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特許7454490硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物、硫黄系化合物吸着印刷物、積層体、硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法、積層体の製造方法および包装袋、包装容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物、硫黄系化合物吸着印刷物、積層体、硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法、積層体の製造方法および包装袋、包装容器
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20240314BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20240314BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240314BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/10
B32B27/20 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020213620
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099681
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】中舘 郁也
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-254765(JP,A)
【文献】特開2020-114637(JP,A)
【文献】特開2014-213530(JP,A)
【文献】特開2015-150836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、B32B、B65D65/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層この順に備える硫黄系化合物吸着印刷物において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、200質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物である(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする硫黄系化合物吸着印刷物
【請求項2】
基材と、該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を積層してなる積層体において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物である(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする積層体
【請求項3】
前記ラミネート層が、シーラント層またはシール層であることを特徴とする請求項2に記載の積層体
【請求項4】
前記ラミネート層が、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、熱ラミネート、押出ラミネート、共押出ラミネート、およびPEサンドイッチラミネートのうち少なくとも一つのラミネート層であることを特徴とする請求項2または3に記載の積層体。
【請求項5】
基材を準備する工程と、
該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程とを、この順に備える硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法において(ただし、前記基材を準備する工程と前記硫黄化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程との間に中間層を形成する工程が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物からなる(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法
【請求項6】
基材を準備する工程と、
該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程と、
前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を作成するラミネート工程または塗工工程とを、この順に備える積層体の製造方法において(ただし、前記基材を準備する工程と前記硫黄化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程との間に中間層を形成する工程が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物からなる(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする積層体の製造方法
【請求項7】
前記ラミネート工程が、シーラント層を形成するラミネート工程または前記塗工工程がシール層を形成する塗工工程であることを特徴とする請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記ラミネート工程が、ドライラミネート工程、ノンソルベントラミネート工程、熱ラミネート工程、押出ラミネート工程、共押出ラミネート工程、およびPEサンドイッチラミネート工程のうち少なくとも一つのラミネート層を形成するラミネート工程であることを特徴とする請求項6または7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
基材、グラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、かつシーラント層またはシール層とを必須とする包装袋において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、前記硫黄系化合物吸着層が、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つ樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)にて形成されたことを特徴とする包装袋
【請求項10】
基材、グラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、かつ押出ラミネート層とを必須とする包装容器において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、前記硫黄系化合物吸着層が、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つ樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)にて形成されたことを特徴とする包装容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類などの肉製品、卵製品、米飯類、米菓類のような硫黄化合物を含む内容物が加熱処理されるときに発生する不快な硫黄化合物臭を抑制するインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類などの肉製品、卵製品、米飯類および米菓類に含まれるタンパク質を構成するアミノ酸に占める含硫アミノ酸(シスチン、メチオニン、システイン、α-リポ酸など)は、これらをボイル処理またはレトルト処理をしたときや調理した(揚げた)りしたときに、不快な臭気を発生させる。この臭気は、上記タンパク質を構成するアミノ酸に占める含硫アミノ酸の加水分解によって発生する硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、三硫化メチル、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタンなどの硫黄系化合物に由来する。これらの臭気は、食品の味や風味に影響するため、種々抑制検討がされた。
【0003】
このような臭気の抑制のため、フィルムへの消臭成分の練り込みによる方法、消臭効果のある乾燥剤などを一緒に内包させる方法などあるが、誤飲や誤食のおそれや、コストアップ、食品によっては内包できないなど問題が多い。
【0004】
特許文献1には、酸素ガスバリア性材料の表面に亜鉛化合物を含むコーティング剤を塗布して乾燥させることにより、前記酸素ガスバリア性材料の表面に前記亜鉛化合物を含むコーティング層が設けられており、かつ、20℃、80%相対湿度(RH)で測定される酸素ガス透過度が3cm(STP)/m・24hr・atm以下である包装材料を得る工程、及び、前記内容物から発生するレトルト臭を吸収することができるように、前記亜鉛化合物を含むコーティング層を前記酸素ガスバリア性材料よりも前記内容物側に配置して前記内容物を包装する工程を含む、包装体の製造方法が提案されており、食品から発生するレトルト臭を吸収する機能を有しているものであり、レトルト臭を吸収する機能を有する材料として、亜鉛化合物を使用している。しかしながら、亜鉛化合物を含むコーティング剤は、コーティング装置を用いるコーティング方法で塗布するものであって、グラビア印刷機を用いたグラビア印刷方法で印刷したものではないため、コーティング剤の塗布工程が必要となり、煩雑である。また、コーティング剤の組成が不明であるため、このままグラビア印刷に適用できないおそれがあることに加え、印刷適性(耐ブロッキング性)が劣るおそれもあり、グラビア印刷に適用しようとするための検討がさらに必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-018551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、魚介類などの肉製品、卵製品、米飯類、米菓類のような硫黄化合物を含む内容物が加熱処理されるときに発生する不快な硫黄系化合物臭を抑制できることに加え、簡易な工程で印刷適性を有する印刷物を作製できる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸化亜鉛と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂と、溶剤とを含有する硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)基材と、該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層この順に備える硫黄系化合物吸着印刷物において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物である(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする硫黄系化合物吸着印刷物
(2)基材と、該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を積層してなる積層体において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物である(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする積層体
(3)前記ラミネート層が、シーラント層またはシール層であることを特徴とする(2)に記載の積層体
(4)前記ラミネート層が、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、熱ラミネート、押出ラミネート、共押出ラミネート、およびPEサンドイッチラミネートのうち少なくとも一つのラミネート層であることを特徴とする(2)または(3)に記載の積層体、
(5)基材を準備する工程と、
該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程とを、この順に備える硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法において(ただし、前記基材を準備する工程と前記硫黄化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程との間に中間層を形成する工程が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物からなる(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法
(6)基材を準備する工程と、
該基材の少なくとも一方にグラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程と、
前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を作成するラミネート工程または塗工工程とを、この順に備える積層体の製造方法において(ただし、前記基材を準備する工程と前記硫黄化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程との間に中間層を形成する工程が存在するものを除く)、
前記硫黄系化合物吸着層が、平均粒子径が、0.01~10μmである酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物からなる(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)ことを特徴とする積層体の製造方法
(7)前記ラミネート工程が、シーラント層を形成するラミネート工程または前記塗工工程がシール層を形成する塗工工程であることを特徴とする(6)に記載の積層体の製造方法、
(8)前記ラミネート工程が、ドライラミネート工程、ノンソルベントラミネート工程、熱ラミネート工程、押出ラミネート工程、共押出ラミネート工程、およびPEサンドイッチラミネート工程のうち少なくとも一つのラミネート層を形成するラミネート工程であることを特徴とする(6)または(7)に記載の積層体の製造方法、
(9)基材、グラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、かつシーラント層またはシール層とを必須とする包装袋において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、前記硫黄系化合物吸着層が、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つ樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)にて形成されたことを特徴とする包装袋
(10)基材、グラビア印刷法により塗工されて形成される0.1~5μmの膜厚の硫黄系化合物吸着層とをこの順に備え、かつ押出ラミネート層とを必須とする包装容器において(ただし、前記基材と前記硫黄化合物吸着層との間に中間層が存在するものを除く)、前記硫黄系化合物吸着層が、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物中に、酸化亜鉛(A)と熱可塑性樹脂(B)と溶剤(C)すべてのそれぞれの含有量の合計を100質量%としたときに、20~50質量%である酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つ樹脂(b1)を含む固形分換算で3~30質量%である熱可塑性樹脂(B)と、65~98質量%である水以外の溶剤(C)からなる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物(ただし、ポリカルボン酸系重合体を含むものは除く)にて形成されたことを特徴とする包装容器
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、魚介類などの肉製品、卵製品、米飯類、米菓類のような硫黄化合物を含む内容物が加熱処理されるときに発生する不快な硫黄系化合物臭を抑制できることに加え、簡易な工程で印刷適性を有する印刷物を作製できる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0011】
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれアクリルおよびメタクリル、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
【0012】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物(以下、単に「吸着インキ組成物」ともいう。)は、基材と、該基材の少なくとも一方に硫黄系化合物吸着層を備える硫黄系化合物吸着印刷物に用いられる硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物において、前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、酸化亜鉛(A)と、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)と、溶剤(C)からなることが好ましい。
【0013】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、酸化亜鉛(A)を含むことが好ましい。前記酸化亜鉛(A)は、亜鉛の毒性が低く、入手が容易で、亜鉛が臭気の原因となる硫化水素などの硫黄系化合物と反応して硫化亜鉛を生成する。生成する硫化亜鉛は、白色であり、透明基材などの外観にほとんど影響を与えないため、有用である。
【0014】
酸化亜鉛(A)は、粒状であることが好ましく、平均粒子径は、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましい。平均粒子径が0.01~10μmであることにより、硫黄系化合物の吸着の効果が維持できるとともに、経時で酸化亜鉛が沈降するおそれはない。平均粒子径が0.01μmより小さいと、分散性が劣り、平均粒子径が10μmより大きいと、透明性が劣る。ここでいう、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱法によるD50粒子径のことをいう。例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920((株)堀場製作所製)やMICROTRAC 9320-X100(Honeywell社製)などが挙げられる。
【0015】
酸化亜鉛(A)の吸着インキ組成物中の含有量は、1~70重量%であることが好ましく、5~50重量%であることがより好ましい。酸化亜鉛の含有量が、1重量%より少ないと、硫黄系化合物の吸着性が劣り、酸化亜鉛の含有量が70重量%より多いと、流動性が劣る。
【0016】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも一つの樹脂(b1)を含むことが好ましい。これらの樹脂の作製方法は、常法によるものであればよい。これらの樹脂は、一種類または二種類以上であってもよい。
市販品としては、LG-FK Rメジウム(ウレタン系)、PULPTECCメジウム(ポリアミド系)、LRC-LAMIメジウム(硝化綿系)、SYNA-Sメジウム(アクリル系)、NOPL-Lメジウム(塩素化ポリオレフィン系)、LAMREKメジウム(塩酢ビ系)(以上、東京インキ(株)製)などを用いることができる。
【0017】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、前記樹脂(b1)の他に、その他の熱可塑性樹脂(b2)を含んでもよい。例えば、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂、アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリ乳酸などが好ましい。これらの樹脂は、一種類または二種類以上であってもよい。
市販品としては、TPHメジウム、VESTAメジウム、LRC-NTメジウム、KCNTメジウム(以上、東京インキ(株)製)などを用いることができる。
【0018】
本発明の吸着インキ組成物中に、前記樹脂(b1)、およびその他の熱可塑性樹脂(b2)を合わせた熱可塑樹脂(B)の含有量は、固形分換算で、1~30重量%であることが好ましく、3~20重量%であることがより好ましい。熱可塑樹脂(B)の含有量が、1重量%より少ないと、吸着インキ組成物の製膜性が劣り、熱可塑樹脂(B)の含有量が30重量%より多いと、吸着インキ組成物の流動性が悪く、製造適性が劣る。
【0019】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができる。前記溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類混合して用いることができる。
吸着インキ組成物中に溶剤は65~98重量%の範囲内であることが好ましい。65重量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、インキ製造適性が劣り、98重量%を超えると、インキ膜厚が局部的に不均一になり、印刷面上に、不定形の濃淡(泳ぎ現象)が生じたり、粘度が低くなり、酸化亜鉛が沈降しやすくなるおそれがある。
【0020】
前記吸着インキ組成物には、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、吸着インキ組成物としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0021】
前記色材としては、顔料または染料あるいはその混合物を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パールなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、カーボンブラックなどの有機顔料、その他各種蛍光顔料、金属粉顔料、体質顔料などが挙げられる。これらの顔料は、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。染料としては、溶剤に溶解または分散するものが好ましく、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、耐久性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0022】
前記基材は、紙、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、印刷面にはアンカーコート層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。なかでも、PETフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、コーティングフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、共押出フィルムなどが好ましい。基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~300μmが好ましく、6~250μmがより好ましい。また、基材がポリエチレンフィルムなどヒートシール性を有するフィルムであることで、基材自体をシーラント層として機能させてもよい。
【0023】
前記紙基材としては、コート紙、非コート紙およびそれらにプラスチックフィルム、などを貼り合わせた紙基材から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。紙基材は、熱可塑性樹脂などをドライラミネート、ノンソルベントラミネートや押出ラミネートなどによる方法、接着剤などを介して貼り合せる方法などにより積層したものであってもよく、また、これらを適宜組み合わせたものであってもよい。また、ヒートシール性を付与した積層体も紙基材として使用できる。ヒートシール性を付与する方法としては、公知のシーラントフィルムの貼り合わせ、押出ラミネート加工による樹脂コーティング、ヒートシール剤やホットメルトの塗工や共押出によるヒートシール性樹脂加工などが挙げられ、これらの方法によってヒートシール性が付与された層をヒートシール層ともいう。紙基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~800μmが好ましく、6~600μmがより好ましい。
【0024】
本発明の硫黄系化合物吸着印刷物は、前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物が、基材の少なくとも一方の面に、インキ層を積層してなる硫黄系化合物吸着層を形成することが好ましい。インキ層の膜厚は、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~3μmであることがより好ましい。0.1μmより薄いと、吸着性が低下する。5μmより厚いと、耐ブロッキング性が劣る。
【0025】
前記硫黄系化合物吸着層は、基材の少なくとも一方の面に、インキ層を積層してなることが好ましい。前記硫黄系化合物吸着層は、グラビア印刷法により塗工されて形成されることが好ましい。特に、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷法により塗工されて形成されることがより好ましい。前記硫黄系化合物吸着層は、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物で積層してなるインキ層単独でもよいが、当該インキ層と他のグラビアインキ組成物で積層してなる他のインキ層とを含んでもよい。さらに、グラビア印刷法により塗工されて形成されるため、全ベタ印刷だけでなく、部分印刷や反転印刷が可能である。これらのインキ層は、最終的な包装態様によっては、これら硫黄系化合物吸着層を形成するための基材の配置位置が変わることもあり、これらインキ層と他のインキ層の形成順が変わることもある。すなわち、例えば、基材/インキ層/他のインキ層のように硫黄系化合物吸着層を形成した後、ドライラミネートなどで他の基材を積層(基材/インキ層/他のインキ層/DL/他の基材)する構成としてもよいし、基材/他のインキ層/インキ層(あるいはインキ層/他のインキ層など複数積層)のように硫黄系化合物吸着層を形成した後、ドライラミネートなどで他の基材を積層(基材/他のインキ層/インキ層/(他のインキ層など/)DL/他の基材)する構成としてもよい。また、反転機構を有する印刷機を使用することにより、多種の他のインキ層を有する構成の硫黄系化合物吸着印刷物を得ることができる。例えば、基材/インキ層/他のインキ層のように硫黄系化合物吸着層を形成した後、反転し、他のインキ層を形成した後、ドライラミネートなどで他の基材を積層(他の基材/DL/他のインキ層/基材/インキ層/他のインキ層/DL/他の基材)する構成としてもよい。
【0026】
本発明の硫黄系化合物吸着印刷物は、前記硫黄系化合物吸着層の他に、剛性、腰、ガスバリア性、保香性、防湿性、耐ピンホール性、デッドホール性、遮光性、直線カット性などの性能を付与または強化するための中間層を積層してもよい。なお、中間層を設ける場合、必ずしも基材に硫黄系化合物吸着層を施す必要はなく、中間層に硫黄系化合物吸着層を設けてもよい。ただし、ガスバリア性を付与するためのガスバリア層については、硫黄系化合物吸着層よりも被吸着物質の発生源側に設けないことが好ましい。
【0027】
前記中間層としては、プラスチックフィルム、シートならびにこれらの積層体などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。貼り合わせ面には密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。処理は両面処理が好ましい。
中間層としては、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であればよく、5~300μmの厚みが好ましく、6~250μmの厚みがより好ましい。
【0028】
本発明の積層体は、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物が、基材の少なくとも一方の面に、インキ層を積層してなる硫黄系化合物吸着層を形成し、前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を積層してなることが好ましい。インキ層の膜厚は、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~3μmであることがより好ましい。前記ラミネート層は、シーラント層またはシール層であることが好ましい。前記シーラント層は、例えば、ヒートシール性を付与した積層体や公知のシーラントフィルムの貼り合わせ、押出ラミネート法による樹脂コーティングなどによる層が挙げられ、前記シール層は、例えば、ヒートシール剤やホットメルト剤の塗工などにより形成される層が挙げられる。
【0029】
前記シーラント層としては、シール強度が十分確保できるものであれば、貼り合わせ方法は基材、用途、構成などに応じて適宜選択される。例えば、前記基材上の硫黄系化合物吸着層に接着剤を介した公知のシーラントフィルムとの貼り合わせ(ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法)、熱による貼り合わせ(熱ラミネート法)、押出ラミネート法による樹脂コーティング(押出ラミネート法、共押出ラミネート法、PEサンドイッチラミネート法)などが好ましく使用できる。これらの方法を一種類もしくは組み合わせて積層体を製造することができる。
シーラント層の厚みは、特に制限はないが、シーラントフィルムでは2~200μm、押出ラミネート法による樹脂コーティングでは1~100μmの厚みであることが好ましい。
【0030】
前記シーラントフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート、これらの共重合体などのポリオレフィンフィルムやその共押フィルムおよび着色フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール樹脂フィルムなどが挙げられ、延伸していても、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0031】
前記ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法などに接着剤を使用する場合は市販のものでよく、例えば、2液型もしくは1液型ウレタン系樹脂接着剤、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、水系ウレタン系、イソシアネート系、有機チタン系、デンプン系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤などが挙げられる。シーラント層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。接着剤の厚みは特に制限はないが、0.001~10μm程度の範囲が好ましく、0.01~5μmの範囲が特に好ましい。
【0032】
前記押出ラミネート法による樹脂コーティングに使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、一種類または二種類以上を用いてもよい。
【0033】
前記シール層としては、シール強度が十分確保できるものであれば、形成方法は基材、用途、構成などに応じて適宜選択される。例えば、ヒートシール剤やホットメルトの塗工などが好ましく使用できる。これらの方法を一種類もしくは組み合わせて積層体を製造することができる。シール層の厚みは、特に制限はないが、ホットメルト接着剤の塗工では1~50μm、ヒートシール剤の塗工では0.01~30μmの厚みであることが好ましい。
【0034】
ヒートシール剤の樹脂の例としては、例えば、塩化ビニリデン、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂を溶剤に溶解したタイプ、あるいはアクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、エチレン-ビニルアルコール系エマルジョン、ポリエチレン系エマルジョン、ポリプロピレン系エマルジョン、エチレンビニルアセテート系エマルジョンなど水中に分散させたものが挙げられる。
【0035】
また、前記ラミネート層が、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、熱ラミネート、押出ラミネート、共押出ラミネート、およびPEサンドイッチラミネートのうち少なくとも一つのラミネート層であることが好ましい。前記ラミネート層は、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、熱ラミネート法、押出ラミネート法による樹脂コーティング(押出ラミネート法、共押出ラミネート法、およびPEサンドイッチラミネート法)のうち少なくとも一つのラミネート方法により作製することができる。
【0036】
前記押出ラミネート法による樹脂コーティングに使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなど)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂(汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、発泡スチレン(PSP)、耐熱PSPなど)、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、一種類または二種類以上を用いてもよい。
【0037】
本発明の硫黄系化合物吸着印刷物は、包装用途、食品保存用途、レトルト用途、電子レンジ用途、農業用途、土木用途、漁業用途、自動車内外装用途、船舶用途、日用品用途、建材内外装用途、住設機器用途、医療・医療機器用途、医薬用途、家電品用途、家具類用途、文具類・事務用品用途、販売促進用途、商業用途、電機電子産業用途および産業資材用途などに供されることが好ましい。なかでも、包装用途に供されることがより好ましい。
【0038】
本発明の硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法は、基材を準備する工程と、該基材の少なくとも一方に、前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物を印刷してなる硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程と、を含むことが好ましい。前記硫黄系化合物吸着層の膜厚は、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~3μmであることがより好ましい。0.1μmより小さいと、硫黄系化合物の吸着性が低下する。5μmより大きいと、耐ブロッキング性が劣る。
【0039】
前記硫黄系化合物吸着印刷物の製造方法は、前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物を印刷してなる硫黄系化合物吸着層単独でもよいが、当該硫黄系化合物吸着層と他のグラビアインキ組成物を印刷してなる他の印刷層を作成するグラビア印刷工程を含んでもよく、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程により作成されることがより好ましい。さらに、反転機構を有するグラビア印刷機を用いてもよい。
【0040】
前記硫黄系化合物吸着層の他に、剛性、腰、ガスバリア性、保香性、防湿性、耐ピンホール性、デッドホール性、遮光性、直線カット性などの性能を付与または強化するための中間層を形成する工程を含んでもよい。
【0041】
本発明の積層体の製造方法は、基材を準備する工程と、該基材の少なくとも一方に、前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物を0.1~5μmの膜厚で印刷してなる硫黄系化合物吸着層を作成するグラビア印刷工程と、前記硫黄系化合物吸着層上または前記硫黄系化合物吸着層の反対面の基材上に、ラミネート層を作成するラミネート工程または塗工工程と、を含むことが好ましく、前記ラミネート工程がシーラント層を形成するラミネート工程または前記塗工工程がシール層を形成する塗工工程であることがより好ましい。また、前記ラミネート工程が、ドライラミネート工程、ノンソルベントラミネート工程、熱ラミネート工程、押出ラミネート工程、共押出ラミネート工程、およびPEサンドイッチラミネート工程のうち少なくとも一つのラミネート層を形成するラミネート工程であってもよい。
【0042】
前記シーラント層を形成するラミネート工程は、例えば、ヒートシール性を付与した積層体や公知のシーラントフィルムの貼り合わせ、押出ラミネート加工による樹脂コーティングなどによる工程が挙げられ、前記シール層を形成する塗工工程は、ヒートシール剤やホットメルト剤の塗工などによる工程であってもよい。
【0043】
本発明の包装袋は、基材、硫黄系化合物吸着層と、シーラント層またはシール層とを必須とする包装袋において、前記硫黄系化合物吸着層が前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物にて形成されたものであることが好ましい。
【0044】
前記包装袋としては、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、スタンディングパウチ、封筒貼り、ガゼット、溶断シールなどの周知の形態のいずれでもよい。
【0045】
本発明の包装容器は、基材、硫黄系化合物吸着層と、押出ラミネート層とを必須とする包装容器において、前記硫黄系化合物吸着層が前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物にて形成されたものであることが好ましい。
【0046】
前記包装容器としては、カップ、トレイ、ボトル、コンテナ、ボックス、ケース、番重、カバー、蓋材、キャップ、ラベル、インモールドカップなど包装用途に用いられる周知の形態のいずれでもよい。
【0047】
本発明の硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物は、酸化亜鉛、熱可塑性樹脂、色材、各種添加剤などを溶剤中に均一に溶解または分散することにより公知の方法で製造できる。溶解または分散は、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機を使用することができる。これらの装置は一種類または二種類以上組み合せて使用してもよい。吸着インキ組成物中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、取り除くことが好ましい。
【0048】
前記硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物の粘度は、印刷に支障のない範囲であれば、特に制限はない。グラビア印刷で使用されるインキ組成物の製造適性、取扱いなどを考慮すれば、25℃において10~1,000mPa・sであることが好ましい。10mPa・sより小さいと、粘度が低すぎて、酸化亜鉛が沈降しやすい傾向になり、1,000mPa・sより大きいと、流動性が悪く、インキ製造時に支障が出たり、容器への充填が困難となる。この場合、ブルックフィールド型粘度計やコーンプレート型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定することができる。
【0049】
前記吸着インキ組成物は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0050】
前記希釈溶剤は、前記吸着インキ組成物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、TA52溶剤(アルコール系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノンケトン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0051】
印刷時に、必要に応じて、吸着インキ組成物に、硬化剤を添加することもできる。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート(スタビオPDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などのポリイソシアネート系硬化剤が挙げられる。これらは、一種類または二種類以上混合して使用することができる。市販されているものとしては、24A-100、22A-75、TPA-100、TSA-100、TSS-100、TAE-100、TKA-100、P301-75E、E402-808、E405-70B、AE700-100、D101、D201、A201H(旭化成(株)製)、マイテックY260A(三菱ケミカル(株)製)、コロネート HX、コロネート HL、コロネート L(東ソー(株)製)、デスモデュール N75MPA/X(コベストロジャパン(株)製)、LG硬化剤C(東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【実施例
【0052】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は重量%を表す。
【0053】
[硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物の作製]
(実施例1)
LG-FK Rメジウム(固形分20%、東京インキ(株)製) 60部、酸化亜鉛(微粒子酸化亜鉛、固形分100%、D50平均粒子径0.025μm、テイカ(株)製) 20部、酢酸n-プロピル 15部、イソプロピルアルコール 5部、セラミックビーズ100部を仕込み、ペイントシェーカーにて、1時間分散させて、硫黄系化合物吸着用グラビアインキ組成物G1(略称:吸着インキG1)を作製した。同様に、表1の配合に従い、実施例2~9の吸着インキを作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
[硫黄系化合物吸着印刷物の作製]
(実施例10)
グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にベタ版を使用し、実施例1の吸着インキG1を希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルムのパイレンP-2161(略称:OPP、東洋紡(株)製)に、膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR1を得た。同様に、表2の通り、吸着インキならびに膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR10~PR14を得た。
【0056】
(実施例11)
さらに、基材を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのE-5102(略称:PET、東洋紡(株)製)に代えて、吸着インキG1を膜厚1.1μmで印刷し、吸着印刷物PR2を得た。
【0057】
(実施例12)
さらに、基材を、厚み15μmのナイロンフィルムのエンブレムON-RT(略称:NY、ユニチカ(株)製)に代えて、吸着インキG1を膜厚0.9μmで印刷し、吸着印刷物PR3を得た。
【0058】
(実施例13)
さらに、基材を、厚み12μmの蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのバリアロックス1011HGCR(略称:蒸着PET、東レフィルム加工(株)製)に代えて、吸着インキG1を膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR4を得た。
【0059】
(実施例14)
さらに、基材を、厚み40μmの無延伸直鎖低密度ポリエチレンフィルムのL-4102(略称:PE、東洋紡(株)製)に代えて、吸着インキG2を膜厚0.9μmで印刷し、吸着印刷物PR5を得た。同様に、表2の通り、膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR15~PR16を得た。
【0060】
(実施例15)
さらに、基材を、米坪50g/mのグラビア用紙の片艶晒クラフト紙(略称:紙、王子マテリア(株)製)に代えて、吸着インキG3を膜厚1.2μmで印刷し、吸着印刷物PR6を得た。同様に、表2の通り、膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR17~PR18を得た。
【0061】
(実施例16)
さらに、基材を、厚み18μmの無延伸ポリスチレンフィルムのスチロファンSPH(略称:CPS、大石産業(株)製)に代えて、吸着インキG4を膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR7を得た。同様に、表2の通り、膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR19~PR20を得た。
【0062】
(実施例17)
さらに、基材を、厚み25μmの無延伸ポリプロピレンフィルムのKT(略称:CPP、サン・トックス(株)製)に代えて、吸着インキG5を膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR8を得た。同様に、表2の通り、膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR21~PR22を得た。
【0063】
(実施例18)
さらに、基材を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのE-5102(略称:PET、東洋紡(株)製)に代えて、吸着インキG6を膜厚0.9μmで印刷し、吸着印刷物PR9を得た。同様に、表2の通り、膜厚を変更し、それぞれ吸着印刷物PR23~PR24を得た。
【0064】
(比較例1)
実施例1で用いたLG-FK Rメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルムのパイレンP-2161(略称:OPP、東洋紡(株)製)に、膜厚0.9μmで印刷し、吸着印刷物PR25を得た。
【0065】
(比較例2)
さらに、基材を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのE-5102(略称:PET、東洋紡(株)製)に代えて、比較例1と同様にして、膜厚1.1μmで印刷し、吸着印刷物PR26を得た。
【0066】
(比較例3)
さらに、基材を、厚み15μmのナイロンフィルムのエンブレムON-RT(略称:NY、ユニチカ(株)製)に代えて、比較例1と同様にして、膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR27を得た。
【0067】
(比較例4)
さらに、基材を、厚み12μmの蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのバリアロックス1011HGCR(略称:蒸着PET、東レフィルム加工(株)製)に代えて、比較例1と同様にして、膜厚1.1μmで印刷し、吸着印刷物PR28を得た。
【0068】
(比較例5)
さらに、基材を、厚み40μmの無延伸直鎖低密度ポリエチレンフィルムのL-4102(略称:PE、東洋紡(株)製)に代えて、実施例2で用いたPULPTECCメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、膜厚1.1μmで印刷し、吸着印刷物PR29を得た。
【0069】
(比較例6)
さらに、基材を、米坪50g/mのグラビア用紙の片艶晒クラフト紙(略称:紙、王子マテリア(株)製)に代えて、実施例3で用いたLRC-LAMIメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、膜厚1.1μmで印刷し、吸着印刷物PR30を得た。
【0070】
(比較例7)
さらに、基材を、厚み18μmの無延伸ポリスチレンフィルムのスチロファンSPH(略称:CPS、大石産業(株)製)に代えて、実施例4で用いたSYNA-Sメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR31を得た。
【0071】
(比較例8)
さらに、基材を、厚み25μmの無延伸ポリプロピレンフィルムのKT(略称:CPP、サン・トックス(株)製)に代えて、実施例5で用いたNOPL-Lメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、膜厚1.0μmで印刷し、吸着印刷物PR32を得た。
【0072】
(比較例9)
さらに、基材を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのE-5102(略称:PET、東洋紡(株)製)に代えて、実施例6で用いたLAMREKメジウムを希釈溶剤(MEK40部、酢酸プロピル40部、イソプロピルアルコール20部)にてザーンカップNo.3で粘度17秒に調整した後、膜厚0.9μmで印刷し、吸着印刷物PR33を得た。
【0073】
(比較例10)
実施例10と同様に、表3の通り、吸着インキG1を使用し、膜厚を0.05μmに変更し、吸着印刷物PR34を得た。
【0074】
(比較例11)
実施例10と同様に、表3の通り、吸着インキG1を使用し、膜厚を6.0μmに変更し、吸着印刷物PR35を得た。
【0075】
実施例10~33および比較例1~11の吸着印刷物について、耐ブロッキング性を評価し、表2および表3に示した。
【0076】
<耐ブロッキング性>
吸着印刷物を3cm×3cmの大きさに切り、印刷面と非印刷面とを重ね合わせて、50℃で24時間、500g/cmの荷重を掛けた後、印刷面と非印刷面の重ね合わせ部を剥離した時のインキ剥離状態を観察し、その際の剥離抵抗を評価した。インキ剥離がなく、剥離抵抗がないものが、耐ブロッキング性が良好と判断した。インキ剥離と剥離抵抗について、○:インキ剥離がなく、剥離抵抗もない、△:わずかにインキ剥離が認められ、剥離抵抗がある(実用上問題ない)、×:全体にわたってインキ剥離が認められ、剥離抵抗がかなりある、の3段階で評価した。
【0077】
[積層体の作製]
前記吸着印刷物PR1の吸着インキ層上に、タケラックA-969V/A-5(略称:DL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるパイレンP-1128(略称:CPP、東洋紡(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、PR1/DL/CPPの積層体LAM1を得た。
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR10~PR14、PR25およびPR34に代えて、積層体LAM11~LAM15、LAM26およびLAM36を得た。
【0078】
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR2に代えて、タケラックA-525/タケネートA-52(三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK93KM(略称:レトCPP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、PR2/DL/レトCPPの積層体LAM2を得た。
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR26に代えて、積層体LAM27を得た。
【0079】
同様に、吸着印刷物PR2の吸着インキ層上に、タケラックA-969V/A-5(略称:DL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み40μmの無延伸ポリエチレンフィルムであるリックスL-4102(略称:LLDPE、東洋紡(株)製)に代えて、40℃で24時間エージングを行って、PR2/DL/LLDPEの積層体LAM3を得た。
同様に、吸着印刷物PR2を吸着印刷物PR26に代えて、積層体LAM28を得た。
【0080】
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR3に代えて、タケラックA-969V/A-5(三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み40μmの無延伸ポリエチレンフィルムであるリックスL-4102(略称:LLDPE、東洋紡(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、PR3/DL/LLDPEの積層体LAM4を得た。
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR27に代えて、積層体LAM29を得た。
【0081】
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR4に代えて、タケラックA-525/タケネートA-52(三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK93KM(略称:レトCPP、東レフィルム加工(株)製)に代えて、40℃で24時間エージングを行って、PR4/DL/レトCPPの積層体LAM5を得た。
同様に、吸着印刷物PR1を吸着印刷物PR28に代えて、積層体LAM30を得た。
【0082】
前記吸着印刷物PR5は、基材のPE層がヒートシール層として機能するので、そのまま積層体LAM6とした。
同様に、吸着印刷物PR29を、そのまま積層体LAM31とした。
【0083】
前記吸着印刷物PR6の吸着インキ層の反対面上(紙上)に、コロナ処理をし、押出ラミネート機で、ライン速度100m/分にて、低密度ポリエチレン樹脂ペトロセン204(略称:LDPE40、東ソー(株)製)を溶融押出し、40μmで積層し、さらに、吸着インキ層上に、コロナ処理をし、低密度ポリエチレン樹脂ペトロセンLW01(略称:LDPE20、東ソー(株)製)を溶融押出し、20μmで積層して、LDPE20//PR6//LDPE40の積層体LAM7を得た。(「//」は、押出ラミネートを表わす。)
【0084】
同様に、吸着印刷物PR6を吸着印刷物PR17~PR18およびPR30に代えて、LDPE20//PR17//LDPE40の積層体LAM18~LAM19およびLAM32を得た。
【0085】
前記吸着印刷物PR7の吸着インキ層上に、押出ラミネート機で、ライン速度100m/分にて、耐衝撃性ポリスチレン樹脂E640N(略称:HIPS、東洋ポリスチレン(株)製)を溶融押出し、200μmで積層して、PR7//HIPSの積層体LAM8を得た。
【0086】
同様に、吸着印刷物PR7を吸着印刷物PR19~PR20およびPR31に代えて、PR19//HIPSの積層体LAM20~LAM21およびLAM33を得た。
【0087】
前記吸着印刷物PR8の吸着インキ層上に、押出ラミネート機で、ライン速度100m/分にて、ホモポリプロピレン樹脂E111G(略称:PP、MFR=0.5g/10min、(株)プライムポリマー製)を溶融押出し、600μmで積層して、PR8/LD//PPの積層体LAM9を得た。
【0088】
同様に、吸着印刷物PR8を吸着印刷物PR21~PR22およびPR32に代えて、PR21/LD//PPの積層体LAM22~LAM23およびLAM34を得た。
【0089】
前記吸着印刷物PR9の吸着インキ層上に、タケラックA-525/タケネートA-52(三井化学(株)製)A-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK93KM(略称:CPP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、PR9/DL/CPPの積層体LAM10を得た。
【0090】
同様に、吸着印刷物PR9を吸着印刷物PR23~PR24およびPR33に代えて、PR23/DL/CPPの積層体LAM24~LAM25およびLAM35を得た。
【0091】
積層体LAM1~LAM36について、積層体の吸着性を評価し、表2および表3に示した。なお、耐ブロッキング性の評価が、「×」の比較例11(PR35)については、吸着性の評価は行わなかった。表3中では、「-」と表記した。
【0092】
<積層体の吸着性>
積層体を10cm×10cmの大きさに切り取った試料片を、ゴム栓の付いたポリフッ化ビニル製の袋に入れ、ヒートシールにより、密封した後、ゴム栓から、空気3Lを封入し、さらに試験ガス(硫化水素)を、ガス濃度で20ppmとなるように添加し、これを室温で静置した。一定時間(10分、1時間、3時間、6時間、24時間)ごとにゴム栓より、検知管を用いて袋内のガス濃度を測定した。ガス濃度が定量下限値(1ppm)以下となった場合、その時点で測定は終了とした。また、試料片を入れないで、上記と同様の操作を行なったものを空試験とした。24時間後のガス濃度の測定値を比較し、吸着性を評価した。24時間前に定量下限値以下となり、測定を終了したものについても、24時間後のガス濃度とした。24時間後のガス濃度が低いほど、吸着性が良好と判断した。〇:24時間後のガス濃度が20ppm未満、×:24時間後のガス濃度が20ppmのまま、の2段階で評価した。
【0093】
<実包試験>
積層体LAM1のシーラント層またはシール層が最内面になるように重ね合わせ、190℃、1秒の条件にて、ヒートシールにより接着し、開口部を備える袋状の包装袋を得、この包装袋に、内容物として、ゆで卵を入れ、開口部を190℃、1秒の条件にて、ヒートシールにより封止した。このとき、比較対照として、積層体LAM26(積層体LAM1と同一基材の吸着インキ印刷なし)も同様にして包装袋を得、ゆで卵を入れ、封止した。なお、表3中では、「-」と表記した。
また、積層体LAM11~13(吸着インキ違い)、LAM14~15およびLAM36(積層体LAM1と同一基材で吸着インキ膜厚違い)も同様にして包装袋を得、ゆで卵を入れ、封止した。
これらを、50℃の恒温槽に入れ、24時間静置した後、開封し、硫黄臭を確認し、比較した。吸着インキを印刷していない比較対照よりも、硫黄臭が減少しているものを吸着性が良好と判断した。8人の実験者において、〇:8人全員が硫黄臭が減ったと感じた、×:1人でも同等の硫黄臭だと感じた、の2段階で評価した。
同様に、積層体LAM3とLAM28、LAM4とLAM29、LAM5とLAM30、LAM6とLAM31についても、同様の評価をした。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
表2および表3によると、実施例1~9の吸着インキ1~9は、実施例10~33の結果より吸着性が良好であることが明らかであった。また、吸着印刷物PR1~PR24は、耐ブロッキング性が良好であることが明らかであった。本発明の吸着インキを使用しない比較例1~9の結果より吸着性の効果が出ないことが明らかである。本発明の吸着インキを使用しても、印刷の膜厚が適正な範囲より小さい(PR34)と、吸着性の効果が出ないことが明らかであり、印刷の膜厚が大きいと、耐ブロッキング性が劣り、吸着性の効果はあるかもしれないが、印刷物(PR35)としては使用不可となることが明らかである。
また、本発明の吸着インキを使用した実包試験では、吸着インキを使用しないものよりも、硫黄臭が減少していることが明らかである。さらに、印刷の膜厚が適正な範囲より小さいと、吸着効果が出ないことが明らかである。
したがって、魚介類などの肉製品、卵製品、米飯類、米菓類のような硫黄化合物を含む内容物が加熱処理されるときに発生する不快な硫黄系化合物臭を抑制できることに加え、簡易な工程で印刷適性を有する印刷物および包装材を作製できる。