(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】防音壁
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240314BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20240314BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
E01F8/00
E01B19/00 C
G10K11/16 130
(21)【出願番号】P 2020188800
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594075765
【氏名又は名称】日本環境アメニティ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 康
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直登
(72)【発明者】
【氏名】木山 雅和
(72)【発明者】
【氏名】木元 肖吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知明
(72)【発明者】
【氏名】原田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】徳増 健
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052528(JP,A)
【文献】特開2020-133281(JP,A)
【文献】特開2014-101747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
E01B 19/00
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸音材を内装した第1吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第1外枠体を設け、前記第1吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を前記第1外枠体の音源側表面部に形成してあると共に、背面部には遮音面を備えてある遮音パネルを、上下方向に複数段に並べ、
多孔質材料から成る第2吸音材を内装した第2吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体を設け、前記第2吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を、前記第2外枠体の音源側表面部及び、背面部に形成してある吸音パネルを、上下方向に複数段に並べてある前記遮音パネルの内の最上段の物の更に上に配設し、
前記第2吸音材は、上下方向に沿った複数枚の吸音板を、それらの下端部から上端部にかけてパネル厚み方向に互いに間隔を空けて並設し、
隣接する複数枚の前記吸音板同士の間隔の合計は、下側よりも上側を大に形成してある防音壁。
【請求項2】
前記吸音板を3枚以上設け、3枚以上の前記吸音板の内、パネル厚み方向で両端側の物よりも中間部の物の高さを低く形成してある請求項1に記載の防音壁。
【請求項3】
複数枚の前記吸音板の内、パネル厚み方向で両端側の物を、内側面を外側に傾斜させて上側ほど薄くなるように形成してある請求項1または2のいずれか1項に記載の防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防音壁は、第1吸音材を内装した第1吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第1外枠体を設け、前記第1吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を前記第1外枠体の音源側表面部に形成してあると共に、背面部には遮音面を備えてある遮音パネルを、上下方向に複数段に並べた防音壁において、上端縁部付近における圧力勾配により、音の回折現象が生じて音源側とは反対側の防音壁の背面側に音が拡がるために、第2吸音材を内装した第2吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体を設け、前記第2吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を、前記第2外枠体の音源側表面部及び、背面部に形成してある吸音パネルを、上下方向に複数段に並べてある前記遮音パネルの内の最上段の物の更に上に配設することが考えられ(例えば、特許文献1参照)、それによって、背面側に回折しようとする音が、第2吸音材で吸収されながらその振動エネルギーが減衰され、音源側の音が防音壁の背面側に拡がるのを防止できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図3は、防音壁設備1と対象領域との関係を示す図であり、遮音パネル1Aと吸音パネル1Bとの関係を示すものである。吸音パネル1Bの鉛直方向の高さを試験体高さと称する。同図によれば、領域A2は音源Sと吸音パネル1Bの下端とを通る第二境界R2と第一境界R1との間、領域D2は防音パネル1Aの上端縁を通る水平面である第三境界R3と第二境界R2との間の領域、領域F2は防音パネル1Aの下端縁を通る水平面である第四境界Rgと第三境界R3との間の領域である。
【0005】
前述のようなエッジ効果抑制技術を用いれば、領域F2での防音効果には効果を奏することができた。しかし、近年、高速道路近辺のビル等では、領域D2以上の部分で騒音に晒される場所も多く、この領域では十分な防音効果を得られていない。
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、領域D2以上の部分でも十分な防音効果を得ることのできる防音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の防音壁の特徴構成は、第1吸音材を内装した第1吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第1外枠体を設け、前記第1吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を前記第1外枠体の音源側表面部に形成してあると共に、背面部には遮音面を備えてある遮音パネルを、上下方向に複数段に並べ、多孔質材料から成る第2吸音材を内装した第2吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体を設け、前記第2吸音空間に外方の音を取り入れ自在な音導入孔を多数設けてある音透過面を、前記第2外枠体の音源側表面部及び、背面部に形成してある吸音パネルを、上下方向に複数段に並べてある前記遮音パネルの内の最上段の物の更に上に配設し、前記第2吸音材は、上下方向に沿った複数枚の吸音板を、それらの下端部から上端部にかけてパネル厚み方向に互いに間隔を空けて並設し、隣接する複数枚の前記吸音板同士の間隔の合計は、下側よりも上側を大に形成してあるところにある。
【0008】
本発明の第1の特徴構成によれば、第2吸音材は、上下方向に沿った複数枚の吸音板を、パネル厚み方向に互いに間隔を空けて並設したことにより、1枚の吸音板を設けるだけよりも、
図3における領域A2において、音が吸音パネルに挿入して吸収される挿入損失(dB)が大きくなり、防音効果が向上する。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、前記吸音板を3枚以上設け、3枚以上の前記吸音板の内、パネル厚み方向で両端側の物よりも中間部の物の高さを低く形成したところにある。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
本発明の第2の特徴構成によれば、
図3における領域F2、A2における防音効果が特に向上する。
【0015】
本発明の第3の特徴構成は、複数枚の前記吸音板の内、パネル厚み方向で両端側の物を、内側面を外側に傾斜させて上側ほど薄くなるように形成したところにある。
【0016】
本発明の第3の特徴構成によれば、特に、
図3における領域F2における挿入損失が大きくなる。
【0017】
【0018】
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】音源、防音壁設備、領域の関係を示す防音壁の側面から見た説明図である。
【
図4】次の
図5における各第2吸音材についての挿入損失の実験結果を表す図表である。
【
図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、第2吸音材において、並設した吸音板の組み合わせ夫々のバリエーションを表す例示側面図である。
【
図6】領域A2、D2、F2夫々において、吸音板の
図4に示す組合せ例に対する1/3アクターブバンド中心周波数の変化に伴う挿入損失の変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、例えば道路等の防音壁は、道路の側方において道路とその周辺とを隔てるように、道路に沿って形成したコンクリート製の基礎外壁2の上に、一定間隔置きに立設させたパネル支持用H型鋼10の縦溝内に嵌入させて、上下方向に複数段に積み上げる遮音パネル1Aと、その遮音パネル1Aの最上段の物の更に上に配設する吸音パネル1Bとからなり、いずれの遮音パネル1Aも吸音パネル1Bも、夫々の左右両端部を、横方向に隣接するパネル支持用H型鋼10の夫々の縦溝内に嵌入させてある。
遮音パネル1Aは、グラスウールからなる第1吸音材3Aを内装した第1吸音空間4Aを内部に形成すると共に、音源となる道路とその道路の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な金属板から成る第1外枠体5Aを設け、第1吸音空間4Aに外方の音を取り入れ自在な音導入孔6を多数形成してあるガラリ構造からなる音透過面を、第1外枠体5Aの音源側表面部7に形成すると共に、第1外枠体5Aの音源側とは反対側の背面部8には孔の開いてない鉄板製の遮音板を設けて、道路側からの発生音を防音壁の背面側には逃がさないように構成してある。
【0021】
吸音パネル1Bは、第2吸音材3Bを内装した第2吸音空間4Bを内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体5Bを設け、第2吸音空間4Bに外方の音を取り入れ自在な音導入孔6を多数設けてある音透過面を、第2外枠体5Bの音源側表面部7及び、背面部8に形成してある。
尚、第1外枠体5A及び第2外枠体5Bは、夫々2部材以上の板金部材から成り、それらの複数の板金部材をリベットやボルトナット又は接着、溶接などで一体に箱状に組み付けて形成してある。
【0022】
更に、前記第2外枠体5Bは、アルミニウム製のパンチングメタルで、第2吸音材3Bは、多孔質材料であるポリエステル(PET)ウールである。
【0023】
図2に示すように、第2吸音材3Bは、上下方向に沿った3枚の吸音板30を、パネル厚み方向に互いに間隔を空けて並設してある。
3枚の前記吸音板30の内、パネル厚み方向で両端側の物よりも中間部の物の高さを低く形成し、パネル厚み方向で両端側の物を、内側面を外側に傾斜させて上側ほど薄くなるように形成してある。
従って、隣接する複数枚の前記吸音板30同士の間隔の合計は、上に行くほど大に形成してある。
【0024】
[別実施形態]
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 前記第1、第2吸音材3A,3Bは、ポリエステルウール以外に、グラスウールやロックウール等の無機繊維からなる多孔質体や、ステンレス繊維などの金属繊維からなる多孔質体の他に、アルミニウム焼結板から構成してあってもよい。
〈2〉 前記パンチングメタルを、アルミニウム以外に、ステンレス、亜鉛引き鋼板などの金属板から形成してあってもよい。
〈3〉 前記防音壁は、道路用以外に、鉄道用、一般の防音壁、室内のパーティションに利用することもできる。
〈4〉 第2外枠体5Bの表面部を、パンチングメタル以外に、金属メッシュやガラリ構造やルーバー形式の金属板で形成してあってもよい。
〈5〉前記吸音板30は、2枚以上設けてあればよく、
図5(a)~
図5(d)のような形状と組み合わせよりなるものであればよく、結局、パネル厚み方向に並設する夫々の吸音板同士は、互いに間隔を空けてあればよい。
【0025】
[実験例1]
図1~
図2に示す吸音パネル1Bにおいて、並設した吸音板30の組み合わせ夫々においてのエッジ効果抑制効果を、実験により確認した。
尚、現行品は、吸音板30が1枚だけ設けてあるもので、従来例に該当する。
図5(a)の吸音板30の組み合わせは、高さ460mmで、且つ、夫々内側面を上下方向の中間部から上ほど外側に傾斜させてカットした2枚の吸音板30を、互いに間隔を空けて並設してあり、パネル厚み方向の総幅は185mmである。
図5(b)の吸音板30の組み合わせは、本発明の第1実施形態と同様で、3枚の吸音板30を、互いに間隔を空けて並設し、3枚の吸音板30の内の両側の物は、高さ460mmで、且つ、夫々内側面を上下方向の中間部から上ほど外側に傾斜させてカットした物で、吸音板30の厚み方向の中間部の物の高さを、他よりも低く230mmの高さに形成してあり、パネル厚み方向の総幅は230mmである。
図5(c)の吸音板30の組み合わせは、高さが同じ(460mm)3枚の吸音板30を、互いに間隔を空けて並設し、3枚の吸音板30の内の両側の物は、夫々内側面を上下方向の中間部から上ほど外側に傾斜させてカットした物で、吸音板30の厚み方向の中間部の物は、上下同じ厚みに形成してあり、パネル厚み方向の総幅は230mmである。
図5(d)の吸音板30の組み合わせは、夫々上下同じ厚みの3枚の吸音板30を、互いに間隔を空けて並設し、吸音板30の厚み方向の中間部の物の高さを、他よりも低く230mmの高さに形成してあり、パネル厚み方向の総幅は230mmである。
図5(e)の吸音板30の組み合わせは、比較例のために、前記
図5(b)と同様の形状の吸音板30を、間隔を空けずに互いに接触させて立設させてあり、パネル厚み方向の総幅は175mmである。
【0026】
現行品及び
図5(a)~(e)の実験結果を、
図4の表に示す。
【0027】
上記
図4の表からは、次のことがわかる。
図5(a)~(e)に示す物と現行品との比較をすると、いずれも、
図3の領域A2において音が吸音パネルに挿入して吸収される挿入損失(dB)が大きくなり、防音効果が向上する。
そして、
図5(a)~(d)においては、
図3の領域A2及びD2共に現行品及び
図5(e)よりも前記挿入損失(dB)が上がり、防音性能が向上する。
このことから、上下方向に沿った複数枚の吸音板30を、パネル厚み方向に互いに間隔を空けて並設するのが効果的であることが明確である。
【0028】
尚、
図5(c)では、領域A2及び領域D2において現行品よりも挿入損失が増加するものの、
図3の領域F2において劣るために、3枚の吸音板30を並設した場合に、特に、吸音板30の厚み方向の中間部の物の高さを、他よりも低く形成して、隣接する複数枚の前記吸音板30同士の間隔の合計は、上に行くほど一層大に形成するほうが良いことがわかる。
【0029】
[実験例2]
図6に示すように、前記領域A2、D2、F2毎に、吸音板30の組み合わせ例に示す現行品、及び前記
図5の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)夫々の各1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)の変化に伴う挿入損失(dB)の変化を折れ線グラフとして示す。
【符号の説明】
【0030】
1A 遮音パネル
1B 吸音パネル
3A 第1吸音材
3B 第2吸音材
4A 第1吸音空間
4B 第2吸音空間
5A 第1外枠体
5B 第2外枠体
6 音導入孔
7 音源側表面部
8 背面部
30 吸音板