(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】植込み型システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240314BHJP
A61B 17/70 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61F2/44
A61B17/70
(21)【出願番号】P 2021008780
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2021-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】タイ ヘスラー
(72)【発明者】
【氏名】チャド グレールム
(72)【発明者】
【氏名】マーク ウェイマン
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ヒル
(72)【発明者】
【氏名】マイルス サリヴァン
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】後藤 泰輔
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/006669(WO,A2)
【文献】特表2015-512328(JP,A)
【文献】特表2010-518987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型システムであって、
関節式拡張可能インプラントであって、互いに回動可能に接続された複数のリンクを備え、前記リンクのそれぞれが、1つ以上の傾斜面を有する上本体と、1つ以上の傾斜面を有する下本体と、それぞれ前記上本体および前記下本体の間に配置され且つ前記上本体および下本体の前記1つ以上の傾斜面と嵌合するように構成された1つ以上の傾斜面を有する中本体とを備える、関節式拡張可能インプラントと、
ガイドチューブ、挿入ドライバ、およびケーブルを有する挿入器具であって、前記ガイドチューブが、前記複数のリンクを椎間板腔に展開するように構成され、前記挿入ドライバおよびケーブルが、前記複数のリンクを多角形に関節をなすように構成され、前記ケーブルが、前記リンクの前記中本体に対して内向きの力を加えて、前記中本体を多角形の中心に向かって平行移動させ、それによって前記上本体および下本体の線形拡張を引き起こすようにさらに構成されている、挿入器具と、を備える、植込み型システム。
【請求項2】
前記中本体は、その中に前記ケーブルを受け入れるように構成された複数の開口部を含む、請求項
1に記載の植込み型システム。
【請求項3】
前記ケーブルが、円周距離が短縮されて、前記中本体に対して内向きの力を提供し、前記中本体を多角形の中心に向かって内側に平行移動させるように構成されている、請求項
1に記載の植込み型システム。
【請求項4】
前記挿入ドライバが前記複数のリンクに押し力を加え、前記ケーブルが前記複数のリンクに引っ張り力を加えて前記複数のリンクを関節運動させる、請求項
1に記載の植込み型システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用デバイス、より具体的には、椎間板腔内に展開され、次に椎間板間隔を維持し、脊椎の安定性を回復し、および/または椎間固定を促進するために拡張されることができる関節式拡張可能固定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
外傷または加齢等の様々な要因によって変性した椎間板に関連する疼痛に対処するための一般的な手技は、1つ以上の隣接する椎体を固定するための椎間固定デバイスの使用である。一般的に、隣接する椎体を固定するために、最初に、椎間板が部分的または完全に除去される。次いで、典型的には椎間固定デバイスが、正常な椎間板の間隔を維持して脊椎の安定性を回復し、それによって椎間固定を促進するために、隣り合った椎骨間に挿入される。
【0003】
当該技術分野には、椎間固定を達成するためのいくつかの既知の従来の固定デバイスおよび方法が存在する。これらは、ねじおよびロッド構成、固体骨移植、ならびに、典型的には骨および/または骨成長誘導物質が充填されたケージまたは他の移植機構を含む固定デバイスを含む。これらのデバイスは、椎体を一緒に固定して関連する疼痛を軽減するために、隣接する椎体間に移植される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既知の従来の固定デバイスおよび方法に関連する欠点が存在する。例えば、従来の固定デバイスを設置するための現在の方法は、固定デバイスの移植前に、患部の椎間板腔をその正常のまたは健康な高さにまで回復させるために、隣接する椎体を延伸する必要があることが多い。固定デバイスが挿入されたときにこの高さを維持するために、通常、固定デバイスは、最初の延伸の高さよりも高く寸法決定される。この高さの違いにより、延伸された椎間腔に外科医が固定デバイスを設置するのが困難になり得る。
【0005】
そのため、最小限から全く延伸しない高さで椎間板腔内に設置されることができる固定デバイス、および、移植されたときに、隣接する椎体間の正常な距離を維持することができる固定デバイスの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本特許出願によれば、デバイス、システム、方法、および器具が提供される。特に、椎間板間隔を維持し、脊椎の安定性を回復し、および/または椎間固定を促進するために椎間板腔内に展開されることができる、関節式拡張可能固定デバイスが提供される。デバイスは、オープン、セミオープン、または低侵襲の外科的処置で設置されることができる。関節式拡張可能固定デバイスは、例えば、多角形に関節式にされ、次いで拡張構成に拡張される、ガイドチューブの下方の椎間板腔に配置されることができる。
【0007】
一実施形態によれば、拡張可能インプラントは、第1のリンクと、第1のリンクに回動可能に接続された第2のリンクと、第2のリンクに回動可能に接続された第3のリンクとを含む。リンクのそれぞれは、1つ以上の傾斜面を有する上本体と、1つ以上の傾斜面を有する下本体と、上本体と下本体との間に配置され且つ1つ以上の傾斜面を有する中本体とを備える。中本体の平行移動は、中本体の1つ以上の傾斜面を上本体および下本体の1つ以上の傾斜面に対して滑らせ、それにより、拡張可能インプラントの拡張をもたらす。
【0008】
リンクは、三角形、正方形、五角形、六角形などの多角形に関節運動するように構成されることができる。上本体および下本体の1つ以上の傾斜面は、それぞれ、雄型傾斜を画定することができ、中本体の1つ以上の傾斜面は、雌型傾斜を画定することができる。1つ以上の傾斜は、蟻継式スライド傾斜、Tスロット、または同様の機構として嵌合することができる。
【0009】
リンクは、1つ以上の回動ピンを保持するように構成された1つ以上の保持リングによって接続されることができる。例えば、上本体のそれぞれは、第1および第2の上部保持リングを含むことができ、下本体のそれぞれは、第1および第2の下部保持リングを含むことができる。第1のリンクの第2の上部保持リングは、第1の回動ピンによって第2のリンクの第1の上部保持リングに接続することができる。第1のリンクの第2の下部保持リングは、第2の回動ピンによって第2のリンクの第1の下部保持リングに接続することができる。第2のリンクの第2の上部保持リングは、第3の回動ピンによって第3のリンクの第1の上部保持リングに接続することができる。第2のリンクの第2の下部保持リングは、第4の回動ピンによって第3のリンクの第1の下部保持リングに接続することができる。必要に応じて、追加のリンク、保持リング、および回動ピンが使用されることができる。
【0010】
別の実施形態によれば、移植可能デバイスは、互いに関節運動するように構成された複数のリンクを含む。リンクのそれぞれは、上本体、下本体、および上本体と下本体との間に配置された中本体を含むことができる。上本体は、骨と係合するように構成された上部骨接触面と、第1の傾斜を有する下面とを含むことができる。下本体は、第2の傾斜を有する上面と、骨と係合するように構成された下部骨接触面とを含むことができる。中本体は、第3の傾斜を有する上面および第4の傾斜を有する下面を含むことができる。上本体の第1の傾斜は、中本体の第3の傾斜と嵌合することができ、下本体の第2の傾斜は、中本体の第4の傾斜と嵌合することができる。中本体の動きは、第3の傾斜を第1の傾斜に対してスライドさせ、第4の傾斜を第2の傾斜に対してスライドさせ、それにより、複数のリンクの上本体および下本体の拡張をもたらすことができる。
【0011】
別の実施形態によれば、移植可能システムは、関節運動可能で拡張可能インプラントおよび挿入器具を含む。関節運動可能で拡張可能インプラントは、互いに回動可能に接続された複数のリンクを含むことができる。リンクのそれぞれは、1つ以上の傾斜面を有する上本体と、1つ以上の傾斜面を有する下本体と、それぞれ上本体と下本体との間に配置され且つ上本体および下本体の1つ以上の傾斜面と嵌合するように構成された1つ以上の傾斜面を有する中本体とを含むことができる。
【0012】
挿入器具は、ガイドチューブ、挿入ドライバ、およびケーブルを含むことができる。ガイドチューブは、複数のリンクを椎間板腔に展開するように構成されることができる。挿入ドライバおよびケーブルは、複数のリンクを多角形に関節運動させるように構成されることができる。ケーブルは、さらに、リンクの中本体に内向きの力を加えて、中本体を多角形の中心に向かって平行移動させ、それによって上部および下本体の線形拡張を引き起こすように構成されることができる。中本体は、その中にケーブルを受け入れるように構成された複数の開口を含むことができる。挿入ドライバは、複数のリンクに押圧力を加えることができ、ケーブルは、複数のリンクに引っ張り力を加えて、複数のリンクを関節運動させることができる。ケーブルは、円周方向の距離を短くして、中本体に対して内向きの力を提供し、中本体を多角形の中心に向かって内側に移動させ、それによってインプラントを拡張するように構成されることができる。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、拡張可能インプラントを設置および関節運動させる方法が提供される。患者の椎間板腔がアクセスされて準備されることができる。インプラントは、例えば、リンクごとに、挿入器具を介して椎間板腔内に配置されることができる。リンクは、挿入器具によって五角形などの多角形に関節運動されることができる。リンクは、それぞれのリンクの中本体を移動することによって、例えば、中本体を多角形の中心に向かって内側に平行移動することによって拡張されることができる。挿入器具は、患者の体から引き抜かれ、それにより、インプラントを関節式で拡張位置に残すことができる。
【0014】
また、様々なタイプおよびサイズの関節式拡張可能固定デバイス、ロッド、ファスナまたはアンカ、kワイヤ、挿入器具、および処置を行うための他の構成要素を含むキットも提供される。
【0015】
本発明、ならびにそれに付随的な利点および特徴のより完全な理解は、添付図面と併せて考慮されるときに、以下の詳細な説明の参照によって、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる、下部椎骨上に配置されて示されている(明確にするために上部の隣接する椎骨は省略されている)、関節式の折り畳み位置にある関節式拡張可能固定デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、椎骨上に配置された(明確にするために上部の隣接する椎骨は省略されている)、関節式の拡張位置にある
図1の関節式拡張可能固定デバイスの斜視図を示している。
【
図3】
図3は、リンクが折り畳み位置にある、
図1の関節式拡張可能固定デバイスからの単一リンクの斜視図を示している。
【
図4】
図4は、リンクが拡張位置にある、
図3の単一リンクの斜視図を示している。
【
図8】
図8は、複数のリンクが実質的に真っ直ぐな位置または関節のない位置に整列された、
図1の関節式拡張可能固定デバイスの平面図を示している。
【
図9】
図9は、一実施形態にかかる、第1のリンクが挿入器具を介して展開された、
図1の関節式拡張可能固定デバイスの平面図を示している。
【
図10】
図10は、複数のリンクが挿入器具を介して展開されて関節運動を開始する、
図1の関節式拡張可能固定デバイスの平面図を示している。
【
図11】
図11は、複数のリンクが挿入器具を介して展開されて多角形にほぼ完全に関節運動された、
図1の関節式拡張可能固定デバイスの平面図を示している。
【
図12】
図12は、挿入器具から完全に展開されて折り畳み位置で完全に関節運動された、
図1の関節式拡張可能固定デバイスの平面図である。
【
図13】
図13は、折り畳み位置にある関節式拡張可能な固定デバイスと、固定デバイスを拡張するように構成された器具との断面図である。
【
図14】
図14は、拡張位置にある関節式拡張可能固定デバイスと、固定デバイスを拡張する器具との断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
椎間板変性症や脊椎すべり症を伴う脊柱管狭窄症などの様々な脊椎疾患を治療する際に、脊柱の前柱を支えて安定させるために椎体間デバイスが使用されてきた。前椎体椎体間デバイスによる脊椎病変の臨床治療は、正常な前柱のアライメントを回復するために椎体間インプラントを正確に配置することに依存している。医原性の病状は、椎間板腔への外科的アクセスウィンドウ、椎体の頂端輪にしばしば見られる硬い皮質骨に椎体を正確に配置できないこと、および/または正常な解剖学的脊椎アライメントを正確に制御および復元できないことに起因する可能性がある。
【0018】
現在、硬い皮質骨との椎体間接触を増加させ、および/または椎間板腔へのアクセスウィンドウのプロファイルを低減しながら前柱の位置合わせの正確な制御を提供する椎体間支持の正確な配置を提供する必要性が存在する。したがって、本特許出願の実施形態は、一般に、椎体間インプラントを設置、関節運動、および拡張するためのデバイス、システム、器具、および方法を対象とする。インプラント、椎体間、椎体間インプラント、固定デバイス、スペーサ、および拡張可能デバイスという用語は、本明細書では交換可能に使用されることができる。
【0019】
ここで、
図1および
図2を参照すると、関節式拡張可能固定デバイス10は、隣接する椎体2の間の椎間板腔に示されている(明確にするために上部椎骨は省略されている)。固定デバイス10は、第1または上部端板12および第2または下部端板14を含む。上部および下部端板12、14は、隣接する椎体2の端板4と係合するように構成され、設置位置では、拡張デバイス10は、通常の椎間板間隔を維持し、脊椎の安定性を回復し、それによって椎間固定を促進するように構成されている。
【0020】
関節式拡張可能固定デバイス10は、上部端板12、14の間に延びる中央窓または開口16を画定することができる。中央窓または開口16は、骨移植片または同様の骨成長誘導材料を受け入れるように構成されることができる。骨移植片は、椎間固定をさらに促進および容易にするために、固定デバイス10内および/またはその周囲に導入されることができる。固定デバイス10は、一実施形態において、固定デバイス10を通るおよび固定デバイス10の周囲の骨の成長を助長するために、移植骨または同様の骨成長誘導材料で充填されていることが好ましい。そのような移植骨は、固定デバイス10の移植の前、後、または間に、隣接する椎体2の端板4の間に充填されてもよい。
【0021】
図1では、固定デバイス10は、上部および下部端板12、14の間の距離が第1の高さで提供されるように、デバイス10が折り畳み位置または収縮位置にある関節位置に示されている。
図2では、固定デバイス10は、上部および下部端板12、14の間の距離が第1の高さよりも大きい第2の高さで提供されるように、デバイス10が拡張位置にある関節位置に示されている。関節式拡張可能固定デバイス10は、これらに限定されるものではないが、チタン、ステンレス鋼、チタン合金、非チタン金属合金、ポリマー材料、プラスチック、プラスチック複合体、PEEK、セラミック、および弾性材料を含む多くの生体適合材料から製造されることができる。
【0022】
図1~
図4にさらに重点を置いて、関節式拡張可能固定デバイス10は、複数の個別のリンクセグメントまたはリンク20を含む。複数のリンクセグメントまたはリンク20は、一般に多角形に関節運動するように構成される。多角形は、凸面、凹面、単純、交差、または他の適切なタイプとすることができる。多角形の形状は、インプラント10を構築するために使用されるセグメントまたはリンク20の数によって決定されることができる。例えば、3つのリンク20を有するデバイス10は、三角形を形成することができ、4つのリンク20は、四角形を形成することができ、5つのリンク20は、五角形を形成することができ、6つのリンク20は、六角形を形成することができる、などである。デバイス10は、一般に五角形の形状を形成する5つのリンク20を有して示されているが、デバイス10は、僅か3つのセグメント20または必要な数のセグメントを有することができると想定される。多角形は、全てのリンク20が同じ長さを有する正三角形としてもよく、またはリンク20は、異なる長さであってもよい。多角形は、リンク20間の全ての角度が等しい等角としてもよく、または異なる角度で不規則な形状を形成していてもよい。
【0023】
図3および
図4をさらに参照すると、デバイス10の単一のリンク20がより詳細に示されている。示される実施形態では、リンク20の全てが同一であることが理解されよう。しかしながら、リンク20は、互いに異なる可能性があることが想定される。単一のリンク20が折り畳み位置または収縮位置で
図3に示されており、拡張位置で
図4に示されている。各リンク20は、第1の本体または上本体22と、第2の本体または下本体24と、上本体および下本体22、24の間に配置された第3の内部本体または中本体26とを備える。上本体22は、デバイス10の上部端板12の一部を形成し且つ上椎体2(図示せず)の端板4と係合するように構成された骨接触面または上面30を含む。下本体24は、デバイス10の下側端板14の一部を形成し且つ下側椎体2(
図1および
図2に示される)の端板4と係合するように構成された骨接触面または下面32を含む。
【0024】
図5に最もよく見られるように、上本体22は、1つ以上の傾斜面36を有する下面34を含む。傾斜面36は、所与の傾斜角を有する角度の付いた連続面とすることができる。傾斜面36は、雄型スライド傾斜または突出傾斜を含むことができる。
図5に示す実施形態では、単一の傾斜面36は、上本体22の下面34から突出している。単一の傾斜36は、一般に、上本体22の中心または正中線に配置されることができる。
図7に最もよく見られるように、下本体24はまた、1つ以上の傾斜面40を有する上面38を含む。傾斜面38は、同じ所与の傾斜角を有する角度の付いた連続面とすることができる。傾斜面40は、雄型スライド傾斜または突出傾斜を含むことができる。
図7に示す実施形態では、2つの傾斜面40は、下本体24の上面38から突出している。2つの傾斜面40は、傾斜40が互いに実質的に平行になるように、等距離で離間されることができる。傾斜面36、40の特定の配置が示されているが、傾斜面36、40の数、位置、および構成は、当業者によって変更または選択されることができることが想定される。
【0025】
上本体22は、下面34から上面30に延在するか、またはその一部を通って凹んだ1つ以上の開口18を含むことができる。開口18は、例えば、リンク20が折り畳み位置にあるときに、下本体24の傾斜40の一部を受け入れるように構成されることができる。同様に、下本体24は、上面38から下面32まで延在するか、またはその一部を通って凹んだ1つ以上の開口28を含むことができる。開口28は、例えば、リンク20が折り畳み位置にあるときに、上本体22の傾斜36の一部を受け入れるように構成されることができる。さらに、開口18、28は、必要に応じて、移植片材料を受け入れるように構成されることができる。
【0026】
雄型傾斜面36、40は、中本体26の対応する雌型傾斜面44、48と嵌合するように構成される。中本体26は、上面42に凹んだ1つ以上の雌型傾斜面44を有する上面42と、下面46に凹んだ1つ以上の雌型傾斜面48を有する下面46とを含むことができる。上本体22の突出した雄型傾斜面36は、中本体26の凹んだ雌型傾斜面44内に受け入れられるように構成されることができ、下本体24の突出した雄型傾斜面40は、中本体26の凹んだ雌型傾斜面48内に受け入れられるように構成されることができる。傾斜面44、48は、所与の傾斜角を有する角度の付いた連続面とすることができる。雌型傾斜44、48の傾斜角は、それぞれの雄型傾斜36、40の傾斜角と一致することができる。傾斜36、40は、雄型傾斜として示され、傾斜44、48は、雌型傾斜として示されているが、これらの傾斜は、上本体および下本体22、24が雌部分を有し且つ中本体26が雄部分を含むように逆にすることができると想定される。
【0027】
雄型傾斜面36、40および雌型傾斜面44、48は、スライド可能な蟻継が形成されるように嵌合するように構成されることができる。例えば、スライド可能な蟻継は、対応する先細の窪みまたはほぞ穴(傾斜44、48)と連動する1つ以上の先細の突起またはほぞ(傾斜36、44)によって形成されることができる。雄型傾斜36、40の突起は、それらがベースに向かって狭く、雌型傾斜44、48の嵌合面に向かって広くなるように先細とすることができる。同様に、雌型傾斜44、48の窪みは、それらが表面42、46に向かって狭く、雄型傾斜36、40の嵌合面に向かって広くなるように先細とすることができる。雄型傾斜面36、40および雌型傾斜面44、48は、それらの長さに沿って実質的に線形とすることができるか、または湾曲、階段状、あるいは上本体22と下本体24との間の所望のタイプおよび量の拡張を提供するように構成されることができる。
【0028】
内面または中本体26は、外面50および内面52を含む。外面50は、複数のリンク20が多角形に関節運動するときに外側を向くように構成される。内面52は、複数のリンク20が多角形に関節運動するときに内側を向くように構成される。リンク20の内面52は、拡張位置にあるとき、デバイス10の中央開口16を部分的に画定することができる。1つ以上の開口51、53は、中本体26の外面50に沿って、またはそれを介して設けられることができる。例えば、複数の開口51は、中本体26の外面50を通って延在することができ、挿入器具70のワイヤまたはケーブル76を受け入れるように構成されることができる。外面50の面はまた、窪み53を画定することができる。窪み53は、その幅よりも長い長さを有するように細長くされ、挿入器具70のケーブル76の一部を受け入れるように構成されることができる。開口51および窪み53は、共通の軸に沿って整列されることができる。窪み53は、窪み53のいずれかの側の2つの開口51の間でケーブル76を案内するように構成されることができる。ケーブル76および挿入器具70の動作は、以下により詳細に説明される。
【0029】
図3および
図4にさらに重点を置いて、拡張機構についてさらに説明する。
図1および
図3に示される折り畳み位置または収縮位置において、中本体26は、一般に、インプラント10の周囲または外壁に向かって配置され、上面および下面30、32は、それらの最小の初期高さで提供される。リンク20の全てが折り畳まれると、インプラント10の上部および下部端板12、14が折り畳まれる(
図1)。内側の力が各中本体26に対して提供されると、力は、中本体26を多角形の中心に向かって内側に移動させ、上本体および下本体22、24の上面および下面30、32の線形拡張をもたらす。
【0030】
図2および
図4の拡張位置に示されているように、中本体26は、一般に、インプラント10の内側または中心に向かって配置され、上面および下面30、32は、それらの最大の拡張高さで提供される。したがって、デバイス10の内側または中心に向かって上本体および下本体22、24のそれぞれの傾斜36、40に沿って中本体26が移動すると、上本体および下本体22、24は互いに離れるように拡張する。リンク20の全てが拡張されると、インプラント10の上部および下部端板12、14が拡張される(
図2)。同様に、中本体26が傾斜36、40に沿ってデバイス10の外側に向かって反対方向に移動した場合、上本体および下本体22、24は、互いに向かって折り畳み、それによって折り畳み位置に戻る。
【0031】
ここで
図8を参照すると、一般に線形構成の複数のリンク20が示されている。各リンク20は、第1の端部54から第2の端部56まで延在することができる。示される実施形態では、所与のリンク20の第2の端部56がチェーン内の次のリンク20の第1の端部54に接続するように、5つのリンク20が接続されている。例えば、第1のリンク20の第2の端部56は、第2のリンク20の第1の端部54に接続し、第2のリンク20の第2の端部56は、第3のリンク20の第1の端部54に接続し、第3のリンク20の第2の端部56は、第4のリンク20の第1の端部54に接続し、第4のリンク20の第2の端部56は、第5のリンク20の第1の端部54に接続する。さらなるリンク20が設けられた場合、リンケージは継続するであろう。最終的な多角形に関節運動すると、第5のリンク20の第2の端部56は、第1のリンク20の第1の端部54に接続する。
【0032】
リンク20のそれぞれは、接続されており、ジョイント58の周りで関節運動することができる。ジョイント58は、ピンジョイントまたはヒンジジョイントなどの回転ジョイントとすることができる。例えば、ジョイント58は、例えば、1つ以上のピン60の周りの一軸回転または単軸回転を提供することができる。接続されたリンク20は、接続されたリンク20間のそれぞれのピン60の軸Aを中心に自由に回転することができる。本明細書ではピン60が例示されているが、他の接合形状が使用されることができることが理解されよう。
【0033】
一実施形態では、ジョイント58は、複数の保持リング62、64、66、68を含むことができる。
図3および
図4に最もよく見られるように、各上本体22は、第1および第2の上部保持リング62、64を含むことができ、各下本体24は、第1および第2の下部保持リング66、68を含むことができる。例えば、上本体22は、リンク20の第1の端部54に第1の上部保持リング62を含むことができ、第2の端部56に第2の上部保持リング64を含むことができる。下本体24は、リンク20の第1の端部54に第1の下部保持リング66を含むことができ、第2の端部56に第2の下部保持リング68を含むことができる。第1の上部保持リング62は、一般に、第1の下部保持リング66と整列されることができ、第2の上部保持リング64は、一般に、第2の下部保持リング68と整列されることができる。保持リング62、64、66、68は、一般に円形または丸みを帯びた外本体を画定することができ、あるいはジョイント58の動きを提供するように構成されることができる。保持リング62、64、66、68は、シリンダ、チューブ、多面体、プリズム、または他の適切な形状を画定することができる。
【0034】
図4に最もよく見られるように、第1のリング62、66は、一般に、第2のリング64、68に対してオフセットされることができる。例えば、第1の上部リング62は、一般に、第1の平面P1の上に配置されることができるが、第2の上部リング64は、一般に、第1の平面P1の下に配置されることができる。第1の下部リング66は、一般に、第2の平面P2の下に配置されることができ、第2の下部リング68は、一般に、第2の平面P2の上に配置されることができる。この構成では、拡張の量に関係なく、第1の上部リング62と第1の下部リング66との間の距離は、第2の上部リング64と第2の下部リング68との間の距離よりも大きい。さらに、示される実施形態では、第1の上部保持リング62は、上本体22の骨接触面30と一般に整列されたその上面の少なくとも一部を有することができ、第1の下部保持リング66は、下本体24の骨接触面32と一般に整列されたその下面の少なくとも一部を有することができる。オフセットは、所与の構成で示されているが、保持リングの数、位置、およびタイプは、変更されることができることが理解されよう。
【0035】
保持リング62、64、66、68は、1つ以上の回動ピン60を受け入れるように構成された、それを通って延びるそれぞれの開口72、74、76、78を画定する。例えば、リング62は、リング62の上面から下面に延在する中央開口72を含むことができる。リング64は、リング64の上面から下面に延在する中央開口74を含むことができる。リング76は、リング66の上面から下面に延在する中央開口76を含むことができる。リング68は、リング68の上面から下面に延在する中央開口78を含むことができる。開口72および76は、一般に、整列されることができ、開口74および78は、一般に、互いに整列されることができる。
【0036】
例として、リンク20間の保持リング62、64、66、68の嵌合は、一連の3つのリンク20に関して説明される。追加のリンク20が存在する場合、そのような接続(追加の保持リング62、64、66、68および回動ピン60を含む)は、直列に継続することができることが理解されよう。第1のリンク20の第2の上部保持リング64は、第1の回動ピン60によって第2のリンク20の第1の上部保持リング62に接続する。第1のリンク20の第2の下部保持リング68は、第2の回動ピン60によって第2のリンク20の第1の下部保持リング66に接続する。第2のリンク20の第2の上部保持リング64は、第3の回動ピン60によって第3のリンク20の第1の上部保持リング62に接続する。第2のリンク20の第2の下部保持リング68は、第4の回動ピン60によって第3のリンク20の第1の下部保持リング66に接続する。
【0037】
図8は、挿入器具70を介して案内されるのに適した一般に線形構成の複数のリンク20を示している。
図9~
図12は、折り畳み位置での挿入器具70を通るリンク20の展開を示している。挿入器具70は、リンク20が通過することができるカニューレまたはガイドチューブ72を含むことができる。ガイドチューブ72は、例えば、低侵襲外科(MIS)処置中に使用するのに適することができる。
図9に示されるように、第1のリンク20は、折り畳み位置で挿入器具70を介して展開される。
図10では、追加のリンク20が挿入器具70を介して展開され、リンク20が関節運動し始めている。
図11では、リンク20のほとんどは、挿入器具70を介して展開され、リンク20は、その多角形(この場合、五角形)にほぼ完全に関節運動している。
図12では、インプラント10は、挿入器具70から完全に展開され、全てのリンク20は、折り畳み位置で多角形に完全に関節運動している。
【0038】
この実施形態では五角形を形成するために5つのリンク20が描かれているが、適切な数のリンク20が選択されることができることが理解されよう。
図13に最もよく見られるように、組み立てられたリンク20の端板の基準角度Rは、インプラント10を構築するために使用されるリンク20の数によって決定される。例えば、三角形の基準角度Rは120度であり、正方形の基準角度Rは90度であり、五角形の基準角度Rは72度であり、六角形の基準角度Rは60度である、などである。
【0039】
図13および
図14にさらに重点を置いて、挿入器具70は、ガイドチューブ72と、ガイドチューブ72を介して配置可能な挿入ドライバ74と、挿入ドライバ74を介して配置可能なワイヤまたはケーブル76とを含むことができる。
図9~
図12に関して述べたように、ガイドチューブ72は、複数のリンク20を椎間板腔に展開するように構成されることができる。挿入ドライバ74およびケーブル76は、複数のリンク20を多角形に関節運動させるように構成されることができる。ケーブル76は、リンク20の中本体26に対して内向きの力を加えて、中本体26を多角形の中心に向かって平行移動させて、リンク20の上本体および下本体22、24の線形拡張を引き起こすようにさらに構成されることができる。
【0040】
挿入ドライバ74の遠位端78は、インプラント10を挿入器具70に保持することができる。例えば、挿入ドライバ74の遠位端78は、インプラント10と嵌合するように構成された1つ以上の係合特徴を含むことができる。特に、挿入ドライバ74の遠位端78は、リンク20のうちの1つの中本体26のうちの1つと嵌合するように構成されることができる。挿入ドライバ74は、ガイドチューブ72を通って延在し、ガイドチューブ72の一部にねじ込まれるか、そうでなければそれに係合されることができる。
【0041】
ワイヤまたはケーブル76は、挿入ドライバ74を通って延在し、リンク20の周りをループ80するように構成される。特に、ケーブル76は、リンク20の中本体26とインターフェースすることができる。ケーブル76は、リンク20の中本体26の1つ以上の開口51、53を通って延在することができる。インプラント10を関節運動させるために、押し/引っ張り動作を使用することができる。例えば、挿入ドライバ74は、リンク20をD1の方向に押す一方で、ケーブル76は、リンク20をD1とは反対の方向D2に引っ張ることができる。この押し/引っ張り関節運動が例示されているが、1つ以上のカム部材、ガイド部材などを介するなど、他の関節運動方法が使用されることができることが理解されよう。
【0042】
ワイヤまたはケーブル76は、リンク20の外周の周りにループ80することができる。
図13に最もよく見られるように、インプラント10は、折り畳み位置または収縮位置にあり、ケーブル76は、リンク20の中本体26の周りおよびそれらを通してループ80されている。
図14を参照すると、インプラント10は拡張位置にある。インプラント10を拡張するために、ケーブル76は、円周方向の距離を短くされて、多角形の中心に向かって内側に中本体26を移動させる内向きの力を提供することができる。リンク20の中本体26の内向きの動きは、各リンク20の上本体および下本体22、24の線形拡張をもたらすことができる。
【0043】
折り畳み位置(
図13)では、ケーブル76のループ80は、第1の長さを有し、拡張された位置(
図14)では、ケーブル76のループ80は、第1の長さよりも短い第2の長さを有する。リンク20の中本体26に対して内向きの力を加えることにより、関節式インプラント10は、上部および下部端板12、14の間の距離が最大高さになるようにさらに拡張される。ケーブル76による拡張が本明細書で例示されているが、並進部材、線形カム、駆動ねじ、または他の適切なデバイスなど、他の機構が利用されて中本体26を動かすことができることが理解されよう。
【0044】
皮質骨接触表面積を最大化しながら椎体間インプラント10のアクセスプロファイルを改善するために、インプラント10を設置、関節運動、および/または拡張する方法およびシステムは、以下のうちの1つ以上を含むことができる。インプラント10は、狭いプロファイルで椎間板腔に入り、関節運動して、前方骨突起リング上の表面積接触を増加させることができる。その最終移植位置での椎体間インプラント10の方向および位置は、椎体の骨ミネラル密度マップを決定する術前/術中スキャンおよび/または通常の母集団統計によって最適化されることができる。ロボットおよび/またはナビゲーションガイダンスを使用して、椎体間10を正しく方向付けることができる。ロボットおよび/またはナビゲーションシステムのさらなる詳細は、米国特許出願公開第2017/0239007号明細書に見ることができ、これは、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
一実施形態では、システムは、以下のステップのうちの1つ以上によって移植されることができる:(1)接触した骨/インプラント界面の骨ミネラル密度を最適化するために、最終的な最適インプラント位置について判定が行われる。(2)ロボットおよび/またはナビゲーションを使用して、この最適インプラント位置が達成されることを可能にする潜在的な軌道を判定する。(3)カニューレは、Kambinの三角形を介して、または椎間板腔に隣接し、神経根を出て、神経根を横断する解剖学的領域を介して椎間板腔にドッキングされる。(4)拡張可能な椎体間10は、関節のない、拡張されていない方向に挿入される。(5)拡張可能な椎体間10は、挿入のために衝撃を受け、ワイヤまたはケーブル76は、関節運動のために引っ張られる。(6)拡張可能な椎体間10は、本来の椎間板腔の解剖学的構造に正確に一致する多角形に関節運動する。(7)拡張可能な椎体間10は、リンク20の中本体26の周りでケーブル76を短縮し、それらを多角形の中心に向かって内側に平行移動させることによって拡張する。
【0046】
本明細書に記載の実施形態の特徴は、以下の利点のうちの1つ以上を提供することができる。8.5mmの横方向挿入プロファイルや椎間板腔への最小挿入高さなどの小さな挿入プロファイルは、皮膚、筋膜、筋肉、および/または靭帯の破壊を減らすことができる。大きな端板表面積の接触は、特に拡張中に、下側および上側の椎体間の骨端板を介したインプラントの沈下、または移動のリスクを低減するのに役立つことができる。インプラントの拡張プロファイルにより、減少した端板の破壊をもたらすことができる。拡張機構は、端板の破壊に寄与することができる椎体間インプラントの従来の試行の必要性を減らすことができる。本明細書の開示に基づいて、異なるまたは追加の利点も達成されることができることが理解されるであろう。
【0047】
本発明の性質を説明するために記載され、且つ図示されている部品の詳細、材料、および配設の様々な変更は、特許請求の範囲に明示されるように、本発明の範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得ることがさらに理解されるであろう。当業者は、上述の実施形態が非限定的であることを理解するであろう。一実施形態の1つ以上の特徴が、本明細書で記載される1つ以上の他の実施形態に部分的に、または完全に組み込まれ得ることも理解されよう。