(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】栽培制御システム、栽培制御装置、栽培制御方法及び栽培制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2021511104
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049683
(87)【国際公開番号】W WO2020202660
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019069982
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、農林水産省、知の集積と活用の場に係る委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠二
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸則
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】藤山 広光
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰匡
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0006401(US,A1)
【文献】特開2007-079764(JP,A)
【文献】特開2018-020718(JP,A)
【文献】特開2010-187577(JP,A)
【文献】実開昭53-032143(JP,U)
【文献】特開2012-130340(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174803(WO,A1)
【文献】特開2018-038322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器と、
前記植物の生長状態を検出する第1センサと、
前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムが格納された記憶部と、
前記第1プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1センサにより検出された前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する判定処理部と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムに比べて増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを、栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して前記記憶部に保存する取得処理部と、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する機器制御部と、
を含む、
栽培制御システム。
【請求項2】
前記第1センサは、前記植物への給水量を測定する給水量測定部と、前記植物からの排水量を測定する排水量測定部と
の両方、
又は前記排水量測定部のみを備え、
前記判定処理部は、前記給水量と前記排水量との
両方、又は前記排水量のみに基づき、前記植物が吸収した吸収水量を算出し、前記吸収水量が予め設定された水量閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定する、
請求項1に記載の栽培制御システム。
【請求項3】
前記第1センサは、前記植物および前記植物を定植した培地の重量を測定する培地重量計を備え、
前記判定処理部は、前記培地重量計により測定される測定重量が予め設定された重量閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定する、
請求項1に記載の栽培制御システム。
【請求項4】
前記第1センサは、前記植物を含む画像を撮像する撮像機器を備え、
前記判定処理部は、前記撮像機器で撮像される撮像画像内に占める前記植物の少なくとも葉の面積比を算出し、前記面積比が予め設定された比率閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定する、
請求項1に記載の栽培制御システム。
【請求項5】
前記取得処理部は、前記第2プログラムを前記記憶部に保存した後に、前記第1プログラムを前記記憶部から消去する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の栽培制御システム。
【請求項6】
前記栽培環境の温度を検出する第2センサを更に備え、
前記判定処理部は、前記第1プログラムから前記第2プログラムに切り替えられた後で、前記第2センサにより検出される前記栽培環境の温度が予め設定された温度閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が上昇したと判定し、
前記取得処理部は、前記顕熱寄与度が上昇したと前記判定処理部により判定されたときに、前記栽培環境に供給される光量が前記第2プログラムに比べて減少するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第3プログラムを、前記栽培管理サーバから前記通信ネットワークを通じて取得して前記記憶部に保存し、
前記機器制御部は、前記第3プログラムが取得されると、前記第2プログラムに代えて前記第3プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の栽培制御システム。
【請求項7】
前記取得処理部は、前記第3プログラムを前記記憶部に保存した後に、前記第2プログラムを前記記憶部から消去する、
請求項6に記載の栽培制御システム。
【請求項8】
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器を備える栽培制御システムにおける栽培制御方法であって、
前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御し、
前記植物の生長状態を検出し、
検出された前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定し、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムに比べて増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを、栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存し、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する、
栽培制御方法。
【請求項9】
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御する機器制御部と、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する判定処理部と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存する取得処理部と、を備え、
前記機器制御部は、前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する、
栽培制御装置。
【請求項10】
植物の育成を制御する栽培制御装置における栽培制御方法であって、
前記植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御し、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定し、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存し、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する、
栽培制御方法。
【請求項11】
植物の育成を制御する栽培制御装置のコンピュータに、
前記植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御する処理と、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する処理と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得させて記憶部に保存する処理と、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する処理と、
を実行させる栽培制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物の栽培制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気象条件の影響を受けずに植物栽培を行うために、室内環境において空気調和機と人工照明とを人為的に制御することで成長促進させる人工光型植物工場が注目されている。この人工光型植物工場では、作物の品質を安定させるために、栽培環境の室温、湿度、光量などの測定データを基に、空気調和機、人工照明などの環境制御機器、および水、肥料を供給する育成制御機器の動作を予め設定した育成プログラムにより自動制御することが多い。
【0003】
ビニルハウスを用いた施設栽培においても、植物にとって最適な環境を可能な限り実現するために、ビニルハウス内外の温度、湿度、光量などの測定データをもとに、側窓、カーテンなどの環境制御機器、および水、肥料を供給する育成制御機器の動作を制御することがある。施設栽培でも作物の品質を安定させるために、予め設定された育成プログラムを用いて機器の動作を自動制御することが効率的である。しかしながら、施設栽培では気象条件に左右されやすく、同じ育成プログラムでも想定通りの栽培環境を実現できるとは限らない。そのため、育成プログラムは状況に応じて更新できることが望ましい。例えば特許文献1には、センサで育成具合を管理把握し、成長度合いに合わせた育成プログラム設定で環境をリモート制御することが記載されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1では、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が栽培環境の顕熱上昇に使われることについては検討されておらず、生長に適した栽培制御を実現する上で、更なる改善が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様にかかる栽培制御システムは、
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器と、
前記植物の生長状態を検出する第1センサと、
前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムが格納された記憶部と、
前記第1プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1センサにより検出された前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する判定処理部と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムに比べて増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを、栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して前記記憶部に保存する取得処理部と、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する機器制御部と、
を含むものである。
【0007】
上記態様によれば、植物の生長に適した栽培制御を実現でき、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】栽培管理サーバ及び第1実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】栽培管理サーバ及び第2実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】第2実施形態における培地重量計と植物体とを模式的に示す図である。
【
図5】第2実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】栽培管理サーバ及び第3実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図7】第3実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】栽培管理サーバ及び第4実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図9】第4実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】栽培管理サーバ及び第5実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図12】第5実施形態の栽培制御システムの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に係る一態様を発明するに至った経緯)
まず、本開示に係る一態様の着眼点が説明される。上記特許文献1では、育成槽内の環境状態が通信ネットワークを通じて育成管理サーバに送信されると、育成管理サーバ内で動作制御部の動作に関する育成プログラムが作成される。作成された育成プログラムはスマートフォンなどのコンピュータに送信されて記憶され、コンピュータは育成プログラムを切り替えて栽培機器を制御する。このように、上記従来の特許文献1では、栽培環境情報を基にして育成プログラムが作成され、栽培環境状態に応じて機器動作方法が更新されて栽培機器が制御されている。
【0010】
しかしながら、植物は、栽培時間の経過に従って生長するものであり、植物の生長状態が異なれば、同じ栽培環境状態であっても、同じ育成プログラムが適切であるとは限らない。例えば、植物の育成に必要な光を多く取り入れる際には、熱も多く取り入れられ栽培環境内の温度が上昇しやすいため、熱負荷を考慮した光制御を行うべきである。しかしながら、植物の生長状態が異なる場合、光供給量の増加に伴う栽培環境内の温度上昇は一律ではなく、同じ育成プログラムであっても適正な温度に保持できないこともあった。特に夏季、または熱帯、亜熱帯地域での施設栽培では、光供給量の増加に伴って、植物に障害が生じるほどの高温に達することもあった。このため、植物の生長状態に合わせて栽培環境を精緻に制御する必要があった。そこで、上記特許文献1では、上述のように、センサで育成具合を管理把握し、成長度合いに合わせた育成プログラム設定で栽培環境がリモート制御されている。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1では、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が、栽培環境の顕熱上昇に使われるか否かについては、検討されていない。そのため、上記特許文献1では、植物の生長に適した栽培制御を実現することができず、作物の品質を安定化することができないという課題がある。そこで、本開示の発明者らは、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度について検討した。
【0012】
栽培期間が経過して植物が生長すると、葉の数が増加し、栽培環境に占める葉の面積が増加する。葉の面積が増加すると、葉から蒸散する蒸散水量も増加する。その結果、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱は、蒸散水の気化に、より多く使用される。言い換えると、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱は、栽培環境の顕熱上昇以外に、より多く使われる。したがって、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度は、低下する。顕熱寄与度が低下すると、栽培環境に供給される光量を増加させても、栽培環境の温度上昇が抑制される。
【0013】
一方、植物が生長すると、植物体の草勢を維持するために光合成を多く行い、同化産物を多く生成しなければならないため、より多くの光量が必要となる。したがって、顕熱寄与度が低下したときに、栽培環境に供給される光量を増加させると、栽培環境の温度上昇を抑制しつつ、植物の生長を更に促進することができる。その結果、植物の生長に適した栽培制御を実現でき、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。以上の考察により、本開示の発明者らは、以下の本開示の各態様を想到するに至った。
【0014】
本開示の第1態様にかかる栽培制御システムは、
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器と、
前記植物の生長状態を検出する第1センサと、
前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムが格納された記憶部と、
前記第1プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1センサにより検出された前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する判定処理部と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムに比べて増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを、栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して前記記憶部に保存する取得処理部と、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する機器制御部と、
を含むものである。
【0015】
本開示の第2態様にかかる栽培制御方法は、
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器を備える栽培制御システムにおける栽培制御方法であって、
前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御し、
前記植物の生長状態を検出し、
検出された前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定し、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムに比べて増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを、栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存し、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御するものである。
【0016】
この第1態様又は第2態様によれば、検出された植物の生長状態に基づいて、顕熱寄与度が低下したか否かが判定され、顕熱寄与度が低下したと判定された場合、第1プログラムに代えて第2プログラムに従い光制御機器が制御される。ここで、第2プログラムは、第1プログラムより光量が増加するように光制御機器の動作仕様が定められている。したがって、植物の生長に適した栽培制御を実現でき、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。
【0017】
上記第1態様において、例えば、
前記第1センサは、前記植物への給水量を測定する給水量測定部と、前記植物からの排水量を測定する排水量測定部と、の少なくとも一方を備え、
前記判定処理部は、前記給水量と前記排水量との少なくとも一方に基づき、前記植物が吸収した吸収水量を算出し、前記吸収水量が予め設定された水量閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定してもよい。
【0018】
植物が吸収した吸収水量は、植物の生長に伴って増加する。このため、吸収水量が水量閾値を超えると、植物の生長により葉が増加し、葉からの蒸散水量が増加したと判定できる。蒸散水量が増加すると、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が、顕熱上昇以外の蒸散水の気化に、より多く使われて、顕熱寄与度が低下したと判定できる。したがって、この態様によれば、顕熱寄与度の低下を、より適正に判定できる。
【0019】
上記第1態様において、例えば、
前記第1センサは、前記植物および前記植物を定植した培地の重量を測定する培地重量計を備え、
前記判定処理部は、前記培地重量計により測定される測定重量が予め設定された重量閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定してもよい。
【0020】
培地重量計で測定される測定重量は、植物重量も含むため、植物の生長に伴って増加する。このため、測定重量が重量閾値を超えると、植物の生長により葉が増加し、葉からの蒸散水量が増加したと判定できる。蒸散水量が増加すると、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が、顕熱上昇以外の蒸散水の気化に、より多く使われて、顕熱寄与度が低下したと判定できる。したがって、この態様によれば、顕熱寄与度の低下を、より適正に判定できる。
【0021】
上記第1態様において、例えば、
前記第1センサは、前記植物を含む画像を撮像する撮像機器を備え、
前記判定処理部は、前記撮像機器で撮像される撮像画像内に占める前記植物の少なくとも葉の面積比を算出し、前記面積比が予め設定された比率閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が低下したと判定してもよい。
【0022】
植物の葉の面積は、植物の生長に伴って増加する。このため、葉の面積比が比率閾値を超えると、植物の生長により葉が増加し、葉からの蒸散水量が増加したと判定できる。蒸散水量が増加すると、栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が、顕熱上昇以外の蒸散水の気化に、より多く使われて、顕熱寄与度が低下したと判定できる。したがって、この態様によれば、顕熱寄与度の低下を、より適正に判定できる。
【0023】
上記第1態様において、例えば、
前記取得処理部は、前記第2プログラムを前記記憶部に保存した後に、前記第1プログラムを前記記憶部から消去してもよい。
【0024】
この態様によれば、記憶部の容量が不足するような事態を避けることができる。
【0025】
上記第1態様において、例えば、
前記栽培環境の温度を検出する第2センサを更に備え、
前記判定処理部は、前記第1プログラムから前記第2プログラムに切り替えられた後で、前記第2センサにより検出される前記栽培環境の温度が予め設定された温度閾値を超えたときに、前記顕熱寄与度が上昇したと判定し、
前記取得処理部は、前記顕熱寄与度が上昇したと前記判定処理部により判定されたときに、前記栽培環境に供給される光量が前記第2プログラムに比べて減少するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第3プログラムを、前記栽培管理サーバから前記通信ネットワークを通じて取得して前記記憶部に保存し、
前記機器制御部は、前記第3プログラムが取得されると、前記第2プログラムに代えて前記第3プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御してもよい。
【0026】
この態様において、第1プログラムから第2プログラムに切り替えられた後で、栽培環境の温度が温度閾値を超えて顕熱寄与度が上昇したと判定されたということは、植物が生長したと判定された後で、例えば植物が枯れたこと等によって、植物が減少したと考えられる。このため、第2プログラムのままでは、栽培環境の温度が更に上昇すると考えられる。これに対して、この態様によれば、第2プログラムに代えて第3プログラムに従い光制御機器の動作が制御される。ここで、第3プログラムは、第2プログラムより光量が減少するように光制御機器の動作仕様が定められている。したがって、栽培環境の温度が更に上昇するのを避けることができる。
【0027】
上記第1態様において、例えば、
前記取得処理部は、前記第3プログラムを前記記憶部に保存した後に、前記第2プログラムを前記記憶部から消去してもよい。
【0028】
この態様によれば、記憶部の容量が不足するような事態を避けることができる。
【0029】
本開示の第3態様にかかる栽培制御装置は、
植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御する機器制御部と、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する判定処理部と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存する取得処理部と、を備え、
前記機器制御部は、前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御するものである。
【0030】
本開示の第4態様にかかる栽培制御方法は、
植物の育成を制御する栽培制御装置における栽培制御方法であって、
前記植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御し、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定し、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得して記憶部に保存し、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御するものである。
【0031】
本開示の第5態様にかかる栽培制御プログラムは、
植物の育成を制御する栽培制御装置のコンピュータに、
前記植物を育成する栽培環境に供給される光量を制御する光制御機器の動作を、前記光制御機器の動作仕様が定められた第1プログラムに従い制御する処理と、
前記植物の生長状態に基づいて、前記光制御機器によって前記栽培環境に供給される光量に伴う供給熱が前記栽培環境の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が低下したか否かを判定する処理と、
前記顕熱寄与度が低下したと判定されると、前記栽培環境に供給される光量が前記第1プログラムより増加するように前記光制御機器の動作仕様が定められた第2プログラムを栽培管理サーバから通信ネットワークを通じて取得させて記憶部に保存する処理と、
前記第2プログラムが取得されると、前記第1プログラムに代えて前記第2プログラムに従い前記光制御機器の動作を制御する処理と、
を実行させるものである。
【0032】
この第3態様又は第4態様又は第5態様によれば、第1態様と同様に、植物の生長に適した栽培制御を実現でき、作物の品質を安定させることができる。
【0033】
(実施形態)
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、適宜、詳細な説明は省略される。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、栽培管理サーバ及び第1実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。第1実施形態の栽培制御システム100は、室温センサ110、日射センサ120、側窓130、天井カーテン140、給水装置150、排水装置160、制御装置300を備える。また、栽培制御システム100は、栽培管理サーバ10と、通信ネットワーク90を介して通信可能に接続されている。この第1実施形態では、栽培制御システム100は、栽培対象植物(第1実施形態ではトマト)を栽培するための施設栽培設備の一例であるビニルハウスに設置されている。
【0035】
制御装置300は、メモリ310、中央演算処理装置(CPU)320、及び周辺回路(図示省略)を含む。メモリ310(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ310は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。CPU320は、メモリ310の例えばROMに記憶された第1実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、判定処理部321、取得処理部322、機器制御部323として機能する。判定処理部321、取得処理部322、機器制御部323の機能は、後述される。
【0036】
栽培管理サーバ10は、初期プログラム20(第1プログラムの一例に相当)と、増加用更新プログラム30(第2プログラムの一例に相当)とを予め記憶するハードディスク又は半導体不揮発性メモリ等を備える。初期プログラム20、増加用更新プログラム30では、それぞれ、天井カーテン140の動作仕様が定められている。初期プログラム20は、栽培管理サーバ10から制御装置300に予めダウンロードされて、メモリ310の例えばRAM又はEEPROMに保存されている。CPU320の機器制御部323は、初期プログラム20に従い天井カーテン140の動作を制御する。
【0037】
室温センサ110は、ビニルハウス内の乾球温度を検出する。室温センサ110は、ビニルハウス内の任意の場所に設置することができる。日射センサ120は、この第1実施形態では、天井カーテン140の上方に設置され、ビニルハウス内に入射する日射量[W/m2]を検出する日射計を含む。
【0038】
なお、日射センサ120は、日射量[W/m2]を検出する日射計に限られず、照度[ルクス]を検出する照度計、又は、光量子束密度[μmol/m2s]を検出する光量子センサを含んでもよい。或いは、日射センサ120は、太陽光に含まれる特定波長のエネルギーを検出するセンサを含んでもよい。この場合、既知である太陽光に含まれる特定波長のエネルギーと日射量との関係を制御プログラムとしてメモリ310に保存しておけばよい。CPU320の判定処理部321は、メモリ310の上記関係と、太陽光に含まれる特定波長のエネルギーとから、日射量を求めることができる。また、日射センサ120の配置については、上記に限られず、例えば天井カーテン140の下方に設置されてもよく、或いはまた、ビニルハウスの外に設置されて外部環境の日射量を検出してもよい。
【0039】
側窓130は、ビニルハウスの側面を覆う被覆フィルムを巻き取るための直管(図示省略)、この直管を回転させる開閉駆動部131を含み、ビニルハウスの側面が開閉可能に構成されている。開閉駆動部131は、例えばモータを含む。被覆フィルムによりビニルハウスの側面が覆われて側窓130が閉鎖しているときは、ビニルハウス内部は太陽光の入射により室温が上昇し、室温はビニルハウス外部の気温よりも高温になる。その後、開閉駆動部131により被覆フィルムが直管に巻き取られて側窓130が開放されると、外部の空気をビニルハウス内部に取り入れることができるため、ビニルハウス内部の室温を低下させることができる。
【0040】
天井カーテン140(光制御機器の一例に相当)は、上空から供給される太陽光エネルギーがビニルハウスへ入射する量を制御する。天井カーテン140は、ビニルハウス内部の天井付近に設けられ、ビニルハウス上面からの太陽光入射を一定の割合で遮ることが可能に構成されている。天井カーテン140は、カーテンを巻き取るための直管(図示省略)、この直管を回転させる開閉駆動部141を含む。開閉駆動部141は、例えばモータを含む。
【0041】
開閉駆動部141によりカーテンが直管に巻き取られて天井カーテン140が開放されると、ビニルハウス内の栽培対象植物が必要とする光エネルギーを多く取り入れることができるが、植物自身および植物周辺の温度が上昇しやすくなり、植物の生長を阻害することもあり得る。一方、開閉駆動部141によりカーテンが直管から繰り出されて天井カーテン140が閉鎖されると、天井カーテン140の下方にある植物周辺環境への太陽光入射が遮られ、植物自身および植物周辺の温度上昇を抑制する効果があるが、光合成に必要な光エネルギーも減少する。よって、植物に影響する温度と光量とのバランスを踏まえて、天井カーテン140の開閉を制御する必要がある。なお、天井カーテン140の開閉方法は、直管を用いて巻き取るものに限られず、ワイヤーをカーテンに取り付けて開閉駆動部141で引っ張ることで折り畳む構造としてもよい。
【0042】
給水装置150は、ポンプ151、給水量測定部152を含み、所定時刻にポンプ151を作動させて栽培対象植物に給水する。給水量測定部152は、例えば。ポンプ151から流れ出る水の流量を測定して栽培対象植物への給水量を測定する流量計である。給水量測定部152は、ポンプ151の単位時間当たりの流量が既知であれば、ポンプ151の作動時間に基づいて、給水量を測定してもよい。
【0043】
給水装置150は、簡素なものとしては、水道管または浅井戸ポンプからの配管に蛇口、バルブ、電磁弁を設け、必要なときにそれらを開放することで植物に水を与える構成でもよい。また、給水装置150は、液体肥料を供給する装置としても使用してもよい。例えば、給水装置150は、所定濃度の液体肥料を貯留するタンクを含み、ポンプ151を使用して所定時刻に液体肥料をタンクから栽培対象植物に供給してもよい。また、給水装置150は、液体肥料を、水道水または地下水により希釈した後に供給する構成としてもよい。
【0044】
また、給水装置150は、液体肥料の電気伝導度、pH値を測定する測定部を含み、所定の電気伝導度、pH値となるように自動調整する構成としてもよい。また、給水装置150から植物に給水するタイミングは所定時刻だけでなく、日射センサ120で検出される日射量の計測結果を基に給水する構成としてもよい。例えば、給水装置150は、植物に対して9時に給水した後、通常は12時まで給水しないが、積算日射量が所定閾値を超えると、追加で所定量を給水してもよい。
【0045】
排水装置160は、ポンプ161、排水量測定部162を含み、栽培対象植物(この第1実施形態ではトマト)に吸収されなかった水を排水する。排水量測定部162は、給水装置150からトマトに供給された水量のうち、トマトにより吸収されなかった水量を測定する。この第1実施形態では、トマトを培地とともに筐体(例えばプランター)内に入れ、トマトにより吸収されなかった水が筐体を通じてビニルハウス内に1ヶ所設けられた排水タンク(図示省略)に集約される構成とされている。排水タンク内に溜まる水量が一定水位に達した後、排水タンク内に設置されたポンプ161が溜まった排水を汲み出してビニルハウス外へ排出する。排水量測定部162は、例えば、ポンプ161により排水タンクからビニルハウス外へ排出される排水量を測定する流量計である。
【0046】
CPU320の各機能が、以下に説明される。夏季の昼間は、ビニルハウス内部に入射する太陽光エネルギーが多い。このため、側窓130が閉鎖され、天井カーテン140が開放された状態では、ビニルハウスに入射する太陽光エネルギー中の熱エネルギーが顕熱上昇に寄与することでビニルハウスの室温が上昇しやすくなり、トマトの生長を阻害する可能性が高くなる。一方、天井カーテン140を閉鎖すると、室温の上昇を抑制できる。このため、初期プログラム20では、日射センサ120により検出される日射量が、500[W/m2]を超えたときに、天井カーテン140が閉鎖され、500[W/m2]以下になったときに、天井カーテン140が開放されるように、天井カーテン140の動作仕様が定められている。
【0047】
なお、初期プログラム20では、日射量の閾値は、地域、時期に合わせて設定してもよい。また、天井カーテン140の開放及び閉鎖の動作に冗長性をもたせるために、天井カーテン140の開放の閾値と閉鎖の閾値との間に、ディファレンシャルが設けられてもよい。
【0048】
栽培期間が経過してトマトが生長すると、葉の数が増加し、ビニルハウス内部に占める葉の面積が増加する。葉の面積が増加すると、葉から蒸散する蒸散水量も増加する。その結果、ビニルハウスに入射する太陽光エネルギー中の熱エネルギーは、蒸散水の気化に、より多く使用される。言い換えると、ビニルハウスに供給される太陽光エネルギー中の熱エネルギーは、ビニルハウス内の顕熱上昇以外に、より多く使用される。したがって、ビニルハウスに供給される光量に伴う供給熱がビニルハウス内の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度は、低下する。顕熱寄与度が低下すると、栽培環境に供給される光量を増加させても、ビニルハウス内の室温上昇が抑制される。
【0049】
トマトが生長すると、植物体の草勢を維持するために光合成を多く行い、同化産物を多く生成しなければならないため、より多くの太陽光エネルギーが必要となる。天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値をより高い値に変更して、太陽光エネルギーをより多く入射させても、室温上昇が抑制できるか否か、つまり顕熱寄与度が低下したか否かを判定するためには、トマトの生長状態を把握する手段が必要となる。給水量から排水量を減算した差は、トマトが吸収した吸収水量であり、この吸収水量は、トマトが生長するに連れて増加する。
【0050】
判定処理部321は、給水量測定部152により測定された給水量と、排水量測定部162により測定された排水量とからトマトの生長状態を把握する。すなわち、トマト1株あたりの吸収水量が所定の水量閾値を超えたときに、トマトが生長して顕熱寄与度が低下したと判定処理部321により判定されて、初期プログラム20が更新される。第1実施形態において、給水装置150の給水量測定部152と排水装置160の排水量測定部162とは、第1センサの一例に相当する。
【0051】
第1実施形態では、天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値を700[W/m2]とした増加用更新プログラム30が、栽培管理サーバ10に格納されている。すなわち、増加用更新プログラム30では、日射センサ120により検出される日射量が、700[W/m2]を超えたときに、天井カーテン140が閉鎖され、700[W/m2]以下になったときに、天井カーテン140が開放されるように、天井カーテン140の動作仕様が定められている。
【0052】
判定処理部321は、トマト1株あたりの吸収水量が水量閾値(この第1実施形態では、例えば1[リットル/日])を超えると、顕熱寄与度が低下したと判定する。CPU320の取得処理部322は、顕熱寄与度が低下したと判定処理部321により判定されると、通信ネットワーク90を通じて、栽培管理サーバ10から増加用更新プログラム30を取得する。取得処理部322は、取得した増加用更新プログラム30を、メモリ310の例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、機器制御部323は、増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140等の動作を制御する。
【0053】
初期プログラム20を増加用更新プログラム30に切り替えることにより、太陽光エネルギーをより多くビニルハウス内部に取り入れて、トマトの光合成を増加させることができる。なお、トマト1株あたりの吸収水量を算出するためには、ビニルハウスにおけるトマトの株数が必要になる。そこで、メモリ310に予め保存されている第1実施形態の制御プログラムは、ビニルハウスにおけるトマトの株数を含む。この株数を用いると、給水量測定部152が計測する給水量及び排水量測定部162が計測する排水量から、トマト1株あたりの吸収水量を算出することができる。
【0054】
図2は、第1実施形態の栽培制御システム100の動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
図2の動作は、例えば1日に1回実行される。
【0055】
図2の動作が開始されると、ステップS1000において、判定処理部321は、給水量測定部152により計測された給水量を取得する。
【0056】
次に、ステップS1005において、判定処理部321は、排水量測定部162により計測された排水量を取得する。
【0057】
次に、ステップS1010において、判定処理部321は、給水量から排水量を減算した差を、トマトの株数で除算して、トマト1株あたりの吸収水量を算出する。
【0058】
次に、ステップS1015において、判定処理部321は、トマト1株あたりの吸収水量が、水量閾値(第1実施形態では、1[リットル/日])を超えたか否かを判定する。
【0059】
トマト1株あたりの吸収水量が水量閾値を超えていれば(ステップS1015でYES)、判定処理部321は、顕熱寄与度が低下したと判定し、処理はステップS1020に進む。一方、トマト1株あたりの吸収水量が水量閾値以下であれば(ステップS1015でNO)、
図2の動作は終了する。
トマト1株あたりの吸収水量が水量閾値を超えたと判定された場合、ステップS1020において、取得処理部322は、栽培管理サーバ10から増加用更新プログラム30を取得し、取得した増加用更新プログラム30を、メモリ310の例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、
図2の動作は終了する。
【0060】
以上説明されたように、この第1実施形態によれば、トマトの生長に対応した吸収水量が水量閾値を超えたか否かを判定することでトマトの生長状態を把握できる。吸収水量が水量閾値を超えたと判定されると、顕熱寄与度が低下したと判定され、初期プログラム20に代えて増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉が制御される。増加用更新プログラム30では、初期プログラム20に比べて、天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値が高く設定されているので、ビニルハウスに入射する太陽光エネルギーが増加することから、トマトの生長が更に促進される。このため、トマトの生長に応じた最適な制御でトマトを栽培することが可能となる。その結果、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。
【0061】
また、最初は、初期プログラム20に従い天井カーテン140の開閉が制御されているため、特に夏季、または熱帯、亜熱帯地域での施設栽培で、植物が高温に曝されることを抑制し、植物の生長状態に合わせて精緻に制御することができる。
【0062】
上記第1実施形態において、初期プログラム20から増加用更新プログラム30に切り替えるための吸収水量の水量閾値は、地域、時期、栽培面積等の条件に応じて異なる値に設定することができる。例えば、地域が南方であったり、時期が夏であったり、栽培面積が狭かったりすると、ビニルハウス内の室温が上昇しやすい。そこで、これらの場合には、吸収水量の水量閾値を高くしておいてもよい。そうすると、太陽光を多く与えるタイミングが遅れるので、室温が過度に上昇するような事態を避けることができる。
【0063】
また、トマトの吸収水量は、室温、日射量などの栽培環境によっても異なる。そのため、上記水量閾値は、室温センサ110及び日射センサ120のいずれか一方又は両方で検出される値も考慮して決定されてもよい。例えば、日射量が少ないときは蒸発しにくく、多いときは蒸発しやすい。したがって、曇りの日と晴れの日とでトマトの吸収水量が同じであっても、生長度合いが同じとは言えない可能性がある。また、例えば、室温が高いときに吸収水量が増加したので、植物が生長したと判断したが、実際には生長していないことも考えられる。このため、判定処理部321は、日々の栽培環境に応じて水量閾値を変更してもよい。
【0064】
判定処理部321は、室温に応じて水量閾値を変更してもよい。例えば、判定処理部321は、室温の平均が25[℃]である場合の水量閾値を1[リットル/日]に決定してもよい。なお、室温の平均が30[℃]であり、算出された吸収水量が1[リットル/日]であった場合、判定処理部321は、室温の平均が25[℃]であったときの吸収水量は0.8[リットル/日]に相当すると判断して、吸収水量の算出結果を補正してもよい。或いは、判定処理部321は、室温の平均に応じて吸収水量の算出結果を補正するのに代えて、室温の平均に応じて水量閾値を補正してもよい。判定処理部321は、室温の平均が30[℃]であった場合、水量閾値を1.2[リットル/日]に変更してもよい。
【0065】
日射量についても同様に考えられる。判定処理部321は、室温及び日射量に応じて水量閾値を変更してもよい。例えば判定処理部321は、室温の平均が25[℃]であり、日射量が500[W/m
2]である場合の水量閾値を1[リットル/日]に決定してもよい。そして、今日の吸収水量が1[リットル/日]を超えたが、室温の平均が30[℃]であり、日射量が700[W/m
2]であった場合には、判定処理部321は、生長していない(1株あたりの吸収水量が水量閾値を超えていない)と判定してもよい。このような算出結果の補正、又は水量閾値の変更は、例えば、
図2の動作の実行前に毎日行われてもよい。
【0066】
また、上記第1実施形態において、給水量が一定値であれば、栽培制御システム100は給水量測定部152を備えずに、メモリ310が給水量を保存してもよく、判定処理部321は、この一定値の給水量と排水量測定部162により測定された排水量とから、吸収水量を算出してもよい。
【0067】
(第2実施形態)
図3は、栽培管理サーバ及び第2実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。
図4は、第2実施形態における培地重量計と植物体とを模式的に示す図である。第2実施形態の栽培制御システム100Aが第1実施形態の栽培制御システム100と異なる主な点は、培地重量計170を備える点である。
【0068】
第2実施形態の栽培制御システム100Aは、室温センサ110、日射センサ120、側窓130、天井カーテン140、給水装置150、培地重量計170、制御装置300Aを備える。また、栽培制御システム100Aは、栽培管理サーバ10と、通信ネットワーク90を介して通信可能に接続されている。この第2実施形態では、栽培制御システム100Aは、第1実施形態と同様に、ビニルハウスに設置されている。なお、第2実施形態の給水装置150は、給水量測定部152を備えなくてもよい。
【0069】
培地重量計170には、
図4に示されるように、植物体171(第2実施形態ではトマト)が定植された培地172が載せられる。培地重量計170は、植物体171と培地172との合計重量を測定する。培地重量計170は、測定重量を制御装置300Aに出力する。培地重量計170は、第2実施形態において、第1センサの一例に相当する。
【0070】
培地172としてロックウールキューブが用いられて、当該ロックウールキューブが培地重量計170に載せられる構成が簡便であるが、本開示はこれに限られない。例えば、土、ヤシガラなどを入れた栽培ポットに栽培対象植物が定植され、その栽培ポットが培地重量計170に載せられる構成でもよい。また、必要に応じて、培地172と排水設備とが併せて培地重量計170に載せられる構成でもよい。また、培地重量計170上には、複数のトマト株が定植された培地が載せられる構成としてもよい。
【0071】
制御装置300Aは、メモリ310A、CPU320A、及び周辺回路(図示省略)を含む。メモリ310A(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ310Aは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。CPU320Aは、メモリ310Aの例えばROMに記憶された第2実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、判定処理部321A、取得処理部322、機器制御部323として機能する。
【0072】
栽培対象植物をトマトとした場合のCPU320Aの各機能が、以下に説明される。培地172としてロックウールキューブが用いられる。トマトがロックウールキューブに播種され、別室で育苗された後、ロックウールキューブと共にビニルハウスに移設され、培地重量計170の上に載せられる。給水装置150からロックウールキューブ(培地172)に直接給水できるように、給水配管が接続される。
【0073】
栽培日数が経過してトマトが生長すると、培地重量計170で測定される測定重量が増加する。トマトが生長して重量が増加するということは、葉の数または葉の面積が増加することを意味する。このため、蒸散水量も増加する。その結果、第1実施形態と同様に、ビニルハウス内に入射する太陽光エネルギー中の熱エネルギーは、蒸散水の気化に、より多く使用される。言い換えると、ビニルハウスに供給される太陽光エネルギー中の熱エネルギーは、ビニルハウスの顕熱上昇以外に、より多く使用される。したがって、ビニルハウスに供給される光量に伴う供給熱がビニルハウスの顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度は、低下する。顕熱寄与度が低下すると、栽培環境に供給される光量を増加させても、ビニルハウス内の室温上昇を抑制することができる。
【0074】
判定処理部321Aは、測定重量がトマトの種類に応じて決定された重量閾値を超えたときに、トマトが生長したことにより顕熱寄与度が低下したと判定する。重量閾値は、トマト以外の植物の場合には、植物の種類に応じて、適切な値に決めればよい。取得処理部322は、測定重量が重量閾値を超えたと判定処理部321Aにより判定されると、栽培管理サーバ10から増加用更新プログラム30を取得し、メモリ310Aの例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、機器制御部323は、増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉を制御する。
【0075】
図5は、第2実施形態の栽培制御システム100Aの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
図5の動作は、例えば1日に1回実行される。
【0076】
図5の動作が開始されると、ステップS1100において、判定処理部321Aは、培地重量計170により測定された測定重量を取得する。
【0077】
次に、ステップS1105において、判定処理部321Aは、測定重量が重量閾値を超えたか否かを判定する。
【0078】
測定重量が重量閾値を超えていれば(ステップS1105でYES)、判定処理部321Aは、顕熱寄与度が低下したと判定し、処理はステップS1020に進む。一方、測定重量が重量閾値以下であれば(ステップS1105でNO)、
図5の動作は終了する。
図5のステップS1020の処理は、
図2のステップS1020の処理と同じである。
【0079】
以上説明されたように、この第2実施形態によれば、植物体(トマト)171を含む培地172の重量を培地重量計170により測定し、測定によって得られた測定重量が重量閾値を超えたか否かを判定することで、第1実施形態と同様に、トマトの生長状態を把握できる。測定重量が重量閾値を超えたと判定されると、顕熱寄与度が低下したと判定され、初期プログラム20に代えて増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉が制御される。増加用更新プログラム30では、初期プログラム20に比べて、天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値が高く設定されているので、ビニルハウスに入射する太陽光エネルギーが増加することから、トマトの生長が更に促進される。これによって、第1実施形態と同様に、トマトの生長に応じた最適な制御でトマトを栽培することが可能となる。その結果、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。
【0080】
(第3実施形態)
図6は、栽培管理サーバ及び第3実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。第3実施形態の栽培制御システム100Bが第1実施形態と異なる主な点は、植物体を撮像するカメラ180を備える点である。
【0081】
第3実施形態の栽培制御システム100Bは、室温センサ110、日射センサ120、側窓130、天井カーテン140、給水装置150、カメラ180、制御装置300Bを備える。また、栽培制御システム100Bは、栽培管理サーバ10と、通信ネットワーク90を介して通信可能に接続されている。この第3実施形態では、栽培制御システム100Bは、第1実施形態と同様に、ビニルハウスに設置されている。なお、第3実施形態の給水装置150は、給水量測定部152を備えなくてもよい。
【0082】
カメラ180は、植物(第3実施形態ではトマト)を含んだ任意の箇所を撮像する。カメラ180は、撮像によって得られた撮像画像を制御装置300Bに出力する。カメラ180は、この第3実施形態において、第1センサの一例に相当する。
【0083】
制御装置300Bは、メモリ310B、CPU320B、及び周辺回路(図示省略)を含む。メモリ310B(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ310Bは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。CPU320Bは、メモリ310Bの例えばROMに記憶された第3実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、判定処理部321B、取得処理部322、機器制御部323として機能する。
【0084】
判定処理部321Bは、カメラ180により撮像された撮像画像の色を判定し、撮像画像内の緑色(つまり葉)が占める面積比を判定することにより、植物(第3実施形態ではトマト)の生長状態を把握する。なお、トマトの葉の種々の形状をメモリ310Bに予め格納しておき、判定処理部321Bは、テンプレートマッチングにより、葉が占める面積比を判定してもよい。
【0085】
栽培日数が経過してトマトが生長すると、カメラ180で撮像された撮像画像内で緑色(つまり葉)の占める面積比が増加していく。トマトが生長して撮像画像内で葉の占める面積比が増加するということは、葉の数または葉の面積が増加することを意味する。このため、蒸散水量も増加する。その結果、第1実施形態と同様に、ビニルハウス内に入射する太陽光エネルギー中の熱エネルギーは、蒸散水の気化(つまりビニルハウスの顕熱上昇以外)に、より多く使用される。したがって、ビニルハウスに供給される光量に伴う供給熱がビニルハウスの顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度は、低下する。顕熱寄与度が低下すると、栽培環境に供給される光量を増加させても、ビニルハウス内の室温上昇を抑制することができる。
【0086】
判定処理部321Bは、緑色(つまり葉)の面積比が、トマトの種類に応じて決定された比率閾値を超えたときに、トマトが生長したことにより顕熱寄与度が低下したと判定する。比率閾値は、トマト以外の植物の場合には、植物の種類に応じて、適切な値に決めればよい。取得処理部322は、面積比が比率閾値を超えたと判定処理部321Bにより判定されると、栽培管理サーバ10から増加用更新プログラム30を取得し、メモリ310Bの例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、機器制御部323は、増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉を制御する。
【0087】
図7は、第3実施形態の栽培制御システム100Bの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
図7の動作は、例えば1日に1回実行される。
【0088】
図7の動作が開始されると、ステップS1200において、判定処理部321Bは、カメラ180によって撮像された撮像画像を取得する。
【0089】
次に、ステップS1205において、判定処理部321Bは、撮像画像に占める緑色の面積比を算出する。
【0090】
次に、ステップS1210において、判定処理部321Bは、緑色の面積比が比率閾値を超えたか否かを判定する。
【0091】
緑色の面積比が比率閾値を超えていれば(ステップS1210でYES)、判定処理部321Bは、顕熱寄与度が低下したと判定し、処理はステップS1020に進む。一方、緑色の面積比が比率閾値以下であれば(ステップS1210でNO)、
図7の動作は終了する。
図7のステップS1020の処理は、
図2のステップS1020の処理と同じである。
【0092】
以上説明されたように、この第3実施形態によれば、トマトを含んだ箇所をカメラ180により撮像し、撮像画像に占める緑色の面積比が比率閾値を超えたか否かを判定することで、第1実施形態と同様に、トマトの生長状態を把握できる。撮像画像に占める緑色の面積比が比率閾値を超えたと判定されると、顕熱寄与度が低下したと判定され、初期プログラム20に代えて増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉が制御される。増加用更新プログラム30では、初期プログラム20に比べて、天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値が高く設定されているので、ビニルハウスに入射する太陽光エネルギーが増加することから、トマトの生長が更に促進される。これによって、第1実施形態と同様に、トマトの生長に応じた最適な制御でトマトを栽培することが可能となる。その結果、作物の品質を安定させるシステムを提供できる。
【0093】
(第4実施形態)
図8は、栽培管理サーバ及び第4実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。この第4実施形態では、栽培制御システム100Cは、第1~第3実施形態と異なり、人工照明で植物を栽培するための栽培設備である人工光型植物工場に設置されている。第4実施形態では、栽培設備内に設置されたレタス栽培槽で栽培対象植物としてのレタスを水耕栽培する例が説明される。
【0094】
第4実施形態の栽培制御システム100Cは、室温センサ110、水温センサ190、光量子センサ200、給水装置150C、排水装置160C、照明機器210、空気調和機220、制御装置300Cを備える。また、栽培制御システム100Cは、通信ネットワーク90を介して、栽培管理サーバ10Cと通信可能に接続されている。
【0095】
制御装置300Cは、メモリ310C、CPU320C、及び周辺回路(図示省略)を含む。メモリ310C(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ310Cは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。CPU320Cは、メモリ310Cの例えばROMに記憶された第4実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、判定処理部321C、取得処理部322、機器制御部323Cとして機能する。判定処理部321C、取得処理部322、機器制御部323Cの機能は、後述される。
【0096】
栽培管理サーバ10Cは、初期プログラム20C(第1プログラムの一例に相当)と、増加用更新プログラム30C(第2プログラムの一例に相当)とを予め記憶するハードディスク又は半導体不揮発性メモリ等を備える。初期プログラム20C、増加用更新プログラム30Cでは、それぞれ、照明機器210の動作仕様が定められている。初期プログラム20Cは、栽培管理サーバ10Cから制御装置300Cに予めダウンロードされて、メモリ310Cの例えばRAM又はEEPROMに保存されている。CPU320Cの機器制御部323Cは、初期プログラム20Cに従い照明機器210の動作を制御する。
【0097】
給水装置150Cは、ポンプ151、水位センサ153を含み、レタスに液体肥料を供給する。水位センサ153は、レタス栽培槽に設置された3本の電極を含み、電極間の通電の有無に基づき、レタス栽培槽の水位を検出する。水位センサ153は、ボールタップ方式で構成されてもよく、レタス栽培槽の水位が検出可能に構成されていればよい。給水装置150は、所定濃度の液体肥料を貯留するタンクを含む。水位センサ153により検出されたレタス栽培槽の水位が一定基準(後述)より低下したときに機器制御部323Cがポンプ151を駆動させて、レタス栽培槽に液体肥料を供給する。また、給水装置150Cは、液体肥料を水道水あるいは地下水で希釈した後に供給する構成としてもよい。また、給水装置150Cは、液体肥料の電気伝導度、pH値を測定する測定部を含み、所定の電気伝導度、pH値となるように自動調整する構成としてもよい。
【0098】
排水装置160Cは、レタス栽培槽に溜まった水を排水する。排水装置160Cは、この第4実施形態では、栽培中は排水せずに栓を閉じておき、レタス栽培槽を洗浄する際に排水するように構成されている。なお、排水装置160Cは、常時排水するように構成されても構わない。また、排水装置160Cは、レタス栽培槽に設置された電磁弁を含み、所定のタイミングで機器制御部323Cが電磁弁を開放して、排水するように構成されても構わない。また、排水装置160Cは、流量計を含み、排水量を測定するように構成されても構わない。
【0099】
水温センサ190は、給水装置150Cの出口に設置され、レタスに供給される液体肥料の温度を測定する。光量子センサ200は、照明機器210の下方であって、レタスの葉で生じる影と重ならない場所に設置され、光量子束密度[μmol/m2s]を検出する。なお、光量子センサ200に代えて、日射量[W/m2]を検出する日射計、又は、照度[ルクス]を検出する照度計を備えてもよい。
【0100】
照明機器210は、白色発光ダイオード(LED)の直管を含む。この白色LEDの直管は、複数本の単位で個別に点灯および消灯するように構成されている。照明機器210は、レタスの光合成に必要な光エネルギーの供給量を複数本の直管単位で制御することが可能に構成されている。照明機器210は、第4実施形態において、光制御機器の一例に相当する。
【0101】
初期プログラム20Cでは、機器制御部323Cは、照明機器210の一部の直管を点灯するように構成されている。増加用更新プログラム30Cでは、機器制御部323Cは、照明機器210の全ての直管を点灯するように構成されている。なお、機器制御部323Cは、光量子センサ200の検出結果に基づき、照明機器210の動作を制御してもよい。
【0102】
空気調和機220は、栽培設備内の室温を上昇及び低下させる。機器制御部323Cは、室温センサ110及び水温センサ190の検出結果に基づき、メモリ310Cに保存されている第4実施形態の制御プログラムに従って、空気調和機220の動作を制御する。
【0103】
栽培期間が経過してレタスが生長すると、葉の面積が増加し、蒸散水量が増加する。その結果、照明機器210から発生する熱エネルギーは、蒸散水の気化(つまり栽培施設の顕熱上昇以外)に、より多く使用される。このため、顕熱寄与度は低下する。顕熱寄与度が低下すると、栽培施設に供給される光量を増加させても、栽培設備内の室温の上昇が抑制される。
【0104】
レタスが生長して葉の数が多くなると、光合成を行う葉の面積も増加することから、照明機器210からの光供給量を増加させることで一層生長を促すことができる。よって、照明機器210からの熱エネルギーの顕熱寄与度が低下することにより、栽培設備内の室温上昇が抑制される時期を見計らって、光量をより多く供給する増加用更新プログラム30Cに更新することが重要である。
【0105】
初期プログラム20Cから増加用更新プログラム30Cに更新する時期を判定するためには、レタスの生長状態を把握する手段が必要となる。レタスも、第1~第3実施形態でのトマトと同様に、吸収水量が生長に連れて増加する。そこで、第4実施形態でも、レタス1株あたりの吸収水量が所定の水量閾値を超えたときに、レタスが生長したことにより顕熱寄与度が低下したと判定処理部321Cにより判定されて、初期プログラム20Cが増加用更新プログラム30Cに更新される。
【0106】
レタス栽培槽に設置されている水位センサ153は、3本の電極間の通電の有無に基づいて、第1水位と、第1水位より低い第2水位とを検出可能に構成されている。機器制御部323Cは、レタス栽培槽の水位が第2水位まで低下すると、給水装置150Cのポンプ151を駆動し、レタス栽培槽の水位を第1水位に上昇させる。第4実施形態において、給水装置150Cは、第1センサの一例に相当する。
【0107】
第4実施形態では、レタス栽培槽において低下した水位に相当する水量が、レタスの吸収水量に一致する。レタスの吸収水量が増加すると、レタス栽培槽における水位の低下速度が上昇する。その結果、単位時間当たりのポンプ151の駆動回数が増加する。このため、ポンプ151の駆動回数を判定基準として、レタスの生長状態を判定することができる。
【0108】
給水装置150Cにおけるポンプ151の単位期間(例えば1[日])当りの駆動回数が所定の回数閾値を超えたときに、判定処理部321Cは、レタスが生長して顕熱寄与度が低下したと判定する。取得処理部322は、通信ネットワーク90を通じて栽培管理サーバ10Cから増加用更新プログラム30Cを取得して、メモリ310の例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、機器制御部323Cは、増加用更新プログラム30Cに従い照明機器210等を制御する。これにより、光エネルギーを、より多くレタスに供給し、レタスの光合成を増加させることができる。
【0109】
なお、レタス1株あたりの吸収水量を算出するためには、栽培設備におけるレタスの株数が必要になる。そこで、メモリ310Cに予め保存されている第4実施形態の制御プログラムは、栽培設備におけるレタスの株数を含む。この株数を用いると、給水装置150Cにおけるポンプ151の駆動回数から、レタス1株あたりの吸収水量を算出することができる。
【0110】
図9、
図10は、それぞれ、第4実施形態の栽培制御システム100Cの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
図9の動作は、例えば10秒毎に実行され、
図10の動作は、例えば1日に1回実行される。
【0111】
図9のステップS1300において、判定処理部321Cは、ポンプ151が駆動開始されたか否かを判定する。例えば、機器制御部323Cは、ポンプ151の駆動を開始する度に、メモリ310Cの所定フラグをセットしてもよい。判定処理部321Cは、所定フラグの状態を確認することにより、ポンプ151が駆動開始されたか否かを判定することができる。
【0112】
ポンプ151が駆動開始されていれば(ステップS1300でYES)、処理はステップS1305に進む。一方、ポンプ151が駆動開始されていなければ(ステップS1300でNO)、
図9の動作は終了する。
【0113】
ポンプ151が駆動開始されたと判定された場合、ステップS1305において、判定処理部321Cは、メモリ310Cに保存されているポンプ駆動回数を積算する。その後、
図9の動作は終了する。
【0114】
図10の動作が開始されると、ステップS1400において、判定処理部321Cは、メモリ310Cに保存されているポンプ151の駆動回数を取得する。
【0115】
次に、ステップS1405において、判定処理部321Cは、ポンプ151の駆動回数が回数閾値を超えたか否かを判定する。ポンプ151の駆動回数が回数閾値を超えていれば(ステップS1405でYES)、判定処理部321Cは、顕熱寄与度が低下したと判定し、処理はステップS1020に進む。一方、ポンプ151の駆動回数が回数閾値以下であれば(ステップS1405でNO)、処理はステップS1410に進む。
図10のステップS1020の処理は、
図2のステップS1020の処理と同じである。
【0116】
次に、ステップS1410において、判定処理部321Cは、メモリ310Cに保存されているポンプ151の駆動回数の積算値をゼロにリセットする。その後、
図10の動作は終了する。
【0117】
以上説明されたように、この第4実施形態によれば、レタスの生長に対応した吸収水量を表すポンプ駆動回数が回数閾値を超えたか否かを判定することでレタスの生長状態を把握できる。ポンプ駆動回数が回数閾値を超えたと判定されると、顕熱寄与度が低下したと判定され、初期プログラム20Cに代えて増加用更新プログラム30Cに従い照明機器210が制御される。増加用更新プログラム30Cでは、初期プログラム20Cに比べて、照明機器210の光量が大きくなるように動作仕様が定められているので、レタスに供給される光エネルギーが増加することから、レタスの生長が更に促進される。
【0118】
レタスが小さいときは、蒸散水量が少ないため、最初から増加用更新プログラム30Cを用いると、照明機器210から発生する熱が栽培設備の顕熱上昇に使われて、栽培設備内が高温になり、空気調和機220の冷却能力を超えるような事態も考えられる。これに対して、第4実施形態では、最初は初期プログラム20Cが用いられているので、このような事態を避けることができる。
【0119】
このように、第4実施形態では、栽培設備内の高温化も抑制し、空気調和機220の能力を超えた高温化の防止、または空気調和機220の負荷低減、照明機器210の負荷低減にもつながる。したがって、電気代を抑制しつつ、第1実施形態と同様に、レタスの生長に応じた最適な制御で栽培することが可能となる。
【0120】
なお、上記第4実施形態において、レタスの吸収水量は、室温、水温などの栽培環境によっても異なる。そこで、判定処理部321Cは、室温センサ110、水温センサ190の検出結果に応じて、レタスの生長を判定する回数閾値を変更してもよい。例えば空気調和機220の動作によって、室温が20[℃]にされた場合と30[℃]にされた場合とでは、レタスの吸収水量が変化すると考えられる。そこで、判定処理部321Cは、室温が高いほど、回数閾値を増加させてもよい。これによって、環境要因に左右されずに、より正確にレタスの生長を判定できる。
【0121】
(第5実施形態)
図11は、栽培管理サーバ及び第5実施形態における栽培制御システムの制御構成を模式的に示すブロック図である。第5実施形態の栽培制御システム100Dでは、初期プログラム20から増加用更新プログラム30に切り替えられた後の動作が、第1実施形態の栽培制御システム100と異なる。
【0122】
第5実施形態の栽培制御システム100Dは、室温センサ110(第2センサの一例に相当)、日射センサ120、側窓130、天井カーテン140、給水装置150、排水装置160、制御装置300Dを備える。すなわち、第5実施形態の栽培制御システム100Dは、制御装置300に代えて制御装置300Dを備える点以外は、第1実施形態の栽培制御システム100と同様に構成されている。また、栽培制御システム100Dは、栽培管理サーバ10Dと、通信ネットワーク90を介して通信可能に接続されている。この第5実施形態では、栽培制御システム100Dは、第1実施形態と同様に、ビニルハウスに設置されている。
【0123】
制御装置300Dは、メモリ310D、CPU320D、及び周辺回路(図示省略)を含む。メモリ310D(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ310Dは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。CPU320Dは、メモリ310Dの例えばROMに記憶された第5実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、判定処理部321D、取得処理部322D、機器制御部323Dとして機能する。
【0124】
栽培管理サーバ10Dは、初期プログラム20と、増加用更新プログラム30と、減少用更新プログラム40とを予め記憶するハードディスク又は半導体不揮発性メモリ等を備える。減少用更新プログラム40では、初期プログラム20、増加用更新プログラム30と同様に、天井カーテン140の動作仕様が定められている。初期プログラム20は、栽培管理サーバ10Dから制御装置300Dに予めダウンロードされて、メモリ310Dの例えばRAM又はEEPROMに保存されている。
【0125】
CPU320Dの機器制御部323Dは、最初は、初期プログラム20Dに従い天井カーテン140の開閉を制御する。その後、上記第1実施形態で説明されたように、増加用更新プログラム30が、取得処理部322Dにより取得され、メモリ310Dの例えばRAM又はEEPROMに保存される。そして、機器制御部323Dは、増加用更新プログラム30に従い天井カーテン140の開閉を制御する。
【0126】
ここで、増加用更新プログラム30に従う機器制御部323Dによって、天井カーテン140が開放されている間に、室温センサ110により検出された検出温度が予め設定された温度閾値を超えたときは、太陽光エネルギー中の熱エネルギーがビニルハウスの顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が、想定以上に上昇していると判定することができる。その場合、太陽光エネルギーからビニルハウス内への光供給量が減少するように天井カーテン140の動作仕様が定められた制御プログラムに切り替えることが望ましい。
【0127】
栽培管理サーバ10Dの減少用更新プログラム40では、例えば、日射センサ120により検出される日射量が400[W/m2]を超えたときに、天井カーテン140が閉鎖され、400[W/m2]以下になったときに、天井カーテン140が開放されるように、天井カーテン140の動作仕様が定められている。
【0128】
例えば、室温センサ110による検出温度が、所定の温度閾値(例えば40[℃])を超えたと判定処理部321Dにより判定されると、取得処理部322Dは、通信ネットワーク90を通じて、栽培管理サーバ10Dから減少用更新プログラム40を取得し、取得した減少用更新プログラム40をメモリ310Dの例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、機器制御部323Dは、減少用更新プログラム40に従い天井カーテン140の開閉を制御する。
【0129】
図12は、第5実施形態の栽培制御システム100Dの動作手順例を概略的に示すフローチャートである。
図12の動作は、例えば10秒毎に実行される。
【0130】
図12の動作が開始されると、ステップS1500において、判定処理部321Dは、増加用更新プログラム30で動作中か否かを判定する。例えば機器制御部323Dは、増加用更新プログラム30での動作を開始すると、メモリ310Dの所定フラグをセットしてもよい。判定処理部321Dは、所定フラグの状態を確認することにより、増加用更新プログラム30で動作中か否かを判定することができる。
【0131】
増加用更新プログラム30で動作中であれば(ステップS1500でYES)、処理はステップS1505に進む。一方、初期プログラム20で動作中であれば(ステップS1500でNO)、
図12の動作は終了する。
【0132】
増加用更新プログラム30で動作中と判定された場合、ステップS1505において、判定処理部321Dは、室温センサ110によって検出された室温を取得し、取得した室温が温度閾値を超えたか否かを判定する。室温が温度閾値を超えていれば(ステップS1505でYES)、処理はステップS1510に進む。一方、室温が温度閾値以下であれば(ステップS1505でNO)、
図12の動作は終了する。
【0133】
室温が温度閾値を超えたと判定された場合、ステップS1510において、取得処理部322Dは、栽培管理サーバ10Dから減少用更新プログラム40を取得し、取得した減少用更新プログラム40を、メモリ310Dの例えばRAM又はEEPROMに保存する。その後、
図12の動作は終了する。
【0134】
以上説明されたように、この第5実施形態によれば、何らかの理由で栽培対象植物の一部が枯れてしまい、栽培設備内の蒸散水量が少なくなって、ビニルハウス内の室温が温度閾値を超えて、顕熱寄与度が上昇したと判定されたときでも、ビニルハウス内部の温度上昇を抑制することができる。また、突然、季節外れの高温になる気象条件に曝されたときでも対応できる。
【0135】
なお、上記第5実施形態では、上述のように、栽培管理サーバ10Dの減少用更新プログラム40は、第1実施形態の天井カーテン140に適用されているが、第2実施形態の天井カーテン140、又は第3実施形態の天井カーテン140に適用されてもよい。
【0136】
或いはまた、上記第5実施形態における栽培管理サーバ10Dの減少用更新プログラム40は、第4実施形態の照明機器210に適用されてもよい。例えば、増加用更新プログラム30に従う機器制御部323Dによって、照明機器210が全点灯して照明機器210からの光供給量が多い時に、室温センサ110により検出された検出温度が予め設定された温度閾値を超えたときは、熱エネルギーが栽培施設の顕熱上昇に使われる度合を表す顕熱寄与度が想定以上に上昇していると判定することができる。その場合、照明機器210からの光供給量が減少するように照明機器210の動作仕様が定められた制御プログラムに切り替えることが望ましい。例えば、室温センサ110による検出温度が、所定の温度閾値(例えば40[℃])を超えると、通信ネットワーク90を通じて栽培管理サーバ10Dから、照明機器210の点灯本数を減少させる減少用更新プログラムが取得されるように構成されてもよい。
【0137】
以上のように、栽培管理サーバ10Dの減少用更新プログラム40が、第2実施形態の天井カーテン140、第3実施形態の天井カーテン140、又は第4実施形態の照明機器210に適用されても、上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0138】
(その他)
(1)上記第1~第3実施形態では、初期プログラム20と増加用更新プログラム30とについて、天井カーテン140を開閉する日射量の閾値が異なることのみが説明されている。また、上記第4実施形態では、初期プログラム20Cと増加用更新プログラム30Cとについて、照明機器210の光量が異なることのみが説明されている。しかしながら、実際には、日射量の閾値変更又は照明機器210の光量変更に応じて、他のパラメータも変更されており、単に日射量の閾値又は照明機器210の光量が異なるだけではない。このため、上記各実施形態では、増加用更新プログラム30,30Cが栽培管理サーバに予め格納されて、必要に応じて、初期プログラム20,20Cが、それぞれ、増加用更新プログラム30,30Cに更新されるように構成されている。
【0139】
例えば、初期プログラム20,20Cに対して、増加用更新プログラム30,30Cでは、1回当りの給水量が増加されている。または、増加用更新プログラム30,30Cでは、1日あたりの給水回数が増加されてもよい。例えば、日の出及び日の入の時刻に応じて機器の制御時刻が変更されてもよい。例えば、初期プログラム20では、日の出から2時間は天井カーテン140が開放されないが、増加用更新プログラム30では、日の出から1時間で天井カーテン140が開放されるように構成されてもよい。
【0140】
(2)上記第1~第4実施形態において、更に、室温センサ110により検出された温度が温度閾値(例えば25[℃])を超えると、側窓130が開放されるように構成されてもよい。これによって、室温を低下させることができる。この温度閾値は、初期プログラム20と増加用更新プログラム30とで同じでもよい。側窓130については、室温を低下させるために側窓130が開放されても、トレードオフとなるパラメータは存在しない。このため、温度閾値は変更する必要がない。これに対して、天井カーテン140については、室温を低下させるために天井カーテン140が閉塞されると、太陽光が遮られてしまう。このように、天井カーテン140の開閉にはトレードオフとなるパラメータが存在するため、初期プログラム20と増加用更新プログラム30とで、天井カーテン140を開閉する閾値が変更されている。
【0141】
(3)上記第1~第4実施形態において、初期プログラム20から増加用更新プログラム30への切替は、増加用更新プログラム30が取得された日の翌日以降でもよい。また、増加用更新プログラム30を取得するためのダウンロード操作および初期プログラム20から増加用更新プログラム30への切替操作は、栽培管理者が人為的に行ってもよい。
【0142】
(4)上記第1~第4実施形態において、
図2のステップS1015、
図5のステップS1105、
図7のステップS1210、
図10のステップS1405において、それぞれ、複数回YESとなったときに、増加用更新プログラム30を取得するステップに進むようにしてもよい。
【0143】
(5)上記第1実施形態において、栽培管理サーバ10は、増加用更新プログラム30に加えて、第2の増加用更新プログラムを格納していてもよい。第2の増加用更新プログラムは、天井カーテン140を開閉するための日射量の閾値を、例えば800[W/m2]としてもよい。また、上記水量閾値に加えて、上記水量閾値より大きい第2の水量閾値が設定されていてもよい。そして、初期プログラム20が増加用更新プログラム30に切り替えられた後で、さらに吸収水量が第2の水量閾値を超えたと判定処理部321により判定されると、取得処理部322は、第2の増加用更新プログラムを栽培管理サーバ10から取得してもよい。機器制御部323は、第2の増加用更新プログラムに従い天井カーテン140の開閉を制御してもよい。上記第2~第4実施形態でも同様である。また、栽培管理サーバ10は、第2の水量閾値及び第2の増加用更新プログラムに加えて、更に多くの、水量閾値及び増加用更新プログラムを備えてもよい。これによって、植物体の更なる生長に対応して、更に多くの太陽光を取り入れることができる。この実施形態において、増加用更新プログラム30は第1プログラムの一例に相当し、第2の増加用更新プログラムは第2プログラムの一例に相当する。
【0144】
(6)上記第1~第4実施形態において、初期プログラム20から増加用更新プログラム30へ切り替えられた後は、取得処理部322は、それまで使用していた更新前の初期プログラム20をメモリ310,310A,310B,310Cから消去してもよい。同様に、上記第5実施形態において、増加用更新プログラム30から減少用更新プログラム40へ切り替えられた後は、取得処理部322Dは、それまで使用していた更新前の増加用更新プログラム30をメモリ310Dから消去してもよい。更新前のプログラムが消去されることで、メモリ310等の空き領域を確保することができる。このため、次回以降のプログラムのダウンロード時にメモリ310等の容量が超えてしまい、障害が起きる事態を防止することができる。
【0145】
なお、上記(5)のように、更に多くの増加用更新プログラムを備える場合には、取得処理部322は、増加用更新プログラム30に切り替えた後も更新前の初期プログラム20をメモリ310等に残し、3つのプログラムが記憶された後に、最初のプログラムを消去するなどの基準を設けて、逐次プログラムを消去するように構成されてもよい。これによって、制御プログラムの更新を頻繁に行っても、メモリ310等の空き領域を確保し、容量不足に伴い制御プログラムが更新できなくなる事態を防止できる。
【0146】
(7)上記第1~第4実施形態において、栽培管理サーバ10は、複数の制御プログラムをライブラリ状に保存していてもよい。取得処理部322は、栽培時期、栽培方法に応じて必要な制御プログラムを選択して取得してもよい。更に、栽培管理サーバ10に保存されている制御プログラムは、栽培管理者によって自由に改変可能に構成されていてもよい。また、栽培管理サーバ10は、栽培管理者によって新規に作成された制御プログラムを追加保存可能に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示に係る栽培制御技術は、植物を栽培するシステムに特に有用である。