(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】天然起源の及び化粧品での使用のための、特に大気汚染に対するバリア効果を有する皮膜形成システム
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240314BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240314BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240314BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240314BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/10
A61Q5/00
A61Q13/00 100
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020557200
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 FR2019050920
(87)【国際公開番号】W WO2019202264
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】レオン メンティンク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ウィルス
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ピオ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-339108(JP,A)
【文献】特開2003-095908(JP,A)
【文献】特開平11-193228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
B01J 13/00-13/22
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・アセチル化デンプン又はヒドロキシプロピル化デンプンであるアルファ化デンプン、
・キサンタンガム、及び
・ヒドロキシエチルセルロース
で構成されている皮膜形成システム。
【請求項2】
前記アルファ化デンプンは、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、コメ、エンドウマメ、カラスムギ、レンズマメ、ソラマメ
(ファバ・ビーン)、ソラマメ
(ブロード・ビーン)、ヒヨコマメ又はこれらの組み合わせから得られることを特徴とする、請求項1に記載の皮膜形成システム。
【請求項3】
前記アルファ化デンプンは、アセチル化デンプンであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の皮膜形成システム。
【請求項4】
・乾燥重量で1~12部の前記アルファ化デンプン、
・乾燥重量で0.01~2部の前記キサンタンガム、及び
・乾燥重量で0.01~3部の前記ヒドロキシエチルセルロース
で構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膜形成システム。
【請求項5】
・乾燥重量で6~10部の前記アルファ化デンプン、
・乾燥重量で0.2~0.8部の前記キサンタンガム、及び
・乾燥重量で1~1.5部の前記ヒドロキシエチルセルロース
で構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の皮膜形成システム。
【請求項6】
a)水溶液を提供する段階、
b)前記水溶液を20℃~80℃の温度まで加熱する段階、
c)撹拌と共に、前記水溶液にアセチル化デンプン又はヒドロキシプロピル化デンプン
であるアルファ化デンプン、キサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースを導入して
、媒体を得る段階
を通して皮膜形成システムを製造する方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膜形成システムを1重量%~10重量%の濃度で含む化粧品組成物。
【請求項8】
皮膚のためのケア製品、目のためのメイクアップ製品、日焼け製品、身体衛生製品、ヘア製品又は香料であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、汚染物質の粒子に対するバリアとして作用する皮膜を皮膚又は毛髪の表面に作る効果を有する、特に大気汚染に対処するための薬剤として使用され得る天然起源の皮膜形成システムの局所塗布での使用に関する。
【0002】
本出願は、生理学的に許容される媒体中にこの皮膜形成システムを含む、バリア及び汚染に対処する効果を有する化粧品組成物にも関する。
【0003】
本特許出願は、下記の2つの現在の化粧品ニーズ:可能な限り天然である製品を提供すること及び環境からの攻撃、特に大気汚染から皮膚を保護することに対する解決策を提供する。
【背景技術】
【0004】
化粧品製品は、複数の成分の混合、組み合わせ又は成形により製造される製剤化された製品である。今日、公衆衛生、環境保護及び持続可能性の理由から、合成のものではなく、天然成分から化粧品を製剤化することが一層求められている。この理由から、水溶性バインダー、皮膜形成剤及びまた増粘剤として長期にわたり使用されてきたガム及び樹脂の形態の天然ポリマーがあらためて注目されている。
【0005】
環境汚染、より特に「スモッグ」という名称で知られている大気汚染は、重金属を含む可能性がある無機粒子及び無機繊維で構成されており、毒性又は発癌性の有機化合物、例えば多環式芳香族炭化水素化合物、フラン又はアルデヒドで覆われており、且つこの有機化合物により互いに連結されており、この有機化合物は、さらに病原性微生物と結合する可能性がある。そのような粒子は、1μm未満~最大500μmの範囲のサイズを有する。この粒子が小さいほど、この粒子の毒性が高くなる。L’Orealが実行した研究によれば、サイズが2.5μm~10μmの範囲の粒子が最も有害であり、表皮に深く浸透し、深刻な化学的損傷を引き起こす。
【0006】
大気汚染は、皮膚の老化を早める原因となる。この汚染により引き起こされる老化プロセスは、表皮脂質の過酸化、酸化ストレス、アポトーシス及びUVB放射線により引き起こされる細胞損傷に直結しており、毛穴の黒ずみの出現、皮膚の輝きの低下及び皮膚の敏感性の増加をもたらすことが実証されている。
【0007】
そのため、環境汚染から皮膚を保護することは、皮膚、爪又は毛髪への感覚的な観点から、快適な質感を維持しつつ、皮膚の外観及び健康を保護するための新規の化粧的な目標である。
【0008】
当初、業界は、汚染に対処するバリア効果を有するこの皮膜形成機能に関して、天然起源のポリマーに依存していた。しかしながら、後者は、特に色、臭気、純度、効率の一貫性及び粘度安定性の観点から、一定数の欠点を示した。この理由のため、それらは、合成ポリマー又は半合成ポリマーに置き換えられるようになった。
【0009】
この点において、化粧品で広く使用されるカルボマーが知られている。LUBRIZOLにより開発されたCarbopol(登録商標)レンジがこの一例である。特に、ポリエチレングリコールと、長アルキル鎖を有する酸エステルとのコポリマーである製品Carbopol(登録商標)Ultrez 10NFが挙げられ得、多種な化粧品処方に皮
膜形成特性を提供するために開発された。
【0010】
それにもかかわらず、環境保護、化石資源の保全、二酸化炭素排出量並びに消費者の安全性及び保護の観点から、化粧品業界は、現在、新たな課題に直面せざるを得ない。この観点から、その製剤が見直されており、且つその製品の製剤化のための天然起源の溶液の使用に可能な限り戻されている。信頼性があり且つ問題のない技術的解決策を提案するために、この分野における科学技術が進歩しており、処方者は、天然成分により、この処方者が製造する製品で有効な皮膜形成機能を達成することが可能になり、これは、環境及び消費者に非常に優しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
これに関して、本出願人企業は、少なくとも1種のアルファ化デンプン並びに植物起源のガム、微生物起源のガム及びセルロース誘導体から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖の混合物から出発して、特に大気汚染に対するバリア効果を有する新規の皮膜形成システムの開発に成功している。この組み合わせから出発して、本出願人企業は、特に化粧品製剤に十分に適している皮膜形成システムの開発に成功している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】白色度記述子の定義に用いた色のパレットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る皮膜形成システムは、乾燥後に表皮の表面で皮膜を形成する水性組成物の形態でヒトの表皮又は人体のあらゆる他の外側部分、例えば特に毛髪に塗布され得る。この皮膜は、二重の皮膚を形成する保護バリアであり、この保護バリアは、表皮系又は体毛系と大気汚染粒子との接触を予防するか又は減少させる。そのようにしてこの皮膜に覆われた表皮系又は体毛系が微粒子に暴露された場合、水ですすぐことにより、この皮膜上に堆積した微粒子の一部を除去することが可能になるが、皮膜がない場合、水ですすぐことによる除去は、不可能である。本発明の皮膜形成システムは、大気汚染粒子、特に微粒子に関して皮膚系及び体毛系の保護特性:この粒子への暴露の減少及びこの粒子の表皮系又は体毛系への付着の減少を有する皮膜を提供する。
【0014】
さらに、本発明に係る皮膜形成システムによる付着の減少は、ポリアクリレート等の石油化学起源の皮膜形成剤で形成された皮膜と比較して大きい。
【0015】
本発明に係る皮膜形成システムは、水性化粧品組成物、特に水溶液に皮膜形成機能を付与し、且つこの水性化粧品組成物を安定化させることを可能にし、これは、この皮膜形成システムの様々な成分間の完全に予想外の且つ相乗的な方法で達成される。この点において、この混合物の存在下で得られる粘度は、別々に得られた成分のそれぞれに関して観察したもの又はこれらの成分の2つのみの組み合わせに関して観察したものと比べてはるかに高い。
【0016】
本発明に係る皮膜形成システムは、化粧品組成物の過剰に厚い質感をもたらすことなく、この化粧品組成物中における十分な濃度でのこの皮膜形成システムの使用を可能にするように、且つ塗布後、最良の皮膜形成効果と、皮膚上又は毛髪上で可能な最も連続した皮膜とを得ることが可能になるように調整され得、且つ合理的に選択される粘度を有利に示す。
【0017】
さらに、本発明に係る皮膜形成システムにより、質感が目立って変化することなく、長期間にわたり粘度の非常に大きい安定性を得ることが可能になり、数ヶ月の持続期間にわ
たりこれが当てはまる。そのような結果は、特に有利であり、前記皮膜形成システムが使用されやすい化粧品に必要な高レベルの安定性を達成することを可能にする。
【0018】
感覚的な観点から、本発明に係る皮膜形成システムはまた、塗布後に特にソフトで心地よい感触を与えるクリーミーな質感を有する化粧品を得ることを可能にすることにより、特に有利な特性をもたらす。
【0019】
この理由のため、本発明に係る皮膜形成システムにより、汚染に対するバリア及び保護皮膜の両方を得ることが可能になるが、ケアクリーム又はメイクアップクリーム等のゲル又は乳濁液を安定化させることも可能になり、このゲル又は乳濁液の質感を調整することが可能になり、且つこのゲル又は乳濁液にべたべたせず、ねばねばせず、特にソフトでみずみずしい感触を有利に付与することにより、ゲル又は乳濁液の感覚特性を改善することが可能になる。
【0020】
従って、本発明の第1の主題は、
a)少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)下記:
i.植物起源のガム、優先的には藻類又は植物から得られるガム、
ii.微生物起源のガム、
iii.セルロース誘導体
から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖
で構成されている、優先的には化粧的使用のための皮膜形成システムからなる。
【0021】
第1の実施形態によれば、本発明の皮膜形成システムは、
・少なくとも1種のアルファ化デンプン、及び
・植物起源のガム及び微生物起源のガムから選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖
で構成されているシステムの形態を取り得る。
【0022】
第2の実施形態によれば、本発明の皮膜形成システムは、
・少なくとも1種のアルファ化デンプン、
・植物起源のガム及び微生物起源のガムから選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖、及び
・セルロース誘導体から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖
で構成されているシステムの形態を取り得る。
【0023】
本発明の第2の主題は、
a)水溶液を提供する段階、
b)この水溶液を20℃~80℃、優先的には20℃~50℃、より優先的には20℃~30℃の温度まで加熱する段階、
c)撹拌と共に、この水溶液に少なくとも1種のアルファ化デンプンと、植物起源のガム、微生物起源のガム又はセルロース誘導体から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖とを導入して、媒体を得る段階
を通して皮膜形成システムを調製する方法に関する。
【0024】
本発明の第3の主題は、本発明に係る皮膜形成システムを含む化粧品組成物に関する。
【0025】
本発明の第4及び最後の主題は、本発明に係る皮膜形成システムの化粧的使用に関する。より具体的には、本発明は、優先的にはヒトの表皮上での使用のための局所用組成物における、本発明に係る皮膜形成システムの使用であって、前記局所用組成物にバリア特性
、優先的には大気汚染に対処するものを提供するための使用に関する。
【0026】
本発明に係る皮膜形成システムは、総重量に対して少なくとも50重量%又はより良好には60重量%の少なくとも1種のアルファ化デンプンを含む少なくとも二成分系の混合物である。そのようなデンプンは、可変の割合でアミロース及びアミロペクチンを含み得る。特に好ましいのは、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、コメ、エンドウマメ、カラスムギ、レンズマメ、ソラマメ(faba bean)、ソラマメ(broad bean)、マメ、ヒヨコマメ又はこれらの組み合わせに由来するアルファ化デンプンである。好ましくは、このデンプンは、優先的には少なくとも95%mのアミロペクチンを含有する蝋様デンプン、即ちアミロペクチンに富み且つアミロースに乏しいデンプンである。この蝋様デンプンは、特に蝋様トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又はコメデンプンであり得る。
【0027】
アルファ化デンプンは、一般的に、デンプン顆粒の単純な膨張、部分的な分割、実際にはさらに完全な溶解をもたらしやすい熱的な、化学的な又は機械的な技術により調製され、その結果、このデンプン顆粒は、「冷」プロセスに従って、即ち45℃未満の水温、より良好には35℃未満の水温、さらにより良好には周囲温度の領域中での水への分散により、部分的又は完全に水に可溶になる。
【0028】
そのため、好ましくは、このアルファ化デンプンは、偏光下でマルタ十字を示す顆粒をもはや示さないか又は実質的にもはや示さない。
【0029】
アルファ化デンプンを得るための好ましい技術は、水性媒体中でデンプンの懸濁液を調理する/乾燥させる技術であり、例えば特に噴霧、ドラム上での調理又は押出しである。オートクレーブ又は熱交換器による間接加熱は、調理プロセスであって、同様に可能であり、及び無傷の、断片化された且つ膨張した顆粒からなる複雑なコロイド状分散体を生成する傾向がある調理プロセスである。そのようなデンプンの調製方法の例は、文献米国特許第3086890号明細書、同第3607394号明細書又は仏国特許第2822471号明細書に見出されるであろう。
【0030】
このアルファ化デンプンは、アルファ化の前後に変性されていても又は変性されていなくてもよく、即ち上記で説明されている調理/乾燥処理の適用後に変性されていても又は変性されていなくてもよい。
【0031】
未変性アルファ化デンプン、即ち化学的に又は酵素的にグラフトされていないデンプンを保持することが望ましい場合、このアルファ化デンプンは、有利には、蝋様デンプン、即ちアミロペクチンに富み且つアミロースに乏しいデンプンから選択されるであろう。この蝋様デンプンは、特に蝋様トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又はコメデンプンであり得、これらの粘度は、当業者に公知の技術に従う単純な加水分解により調整され得る。
【0032】
化粧品の製剤化において非常に安定でありつつ、非常に高い皮膜形成特性を有する利用可能なデンプンを有することが望ましい場合、好ましくは、変性アルファ化デンプンを選択することが可能になるであろう。変性の観点から、次いで、変性アルファ化デンプンは、物理的経路、物理化学的経路、化学的経路又は酵素的経路による1種又は複数の変性の問題であり得る。特に、変性アルファ化デンプンは、下記の処理又は互いに組み合わされたいくつかの処理であり得る:デキストリン化、酸性経路、酸化経路若しくは酵素的経路による加水分解、カルボキシメチル化、ヒドロキシプロピル化、ヒドロキシエチル化、アセチル化、オクテニルスクシニル化、カチオン化、架橋又はグラフト化。好ましくは、アルファ化デンプンは、変性デンプンから選択され、特にデキストリン化された、加水分解
された、カルボキシメチル化された、ヒドロキシプロピル化された、アセチル化された、オクテニルスクシニル化された又はカチオン性のアルファ化デンプンから選択される。より優先的には、アルファ化デンプンは、カルボキシメチル化されたアルファ化デンプン、ヒドロキシプロピル化されたアルファ化デンプン、アセチル化されたアルファ化デンプン、オクテニルスクシニル化されたアルファ化デンプンから選択される。
【0033】
しかしながら、デンプン顆粒が「冷」プロセスに従って水に可溶になるようにデンプン顆粒の単純な膨潤、部分的な分割、実際にはさらに完全な溶解を引き起こしやすい熱的技術又は機械的技術は、デンプンに適用される特定の物理化学的変性処理又は化学的変性処理が十分に集中的である場合に不要であることに留意すべきである。これは、本発明の意味内でのアルファ化デンプンとして、変性の単純な結果として、偏光下でマルタ十字を示す顆粒をもはや示さないか又は実質的にもはや示さない、単にデキストリン化されているか、加水分解されているか、カチオン化されているか、ヒドロキシプロピル化されているか又はカルボキシメチル化されている製品を使用し得るためである。
【0034】
特に、アルファ化デンプン、非イオン性アルファ化デンプン及び特にブランド名PREGEFLO(登録商標)、GLUCIDEX(登録商標)、STABILYS(登録商標)又はTACKIDEX(登録商標)で本出願人企業により販売されている範囲のものから選択することが好ましい。最も好ましいそのようなデンプンの例は、アセチル化デンプン又はヒドロキシプロピル化デンプンであり、例えばアセチル化デンプンPREGEFLO(登録商標)CH 40である。
【0035】
本発明に係る皮膜形成システムは、非デンプン性多糖である第2の成分で構成されている。この成分は、植物起源のガム、優先的には藻類若しくは植物から得られるガム;微生物起源のガム;又はセルロース誘導体から選択され得る。「非デンプン性多糖」という用語は、本出願人企業により、セルロース起源又は微生物起源の多糖を意味すると理解され、例えばβ立体構造でグリコシド結合により互いに結合している及び直鎖の又は分枝した構造を示し得る糖類で主に、実際にはさらに完全に構成されている菌体外多糖を意味すると理解される。
【0036】
植物起源のガムとして、特に下記が挙げられ得る:
- 植物の種子又は滲出液から得られるガム、例えばアラビアガム、コンニャクガム、グアーガム、ソラマメガム、トラガカントガム、タラガム、カシアガム、カラヤガム、サイリウムガム、ペクチン及びペクチン酸塩又はこれらの誘導体及び混合物;
- 藻類から抽出されるガム、例えば寒天、ガラクトマンナン、アルギン酸塩若しくはカラゲナン又はこれらの誘導体及び混合物。
【0037】
微生物起源のガムとして、特に微生物発酵から得られるガム、例えばキサンタン、ジェラン、マンナン、スクレログルカン又はこれらの誘導体及び混合物、好ましくはキサンタンガムが挙げられ得る。
【0038】
好ましくは、本発明に係る皮膜形成システムで用いられるこの植物起源又は微生物起源のガムは、非イオン性多糖である。発酵から得られるガム、例えばキサンタン、ジェラン、マンナン及びスクレログルカン、特にキサンタン及びスクレログルカン、より特にキサンタンが好ましい。そのようなキサンタンガムは、一般的に、1000000~50000000Daの分子量を有する。可能な市販品の中では、例えば、Jungbunzlauer International AGの製品Xanthan Gum FNCS-PC、CP Kelcoの製品Keltrol(登録商標)CG-T、Cosphatecの製品Cosphaderm(登録商標)X 17、KahlWaxの製品Kahlgum 6673 FEE - Xanthan Gum、Solvayの製品Rhodi
care(登録商標)S及びRhodicare(登録商標)XC並びにVanderbilt Mineralsの製品VANZAN(登録商標)NF-Cが挙げられ得る。
【0039】
許容され得るセルロース誘導体は、変性セルロース、特にメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースが好ましく、ヒドロキシエチルセルロースが最も好ましい。特に下記の市販品が挙げられ得る:Ashland Specialty ChemicalのNatrosol(商標)250 HHR PC;ChemirのEspesante CH;SE TyloseのTylose(登録商標)H 15 YG4及びDowDuPont(Dow)のCellosize(商標)HEC QP 40。
【0040】
二成分系混合物の異なる成分間の相対的な割合は、基本ではないが、本皮膜形成システムを可能な限り有効にするために、この皮膜形成システムの全体に対してアルファ化デンプンが優性であること好ましく、即ちこの皮膜形成システムの全体の50重量%超を表すことが好ましく、好ましくは60重量%超を表すことが好ましく、実際にはさらに70重量%超を表すことが好ましい。
【0041】
そのため、第1の実施形態によれば、本発明に係る皮膜形成システムは、
・乾燥重量で1~12部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
・乾燥重量で0.01~5部、好ましくは0.01~2部の、植物起源のガム、微生物起源のガム及びセルロース誘導体から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖
を含み、好ましくはこれらで構成されている。
【0042】
第2の実施形態によれば、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で1~12部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.01~2部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム
を含み、好ましくはこれらで構成されている。
【0043】
より優先的には、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で5~11部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.1~1部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム
を含むか又はより良好にはこれらで構成されている。
【0044】
非常に優先的には、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で6~10部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.2~0.8部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム
を含むか又はより良好にはこれらで構成されている。
【0045】
第3の実施形態によれば、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で1~12部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.01~2部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム、及び
c)0.01~3部の少なくとも1種のセルロース誘導体
を含み、好ましくはこれらで構成されている。
【0046】
より優先的には、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で5~11部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.1~1部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム、
c)0.1~2部の少なくとも1種のセルロース誘導体
を含むか又はより良好にはこれらで構成されている。
【0047】
非常に優先的には、本発明に係る皮膜形成システムは、
a)乾燥重量で6~10部の少なくとも1種のアルファ化デンプン、
b)0.2~0.8部の、植物起源又は微生物起源の少なくとも1種のガム、
c)1~1.5部の少なくとも1種のセルロース誘導体
を含むか又はより良好にはこれらで構成されている。
【0048】
有利な代替形態によれば、本発明に係る皮膜形成システムは、1%~10%の範囲、好ましくは2%~6%の範囲の濃度の場合、水中において1000~20000mPa・s、好ましくは1500~15000mPa・s、非常に優先的には2000~10000mPa・sの、20℃で測定したBrookfield粘度を示す。典型的には、この粘度は、水中において4%の濃度の場合、1000~15000mPa・s、より良好には2000~10000mPa・sであろう。このBrookfield粘度を、測定する粘度に適したスピンドルと共に20rpmの速度においてBrookfield DV-II+ Pro粘度計で測定し、選択するスピンドルは、粘度が5000mPa・s以下である場合にはSP3スピンドルであり、粘度が5000mPa・s~7000mPa・sである場合にはSP4スピンドルであり、粘度が7000mPa・s以上である場合にはSP5スピンドルである。
【0049】
本発明に係る皮膜形成システムにより、大気汚染粒子の付着を予防するか又は減少させることにより、この微粒子への表皮及び毛髪の暴露を減少させることが可能になる。これは、水性化粧品組成物により皮膚に塗布された場合、この皮膜形成システムが水の蒸発後に表皮の表面上で皮膜を形成するからである。この皮膜は、身体の一部と、この身体の一部を取り囲む大気との間の物理的バリアとして機能し、その結果、この身体の一部が暴露している大気粒子の一部、特に微粒子として知られているマイクロサイズのもの、特に1μm~10μmのサイズのものは、この皮膜を通過し得ず、そのため、特に表皮等の下層の部分と接触し得ない。これにより、特に汚れていない表皮上で堆積してこの表皮に浸透し、この表皮に損傷を与えやすい汚染粒子の数が減少し、そのため、本発明に係る皮膜形成システムにより、表皮又は身体のあらゆる他の部分への大気汚染の悪影響を制限することが可能になる。
【0050】
本発明に係る皮膜形成システムの第2の利点は、洗浄することにより、特に水ですすぐことにより、例えば表皮上に堆積した微粒子の除去を容易にすることである。表皮上での塗布及び乾燥後、得られたバリア皮膜は、粒子を保持しないという際立った特徴も示す。水によるこの皮膜のすすぎは、この皮膜上に堆積した粒子の一部を除去するのに十分である。石油化学系の皮膜形成剤と比較して、本発明に係る皮膜形成システムは、皮膚への粒子の付着の減少における高い有効性を示す。
【0051】
本発明の別の主題は、
a)水溶液を提供する段階、
b)この水溶液を20℃~80℃、優先的には20℃~50℃の温度まで、より優先的には周囲温度に近い温度まで加熱する段階、
c)撹拌と共に、この水溶液に少なくとも1種のアルファ化デンプンと、植物起源のガム、微生物起源のガム又はセルロース誘導体から選択される少なくとも1種の非デンプン性多糖とを導入して、媒体を得る段階
を通して、安定した皮膜形成システムを製造する方法からなる。
【0052】
当業者には、特に分散させる成分の量の関数としての媒体の撹拌速度を調整する方法が既知であろう。しかしながら、1分当たり1000~5000回転の撹拌速度は、十分に
許容されると思われる。
【0053】
さらに、当然のことながら、本発明に係る方法は、前記方法に従って製造された二成分系システムに関して上記で列挙された特徴の全てを組み込むことが理解される。
【0054】
本発明に係る皮膜形成システムは、非常に安定しており、且つ皮膚に対して非アレルギー性であることが分かっている。さらに、pH又は電解質の存在とは無関係に粘度及び質感の一貫性を示すという利点がもたらされる。換言すると、このシステムは、媒体のpH又は一価、二価若しくは三価の塩類の存在の影響を大きく受けない。この基準は、一層重要であり、なぜなら、一般的に、化粧的使用のための及び特に局所塗布のための製品は、pHの変動を受けやすいか又は曝されやすい。そのため、弱酸性である皮膚のpHは、例えば、4~6で変動する。そのため、pH又は塩類の存在の観点から使用に関する特定の制限を示さない製品を利用し得ることは、化粧品組成物にとって非常に大きい技術的利点を表す。
【0055】
最後に、本発明に係る最後の主題は、本発明に係る特に安定な皮膜形成システムを含有する化粧品組成物からなる。
【0056】
これは、本発明に従う特に安定な膜形成システムにより、分散された脂肪相の含有量が高い場合でも、調整可能な質感を有し、及びみずみずしく、絹のような且つべたべたしない感触を示す、非常に安定であり、同時に非常に微細な乳濁液の容易な製造が可能になるからである。好ましくは、この化粧品組成物は、1重量%~10重量%、より優先的には1.5重量%~8重量%、より良好には2重量%~6重量%の濃度でこの皮膜形成システムを含む。
【0057】
前記化粧品組成物は、特に皮膚のケア製品、例えば保湿組成物、しわ取り組成物、抗老化組成物、痩身組成物若しくは引き締め組成物、ボディバーム又は美容マスクであり得、増粘溶液、ゲル、乳液、クリーム、懸濁液、エアロゾル又は泡の形態で提供され得る。
【0058】
前記化粧品組成物は、特に、目のためのメイクアップ製品、例えばマスカラ若しくはライナー、又は顔のためのメイクアップ製品、例えば顔のためのパウダー若しくはファンデーション、又は爪のためのメイクアップ製品、例えばワニス、又は唇のためのメイクアップ製品、例えばリップスティック若しくはリップグロスであり得る。
【0059】
前記化粧品組成物は、特に日焼け製品(sun product)、例えば保護製品又はセルフタンニング製品であり得る。
【0060】
前記化粧品組成物は、特に身体衛生製品、例えば石けん、脱毛剤又は脱臭剤であり得る。
【0061】
前記化粧品組成物は、特にヘア製品、例えばシャンプー、カラーリング、染料、パーマネントウェーブ製品、抜け毛に対処するためのローション、ラッカー又は固定剤であり得る。
【0062】
前記化粧品組成物は、特に香料、オードトワレ又はオードパフュームであり得る。
【0063】
下記の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をよりよく理解することを可能にするであろう。
【実施例】
【0064】
実施例全体を通して、下記の製品により、様々な製剤を製造している:
- Roquette Freresにより販売されているPregeflo(登録商標)CH 40、
- Roquette Freresにより販売されているPregeflo(登録商標)CR 3510:ヒドロキシプロピル含有量が約7%mである、アルファ化されており且つヒドロキシプロピル化されている蝋様トウモロコシデンプンである、
- 名称Keltrol(登録商標)CG-TでCP Kelcoにより販売されているキサンタンガム、
- 名称Natrosol(商標)250 HHR PCでAshland Specialty Chemicalにより販売されているヒドロキシエチルセルロース(HEC)。
【0065】
全ての粘度を、測定する粘度に適したスピンドルと共に20rpmの速度においてBrookfield DV-II+ Pro粘度計で決定し、選択するスピンドルは、粘度が5000mPa・s以下である場合にはSP3スピンドルであり、粘度が5000mPa・s~7000mPa・sである場合にはSP4スピンドルであり、粘度が7000mPa・s以上である場合にはSP5スピンドルである。
【0066】
実施例1:O/W乳濁液の調製
この実施例は、石油化学起源の皮膜形成剤(表1)又は本発明に係る皮膜形成剤(表2及び2a)のいずれかを皮膜形成剤として含有する水中油型の乳濁液の調製を示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
乳濁液の調製手順は、下記の通りである:少なくとも10分にわたり1分当たり1000回転で凝集防止パドルにより撹拌しつつ、35~40℃で水中に皮膜形成剤を分散させることにより、水相を調製する。その後、35~40℃で撹拌しつつ、乳化剤を添加する
。これとは別に、油相を35~40℃まで加熱する。その後、この油相を、15分にわたり1分当たり1500回転で凝集防止パドルにより撹拌しつつ、35~40℃で水相に乳化させる。最後に、保存料を添加する。乳濁液を室温になるまで撹拌し続ける。
【0071】
この手順に従って調製した乳濁液並びに表1、2及び2aに示す組成物は、皮膚に塗布し得るクリームを形成する。塗布した後、これらは、保護膜を形成し、この保護膜の大気粒子に対するバリア特性を下記の実施例で評価する。
【0072】
【0073】
実施例2:汚染に対処するバリア効果
この実施例では、実施例1で調製した3種の乳濁液に関する、微粒子による汚染への対処におけるバリア効果の性能品質を比較する。
【0074】
これを行うために、微粒子と称されている1μm~5μmのサイズの木炭粒子を実験モデルとして使用して、18~65歳の年齢の10例のボランティアのヒト表皮上で試験を実行した。この木炭微粒子は、内燃機関の排ガス粒子等の実際の汚染微粒子を適切にモデル化する。
【0075】
木炭微粒子の調製:
この試験前に、10分にわたり木炭を家庭用粉砕機の作用に曝すことにより、十分な量の木炭微粒子を調製した。この粉砕により、サイズ分布が1μm~5μmで主に分布するマイクロメートルサイズの粒子が得られる。
【0076】
ボランティアの表皮上での試験の手順:
各ボランティアの前腕上で1cm×1cmの3つのゾーンを区切った。そのように区切った各ゾーンに関して、下記の2つの測定を実行する:Dino-Liteデジタル顕微鏡で撮影し、次いで画像解析により処理した写真により黒色の粒子の数を計数する測定及びMinolta(著作権)CR-200色彩色差計による色彩の測定。
【0077】
微粒子の計数:
Dino Liteデジタル顕微鏡で撮影した高解像度写真をGIMP(GNU Image Manipulation Software)画像処理ソフトウェアで処理する。最初に、黒色の微粒子を明らかにし、且つ画像を標準化するために、軸に沿った投影(白黒)を実行した。その後、黒色のピクセルの数をGIMPソフトウェアで計数した。
【0078】
色彩の測定:
Minolta CR-200色彩色差計は、表面の色を偏りなく測定するための装置である。この装置により、CIE 1976色空間(CIELAB色空間とも称される)における3つの座標L*、a*及びb*で構成された結果が得られる。色の明度を特徴付けるパラメータL*のみを使用し、L*=0は、黒色に対応し、L*=100は、白色を示す。
【0079】
ボランティアで試験を実行する:
乳濁液の塗布前に、即ち汚れていない皮膚で微粒子の計数及び色彩の測定を実行する(T0測定)。
【0080】
3つのゾーンを、試験する乳濁液で覆い、1つを乳濁液Aで覆い、1つを乳濁液INV1で覆い、1つを乳濁液INV2で覆った。このために、必要な量をピペットで堆積させ、次いでスパチュラで広げることにより、皮膚1cm2当たり乳濁液約2mgを塗布した。その後、ボランティアは、乳濁液が乾くまで20分間待った。第3のゾーンは、コントロールゾーンを構成するためにブランクのままである。測定を実行した(T1測定)。
【0081】
木炭粒子を、粒子を含浸させたメイクアップスポンジで3つのゾーンを軽くたたくことにより、これらのゾーンに塗布し、次いで測定を実行した(T2測定)。
【0082】
その後、3つのゾーンを、各ゾーンの表面全体に水100mlを流すことによりすすぎ、次いで測定を実行した(T3測定)。
【0083】
下記の表で表される結果を得た。
【0084】
【0085】
【0086】
次いで、T2での値に対するT3及びT2間での黒色のピクセルの数及び明度の変動の割合を算出することにより、汚染に対処するバリア効果を評価した。
【0087】
【0088】
【0089】
コントロールゾーンではバリア効果がないことを確認しており、水によるすすぎでは、堆積した微粒子は、除去されない(1%未満の変動は、有意ではない)。すすぎにより、おそらくデジタル顕微鏡の検出限界未満のサイズに起因して計数測定中に検出されない微粒子の除去の結果として、明度が24.81%増加されることが可能になり、これは、有
意である。
【0090】
予想したように、石油化学系の皮膜形成剤を含有する乳濁液Aで覆われたゾーンでは、バリア効果が明確に実証され、黒色のピクセルの数は、5.97%減少しており(これは、実際に有意である)、明度は、59.95%増加しており、即ちコントロールゾーンと比べて35%増加している。
【0091】
驚くべきことに且つ予想外にも、本発明に係る皮膜形成システムを含有する乳濁液INV1で覆われたゾーンでもバリア効果を観察しており、このバリア効果は、乳濁液Aで覆われたゾーンに対してさらに改善されており、黒色のピクセルの数の減少は、8.64%に達しており、即ち乳濁液Aと比べて2.7%大きく、明度は、64.17%に達しており、即ち乳濁液Aと比べて4%高い。
【0092】
本発明に係る皮膜形成システムを含有する乳濁液INV1の塗布により形成される皮膜で覆われた皮膚のゾーンでの黒色のピクセルの数の減少及び同時の明度の増加は、本発明に係る皮膜形成システムにより、実際に皮膚への微粒子の付着を予防し、且つ洗浄することによる、特に水ですすぐことによる微粒子の除去を促進することも可能になることを示す。
【0093】
アルファ化デンプンとしてアルファ化され且つヒドロキシプロピル化された蝋様トウモロコシデンプンを含む本発明に係る皮膜形成システムを含有する乳濁液INV2は、乳濁液INV1に対して改善されたバリア効果結果を示す。これは、黒色のピクセルの数が22.7%減少し、且つ明度が82.6%増加するからである。
【0094】
実施例3:感覚パラメータ
この実施例は、48時間後の、本発明に係る様々な皮膜形成システムを含有する水溶液に関して観察した様々な感覚パラメータの変化を示す。
【0095】
全ての製剤を下記の方法で製造した:
1)皮膜形成システムの様々な成分を秤量し、次いで混合し、
2)水を40℃まで加熱し、
3)1分当たり2000回転で撹拌するターボミキサを使用して、徐々に添加した成分の混合物を分散させ、
4)撹拌を、乳濁液が周囲温度になるまで続ける。
【0096】
白色度記述子を
図1の色のパレットにより定義する。生成物をランプ下で検査し、評価者のパネルによりカラーパレットを比較する。
【0097】
糸引きは、生成物を手に取る段階の重要な記述子である。糸引きを、親指上に生成物50~100μlを堆積させ、その後、親指と人差し指との間で生成物を緩やかにつまみ、次いで親指から人差し指を緩やかに引き離すことにより評価し、次いで親指と人差し指との間を連結する糸状のものが形成されている(糸状の生成物)か又は形成されていないか(非糸状の生成物)を観察する。連結する糸状のものが形成されている場合、この糸状のものが切断される親指と人差し指との間の距離を評価し、次いでこの糸を引く性質を0~10のスケールで等級付けし、0は、連結する糸状のものが完全に存在しないことに対応し、10は、親指と人差し指との間の最大の距離で存続する連結する糸状のものに対応する。
【0098】
ランプ下において手の甲上で生成物50~100μlを堆積させた後、10回転で広げる間に生成物を検査することにより、広がりを評価する。手の上での5回目の回転~10
回目の回転中の移動に対する抵抗が低いほど、広がりが大きい。
【0099】
粘着性は、アフターフィール段階の記述子である。手の甲上で生成物50~100μlを堆積させ、次いで10回転で広げた後にランプ下で生成物を検査することにより、粘着性を評価する。生成物を塗布した手の表面上で指を繰り返し押して離す。この移動中、指と手の皮膚との間の付着の強さを評価し、0~10のスケールで等級付けを実行し、0は、付着が完全に存在しないことに対応し、10は、手の皮膚から指を離し得ないような付着に対応する。
【0100】
最後に、皮膚上を滑らせることにより手の甲上で生成物を10回転させた2分後に生成物をランプ下で検査することにより、生成物の浸透性を評価する。次いで、評価者のパネルは、回収した生成物残渣の量を評価する。
【0101】
表6は、試験した製剤の全てが、満足のいく感覚パラメータ化を得ることを可能にすることを示す。特に、わずかに糸を引き(3以下の記述子を有する)、よく広がり(5以上、通常、7以上の広がりの記述子を有する)、わずかに粘着性であり(4以下の対応する記述子を有する)、且つ浸透する(6以上の対応する感覚の記述子を有する)生成物が常に得られる。ヒドロキシエチルセルロースに富む特定の製剤を除いて、6以上の白色度の記述子を有する非常に白い製剤が全ての製剤で得られる。
【0102】
そのため、本発明により、感覚的な観点から満足のいく生成物を得ることが可能になる。
【0103】