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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電気自動車用充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240314BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240314BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240314BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240314BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H02J7/04 N
H02J7/00 P
H02J7/10 N
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020083041
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021180534
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】金丸 就吾
(72)【発明者】
【氏名】原澤 紀雄
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0119702(US,A1)
【文献】特開2019-187035(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132874(WO,A1)
【文献】特開2001-339803(JP,A)
【文献】特開2001-136678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/00
H02J 7/10
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電電流指令に基づき交流電力を直流電力に変換して、電気自動車のバッテリを充電する充電電流を生成するAC/DC電力変換部と、
前記バッテリに接続される充電コネクタを有し、前記充電電流を前記充電コネクタ側へ伝送し、前記充電コネクタを介して前記バッテリを充電する充電ケーブルと、
前記充電ケーブルのケーブル温度を検出するケーブル温度センサと、
前記ケーブル温度センサで検出された前記ケーブル温度に基づき、前記ケーブル温度が、許容される上限温度よりも低ければ、前記充電ケーブルの定格電流を超えた増加電流にて前記バッテリの充電を行わせるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する充電制御部と、
を備えることを特徴とする電気自動車用充電装置。
【請求項2】
前記充電制御部は、
前記バッテリへの充電時間を計測する充電時間計測部を有し、
前記充電時間計測部で計測された前記充電時間に基づき、前記増加電流による前記充電時間が上限時間を超えると、前記定格電流にて前記バッテリの充電を行わせるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の電気自動車用充電装置。
【請求項3】
前記充電制御部は、
前記バッテリへの充電時間を計測する充電時間計測部を有し、
前記ケーブル温度センサで検出された前記ケーブル温度と、前記充電時間計測部で計測される設定時間と、に基づき、前記増加電流による前記バッテリへの充電中に、前記ケーブル温度が前記上限温度を超えると、前記設定時間内の残存時間の間、前記定格電流にて前記バッテリの充電を行わせるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の電気自動車用充電装置。
【請求項4】
請求項1記載の電気自動車用充電装置の周囲温度を検出する周囲温度センサを有し、
前記充電制御部は、
前記周囲温度センサで検出された前記周囲温度が、許容される設定温度を超えると、前記定格電流にて前記バッテリの充電を行わせ、前記充電中に温度異常が発生した場合には、前記充電を停止させるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する、
ことを特徴とする電気自動車用充電装置。
【請求項5】
前記充電制御部は、
前記周囲温度が前記設定温度よりも低下した場合、又は、前記ケーブル温度が前記上限温度よりも低下した場合、前記定格電流から前記増加電流へ切り替えて前記バッテリの充電を行わせるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する、
ことを特徴とする請求項4記載の電気自動車用充電装置。
【請求項6】
前記充電制御部は、
前記増加電流へ切り替えて前記バッテリの充電を行わせる場合、前記周囲温度が前記設定温度を超えないように、又は、前記ケーブル温度が前記上限温度を超えないように、フィードバック制御する、
ことを特徴とする請求項5記載の電気自動車用充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の蓄電池(バッテリ)を充電する電気自動車用充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、電気自動車用充電装置が開示されている。この電気自動車用充電装置は、交流電力(AC電力)を直流電力(DC電力)に変換するAC/DC電力変換部、及びこのAC/DC電力変換部の出力側に接続されたソケット等を有している。ソケットには、充電ケーブルの一端に接続されたプラグが着脱自在に接続される。充電ケーブルの他端には、ケーブル設置型充電制御装置を介して、電気自動車の充電口に着脱自在に挿着されるコネクタが接続されている。ケーブル設置型充電制御装置は、電気自動車に搭載されたバッテリの充電を監視(モニタリング)し、取得した充電関連情報を端末装置に提供してバッテリの充電を制御するものである。プラグ内には、プラグピンの温度を測定する温度センサが設けられている。
【0003】
そして、AC/DC変換部から出力された直流電力は、ソケットに接続されたプラグを介して、充電ケーブルへ入力される。入力された直流電力は、ケーブル設置型充電制御装置を介して、コネクタから出力される。出力された直流電力は、電気自動車の充電口から入力され、バッテリが急速充電される。急速充電中、ケーブル設置型充電制御装置は、温度センサにより測定されたプラグピンの温度が一定レベル以上であれば、そのプラグピンが過熱状態であると判断して、充電電力の減少又は充電を中断するための制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-63737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された電気自動車用充電装置では、充電ケーブルの一端に接続されたプラグの温度監視を行い、過熱状態にあれば、充電電力を減少又は中断する制御を行い、そのプラグの加熱による火災の発生を防止しているが、充電時間が長くなる課題があった。
【0006】
近年、利便性の観点から、急速充電装置を用いた電気自動車の充電時間を短縮することが要望されている。充電時間を短縮するためには、充電電流を大きくすれば良い。しかし、充電電流を大きくすれば、その充電電流を伝送するための充電ケーブルの線径が太くなり、操作性に難がでてくる。これに対し、充電ケーブルの線径を太くすることなく、充電電流を大きくすれば、ケーブル温度が上昇してケーブルが劣化する恐れがあるので、ケーブルを冷却することが必要になる。しかし、ケーブル冷却に関しても、液冷ケーブルを採用する等、価格面でデメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気自動車用急速充電装置に使用される充電ケーブルには、安全性の観点から、定格電流が規定されており、その定格電流を超えて充電ができなかった。しかし、近年の研究から、定格電流を超えた増加電流(以下「ブースト電流」という。)を充電ケーブルに流しても、ケーブル温度が、許容される上限温度を越えなければ、安全性に問題がないことが証明されている。
【0008】
そこで、本発明の電気自動車用充電装置では、安全性を確保しつつ、ブースト電流を用いてバッテリを充電させるために、以下の構成を採用している。
即ち、本発明の電気自動車用充電装置は、充電電流指令に基づき交流電力を直流電力に変換して、電気自動車のバッテリを充電する充電電流を生成するAC/DC電力変換部と、前記バッテリに接続される充電コネクタを有し、前記充電電流を前記充電コネクタ側へ伝送し、前記充電コネクタを介して前記バッテリを充電する充電ケーブルと、前記充電ケーブルのケーブル温度を検出するケーブル温度センサと、前記ケーブル温度センサで検出された前記ケーブル温度に基づき、前記ケーブル温度が、許容される上限温度よりも低ければ、前記充電ケーブルの定格電流を超えたブースト電流にて前記バッテリの充電を行わせるための前記充電電流指令を出力して前記AC/DC電力変換部を制御する充電制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充電ケーブルの定格電流を超えたブースト電流での充電が可能となり、電気自動車に搭載されたバッテリの充電時間を短縮することができる。これにより、利便性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1における電気自動車用充電装置の構成を示す概略の回路図
図2A図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(時間条件での充電制御)を示すパターン図
図2B図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(ケーブル温度条件での充電制御(1))を示すパターン図
図2C図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(ケーブル温度条件での充電制御(2))を示すパターン図
図2D図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(ケーブル温度条件での充電制御(保護))を示すパターン図
図2E図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(周囲温度条件での充電制御(1))を示すパターン図
図2F図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(周囲温度条件での充電制御(2))を示すパターン図
図2G図1の充電装置1を用いた充電シーケンス(周囲温度条件での充電制御(保護))を示すパターン図
図3図1の充電装置1における充電動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における電気自動車用充電装置の構成を示す概略の回路図である。
【0013】
この電気自動車用充電装置(以下単に「充電装置」という。)1は、交流電源20から供給される交流電力を直流電力に変換し、充電ケーブル21の端末に接続された充電コネクタ22及び電気自動車の充電口24を介して、電気自動車に搭載されたバッテリ25を急速充電するための装置である。充電コネクタ22は、充電ガンとも言われ、電気自動車の充電口24に着脱自在に挿着されるものであり、内部の接触子付近に、充電ケーブル21の温度を検出するためのケーブル温度センサ23が内蔵されている。ケーブル温度センサ23は、温度により抵抗値が変化するサーミスタ等の感温素子により構成されている。
【0014】
充電装置1は、交流電力を入力する入力部2を有し、この入力部2の出力側に、AC/DC電力変換部3及び出力部4が直列に接続されている。AC/DC電力変換部3は、入力部2から入力される交流電力を直流電力に変換し、充電電流指令S13に基づき、通常の定格電流、この定格電流を超えたブースト電流、又は、停止状態の零電流のいずれかを出力するものである。出力部4は、AC/DC電力変換部3の出力電流を充電ケーブル21へ送出するものである。
【0015】
充電装置1には、更に、操作部5、周囲温度センサ6、及び充電制御部10が設けられている。操作部5は、充電の開始・中止等の情報を入力するものであり、キーボード等により構成されている。周囲温度センサ6は、充電装置1の内部又は外部の周囲温度を検出するものであり、温度により抵抗値が変化するサーミスタ等の感温素子により構成されている。
【0016】
充電制御部10は、充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3に与えて、このAC/DC電力変換部3の出力電流を制御するものであり、ケーブル温度計測部11、周囲温度計測部12、及び充電電流指令部13等を有している。ケーブル温度計測部11は、ケーブル温度センサ23の出力信号から、充電ケーブル21のケーブル温度を計測し、このケーブル温度を充電電流指令部13へ与えるものである。周囲温度計測部12は、周囲温度センサ6の出力信号から、充電装置1の周囲温度を計測し、この周囲温度を充電電流指令部13へ与えるものである。
【0017】
充電電流指令部13は、計測されたケーブル温度及び周囲温度を入力し、ケーブル温度が、許容される上限温度(例えば、ブーストモード充電継続可能なケーブル温度Kmax1、あるいは、ブーストモード充電開始可能なケーブル温度Kmax2)、又は、周囲温度が、許容される設定温度(例えば、ブーストモード充電継続可能な周囲温度Lmax1、あるいは、ブーストモード充電開始可能な周囲温度Lmax2)よりも低ければ、充電ケーブル21の定格電流を超えた「ブーストモード充電」を行わせるための充電電流指令S13を出力し、充電中に、ケーブル温度が、許容される上限温度(例えば、異常判定のケーブル温度Kmax3)、又は、周囲温度が、許容される設定温度(例えば、異常判定の周囲温度Lmax3)を超えた時に、温度異常を検出して、「充電終了」の充電電流指令S13を出力し、AC/DC電力変換部3を制御する機能を有している。更に、充電電流指令部13は、バッテリ25への充電時間を計測する充電時間計測部(例えば、タイマ)13aを有し、このタイマ13aで計測された充電時間に基づき、ブースト電流による充電時間が上限時間(例えば、ブーストモード充電最大時間Tmax)を超えると、「定格電流充電」の充電電流指令S13を出力してAC/DC電力変換部3を制御する等の機能を有している。
【0018】
このような充電電流指令部13を有する充電制御部10は、中央処理装置(CPU)を有するプロセッサや、半導体素子等の個別回路により、構成されている。
【0019】
(実施例1の動作)
図2A図2Gは、図1の充電装置1を用いた充電シーケンスを示すパターン図である。各図2A図2Gにおいて、横軸は充電時間、及び、縦軸は充電電流(A)であり、充電制御部10の制御により、以下の制御が行われる。
【0020】
図2Aのパターン図は、充電シーケンス(充電時間条件での充電制御)を示している。充電の設定時間を例えば30分とする。先ず、定格電流を超えたブースト電流でのブーストモードで充電し、ブーストモード充電最大時間Tmax(分)の到達により、充電電流を制限して定格電流まで下げ、残り時間(30-Tmax)分の間、充電する。
【0021】
図2Bのパターン図は、充電シーケンス(ケーブル温度条件での充電制御(1))を示している。充電の設定時間を例えば30分とする。ブーストモードでの充電中に、ケーブル温度が上昇して、許容される上限温度(例えば、ブーストモード充電継続可能なケーブル温度Kmax1)を超えたため、30分の残りの時間(30-α)分は、定格電流に制限して充電する。
【0022】
図2Cのパターン図は、充電シーケンス(ケーブル温度条件での他の充電制御(2))を示している。充電の設定時間を例えば30分とする。ケーブル温度が、許容される上限温度(例えば、ブーストモード充電開始可能なケーブル温度Kmax2)を超えているため、充電電流を制限して定格電流にて充電を行う。α分後、ケーブル温度が、ケーブル温度Kmax2まで下がったので、ブーストモードで充電する。ブーストモードでの充電中、ケーブル温度がケーブル温度Kmax1まで上昇すると、充電電流を制限して定格電流まで下げ、残り時間(30-α-Tmax)分の間、充電する。つまり、充電制御部10は、ブーストモードでの充電、及びその後の定格電流での充電において、ケーブル温度が上限温度(例えば、ケーブル温度Kmax1)を超えないようにフィードバック制御を行う。
【0023】
図2Dのパターン図は、充電シーケンス(ケーブル温度条件での充電制御(保護))を示している。ケーブル温度が、許容される上限温度(例えば、異常判定のケーブル温度Kmax3)よりも低いので、ブーストモードで充電を行う。ブーストモードでの充電中に、温度異常が発生(例えば、短絡事故等によってケーブル温度が急激に上昇)し、ケーブル温度Kmax3に達すると、保護のために充電を停止する。
【0024】
図2Eのパターン図は、充電シーケンス(周囲温度条件での充電制御(1))を示している。充電の設定時間を例えば30分とする。周囲温度が、ブーストモード充電継続可能な周囲温度Lmax1よりも低い場合、ブーストモードで充電する。α分後、周囲温度が上昇して周囲温度Lmax1に達すると、残り時間(30-α)分の間、定格電流にて充電する。これにより、周囲温度が低下していく。
【0025】
図2Fのパターン図は、充電シーケンス(周囲温度条件での他の充電制御(2))を示している。充電の設定時間を例えば30分とする。周囲温度が、許容される設定温度(例えば、ブーストモード充電開始可能な周囲温度Lmax2)を超えているため、充電電流を制限して定格電流にて充電を行う。α分後、周囲温度が、周囲温度Lmax2まで低下したので、ブーストモードで充電する。ブーストモードでの充電中、周囲温度が周囲温度Lmax1まで上昇すると、充電電流を制限して定格電流まで下げ、残り時間(30-α-Tmax)分の間、充電する。つまり、充電制御部10は、ブーストモードでの充電、及びその後の定格電流での充電において、周囲温度が設定温度(例えば、設定温度Lmax1)を超えないようにフィードバック制御を行う。
【0026】
図2Gのパターン図は、充電シーケンス(周囲温度条件での充電制御(保護))を示している。周囲温度が、許容される設定温度(例えば、異常判定の周囲温度Lmax3)よりも低いので、ブーストモードで充電を行う。ブーストモードでの充電中に、温度異常が発生(例えば、短絡事故等によって周囲温度が急激に上昇)し、周囲温度Lmax3に達すると、保護のために充電を停止する。
【0027】
図3(A),(B)は、図1の充電装置1における充電動作を示すフローチャートである。
図1の充電装置1では、以下の図3(A)のステップST1~ST9又は図3(B)のステップST10~ST11に従い、電気自動車のバッテリ25への充電動作を行う。
【0028】
図3(A)のステップST1において、図1の操作部5により充電開始操作を行うと、ステップST2へ進む。ステップST2において、図1の充電電流指令部13は、ケーブル温度計測部11で計測されたケーブル温度、及び周囲温度計測部12で計測された周囲温度に基づき、ブーストモード充電開始判定を行う。充電電流指令部13は、ケーブル温度が、図2Cのブーストモード充電開始可能なケーブル温度Kmax2よりも低い時、又は、周囲温度が、図2Fのブーストモード充電開始可能な周囲温度Lmax2よりも低い時には、ブーストモード充電開始可能と判定し(Y)、「ブーストモード充電」の充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3へ出力してステップST3へ進み、それ以外の時には、ブーストモード充電開始不可と判定し(N)、「定格電流充電」の充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3へ出力してステップST6へ進む。
【0029】
ステップST3において、AC/DC電力変換部3は、入力部2から入力された交流電力を直流電力に変換し、充電ケーブル21の定格電流よりも大きいブースト電流を生成する。生成されたブースト電流は、出力部4から充電ケーブル21へ出力され、充電コネクタ22及び電気自動車の充電口24を介して、バッテリ25へ供給される。これにより、バッテリ25のブーストモード充電が行われ、ステップST4へ進む。
【0030】
ステップST4において、充電制御部10は、例えば、電気自動車から送られてくるバッテリ電圧信号等に基づき、バッテリ25の充電終了判定を行い、判定結果が「充電終了」の時には(Y)、ステップST9へ進んで充電終了の処理を行い、判定結果が「充電未終了」の時には(N)、ステップST5へ進む。
【0031】
ステップST5において、充電電流指令部13は、タイマ13aで計測された充電時間、ケーブル温度計測部11で計測されたケーブル温度、及び周囲温度計測部12で計測された周囲温度に基づき、ブーストモード充電終了判定を行う。充電電流指令部13は、ブーストモード充電時間が、図2A図2C又は図2Fのブーストモード充電最大時間Tmaxを超えている時、ケーブル温度が図2Bのブーストモード充電継続可能なケーブル温度Kmax1を超えている時、又は、周囲温度が図2Eのブーストモード充電継続可能な周囲温度Lmax1を超えている時、ブースモード充電終了と判定(Y)してステップST6へ進む。それ以外の時には、ブースモード充電が未終了と判定(N)し、ステップST3へ戻ってブースモード充電とステップST4の充電終了判定を繰り返す。
【0032】
ステップST6において、充電電流指令部13は、「定格電流充電」の充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3へ出力する。すると、AC/DC電力変換部3は、ブースト電流よりも低い定格電流を生成する。生成された定格電流は、出力部4から充電ケーブル21へ出力され、充電コネクタ22及び電気自動車の充電口24を介して、バッテリ25へ供給される。これにより、図2A図2B図2C図2E又は図2Fに示すバッテリ25への定格充電が行われ、ステップST7へ進む。
【0033】
ステップST7において、充電制御部10は、例えば、電気自動車から送られてくるバッテリ電圧信号等に基づき、バッテリ25の充電終了判定を行い、判定結果が「充電終了」の時には(Y)、ステップST9へ進んで充電終了の処理を行い、判定結果が「充電未終了」の時には(N)、ステップST8へ進む。
【0034】
ステップST8において、充電電流指令部13は、ケーブル温度計測部11で計測されたケーブル温度、及び周囲温度計測部12で計測された周囲温度に基づき、ブーストモード充電再開判定を行う。充電電流指令部13は、ケーブル温度が、図2Cのブーストモード充電開始可能なケーブル温度Kmax2よりも低い時、又は、周囲温度が、図2Fのブーストモード充電開始可能な周囲温度Lmax2よりも低い時には、ブーストモード充電再開可能と判定し(Y)、「ブーストモード充電」の充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3へ出力して前記ステップST3に戻り、それ以外の時には、ブーストモード充電再開不可と判定し(N)、「定格電流充電」の充電電流指令S13をAC/DC電力変換部3へ出力して前記ステップST6に戻る。
【0035】
図3(B)のステップST10において、図1の操作部5によって充電中止操作が行われると、充電制御部10の制御により、ステップST9へ進んで充電処理が終了する。又、ステップST11において、充電電流指令部13は、図3(A)のステップST3のブーストモード充電中、あるいは、ステップST6の定格電流充電中に、ケーブル温度が、図2Dの異常判定のケーブル温度Kmax3を超えた時に、又は、周囲温度が、図2Gの異常判定の周囲温度Lmax3を超えた時に、温度異常を検出して、「充電終了」の充電電流指令S13を出力し、保護のためにステップST9へ進んで充電処理を終了させる。
【0036】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、充電ケーブル21の定格電流を超えたブースト電流での充電が可能となり、電気自動車に搭載されたバッテリ25の充電時間を短縮することができる。これにより、利便性が著しく向上する。
【0037】
(変形例)
本発明は、上記実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)~(c)のようなものがある。
(a) 図1の充電装置1は、図示以外の構成に変形しても良い。例えば、充電制御部10は、ケーブル温度センサ23で検出されたケーブル温度に基づき、そのケーブル温度が、許容される上限温度よりも低ければ、充電ケーブル21の定格電流を超えたブースト電流にてバッテリ25の充電を行わせるための充電電流指令S13を出力してAC/DC電力変換部3を制御する構成に変形しても、実施例1と略同様の効果が得られる。
(b) 図2A図2Gは、図示以外の充電シーケンスに変形しても良い。
(c) 図3の充電動作のフローチャートは、前記(a)に記載された充電装置1における構成の変形に応じて、処理内容を変更できる。
【符号の説明】
【0038】
1 電気自動車用充電装置
3 AC/DC電力変換部
5 操作部
6 周囲温度センサ
10 充電制御部
11 ケーブル温度計測部
12 周囲温度計測部
13 充電電流指令部
13a タイマ
20 交流電力
21 充電ケーブル
22 充電コネクタ
23 ケーブル温度センサ
24 電気自動車の充電口
25 バッテリ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3