(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】フェンスパネル及びフェンス
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
E04H17/16 104
(21)【出願番号】P 2020151091
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】米山 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】矢野 凌佑
(72)【発明者】
【氏名】丸島 茜
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089361(JP,A)
【文献】特開平07-197702(JP,A)
【文献】特開平09-021119(JP,A)
【文献】特開昭48-098636(JP,A)
【文献】米国特許第05725201(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/14
E04H 17/16
E01F 8/00
E01F 13/00
F16B 5/00
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数のパネルが横方向に連結されるフェンスパネルにおいて、
前記パネルは、パネル主平面と、平面視で略コの字型に形成されたパネル端部を有し、
前記パネル端部の一部には、前記パネルの横方向外側に突出した少なくとも1つのツメ部が形成され、
前記パネル主平面と前記パネル端部の境界部の一部には、前記ツメ部と対応する縦長状の貫通孔が形成され、
隣接する一方の前記パネルの前記ツメ部と、隣接する他方の前記パネルの前記貫通孔を嵌合させ連結することを特徴とするフェンスパネル。
【請求項2】
請求項1に記載するフェンスパネルにおいて、
前記パネルは1枚の平板を屈曲して形成されることを特徴とするフェンスパネル。
【請求項3】
請求項2に記載するフェンスパネルにおいて、
前記ツメ部は、前記略コの字型に形成した辺の最端部の一部を、
曲げ角が鋭角になるように屈曲して形成されることを特徴とするフェンスパネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフェンスパネルにおいて、
前記ツメ部及び前記貫通孔は、前記パネルの高さ方向略中央に位置することを特徴とするフェンスパネル。
【請求項5】
離間して立設される複数本の支柱と、前記支柱間に配されるフェンスパネルとを備えたフェンスにおいて、
前記フェンスパネルは、隣接する複数のパネルが横方向に連結され、
前記パネルは、パネル主平面と、平面視で略コの字型に形成されたパネル端部を有し、
前記パネル端部の一部には、前記パネルの横方向外側に突出した少なくとも1つのツメ部が形成され、
前記パネル主平面と前記パネル端部の境界部の一部には、前記ツメ部と対応する縦長状の貫通孔が形成され、
隣接する一方の前記パネルの前記ツメ部と、隣接する他方の前記パネルの前記貫通孔を嵌合させ連結することを特徴とするフェンス。
【請求項6】
請求項5に記載するフェンスにおいて、
前記パネルは1枚の平板を屈曲して形成されることを特徴とするフェンス。
【請求項7】
請求項6に記載するフェンスにおいて、
前記ツメ部は、前記略コの字型に形成した辺の最端部の一部を、
曲げ角が鋭角になるように屈曲して形成されることを特徴とするフェンス。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載のフェンスにおいて、
前記ツメ部及び前記貫通孔は、前記パネルの高さ方向略中央に位置することを特徴とするフェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部品が少なく組み立てが容易で、剛性が高い連結構造を有するフェンスパネル及びフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、防音と目隠し効果を兼ね備えたフェンスとして、複数の立設した支柱の間に、鋼板からなるフェンスパネルを配したものが知られている。また、広範囲にフェンスを設置する場合や、支柱間の距離が離れている場合には、1枚の大きなフェンスパネルを支柱の間に配置するのではなく、運搬や製造がしやすいようにあらかじめ分割されたパネルを複数枚連結して、フェンスを構築することがある。
【0003】
従来、パネルを連結する際には、
図7に示すように、隣接する従来パネル110の端部を重ね合わせ、従来押さえ金具120で従来パネル110の重なり部を表裏から挟持するように支え、ボルト131及びナット132によって締結していた。従来押さえ金具120は、鋼板等の平板の幅方向両端部に半円形状のリブが形成され、風等の外力による曲げに対して強い形状であるため、パネル連結部へ共締めすることによって、連結後のパネルの剛性を高めることができる。その他にも、特許文献1に記載の壁パネルの接続構造のように、隣接するパネルの側縁部に具備されたフレームを、係合片を介して連結する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパネルの連結方法は、上記のようにボルトやナットなどの締結具を用いて連結されているため、例えば屋外に設置されたフェンスは、強風などの動的な外乱によって振動し、締結具が緩んでしまうという危険性があった。しかしながら、このようなフェンスは、施工者にとっては組み立てが容易であることも同時に求められるため、締結具の緩み防止を目的とした部品点数の増加や、接着などの、作業工程が増えてしまうような手段については推奨されてこなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、構成部品が少なく組み立てが容易で、剛性の高い連結方法を有するフェンスパネル及び、その連結方法によって連結されたフェンスパネルを用いたフェンスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るフェンスパネルは、隣接する複数のパネルが横方向に連結され、前記パネルは、パネル主平面と、平面視で略コの字型に形成されたパネル端部を有し、前記パネル端部の一部には、前記パネルの横方向外側に突出した少なくとも1つのツメ部が形成され、前記パネル主平面と前記パネル端部の境界部の一部には、前記ツメ部と対応する縦長状の貫通孔が形成され、隣接する一方の前記パネルの前記ツメ部と、隣接する他方の前記パネルの前記貫通孔を嵌合させ連結することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るフェンスパネルにおいて、前記パネルは1枚の平板を屈曲して形成されると好適である。
【0010】
本発明に係るフェンスパネルにおいて、前記ツメ部は、前記略コの字型に形成した辺の最端部の一部を、曲げ角が鋭角になるように屈曲して形成されると好適である。
【0011】
本発明に係るフェンスパネルにおいて、前記ツメ部及び前記貫通孔は、前記パネルの高さ方向略中央に位置すると好適である。
【0012】
本発明に係るフェンスは、離間して立設される複数本の支柱と、前記支柱間に配されるフェンスパネルとを備え、前記フェンスパネルは、隣接する複数のパネルが横方向に連結され、前記パネルは、パネル主平面と、平面視で略コの字型に形成されたパネル端部を有し、前記パネル端部の一部には、前記パネルの横方向外側に突出した少なくとも1つのツメ部が形成され、前記パネル主平面と前記パネル端部の境界部の一部には、前記ツメ部と対応する縦長状の貫通孔が形成され、隣接する一方の前記パネルの前記ツメ部と、隣接する他方の前記パネルの前記貫通孔を嵌合させ連結することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るフェンスにおいて、前記パネルは1枚の平板を屈曲して形成されると好適である。
【0014】
本発明に係るフェンスにおいて、前記ツメ部は、前記略コの字型に形成した辺の最端部の一部を、曲げ角が鋭角になるように屈曲して形成されると好適である。
【0015】
本発明に係るフェンスにおいて、前記ツメ部及び前記貫通孔は、前記パネルの高さ方向略中央に位置すると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣接する一方のパネルの端部から突出したツメ部と、隣接する他方のパネルに設けられた縦長状の貫通孔を嵌合させることで、ボルトやナットなどの締結具を必要とせずに、フェンスパネルを連結することができる。
【0018】
また本発明によれば、略コの字型に形成されたパネル端部が重なり合うことにより、補強のための抑え金具を使用せずとも、剛性の高いフェンスパネルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】本実施形態に係る隣接するパネルの連結部を示す分解斜視図
【
図4】本実施形態に係る隣接するパネルの連結部を示す分解断面図
【
図5】本実施形態に係るフェンスパネルを用いたフェンスを示す正面図
【
図7】従来実施形態に係るフェンスパネル連結部を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るパネル端部の斜視図、
図2は、本実施形態に係るパネル端部の断面図、
図3は、本実施形態に係る隣接するパネルの連結部を示す分解斜視図、
図4は、本実施形態に係る隣接するパネルの連結部を示す分解断面図、
図5は、本実施形態に係るフェンスパネルを用いたフェンスを示す正面図、
図6は、
図5のI-I断面図、
図7は、従来実施形態に係るフェンスパネル連結部を示す分解斜視図である。
【0022】
本実施形態に係るフェンスパネル1を構成するパネル10は、
図1及び
図2に示すように、例えば鋼板等の平板からなり、パネル10の大部分を占める平面部であるパネル主平面11と、平面視での断面が略コの字型になるように屈曲されたパネル端部20を有する。また以下の説明において、略コの字型のパネル端部20の凸となる側の面を、パネル10の表面とし、反対面を裏面として説明を行う。
【0023】
また
図2に示すように、パネル端部20において屈曲された各々の曲げ部を、パネル主平面11に近い側から順に、第1曲げ部21、第2曲げ部23及び第3曲げ部25とする。また、略コの字型を成す各々の片を、パネル主平面11に近い側から順に、第1屈曲片22、第2屈曲片24及び第3屈曲片26とする。
【0024】
図1に示すように、第3屈曲片26の高さ方向の略中央には、第3屈曲片26の一部に切り込みを入れ、パネル10の外側に倒すように曲げて形成された、ツメ部28を備える。
図2に示す断面形状において、ツメ部28の根本となるツメ曲げ部27は、パネル主平面11と成す角度が10~15°になるように鋭角に屈曲される。また、第3屈曲片26の先端からツメ部28の先端の距離Aは、後述するパネル連結の際に、パネル同士の拘束力を発揮させるため、パネル主平面11の表面から第2屈曲片24の裏面までの距離Bに対して、僅かに長くなるように形成されている。
【0025】
図1に示すように、第1曲げ部21の高さ方向略中央であって、後述するパネル連結の際に、隣接するパネル10のツメ部28と対応する位置に、縦長状の貫通孔30が形成される。なお、パネル10の高さ方向において、貫通孔30の長さはツメ部28の長さよりも長く設定する。また、
図2に示す断面形状において、貫通孔30の縁から第2屈曲片24の裏側までの距離Cは、後述するパネル連結の際に、ツメ曲げ部27と貫通孔30との干渉を避けるため、第3屈曲片26の先端からツメ曲げ部27までの距離Dよりも短く形成されている。
【0026】
次に、上記のような特徴を端部に備えるパネル10の連結方法について説明する。
【0027】
先ず、
図3及び4に示すように、同形状の端部を持つパネル10を、表裏を反転させ、一方のパネル10の第3屈曲片26を、他方のパネル10の略コの字型端部の凹部に係合させる。
【0028】
次に、一方のパネル10のツメ部28を、他方のパネル10の貫通孔30へ嵌合させる。この時、一方の第3屈曲片26の先端と他方の第2屈曲片24の裏側、一方のツメ部28の先端と他方のパネル主平面11の表面が接触する。ここで前述の通り、
図4に示す断面形状において、一方の距離Aは他方の距離Bよりも長いため、一方のツメ部28の先端は他方のパネル主平面11の表面によって押され、一方のツメ曲げ部27は弾性限度内で変形し、その復元力によってパネル同士を拘束する。また前述の通り、パネル10の高さ方向において、貫通孔30の長さはツメ部28の長さよりも長く、
図4に示す断面形状において、他方の距離Cは一方の距離Dよりも短いため、一方のツメ曲げ部27と他方の貫通孔30との干渉は発生しない。
【0029】
次に、同じく他方のパネル10のツメ部28を、一方のパネル10の貫通孔30へ嵌合させ、パネル10同士を連結する。
【0030】
その後、
図6に示すように、両パネル10同士を差し込み、一方のパネル10の第1屈曲片22を、他方のパネル10の第3屈曲片26へ当接させる。
【0031】
このように連結されたパネル10の連結部は、
図6に示すように、平面視で断面が矩形状に閉じられ、風等の外力による曲げに対して強い構造となる。また、ボルトやナットなどの締結具を使用しないため、従来のフェンスパネルの連結構造と比較して部品点数が少なく、容易に組み立てを行うことができ、尚且つ締結具が緩む恐れもない。さらに、同形状のパネル10を連結することで、パネル10を共用して使用できるため、パネル形状のバリエーションは不要となり、製作コストの低減を図ることができる。
【0032】
次に、上記のように連結されたパネル10を用いて、フェンス及びフェンスパネル1を構築する方法について説明をする。
【0033】
本実施形態に係るフェンスは、
図5に示すように、離間して立設された支柱53と、支柱53の間に配されるフェンスパネル1と、フェンスパネル1を支柱53に固定する継手金具からなる。フェンスパネル1は、上記のように連結されたパネル10の上下縁部に胴縁51が取り付けられ、左右縁部に端部押さえ金具52が取り付けられて構成される。
【0034】
まず、
図5に示すように、連結されたパネル10の上下縁部に、断面が中空矩形状に成形された管状部品からなる胴縁51を取り付け、次に、連結されたパネル10の左右縁部に端部押さえ金具52を取り付ける。パネル10の左右縁部は連結部と同様に、平面視で断面が略コの字型に形成されており、同じく断面がコの字型の端部押さえ金具52を取り付けることによって、断面が矩形状に閉じられた形状となる。以上のように、上下左右の縁部に、それぞれ、胴縁51と端部押さえ金具52を取り付けることによって、四辺の剛性が高まり、上述したパネル10の連結部の構造と合わせて、フェンスパネル1全体として強固な構造となる。
【0035】
次に、上記のように組み立てられたフェンスパネル1は、離間して立設された複数本の支柱53の間に固定される。この時、フェンスパネル1の四隅に位置し、胴縁51の端部に設けられた貫通孔を用いて、あらかじめ支柱53に固定された継手金具を介してフェンスパネル1の固定が行われる。なお、フェンスを設置する状況に合わせ、
図5に示すように、上下にフェンスパネル1を積み上げてフェンスを構築することができる。また、上下にフェンスパネル1が必要のない場合には、一段のみのフェンスパネル1にてフェンスを構築してもよく、全高の高いフェンスを設置する場合には、フェンスパネル1を三段以上に積み上げて構築してもよい。
【0036】
なお、上記ではパネル10を、鋼板等に曲げ加工を施して製作した場合についての説明を行ったが、パネル10の材質及び製作方法はこれに限らない。また、上記では、ツメ曲げ部27が外力を受け変形し、その復元力によってパネル10同士を拘束する場合について説明を行ったが、パネル10同士の拘束方法はこれに限らず、例えば圧入などのはめ合いによって拘束しても構わない。また、上記では、ツメ部28及び貫通孔30が、パネル10の高さ方向略中央に位置する場合について説明を行ったが、ツメ部28及び貫通孔30の位置及び個数についてはこれに限らず、パネル10の高さ方向略中央以外に設けても構わず、また複数設けても構わない。また、ツメ部28は隣接するパネル10同士で異なる数であっても構わないし、異なる位置に形成されてもよい。但し、パネル10を連結した際に、隣接するパネル10の高さにずれが生じないように、パネル端部20同士を係合させたときに、隣接するパネル10の高さを一致させた状態で、ツメ部28及び貫通孔30の位置は、お互いが対応するように設けられると好適である。また、ツメ部28の貫通孔30への嵌合を容易に行うために、ツメ部28の先端に面取り形状等を施しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 フェンスパネル
10 パネル
11 パネル主平面
20 パネル端部
21 第1曲げ部
22 第1屈曲片
23 第2曲げ部
24 第2屈曲片
25 第3曲げ部
26 第3屈曲片
27 ツメ曲げ部
28 ツメ部
30 貫通孔
51 胴縁
52 端部押さえ金具
53 支柱
110 従来パネル
120 従来押さえ金具
131 ボルト
132 ナット