(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240314BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240314BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240314BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240314BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L29/78 657C
H01L29/91 E
H01L29/90 C
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 652N
H01L29/78 657F
H01L21/88 T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658A
(21)【出願番号】P 2020104950
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 弘儀
(72)【発明者】
【氏名】守屋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】打矢 聡
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-149502(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001588(WO,A1)
【文献】特開2016-012647(JP,A)
【文献】特開昭63-226075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0241018(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102272932(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 21/3205
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードを備える半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板上に第1絶縁膜を介して形成された、前記ダイオード用のシリコン膜と、
前記シリコン膜よりも上層に形成された、前記ダイオード用の第1電極および第2電極と、
を有し、
前記シリコン膜は、第1導電型の第1シリコン領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の複数の第2シリコン領域と、を有し、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれは、平面視において前記第1シリコン領域により囲まれており、
前記第1シリコン領域は、前記第1電極と電気的に接続され、
前記複数の第2シリコン領域は、前記第2電極と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれは、前記シリコン膜の上面に露出している、半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれの下には、前記第1シリコン領域が存在している、半導体装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置において、
前記第1導電型はp型であり、
前記第2導電型はn型であり、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれの側面および底面に、PN接合が形成されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項2記載の半導体装置において、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれは、前記シリコン膜の下面に露出している、半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置において、
前記第1導電型はp型であり、
前記第2導電型はn型であり、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれの側面に、PN接合が形成されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、
平面視において、前記複数の第2シリコン領域は、それぞれ第1方向に延在し、かつ、前記第1方向と交差する第2方向に互いに離間して並んでいる、半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
平面視において、前記複数の第2シリコン領域は、それぞれ、前記第1方向を長手方向とする矩形状の平面形状を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置において、
前記複数の第2シリコン領域のそれぞれの平面形状の前記第1方向における長さは、2~40μmである、半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1シリコン領域は、第1コンタクトプラグを介して前記第1電極と電気的に接続され、
前記複数の第2シリコン領域は、複数の第2コンタクトプラグを介して、前記第2電極と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記シリコン膜と前記第1および第2電極との間に形成された層間絶縁膜を更に有し、
前記第1コンタクトプラグおよび複数の第2コンタクトプラグは、それぞれ、前記層間絶縁膜を貫通している、半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置において、
前記第1コンタクトプラグは、平面視において前記第1電極と重なり、かつ、平面視において前記第1シリコン領域と重なっており、
前記複数の第2コンタクトプラグは、平面視において前記複数の第2シリコン領域とそれぞれ重なり、かつ、平面視において前記第2電極と重なっている、半導体装置。
【請求項13】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1導電型はp型であり、
前記第2導電型はn型であり、
前記第1シリコン領域と前記複数の第2シリコン領域との間に、PN接合が形成されている、半導体装置。
【請求項14】
請求項1記載の半導体装置において、
前記半導体基板の第1領域に形成された電界効果トランジスタを更に有し、
前記シリコン膜は、前記半導体基板の第2領域上に前記第1絶縁膜を介して形成されている、半導体装置。
【請求項15】
請求項1記載の半導体装置において、
前記ダイオードは、温度検知用ダイオードである、半導体装置。
【請求項16】
ダイオードを備える半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板上に第1絶縁膜を介して前記ダイオード用の第1導電型のシリコン膜を形成する工程、
(b)前記シリコン膜を部分的に露出する開口部を有するマスク層を形成する工程、
(c)前記開口部から露出する前記シリコン膜に、前記第1導電型とは反対の第2導電型の不純物をイオン注入することにより、前記シリコン膜に前記第2導電型のシリコン領域を形成する工程、
(d)前記(c)工程後に、前記マスク層の前記開口部内にコンタクトプラグを形成する工程、
を有し、
前記マスク層は、層間絶縁膜であり、
前記(c)工程で形成された前記シリコン領域の厚さは、前記シリコン膜の厚さよりも小さく、
前記シリコン領域の側面および底面に、PN接合が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項
16記載の半導体装置の製造方法において、
(e)前記半導体基板に電界効果トランジスタ用のトレンチゲート電極を形成する工程、
(f)前記半導体基板に前記電界効果トランジスタ用のソース領域をイオン注入により形成する工程、
を更に有し、
前記(c)工程のイオン注入と、前記
(f)工程のイオン注入とは、同じイオン注入工程により行われる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、ダイオードを有する半導体装置およびその製造方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
大電流が流れるパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタを有する半導体装置において、過熱から電界効果トランジスタを保護するために温度検出機能を設ける技術が知られている。この温度検出機能は、例えば、電界効果トランジスタの近くにダイオードを設け、そのダイオードに発生する電圧を検出することにより行うことができる。このとき、ダイオードの順方向の電流-電圧特性が温度に依存して変化することが利用される。
【0003】
特開2011-187650号公報(特許文献1)には、パワーMOSFETと温度検知用のダイオードとを備える半導体装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイオードを有する半導体装置において、信頼性を向上させることが望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に第1絶縁膜を介して形成されたダイオード用のシリコン膜と、前記シリコン膜よりも上層に形成された前記ダイオード用の第1電極および第2電極と、を有している。前記シリコン膜は、第1導電型の第1シリコン領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の複数の第2シリコン領域とを有している。前記複数の第2シリコン領域のそれぞれは、平面視において前記第1シリコン領域により囲まれている。前記第1シリコン領域は、前記第1電極と電気的に接続され、前記複数の第2シリコン領域は、前記第2電極と電気的に接続されている。
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に第1絶縁膜を介して形成された前記ダイオード用のシリコン膜と、を有している。前記シリコン膜は、第1導電型の第1シリコン領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2シリコン領域とを有している。前記第2シリコン領域は、平面視において前記第1シリコン領域により囲まれている。前記第2シリコン領域は、前記シリコン膜の上面に露出し、前記第2シリコン領域の下には、前記第1シリコン領域が存在している。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図3】一実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図4】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図5】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図6】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図7】検討例の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図8】検討例の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図11】一実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図12】
図11と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図13】
図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図14】
図13と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図15】
図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図16】
図15と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図17】
図15に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図18】
図17と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図19】
図17に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図20】
図19と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図21】
図19に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図22】
図21と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図23】
図21に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図24】
図23と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図25】
図23に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図26】
図25と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図27】
図25に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図28】
図27と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図29】
図27に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図30】
図29と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図31】
図29に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図32】
図31と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図36】他の実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図37】他の実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図38】他の実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図39】他の実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図40】他の実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図41】
図40と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図42】
図40に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図43】
図42と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図44】
図42に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図45】
図44と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図46】
図44に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図47】
図46と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図48】
図46に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図49】
図48と同じ半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図50】他の実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図51】他の実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
【
図52】他の実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【
図53】他の実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0014】
また、本願においては、電界効果トランジスタをMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)または単にMOSと記載するが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。上述のMOSFETは、ゲート絶縁膜を酸化膜から形成する場合に限定するものではなく、ゲート絶縁膜を広く絶縁膜から形成するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をも含むものと想定している。つまり、本明細書では、便宜上MOSFETという用語を使用しているが、このMOSFETは、MISFETをも含む意図の用語として本明細書では使用している。このため、以下の説明において、MOSFETをMISFETと置き換えることもできる。
【0015】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造について>
本発明の一実施の形態の半導体装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPの平面図であり、
図1には、半導体装置CPの上面側の全体平面図が示されている。
図2および
図3は、本実施の形態の半導体装置CPの要部平面図であり、ダイオード形成領域RG1の平面図が示されている。なお、
図2と
図3には、同じ平面領域が示されている。
図2には、シリコン膜SFを示し、シリコン膜SFにおけるn型シリコン領域NSとp型シリコン領域PSとにそれぞれハッチングを付してある。
図3は、
図2に、更にコンタクトホールCTA,CTCと配線M1A,M1Cを追加した図であり、コンタクトホールCTA,CTCを点線で示し、配線M1A,M1Cを二点鎖線で示しており、
図3ではハッチングは用いていない。
図1~
図3などに示されるX方向およびY方向は、半導体装置CPを構成する半導体基板SUBの主面に略平行な方向であり、かつ、X方向とY方向とは、互いに交差する方向(より特定的には互いに直交する方向)である。
図4~
図6は、本実施の形態の半導体装置CPの要部断面図である。
【0016】
図1~
図6に示される本実施の形態の半導体装置CPは、ダイオードおよびパワーMOSFETを備える半導体装置である。半導体装置CPにおいて、ダイオードDDが形成された領域(平面領域)を、ダイオード形成領域RG1と称し、パワーMOSFETが形成された領域(平面領域)を、MOSFET形成領域RG2と称することとする。半導体装置CPにおいて、MOSFET形成領域RG2はかなりな面積を占めている。
図4および
図5は、ダイオード形成領域RG1の断面図であるが、
図2および
図3のA1-A1線の位置での断面図が、
図4にほぼ対応し、
図2および
図3のA2-A2線の位置での断面図が、
図5にほぼ対応している。
図6は、MOSFET形成領域RG2の一部の断面図に対応している。
【0017】
半導体装置CPを構成する半導体基板SUBは、例えばヒ素(As)などのn型不純物が導入されたn+型の単結晶シリコンなどからなる基板本体(半導体基板、半導体ウエハ)SBと、基板本体SBの主面上に形成された、例えばn-型のシリコン単結晶からなるエピタキシャル層(半導体層)EPと、を有している。このため、半導体基板SUBは、いわゆるエピタキシャルウエハである。
【0018】
MOSFET形成領域RG2において、半導体基板SUBには、パワーMOSFETを構成する複数の単位トランジスタセルが形成されており、パワーMOSFETは、MOSFET形成領域RG2に設けられたこれら複数の単位トランジスタセルが並列に接続されることで形成されている。各単位トランジスタセルは、例えばトレンチゲート構造のnチャネル型のパワーMOSFETで形成されている。
【0019】
半導体基板SUBは、上記単位トランジスタセルのドレイン領域としての機能を有している。半導体基板SUBの裏面全面上に、ドレイン用の裏面電極BEが形成されている。裏面電極BEは、パワーMOSFETのドレイン端子(ドレイン電極)として機能する。
【0020】
なお、半導体基板SUBにおいて、トレンチゲート電極TG用の溝(トレンチ)が形成されている側とは反対側の主面を、半導体基板SUBの裏面と称することとする。
【0021】
MOSFET形成領域RG2の半導体基板SUB中には、p型半導体領域PRが形成されており、このp型半導体領域PRは、上記単位トランジスタセルのチャネル形成領域としての機能を有している(
図6参照)。
【0022】
また、MOSFET形成領域RG2の半導体基板SUBにおいて、p型半導体領域PRの上部にn
+型半導体領域NRが形成されており、このn
+型半導体領域NRは、上記単位トランジスタセルのソース領域(ソース用の半導体領域)としての機能を有している(
図6参照)。n
+型半導体領域NRの下には、p型半導体領域PRが存在している。p型半導体領域PRと裏面電極BEとの間に介在する部分の半導体基板SUBは、n型の導電型を維持しており、上記単位トランジスタセルのドレイン領域としての機能を有している。
【0023】
MOSFET形成領域RG2において、
図6に示されるように、半導体基板SUBには、その主面から半導体基板SUBの厚さ方向に延びる溝(トレンチ)TRが形成されており、溝TR内には、ゲート絶縁膜GFを介してトレンチゲート電極TGが埋め込まれている。溝TRの底面および側面には、酸化シリコン膜などの絶縁膜からなるゲート絶縁膜GFが形成されているため、溝TRに埋め込まれたトレンチゲート電極TGと半導体基板SUBとの間には、ゲート絶縁膜GFが介在している。トレンチゲート電極TGは、半導体基板SUBの溝TR内に埋め込まれた導電膜からなり、例えばドープトポリシリコン膜からなる。図示は省略するが、半導体基板SUBの主面において、溝TRは、平面視において、例えば縞状または格子状に形成されている。溝TRは、半導体基板SUBの上面から、n
+型半導体領域NRとp型半導体領域PRとを貫通し、n型の半導体基板SUB(エピタキシャル層EP)中で終端するように形成されている。このため、溝TRの底面は、n
+型半導体領域NRの底面よりも深く、かつ、p型半導体領域PRの底面よりも深く、n型の半導体基板SUB(エピタキシャル層EP)の深さ方向の途中に位置している。なお、半導体装置CPの構成要素に関して平面視について言及する場合は、その半導体装置CPを構成する半導体基板SUBの主面に略平行な平面で見た場合に対応している。また、半導体装置CPの構成要素に関して平面形状について言及する場合は、平面視における形状(平面形状)に対応している。
【0024】
図6に示される各溝TRおよびそれに埋め込まれた各トレンチゲート電極TGは、
図6の紙面に垂直な方向に延在しているが、トレンチゲート電極TG同士は、
図6の断面図には示されない領域において一体的に連結されている。
【0025】
また、ダイオード形成領域RG1において、
図2~
図5に示されるように、半導体基板SUB上に絶縁膜ZMを介して、ダイオードDD用のシリコン膜(半導体膜)SFが形成されている。すなわち、半導体基板SUB上に、絶縁膜ZMが形成され、その絶縁膜ZM上に、ダイオードDDを構成するシリコン膜SFが形成されている。シリコン膜SFは、より特定的には多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)であり、所定の平面形状(例えば矩形状)にパターニングされている。
【0026】
シリコン膜SFは、p型シリコン領域(p型半導体領域)PSと、複数のn型シリコン領域(n型半導体領域)NSと、を有しており、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれている。別の見方をすると、シリコン膜SFは、p型シリコン領域PSと、p型シリコン領域PSで囲まれた複数のn型シリコン領域NSとにより形成されている。複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、p型シリコン領域PSに隣接している。
【0027】
シリコン膜SFにおいては、n型シリコン領域NSとなっている部分以外は、p型シリコン領域PSとなっているため、シリコン膜SFを、p型シリコン膜とみなし、そのp型シリコン膜内に複数のn型シリコン領域NSが形成されているとみなすこともできる。
【0028】
シリコン膜SF内において、複数のn型シリコン領域NSは、互いに離間して形成されている。このため、隣り合うn型シリコン領域NSの間には、p型シリコン領域PSが介在しており、平面視において、各n型シリコン領域NSは、p型シリコン領域PSで周囲を囲まれている。各n型シリコン領域NSは、p型シリコン領域PSと接しており、各n型シリコン領域NSとp型シリコン領域PSとの間(界面)にPN接合が形成されている。
【0029】
シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、シリコン膜SFの上面に露出している。シリコン膜SF内に形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれの底面の深さ位置は、シリコン膜SFの下面よりも浅く、従って、各n型シリコン領域NSの厚さは、シリコン膜SFの厚さよりも小さく、各n型シリコン領域NSの底面の下には、p型シリコン領域PSが存在している。このため、各n型シリコン領域NSの側面および底面がp型シリコン領域PSと接しており、各n型シリコン領域NSの側面および底面にPN接合が形成されている。
【0030】
シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSは、平面視において、それぞれX方向に延在し、かつ、X方向と交差(より特定的には直交)するY方向に互いに離間して並んでいる。シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、平面視において、X方向を長手方向とする矩形状の平面形状を有している。各n型シリコン領域NSの平面形状のX方向における長さL1は、例えば2~40μm程度とすることができる。また、各n型シリコン領域NSの平面形状のY方向における幅W1は、例えば0.2~1.0μm程度とすることができる。また、n型シリコン領域NS同士のY方向における間隔S1は、例えば0.8~2.0μm程度とすることができる。なお、長さL1、幅W1および間隔S1は、
図2に示してある。
【0031】
p型シリコン領域PSと複数のn型シリコン領域NSとの間(界面)にPN接合が形成されることにより、ダイオードDDが形成されている。すなわち、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSがダイオードDDのアノード(アノード領域)となり、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSがダイオードDDのカソード(カソード領域)となっている。ダイオードDDは、温度検知用のダイオードである。
【0032】
図4~
図6に示されるように、半導体基板SUBの主面全面上に、トレンチゲート電極TG、絶縁膜ZMおよびシリコン膜SFを覆うように、絶縁膜ILが形成されている。絶縁膜ILは層間絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜ILは、MOSFET形成領域RG2およびダイオード形成領域RG1に形成されている。
【0033】
絶縁膜ILにはコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTが形成されている。コンタクトホールCTは、ソース用のコンタクトホールCTSと、ゲート用のコンタクトホール(図示せず)と、アノード用のコンタクトホールCTAと、カソード用のコンタクトホールCTCと、を含んでいる。
【0034】
ソース用のコンタクトホールCTSは、n+型半導体領域NR上に形成され、n+型半導体領域NRを貫通してp型半導体領域PRに達している。このため、ソース用のコンタクトホールCTSの底部では、n+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRが露出されている。アノード用のコンタクトホールCTAは、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSの上に形成され、アノード用のコンタクトホールCTAの底部では、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSが露出されている。シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSのそれぞれ上にカソード用のコンタクトホールCTCが形成され、各コンタクトホールCTCの底部では、n型シリコン領域NSが露出されている。ゲート用のコンタクトホール(図示せず)は、トレンチゲート電極TGと一体的に形成されたゲート引き出し部(図示せず)を溝TRの外部の半導体基板SUB上に延在させて、そのゲート引き出し部上に形成されている。
【0035】
絶縁膜ILのコンタクトホールCT内には、導電性のプラグ(コンタクトプラグ、接続用埋込導体部)PGが形成されている。プラグPGは、例えばタングステン(W)膜などからなる。プラグPGは、絶縁膜ILを貫通している。プラグPGは、コンタクトホールCTS内に形成されたソース用のプラグ(コンタクトプラグ)PGSと、ゲート用のコンタクトホール内に形成されたゲート用のプラグ(図示せず)と、コンタクトホールCTA内に形成されたアノード用のプラグ(コンタクトプラグ)PGAと、コンタクトホールCTC内に形成されたカソード用のプラグ(コンタクトプラグ)PGCと、を含んでいる。ソース用のプラグPGSは、n+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRと電気的に接続されている。コンタクトホールCTAに埋め込まれたアノード用のプラグPGAは、コンタクトホールCTAの底部で露出するp型シリコン領域PSと接して、そのp型シリコン領域PSと電気的に接続されている。コンタクトホールCTCに埋め込まれたカソード用のプラグPGCは、コンタクトホールCTCの底部で露出するn型シリコン領域NSと接して、そのn型シリコン領域NSと電気的に接続されている。
【0036】
プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL上には、配線(電極)M1が形成されている。配線M1は、ソース用の配線(電極)M1Sと、ゲート用の配線(図示せず)と、アノード用の配線(電極)M1Aと、カソード用の配線(電極)M1Cと、を含んでいる。ソース用のプラグPGSは、その上面がソース用の配線M1Sと接して、その配線M1Sと電気的に接続されている。アノード用のプラグPGAは、その上面がアノード用の配線M1Aと接して、その配線M1Aと電気的に接続されている。カソード用のプラグPGCは、その上面がカソード用の配線M1Cと接して、その配線M1Cと電気的に接続されている。配線M1は、パターニングされた導電体膜により形成されている。配線M1は、例えばアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜からなり、具体的には、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜からなる。
【0037】
ソース用の配線M1Sは、MOSFET形成領域RG2のほぼ全体に形成されている。ソース用のコンタクトホールCTSは、MOSFET形成領域RG2に複数形成され、それら複数のコンタクトホールCTSに埋め込まれたソース用のプラグPGSを介して、MOSFET形成領域RG2に設けられた複数の単位トランジスタセルのソース領域(n+型半導体領域NR)およびチャネル形成領域(p型半導体領域PR)が、共通の配線M1Sに電気的に接続されている。配線M1Sは、ソース用の電極とみなすこともできる。また、複数の単位トランジスタセルのトレンチゲート電極TGは、トレンチゲート電極TGと一体的に形成されたゲート引き出し部(図示せず)とゲート用プラグ(図示せず)を介してゲート配線(図示せず)と電気的に接続されている。
【0038】
配線M1A,M1Cは、シリコン膜SFよりも上層に形成されている。シリコン膜SFのp型シリコン領域PSは、アノード用のプラグPGAを介して、アノード用の配線(電極)M1Aと電気的に接続されている。配線M1Aは、アノード用の電極とみなすこともできる。また、シリコン膜SFに形成されている複数のn型シリコン領域NSは、カソード用の複数のプラグPGCを介して、カソード用の配線(電極)M1Cと電気的に接続されている。すなわち、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれ上にプラグPGCが配置され、それら複数のプラグPGCと平面視において重なるように配線M1Cが配置されることにより、シリコン膜SF内に形成された複数のn型シリコン領域NSが複数のプラグPGCを介して共通の配線M1Cに電気的に接続された状態になっている。配線M1Cは、カソード用の電極とみなすこともできる。プラグPGA,PGCは、シリコン膜SFと配線M1A,M1Cとの間に形成された絶縁膜(層間絶縁膜)ILを貫通している。アノード用のプラグPGAは、平面視においてシリコン膜SFのp型シリコン領域PSと重なり、かつ、平面視においてアノード用の配線M1Aと重なっている。カソード用の複数のプラグPGCは、平面視においてシリコン膜SFに形成されている複数のn型シリコン領域NSとそれぞれ重なり、かつ、平面視においてカソード用の配線M1Cと重なっている。
【0039】
図2および
図3の場合、n
+型半導体領域NRが、X方向に長手方向を有する矩形状の平面形状を有しているのに対応して、プラグPGCは、平面視において、X方向に長手方向を有する矩形状の平面形状を有している。プラグPGCは、n型シリコン領域NSに接するが、p型シリコン領域PSには接していない。また、
図3の場合、プラグPGAは、平面視において、Y方向に長手方向を有する矩形状の平面形状を有しており、複数(ここでは2つ)のプラグPGAがX方向に離間して配置されている。プラグPGAの数は、1つ以上の任意の数とすることができる。プラグPGAは、p型シリコン領域PSに接するが、n型シリコン領域NSには接していない。
【0040】
配線M1よりも上の構造については、ここではその図示および説明は省略する。例えば、絶縁膜IL上に配線M1を覆うように絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)を形成し、その絶縁膜の開口部から配線M1を部分的に露出することにより、ボンディングパッドを形成することもできる。あるいは、絶縁膜IL上に配線M1を覆うように絶縁膜(層間絶縁膜)を形成し、その絶縁膜上に2層目の配線を形成することもできる。
【0041】
このような構成の半導体装置においては、パワーMOSFETの動作電流は、ソース用の配線M1Sとドレイン用の裏面電極BEとの間に流れる。すなわち、MOSFET形成領域RG2に形成されたトレンチゲート型のMISFETの動作電流は、半導体基板SUBの厚さ方向に流れる。
【0042】
また、本実施の形態では、半導体基板SUBに形成する電界効果トランジスタとして、トレンチゲート型のMISFETを適用した場合について説明したが、これに限定されず、他の種類の電界効果トランジスタを半導体基板SUBのMOSFET形成領域RG2に形成することもできる。
【0043】
例えば、半導体基板SUBのMOSFET形成領域RG2に、トレンチゲート型のMISFETの代わりにトレンチゲート型のIGBTを形成することもできる。
【0044】
また、半導体基板SUBのMOSFET形成領域RG2に、トレンチゲート型のMISFETの代わりにLDMOSFET(Laterally Diffused Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor) などを形成することもできる。
【0045】
ダイオード形成領域RG1に形成されたダイオードDDは、MOSFET形成領域RG2に形成されたパワーMOSFETの温度を検知するためのダイオードであり、MOSFET形成領域RG2に形成されたパワーMOSFETの発熱を検知するためのダイオードとみなすこともできる。
【0046】
ダイオードは、温度によって電圧-電流特性が変化するため、ダイオード形成領域RG1に形成されているダイオードDDの電圧-電流特性を検知(モニタ)することで、半導体装置CPにおけるダイオードDDの温度を検知することができる。このため、半導体装置CPにおいて、パワーMOSFET(MOSFET形成領域RG2)の近傍にダイオードDD(ダイオード形成領域RG1)を配置することで、パワーMOSFETの温度(発熱)をダイオードDDで検知することができる。
【0047】
例えば、ダイオードDDに一定電流を流した状態でダイオードDDの電圧(アノードおよびカソード間の電圧)を検知(モニタ)し、この電圧値からダイオードDDの温度を知ることができる。つまり、ダイオードDDにおいて、一定電流を流したときの電圧は、温度が高くなるほど低くなるため、この電圧を利用してダイオードDDの温度を検知することができる。ダイオードDDへの定電流の供給およびダイオードDDの電圧(アノードおよびカソード間の電圧)の検知は、制御回路によって行うことができるが、この制御回路は、半導体装置CP内に形成しても、半導体装置CP以外の半導体装置(半導体チップ)内に形成してもよい。また、ダイオードDDに一定電圧を印加した状態でダイオードDDの電流(アノードおよびカソード間の電流)を検知(モニタ)し、この電流値からダイオードDDの温度を知ることも可能である。
【0048】
例えば、半導体装置CPにおいて、MOSFET形成領域RG2に形成されたパワーMOSFETが過剰に発熱してダイオードDDの温度が所定の上限温度よりも高くなったときには、上記制御回路が半導体装置CPのパワーMOSFETのゲートにオフ信号を供給する(あるいはオン信号の供給を停止する)ことでパワーMOSFETをオフ状態に切り換える。これにより、半導体装置CPにおいて、パワーMOSFETの過剰な発熱時には、これをダイオードDDによって検知して、パワーMOSFETを速やかにオフ状態に切り換えることができる。
【0049】
<検討の経緯>
図7は、本発明者が検討した検討例の半導体装置の要部平面図であり、
図8は、本発明者が検討した検討例の半導体装置の要部断面図である。
図7および
図8には、検討例の半導体装置におけるダイオード形成領域が示されており、
図7のB1-B1線の位置での断面図が、
図8に対応している。
【0050】
検討例の半導体装置においては、
図7および
図8に示されるように、半導体基板SUB10上に絶縁膜ZM10を介して、多結晶シリコンからなるシリコン膜SF10が形成されている。このシリコン膜SF10は、1つのp型シリコン領域PS10と1つのn型シリコン領域NS10とで構成されており、n型シリコン領域NS10は、平面視において、p型シリコン領域PS10により囲まれている。
【0051】
n型シリコン領域NS10は、シリコン膜SF10の厚さ方向において、シリコン膜SF10を貫通するように形成されている。すなわち、n型シリコン領域NS10の厚さは、シリコン膜SF10の厚さと実質的に同じである。このため、n型シリコン領域NS10は、シリコン膜SF10の上面で露出し、かつ、シリコン膜SF10の下面で露出している。従って、n型シリコン領域NS10の下には、p型シリコン領域PS10は存在していない。
【0052】
このため、n型シリコン領域NS10の側面は、p型シリコン領域PS10と接しており、n型シリコン領域NS10の側面にPN接合が形成されている。n型シリコン領域NS10の底面には、PN接合は形成されていない。p型シリコン領域PS10がダイオードDD10のアノード(アノード領域)として機能し、n型シリコン領域NS10がダイオードDD10のカソード(カソード領域)として機能する。p型シリコン領域PS10は、プラグPGA10を介して、アノード用の配線M1A10と電気的に接続され、n型シリコン領域NS10は、プラグPGC10を介して、カソード用の配線M1C10と電気的に接続されている。
【0053】
検討例の半導体装置に形成されたダイオードDD10は、例えば同じ検討例の半導体装置に形成されているパワーMOSFETの温度検知用として用いることができる。しかしながら、ダイオードDD10の発熱量が大きい場合には、ダイオードDD10の発熱に起因してまた、ダイオードDD10の信頼性が低下する虞がある。例えば、ダイオードDD10の熱破壊(発熱に起因した破壊)のリスクが増大する虞がある。これは、ダイオードを備える半導体装置の信頼性の低下につながる。また、ダイオードDD10の発熱量が大きい場合には、ダイオードDD10の発熱による温度上昇が生じることから、ダイオードDD10の温度検知精度が低下する虞もある。これは、ダイオードを備える半導体装置の性能の低下につながる。
【0054】
ダイオードDD10を構成するPN接合は、p型シリコン領域PS10とn型シリコン領域NS10との間のPN接合面からなり、そのPN接合面は、n型シリコン領域NS10の側面に対応している。ダイオードDD10に流れる電流は、このPN接合面を通って流れる。ダイオードDD10の動作抵抗は、ダイオードDD10を構成するPN接合面の面積に依存し、PN接合面の面積が小さい場合には、ダイオードDD10の動作抵抗は大きくなり、PN接合面の面積が大きい場合には、ダイオードDD10の動作抵抗は小さくなる。なお、ダイオードの動作抵抗は、基準となる電流値(電流基準値)が流れるときの抵抗値に対応している。
【0055】
ダイオードDD10の発熱量(ジュール熱)は、流れる電流が同じであれば、動作抵抗が小さいほど、従ってPN接合面の面積が大きいほど、小さくなる。このため、ダイオードDD10の信頼性を高めるために、ダイオードDD10の発熱量を小さくしようとすると、ダイオードDD10のPN接合面の面積を大きくすることが有効であるが、そのためには、シリコン膜SF10の寸法を大きくする必要がある。しかしながら、ダイオードDD10を構成するシリコン膜SF10の寸法を大きくすることは、ダイオードDD10を備える半導体装置(半導体チップ)の平面寸法(平面積)の増大を招くため、半導体装置の大型化(大面積化)を招いてしまう。また、ダイオードDD10を構成するシリコン膜SF10の寸法を大きくした分、パワーMOSFET形成領域を削減した場合には、パワーMOSFETに流れる電流が小さくなるため、半導体装置の性能の低下を招いしてしまう。かといって、ダイオードDD10を構成するシリコン膜SF10の寸法を小さくすると、PN接合面の面積が小さくなり、その結果、ダイオードDD10の動作抵抗が大きくなるため、上述のようにダイオードDD10の発熱量が大きくなってしまうため、それに伴う上述した不具合が生じる虞がある。
【0056】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体装置CPは、ダイオードDDを備える半導体装置である。半導体装置CPは、半導体基板SUBと、半導体基板SUB上に絶縁膜ZM(第1絶縁膜)を介して形成された、ダイオードDD用のシリコン膜SFと、シリコン膜SFよりも上層に形成された、配線M1A(第1電極)および配線M1C(第2電極)と、を有している。シリコン膜SFは、p型シリコン領域PS(第1シリコン領域)と複数のn型シリコン領域NS(第2シリコン領域)とを有し、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれている。シリコン膜SFのp型シリコン領域PSは、配線M1Aと電気的に接続され、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSは、配線M1Cと電気的に接続されている。
【0057】
上記検討の経緯の欄でも説明したように、p型シリコン領域とn型シリコン領域とを有するシリコン膜によりダイオードを形成する場合には、シリコン膜の平面寸法を抑制しながら、PN接合の面積を大きくすることが望まれる。
【0058】
そこで、本実施の形態では、ダイオードDD用のシリコン膜SFにn型シリコン領域NS(第2シリコン領域)を複数設け、それら複数のn型シリコン領域NSのそれぞれが、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれるようにしている。これにより、シリコン膜SFの平面寸法を抑制しながら、ダイオードDD用のシリコン膜SFに形成されるPN接合の面積を大きくすることができる。
【0059】
すなわち、本実施の形態では、ダイオードDD用のシリコン膜SFにn型シリコン領域NSを複数設け、それら複数のn型シリコン領域NSのそれぞれが、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれるようにしているため、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれの側面にPN接合が形成される。シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数を増やした場合には、PN接合が形成されるn型シリコン領域NSの側面の合計数が増えることから、シリコン膜SF内に形成されるPN接合の面積を大きくすることができる。このため、上記検討例のようにシリコン膜SF10にn型シリコン領域NS10を1つだけ設けた場合に比べて、本実施の形態のように、シリコン膜SFにn型シリコン領域NSを複数設けた場合の方が、PN接合が形成されるn型シリコン領域NSの側面の合計数を多くすることができ、それゆえ、PN接合が形成されるn型シリコン領域NSの側面の合計面積を大きくすることができる。その結果、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。
【0060】
また、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSは、配線M1Aと電気的に接続され、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSは、配線M1Cと電気的に接続されている。このため、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSが、ダイオードDDのアノードとして機能することができ、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSがダイオードDDのカソードとして機能することができる。配線M1Aと配線M1Cとの間に所定の電圧が印加されることにより、ダイオードDDに電流が流れるが、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSと、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSとの間で、それらの間のPN接合面を経由して電流を流すことができる。このため、シリコン膜SFの複数のn型シリコン領域NSのいずれもが、ダイオードDDのカソード(カソード領域)として機能することができるため、シリコン膜SFにおけるn型シリコン領域NSの数を増やすことにより、ダイオードDDのカソード領域(n型シリコン領域NS)とアノード領域(p型シリコン領域PS)との間のPN接合の合計面積を増やすことができる。
【0061】
本実施の形態では、ダイオードDD用のシリコン膜SFにn型シリコン領域NSを複数設け、それら複数のn型シリコン領域NSのそれぞれが平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれるようにし、それら複数のn型シリコン領域NSを配線M1Cに電気的に接続している。これにより、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができるため、ダイオードDDの動作抵抗を小さくすることができ、その結果、ダイオードDDの発熱量を抑制することができる。このため、ダイオードDDの信頼性を向上させることができ、従って、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を向上させることができる。例えば、ダイオードDDの熱破壊(発熱に起因した破壊)のリスクを抑制することができ、ダイオードDDの熱破壊に対する耐久性を向上させることができる。また、ダイオードDDの発熱量を抑制することができることから、ダイオードDDを温度検知用の用いる場合には、ダイオードDDの発熱による温度上昇を抑制することができるため、ダイオードDDの温度検知精度を向上させることができる。従って、ダイオードDDを備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、ダイオードDD用のシリコン膜SFにn型シリコン領域NSを複数設けることにより、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができるため、シリコン膜SFの平面寸法を大きくしなくとも、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を効率的に大きくすることができる。このため、シリコン膜SFの平面寸法(平面積)を抑制しながら、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。従って、ダイオードDD用のシリコン膜SFの平面寸法を抑制することができ、半導体装置CPの小型化(小面積化)を図ることができる。また、ダイオードDDを構成するシリコン膜SFの平面寸法を抑制できることで、半導体装置CPにおけるMOSFET形成領域RG2の面積を確保することができるため、パワーMOSFETに流れる電流を大きくすることが可能になり、この点でも、半導体装置CPの性能向上が可能となる。
【0063】
また、本実施の形態では、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、シリコン膜SFの上面に露出している。このため、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれを、プラグPGCを介して配線M1Cに電気的に接続することが容易となる。また、シリコン膜SFにおいて、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれているため、p型シリコン領域PSも、シリコン膜SFの上面に露出されている。このため、シリコン膜SFのp型シリコン領域PSを、プラグPGAを介して配線M1Aに電気的に接続することが容易となる。
【0064】
また、本実施の形態では、シリコン膜SFにおいて、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれの下には、p型シリコン領域PSが存在している。このため、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれの側面および底面(下面)に、PN接合が形成される。シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれにおいて、側面だけでなく底面にもPN接合が形成されるため、ダイオードDDのカソード領域(n型シリコン領域NS)とアノード領域(p型シリコン領域PS)との間のPN接合の合計面積を更に増やすことができる。これにより、ダイオードDDの動作抵抗を更に小さくすることができ、その結果、ダイオードDDの発熱量を更に抑制することができる。このため、ダイオードDDの信頼性を更に向上させることができ、従って、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を更に向上させることができる。また、ダイオードDDを温度検知用の用いる場合には、ダイオードDDの温度検知精度を更に向上させることができ、従って、ダイオードDDを備える半導体装置の性能を更に向上させることができる。また、シリコン膜SFの平面寸法を抑制しながら、ダイオードDD用のシリコン膜SFに形成されるPN接合の面積を更に効率的に大きくすることができるため、ダイオードDD用のシリコン膜SFの平面寸法を更に抑制することができ、半導体装置CPの更なる小型化(小面積化)を図ることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数は、2つ以上であり、
図2および
図3には、シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数が3つの場合が示されている。シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数が3つの場合は、2つの場合よりも、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を更に大きくすることができる。また、シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数を4つ以上とすることもできる。
【0066】
図9および
図10は、本実施の形態を適用したダイオードの特性を示すグラフである。
図9のグラフの横軸と
図10のグラフの横軸は、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれのX方向における長さL1に対応している。
図9のグラフの縦軸は、ダイオードに電流基準値が流れるときの電圧値VF(以下、VF値と称する)に対応している。電流基準値としては、例えば50~100μA程度の任意の電流値が用いられ得る。また、
図10のグラフの縦軸は、シリコン膜SFの面積に対応している。なお、
図9および
図10の各グラフは、PN接合の合計面積を一定に保ちながらn型シリコン領域NSの長さL1を変化させた場合に対応している。
【0067】
図9のグラフからも分かるように、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1が40μm以下の場合は、VF値はほぼ一定であるが、長さL1が40μmよりの大きくなると、VF値は、上限値(目標値の1.03倍)を越えてしまい、長さL1が大きくなるにしたがって、VF値も大きくなってしまう。これは、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1が40μm以下の場合は、n型シリコン領域NSの側面は、ほぼ全体が電流の通過経路として機能し得るが、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1が40μmを越えた場合は、n型シリコン領域NSの側面において、電流の通過経路として機能しない部分が発生したためと考えられる。従って、n型シリコン領域NSの側面全体を電流の通過経路として機能できるようにし、電流経路として機能するPN接合の有効面積を効率的に確保するには、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1が40μm以下とすることが好ましい。
【0068】
また、
図10からも分かるように、PN接合の合計面積が一定の場合は、長さL1を大きくすると、シリコン膜SFの面積の縮小が可能になり、一方、長さL1を小さくすると、シリコン膜SFの面積が増大する。このため、シリコン膜SFの平面寸法(平面積)を抑制しながら、PN接合の面積を確保するには、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1は、小さくしすぎないことが望ましい。この観点で、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1は、2μm以上とすることが好ましい。
【0069】
従って、n型シリコン領域NSのX方向における長さL1は、2μm以上、40μm以下とすることが好ましい。これにより、シリコン膜SFの平面寸法(平面積)を抑制しながら、電流経路として機能するPN接合の有効面積を効率的に増大させることができる。
【0070】
【0071】
半導体装置を製造するには、まず、
図11および
図12に示されるように、半導体基板SUB(半導体ウエハ)を準備する。半導体基板SUBは、n
+型の単結晶シリコンなどからなる基板本体SBと、基板本体SBの主面上に形成されたn
-型のシリコン単結晶からなるエピタキシャル層EPとを有している。
【0072】
次に、MOSFET形成領域RG2において、半導体基板SUB(エピタキシャル層EP)の主面に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて溝TRを形成する(
図12参照)。
【0073】
次に、溝TR内に、ゲート絶縁膜GFを介してトレンチゲート電極TGを形成する(
図12参照)。例えば、熱酸化法などを用いて溝TRの側面および底面上と半導体基板SUBの上面上とに、ゲート絶縁膜GF用の絶縁膜を形成してから、その絶縁膜上に、溝TR内を埋めるように、トレンチゲート電極TG用の導電膜(例えばポリシリコン膜)を形成し、その後、エッチバック法により溝TRの外部の前記導電膜を除去する。これにより、トレンチゲート電極TGおよびゲート絶縁膜GFを形成することができる。
【0074】
次に、
図13および
図14に示されるように、半導体基板SUB上に絶縁膜ZMを形成する。それから、絶縁膜ZM上に、シリコン膜SFをCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法などを用いて形成する。従って、シリコン膜SFは、半導体基板SUB上に絶縁膜ZMを介して形成される。この段階では、シリコン膜SFは、ノンドープの多結晶シリコン膜からなる。
【0075】
次に、シリコン膜SFにイオン注入法などを用いてp型不純物を導入する。この際、シリコン膜SF全体にp型不純物(例えばボロン)を導入することにより、シリコン膜SFは、p型シリコン膜(p型多結晶シリコン膜)となる。
【0076】
次に、
図15および
図16に示されるように、絶縁膜ZMとその上のシリコン膜SFとからなる積層膜を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、シリコン膜SFは、所定の平面形状にパターニングされる。この際、MOSFET形成領域RG2(
図16)においては、シリコン膜SFおよび絶縁膜ZMは除去され、ダイオード形成領域RG1(
図15)においては、パターニングされたシリコン膜SFが残存し、ダイオードDD用のシリコン膜SFとなる。
【0077】
次に、
図17および
図18に示されるように、MOSFET形成領域RG2(
図18)において、半導体基板SUBの主面に対してp型の不純物をイオン注入することなどにより、p型半導体領域PRを形成する。p型半導体領域PRは、半導体基板SUB(エピタキシャル層EP)の上層部に形成される。この際、ダイオード形成領域RG1(
図17)のシリコン膜SFは、フォトレジスト層(図示せず)などで覆われることで、イオン注入されないようにする。
【0078】
次に、
図19および
図20に示されるように、MOSFET形成領域RG2(
図20)において、半導体基板SUBの主面に対してn型の不純物をイオン注入することなどにより、n
+型半導体領域NRを形成する。n
+型半導体領域NRの深さは、p型半導体領域PRの深さよりも浅く、n
+型半導体領域NRはp型半導体領域PRの上部に形成される。このイオン注入の際には、ダイオード形成領域RG1(
図19)のシリコン膜SFは、フォトレジスト層(図示せず)などで覆われることで、イオン注入されないようにする。
【0079】
次に、
図21および
図22に示されるように、半導体基板SUBの主面上(主面全面上)に、トレンチゲート電極TGおよびシリコン膜SFを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜ILを形成する。
【0080】
次に、
図23および
図24に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜ILにコンタクトホールCTSおよびコンタクトホールCTAを形成する。コンタクトホールCTSは、MOSFET形成領域RG2(
図24)に形成され、コンタクトホールCTAは、ダイオード形成領域RG1(
図23)のシリコン膜SF上に形成される。MOSFET形成領域RG2のコンタクトホールCTSとダイオード形成領域RG1のコンタクトホールCTAとは、同じ工程で形成しても、あるいは、別々の工程で形成してもよい。
【0081】
次に、
図25および
図26に示されるように、絶縁膜IL上にフォトリソグラフィ法を用いてフォトレジストパターンRP1を形成してから、そのフォトレジストパターンRP1を用いて絶縁膜ILをエッチングすることにより、絶縁膜ILにコンタクトホールCTCを形成する。コンタクトホールCTCは、ダイオード形成領域RG1(
図25)のシリコン膜SF上に形成される。
【0082】
次に、
図27および
図28に示されるように、コンタクトホールCTCから露出するシリコン膜SFに対して、n型の不純物(例えばヒ素)をイオン注入することにより、シリコン膜SFに複数のn型シリコン領域NSを形成する。コンタクトホールCTCは、シリコン膜SF上に複数形成されており、シリコン膜SFにおいて、n型シリコン領域NSはコンタクトホールCTCと同じ数だけ形成される。絶縁膜ILは、シリコン膜SFにn型シリコン領域NSをイオン注入により形成するためのマスク層として機能することができる。また、このイオン注入の際、イオン注入のエネルギーを調整することにより、シリコン膜SFにおいて、n型シリコン領域NSの底面の深さ位置がシリコン膜SFの下面よりも浅くなるようにする。すなわち、n型シリコン領域NSの厚さが、シリコン膜SFの厚さよりも小さくなるようにする。
【0083】
n型シリコン領域NSを形成する前は、シリコン膜SFはp型多結晶シリコン膜であり、シリコン膜SF全体がp型シリコン領域となっていたため、n型シリコン領域NSが形成されると、シリコン膜SFのうち、n型シリコン領域NSとならなかった部分が、p型シリコン領域PSとなる。これにより、ダイオード形成領域RG1において、p型シリコン領域PSと複数のn型シリコン領域NSとを有するシリコン膜SFが形成される。
【0084】
次に、
図29および
図30に示されるように、コンタクトホールCT(CTS,CTA,CTC)内に、プラグPG(PGS,PGA,PGC)を形成する。
【0085】
例えば、コンタクトホールCT(CTS,CTA,CTC)の底面および側壁上を含む絶縁膜IL上にバリア導体膜を形成してから、そのバリア導体膜上に主導体膜(例えばタングステン膜)をコンタクトホールCT(CTS,CTA,CTC)内を埋めるように形成する。それから、コンタクトホールCT(CTS,CTA,CTC)の外部の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法などによって除去する。これにより、プラグPG(PGS,PGA,PGC)を形成することができる。
【0086】
次に、
図31および
図32に示されるように、プラグPG(PGS,PGA,PGC)が埋め込まれた絶縁膜IL上に配線M1(M1S,M1A,M1C)を形成する。例えば、プラグPG(PGS,PGA,PGC)が埋め込まれた絶縁膜IL上に、配線M1形成用の導電膜(例えばアルミニウム合金膜)を形成してから、この導電膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、パターニングされた導電膜からなる配線M1(M1S,M1A,M1C)を形成することができる。以降の工程については、ここではその図示および説明を省略する。
【0087】
なお、最上層の保護膜を形成した後、必要に応じて半導体基板SUBの裏面を研削または研磨して、半導体基板SUBの厚みを薄くしてから、半導体基板SUBの裏面全体に裏面電極BEを形成することができる。裏面電極BEの形成後、半導体基板SUBをダイシングなどによって分割(分離、切断)することにより、半導体基板SUBから個々の半導体チップ(半導体装置)が取得される。
【0088】
<変形例>
図33および
図34は、本実施の形態の半導体装置の変形例の要部平面図であり、
図35は、本実施の形態の半導体装置の変形例の要部断面図である。
図33~
図35は、上記実施の形態1の上記
図2~
図4にそれぞれ対応するものである。
図33および
図34のC1-C1線の位置での断面図が、
図35にほぼ対応している。
【0089】
図33~
図35に示される変形例の場合は、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSは、平面視において、行列状(メッシュ状)に配置されている。行列状に配置された複数のn型シリコン領域NSは、複数のプラグPGCを介して配線M1Cと電気的に接続されている。
【0090】
図33~
図35に示される変形例の場合も、n型シリコン領域NSの側面の合計数を増やすことで、n型シリコン領域NSの側面の合計面積を大きくし、かつ、n型シリコン領域NSの側面だけでなく底面にもPN接合が形成されるようにしたことで、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。
【0091】
また、
図33~
図35に示されるような、複数のn型シリコン領域NSの行列配置を、後述する実施の形態2に適用することもできる。
【0092】
【0093】
なお、本実施の形態2の半導体装置の構造は、ダイオードDDの構造以外は、上記実施の形態1の半導体装置CPとほぼ同様である。このため、本実施の形態2では、ダイオードDDの構造について、上記実施の形態1との相違点を中心にして以下に説明する。
【0094】
本実施の形態2においても、ダイオードDDを構成するシリコン膜SFは、p型シリコン領域PSと複数のn型シリコン領域NSとを有しており、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれている。
【0095】
上記実施の形態1においては、シリコン膜SF内に形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれの底面の深さ位置は、シリコン膜SFの下面よりも浅く、従って、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、シリコン膜SFの厚さ方向において、シリコン膜SFを貫通していなかった。このため、上記実施の形態1においては、各n型シリコン領域NSは、シリコン膜SFの下面に露出しておらず、各n型シリコン領域NSの底面の下には、p型シリコン領域PSが存在していた。
【0096】
それに対して、本実施の形態2においては、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、シリコン膜SFの厚さ方向において、シリコン膜SFを貫通するように形成されている。すなわち、各n型シリコン領域NSの厚さは、シリコン膜SFの厚さと実質的に同じである。このため、本実施の形態2においては、シリコン膜SFに形成された複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、シリコン膜SFの上面で露出し、かつ、シリコン膜SFの下面で露出している。従って、本実施の形態2においては、各n型シリコン領域NSの下には、p型シリコン領域PSは存在していない。
【0097】
このため、上記実施の形態1では、各n型シリコン領域NSの側面および底面がp型シリコン領域PSと接しており、各n型シリコン領域NSの側面および底面にPN接合が形成されている。それに対して、本実施の形態2では、各n型シリコン領域NSの側面がp型シリコン領域PSと接しており、各n型シリコン領域NSの側面にPN接合が形成されているが、各n型シリコン領域NSの底面はp型シリコン領域PSと接しておらず、それゆえ、各n型シリコン領域NSの底面にはPN接合は形成されていない。
【0098】
それ以外については、本実施の形態2の半導体装置の構成は、上記実施の形態1の半導体装置CPとほぼ同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0099】
本実施の形態2においても、ダイオードDD用のシリコン膜SFにn型シリコン領域NSを複数設け、それら複数のn型シリコン領域NSのそれぞれが、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれるようにしている。これにより、PN接合が形成されるn型シリコン領域NSの側面の合計数を多くすることができ、それゆえ、PN接合が形成されるn型シリコン領域NSの側面の合計面積を大きくすることができるため、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。言い換えると、シリコン膜SFの平面寸法(平面積)を抑制しながら、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。このため、ダイオードDDの動作抵抗を小さくすることができるので、ダイオードDDの発熱量を抑制することができる。従って、ダイオードDDの信頼性を向上させることができ、従って、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を向上させることができる。また、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の小型化(小面積化)を図ることができる。
【0100】
但し、上記実施の形態1では、各n型シリコン領域NSの側面だけでなく底面にもPN接合が形成されているのに対して、本実施の形態2では、各n型シリコン領域NSの側面にはPN接合が形成されるが、各n型シリコン領域NSの底面にはPN接合が形成されない。このため、上記実施の形態1と本実施の形態2とを比べた場合には、本実施の形態2よりも上記実施の形態1の方が、各n型シリコン領域NSの底面にもPN接合が形成される分だけ、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。このため、本実施の形態2よりも上記実施の形態1の方が、ダイオードDDの動作抵抗をより小さくすることができるので、ダイオードDDの発熱量を更に抑制することができる。このため、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を向上させる上では、本実施の形態2よりも上記実施の形態1の方が、有利である。
【0101】
【0102】
上記
図17および
図18の構造が得られるまでは、本実施の形態2の製造工程も上述した上記実施の形態1の製造工程と同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0103】
上記実施の形態1と同様にして、上記
図17および
図18の構造を得た後、本実施の形態2では、
図40および
図41に示されるように、MOSFET形成領域RG2(
図41)を露出し、ダイオード形成領域RG1(
図40)のシリコン膜SFを覆うフォトレジストパターン(マスク層)RP2をフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。フォトレジストパターンRP2は、シリコン膜SFにおけるn型シリコン領域NSが露出されるべき領域を露出する開口部OP1を有している。
【0104】
次に、n+型半導体領域NRおよびn型シリコン領域NSを形成するためのイオン注入工程を行う。このイオン注入工程においては、n型の不純物(例えばヒ素)をイオン注入する。このイオン注入工程により、MOSFET形成領域RG2においては、半導体基板SUB(具体的にはp型半導体領域PRの上部)にn型不純物が注入されてn+型半導体領域NRが形成され、ダイオード形成領域RG1においては、フォトレジストパターンRP2の開口部OP1から露出される部分のシリコン膜SFにn型不純物が注入されてn型シリコン領域NSが形成される。シリコン膜SF上に開口部OP1は複数形成されているため、シリコン膜SFには複数のn型シリコン領域NSが形成される。フォトレジストパターンRP2は、シリコン膜SFに複数のn型シリコン領域NSをイオン注入により形成するためのマスク層として機能することができる。また、このイオン注入工程では、ソース領域として機能するn+型半導体領域NRが適切な厚さとなるように、イオン注入のエネルギーを調整することが望ましい。
【0105】
次に、
図42および
図43に示されるように、半導体基板SUBの主面上(主面全面上)に、トレンチゲート電極TGおよびシリコン膜SFを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜ILを形成する。
【0106】
次に、
図44および
図45に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜ILにコンタクトホールCTS,CTA,CTCを形成する。コンタクトホールCTSは、MOSFET形成領域RG2(
図45)に形成され、コンタクトホールCTA,CTCは、ダイオード形成領域RG1(
図44)のシリコン膜SF上に形成される。コンタクトホールCTAとコンタクトホールCTCとは、同工程で形成することができる。コンタクトホールCTSは、コンタクトホールCTA,CTCと同工程で形成しても、あるいは別々の工程で形成してもよい。
【0107】
以降の工程は、本実施の形態2も、上記実施の形態1とほぼ同様である。すなわち、
図46および
図47に示されるように、コンタクトホールCT(CTS,CTA,CTC)内に、プラグPG(PGS,PGA,PGC)を上記実施の形態1と同様にして形成する。それから、
図48および
図49に示されるように、プラグPG(PGS,PGA,PGC)が埋め込まれた絶縁膜IL上に上記実施の形態1と同様にして配線M1(M1S,M1A,M1C)を形成する。
【0108】
本実施の形態2では、シリコン膜SFに複数のn型シリコン領域NSを形成するためのイオン注入工程を、MOSFET形成領域RG2の半導体基板SUBにn+型半導体領域NRを形成するためのイオン注入工程と同工程としている。これにより、本実施の形態2の製造工程の場合は、イオン注入工程数を低減できるという利点を得られる。
【0109】
一方、上記実施の形態1の場合は、シリコン膜SFに複数のn型シリコン領域NSを形成するためのイオン注入工程において、形成すべきn型シリコン領域NSの厚さに応じて、イオン注入のエネルギーを調整することができる。このため、n型シリコン領域NSの底面の深さ位置を制御しやすい。従って、上記実施の形態1で説明したような、n型シリコン領域NSの底面の深さ位置がシリコン膜SFの下面よりも浅い構造を、より的確に形成することができる。
【0110】
【0111】
なお、本実施の形態3の半導体装置の構造は、ダイオードDDの構造以外は、上記実施の形態1の半導体装置CPとほぼ同様である。このため、本実施の形態3では、ダイオードDDの構造について、上記実施の形態1との相違点を中心にして以下に説明する。
【0112】
上記実施の形態1においては、ダイオードDDを構成するシリコン膜SFは、p型シリコン領域PSと複数のn型シリコン領域NSとを有しており、複数のn型シリコン領域NSのそれぞれは、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれていた。
【0113】
それに対して、本実施の形態3では、ダイオードDDを構成するシリコン膜SFは、p型シリコン領域PSとn型シリコン領域NSとを有しており、n型シリコン領域NSは、平面視においてp型シリコン領域PSにより囲まれているが、シリコン膜SFに形成されているn型シリコン領域NSの数は1つである。
【0114】
シリコン膜SF内に形成されたn型シリコン領域NSの底面の深さ位置が、シリコン膜SFの下面よりも浅い点は、本実施の形態3も、上記実施の形態1と同様である。このため、本実施の形態3においても、n型シリコン領域NSの厚さは、シリコン膜SFの厚さよりも小さく、従って、n型シリコン領域NSは、シリコン膜SFの厚さ方向において、シリコン膜SFを貫通していない。このため、本実施の形態3においても、n型シリコン領域NSは、シリコン膜SFの下面に露出しておらず、n型シリコン領域NSの底面の下には、p型シリコン領域PSが存在している。このため、本記実施の形態3においても、n型シリコン領域NSの側面および底面がp型シリコン領域PSと接しており、n型シリコン領域NSの側面および底面にPN接合が形成されている。
【0115】
本実施の形態3において、シリコン膜SFに形成されたn型シリコン領域NSは、プラグPGCを介して配線M1Cと電気的に接続されている。このため、シリコン膜SFのn型シリコン領域NS上にはプラグPGCが配置されているが、プラグPGCの数は、1つ以上の任意の数とすることができる。
図51の場合は、シリコン膜SFのn型シリコン領域NS上にプラグPGCを2つ配置し、その2つのプラグPGCを介してn型シリコン領域NSと配線M1Cとを電気的に接続する場合が示されている。
図51の場合、プラグPGCは、平面視において、Y方向に長手方向を有する矩形状の平面形状を有しており、2つのプラグPGCがX方向に離間して配置されている。
【0116】
それ以外については、本実施の形態2の半導体装置の構成は、上記実施の形態1の半導体装置CPとほぼ同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0117】
本実施の形態3では、n型シリコン領域NSの側面だけでなく、n型シリコン領域NSの底面にも、PN接合が形成されている。このため、n型シリコン領域NS10の底面にはPN接合が形成されていない上記検討例(
図7および
図8)に比べて、n型シリコン領域NSの底面にもPN接合が形成される本実施の形態3(
図50~
図53)の方が、ダイオードDDを構成するPN接合面の合計面積を大きくすることができる。言い換えると、シリコン膜SFの平面寸法(平面積)を抑制しながら、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくすることができる。このため、ダイオードDDの動作抵抗を小さくすることができるので、ダイオードDDの発熱量を抑制することができる。従って、ダイオードDDの信頼性を向上させることができ、従って、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を向上させることができる。また、ダイオードDDを備える半導体装置CPの性能を向上させることができる。また、半導体装置の小型化(小面積化)を図ることができる。
【0118】
上記実施の形態1~3では、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくする工夫を行っている。ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を大きくする方法としては、2つの方法がある。第1の方法は、n型シリコン領域NSがp型シリコン領域PSで平面視で囲まれることによりn型シリコン領域NSの側面にPN接合が形成されるようにするとともに、シリコン膜SFに形成されるn型シリコン領域NSの数を多くする(2つ以上にする)ことにより、n型シリコン領域NSの側面の合計数を多くし、それによって、n型シリコン領域NSの側面の合計面積を大きくすることである。第2の方法は、n型シリコン領域NSの底面の深さ位置をシリコン膜SFの下面よりも浅くすることにより、n型シリコン領域NSの底面の下にp型シリコン領域PSを存在させることで、n型シリコン領域NSの側面だけでなく、n型シリコン領域NSの底面にもPN接合が形成されるようにすることである。本実施の形態3は、この第2の方法を適用し、上記実施の形態2は、第1の方法を適用し、上記実施の形態1は、第1の方法と第2の方法の両方を適用している。
【0119】
このため、実施の形態1~3のうち、上記実施の形態1が、ダイオードDDを構成するPN接合の合計面積を最も大きくすることができ、従って、ダイオードDDの動作抵抗を最も小さくすることができる。このため、ダイオードDDを備える半導体装置CPの信頼性を向上させる上では、実施の形態1~3のうち、上記実施の形態1が、最も有利である。
【0120】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
CT,CTA,CTC,CTS コンタクトホール
DD,DD10 ダイオード
EP エピタキシャル層
GF ゲート絶縁膜
IL 絶縁膜
M1,M1A,M1A10,M1C,M1C10,M1S 配線
NR n+型半導体領域
NS,NS10 n型シリコン領域
OP1 開口部
PG,PGA,PGA10,PGC,PGC10,PGS プラグ
PR p型半導体領域
PS,PS10 p型シリコン領域
RG1 ダイオード形成領域
RG2 MOSFET形成領域
RP1,RP2 フォトレジストパターン
SB 基板本体
SF,SF10 シリコン膜
SUB 半導体基板
TG トレンチゲート電極
TR 溝
ZM,ZM10 絶縁膜