時間の硫化検出とを実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硫化検出センサによれば、段階的な硫化の度合いを容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図13】本発明の第5実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図15】本発明の第6実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、
図1は本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサ10の平面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図、
図3は
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0019】
図1~
図3に示すように、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面(主面)に長手方向に沿って帯状に設けられた第1硫化検出導体2と、第1硫化検出導体2を覆うように積層配置された第2硫化検出導体3と、絶縁基板1の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極4と、絶縁基板1の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極5と、第2硫化検出導体3の両端部と裏電極4および端面電極5の表面を覆うように設けられた一対の外部電極6と、によって主として構成されている。
【0020】
絶縁基板1は、図示せぬ大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0021】
第1硫化検出導体2と第2硫化検出導体3は、銀(Ag)を主成分としてパラジウム(Pd)を含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであるが、第2硫化検出導体3に含有されるPdに比べて第1硫化検出導体2に含有されるPdの方が多く設定されている。すなわち、上層側の第2硫化検出導体3よりも下層側の第1硫化検出導体2の方がシート抵抗値の高い材料で形成されている。
【0022】
第1硫化検出導体2は硫化ガスに反応して硫化する矩形状の第1硫化検出部2aを有しており、この第1硫化検出部2aの両端部に連続して外部電極6で覆われた部分が表電極となっている。同様に、第2硫化検出導体3は硫化ガスに反応して硫化する矩形状の第2硫化検出部3aを有しており、この第2硫化検出部3aの両端部に連続して外部電極6で覆われた部分が表電極となっている。なお、絶縁基板1の表面における長手方向両端部に表電極を別途形成し、これら表電極間に第1硫化検出導体2と第2硫化検出導体3の両端部を接続するように構成しても良い。
【0023】
ここで、積層配置された第1硫化検出部2aと第2硫化検出部3aのうち、上層側の第2硫化検出部3aは下層側の第1硫化検出部2aを覆って電流方向と直交する方向(
図1の上下方向)へ突出する突出部3a-1を有している。したがって、電流方向と直交する方向の断面積についてみると、第1硫化検出部2aよりも第2硫化検出部3aの方が突出部3a-1の相当分だけ断面積が大きくなっている。
【0024】
一対の裏電極4は銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極4は絶縁基板1の表面側の表電極(第1硫化検出部2aと第2硫化検出部3aの両端部)と対応する位置に形成されている。
【0025】
一対の端面電極5は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化したものであり、これら端面電極5は、絶縁基板1の表裏両面で対応する表電極と裏電極4間をそれぞれ導通するように形成されている。
【0026】
一対の外部電極6はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。これら外部電極6により、第2硫化検出部3aの両端部(表電極)と裏電極4および端面電極5の表面全体が断面コ字状に被覆されている。
【0027】
このように構成された硫化検出センサ10は、第1硫化検出部2aと第2硫化検出部3aにおける電流方向と直交する方向の断面積についてみると、第2硫化検出部3aの方が突出部3a-1の相当分だけ第1硫化検出部2aよりも断面積が大きいため、上層側の第2硫化検出部3aが硫化ガスに接触して表面から硫化完了したときに、一対の外部電極6間の抵抗値が大きく変化し、その抵抗値変化に基づいて硫化検出を行うことができる。その際、第1硫化検出部2aは表面と側端面を含む全ての面が第2硫化検出部3aによって覆われているため、第2硫化検出部3aが硫化完了するまで、第1硫化検出部2aは硫化ガスと接触しないように保護されている。
【0028】
そして上層側の第2硫化検出部3aが硫化完了した後、さらに累積硫化量が増えていくと、第1硫化検出部2aが硫化ガスに接触して表面から硫化していき、第1硫化検出部2aが硫化完了した時点で、一対の外部電極6間が抵抗値オープンとなるため、累積的な硫化を2段階に検出することができる。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10は、硫化ガスと反応可能な積層構造の第1硫化検出部2aと第2硫化検出部3aを有しており、上層の第2硫化検出部3aが下層の第1硫化検出部2aを覆って電流方向と直交する方向へ突出しているため、上層の第2硫化検出部3aの硫化完了時における抵抗値変化量が大きくなり、その抵抗値変化に基づいて硫化の度合いを容易に検出することができる。また、下層の第1硫化検出部2aが上層の第2硫化検出部3aによって完全に覆われており、硫化ガスに晒される表面側から硫化していくため、第2硫化検出部3aが硫化完了するまで第1硫化検出部2aは硫化されずに保護されるため、硫化検出の精度を高めることができる。
【0030】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10では、上層側の第2硫化検出導体3よりも下層側の第1硫化検出導体2の方がシート抵抗値の高い材料で形成されているため、第2硫化検出部3aが硫化完了したときに、一対の外部電極6間の抵抗値が低い方から高い方へと大きく変化し、その抵抗値変化に基づいて累積的な変化量を明確に検出することができる。なお、第1硫化検出導体2と第2硫化検出導体3のシート抵抗値を変える手段として、Pdを含有しないAgペーストによって上層側の第2硫化検出導体3を形成し、少量のPdを含有するAg系ペーストによって下層側の第1硫化検出導体2を形成するようにしても良い。
【0031】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10では、第1硫化検出部2a上に第2硫化検出部3aを積層配置した2層構造となっているが、硫化検出部の積層構造を3層以上にすることも可能であり、例えば硫化検出部を3層構造とした場合、2層目(中間層)の硫化検出部が1層目(最下層)の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向へ突出すると共に、3層目(最上層)の硫化検出部が2層目の硫化検出部を覆って電流方向と直交する方向へ突出するようにすれば良い。
【0032】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10では、上層の第2硫化検出部3aが外部に露出して硫化ガスと直接触れるようになっているが、第2硫化検出部3aの全体を図示せぬ硫化ガス透過性の保護膜で覆い、この保護膜を透過する硫化ガスが第2硫化検出部3aや第1硫化検出部2aと反応するようにしても良く、このように構成すると、硫化検出センサの搬送時等に最上層の硫化検出部が損傷してしまうことを防止できる。
【0033】
図4は本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサ20の平面図、
図5は
図4のV-V線に沿う断面図、
図6は
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
【0034】
図4~
図6に示すように、第2実施形態例に係る硫化検出センサ20は、直方体形状の絶縁基板21と、絶縁基板21の表面(主面)における長手方向両端部に設けられた一対の表電極22と、これら表電極22の間に積層配置された第1硫化検出導体23および第2硫化検出導体24と、第2硫化検出導体24の両端部と対応する表電極22間に接続された一対の抵抗体25と、これら抵抗体25を覆う硫化ガス非透過性の保護膜26と、絶縁基板21の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極27と、絶縁基板21の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極28と、表電極22と裏電極27および端面電極28の表面を覆う外部電極29と、によって主として構成されている。
【0035】
一対の表電極22は銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら表電極22は所定の間隔をおいて絶縁基板21の表面における長手方向両端部に形成されている。一対の裏電極27も銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極27は所定の間隔をおいて絶縁基板21の裏面における長手方向両端部に形成されている。
【0036】
第1硫化検出導体23と第2硫化検出導体24は、銀(Ag)を主成分としてパラジウム(Pd)を含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、上層の第2硫化検出導体24に含有されるPdに比べて下層の第1硫化検出導体23に含有されるPdの方が多く設定されている。
【0037】
第1硫化検出導体23は硫化ガスに反応して硫化する矩形状の第1硫化検出部23aを有しており、第2硫化検出導体24も硫化ガスに反応して硫化する矩形状の第2硫化検出部24aを有している。これら第1硫化検出部23aと第2硫化検出部24aのうち、上層側の第2硫化検出部24aは下層側の第1硫化検出部23aを覆って電流方向と直交する方向(
図4の上下方向)へ突出する突出部24a-1を有している。したがって、電流方向と直交する方向の断面積についてみると、第1硫化検出部23aよりも第2硫化検出部24aの方が突出部24a-1の相当分だけ断面積が大きくなっている。
【0038】
抵抗体25は、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、第2硫化検出導体24の両端部と対応する表電極22との間にそれぞれ形成されている。なお、抵抗体25に図示せぬトリミング溝を形成して抵抗値を調整するようにしても良い。
【0039】
保護膜26は、硫化ガス非透過性の樹脂材料であるエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化したものであり、この保護膜26によって表電極22との接続部および第2硫化検出導体24との接続部を含めて抵抗体25の全体が覆われている。なお、第1硫化検出導体23と第2硫化検出導体24における保護膜26で覆われていない領域が、それぞれ前述した第1硫化検出部23aと第2硫化検出部24aとなっている。
いる。
【0040】
一対の端面電極28は、絶縁基板21の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化したものであり、これら端面電極28は絶縁基板21の両面に形成された対応する表電極22と裏電極27間を導通するように形成されている。
【0041】
一対の外部電極29はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。これら外部電極29により、保護膜26から露出する表電極22と裏電極27および端面電極28の表面全体が断面コ字状に被覆されている。
【0042】
このように構成された硫化検出センサ20は、表電極22と第2硫化検出導体24間に接続された抵抗体25の抵抗値が硫化検出センサ20の初期抵抗値となるが、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10と同様に、電流方向と直交する方向の断面積についてみると、第2硫化検出部24aの方が突出部24a-1の相当分だけ第1硫化検出部23aよりも断面積が大きいため、上層側の第2硫化検出部24aが硫化ガスに接触して硫化完了したときに、一対の外部電極29間の抵抗値が初期抵抗値に対して大きく変化し、その抵抗値変化に基づいて硫化検出を行うことができる。しかも、表電極22と第2硫化検出導体24間に抵抗体25を接続したため、TCR(抵抗温度係数)の小さい硫化検出センサ20を提供することができる。
【0043】
なお、第2実施形態例に係る硫化検出センサ20において、一対の表電極22と第2硫化検出導体24の両端部との間にそれぞれ接続された抵抗体25の一方を省略しても良く、また、第2硫化検出部24aの全体を図示せぬ硫化ガス透過性の保護膜で覆うようにしても良い。また、第1硫化検出導体23と第2硫化検出導体24のシート抵抗値を変える手段として、Pdを含有しないAgペーストによって上層側の第2硫化検出導体24を形成し、少量のPdを含有するAg系ペーストによって下層側の第1硫化検出導体23を形成するようにしても良い。
【0044】
図7は本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサ30の平面図、
図8は
図7のVIII-VIII線に沿う断面図、
図9は
図7のIX-IX線に沿う断面図であり、
図4~
図6と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
図7~
図9に示すように、第3実施形態例に係る硫化検出センサ30は、直方体形状の絶縁基板21と、絶縁基板21の表面(主面)における長手方向両端部に設けられた一対の表電極22と、これら表電極22の間に配置された第1硫化検出導体23と、一方の表電極22と第1硫化検出導体23の一端部との間に接続された第1の抵抗体25Aと、他方の表電極22と第1硫化検出導体23の一端部との間に接続された第2の抵抗体25Bと、第1の抵抗体25Aを覆う硫化ガス非透過性の絶縁層(プリコート層)31と、第1硫化検出導体23と第1の抵抗体25Aを覆うように形成されて一方の電極22に接続された第2硫化検出導体24と、第1および第2の抵抗体25A,25Bを覆う一対の硫化ガス非透過性の保護膜26A,26Bと、絶縁基板21の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極27と、絶縁基板21の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極28と、表電極22と裏電極27および端面電極28の表面を覆う外部電極29と、によって主として構成されている。
【0046】
第1硫化検出導体23は絶縁層31から露出する矩形状の第1硫化検出部23aを有しており、この第1硫化検出導体23は第1および第2の抵抗体25A,25Bを介して一対の表電極22に接続されている。第2硫化検出導体24は保護膜26A,26Bによって規定された矩形状の第2硫化検出部24aを有しており、この第2硫化検出導体24の一端部は、絶縁層31によって第1の抵抗体25Aと直接接続されないように一方の表電極22に直接接続され、第2硫化検出導体24の他端部は、第2の抵抗体25Bを介して他方の表電極22に接続されている。これら第1硫化検出部23aと第2硫化検出部24aのうち、上層側の第2硫化検出部24aは下層側の第1硫化検出部23aを覆って電流方向と直交する方向(
図4の上下方向)へ突出する突出部24a-1を有している。
【0047】
絶縁層31はガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、第1の抵抗体25Aの全体は絶縁層31によって覆われている。絶縁層31は保護膜26Aから突出して第1硫化検出部23aの方向に延びる延出部31aを有しており、この延出部31aは第1硫化検出部23aの一部を電流方向と直交する方向に覆っている。したがって、第2硫化検出部24aにおける保護膜26A寄りの領域は、絶縁層31の延出部31aを介して第1硫化検出体23の一部を覆っている。
【0048】
このように構成された硫化検出センサ30は、第2硫化検出部24aの存する範囲において、第1硫化検出部導体23と第2硫化検出導体耐24との間に部分的に入り込む延出部31aが形成されており、上層の第2硫化検出部24aが硫化完了するまで、一対の表電極22間が上層の第2硫化検出部24aと第2の抵抗体25Bを介して導通状態となっている。したがって、例えば第1の抵抗体25Aと第2の抵抗体25Bの抵抗値をそれぞれ1kΩとすると、硫化検出センサ30の硫化検出前の抵抗値は第2の抵抗体25Bの抵抗値相当分の1kΩとなる。
【0049】
そして、上層の第2硫化検出部24aが硫化完了すると、絶縁層31の延出部31aが露出し、その結果、第2硫化検出導体24を介して一方の表電極22と直接接続していた導通経路が絶たれるため、その時点で一対の表電極22間が第1硫化検出部23aと第1および第2の抵抗体25A,25Bの直列回路を介して導通された状態となる。したがって、硫化検出センサ30の抵抗値は、第1の抵抗体25Aと第2の抵抗体25Bの抵抗値を加算した2kΩとなる。
【0050】
このように上層の第2硫化検出部24aが硫化完了した後、さらに累積硫化量が増えていくと、下層の第1硫化検出部23aが次第に硫化していき、第1硫化検出部23aが硫化完了したした時点で、硫化検出センサ30は抵抗値オープンとなるため、累積的な硫化を2段階の抵抗値変化(1kΩ→2kΩ→∞)にて明確に検出することができる。
【0051】
図10は本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサ40の平面図、
図11は
図10のXI-XI線に沿う断面図、
図12は
図10のXII-XII線に沿う断面図であり、
図7~
図9に対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0052】
図10~
図12に示すように、第4実施形態例に係る硫化検出センサ40が第3実施形態例に係る硫化検出センサ30と相違する点は、第1硫化検出導体23と他方の表電極22間に接続された第2の抵抗体25Bを省略して、第1硫化検出導体23と一方の表電極22間にのみ第1の抵抗体25Aを接続し、上層の第2硫化検出導体24の両端部を一対の表電極22に直接接続したことにあり、それ以外は基本的に同じである。
【0053】
このように構成された硫化検出センサ40では、上層の第2硫化検出部24aが硫化完了するまで、一対の表電極22間が第2硫化検出導体24を介して導通状態となっているため、硫化検出センサ30の抵抗値は0Ωとなっている。そして、上層の第2硫化検出部24aが硫化完了すると、絶縁層31の延出部31aが露出し、その時点で一対の表電極22間が第1の抵抗体25Aと第1硫化検出部23aを介して導通された状態となるため、硫化検出センサ30の抵抗値は、第1の抵抗体25Aの抵抗値相当分の1kΩとなる。さらに累積硫化量が増えていくと、下層の第1硫化検出部23aが次第に硫化していき、第1硫化検出部23aが硫化完了したした時点で、硫化検出センサ30は抵抗値オープンとなるため、累積的な硫化を2段階の抵抗値変化(0Ω→1kΩ→∞)にて明確に検出することができる。
【0054】
図13は本発明の第5実施形態例に係る硫化検出センサ50の平面図、
図14は
図13のXIV-XIV線に沿う断面図である。
【0055】
図13と
図14に示すように、第5実施形態例に係る硫化検出センサ50は、直方体形状の絶縁基板41と、絶縁基板41の表面(主面)における長手方向両端部に設けられた一対の表電極42と、これら表電極42の間に積層配置された第1硫化検出導体43および第2硫化検出導体44と、第2硫化検出導体44を覆うように設けられた保護膜45と、絶縁基板41の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極46と、絶縁基板41の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極47と、表電極42と裏電極46および端面電極47の表面を覆うように設けられた一対の外部電極48と、によって主として構成されている。
【0056】
第1硫化検出導体43は、銅(Cu)を主成分とするCuペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、ギャップGを隔てて対向する一対の第1硫化検出部43aを有している。一方の第1硫化検出部43aは図示左側の表電極42に接続され、他方の第1硫化検出部43aは図示右側の表電極42に接続されている。この第1硫化検出導体43は、ギャップGを隔てて対向する一対の第1硫化検出部43aが銅を主成分とする材料で形成されており、硫化ガスに接触することで生成する硫化銅の結晶がギャップGに跨るように伸長していくと、一対の第1硫化検出部43aが硫化銅を介して短絡するようになっている。
【0057】
第2硫化検出導体44は、銀(Ag)を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、第2硫化検出導体44の第2硫化検出部44aは第1硫化検出部43aを覆って電流方向と直交する方向へ突出している。この第2硫化検出導体44は銀を主成分とする材料で形成されており、第2硫化検出部44aが硫化ガスに接触すると硫化銀になるため、累積的な硫化量によって断線するようになっている。
【0058】
保護膜45は、硫化ガス透過性の絶縁材料からなり、シリコン樹脂やフッ素系樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化したものである。保護膜45は表電極42との接続部を含めて第2硫化検出部44aの全体を覆うように形成されており、この保護膜45を透過して硫化ガスが第2硫化検出部44aおよび第1硫化検出部43aと接触するようになっている。
【0059】
このように構成された硫化検出センサ50は、積層配置された第1硫化検出部43aと第2硫化検出部44aのうち、下層の第1硫化検出部43aが累積的な硫化量によってギャップG間が短絡するように形成され、上層の第2硫化検出部44aが累積的な硫化量によって断線するように形成されているため、第2硫化検出部44aが硫化ガスに接触して断線したときに、導通状態から抵抗値オープンへと変化する。その際、第1硫化検出部43aはギャップGを含めた全体が第2硫化検出部44aによって覆われているため、第2硫化検出部44aが断線するまで、第1硫化検出部43aは硫化ガスと接触しないように保護されている。
【0060】
そして上層側の第2硫化検出部44aが断線した後、さらに累積硫化量が増えていくと、下層側の第1硫化検出部43aが硫化ガスに接触することで硫化銅が生成し、この硫化銅の結晶がギャップG間に跨るまで伸長した時点で、一対の第1硫化検出部43aが硫化銅を介して短絡するため、抵抗値オープンから再び導通状態へと変化する。したがって、導通からオープンもしくはオープンから導通といった硫化検出が可能となり、周囲環境による誤差の少ない高精度な硫化検出を行うことができる。
【0061】
また、第5実施形態例に係る硫化検出センサ50では、硫化速度が遅い銅を主成分とする材料によって第1硫化検出部43aを形成し、銅に比べて硫化速度が速い銀を主成分とする材料によって第2硫化検出部44aを形成したので、上層の第2硫化検出部44aの断線に基づく短時間の硫化検出と、下層の第1硫化検出部43aの導通に基づく長時間の硫化検出とを実現することができる。
【0062】
図15は本発明の第6実施形態例に係る硫化検出センサ60の平面図、
図16は
図15のXVI-XVI線に沿う断面図であり、
図13と
図14に対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0063】
図15と
図16に示すように、第6実施形態例に係る硫化検出センサ60が第5実施形態例に係る硫化検出センサ50と相違する点は、第1硫化検出導体43を覆う第2硫化検出導体44の両端部と対応する表電極42間にそれぞれ抵抗体51が接続されていると共に、これら抵抗体51が硫化ガス非透過性の保護膜52によって覆われていることにあり、それ以外は基本的に同じである。
【0064】
このように構成された硫化検出センサ60は、一対の表電極42と第2硫化検出導体44間にそれぞれ抵抗体51が接続されているため、1つの抵抗体51の抵抗値をRとすると硫化検出センサ50の初期抵抗値は2Rとなり、第2硫化検出部44aが断線したときに、抵抗値が2Rからオープンへと変化する。そして、さらなる累積的な硫化によって一対の第1硫化検出部43aが短絡すると、抵抗値がオープンから再び2Rへと変化するため、累積的な変化量を容易に検出することができる。
【0065】
なお、第6実施形態例に係る硫化検出センサ60において、一対の表電極42と第2硫化検出導体44の両端部間にそれぞれ接続された抵抗体51の一方を省略しても良く、また、第2硫化検出部44aの全体を硫化ガス透過性の保護膜で覆うようにしても良い。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30,40,50,60 硫化検出センサ
1,21,41 絶縁基板
2,23,43 第1硫化検出導体
2a,23a,43a 第1硫化検出部
3,24,44 第2硫化検出導体
3a,24a,44a 第2硫化検出部
3a-1,24a-1 突出部
4,27,46 裏電極
5,28,47 端面電極
6,29,48 外部電極
22,42 表電極
25,51 抵抗体
25A 第1の抵抗体
25B 第2の抵抗体
26,52 硫化ガス非透過性の保護膜
31 絶縁層
31a 延出部
45 硫化ガス透過性の保護膜
G ギャップ