(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】走行経路生成システム、走行経路生成方法、及び走行経路生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240314BHJP
G05D 1/648 20240101ALI20240314BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/648
A01B69/00 303Q
(21)【出願番号】P 2020192959
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-02-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、「AI(人工知能)を活用した牧草生産の省力化・自動化技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】白藤 大貴
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184973(JP,A)
【文献】特開2017-211733(JP,A)
【文献】特開2020-043837(JP,A)
【文献】特開2020-018262(JP,A)
【文献】特開2019-136039(JP,A)
【文献】特開2017-158532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313735(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する走行経路生成システムであって、
前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する取得処理部と、
前記取得処理部により取得される前記設定情報に基づいて、
第1直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で
前進旋回する、前記
第1直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で
前進旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する生成処理部と、
を備える走行経路生成システム。
【請求項2】
前記作業機は、前記作業車両の旋回に伴って、前記作業車両の左右方向の第1中心軸と、前記作業機の左右方向の第2中心軸であって前記作業機の左右の車輪中心を通る中心軸に直交する第2中心軸との間に、前記作業車両の旋回角度に応じた角度が形成されるように前記作業車両に対して回転可能に接続されている、
請求項1に記載の走行経路生成システム。
【請求項3】
前記生成処理部は、さらに、前記取得処理部により取得される前記設定情報に基づいて、
第2直進経路と、前記第1旋回方向に前記第1旋回角度で
前進旋回する、前記
第2直進経路に続く第
3旋回経路と、前記第
3旋回経路に続く所定の直進距離を有する第
3直進経路と、前記第2旋回方向に前記第2旋回角度で
前進旋回する、前記第
3直進経路に続く第
4旋回経路とにより構成される第2走行経路を生成する、
請求項1
又は2に記載の走行経路生成システム。
【請求項4】
前記直進距離は、前記作業車両が作業を行う作業領域と、前記作業車両及び前記作業機の位置関係とに基づいて設定される、
請求項
3に記載の走行経路生成システム。
【請求項5】
前記作業車両及び前記作業機の位置関
係は、前記作業車両に対する前記作業機の右方向又は左方向へのオフセット距離、前記作業車両から前記作業機までの距離、前記作業機の作業幅、及び前記作業機の車輪の中心間距離の少なくともいずれかを含む、
請求項
4に記載の走行経路生成システム。
【請求項6】
前記第1走行経路及び前記第2走行経路は、前記走行領域において前記作業機を矩形状に
前進旋回させる旋回経路を含む、
請求項
3~
5のいずれかに記載の走行経路生成システム。
【請求項7】
前記作業機は、前記旋回経路において、前記作業機の前記第1旋回方向側の車輪を回転中心として
前進旋回する、
請求項
6に記載の走行経路生成システム。
【請求項8】
前記走行経路は、前記走行領域において前記作業車両を外側から内側に向けて走行させる走行経路であり、
前記第1走行経路は、前記走行領域における最外周の走行経路に対応し、前記第2走行経路は、前記走行領域における最外周よりも内側の走行経路に対応する、
請求項
3~
7のいずれかに記載の走行経路生成システム。
【請求項9】
前記第1旋回角度は135度であり、前記第2旋回角度は45度である、
請求項
3~
8のいずれかに記載の走行経路生成システム。
【請求項10】
現作業工程における前記第1旋回経路は、前記作業車両の後輪の車軸中心が、前作業工程の未作業領域における前記作業車両の進行方向の端部以降で開始する、
請求項1~
9のいずれかに記載の走行経路生成システム。
【請求項11】
一又は複数のプロセッサーが、所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する走行経路生成方法であって、
前記一又は複数のプロセッサーが、
前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得される前記設定情報に基づいて、
第1直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で
前進旋回する、前記
第1直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で
前進旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する生成ステップと、
を実行する走行経路生成方法。
【請求項12】
所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する走行経路生成プログラムであって、
前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得される前記設定情報に基づいて、
第1直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で
前進旋回する、前記
第1直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で
前進旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する生成ステップと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための走行経路生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自律走行経路を生成する走行経路生成システム、走行経路生成方法、及び走行経路生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め設定された自律走行経路に従って作業車両を自律走行させることが可能なシステムが知られている。例えば特許文献1には、測位ユニットを備え、設定された目標走行経路に沿って自動操舵される自動操舵機能と人為的に操舵する人為操舵機能とを有する自動操舵システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記作業車両には、当該作業車両に対して左右一方側にオフセットして作業機を取り付け、当該作業機を牽引しながら走行することにより当該作業機に所定の作業を行わせることが可能な作業車両がある。例えば、トラクタは、左右一方側にオフセットされたトレーラを牽引しながら圃場内を走行することにより草刈作業などを行う。
【0005】
前記作業車両に対して左右一方側にオフセットして作業機を牽引走行する構成では、旋回経路において現作業工程と前作業工程との間で未作業領域(刈り残し)が生じる可能性がある。例えば、作業車両が圃場内において外周から内周へ向かって渦巻状に走行する場合には、90度に旋回する旋回経路において、現作業工程と前作業工程との境界が一致せず、未作業領域が生じる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作業機を左右一方側にオフセットして牽引する作業車両において、作業機による未作業領域が発生し難い走行経路を生成することが可能な走行経路生成システム、走行経路生成方法、及び走行経路生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る走行経路生成システムは、所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成するシステムである。前記走行経路生成システムは、取得処理部と生成処理部とを備える。前記取得処理部は、前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する。前記生成処理部は、前記取得処理部により取得される前記設定情報に基づいて、直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で旋回する、前記直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する。
【0008】
本発明に係る走行経路生成方法は、一又は複数のプロセッサーが、所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する方法である。前記一又は複数のプロセッサーは取得ステップと生成ステップとを実行する。前記取得ステップは、前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する。前記生成ステップは、前記取得ステップにより取得される前記設定情報に基づいて、直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で旋回する、前記直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する。
【0009】
本発明に係る走行経路生成プログラムは、所定の走行領域において、作業機を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両を自律走行させるための走行経路を生成するプログラムである。前記走行経路生成プログラムは、取得ステップと生成ステップとを含む。前記取得ステップは、前記走行領域に関する情報と、前記作業車両に関する情報と、前記作業車両による作業に関する情報とを含む設定情報を取得する。前記生成ステップは、前記取得ステップにより取得される前記設定情報に基づいて、直進経路と、第1旋回方向に第1旋回角度で旋回する、前記直進経路に続く第1旋回経路と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度で旋回する、前記第1旋回経路に続く第2旋回経路とにより構成される第1走行経路を生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業機を左右一方側にオフセットして牽引する作業車両において、作業機による未作業領域が発生し難い走行経路を生成することが可能な走行経路生成システム、走行経路生成方法、及び走行経路生成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る走行経路生成システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来の作業車両により生じる未作業領域の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る作業車両及び作業機の位置関係を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態に係る作業車両が旋回した場合の作業車両及び作業機の位置関係を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態に係る作業車両が旋回した場合の作業車両及び作業機の位置関係を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施形態に係る作業車両が旋回した場合の作業車両及び作業機の位置関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回経路を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回経路の詳細を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る作業機の車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る走行経路生成システムによって実行される走行経路生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11D】
図11Dは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11E】
図11Eは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11F】
図11Fは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11G】
図11Gは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11H】
図11Hは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【
図11I】
図11Iは、本発明の実施形態に係るトラクタの旋回半径に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る走行経路生成システム1は、操作端末2と、作業車両4とを含んでいる。操作端末2及び作業車両4は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、操作端末2及び作業車両4は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LAN(インターネット)を介して通信可能である。
【0014】
本実施形態では、作業車両4がトラクタである場合を例に挙げて説明する。また、作業車両4は、作業車両4に対して左右一方側にずらして(オフセットして)作業機43を取り付け、作業機43を牽引しながら走行することにより作業機43に所定の作業を行わせることが可能な構成を有している。走行経路生成システム1は、所定の走行領域(圃場)において、作業機43を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両4を自律走行させるための走行経路を生成するシステムである。本実施形態では、作業機43が圃場内を草刈作業するトレーラである場合を例に挙げて説明する。
【0015】
作業車両4は、圃場F(
図3参照)内を走行経路に沿って自律走行(自動走行)可能な構成を備える、所謂ロボットトラクタである。例えば、作業車両4は、測位システム(不図示)により算出される作業車両4の現在位置の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された走行経路に沿って自律走行することが可能である。また、作業車両4は、前記走行経路に従って、圃場F内において外周側から内周側へ向かって渦巻状に走行する(
図3参照)。なお、
図3に示すように、作業車両10は、内周側の所定の領域F1を走行する場合に、作業機43が枕地以外の2辺(
図3の上下方向)で外側から内側に向かって往復作業を行う。この場合に、枕地の直進長さが限界を超えると両側(
図3の左右)において刈取作業ができなくなるため、片側一方向(走行経路R2)のみ刈取作業を行い、他方側は既作業領域(走行経路R1)を繰り返し走行する。作業車両10の走行経路は
図3に示す走行経路に限定されない。圃場Fは、本発明の走行領域の一例である。
【0016】
ここで、従来の技術では、前記走行経路のうち旋回経路において、現作業工程と前作業工程との間で未作業領域が生じる可能性がある。
図4には、従来のシステムに対応する走行経路に従って作業車両4が自律走行した場合の走行軌跡を示している。なお、
図4は、現作業工程の作業中の作業車両4を示している。
図4に示すように、作業車両4が前作業工程で外周側を走行した後に、現作業工程において内周側を走行すると、90度に旋回する旋回経路において、現作業工程と前作業工程との境界が一致せず、未作業領域A1が生じてしまう。このため、作業効率が低下する問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る走行経路生成システム1によれば、作業機43による未作業領域A1が発生し難い走行経路を生成することが可能である。走行経路生成システム1は、本発明の走行経路生成システムの一例である。以下、走行経路生成システム1の具体的な構成を説明する。
【0017】
[作業車両4]
図1及び
図2に示されるように、作業車両4は、車両制御装置41、走行装置42、作業機43、及び測位装置44などを備える。車両制御装置41は、走行装置42、作業機43、及び測位装置44などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置41及び測位装置44は、無線通信可能であってもよい。
【0018】
車両制御装置41は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。そして、車両制御装置41は、作業車両4に対する各種のユーザー操作に応じて当該作業車両4の動作を制御する。また、車両制御装置41は、後述の測位装置44により算出される作業車両4の現在位置と、予め生成される走行経路とに基づいて、当該作業車両4の自律走行処理を実行する。前記走行経路は、作業車両4又は操作端末2に記憶される。
【0019】
走行装置42は、作業車両4を走行させる駆動部である。
図2に示されるように、走行装置42は、エンジン421、前輪422、後輪423、トランスミッション424、フロントアクスル425、リアアクスル426、ハンドル427などを備える。なお、前輪422及び後輪423は、作業車両4の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置42は、前輪422及び後輪423を備えるホイールタイプに限らず、作業車両4の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0020】
エンジン421は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置42は、エンジン421と共に、又はエンジン421に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン421には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両4に設けられた車両制御装置41等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両4に設けられている車両制御装置41及び測位装置44等の電気部品は、エンジン421の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0021】
エンジン421の駆動力は、トランスミッション424及びフロントアクスル425を介して前輪422に伝達され、トランスミッション424及びリアアクスル426を介して後輪423に伝達される。また、エンジン421の駆動力は、PTO軸411を介して作業機43にも伝達される。作業車両4が自律走行を行う場合、走行装置42は、車両制御装置41の命令に従って走行動作を行う。
【0022】
作業機43は、例えば草刈機、耕耘機、プラウ、施肥機、又は播種機などであって、作業車両4に着脱可能である。これにより、作業車両4は、作業機43各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。本実施形態では、作業機43は草刈機である場合を例に挙げて説明する。
【0023】
作業機43は、作業車両4において、不図示の昇降機構により昇降可能に支持されてもよい。車両制御装置41は、前記昇降機構を制御して作業機43を昇降させることが可能である。例えば、車両制御装置41は、作業車両4が圃場Fの作業対象領域において前進する場合に作業機43を下降させ、作業車両4が後進する場合には作業機43を上昇させる。
【0024】
ハンドル427は、ユーザー(オペレータ)又は車両制御装置41によって操作される操作部である。例えば走行装置42では、車両制御装置41によるハンドル427の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪422の角度が変更され、作業車両4の進行方向が変更される。
【0025】
また、走行装置42は、ハンドル427の他に、車両制御装置41によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置42では、車両制御装置41による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション424のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両4の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置41は、前記アクセルを操作してエンジン421の回転数を制御する。また、車両制御装置41は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪422及び後輪423の回転を制動する。
【0026】
測位装置44は、制御部441、記憶部442、通信部443、及び測位用アンテナ444などを備える通信機器である。例えば、測位装置44は、
図2に示されるように、オペレータが搭乗するキャビン48の上部に設けられている。また、測位装置44の設置場所はキャビン48に限らない。さらに、測位装置44の制御部441、記憶部442、通信部443、及び測位用アンテナ444は、作業車両4において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置44には前記バッテリーが接続されており、当該測位装置44は、エンジン421の停止中も稼働可能である。また、測位装置44として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0027】
制御部441は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部442は、制御部441に測位処理を実行させるためのプログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部442に記憶される。なお、前記プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置44にダウンロードされて記憶部442に記憶されてもよい。
【0028】
通信部443は、測位装置44を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0029】
測位用アンテナ444は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0030】
制御部441は、測位用アンテナ444が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両4の位置を算出する。例えば、作業車両4が圃場F内を自律走行する場合に、測位用アンテナ444が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、制御部441は、測位用アンテナ444と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両4の位置(緯度及び経度)を算出する。また、制御部441は、作業車両に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両4の位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式、以下「RTK方式」という。)による測位を行ってもよい。このように、作業車両4は、RTK方式による測位情報を利用して自律走行を行う。
【0031】
図5は、作業車両4と作業機43との取付位置の関係を示す図である。
図5に示すように、作業機43は、草刈作業を行う回転刃431を備えている。作業機43は、回転刃431を作業車両4に対して左方向又は右方向にオフセットさせた状態で草刈作業を行うことが可能なオフセット型作業機(オフセット型作草刈機)として構成されている。
図5には、回転刃431を備える作業機43が作業車両4に対して進行方向(前進方向)右側にオフセットした状態が示されている。なお、作業機43は油圧シリンダ(オフセットアクチュエータ)を備えており、この油圧シリンダを駆動することにより、回転刃431を、
図5とは反対側(進行方向左側)にオフセットさせたり、作業車両4の真後ろに移動させたりすることが可能であってもよい。
【0032】
図5において、符号C1は作業車両4の左右方向の中心軸を示し、符号P1は測位用アンテナ444から進行方向の反対側(後進方向)に距離L2だけオフセットした点を示し、符号P2は点P1から後進方向に距離L3だけオフセットした点(ヒッチポイント)であって、ヒッチバー411のジョイント位置を示している。また、符号L1は、作業車両4の中心軸C1から作業機43の中心軸C4までの水平距離、すなわち作業車両4に対する作業機43のオフセット距離を示している。
【0033】
また、符号C2は作業機43の車輪中心軸を示し、符号L4はヒッチポイントP2から中心軸C2までの距離(ホイールベース)を示している。符号L5は、回転刃431の外形幅を示し、草刈作業の作業幅に相当する。符号L6は、作業機43の左車輪432と右車輪433との中心間距離(トレッド)を示している。
【0034】
ここで、符号C0は、中心軸C2に直交する軸であり、
図5では中心軸C1と一致する。作業車両4が旋回した場合には、中心軸C1は中心軸C0に対して旋回動作に応じた角度(ステア角)が形成される(
図6A~
図6C参照)。ホイールベースL4は、中心軸C0上におけるヒッチポイントP2から中心軸C2までの一定の垂直距離を示す。
【0035】
作業車両4が直進の走行経路を走行する場合、作業車両4と作業機43とは
図5に示す位置関係を維持して走行する。一方、作業機43が旋回経路を走行する場合、作業車両4と作業機43とは
図6に示す位置関係に変化する。
図6Aは、作業機43であるトレーラのステア角がd1の場合の作業車両4と作業機43との位置関係を示し、
図6Bは、トレーラのステア角がd2(但し、d2>d1)の場合の作業車両4と作業機43との位置関係を示し、
図6Cは、トレーラのステア角がd3(但し、d3>d2)の場合の作業車両4と作業機43との位置関係を示している。
【0036】
本実施形態時に係る作業車両4は、
図7Aに示すように、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1において、第1旋回方向(例えば右方向)に第1旋回角度d1(例えば135度)で旋回(第1旋回)し、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2において、第2旋回方向(例えば左方向)に第2旋回角度d2(例えば45度)で旋回(第2旋回)し、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsを直進する。すなわち、本実施形態に係る走行経路は、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとにより構成されている。なお、
図7Aに示す実線は、作業車両4(トラクタ)の走行経路を示している。以降の図も同様である。
【0037】
ここで、第1旋回角度d1は、135度に限定されず、135度を基準として所定範囲内の角度であればよい。また第2旋回角度d2は、45度に限定されず、45度を基準として所定範囲内の角度であればよい。すなわち、第1旋回角度d1は略135度であり、第2旋回角度d2は略45度であることが好ましい。第1旋回角度d1は本発明の第1旋回角度の一例であり、第2旋回角度d2は本発明の第2旋回角度の一例である。
【0038】
図7Bには、圃場F内の走行経路の一例を示している。
図7Bに示すように、外周経路Raでは、作業機43が4辺で刈取作業を行う。これにより外周経路Raでは、全周で作業が可能である。なお、オペレータが、操作端末2により、作業工程間のオーバーラップ量を設定登録することが可能であってもよい。また、オペレータが、操作端末2により、外周経路Raのうち4辺で刈取作業を行う経路数と、2辺で刈取作業を行う経路数とを設定登録することが可能であってもよい。
【0039】
一方、内周経路Rbでは、
図7Bに示すように、作業機43が枕地以外の2辺で外側から内側に向かって往復作業を行う。また、枕地の直進長さが限界を超えると両側において刈取作業ができなくなるため、片側一方向のみ刈取作業を行い、他方側は既作業領域を走行する。その際はトレーラの車輪走行軌跡が矩形状である必要がないため、旋回方法については規定しなくてもよい。
【0040】
なお、外周経路Raの走行と内周経路Rbの走行との切り替えは、以下の2種類の方法から選択可能であってもよい。第1の方法は、外周経路Raの作成に必要な直進長さが得られなくなるまで外周走行を続ける方法である。この場合は左右片側一方向のみが内周経路Rbとなる。第2の方法は、枕地の作業を行うために必要な枕地の直進長さが得られなくなるまで外周走行を続ける方法である。この場合は限界地点まで左右両側端から内側へ向かう往復作業を行う。
【0041】
ところで、
図7Aに示す走行経路において、最外周よりも内側の旋回経路では、第1旋回経路Rc1と第2旋回経路Rc2との間に直進経路Rc3を含むことが望ましい。これにより、角部の刈り残し(未作業領域A1)をより低減することができる。
図8には、直進経路Rc3を含む旋回経路の一例を示している。
図8において、点線で示す走行経路は最外周の走行経路(最外周走行経路)を示し、実線で示す走行経路は最外周よりも内側の内側経路を示している。作業車両4は、前記内側経路において、
図8の実線で示すように、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1において、第1旋回方向(例えば右方向)に第1旋回角度d1(例えば135度)で旋回(第1旋回)し、第1旋回経路Rc1に続く直進距離E1の直進経路Rc3を直進し、直進経路Rc3に続く第2旋回経路Rc2において、第2旋回方向(例えば左方向)に第2旋回角度d2(例えば45度)で旋回(第2旋回)し、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsを直進する。直進経路Rc3は、本発明の第1直進経路の一例である。
【0042】
すなわち、本実施形態に係る走行経路は、最外周経路において、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとを含んで構成される。また、本実施形態に係る走行経路は、内側経路において、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回経路Rc1に続く所定の直進距離E1を有する直進経路Rc3と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、直進経路Rc3に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとを含んで構成される。
【0043】
また、本実施形態では、
図8に示すように、最外周経路よりも内側の内側経路では、作業車両4(トラクタ)の後輪423の車軸中心C3が、前作業工程の未作業領域A2における作業車両4の進行方向の端部(
図8では上端部H1)を超えたことを条件として、旋回動作を開始する。例えば、作業車両4は、車軸中心C3が上端部H1を超えた時点で第1旋回方向(例えば右方向)に第1旋回角度d1で旋回する第1旋回を開始する。すなわち、現作業工程における第1旋回経路Rc1は、作業車両4の後輪423の車軸中心C3が、前作業工程の未作業領域A2における作業車両4の進行方向の端部以降で開始することが望ましい。
【0044】
さらに、本実施形態では、前記内側経路の旋回経路に含まれる直進経路Rc3の直進距離E1は、未作業領域A2と、作業車両4及び作業機43の位置関係とに基づいて設定される。なお、未作業領域A2は、走行経路を生成する走行経路生成処理において周知の技術により算出可能である。また、作業車両4及び作業機43の位置関係には、例えば
図5に示す、オフセット距離L1、オフセット距離L3、ホイールベースL4、作業幅L5、及び作業機43のトレッドL6の少なくともいずれかが含まれる。また、前記走行経路は、前作業工程の作業幅と現作業工程の作業幅とが所定距離(例えば30cm)だけ重複するように設定される。なお、前記所定距離は、作業幅L5の1/3以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る走行経路によれば、特に旋回経路における角部の刈り残し(
図4の未作業領域A1)を防ぐことができる。例えば
図9には、作業機43(トレーラ)の車輪432,433の走行軌跡の一例を示している。
図9において、点線は左車輪432の走行軌跡を示し、実線は右車輪433の走行軌跡を示している。右車輪433の走行軌跡によれば、角部(点線囲み部)において矩形状に方向転換していることが分かる。なお、右車輪433は、角部において、前後方向に移動しながら方向転換していることが分かる。これにより、作業車両4は、右車輪433を回転中心としたピボットターン(信地旋回)を行って、矩形状に作業を行うことが可能になる。ここで、
図6A~
図6Cには、作業車両4の第1旋回角度d1に対応する作業機43の旋回中心S1の位置を示している。
図6A~
図6Cに示すように、第1旋回角度d1が大きくなる程、旋回中心S1がオフセット方向とは反対方向(中心軸C0側)に移動することが分かる。作業車両10及び作業機43の旋回特性により、例えば旋回中心S1が両車輪432、433の間(トレッドL6間)に位置する場合に、作業機43がピボットターンを行うことが可能になる。
【0046】
作業車両4が走行する前記走行経路は、例えば操作端末2により生成される。作業車両4は、操作端末2から前記走行経路を取得して、当該走行経路に従って圃場F内を走行しながら作業機43による作業を行う。
【0047】
[操作端末2]
図1に示されるように、操作端末2は、制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末2は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0048】
通信部24は、操作端末2を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両4などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0049】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータ(ユーザー)は、表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両4に対する自律走行指示を行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両4から離れた場所において、操作端末2に表示される走行軌跡により、圃場F内を走行経路R0に従って自律走行する作業車両4の走行状態を把握することが可能である。
【0050】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、制御部21に後述の走行経路生成処理(
図10参照)を実行させるための走行経路生成プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記走行経路生成プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、操作端末2が備えるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記走行経路生成プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末2にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。また、記憶部22は、作業車両4から送信される作業情報(刈取量、収穫量など)を記憶する。
【0051】
また、記憶部22には、作業車両4の自律走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両4に関する各種情報の設定処理、作業車両4の走行経路の生成処理、作業車両4に対する自律走行指示などを行う。
【0052】
図1に示されるように、本実施形態に係る操作端末2の制御部21は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212、作業設定処理部213、生成処理部214、出力処理部215などの各種の処理部を含む。なお、制御部21は、前記CPUで前記走行経路生成プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記走行経路生成プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0053】
車両設定処理部211は、作業車両4(トラクタ)に関する情報(以下、作業車両情報という。)を設定する。車両設定処理部211は、作業車両4の機種、作業車両4において測位用アンテナ444が取り付けられている位置、作業機43の種類、作業機43のサイズ及び形状、作業機43の作業車両4に対する位置、作業車両4の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両4の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末2において登録する操作を行うことにより当該情報を記憶する。
【0054】
車両設定処理部211は、作業機43のサイズとして、回転刃431によって作業が行われる左右方向の有効幅(
図5に示す作業幅L5)を設定することができる。また、車両設定処理部211は、作業機43がオフセット型作業機である場合に、作業機43の作業車両4に対する位置として、回転刃431を作業車両4に対してオフセットさせる方向(左方向又は右方向)と、オフセット作業を行う場合の左右方向のオフセット距離L1(
図5参照)とを設定することができる。
【0055】
オフセット距離L1は、
図5に示すように、作業車両4に適宜設定された基準点P2(ヒッチポイント)と、作業機43の中心軸C4との間の左右方向の距離として定義することができる。基準点P2は、作業車両4の位置を代表する点として任意に定めることができるが、当該基準点P2は作業車両4の左右方向中央に位置するように設定することが好ましい。作業機43の中心軸C4は、回転刃431の左右方向中央に位置するように設定することが好ましい。なお、作業車両4に対する作業機43の連結位置が作業車両4の左右方向中央でない場合、基準点P2の代わりに当該連結位置(複数位置で連結されている場合は連結位置中心)を基準点として、当該基準点と中心軸C4との間の左右方向の距離をオフセット距離L1として定義してもよい。また、測位用アンテナ444の取付位置は、作業車両4の基準点P2と一致していても良いし一致しなくても良い。
【0056】
圃場設定処理部212は、圃場F(本発明の走行領域の一例)に関する情報(以下、圃場情報という。)を設定する。圃場設定処理部212は、圃場Fの位置及び形状、自律走行させたい開始位置及び終了位置、作業方向等の情報について、ユーザー端末3において登録する操作を行うことにより当該情報を記憶する。
【0057】
なお、作業方向とは、圃場Fから枕地、非耕作地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、作業機43で作業を行いながら作業車両4を走行させる方向を意味する。
【0058】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両4に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ444の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。ただし、圃場Fの位置及び形状は、操作端末2に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末2を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両4を走行させることが可能な領域(走行領域という。)である。
【0059】
作業設定処理部213は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。作業設定処理部213は、作業情報として、作業車両4(無人トラクタ)と有人の作業車両4の協調作業の有無、作業車両4が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
【0060】
車両設定処理部211、圃場設定処理部212、及び作業設定処理部213は、本発明の取得処理部の一例である。すなわち、本発明の取得処理部は、前記圃場情報と前記作業車両情報と前記作業情報とを含む設定情報を取得する。
【0061】
生成処理部214は、前記設定情報に基づいて、作業車両4を自律走行させる経路である走行経路R0を生成する。なお、走行経路R0は、圃場Fにおいて作業車両4を外側から内側に向けて渦巻状に走行させる走行経路である。生成処理部214は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212及び作業設定処理部213で設定された前記設定情報に基づいて、作業車両4の走行経路R0を生成して記憶することができる。
【0062】
走行経路R0は、最外周の走行経路と、最外周よりも内側の走行経路とにより構成される。具体的には、
図8に示すように、最外周の走行経路R0は、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとにより構成される。また、最外周よりも内側の走行経路R0は、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回経路Rc1に続く所定の直進距離E1を有する直進経路Rc3と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、直進経路Rc3に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとにより構成される。最外周の走行経路R0は本発明の第1走行経路に相当し、最外周よりも内側の走行経路R0は本発明の第2走行経路に相当する。
【0063】
このように、生成処理部214は、最外周の走行経路R0と、最外周よりも内側の走行経路R0とを、互いに異なる走行経路に生成する。また、最外周の走行経路R0と、最外周よりも内側の走行経路R0とは、圃場Fにおいて作業機43を矩形状に旋回させる旋回経路を含む。これにより、作業機43は、前記旋回経路において、作業機43の前記第1旋回方向側の車輪(例えば右車輪433)を回転中心として旋回するピボットターンを行う。生成処理部214は、本発明の生成処理部の一例である。
【0064】
なお、生成処理部214が走行経路R0を生成する過程では、作業機43の作業幅L5、作業領域において互いに隣接する作業経路の間で作業機43の作業幅L5同士が一部重複することの可否(可能な場合は、重複幅の上限値)、非作業領域の大きさ及び形状(言い換えれば、枕地の幅及び非耕作地の幅)、作業車両4が非作業経路において旋回する場合にスキップする作業経路の数等が考慮される。また、無人トラクタと有人トラクタとで協調作業を行う場合は、走行経路R0の生成過程において、無人トラクタと有人トラクタとの位置関係、有人トラクタの作業機の幅等が考慮される。
【0065】
出力処理部215は、生成処理部214が生成した走行経路R0の情報を作業車両4に出力する。また、制御部21は、通信部24を介して制御信号を作業車両4に送信することにより、作業車両4に対して自律走行の開始及び停止等を指示することができる。また、作業車両4が自律走行している場合、制御部21は、作業車両4の状態(位置、走行速度等)を作業車両4から受信して操作端末2に表示させることができる。
【0066】
なお、操作端末2は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20、制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0067】
[走行経路生成処理]
以下、
図10を参照しつつ、操作端末2の制御部21によって実行される前記走行経路生成処理の一例について説明する。例えば、前記走行経路生成処理は、制御部21がオペレータから作業車両4の走行経路R0を生成する指示を受け付けた場合に制御部21によって開始される。
【0068】
なお、本願発明は、制御部21により前記走行経路生成処理の一部又は全部を実行する走行経路生成方法の発明、又は、当該走行経路生成方法の一部又は全部を制御部21に実行させるための走行経路生成プログラムの発明として捉えてもよい。また、前記走行経路生成処理は、一又は複数のプロセッサーが実行してもよい。
【0069】
ステップS1において、制御部21は、走行経路を生成するための各種の設定情報を取得する。具体的には、制御部21は、オペレータにより登録される前記作業車両情報、前記圃場情報、及び前記作業情報を取得する。ステップS1は、本発明の取得ステップの一例である。
【0070】
次に、ステップS2において、制御部21は、作業車両4の走行経路R0を生成する処理を開始する。
【0071】
具体的には、ステップS3において、制御部21は、最外周の走行経路R0を生成する。例えば制御部21は、直進経路Rsと、第1旋回方向(例えば右方向)に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向(例えば左方向)に第2旋回角度d2で旋回する、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとにより構成される走行経路R0(本発明の第1走行経路の一例)を生成する(
図8の点線で示す走行経路)。
【0072】
次に、ステップS4において、制御部21は、最外周よりも内側の走行経路R0を生成する。例えば制御部21は、直進経路Rsと、第1旋回方向(例えば右方向)に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、第1旋回経路Rc1に続く所定の直進距離E1を有する直進経路Rc3と、第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向(例えば左方向)に第2旋回角度d2で旋回する、直進経路Rc3に続く第2旋回経路Rc2と、第2旋回経路Rc2に続く直進経路Rsとにより構成される走行経路R0(本発明の第2走行経路の一例)を生成する(
図8の実践で示す走行経路)。ステップS3及びS4において、制御部21は、第1旋回角度d1を135度に設定し、第2旋回角度d2を45度に設定する。またステップS4において、制御部21は、未作業領域A2と、作業車両4及び作業機43の位置関係とに基づいて、直進経路Rc3の直進距離E1を設定する。ステップS2~S4は、本発明の生成ステップの一例である。
【0073】
次に、ステップS5において、制御部21は、生成した走行経路R0の情報を記憶部22に記憶し、かつ作業車両4に出力する。
【0074】
なお、前記走行経路生成処理において、制御部21は、圃場Fの外形を登録するステップと、圃場Fの外周領域(最外周)の走行経路(直進経路Rs、第1旋回角度d1、第1旋回経路Rc1、第2旋回角度d2、第2旋回経路Rc2、直進経路Rsなど)を計算するステップと、内周領域の走行経路(直進経路Rs、第1旋回角度d1、第1旋回経路Rc1、直進距離E1、直進経路Rc3、第2旋回角度d2、第2旋回経路Rc2、直進経路Rsなど)を計算するステップと、これら計算した外周及び内周の走行経路を出力するステップとを実行してもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る走行経路生成システム1は、所定の走行領域(圃場F)において、作業機43を右方向又は左方向にオフセットして牽引する作業車両4を自律走行させるための走行経路R0を生成するシステムである。走行経路生成システム1は、圃場Fに関する情報と、作業車両4に関する情報と、作業車両4による作業に関する情報とを含む設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて、直進経路Rsと、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する、直進経路Rsに続く第1旋回経路Rc1と、前記第1旋回方向とは反対方向の第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、第1旋回経路Rc1に続く第2旋回経路Rc2とにより構成される第1走行経路R0を生成する。これにより、
図9に示すように、作業機43が圃場Fの作業対象(作物など)を矩形状に刈り取って旋回することができるため、角部の刈り残し(
図4に示す未作業領域A1)の発生を防ぐことができる。
【0076】
また、走行経路生成システム1は、さらに、取得した前記設定情報に基づいて、直進経路Rsと、前記第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する第1旋回経路Rc1と、第1旋回経路Rc1に続く所定の直進距離E1を有する直進経路Rc3と、前記第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する、直進経路Rc3に続く第2旋回経路Rc2とにより構成される第2走行経路R0を生成する。第1走行経路R0は、最外周の走行経路に対応し、第2走行経路R0は、最外周よりも内側の走行経路に対応する。これにより、角部の刈り残し(
図4に示す未作業領域A1)の発生をより確実に防ぐことができる。
【0077】
[考察]
以下、上述の走行経路R0の生成方法について考察した結果を説明する。
【0078】
一般的に、作業機43(トレーラ)が旋回経路を走行する場合、旋回方向側の車輪(ここでは右車輪433)を回転中心としたピボットターン(信地旋回)を行うことが望ましい。
【0079】
トレーラがピボットターンを実現するためには、ホイールベースL4(
図5参照)に応じて作業車両4(トラクタ)の旋回半径が特定の値になっている必要がある。
図11A~
図11Iには、一例として、ホイールベースL4が5mの場合の、トラクタの旋回半径r1~r9に対応するトレーラの車輪の走行軌跡を示している。なお、r1は旋回半径が1mを示し、r2は旋回半径が2mを示す。各図において、点線はトレーラの右車輪433の走行軌跡を示し、実線はトレーラの左車輪432の走行軌跡を示している。
図11A~
図11Cに示すように、トラクタの旋回半径がr1~r3(1m~3m)の場合には、旋回半径が小さ過ぎるためにトレーラが後進していることが分かる。また、
図11G~
図11Iに示すように、トラクタの旋回半径がr7~r9(7m~9m)の場合には、旋回半径が大き過ぎるためにトレーラがピボットターンすることなく大回りに旋回していることが分かる。このため、トラクタの旋回半径が1m~3m、7m~9mの場合には、未作業領域A1が生じたり、作業効率が低下したりする問題が生じる。これに対して、
図11D~
図11Fに示すように、トラクタの旋回半径がr4~r6(4m~6m)の場合には、適切にピボットターンしていることが分かる。
【0080】
以上より、走行経路生成システム1は、最外周の走行経路では、直進経路Rs、第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する第1旋回経路Rc1、及び第2旋回方向に第2旋回角度d2で旋回する第2旋回経路Rc2により構成される第1走行経路R0を生成し、最外周よりも内側の走行経路では、直進経路Rs、第1旋回経路Rc1、直進距離E1を有する直進経路Rc3、及び第2旋回経路Rc2により構成される第2走行経路R0を生成する。また、走行経路生成システム1は、最外周よりも内側の走行経路では、トラクタの後輪423の車軸中心C3が上端部H1(
図8参照)を超えた時点で第1旋回方向に第1旋回角度d1で旋回する第1旋回経路Rc1を生成する。さらに、走行経路生成システム1は、トラクタの旋回半径を4m~6mに設定する(
図11D~
図11F参照)。これにより、適切なピボットターンを実現しつつ、角部の刈り残し(
図4に示す未作業領域A1)の発生を防ぐことができる。
【0081】
また、
図6A~
図6Cには、トラクタの第1旋回角度d1に対応するトレーラの旋回中心S1の位置を示している。
図6A~
図6Cに示すように、第1旋回角度d1が大きくなる程、旋回中心S1がオフセット方向とは反対方向に移動することが分かる。
【0082】
これらのことから、トレーラがピボットターンを実現するためには、旋回中心S1が両車輪432、433の間(トレッドL6間)に位置することが条件となる。
【符号の説明】
【0083】
1 :走行経路生成システム
2 :操作端末
4 :作業車両
41 :車両制御装置
42 :走行装置
43 :作業機
44 :測位装置
211 :車両設定処理部
212 :圃場設定処理部
213 :作業設定処理部
214 :生成処理部
215 :出力処理部
Rs :直進経路
Rc1 :第1旋回経路
Rc2 :第2旋回経路
Rc3 :直進経路(第1直進経路)
d1 :第1旋回角度
d2 :第2旋回角度