(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】温蔵庫
(51)【国際特許分類】
A47J 39/02 20060101AFI20240314BHJP
A47B 31/00 20060101ALN20240314BHJP
A47B 31/02 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
A47J39/02
A47B31/00 H
A47B31/02 B
(21)【出願番号】P 2020149951
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 浩
(72)【発明者】
【氏名】溝口 岳博
(72)【発明者】
【氏名】加賀 進一
(72)【発明者】
【氏名】内山 千佳
(72)【発明者】
【氏名】山本 凌大
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225024(JP,A)
【文献】特開平09-037964(JP,A)
【文献】特開2017-093862(JP,A)
【文献】特開2016-195717(JP,A)
【文献】実開昭51-106973(JP,U)
【文献】特開2008-011955(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095727(US,A1)
【文献】特開2001-301624(JP,A)
【文献】特開2005-118587(JP,A)
【文献】特開2001-301625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 39/00-47/20
A47B 1/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温蔵対象物を収容するための温蔵庫本体と、
前記温蔵庫本体の内気を加熱するための加熱ユニットと、
を備え、
前記加熱ユニットは、
前記温蔵庫本体の内部において、前記温蔵庫本体の側壁に対し上下方向に沿って配設される内側ダクトと、
前記温蔵庫本体の内部において、前記内側ダクトを取り囲むように上下方向に沿って配設される外側ダクトと、
前記内側ダクト内に設けられた第1の加熱手段と、
前記外側ダクト内に設けられた第2の加熱手段と、
前記温蔵庫本体の内気を、前記内側ダクトおよび前記外側ダクトに対し、上方から下方に向けて送る送風機構と、
を備え、
前記外側ダクトは、前記外側ダクトの内部と前記温蔵庫本体の内部とを連通する通気孔を備えている、温蔵庫。
【請求項2】
前記温蔵庫本体は、
前方に開口する直方体形状の温蔵室と、
前記温蔵室の前記開口を開閉する扉と、
を備えており、
前記外側ダクトは、
前記開口とは反対側の前記側壁である背壁に設置されるとともに、
前記背壁に対して離間された本体部と、前記本体部の両端から前記背壁に向けて延びる側面部と、
を備えて構成されており、
前記通気孔は複数のものが、前記本体部と前記側面部とにおいて、上下方向に亘って設けられている、請求項1に記載の温蔵庫。
【請求項3】
前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段はそれぞれコードヒータであり、
前記内側ダクトおよび前記外側ダクトはそれぞれ、前記側壁に対して離間された本体部と、前記本体部の幅方向の両端から前記側壁に向けて延びる側面部と、
を備えて構成されており、
前記コードヒータは、前記本体部の前記側壁に向かう側の面に配設されているとともに、
前記送風機構は、ドラム型の回転翼の回転軸に対して横切る方向に空気を流す、横断流型のファンを備えている、請求項1または2に記載の温蔵庫。
【請求項4】
前記内側ダクトおよび前記外側ダクトはそれぞれ、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の温蔵庫。
【請求項5】
前記内側ダクトの前記外側ダクトに向かう側の面には、前記外側ダクトに向けて延びる風向板が備えられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の温蔵庫。
【請求項6】
前記内気の温度を検知する温度検知手段と、
前記加熱ユニットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記温度検知手段によって検知された前記内気の温度が、予め設定された温蔵温度よりも低い第1温度に到達するまでは、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段を連続して作動させ、
前記温度検知手段によって検知された前記内気の温度が前記第1温度に到達したのちは、所定の温度幅ずつ段階的に前記内気が加熱されるように、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段を断続的に作動させる構成を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の温蔵庫。
【請求項7】
前記内気の温度を検知する温度検知手段と、計時手段と、報知手段と、制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記計時手段によって、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段の少なくとも一方による前記内気の加熱が開始されてからの経過時間を計測するとともに、
前記温度検知手段によって前記内気の温度を検知し、
前記経過時間が所定の設定時間に到達したときに、検知された前記内気の温度が所定の設定温度に到達していない場合は、作動させた前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段の少なくとも一方が故障していると判断し、
前記報知手段によって故障を報知する構成を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の温蔵庫。
【請求項8】
計時手段と、報知手段と、制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記計時手段によって計測される経過時間が、予め設定された第1時間に到達したとき、前記報知手段によって前記第1時間の到達を報知する構成を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の温蔵庫。
【請求項9】
前記報知手段は、表示装置、警告灯、および警報器からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項7または8に記載の温蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、温蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、調理された料理を食器に給仕した状態で収容し、所定の温度で加温することができる温蔵庫が知られている。例えば特許文献1には、庫内に複数の食器を収容可能な収容部を有するとともに、ヒータパネルが配設されたダクトを庫内の左右の側面と背面とに備え、送風ファンによりこれらのダクトの上方から下方に向けて円滑に送風することが可能な構成の温蔵庫が開示されている。この温蔵庫によると、送風ファンで発生させた風を側面および背面のダクトから収納部に均一な量で送ることができ、収納部内の温度を均一にできると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、送風ファンを備える温蔵庫においても、庫内温度は下方においてより高くなる傾向にあり、改善の余地があった。
ここに開示される技術は、このような事情に基づいて完成されたものであって、庫内の温度ムラを抑制して均一に加熱することができる温蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで上記課題を解決するため、ここに開示される温蔵庫は、温蔵対象物を収容するための温蔵庫本体と、前記温蔵庫本体の内気を加熱するための加熱ユニットと、を備えている。前記加熱ユニットは、前記温蔵庫本体の内部において、前記温蔵庫本体の側壁に対し上下方向に沿って配設される内側ダクトと、前記温蔵庫本体の内部において、前記内側ダクトを取り囲むように上下方向に沿って配設される外側ダクトと、前記内側ダクト内に設けられた第1の加熱手段と、前記外側ダクト内に設けられた第2の加熱手段と、前記温蔵庫本体の内気を、前記内側ダクトおよび前記外側ダクトに対し、上方から下方に向けて送る送風機構と、を備える、前記外側ダクトは、前記外側ダクトの内部と前記温蔵庫本体の内部とを連通する通気孔を備えている。
【0006】
上記構成においては、内側ダクトと外側ダクトからなる二重のダクト内にそれぞれ加熱手段を設け、ダクトを加熱パネルとして利用している。これにより、加熱面積を効果的に拡大することができ、内気の加熱効率(熱交換効率)の高い温蔵庫を実現することができる。また、外側ダクトを流れる空気については、外側ダクトの下流側の端部のみならず、外側ダクトに設けられた通気孔から庫内に送られる。これにより、温蔵庫の下方が局所的に加熱されて温度ムラが生じることを抑制し、庫内を均一に加熱することができる温蔵庫が提供される。
【0007】
好適な一態様において、前記温蔵庫本体は、前方に開口する直方体形状の温蔵室と、前記温蔵室の前記開口を開閉する扉と、を備えている。前記外側ダクトは、前記開口とは反対側の前記側壁である背壁に設置されるとともに、前記背壁に対して離間された本体部と、前記本体部の両端から前記背壁に向けて延びる側面部と、を備えて構成されており、前記通気孔は複数のものが、前記本体部と前記側面部とにおいて、上下方向に亘って設けられている。上記構成においては、外側ダクトには、本体部と側面部の両方に、上下方向に亘って通気孔が設けられている。これにより、温蔵庫の温度ムラの発生がより好適に抑制されて、庫内をより均一に加熱することができる温蔵庫が提供される。
【0008】
好適な一態様において、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段はそれぞれコードヒータであり、前記内側ダクトおよび前記外側ダクトはそれぞれ、前記側壁に対して離間された本体部と、前記本体部の幅方向の両端から前記側壁に向けて延びる側面部と、を備えて構成されており、前記コードヒータは、前記本体部の前記側壁に向かう側の面に配設されている。そして、前記送風機構は、ドラム型の回転翼の回転軸に対して横切る方向に空気を流す、横断流型のファンを備えている。上記構成によると、横断流型のファンによって庫内の空気を循環させるため、プロペラファンやブロワ等を用いた場合と比較して、大きな風量で、かつ静圧を小さくして送風することができる。これにより、温蔵されている食品等の乾燥を防ぎながら、加熱ユニットによって加熱された空気を、庫内に効率よく循環させることができる。延いては、加熱効率と温蔵効率とに優れた温蔵庫が提供される。
【0009】
好適な一態様において、前記内側ダクトおよび前記外側ダクトはそれぞれ、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されている。アルミニウムまたはアルミニウム合金は、熱伝導率が高いうえに比較的軽量であることから、第1の加熱手段および第2の加熱手段による発熱を、内側ダクトおよび外側ダクトに効率よく伝播させることができるとともに、二重のダクトをより軽量なものとすることができる。これにより、温蔵庫の庫内空気の加熱効率をより高めることができるとともに、温蔵庫の軽量化を図ることができる。
【0010】
好適な一態様において、温蔵庫には、前記内側ダクトの前記外側ダクトに向かう側の面には、前記外側ダクトに向けて延びる風向板が備えられている。上記構成によると、外側ダクトの内部の下方に向かう空気の流れを、外側ダクトの板面に向かう方向に変えることができる。これにより、外側ダクトと空気との接触効率を高められるとともに、外側ダクトの内部を流れる空気を、通気孔から庫内に効率よく送ることができる。その結果、庫内の空気の加熱効率と循環効率とをより一層高めることができ、庫内の温度ムラを好適に抑制することができる。
【0011】
好適な一態様において、温蔵庫は、前記内気の温度を検知する温度検知手段と、前記加熱ユニットの動作を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記温度検知手段によって検知された前記内気の温度が、予め設定された温蔵温度よりも低い第1温度に到達するまでは、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段を連続して作動させ、前記温度検知手段によって検知された前記内気の温度が前記第1温度に到達したのちは、所定の温度幅ずつ段階的に前記内気が加熱されるように、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段を断続的に作動させる構成を備えている。温蔵庫においては、例えば温蔵温度が高い場合などにおいて、第1および第2の加熱手段が庫内の空気(内気)よりも有意に過熱される事態が生じ得る。上記構成によると、庫内温度が、例えば、加熱手段の温度と庫内温度との乖離が生じやすくなる第1温度に到達したのちは、第1および第2の加熱手段を断続的に作動させて、庫内温度を所定の温度幅ずつ高めることができる。これにより、加熱手段の温度と庫内温度との乖離を抑制することができる。その結果、例えば加熱ユニットの耐熱温度を過剰に高く設定する必要がなく、また、加熱ユニットの耐久性を高めることができる。さらに、安全装置(例えば、サーモスタット等による過熱防止装置)が備えられた温蔵庫においては、安全装置の誤作動を防止することができる。
【0012】
好適な一態様において、温蔵庫は、前記内気の温度を検知する温度検知手段と、計時手段と、報知手段と、制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記計時手段によって、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段の少なくとも一方による前記内気の加熱が開始されてからの経過時間を計測するとともに、前記温度検知手段によって前記内気の温度を検知し、前記経過時間が所定の設定時間に到達したときに、検知された前記内気の温度が所定の設定温度に到達していない場合は、作動させた前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段の少なくとも一方が故障していると判断し、前記報知手段によって故障を報知する構成を備えている。上記構成によると、第1および第2の加熱手段の故障を自動的に検知するとともに、速やかにユーザ等に報知することができる。これにより、第1および第2の加熱手段が断線等によって故障した場合等に、ユーザがその事態を速やかに把握することができ、第1および第2の加熱手段の故障に対して早急に対応することが可能となるために好ましい。
【0013】
好適な一態様において、温蔵庫は、計時手段と、報知手段と、制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記計時手段によって計測される経過時間が、予め設定された第1時間に到達したとき、前記報知手段によって前記第1時間の到達を報知する構成を備えている。上記構成によると、例えば、ユーザが、加熱調理後の食品を温蔵庫に収容した時点で計時手段による計時を開始させることで、当該食品の温蔵時間が所定の第1時間に到達したことが速やかにユーザ等に報知される。これにより、例えば、HACCPに準じる衛生管理を行う場合において、調理済食品の適切な温度管理を簡便に実施することができる。
【0014】
好適な一態様において、前記報知手段は、表示装置、警告灯、および警報器からなる群から選択される少なくとも一つである。上記構成によると、温蔵庫を使用するユーザにとって好適な報知態様を採用することができるために好適である。
【発明の効果】
【0015】
ここに開示される技術によれば、庫内の温度ムラを抑制して均一に加熱することができる温蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】温蔵庫の側面に沿う断面図(
図1のA-A断面図)
【
図3】温蔵庫の正面に沿う断面図(
図1のB-B断面図)
【
図4】温蔵庫の上面に沿う要部断面図(
図1のC-C断面図)
【
図10】実施形態1に係るパッキンの切り欠き斜視図
【
図11】温蔵庫の上面に沿う要部断面図(
図1のD-D断面図)
【
図13】上扉および下扉の要部断面図(
図9のE-E断面図)
【
図14】実施形態1に係るパッキン支持部材の斜視図
【
図15】実施形態2に係る風向板が設置された加熱ユニットの要部断面図
【
図16】実施形態2に係る風向板が設置された加熱ユニット(背壁)の要部正面図
【
図17】実施形態2に係る風向板が設置された加熱ユニット(内側ダクト)の要部正面図
【
図18】実施形態3に係る温蔵庫の温度制御の様子を示すグラフ
【
図19】実施形態4に係る温蔵庫のヒータの故障検知フロー
【
図20】実施形態5に係る温蔵庫のヒータの故障検知フロー
【
図21】実施形態6に係る温蔵庫の操作パネルを示す正面図
【
図22】実施形態7に係るパッキン支持部材の斜視図
【
図23】実施形態8に係る温蔵庫の上扉および下扉の背面図
【
図25】上扉および下扉の要部断面図(
図24のF-F断面図)
【
図27】パッキンが上下で入れ違った(捻じれた)ときの様子を示す(A)断面模式図と(B)正面図
【
図28】実施形態9に係る温蔵庫の上扉および下扉の(A)断面模式図と(B)正面図
【
図30】実施形態10に係るパッキンの閉扉時の様子を示す斜視図
【
図35】実施形態15に係る(A)上扉と下扉の断面模式図と(B)パッキンの斜視図
【
図36】実施形態16に係る上扉および下扉の(A)断面模式図と(B)正面図パッキンの(A)断面模式図と(B)正面図
【
図37】実施形態17に係る(A)上扉および下扉の断面模式図と(B)パッキンの斜視図
【
図38】実施形態18に係る(A)上扉および下扉の断面模式図と(B)パッキンの斜視図
【
図39】実施形態19に係る(A)上扉および下扉の断面模式図と(B)パッキンの斜視図
【
図40】実施形態20に係る上扉および下扉の(A)断面模式図と(B)正面図
【
図41】実施形態21に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図42】実施形態22に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図43】実施形態23に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図44】実施形態24に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図46】実施形態25に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図47】実施形態26に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図48】実施形態26に係る温蔵庫の温蔵室の斜視図
【
図49】実施形態27に係る(A)開閉時と(B)閉扉時の上扉および下扉の断面模式図
【
図50】実施形態28に係る上扉および下扉の密閉構造の(A)断面模式図と(B)背面図
【
図51】実施形態28に係る上扉および下扉の密閉構造において、上扉と下扉を様々に開閉したとき(A)~(F)の封止板の様子を説明する断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに開示される技術について、適宜図面を参照しつつ説明する。なお、各図に示した符号F,Rr,L,R,U,Dはそれぞれ、温蔵庫1の扉30を正面としたときの前方,後方、幅方向(左右方向)における左方,右方、鉛直方向(上下方向)の上方,下方を示している。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0018】
≪実施形態1≫
〔温蔵庫〕
本実施形態に係る温蔵庫1は、例えば調理後の高温の食品を高温で保存することができるとともに、配膳等のために移動可能とされている、保温設備のある運搬車(いわゆる、ホットカート)である。温蔵庫1は、例えば、殆どの細菌が死滅する温度帯(例えば、厚生労働省発行の「大量調理施設衛生管理マニュアル」において、調理後の食品の管理温度の一つとして示される「65℃以上」、一例として65~95℃)における任意の設定温度において収容物を温蔵することができるようになっている。この温蔵庫1は、
図1から
図3に示すように、全体として略直方体形状をなしており、概して加熱空間を構成する温蔵庫本体10が主体をなすとともに、機械室5が温蔵庫本体10の上方に配され、4つのキャスター7によって温蔵庫本体10の四隅を下方から支持している。以下、各構成要素について説明する。
【0019】
温蔵庫本体10は、前面が開口された箱状をなし、内部に温蔵の対象である食品等を収容できる温蔵室11と、温蔵室11の開口を開閉する扉30と、を有している。温蔵庫本体10において、温蔵室11の開口を扉30で覆うことによってその内部に温蔵空間を構築することができる。温蔵室11および扉30は、ステンレス等の金属板からなる中空構造を有しており、その内部にグラスウール等の断熱材が充填されていることで、温蔵空間(以下、単に庫内という場合がある。)を外部から断熱できるようになっている。本実施形態の温蔵庫1の扉30は、上扉31と下扉32の二つの扉30によって構成されており、温蔵室11の一つの開口を上下に配されたこれら二つの扉31,32で独立して開閉できるようになっている。一つの開口を二つの扉31,32によって開閉することで、庫内温度の変動を抑制して温蔵対象物を温蔵室11に出し入れすることができる。
【0020】
扉31,32には、その左側側面31B,32Bにおいて、上下一対のヒンジ機構31D,32Dが取付けられている。また、温蔵室11には、開口縁部(開口の周縁部)のうち左側部11Bにおいて、上扉31と下扉32とに対応する位置に、ヒンジ機構31D,32Dが取り付けられている。そして各扉31,32は、このヒンジ機構31D,32Dを揺動軸として、温蔵室11に対して揺動開閉できるようになっている。各扉31,32には、温蔵室11との気密性を確保するためのパッキン34が設けられている。パッキン34の構成については、後ほど詳述する。また、扉31,32には、
図1に示すように、右側側面31C,32Cであって、温蔵室11の上下方向における中央寄りとなる位置に取手33が設けられており、温蔵室11の開口縁部であって、これら取手33に対向する右側部11Cには、高吸着力を備えるマグネット(図示せず)が取り付けられている。このような構成によって、上扉31と下扉32はそれぞれ、閉じられたときに取手33が温蔵室11の開口縁部に強く吸着され、固く密閉されるようになっている。また、上扉31または下扉32を開くときは、該当する扉の取手33を手前に倒すことで、梃子の反作用によってマグネット吸着による上扉31または下扉32の固定を解除できるようになっている。
【0021】
温蔵室11は、上壁12Aと、一対の左側壁12Bおよび右側壁12Cと、背壁12Dと、底壁12Eとを備えている。左側壁12B,右側壁12C,および背壁12Dは、本技術における側壁の一例である。庫内には、
図2および
図3に示すように、ステンレス,アルミニウム合金等の金属によって構成されたトレイ受構造20が設けられている。トレイ受構造20は、大まかには、棚柱21とトレイガイド23(棚受)とを備えることで構成されており、温蔵室11内に、調理済みの食品や食器を載せたトレイ25(棚板)を単数で、ないしは複数のものを上下方向に並ぶ形で、載置することができるようになっている。具体的には、温蔵室11内の左側壁12Bおよび右側壁12Cにはそれぞれ、前後に1本ずつの棚柱21が固定されている。棚柱21には、上下方向に所定の間隔で複数の係止孔21Aが設けられており、この係止孔21Aにトレイガイド23の前後の係止爪23Aを係止することで、左側壁12Bおよび右側壁12Cの各々において、トレイガイド23を略水平な姿勢で、前後の棚柱21に渡すとともに、幅方向の中央側に向けて突出するように、着脱可能に取り付けられるようになっている。トレイガイド23は、左右の棚柱21の同じ高さ位置に設置されたものが対をなしており、この一対のトレイガイド23の上に、一つのトレイ25(例えば、ホテルパン)を略水平に載置することができる。
【0022】
〔加熱ユニット〕
温蔵室11の後方には、加熱ユニット40が備えられている。加熱ユニット40は、
図2および
図4に示すように、大まかには、内側ダクト41、内側ヒータ42(第1の加熱手段の一例)、外側ダクト43、外側ヒータ44(第2の加熱手段の一例)、および、ファン46(送風機構の一例)を備えて構成されている。加熱ユニット40のうち、ダクト41,43およびヒータ42,44については、温蔵室11の内部に配されているものの、ファン46については、機械室5に侵入するかたちで、温蔵室11の上方に画成されたファンルーム47内に配されている。以下、加熱ユニット40の各部について説明する。
【0023】
内側ダクト41と外側ダクト43はそれぞれ、長尺のアルミニウム合金板が断面略コの字型に折り曲げられることにより、本体部41A,43Aと、本体部41A,43Aの両端から互いに対向して延びる側面部41B,43Bと、を備えるように形成されている。外側ダクト43は、内側ダクト41よりも、幅方向,上下方向,および前後方向の寸法がいずれも大きくなるように構成されており、背壁12Dの庫内側の面に対して、内側ダクト41が内側となり、外側ダクト43が外側となり、コの字型の膨出部(換言すれば、本体部41A,43Aおよび側面部41B,43Bの長手方向)が上下後方に沿うように、互いに離間して固定されている。これにより、加熱ユニット40には、上下方向に沿って、背壁12Dと内側ダクト41との間に第1の空気流路F1が、内側ダクト41と外側ダクト43との間に第2の空気流路F2が、形成されている。
【0024】
内側ダクト41には、
図5および
図6に示すように、背壁12Dに対向する側の面(以下、「裏面」という。)に、内側ヒータ42が備えられている。本例の内側ヒータ42は、リード線(銅線)をシリコーンゴムによって被覆した所謂シリコーンコードヒータ(コードヒータの一例)であり、内側ダクト41の右側部分と左側部分とに1つずつ配されている。内側ヒータ42は、内側ダクト41の右側部分と左側部分のそれぞれにおいて、上下方向に平行に延びるように蛇行して配策され、アルミ箔テープによって内側ダクト41の裏面に固定されている。内側ヒータ42の両端は上方に配策されており、後述する機械室5に備えられた制御装置100に電気的に接続されるとともに、図示しない外部電源に接続可能とされている。内側ダクト41は、内側ヒータ42を支持するヒータパネルの役割を兼ねている。
【0025】
内側ダクト41の側面部41Bには、内側ダクト41の内外を通気するための長穴状の通気孔41Cが複数、互いに離間して貫通形成されている。左右の側面部41Bにはそれぞれ、上下方向に亘って複数の通気孔41Cが配列されており、本例の内側ダクト41においては、それぞれの側面部41Bに、前後方向に2個、上下方向に17個、の計34個の通気孔41Cが配列されている。内側ダクト41の本体部41Aには通気孔41Cは形成されておらず、二つの内側ヒータ42の貼付け個所の間の中央部における上側部分には、後述するサーモスタット45を取付けるための開口41Dが形成されている。
【0026】
サーモスタット45は、バイメタル式の温度調節器であり、その感熱部が、内側ダクト41の開口41Dを通じて、内側ダクト41の本体部41Aと外側ダクト43の本体部43Aとの間に配されるように、背壁12Dに固定されている。このサーモスタット45は、内側ヒータ42および外側ヒータ44への電力供給回路においてB接点を構成しており、通常時は通電状態(ON)にあるものの、雰囲気温度が所定の設定温度(例えば、95℃)になると接点が開き、内側ヒータ42および外側ヒータ44への電力の供給を遮断(OFF)するようになっている。これにより、内側ヒータ42および外側ヒータ44の異常過熱を防止することができる。なお、これに限定されるものではないが、本例のサーモスタット45は、所定の設定温度(作動温度)以上で開状態となったとき、ユーザによる安全確認後に手動でリセットする手動復帰型とされている。
【0027】
外側ダクト43には、
図7および
図8に示すように、背壁12Dに対向する側の面(以下、「裏面」という。)に、外側ヒータ44が備えられている。外側ヒータ44は、内側ヒータ42と同様のリード銅線をシリコーンゴムによって被覆した所謂シリコーンコードヒータであり、外側ダクト43の右側部分と左側部分とに1つずつ配されている。外側ヒータ44は、外側ダクト43の右側部分と左側部分のそれぞれにおいて、上下方向に平行に延びるように蛇行して配策され、アルミ箔テープによって外側ダクト43の裏面に固定されている。外側ヒータ44の両端は上方に配策され、制御装置100に電気的に接続されるとともに、図示しない外部電源に接続可能とされている。外側ダクト43は、外側ヒータ44を支持するヒータパネルの役割を兼ねている。
【0028】
また、外側ダクト43の本体部43Aと側面部43Bとには、外側ダクトの内外を通気するための長穴状の通気孔43Cが複数、互いに離間して設けられている。本体部43Aには、外側ヒータ44の貼付け個所を除く、左右の端部と中央部とに、上下方向に亘って通気孔43Cが配列されている。なお、中央部には、サーモスタット45の前方に対応する位置に、通気孔43Cに代えて、点検孔43Dが設けられている。点検孔43Dは、前方からアルミニウム合金製の板材からなる蓋部材43Eによって、着脱自在に蓋がされている。左右の側面部43Bにはそれぞれ、上下方向に亘って複数の通気孔43Cが配列されている。
図2に示すように、外側ダクト43の側面部43Bの通気孔43Cと、内側ダクト41の側面部41Bの通気孔41Cとは、高さ方向でややずれた位置に配されるようになっている。側面部43Bにおいては、上側部分よりも下側部分において通気孔43Cの数が少ない。例えば、本例の外側ダクト43において、一方の側面部43Bの上側部分には、前後方向に5個、上下方向に9個、の計45個の通気孔41Cが配されており、下側部分は、上側部分における前方の3列分に相当する位置に、前後方向に3個、上下方向に9個、の計27個の通気孔41Cが、配されている。
【0029】
なお、
図2に示すように、内側ダクト41は、その下端が外側ダクト43の下端よりも上方に配されており、第1の空気流路F1は内側ダクト41よりも下側で、第2の空気流路F2に合流されている。外側ダクト43は、その下端が、トレイ受構造20の最下段に取付けられるトレイガイド23よりも下方に配され、外側ダクト43の下端と底壁12Eとの間には比較的狭い隙間が形成されている。このような構成によって、第2の空気流路F2および第1の空気流路F1は、外側ダクト43の下端と底壁12Eとの間の隙間(吹出口)を通じて、庫内に連通されている。
【0030】
ファンルーム47は、
図2に示すように、上壁12Aの後方中央部分において上壁12Aを貫通し、上壁12Aと背壁12Dとの間において上方に張り出すように設けられている。ファンルーム47の下面には、吸気口47Aが形成されており、庫内の空気をファンルーム47内に取り込むことができるようになっている。ファンルーム47には、吸気口47Aの上方にサーミスタ48(温度検知手段の一例)が備えられており、ファンルーム47に取り込まれた庫内空気の温度を検知して制御装置100に送るようになっている。また、ファンルーム47には、ファン46として、横断流型のファンが二つ設けられている。ただし、ファンは一つであってもよい。ファン46は、制御装置100に電気的に接続されるとともに、図示しない外部電源に接続可能とされている。
【0031】
横断流型のファンは、横流ファン、貫流ファン、ラインフローファン(登録商標)、クロスフローファン、タンジェンシャルファンクロスフローファン等と呼ばれるものであって、ドラム型で軸方向に一様な翼を持つ回転翼(羽根車)をケース内で回転させることで、一方(吸気口)の側の空気を羽根の隙間に掻き込む(吸い込む)と、回転軸に対して横切る(クロスする)ように空気を流し、他方(排気口)の側において羽根の隙間からの空気を吐き出すように構成されている。この横断流型のファン46は、例えばプロペラファン等に代表される軸流型ファンや、ブロワ,シロッコファン等に代表される幅流型ファンなどと比較して、静圧が低く、作動音も小さく、偏平で柔らかな空気流を形成しやすいという特徴がある。なお、この種の温蔵庫においては、庫内温度を均一に保つために循環ファンが設置されるが、調理済みの料理がカバー等を被されることなく高温の空気流に過剰に晒されると、その表面が乾燥され、食味や風味が損なわれるという問題が生じ得る。ここに開示される温蔵庫1は、横断流型のファン46によって庫内空気を低い静圧にて緩やかに循環させることから、カバー等を施すことなく温蔵されている料理の乾燥と送風による品質の劣化とを好適に抑制することができる。これに限定されるものではないが、ファン46としては、例えば、最大静圧が20Pa以下、好ましくは10Pa以下のファンであるとよい。
【0032】
2つのファン46はそれぞれ、回転軸が幅方向に沿うように設置されている。これらのファン46のうち、相対的に後方に配されているものを第1ファン46A、相対的に前方に配されているものを第2ファン46Bとする。これらのファン46A,46Bの吸気口I1,I2はいずれもファンルーム47内に配されており、排気口O1,O2は、第1ファン46Aについては、内側ダクト41と背壁12Dとの間(すなわち、第1の空気流路F1)に接続され、第2ファン46Bについては、外側ダクト43と内側ダクト41との間(すなわち、第2の空気流路F2)に接続されている。これらのファン46を駆動することによって、庫内の空気を、吸気口47Aを通じてファンルーム47内に吸引するとともに、ダクト41,43内の第1の空気流路F1および第2の空気流路F2に送ることができるようになっている。
【0033】
機械室5は、
図2および
図3に示すように、温蔵庫本体10の上方に配されており、その前方に制御装置100を収容するとともに、その後方において加熱ユニット40の一部(ファンルーム47)が配されている。具体的には、機械室5は、前面パネル5A、一対の側面パネル5B、背面パネル5C、底面パネル5D、および天面パネル5Eを備え、これらのパネルが箱状に接続されることで構成されている。なお、前面パネル5Aは、上面視が、温蔵室11に対して前方に配される扉30と対応するように、略コの字状に形成されている。
【0034】
前面パネル5Aの正面右方には、
図1に示すように、操作パネル150が設置されている。操作パネル150は、例えば、温蔵庫1の各部のステータス情報や、温蔵庫1の運転条件等を表示することができる表示部152と、温蔵庫1の各種動作の指示および設定を行うための入力部154などが備えられている。本例における表示部152は、7セグメントディスプレイであり、制御装置100からの指示に応じて、7セグメント表示形式による数字やアルファベットを表示するように構成されている。表示部152は、本技術における報知手段の一例である。入力部154は、ユーザが制御装置100への指示を入力するために用いられるユーザインターフェイスであり、本例における入力部154は、例えば、操作ボタンにより構成されている。
【0035】
また、前面パネル5Aの右側側面には、
図1に示すように、主電源スイッチ156が設置されている。主電源スイッチ156は、温蔵庫1の背面から延びるコンセントプラグ156Aを通じ、外部電源から温蔵庫1への電力の供給(通電状態)と停止(非通電状態)とを切り替える。
【0036】
〔制御装置〕
制御装置100は、加熱ユニット40の内側ヒータ42,外側ヒータ44,第1ファン46A,第2ファン46B,サーミスタ48,および操作パネル150等に電気的に接続され、これらの各部の動作を制御する。制御装置100の構成は特に限定されず、例えば、CPU,ROMおよびRAM等のメモリ,タイマ機能(計時手段の一例)等を含むマイクロコンピュータを主体として構成され、有線または無線を介して温蔵庫1の各部と接続されている。
【0037】
次に、温蔵庫1の動作について説明する。ユーザによって、温蔵庫1が外部電源に接続され、主電源スイッチ156がON状態とされることで、温蔵庫1に電力が供給されて、制御装置100が温蔵庫1の各部の動作を制御する。本例の制御装置100は、主電源スイッチがON状態となることで加熱ユニット40への通電を開始し、内側ヒータ42および外側ヒータ44が発熱を始めるとともに、第1ファン46Aおよび第2ファン46Bが送風を開始する。
【0038】
内側ヒータ42および外側ヒータ44が発熱すると、これらのヒータ42,44に接触する内側ダクト41と外側ダクト43とが加熱され、これらのダクト41,43の輻射熱によってダクト41,43の周辺の空気が加熱される。これにより、第1の空気流路F1と第2の空気流路F2の空気が加熱される。制御装置100は、まずは、サーミスタ48によって検知される庫内温度が、予め設定された温蔵温度TAとなるまで、内側ヒータ42および外側ヒータ44による庫内空気の加熱を実施する。
【0039】
なお、本例の温蔵庫1においては、第1ファン46Aが駆動することで、庫内の空気が第1の空気流路F1に送りこまれて内側ヒータ42および内側ダクト41によって加熱されるとともに、加熱された空気は、第1の空気流路F1を上方から下方に向けて送られる。このとき、第1の空気流路F1を流れる空気の一部が、内側ダクト41の側面部41Bの通気孔41Cを通じて第2の空気流路F2に送られ、残りが内側ダクト41の下端において第2の空気流路F2に合流する。
【0040】
同様に、第2ファン46Bが駆動することで、庫内の空気が第2の空気流路F2に送りこまれ、外側ヒータ44および外側ダクト43によって加熱されるとともに、加熱された空気は、第2の空気流路F2を上方から下方に向けて送られる。ここで、外側ダクト43には、側面部43Bだけでなく、前方を向く本体部43Aにおいても、上下方向に亘って通気孔43Cが設けられている。そのため、第2の空気流路F2に送られた空気は、第2の空気流路F2を流れながら、本体部43Aと側面部43Bの通気孔43Cを通じて、外側ダクト43の前方および側方に向けて庫内に送られる。これにより、庫内の下方に局所的に加熱された空気が送られることを防ぎ、上下方向における温度ムラを抑制して庫内を均一に加熱することができる。
【0041】
サーミスタ48が、庫内温度が予め設定された温蔵温度TAに到達したことを検知すると、制御装置100は、内側ヒータ42および外側ヒータ44への通電を停止し、庫内空気の加熱を停止する。なお、ヒータ42,44への通電が停止されている間も、庫内の温度を均一に保つために、制御装置100は、第1ファン46Aおよび第2ファン46Bによる送風は継続するようにしている。そして、サーミスタ48によって検知される庫内温度が、温蔵温度TAより所定温度(例えば、2℃)だけ低くなると、制御装置100は、再び内側ヒータ42および外側ヒータ44への通電を開始し、庫内温度が温蔵温度TAに到達するまで庫内の空気を加熱する。このような保温運転を繰り返すことで、温蔵庫1の庫内温度を高温の温蔵温度TAで維持し、食品等を目的の温度TAで温蔵することができる。
【0042】
〔パッキン〕
上扉31および下扉32はそれぞれ、略矩形の板状をなしており、
図9に示すように、扉を閉じたときに温蔵室11の側を向く背面31A,32A(開口を覆う表面)の周縁部(縁部)に、パッキン34が装着されている。パッキン34は、温蔵庫1の作動温度範囲における耐熱性を有する弾性体(ここでは、シリコーンゴム)からなるシール部材である。なお、上扉31と下扉32とはそれぞれ、上述のとおり、各々が揺動開閉できるように構成されており、扉開閉時の干渉を避けるために上扉31と下扉32との間には隙間が設けられている。しかしながら、温蔵室11の開口には、上扉31の下端および下扉32の上端に対向する位置に柱部材(ピラー)等が渡されていない、所謂ピラーレス構造となっている。そのため、パッキン34は、上扉31および下扉32を閉じたときに、温蔵室11の開口縁部に密着して扉31,32と開口縁部とを密閉するとともに、上扉31と下扉32との隙間を密閉するように構成されている。
【0043】
具体的には、パッキン34は、上扉31の上方縁部に取付けられる上部パッキン35A、左右の側方縁部にそれぞれ取付けられる左部パッキン35B,右部パッキン35C、および下方縁部に取付けられる下部パッキン35Dと、下扉32の上方縁部に取付けられる上部パッキン35E、左右の側方縁部にそれぞれ取付けられる左部パッキン35F,右部パッキン35G、および下方縁部に取付けられる下部パッキン35Hと、を含んで構成されている。上扉31の上部パッキン35A,左部パッキン35B,および右部パッキン35Cと、下扉32の左部パッキン35F,右部パッキン35G,および下部パッキン35Hは、扉31,32を閉じたときに、扉31,32と温蔵室11の開口縁部との間に介在されるパッキンであり、全体が各扉31,32の背面31A,32Aに沿うように取り付けられる。そして、上扉31の下部パッキン35Dと、下扉32の上部パッキン35Eは、扉31,32を閉じたときに、上扉31と下扉32の隙間に配されるパッキンであり、少なくとも一部が、上扉31に対して下方に、下扉32に対して上方に、位置するようにそれぞれ取付けられる。
【0044】
従来の温蔵庫や冷蔵庫などにおいては、温蔵室や冷蔵室の開口縁部に当接されるパッキンと、ピラーレスの位置に配されるパッキンとでは、その構成が異なる別のパッキン部材を用いるようにしていた。これに対し、本例の温蔵庫1においては、すべてのパッキン34(35A~35H)として、
図20に示す構成のものを共通して用いるようにしている。
【0045】
すなわち、パッキン34は、弾性を有する長尺の部材であり、中空の筒部34Aと、筒部34Aから鉤状に延びる脚部34Dとを含んでいる。筒部34Aは、断面略D字形のチューブ状であって、平坦部34Bと湾曲部34Cとを有している。脚部34Dは、断面略L字形をなしており、平坦部34Bの一端から平坦部34Bに対して湾曲部34Cとは反対側に略垂直に延びる基端部34Eと、基端部34Eの先端から平坦部34Bに沿って延びる固定部34Fとを含んでいる。基端部34Eはその厚みが他の部分よりも厚く、パッキン34の耐久性を高めているとともに、自由状態において平坦部34Bと固定部34Fとが概ね平行となるように固定部34Fを支持している。基端部34Eによって離間された平坦部34Bと固定部34Fとの離間距離は、数ミリメートル程度であり、固定部34Fの延出方向の寸法と比較して十分に小さい。また、固定部34Fの先端は、筒部34Aの側に向かって突出する突起部を有している。このパッキン34は、例えば、シリコーンゴムを押し出し成形することにより製造することができる。
【0046】
閉扉時に扉31,32と温蔵室11の開口縁部との間に介在されるパッキン34の取付構造について、
図11に示される、下扉32に取付けられた左部パッキン35Fを例にして説明する。上扉31の上部パッキン35A,左部パッキン35B,および右部パッキン35Cと、下扉32の右部パッキン35Gおよび下部パッキン35Hについても同様に取り付けることができる。
【0047】
まず下扉32の構成について説明する。下扉32は、下扉本体321と、補強部材322と、断熱材323と、背面板324と、を備えている。下扉本体321は、所定の展開形状に打ち抜かれた一枚のステンレス板が曲げ加工されることによって、下扉32の前面321aと、上下左右の側面321bと、背面32Aにおける上下左右の周縁部321cと、を備える箱状に形成されている。下扉本体321は、周縁部321cに囲まれた部分が矩形の開口とされ、この開口を通じてその内部に、補強部材322と、断熱材323とを配設できるようになっている。なお、上下左右の周縁部321cは、開口の周縁において、後方(下扉32を閉じたときに温蔵室11に向かう側)に向けて突出する段差部321dを備えている。段差部321dは、下扉32の左右および下側の周縁部321cに設けられたものよりも、上側の周縁部321cに設けられたものの方が、背面32Aにおける中央側に配されている。
【0048】
補強部材322は、主に下扉32に加わる負荷に対して下扉本体321を補強する部材であり、箱状の下扉本体321の内部において、左側および右側の側面321bに沿って上下方向に亘って配されている。補強部材322は、下扉本体321を構成するステンレス板よりも厚みの厚い(換言すれば、剛性の高い)ステンレス板によって構成されている。パッキン34の取付構造においては、補強部材322は、下扉本体321の一部と看做すことができる。なお、左側の側面321b(左側側面32Bと一致する。)に沿って配される補強部材322は、下扉32のヒンジ機構32Dの側に備えられるものであるため、補強強度をより高めるために、断面略コの字型の長尺の板片状を呈しており、下扉本体321の左側の側面321bに沿う側面部分と、この側面部分の短手方向(下扉32を閉じたときの前後方向)の両端から前面321aに沿って延びる前面部分と、背面32Aの周縁部321cに沿って延びる背面部分とを含んでいる。一方、具体的には図示しないが、右側の側面321b(右側側面32Cと一致する。)に沿って配される補強部材322は、断面略L字型の長尺の板片状を呈しており、下扉本体321の右側の側面321bに沿う側面部分と、この側面部分の背面32A側の端部から周縁部321cに沿って延びる背面部分とを含んでいる。なお、補強部材322は、上下の側面321bに沿う位置には配されていない。補強部材322は、下扉本体321の段差部321dに対して内側(下扉32を閉じたときの前方)から当接するように、背面の周縁部321cに沿って延びる部分の先端が外側に折り返されて二重になっている。この補強部材322は、下扉本体321の左側の側面321bと、ヒンジ機構32Dまたは取手33と、に対してビス留めされている。
【0049】
断熱材323は、繊維状のグラスウールが所定の密度の板状に成形された板状体であり、下扉本体321の形状に合わせてカットされて、その内部に収容されている。
背面板324は、下扉本体321の開口を覆う矩形の板状であって、四方の周縁部322aが内側(下扉32を閉じたときの前方)に向けて湾曲状態で折り返されている。背面板324は、この折返し部分が、下扉本体321の周縁部321cの段差部321dの周縁に当接するように(換言すれば、周縁部321cの後退部分において当接するように)形成されている。背面板324の幅方向の寸法は、下扉本体321の幅方向の寸法よりもやや小さくなるように形成されている。背面板324の上下方向の寸法は、下扉本体321の上下方向の寸法よりも、下側においてやや小さくなるように形成され、上側においてさらに小さくなるように形成されている。
【0050】
そして、左部パッキン35F(34)は、筒部34Aを背面板324の後方に配した状態で、筒部34Aと脚部34Dとの間(より詳細には、平坦部34Bと固定部34Fとの間)に背面板324の左側の周縁部322aを挟むようにして、背面板324に取付けられる。そしてこの状態で、背面板324を下扉本体321の開口を覆うように重ね、補強部材322の外側折返し部分にビス留めすることで、左部パッキン35Fが下扉32の背面32Aの周縁部に沿って固定される。なお、補強部材322が配されてない部位においては、背面板324は下扉本体321に対してビス留めされる。ここで、背面板324の周縁部322aは湾曲をもって折り返されていることから、背面板324は左部パッキン35Fを傷つけることなく、左部パッキン35Fを下扉32に固定することができる。また、背面板324の周縁部322aは湾曲をもって折り返されていることから、ビス留め時に湾曲部分が弾性変形され、左部パッキン35Fの固定部34Fは緩みなく下扉32に固定される。さらに、背面板324の折り返し部分は、左部パッキン35Fの固定部34Fにおいて突起部を抑えない長さとされており、このような構成によって、背面板324と下扉本体321との間から左部パッキン35Fが抜け落ちることが抑制されている。
【0051】
これに対し、閉扉時に上扉31と下扉32との隙間を密閉するパッキン34の取付構造について、
図12および
図13に示す、下扉32に取付けられた上部パッキン35Eを例にして説明する。上扉31に取付けられた下部パッキン35Dについては、上部パッキン35Eと上下対称の取り付け構造であるため、同様の説明は省略する。
【0052】
上部パッキン35Eは、まずは、上述の左部パッキン35Fと同様に、下扉32に取付けられる。すなわち、上部パッキン35Eは、
図13に示すように、背面板324の周縁部322aと下扉本体321の周縁部321cとの間に固定部34Fを挟む形で、下扉32の背面32Aの上方の周縁部に固定される。次いで、上部パッキン35Eは、固定部34Fが背面32Aに沿って(すなわち上下方向に沿って)固定された状態で、平坦部34Bが略水平となるように、パッキン支持部材36によって脚部34Dに対する筒部34Aの位置が変位される。
【0053】
パッキン支持部材36は、
図9に示すように、上部パッキン35Eの筒部34Aをその長手方向に亘って変位させる部材であって、背面板324に取付けられている。具体的には、パッキン支持部材36は、
図14に示すように、大まかには、一つの面が開口する長尺の直方体形状の箱体36Aと、この箱体36Aの開口の一つの長辺から開口とは反対側に延設された取付面部36Bと、を備えており、所定の展開形状に切り出されたステンレス板を曲げ加工することにより形成されている。箱体36Aの底面と取付面部36Bとは、概ね並行とされており、また、箱体36Aの取付面部36Bが接続されている側面は、他の3つの側面よりも、高さ寸法(下扉32を閉じたときの前後方向の寸法)が大きくなるように設計されている。取付面部36Bには取付孔36Cが設けられており、背面板324のパッキン支持部材36の取付位置にも取付孔(図示せず)が設けられている。このパッキン支持部材36は、上部パッキン35Eの筒部34Aを平坦部34Bが略水平となるように支持した状態で、ビス等の締結具36Dを取付孔36Cと背面板324の取付孔とに挿通して締結することにより、背面板324に対して固定される。なおこのとき、取付孔36Cの直径を、締結具36Dの外径(例えば、φ4mm)よりも大きくしておく(例えば、φ6mmとする)ことで、パッキン支持部材36の固定位置を微調整することができ、延いては、筒部34Aの変位量を微調整することができる。
【0054】
上部パッキン35Eは、パッキン支持部材36によって筒部34Aが変位されることにより、湾曲部34Cが上方に向けて突出するように配される。これにより、上部パッキン35Eの平坦部34Bと固定部34Fのなす角度は、おおよそ90度に規制される。ここで、上述したように、下扉本体321の上側の周縁部321cに設けられた段差部321d(
図11参照)は、左右および下側に設けられた段差部321dと比較して、背面32Aのより中央側(すなわち下方)に配されており、背面板324の上端も、左右および下端と比較して、下扉本体321のより中央側(すなわち下方)に配されている。そのため、上部パッキン35Eは、上述の左部パッキン35Fと比較して、背面32Aのやや中央側(すなわち下方)に固定される。このことにより、湾曲部34Cは、その下方部分が下扉32の上端よりも下方に配されるとともに、その上方部分が下扉32の上端よりも上方に配される。なお、上扉31に取付けられる下部パッキン35Dについても同様に、下部パッキン35Dの湾曲部34Cは、その上方部分が上扉31の下端よりも上方に配されるとともに、その下方部分が上扉31の下端よりも下方に配される。上扉31と下扉32の閉扉時には、上扉31と下扉32との間において、下部パッキン35Dの筒部34Aと上部パッキン35Eの筒部34Aとが弾接状態で当接するように、下部パッキン35Dおよび上部パッキン35Eの固定位置が設計されている。これにより、上部パッキン35Eと下部パッキン35Dとを、上扉31と下扉32との隙間を密閉するように取付けることができる。また、上扉31と下扉32を開閉したときに、下部パッキン35Dと上部パッキン35Eとが擦れあっても、筒部34Aの湾曲部34Cが変形されるに留まり、筒部34A全体が変位することが抑制される。
【0055】
また、パッキン支持部材36は、取付面部36Bが接続されている側面よりも、他の3つの側面の前後方向の寸法が小さく、パッキン34の基端部34E近傍を押圧しない構成となっている。このことにより、パッキン支持部材36の装着の際に、下扉本体321(または背面板324)との間にパッキン34の平坦部34Bを挟み込む事態を容易に回避することができる。また、パッキン34の平坦部34Bから固定部34Fを略90度に変位させたとき、基端部34E近傍に応力が集中することを抑制することができる。
【0056】
なお、
図16および
図19に示すように、上扉31と下扉32の隙間に配される下部パッキン35Dと上部パッキン35Eは、閉扉時に扉31,32と温蔵室11の開口縁部との間に挟まれて筒部34Aが前後方向において潰されることがないように、温蔵室11の開口に対応する部分に配設されている。ここで、下部パッキン35Dと上部パッキン35Eは、左右の両端において切断面が露出し、中空の筒部34Aの内部が望めるようになっている。そこで、上扉31の下部パッキン35Hの左右の両端には、左部パッキン35Bと右部パッキン35Cの下端が隣接するように配され、下部パッキン35Dの筒部34Aの開口を外部から遮るようにしている。また、下扉32の上部パッキン35Eの左右の両端には、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gの上端が隣接するように配され、上部パッキン35Eの筒部34Aの開口を外部から遮るようにしている。
【0057】
ここで、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gの上端は、上述のとおり、上部パッキン35Eの端部に隣接されているため、下扉32の上端よりも上方に突出し、下扉32には固定されていない状態となっている。したがって、下扉32の開閉によって、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gの上端が揺動してしまうことが考えられる。そこで、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gは、
図19に示すように、上端の開口を封止することで突出部分の剛性を高めるようにしてもよい。なお、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gの上端に切断面が露出していると、見栄えが良くないことに加え、筒部34Aの内部に埃やゴミ等が侵入しやすいという不都合があるものの、上端の開口を封止することでこれらの不都合を解消することができる。また、左部パッキン35Fと右部パッキン35Gの上方には、
図19に示すように、支持部材38が挿入されていてもよい。支持部材38を構成する材料としては、パッキン35F,35Gを自立させ得るものであれば特に制限されないものの、例えば、スポンジ(発泡体)等の軽量で、変形可能であって、断熱特性を有する材料であると好適である。ただし、左部パッキン35Fおよび右部パッキン35Gについては、下扉32に固定されていない状態でも自立可能な剛性を備え得る材料によって構成してもよい。
【0058】
以上のとおり、ここに開示される温蔵庫1は、料理済みの食品や食器等の温蔵対象物を収容するための温蔵庫本体10と、温蔵庫本体10の内気を加熱するための加熱ユニット40と、を備えている。加熱ユニット40は、温蔵庫本体10の内部において、温蔵庫本体10の背壁12D(側壁の一例)に対し上下方向に沿って配設される内側ダクト41と、温蔵庫本体10の内部において、内側ダクト41を取り囲むように上下方向に沿って配設される外側ダクト43と、内側ダクト41内に設けられた内側ヒータ42(第1の加熱手段)と、外側ダクト43内に設けられた外側ヒータ44(第2の加熱手段)と、温蔵庫本体10の内気を、内側ダクト41および外側ダクト43に対し、上方から下方に向けて送るファン46(送風機構)と、を備えており、外側ダクト43は、外側ダクト43の内部と温蔵庫本体10の内部とを連通する通気孔43Cを備えている。
【0059】
この温蔵庫1は、内側ダクト41と外側ダクト43からなる二重のダクト内にそれぞれヒータ42,44が備えられており、ヒータ42,44によってダクト41,43が加熱されることによりダクト41,43が加熱パネルとして機能する。これにより、加熱手段の加熱面積を効果的に拡大することができ、庫内の空気の加熱効率(熱交換効率)の高い温蔵庫1を実現することができる。なお、内側ダクト41と外側ダクト43は、背壁に沿って二重に配されていることから、温蔵庫1の幅方向の寸法を拡大することなく、加熱手段による加熱面積を増大することが可能となっている。これにより、例えば前後方向を進行方向とした場合等に、温蔵庫1の移動に要する通路の幅寸法を小さく抑えることができる。また、外側ダクト43の内部を流れる空気については、外側ダクト43の下流側の端部のみならず、外側ダクト43に設けられた通気孔43Cから庫内に送られる。これにより、温蔵庫1の下方が局所的に加熱されて温度ムラが生じることを抑制し、庫内を均一に加熱することができる。
【0060】
上記の温蔵庫1において、温蔵庫本体10は、前方に開口する直方体形状の温蔵室11と、温蔵室11の開口を開閉する扉30と、を備えている。外側ダクト43は、開口とは反対側の側壁である背壁12Dに設置されるとともに、背壁12Dに対して離間された本体部43Aと、本体部43Aの両端から背壁12Dに向けて延びる側面部43Bと、を備えて構成されており、通気孔43Cは複数のものが、本体部43Aと側面部43Bとにおいて、上下方向に亘って設けられている。このような構成によると、外側ダクト43を下方に向けて流れる加熱された空気を、その流れの途中で庫内に送ることができ、庫内の温度ムラの発生をより好適に抑制することができる。これにより、温蔵庫1の庫内をより均一に加熱することができる。
【0061】
また、上記の温蔵庫1において、内側ダクト41は、開口とは反対側の側壁である背壁12Dに設置されるとともに、背壁12Dに対して離間された本体部41Aと、本体部41Aの両端から背壁12Dに向けて延びる側面部41Bと、を備えて構成されており、通気孔41Cは複数のものが、側面部41Bにおいて、上下方向に亘って設けられている。このような構成によると、内側ダクト41を下方に向けて流れる加熱された空気を、その流れの途中で外側ダクト43の内部に送ることができ、流れの途中で外側ダクト43から庫内に送られる空気の量を増大させることができる。これにより、加熱された空気の庫内での循環を促進させることができ、加熱効率を高めるとともに、温度ムラの発生をより好適に抑制することができる。
【0062】
上記の温蔵庫1において、内側ヒータ42(第1の加熱手段)および外側ヒータ44(第2の加熱手段)はそれぞれコードヒータであり、内側ダクト41および外側ダクト43はそれぞれ、背壁12D(側壁の一例)に対して離間された本体部43Aと、本体部43Aの両端から背壁12Dに向けて延びる側面部43Bと、を備えて構成されている。そして、コードヒータは、本体部43Aの背壁12Dに向かう側の面に配設されているとともに、ファン46(送風機構)は、ドラム型の回転翼の回転軸に対して横切る方向に空気を流す、横断流型のファンを備えている。上記構成によると、横断流型のファン46によって庫内の空気を循環させるため、プロペラファンやブロワ等を用いた場合と比較して、静圧を小さくした状態で、相対的に風量を大きくして空気を送ることができる。また、ダクト41,43の断面形状に適した、幅広で一様な気流を作り出せる点においても好ましい。これにより、温蔵されている食品の乾燥等を防ぎながら、加熱ユニット40によって加熱された空気を、庫内に効率よく循環させることができる。延いては、加熱効率と温蔵効率とに優れ、調理済み食品の温蔵に適した温蔵庫1が実現される。このような温蔵庫1は、例えば、庫内を加湿するための加湿部材を備える必要がない点においても有利である。
【0063】
上記の温蔵庫1においては、第1および第2の加熱手段としてコードヒータが用いられ、内側ダクト41および外側ダクト43の背面に向かう側の面に、上下方向に亘って高面積に配設されている。コードヒータは嵩張らないわりに発熱量が大きく、ヒータパネルにコードヒータを密に配策した場合には、加熱ユニット40に異常過熱をもたらしたり、庫内温度の局所的な上昇や温度ムラの原因となったりする虞があった。これに対し、ここに開示される温蔵庫1は、ダクト41,43二重構造とし、コードヒータを内側ダクト41と外側ダクト43とに分けて過密を避けて配設している。さらに、コードヒータは、内側ダクト41および外側ダクト43の、右側部分と左側部分とに分けて配設されている。また、内側ダクト41および外側ダクト43には、上下方向に亘って通気孔41C,43Cが設けられており、加熱された空気の庫内での循環が促進されている。とりわけ、外側ダクト43においては、コードヒータが備えらえた右側部分と左側部分との間に、上下方向に亘って通気孔43Cが配列されている。このような構成によって、ここに開示される温蔵庫1は、加熱手段としてコードヒータを採用しながらも、加熱ユニット40の異常過熱や、庫内温度の局所的な上昇と温度ムラとを、好適に抑制することが可能とされている。
【0064】
上記の温蔵庫1において、内側ダクト41および外側ダクト43はそれぞれ、アルミニウム合金によって構成されている。アルミニウムまたはアルミニウム合金は、熱伝導率が高いうえに比較的軽量であることから、内側ダクト41および外側ダクト43をアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成することで、内側ヒータ42(第1の加熱手段)および外側ヒータ44(第2の加熱手段)による発熱を、内側ダクト41および外側ダクト43に効率よく伝播させることができるとともに、内側ダクト41および外側ダクト43から周辺の空気に対しても伝熱しやすい構成となっている。また、内側ダクト41および外側ダクト43からなる二重のダクトをより軽量なものとすることができる。これにより、温蔵庫1の庫内空気の加熱効率をより高めることができるとともに、温蔵庫1の軽量化を図ることができる。
【0065】
≪実施形態2≫
実施形態2に係る温蔵庫について、
図15~
図17を参照しつつ説明する。この温蔵庫は、内側ダクト141および背壁112Dの前面に、風向板50が取り付けられている点において実施形態1の温蔵庫1と相違している。温蔵庫のその他の構成は、実施形態1に係る温蔵庫1と同様であるため、以下では、実施形態1の温蔵庫1と相違する構成についてのみ説明し、同様の構成については実施形態1と同じ符号を付すとともに、その作用効果等については説明を省略する(実施形態3以下も同様とする)。
【0066】
本実施形態において、内側ダクト141と背壁112Dとにはそれぞれ、
図15に示すように、外側ダクト43および内側ダクト141に向けて延びる風向板50が取り付けられている。風向板50は、矩形の平坦なステンレス板を、なす角が90度超過(例えば、100度以上でかつ150度以下であり、例えば120度)となるように折り曲げたような形状をなしている。そして、風向板50は、折り曲げ部に対して一方の側の平面部分50Aが内側ダクト141または背壁112Dに固定されることで、他方の側の平面部分50Bが内側ダクト141または背壁112Dから前方に突き出されている。このとき、風向板50は、他方の側の平面部分50Bの板面が正面視で傾斜される姿勢で、内側ダクト141または背壁112Dに固定されている。
【0067】
例えば
図16に示すように、背壁112Dの前面に取り付けられた風向板50は、背壁112Dの右側部分においては右に向かうほど下傾し、背壁112Dの左側部分においては左に向かうほど下傾する姿勢で固定されている。これにより、第1の空気流路F1を流れる空気は内側ダクト141に向けて流れを変えられ、内側ダクト141に接触しやすくなることにより、空気の加熱効率が高められる。また、第1の空気流路F1を流れる空気が左右の両端に向けて流れるようになり、内側ダクト141の側面部41Bに形成された通気孔41Cを通じて第2の空気流路F2に送られやすくなっている。
【0068】
また、例えば
図17に示すように、内側ダクト141の前面に取り付けられた風向板50は、内側ダクト141の中央部分においては幅方向の中心に向かうほど下傾する姿勢で固定され、内側ダクト141の左側部分においては左に向かうほど下傾する姿勢で、また、左側部分においては左に向かうほど下傾する姿勢で固定されている。これにより、第2の空気流路F2を流れる空気は外側ダクト43に向けて流れを変えられ、外側ダクト43に接触しやすくなることにより、空気の加熱効率が高められる。さらに、第2の空気流路F2の中央部分を流れる空気は、幅方向のより中心に向けて流れが変えられ、外側ダクト43の本体部43Aの中央部分に形成された通気孔43Cを通じて庫内に送られやすくなっている。また、第2の空気流路F2の左側部分および右側部分を流れる空気は、左右の両端に向けて流れが変えられ、外側ダクト43の側面部43Bに形成された通気孔43Cを通じて庫内に送られやすくなっている。
【0069】
上記の温蔵庫において、内側ダクト141の外側ダクト43に向かう側の面(ここでは前面)には、外側ダクト43に向けて延びる風向板50が備えられている。さらに、上記の温蔵庫においては、背壁112Dの内側ダクト141に向かう側の面(ここでは前面)には、内側ダクト141に向けて延びる風向板50が備えられている。
このような構成によると、内側ダクト141および外側ダクト43における下方に向かう空気の流れを、内側ダクト141および外側ダクト43の板面に向かう方向に変えることができる。これにより、内側ダクト141および外側ダクト43と、ダクト内を流れる空気との接触効率を高めることができ、ダクト内を流れる空気を効率よく加熱することができる。また、内側ダクト141内(第1の空気流路F1)を流れる空気を通気孔41Cから外側ダクト43内に効率よく送ることができ、外側ダクト43の内部(第2の空気流路F2)を流れる空気を通気孔43Cから庫内に効率よく送ることができる。その結果、庫内の空気の加熱効率と循環効率とをより一層高めることができ、庫内の温度ムラを好適に抑制することができる。なお、風向板50の設置態様は上記の例に限定されず、第1の空気流路F1および第2の空気流路F2における下流に向かう空気の流れを乱すことができれば、類似の効果を得ることができる。
【0070】
≪実施形態3≫
実施形態3に係る温蔵庫の制御について、
図18を参照しつつ説明する。実施形態3の温蔵庫は、制御装置200による加熱ユニット40の制御態様が、実施形態1および実施形態2の例と相違している。それ以外の構成については、実施形態1および実施形態2と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
実施形態3の温蔵庫においては、温蔵温度TAが、加熱ユニット40の異常過熱の生じる虞がある第1温度T1(例えば、80℃)を超える高温(例えば、90℃)となった場合(TA>T1)、制御装置200はまず、実施例1と同様に、内側ヒータ42および外側ヒータ44を連続して作動させ、庫内の空気の加熱を始める。そして、サーミスタ48によって検知される庫内温度が第1温度T1に到達すると、制御装置200は、加熱ユニット40の動作を変化させる。
【0071】
具体的には、制御装置200は、
図12に示すように、庫内温度が第1温度T1(ここでは80℃)に到達すると、内側ヒータ42および外側ヒータ44の運転を停止する。そして制御装置200は、サーミスタ48によって検知される庫内温度が運転停止時(80℃)よりも所定温度分(例えば、2℃)だけ低下すると(すなわち、78℃になると)、内側ヒータ42および外側ヒータ44の運転を再開する。
次いで、制御装置200は、サーミスタ48によって検知される庫内温度が運転停止時(すなわち、80℃)よりも所定の温度分(例えば、4℃)だけ高い温度に到達すると(すなわち、84℃になると)、再び内側ヒータ42および外側ヒータ44の運転を停止する。
【0072】
そしてまた、制御装置200は、サーミスタ48によって検知される庫内温度が運転停止時(84℃)よりも所定温度分(2℃)だけ低下すると(例えば82℃になると)、サーミスタ48によって検知される庫内温度が運転停止時(すなわち、84℃)よりも所定の温度分(4℃)だけ高い温度(88℃)に到達するまで、内側ヒータ42および外側ヒータ44の運転を行う。このように、制御装置200は、庫内温度が第1温度T1に到達すると、所定の温度幅(例えば、4℃)ずつ段階的に内側ヒータ42および外側ヒータ44を作動させるように構成されている。なお、庫内温度が温蔵温度TAに到達すると、制御装置200は、通常通りの保温運転を実行する。
【0073】
以上の温蔵庫は、庫内温度(内気の温度)を検知するサーミスタ48(温度検知手段)と、加熱ユニット40の動作を制御する制御装置200と、を備えている。制御装置200は、サーミスタ48によって検知された庫内温度が、予め設定された温蔵温度TAよりも低い第1温度T1に到達するまでは、内側ヒータ42(第1の加熱手段)および外側ヒータ44(第2の加熱手段)を連続して作動させる。そして、サーミスタ48によって検知された庫内温度が第1温度T1に到達したのちは、所定の温度幅ずつ段階的に内気が加熱されるように、内側ヒータ42および外側ヒータ44を断続的に作動させる構成を備えている。
【0074】
上記構成の温蔵庫においては、例えば温蔵温度TAが高い場合などにおいて、内側ヒータ42(第1の加熱手段)および外側ヒータ44(第2の加熱手段)が庫内の空気(内気)よりも有意に過熱される事態が生じ得る。しかしながら、上記構成によると、庫内温度が、例えば、加熱手段の温度と庫内温度との乖離が生じやすくなる第1温度に到達したあと、加熱手段を断続的に作動させて、庫内温度を所定の温度幅ずつ緩やかに高めることができる。これにより、加熱手段の温度と庫内温度との乖離を抑制することができ、その結果、例えば加熱ユニット40の耐熱温度を過剰に高く設定する必要がなく、また、加熱ユニット40の耐久性を高めることができる。さらに、安全装置(例えば、サーモスタット45等による過熱防止装置)が備えられた温蔵庫によると、安全装置の誤作動を防止することができる。
【0075】
≪実施形態4≫
実施形態4に係る温蔵庫の制御について、
図19を参照しつつ説明する。実施形態4の温蔵庫は、制御装置300による加熱ユニット40の故障検知を行う点において、実施形態1から実施形態3の例と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態3と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0076】
実施形態4の温蔵庫は、ユーザによって外部電源に接続され、主電源スイッチ156がON状態とされることで(S01)、内側ヒータ42および外側ヒータ44への通電が開始されて、庫内の空気の加熱が開始される。また、制御装置1200は、所定のタイムスパンで、通電が開始されてから(換言すれば、庫内の空気の加熱が開始されてから)の経過時間をタイマ機能(計時手段)によって計測するとともに、サーミスタ48によって庫内温度を検知する。
【0077】
そして制御装置300は、タイマ機能によって加熱開始からの経過時間が所定の設定時間(例えば、2時間)に達するよりも前に(S03でNO)、サーミスタ48によって検知される庫内温度が所定温度(例えば、80℃)に達しているかどうか判断する(S02)。ここで、庫内温度が所定温度に達している場合は(S02でYES)、制御装置300は、庫内の空気が順調に加熱されており、内側ヒータ42および外側ヒータ44は正常であると判断する(S04)。その一方で、庫内温度が所定温度に達していない状態で(S02でNO)、加熱開始からの経過時間が所定の設定時間に達したときは(S03でYES)、庫内の空気の加熱が順調に行われておらず、制御装置300は、内側ヒータ42および外側ヒータ44の少なくとも一方が故障していると判断する(S05)。ステップS05において、ヒータが故障していると判断された場合は、制御装置300は、表示部152においてエラーコードを表示するとともに、警告灯を点灯させるなどして、周囲にヒータ42,44の故障を報知する。
【0078】
上記構成によると、内側ヒータ42(第1の加熱手段)および外側ヒータ44(第2の加熱手段)の故障を自動的に検知するとともに、速やかにユーザ等に報知することができる。これにより、例えば内側ヒータ42や外側ヒータ44が断線等によって故障した場合等に、ユーザがその事態を速やかに把握することができ、内側ヒータ42または外側ヒータ44の故障に対して早急に対応することができる。
【0079】
≪実施形態5≫
実施形態5に係る温蔵庫の制御について、
図20を参照しつつ説明する。実施形態5の温蔵庫は、制御装置400によって、実施形態4とは異なる故障検知を行う点で、実施形態1から実施形態4の例と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態4と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0080】
実施形態5の温蔵庫は、ユーザによって外部電源に接続され、主電源スイッチ156がON状態とされることで(S11)、内側ヒータ42および外側ヒータ44への通電が開始されて、庫内の空気の加熱が開始される。制御装置400は、所定のタイムスパンで(例えば、30秒間ごとに)、通電開始(換言すれば、庫内の空気の加熱開始)からの経過時間をタイマ機能(計時手段)によって計測するとともに、サーミスタ48によって庫内温度を検知する。また、制御装置400は、庫内温度の検知結果から、庫内温度の変化について温度勾配を算出する。
【0081】
そして制御装置400は、
図20に示すように、タイマ機能によって計測された加熱開始からの経過時間が所定の設定時間(例えば、30分間)に達するよりも前に(S13でNO)、庫内温度の温度勾配が所定の閾値(例えば、1℃/30秒)に達しているかどうかを判断する(S12)。ここで、温度勾配が閾値に達している場合(S12でYES)、制御装置400は、庫内の空気が順調に加熱されており、内側ヒータ42および外側ヒータ44は正常であると判断する(S14)。その一方で、温度勾配が閾値に達していない状態であって(S012でNO)、加熱開始からの経過時間が所定の設定時間に達したときは(S03でYES)、庫内の空気の加熱が順調に行われておらず、制御装置400は、内側ヒータ42および外側ヒータ44の少なくとも一方が故障していると判断する(S15)。ステップS15において、ヒータが故障していると判断された場合は、制御装置400は、表示部152においてエラーコードを表示するとともに、警告灯を点灯させるなどして、周囲にヒータ42,44の故障を報知する。
【0082】
上記構成によると、庫内温度の温度勾配を算出して故障判断を行うことから、実施形態4の場合と比較して、比較的短時間(例えば、30分間)での判断が可能とされる。また、例えば、環境温度が極低温の場合には加熱初期の庫内温度の温度勾配が低くなる傾向にあるが、故障と判断するまでの設定時間を適切なものとすることで、環境温度による温度勾配への影響を低減することができる。これにより、より短時間で上記実施形態4と同様の効果を得ることができる。
【0083】
≪実施形態6≫
実施形態6に係る温蔵庫について、
図21を参照しつつ説明する。実施形態6の温蔵庫は、
図15に示すように、操作パネル250に、温蔵時間を計測するための専用のスイッチ154S(入力部の一例)が付加的に備えられている。また、制御装置500には、スイッチ押下時からの経過時間を計測する機能が備えられている。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態5と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0084】
すなわち、温蔵庫の制御装置500は、スイッチ154Sが押下されて信号が入力されると、タイマ機能によってスイッチ押下時からの経過時間を計測する。そして制御装置500は、タイマ機能によって計測された経過時間が、予め設定された第1時間(例えば、上記「大量調理施設衛生管理マニュアル」において、調理後の食品が喫食されるまでの望ましい時間として示される、2時間)に到達したとき、表示部152(報知手段の一例)において所定の経過時間に達したことを示すメッセージを表示したり、警告灯を点灯させたり、ブザー(警報器の一例)を鳴らすなどして、周囲に報知するようになっている。
【0085】
具体的には、ユーザは、ホテルの調理場等において、調理済みの料理が給仕された皿をトレイ25(ホテルパン)に載置し、庫内温度が予め設定された温蔵温度TAとなっている温蔵庫のトレイガイド23に挿入して収容する。そして、ユーザは、全てのトレイ25を温蔵庫に収容して扉30を閉めたのち、スイッチ154Sを押下する。これにより、温蔵庫の制御装置500は、温蔵庫における上記料理の温蔵時間を計測する。そして、温蔵時間が第1時間(ここでは2時間)となると、表示部152(報知手段の一例)において所定の経過時間に達したことを示すメッセージを表示するとともに、警告灯を点灯させるなどして、周囲に報知する。このときユーザは、温蔵時間が第1時間となるまで料理が配膳されていない場合は、例えば、料理を処分するなどの対応をとることができる。これにより、例えば、HACCPに準じる衛生管理を行う場合において、調理済食品の適切な温度管理を簡便に実施することができる。
【0086】
≪実施形態7≫
実施形態7に係る温蔵庫について
図22を参照して説明する。実施形態7の温蔵庫は、パッキン支持部材136の取付孔136Cが、上扉31と下扉32との並ぶ方向(すなわち、上下方向)に長い長孔とされている点において、実施形態1から実施形態6の例と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態6と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0087】
冷却庫310は、
図22に示すように、取付孔136Cが上下方向に長い長孔となっている。このような構成とすることで、パッキン支持部材136を締結具36Dによって扉31,32に仮止めした状態で、扉31,32およびパッキン35D,35Eに対するパッキン支持部材136の取付位置を、上下方向で微調整することができる。これにより、例えば、パッキン35D,35Eの製品寸法にばらつきがある場合や、下部パッキン35Dおよび上部パッキン35Eの上扉31および下扉32への取付態様にばらつきが生じた場合であっても、パッキン支持部材136によってパッキン35D,35Eの筒部34Aの変位量を調整することができ、その結果、下部パッキン35Dと上部パッキン35Eとの接触具合を整えることができる。換言すれば、閉扉時における下部パッキン35Dと上部パッキン35Eとの密閉性を好適に整えることができる。
【0088】
≪実施形態8≫
実施形態8に係る温蔵庫について
図23~
図26を参照して説明する。実施形態8の温蔵庫は、上扉31と下扉32との隙間の密閉構造が、実施形態1から実施形態7の例と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態7と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0089】
図23および
図24は、上扉31および下扉32を背面側から視た図であり、参考のために、温蔵庫の輪郭と、温蔵室11の開口の輪郭とを、仮想線で併せて示している。
温蔵庫の上扉31と下扉32とには、上扉31の下方縁部に下部パッキン135Dが、下扉32の上方縁部に上部パッキン135Eが取り付けられている。下部パッキン135Dおよび上部パッキン135Eはそれぞれ、
図26に示すように、長尺な矩形のシート状をなしており、
図24等に示すように、長尺の板片状のパッキン押え部材236によって、扉31,32の背面31A,32Aにそれぞれ取り付けられている。なお、
図26において、パッキン135D,135Eは上下方向に離間させて示している(以下の実施形態においても同様である)。これらのパッキン135D,135Eは、シリコーンゴム等のような可撓性を有する材料によって構成されているものの、例えば上部パッキン135Eのように、長手方向を水平にし、短手方向が上下方向に沿う姿勢でその下端を固定されたときに、撓まずに自立できる程度の剛性を備えるものとされている。下部パッキン135Dおよび上部パッキン135Eの長手方向の寸法は、
図24に示すように、温蔵室11の開口を幅方向で覆うために、温蔵庫本体10の幅方向の寸法よりは小さく、開口の幅方向の寸法よりは大きく形成されている。下部パッキン135Dおよび上部パッキン135Eの短手方向の寸法は、閉扉状態の上扉31および下扉32に取り付けられたときに、下部パッキン135Dの下端と上部パッキン135Eの上端とが重なり合う程度とされている。
【0090】
パッキン押え部材236は、
図25に示すように、パッキン135D,135Eの厚みよりもやや小さな段差を備えており、この段差部においてパッキン135D,135Eを損なうことなく抑えた状態で、上扉31および下扉32に固定されている。パッキン押え部材236は、温蔵庫の扉31,32と開口縁部との密閉性を確保するため、温蔵室11の開口内に納まるように、長手方向(幅方向)の寸法が開口の幅方向の寸法よりも小さくなるように設計されている。
【0091】
上記構成のパッキン135D,135Eは、シンプルな形状を有しているため、低コストに製造することができ、その取付も簡便に行うことができるために有利である。また、上記の温蔵庫は、閉扉状態において下部パッキン135Dの下端と上部パッキン135Eの上端とが重なり合うため、上扉31と下扉32との間を気密にシールすることができる。また、上扉31および下扉32のいずれか一方を開くときには、必要に応じて、一方のパッキン135D,135Eが撓んで他方のパッキン135E,135Dを乗り越えることができ、扉31,32のスムーズな開閉が可能とされる。
【0092】
≪実施形態9≫
実施形態9に係る温蔵庫について
図27および
図28を参照して説明する。実施形態9の温蔵庫は、上扉31と下扉32との隙間に、さらにカバー部材37を備える点において、実施形態8の温蔵庫と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態8と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0093】
図27は、実施形態8の温蔵庫において、扉31,32の開閉時に、一方のパッキン135D,135Eが他方のパッキン135E,135Dを完全に乗り越えずに、幅方向の途中で入れ違いになった(捻じれた)様子を示す(A)断面図と(B)正面図である。このように、下部パッキン135Dと上部パッキン135Eとが重なり部分で入違っていても、温蔵庫の温蔵効果に大きな影響は与えないものの、見栄えが悪いという問題がある。そこで、実施形態9の温蔵庫は、上扉31および下扉32の少なくとも一方(本例では、上扉31)に、パッキン135D,135Eの重なりの入れ違い部分が正面に晒されないように隠すカバー部材37を備えている。
【0094】
カバー部材37は、
図28に示すように、断面L字型の長尺の板材であって、他方の平面部分を上扉31の前面側において垂下させた姿勢で、一方の平面部分が上扉31の下側側面32Eに固定されている。カバー部材37の長手方向(幅方向)の寸法は、下部パッキン135Dおよび上部パッキン135Eの長手方向の寸法と同程度であるか、やや大きい。カバー部材37の他方の平面部分の上下方向の寸法は、入れ違い状態にあるパッキン135D,135Eの入れ違い部分を正面から隠すことができ、かつ、上扉31および下扉32を独立して揺動開閉させたときに、下扉32(カバー部材37が取り付けられていない方の扉)に干渉しない程度の寸法とするとよい。これにより、下部パッキン135Dと上部パッキン135Eとがその重なり部分で入違ったときに、その見栄えが悪くなる事態を回避することができる。
【0095】
≪実施形態10≫
実施形態10に係る上扉31の下部パッキン235Dおよび下扉32の上部パッキン235Eについて、
図29および
図30を参照して説明する。実施形態10では、上扉31と下扉32との隙間を密閉するパッキン235D,235Eに、スリットS1が設けられている点において、実施形態8および9と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態9と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0096】
実施形態10の下部パッキン235Dと上部パッキン235Eは、
図29に示すように、扉31,32に取り付けられた姿勢における下部パッキン235Dの下方の端部と、上部パッキン235Eの上方の端部とにそれぞれ、所定の間隔で直線状のスリットS1が設けられている。下部パッキン235Dと上部パッキン235Eとに設けられるスリットS1の位置は、幅方向で同一であってもよいし、異なる位置であってもよい。好ましくは、スリットS1は、幅方向で異なる位置に設けられているとよい。スリットS1の深さは、パッキン235D,235Eを扉31,32に取り付けたときに、上下方向において下部パッキン235Dと上部パッキン235Eとが重なる寸法よりも、やや大きいとよい。
【0097】
下部パッキン235Dと上部パッキン235Eとの重なりが幅方向の途中で入れ違いになると、
図28に示すように、その入れ違い部分においてパッキン235D,235Eは前後方向に大きく撓み得る。しかしながら、上記構成によると、下部パッキン235Dと上部パッキン235Eとが幅方向の途中で入れ違いになったときに、撓み部分に作用する力がスリットS1において逃がされ、
図30に示すように、下部パッキン235Dと上部パッキン235EとがスリットS1において嵌り合うとともに、撓みが解消される。これにより、パッキン235D,235Eが前後方向に大きく撓んで入違う場合と比較して、上扉31と下扉32との間の密閉性を高めることが可能とされる。なお、スリットS1は、下部パッキン235Dと上部パッキン235Eのいずれか一方にのみ設けるようにしてもよい(以下の実施形態においても同様である)。
【0098】
≪実施形態11≫
実施形態11に係る上扉31の下部パッキン335Dおよび下扉32の上部パッキン335Eについて、
図31を参照して説明する。実施形態11では、下部パッキン335Dおよび上部パッキン335Eに形成されたスリットS2の形状が実施形態10と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態10と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0099】
実施形態11の下部パッキン335Dおよび上部パッキン335Eは、
図31に示すように、直線状のスリットS2の最奥(基端部)が、丸穴とされている。このような構成とすることにより、扉31,32の開閉によって、スリットS2の両側で反対の方向に外力が作用する場合であっても、スリットS2においてパッキン235D,235Eが裂ける事態が抑制される。これにより、下部パッキン335Dおよび上部パッキン335Eの耐久性を高めることができる。
【0100】
≪実施形態12≫
実施形態12に係る上扉31の下部パッキン435Dおよび下扉32の上部パッキン435Eについて、
図32を参照して説明する。実施形態12では、下部パッキン435Dおよび上部パッキン435Eに形成されたスリットS3の形態が実施形態10および11と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態11と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0101】
実施形態12の下部パッキン435Dおよび上部パッキン435Eは、
図32に示すように、直線状のスリットS3の密度が、幅方向で異なっている。すなわち、下部パッキン435Dおよび上部パッキン435Eに設けられたスリットS3は、幅方向において、扉31,32のヒンジ機構31D,32Dに近づくにつれて(本例では左方に向かうにつれて)、その数が増大されている。換言すれば、ヒンジ機構31D,32Dに近づくにつれて、隣り合うスリットS3の間隔が小さくなるよう設計されている。ヒンジ機構31D,32Dに近い領域では、扉31,32の開閉時の回転半径が小さいため、パッキン235D,235Eの入れ違いによってパッキン235D,235Eが撓んだときに、これを解消するスリットS3が入れ違い部分の近傍に存在しない事態が起こり得る。しかしながら、上記構成によると、扉31,32の回転半径が小さい領域にスリットS3が高密度に設けられているため、パッキン235D,235Eの撓み部分にスリットS3が配されやすくなる。このことにより、パッキン235D,235Eの撓みをスリットS3部分において好適に解消することができる。
【0102】
≪実施形態13≫
実施形態13に係る上扉31の下部パッキン535Dおよび下扉32の上部パッキン535Eについて、
図33を参照して説明する。実施形態13では、下部パッキン535Dおよび上部パッキン535Eの自由端の形状が、実施形態1から実施形態12と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態12と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0103】
実施形態13の下部パッキン535Dおよび上部パッキン535Eにおいて、スリットS4は、
図33に示すように、上下方向で同じ位置に設けられている。また、スリットS4は、ヒンジ機構31D,32Dに近づくにつれて(本例では、左方に向かうにつれて)、隣り合うスリットS3の間隔が小さくなるよう設計されている。そして、下部パッキン535Dの下端と上部パッキン535Eの上端は、その形状が、上下方向において、スリットS4の位置で凹むとともに、隣り合うスリットS4の間で凸となる、ジグザグ形状をなしている。このような構成によると、下部パッキン535Dと上部パッキン535Eとの重なり部分の面積(換言すれば、接触面積)が減少し、入れ違い部分における撓みを解消するための接触抵抗が低減される。これにより、下部パッキン535Dと上部パッキン535Eとの重なり部分における撓みをよりスムーズに解消することができる。なお、本例では、下部パッキン535Dと上部パッキン535Eの先端形状をジグザグ形状としたが、上記の接触抵抗を低減できる範囲において、パッキン535D,535Eの先端部の切込み形状は限定されない。
【0104】
≪実施形態14≫
実施形態14に係る上扉31の下部パッキン635Dおよび下扉32の上部パッキン635Eについて、
図34を参照して説明する。実施形態14では、下部パッキン635Dおよび上部パッキン635Eの形状が、実施形態1から実施形態13と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態13と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0105】
実施形態14の下部パッキン635Dは、
図34に示すように、幅方向の一方の端部(例えば右端)から他方の端部(例えば左端)に向かうにつれて、上下方向の寸法が徐々に小さくなるように設計されている。これに対し、上部パッキン635Eは、幅方向の一方の端部(右端)から他方の端部(左端)に向かうにつれて、上下方向の寸法が徐々に大きくなるように設計されている。そして、下部パッキン635Dと上部パッキン635Eとが上下方向において重なる寸法は、幅方向において等しい。また、下部パッキン635Dおよび上部パッキン635Eは、スリットを備えていない。
【0106】
このような構成によると、下部パッキン635Dと上部パッキン635Eとの重なり部分が水平ではなく傾斜され、扉31,32の開閉により重なり部分が上下方向に変位される。これにより、下部パッキン635Dと上部パッキン635Eとが入れ違った場合に、その撓みに作用する力が開放されやすくなり、下部パッキン635Dと上部パッキン635Eとの入れ違い(捻じれ)を好適に解消することができる。なお、
図34に示す例では、パッキン635D,635Eの重なりが、右方に向かうにつれて下傾するようになっているが、重なり部分の傾斜の態様は、扉31,32の開閉により重なり部分が上下方向に変位される範囲において限定されない。例えば、パッキン635D,635Eの重なり部分は、左方に向かうにつれて下傾してもよいし、幅方向の中心に向けて下傾していてもよいし(V字型)、幅方向の両端に向けて下傾していてもよい(への字型)。
【0107】
≪実施形態15≫
実施形態15に係る上扉31の下部パッキン735Dおよび下扉32の上部パッキン735Eについて、
図35を参照して説明する。実施形態15では、下部パッキン735Dおよび上部パッキン735Eの形状が実施形態1から実施形態14と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態14と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0108】
図35(A)は、上扉31の下面に下部パッキン735Dを、下扉32の上面に上部パッキン735Eを固定した状態における断面図であり、
図35(B)の実線は、その下部パッキン735Dおよび上部パッキン735Eのみを示す斜視図を示し、仮想線は、上扉31を開扉したときの下部パッキン735Dの様子を示す。
図35に示すように、下扉32の上部パッキン735Eは、実施形態8から実施形態14のシート状のパッキンと比較して厚みが厚く、相対的に高い剛性を備えるとともに、下端の端面において下扉32の上面に接着剤や両面テープ等によって固着されている。上部パッキン735Eの長手方向の寸法は、実施形態8から実施形態14のシート状のパッキンと同様であるが、短手方向の寸法は、実施形態8から実施形態14のシート状のパッキンと比較して小さい。また、上扉31の下部パッキン735Dは、上部パッキン735Eの下端から厚みの薄い薄肉部735Lが延出された形態を有しており、上端の端面において上扉31の下面に、接着剤等によって固着されている。薄肉部735Lの厚みは薄く、実施形態8から実施形態14のシート状のパッキンと比較して、容易に撓めるようになっている。
【0109】
閉扉時において、下部パッキン735Dの肉厚部分と上部パッキン735Eとは接触しないものの、下部パッキン735Dの肉厚部分から下方に延びた薄肉部735Lが上部パッキン735Eの上端に対し、後方から弾接している。このような構成とすることで、上扉31と下扉32との間を、下部パッキン735Dと上部パッキン735Eとにより密閉することができる。なお、下扉32を閉めた後に上扉31を閉めた場合等において、薄肉部735Lは、上部パッキン735Eの上端に前方から当接することでも、上扉31と下扉32との隙間を密閉することができる。また、下部パッキン735Dの薄肉部735Lと上部パッキン735Eとでは剛性が大きく異なることから、下部パッキン735D(の肉厚部分)と上部パッキン735Eとが前後方向で入れ違う(捻じれる)事態は起こりがたい。これにより、上扉31と下扉32との隙間をより確実に密閉することができる。さらに、薄肉部735Lは可撓性がより高められていることから、上部パッキン735Eとの接触抵抗を低く抑えることができる。その結果、扉31,32の開閉をスムーズに行うことが可能とされる。なお、下部パッキン735Dおよび上部パッキン735Eの扉31,32の固着方法は、上記の例に限定されない(以下の実施形態においても同様である)。
【0110】
≪実施形態16≫
実施形態16に係る上扉31の下部パッキン835Dおよび下扉32の上部パッキン835Eについて、
図36を参照して説明する。実施形態16では、下部パッキン835Dおよび上部パッキン835Eの形状が実施形態1から実施形態15と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態15と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0111】
図36は、上扉31の下面に下部パッキン835Dを、下扉32の上面に上部パッキン835Eを固定した状態における(A)断面図と(B)正面図である。下部パッキン835Dと上部パッキン835Eはいずれも、長尺の三角柱形状を有しており、その長手方向に直交する断面は、底辺の狭い二等辺三角形をなしている。下部パッキン835Dおよび上部パッキン835Eは、上述の底辺に対応する面において、上扉31の下面と、下扉32の上面とに、接着剤等によって固着されている。下部パッキン835Dと上部パッキン835Eの上下方向の寸法(二等辺三角形の高さに相当する寸法)は、閉扉時に、互いの先端部が当接する程度とされている。換言すれば、閉扉時の重なり代が少なくなるように構成されている。
【0112】
上記の構成によると、下部パッキン835Dと上部パッキン835Eとは、先端に向かうほど肉薄となって可撓性が高められており、扉31,32の開閉に伴うパッキン835D,835Eの捻じれが生じ難い構成とされている。また、パッキン835D,835Eの断面形状が三角形とされており、多様な材料を用いた場合であっても、先端部(頂点側)と基端部(底辺側)の剛性とそのバランスを簡便に調整することができる。
【0113】
≪実施形態17≫
実施形態17に係る上扉31の下部パッキン935Dおよび下扉32の上部パッキン935Eについて、
図37を参照して説明する。実施形態17では、下部パッキン935Dおよび上部パッキン935Eの形状が実施形態1から実施形態16と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態16と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0114】
下部パッキン935Dと上部パッキン935Eはいずれも、扉31,32と幅方向および前後方向の寸法が略等しい長尺の厚板状であって、上扉31の下面と、下扉32の上面とにそれぞれ、接着剤等によって固着されている。下部パッキン935Dおよび上部パッキン935Eは、閉扉時に互いに対向する表面において、断面三角形状の突条が複数(
図37においては7つ)、長手方向に沿って延びる畝状をなしており、長手方向に直交する断面は、全体としてジグザグ形状となっている。そして、下部パッキン935Dと上部パッキン935Eとは、閉扉時に、これらの突条の先端部において互いに当接する構成となっている。
【0115】
上記の構成によると、閉扉時に、下部パッキン835Dと上部パッキン835Eとは、複数の突条の先端部において当接することから、扉31,32の厚み方向に沿って、複数のシールが形成されることとなる。さらに、隣り合う突条の間には、空気層が形成されている。これにより、温蔵庫の密閉性と保温性(断熱性)とを高度に高めることができる。
【0116】
≪実施形態18≫
実施形態18に係る温蔵庫について、
図38を参照して説明する。実施形態18の温蔵庫では、上扉131と下扉132の構造と、その隙間の密閉構造とが実施形態1から実施形態17と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態17と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0117】
図38(A)に示すように、上扉131の下端部には、厚み方向(閉扉時の前後方向)の中央部分おいて、幅方向に亘って延びる中空状のパッキン室131Aが備えられている。パッキン室131Aは、幅方向の両端が上扉131の左右の側面31B,31Cに開口するとともに、パッキン室131Aの下端において幅方向に沿って設けられたライン状の開口部131Bを介して、上扉131の下面に開口している。パッキン室131Aの厚み方向の寸法は、開口部131Bの厚み方向の寸法よりも大きく、パッキン室131Aの高さ方向の寸法は、パッキン室131Aの厚み方向の寸法よりも大きくなるように設計されている。また、下扉132の上面は、幅方向に亘って、厚み方向に沿う中央部分が上方に向けて突出する山形をなしている。そして、パッキン室131Aには、上扉131の下面と下扉132の山形をなす上面との間を密閉するパッキン146が装着されている。
【0118】
パッキン146は、
図38(B)に示すように、概して、扉131,132の幅方向の寸法に対応する長尺シート状のシール部146Bを主体として構成されており、シール部146Bの短手方向の一方の端部に沿って肉厚の頭部146Aが備えられている。本例の頭部146Aは、長手方向に直交する断面が楕円形状をなし、その長軸に沿ってシール部146Bが延設されている。シール部146Bの他方の端部は、両面にテーパが設けられた先細り形状とされている。シール部146Bの厚み方向の寸法は、開口部131Bの厚み方向の寸法よりも小さく、頭部146Aの厚み方向の寸法は、開口部131Bの厚み方向の寸法よりも大きく、パッキン室131Aの厚み方向の寸法より小さくなるように設計されている。また、シール部146Bの短手方向(上下方向)の寸法は、閉扉時のパッキン室131Aの底面から下扉132の上面の頂部までの寸法よりもやや大きく、パッキン146全体の高さ方向の寸法は、閉扉時のパッキン室131Aの天井面から下扉132の上面の頂部までの寸法よりも小さくなるように設計されている。このパッキン146は、実施形態1~17のパッキン34と比較して、剛性がやや高いために撓み難く、低摩擦で摺動性の良好な材料によって構成される。このような材料としては、これに限定されるものではないが、例えば、低摺動性のシリコーン樹脂や、フッ素樹脂、ニトリル・シリコーンゴム等が挙げられる。
【0119】
パッキン146は、上扉131の幅方向の端部の開口から、シール部146Bを開口部131Bに挿通させた状態で、頭部146Aがパッキン室131Aに挿入されることで、て、上扉131の下端に装着されている。開扉状態では、
図38(A)に実線で示すように、パッキン146は、自重によって頭部146Aがパッキン室131Aの底部に引っかかり、シール部146Bが上扉131から垂下している。そして閉扉時には、パッキン146は、まずはシール部146Bの下端が下扉132の上面に当接するとともに、次第に下端が上面に沿って上方に変位されていき、完全に扉131,132が閉まると、
図38(A)に仮想線で示すように、パッキン146は、下扉132の上面によって持ち上げられ、パッキン室131Aの内部で上方に配される。これにより、上扉131と下扉132の間が密閉される。なお、パッキン146が装着された後のパッキン室131Aの幅方向両端の開口は、蓋部材などにより封止してもよい。
【0120】
以上の構成によると、上扉131の内部に配されたパッキン146は、パッキン室131Aの内部で上下に移動することが可能とされている。すなわち、パッキン146は、閉扉時に、パッキン室131Aの下方で下端において下扉132の上面に当接してから、下扉132によって押し上げられてパッキン室131Aの上方に移動することにより、広い高さ位置で密閉状態を維持することができる。パッキン146の上下方向の移動は、パッキン146の自重と、扉131,132の開閉操作に伴い行われるため、他の駆動力(例えば、後述する実施形態における磁力)等を要しない。これにより、パッキン146の製造寸法のばらつきや、上扉131と下扉132との隙間の寸法のばらつきに影響を受けることなく、上扉131と下扉132との間を密閉することができる。
【0121】
≪実施形態19≫
実施形態19に係る温蔵庫について、
図39を参照して説明する。実施形態19の温蔵庫では、パッキン246の形状が実施形態18と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態18と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0122】
パッキン246は、
図39(B)に示すように、実施形態18のパッキン146と比較して、頭部246Aの形状と、シール部246Bの先端部の形状が異なっており、頭部246Aの長手方向に直交する断面は略円形であり、シール部246Bの先端の断面も略円形とされている。頭部246Aの厚み方向および高さ方向の寸法(すなわち、直径に相当)は、開口部131Bの厚み方向の寸法よりも大きく、パッキン室131Aの厚み方向の寸法より小さい。シール部246Bの先端の略円形部分の厚み方向および高さ方向の寸法(すなわち、直径に相当)は、シール部246Bの厚み方向の寸法よりもやや大きい程度とされている。このような構成によると、扉131,132の開閉に伴う、パッキン246のシール部246Bの先端と、下扉132の上面との摺動により、シール部246Bの先端が摩耗することを抑制する。これにより、パッキン246の耐久性を長大化させることができる。
【0123】
≪実施形態20≫
実施形態20に係る温蔵庫について、
図40を参照して説明する。実施形態20の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態19と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態19と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0124】
上扉31の下面と下扉32の上面とにはそれぞれ、多数の繊維状の毛が密に植毛されてなるブラシ状部材346が、繊維軸方向が上下方向に沿うよう固定されている。ブラシ状部材346は、扉31,32の幅方向に亘って備えられ、扉31,32の厚み方向においては、毛が複数の列をなすように配されている。上扉31の下面に設けられたブラシ状部材346と、下扉32の上面に設けられたブラシ状部材346とは、閉扉時において、互いの先端同士が当接する(正面視で重なる)長さに設計されている。ブラシ状部材346において、毛を構成する材料に特に制限はなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の各種の合成樹脂等により構成することができる。
【0125】
ブラシ状部材346においては、毛が複数列に亘って密に配されているため、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断することができる。また、ブラシ状部材346を構成する1本の毛自体は細いため、上扉31からの毛と下扉32からの毛とが互い違いに隙間に入りこむことができ、上扉31のブラシ状部材346と、下扉32のブラシ状部材346とが入違う(捻じれる)こともない。したがって、このような構成によっても、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0126】
≪実施形態21≫
実施形態21に係る温蔵庫について、
図41を参照して説明する。実施形態21の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態20と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態20と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0127】
上扉31の下面と下扉32の上面とにはそれぞれ、可撓性を有する円筒状のチューブ状部材446が、扉31,32の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。このチューブ状部材446は、外力が加えられると撓み、外力を取り去ると元の形状に戻ることができる。そして、上扉31の下面に設けられたチューブ状部材446と、下扉32の上面に設けられたチューブ状部材446とは、開扉時の自由状態においては、断面が略円形をなしているものの、閉扉時においては、上扉31と下扉32の隙間に互いに拉げた状態で納まるようにそのチューブ径やチューブ壁の厚み等が設計されている。チューブ状部材446を構成する材料は、上記のとおりの可撓性を備える限り特に制限されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の各種の合成樹脂等により構成することができる。
【0128】
上扉31と下扉32に設けられたチューブ状部材446は、閉扉時には上扉31と下扉32の隙間に拉げた状態で納まることにより、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断することができる。このような構成によっても、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0129】
≪実施形態22≫
実施形態22に係る温蔵庫について、
図42を参照して説明する。実施形態22の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態21と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態21と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0130】
上扉31の下面には、固体でありながら液体に似たゲル状を呈するゲル状部材546Aが、上扉31の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。このゲル状部材546Aは、外力が加えられると容易に変形し、外力を取り去ると凡そ元の形状に戻ることができるものであればよい。このようなゲル状部材546Aは、典型的には、低架橋密度のゲル状樹脂(例えば、シリコーンゲル)によって構成することができるが、可撓性を有する樹脂シート内に液体を充填することで構成してもよい。ゲル状部材546Aの扉31の厚み方向に沿う断面は、開扉時の自由状態において、半円状をなしている。
下扉32の上面には、弾性を有する弾性部材546Bが、下扉32の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。この弾性部材546Bは、弾性材料(例えば、シリコーンゴム)によって構成することができる。弾性部材546Bの扉32の厚み方向に沿う断面は、半円状をなしている。
【0131】
上扉31の下面に設けられたゲル状部材546Aは、閉扉時に、下扉32の上面に設けられた弾性部材546Bに当接しながら変形し、弾性部材546Bの上面と上扉31の下面との間に拉げた状態で納まるようになっている。これにより、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断することができる。また、ゲル状部材546Aは拉げた状態で弾性部材546Bに接することから、広い面積をもって上扉31と下扉32の隙間を遮蔽する。これにより、上扉31と下扉32の隙間をより確実に密閉することができる。
【0132】
≪実施形態23≫
実施形態23に係る温蔵庫について、
図43を参照して説明する。実施形態23の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態22と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態22と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0133】
下扉32の上面には、弾性を有する弾性部材646Dが、下扉32の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。この弾性部材646Dは、弾性材料(例えば、シリコーンゴム)によって構成することができる。弾性部材646Dの扉32の厚み方向に沿う断面は、矩形をなしている。
上扉31の下面には、弾性を有する弾性部材646Bと、スポンジ変形可能なスポンジ部材646Cとがこの順に積層されてなる変形部材646Aが、上扉31の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。弾性部材646Bは、下扉32の弾性部材646Dと同様のものであってよい。スポンジ部材646Cは、樹脂発泡体によって構成されており、外力が加えられると容易に変形し、外力を取り去ると元の形状に戻ることができる。変形部材646Aの扉31の厚み方向に沿う断面は、開扉時の自由状態において、半円状をなしている。
【0134】
上扉31の下面に設けられた変形部材646Aは、閉扉時に、下扉32の上面に設けられた弾性部材646Dに当接し、スポンジ部材646Cが変形することで、弾性部材646Dの上面と上扉31の下面との間に拉げた状態で納まるようになっている。これにより、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断することができる。また、スポンジ部材646Cは潰れた状態で弾性部材646Dに接することから、広い面積をもって上扉31と下扉32の隙間を遮蔽する。これにより、上扉31と下扉32の隙間をより確実に密閉することができる。
【0135】
≪実施形態24≫
実施形態24に係る温蔵庫について、
図44および
図45を参照して説明する。実施形態24の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態23と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態23と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0136】
上扉31の下面には、
図44に示すように、磁石に引き付けられる性質(強磁性)を有する強磁性部材746Aが、上扉31の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。この強磁性部材746Aは、強磁性体(例えば、鉄,ニッケル,コバルト,およびこれらの元素のいずれかを含む合金)によって構成することができる。強磁性部材746Aの扉31の厚み方向に沿う断面は、矩形をなしている。
下扉32の上面には、上下方向に沿って伸縮可能な伸縮部材746Bが、下扉32の幅方向に亘って、接着剤等によって固定されている。伸縮部材746Bは、
図45に示すように、上下方向に沿って伸縮可能な蛇腹構造を有する蛇腹部746Dと、蛇腹部746Dの上方に配設された磁石部746Cとを含んで構成されている。
図44および
図45には、中空構造を有する角筒型の蛇腹部746Dが示されているが、蛇腹部746Dの形状はこれに限定されず、平板型などであってもよい。磁石部746Cは、磁気を帯びた(磁化された)強磁性体(例えば、鉄,ニッケル,コバルト,およびこれらの元素のいずれかを含む合金)によって構成され、磁石部746Cの扉32の厚み方向に沿う断面は、矩形をなしている。
【0137】
下扉32の上面に設けられた伸縮部材746Bは、開扉時には、
図44(A)に示すように、磁石部746Cの自重によって蛇腹部746Dが収縮した状態となっている。そして閉扉時には、
図44(B)に示すように、磁石部746Cが上扉31の下面に設けられた強磁性部材746Aに引き寄せられて磁着し、蛇腹部746Dが伸長した状態となって、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断する。これにより、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0138】
≪実施形態25≫
実施形態25に係る温蔵庫について、
図46を参照して説明する。実施形態25の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態24と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態24と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0139】
実施形態25の密閉構造は、実施形態24の密閉構造における強磁性部材746Aと磁石部746Cとが入れ替わった構成となっている。すなわち、上扉31の下面には、
図46に示すように、磁気を帯びた強磁性体からなる磁石部材846Aが、強磁性部材746Aに代えて配設されている。また、下扉32の上面には、実施形態24の伸縮部材746Bと同様の形態の伸縮部材846Bが配設され、この伸縮部材846Bは、実施形態24と同様の蛇腹部846Dと、蛇腹部846Dの上方に配設された強磁性部846Cとを含んで構成されている。このような構成においても、伸縮部材846Bは、開扉時には、強磁性部846Cの自重によって蛇腹部846Dが収縮され、閉扉時には、強磁性部846Cが上扉31の下面に設けられた磁石部材846Aに引き寄せられて磁着し、蛇腹部846Dが伸長した状態となって、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れを遮断する。これにより、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0140】
≪実施形態26≫
実施形態26に係る温蔵庫について、
図47および
図48を参照して説明する。実施形態26の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態25と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態25と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0141】
図48に示すように、温蔵室11の左側壁12Bおよび右側壁12Cの庫内に向かう面にはそれぞれ、上扉31と下扉32との間に対応する位置に、半円弧状の溝を備えるガイド溝部材12Fが備えられている。ガイド溝部材12Fの溝は、上扉31の下端近傍と下扉32の上端近傍とを略円弧状に繋いでいる。なお、ガイド溝部材12Fは、左側壁12Bと右側壁12Cとに埋設されていてもよい。
【0142】
下扉32の背面32Aの上方の周縁には、
図47に示すように、密閉部材946が備えられている。この密閉部材946は、長尺の板状をなす蓋部946Aと、長尺の板状をなす固定部946Cと、蓋部946Aと固定部946Cとを回動自在に接続する丁番946Bと、蓋部946Aの長手方向の両端からそれぞれ突出するガイド部946Dと、を備えて構成されている。蓋部946Aの長手方向の寸法は、温蔵室11の開口の幅方向の寸法と同じかやや小さい程度である。固定部946Cは、長手方向が下扉32の幅方向に沿うように、かつ、前方の板面が背面32Aに対向するように、略水平に背面32Aに取付けられている。蓋部946Aは、固定部946Cの上方の端部に沿って、板面が隙間なく面一をなすことができるように、丁番946Bを介して固定部946Cに固定されている。丁番946Bは、長手方向(幅方向)に沿う回動軸を中心にして、固定部946Cに対して蓋部946Aが180度の角度をなす(面一をなす)ことができるように回動させることができるとともに、蓋部946Aが固定部946Cに対し、後方に向けて90度以上に回動しないように、蓋部946Aの回動を規制する。本例のガイド部946Dは、二つの円柱状片からなり、蓋部946Aの長手方向(幅方向)の両端であって、回動軸とは反対側において、長手方向の両側に向けて蓋部946Aからその一部が突出するように配されている。
【0143】
密閉部材946において、下扉32の開扉時には、蓋部946Aは自重によって、固定部946Cに対し、後方に向けて90度の位置に倒れた姿勢で配される。そして下扉32の閉扉時には、まず、90度の位置にある蓋部946Aの両端に取付けられたガイド部946Dが、温蔵室11のガイド溝部材12Fの溝にそれぞれ侵入する。このガイド部946Dは、下扉32が閉じるにつれて、溝に沿って上方に案内され、固定部946Cに対する蓋部946Aの角度を拡大させる。そして、下扉32が完全に閉じた状態において、ガイド部946Dは、ガイド溝の上端に配されるとともに、蓋部946Aを略鉛直に起立させて、上扉31の背面31Aに当接する姿勢に起立させる。下扉32がこのような構成を備えることで、上扉31と下扉32の閉扉時には、起立した姿勢の蓋部946Aによって、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れが遮断される。これにより、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0144】
≪実施形態27≫
実施形態27に係る温蔵庫について、
図49を参照して説明する。実施形態27の温蔵庫は、密閉部材1046が上扉31に備えられ、その構成がやや改変されている点において、実施形態26と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態26と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0145】
上扉31の背面31Aの上方の周縁には、密閉部材1046が備えられている。この密閉部材1046は、蓋部1046Aと、固定部1046Cと、丁番1046Bと、ガイド部1046Dと、規制部材1046Eと、を備えて構成されている。蓋部1046Aと、固定部10946Cと、ガイド部1046Dの構成については、実施形態26と同じである。本例の丁番1046Bは、固定部1046Cに対する蓋部1046Aの回動角度を規制する機能を備えておらず、その代わりに、規制部材1046Eが蓋部1046Aの回動範囲を規制するようになっている。本例の規制部材1046Eは、引張ばねによって構成されている。すなわち、固定部1046Cは、上扉31の背面31Aの下方の周縁に取付けられ、蓋部1046Aは、固定部1046Cの下方の端部に沿って、板面が隙間なく面一をなすことができるように、丁番1046Bを介して固定部1046Cに固定されている。そして規制部材1046Eは、固定部1046Cの背面と蓋部1046Aの背面とに接続され、引張ばねの自由状態において固定部1046Cの背面と蓋部1046Aの背面とのなす角が90度となるように設計されている。
【0146】
密閉部材1046において、上扉31の開扉時には、蓋部1046Aは規制部材1046Eによって、固定部946Cに対し、後方に向けて90度の位置に持ち上げられた姿勢で配される。そして上扉31の閉扉時には、まず、90度の位置にある蓋部1046Aの両端に取付けられたガイド部1046Dが、温蔵室11のガイド溝部材12Fの溝にそれぞれ侵入する。このガイド部1046Dは、上扉31が閉じるにつれて、溝に沿って上方に案内され、固定部1046Cに対する蓋部1046Aの角度を引張ばねの弾性に抗して拡大させる。そして、上扉31が完全に閉じた状態において、ガイド部1046Dは、ガイド溝の下端に配されるとともに、蓋部1046Aを略鉛直に引き下げて、下扉32の背面32Aに当接する姿勢に垂下させる。上扉31がこのような構成を備えることで、上扉31と下扉32の閉扉時には、垂下した姿勢の蓋部1046Aによって、上扉31と下扉32との隙間における空気の流れが遮断される。これにより、上扉31と下扉32の隙間を密閉することができる。
【0147】
≪実施形態28≫
実施形態28に係る温蔵庫について、
図50および
図51を参照して説明する。実施形態28の温蔵庫は、上扉31と下扉32の間の密閉構造が実施形態1から実施形態27と相違している。それ以外の構成については、実施形態1から実施形態27と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0148】
図50(B)は、閉扉時の上扉31および下扉32を背面側から視た図であり、参考のために、温蔵庫の輪郭と、温蔵室11の開口の輪郭とを、仮想線で併せて示している。
上扉31および下扉32の背面31A,32Aには、実施形態1と同じパッキン34が備えられている。ただし、上扉31および下扉32には、パッキン支持部材36が備えられておらず、上扉31の下部パッキン35Dと、下扉32の上部パッキン35Eとは、他のパッキン35A(図示せず),35B,35C,35F,35G,35H(図示せず)と同様に、扉31,32の背面31A,32Aに沿って配されている。そして、下部パッキン35Dの上方には、下部パッキン35Dに沿って長尺の上部磁石M1が備えられ、上部パッキン35Eの下方には、上部パッキン35Eに沿って長尺の下部磁石M2が備えられている。
【0149】
上扉31および下扉32の背面31A,32Aには、上扉31と下扉32との間に渡し架けるように、封止板Pが配されている。封止板Pは、強磁性材料からなる長尺な略矩形の板状をなし、長手方向が扉31,32の幅方向に沿うように配されるとともに、上部磁石M1および下部磁石M2に着脱自在に磁着できるようになっている。封止板Pの長手方向の寸法は、温蔵室11の開口の幅方向の寸法よりも大きく、例えば、上下の扉31,32の左右のパッキン35B,35C,35F,35Gの中心間距離に等しい程度の寸法とされ、短手方向(上下方向)の寸法は、上部磁石M1と下部磁石M2とを後方から上下方向で覆うことができる寸法とされている。このような封止板Pは、閉扉時においては、
図50に示すように、上扉31のパッキン35B,35C,35Dと、下扉32のパッキン35E,35F,35Gとを潰しながら、上扉31と下扉32の背面31A,32Aに磁着することで、上扉31と下扉32の隙間を塞ぐことができるようになっている。
【0150】
図51は、上扉31および下扉32の開閉に伴う、封止板Pの様子を示している。すなわち、(A)閉扉時において、封止板Pは、上部磁石M1と下部磁石M2とにより、上扉31と下扉32とに磁着している。ここで、(B)上扉31を開けると、封止板Pは、下扉32と温蔵室11との間に挟まれているため、上扉31から脱着される。この状態で、下扉32を上扉31よりも大きく開けようとすると、封止板Pは、まずは下扉32に磁着した状態で下扉32と一緒に移動し、(C)下扉32と上扉31とが同じ開扉度となったときに下扉32と上扉31の両方に磁着する。そして、(E)下扉32が上扉31よりも開扉度が大きくなったときに、封止板Pは、上扉31に磁着して上扉31の位置に留まった状態で下扉32から脱着し、下扉32のみが移動する。同様に、(A)閉扉状態から、(D)下扉32を開けると、封止板Pは上扉31と温蔵室11との間に挟まれているため、下扉32から脱着される。この状態で、上扉31を下扉32よりも大きく開けようとすると、封止板Pは、まずは上扉31に磁着した状態で上扉31と一緒に移動し、(C)上扉31と下扉32とが同じ開扉度となったときに上扉31と下扉32の両方に磁着する。そして、(F)上扉31が下扉32よりも開扉度が大きくなったときに、封止板Pは、下扉32に磁着して下扉32の位置に留まった状態で上扉31から脱着し、上扉31のみが移動する。このようにして、封止板Pは、上扉31および下扉32の少なくともいずれかに磁着した状態で扉31,32に配され、閉扉時には上扉31と下扉32の隙間を塞ぐように設計されている。
【0151】
<他の実施形態>
ここに開示される技術は、上記の実施形態に開示されたものに限定されるものではなく、例えば、以下の態様もここに開示される技術範囲に含まれる。また、ここに開示される技術は、その本質から逸脱しない範囲において種々変更された態様で実施することができる。
(1)上記実施形態において、パッキン34としてシリコーンゴム製のものが例示されていたが、パッキン34を構成する材料はこれに限定されない。例えば、フッ素ゴムやニトリル・シリコーンゴム等の低摩擦で摺動性の良好な材料で構成されていてもよい。
(2)上記実施形態において、報知手段として、表示装置、警告灯、および警報器などが挙げられていたが、公知の各種の報知手段を採用することができる。このような報知手段の一例として、電子メールやスマートフォンアプリ、電話発信、芳香器等を利用した報知態様が挙げられる。
(3)上記実施形態における、制御装置による温蔵庫の運転内容(加熱運転、保温運転等)は例示にすぎず、その他の様々な運転方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1…温蔵庫、10…温蔵庫本体、11…温蔵室、12B…左側壁、12C…右側壁、12D,112D…背壁、30…扉、31,131…上扉、31A,32A…背面、32,132…下扉、34,146…パッキン、34A…筒部、34D…脚部、35D,135D…下部パッキン、35E,135E…上部パッキン、36,136…パッキン支持部材、40…加熱ユニット、41,141…内側ダクト、41A…本体部、41B…側面部、41C…通気孔、42…内側ヒータ、43…外側ダクト、43A…本体部、43B…側面部、43C…通気孔、44…外側ヒータ、46…ファン、46A…第1ファン、46B…第2ファン、50…風向板、100,200,300,400,500…制御装置