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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】光治療診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20240314BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B1/00 526
A61B1/00 621
A61B1/00 715
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021526022
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021777
(87)【国際公開番号】W WO2020250753
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019109903
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都 俊彦
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0099612(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1808675(KR,B1)
【文献】特開2008-125939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067 - A61N 5/067
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に第1端と第2端を有するカテーテルシャフトであって、該長手方向に延在している内腔を有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの前記内腔に配置され、前記長手方向に進退可能な光導波路と、
前記カテーテルシャフトの前記内腔であって前記光導波路よりも遠位側に配置されている透明部材と、を有し、
前記光導波路は、第1光線と該第1光線とは波長が異なる第2光線とを導波するものであり、
前記カテーテルシャフトは、前記カテーテルシャフトの側部に配されている側方射出窓と前記カテーテルシャフトの遠位端部に配されている遠方射出窓とを備え、
前記側方射出窓から前記第1光線と前記第2光線が側方に射出され、
前記遠方射出窓から前記第1光線が遠位方向に射出され、
前記光導波路はコアとクラッドとを有しており、前記コアの遠位端面の法線は前記光導波路の光軸に対して傾斜しており、
前記光導波路と前記透明部材とが当接しているとき前記第1光線は前記透明部材を透過し、
前記光導波路と前記透明部材とが離隔しているとき前記コアを導波する前記第1光線は前記光導波路の遠位端部で反射することを特徴とする光治療診断装置。
【請求項2】
前記透明部材が前記光導波路よりも光路が短い短尺光導波路であり、当該短尺光導波路の近位端面の法線は、前記カテーテルシャフトの前記長手方向に対して傾斜している請求項1に記載の光治療診断装置。
【請求項3】
前記光導波路の近位部は周方向回転部材に接続されており、かつ当該周方向回転部材は所定の回転角度において回転が停止されるように構成されており、
前記周方向回転部材が前記所定の回転角度にあるとき、前記光導波路の遠位端面と前記短尺光導波路の近位端面とが平行となる請求項2に記載の光治療診断装置。
【請求項4】
前記透明部材が前記光導波路よりも柔らかい材料で構成されている請求項1に記載の光治療診断装置。
【請求項5】
前記透明部材の遠位端面は、前記カテーテルシャフトの前記長手方向に対して垂直である請求項1~4のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項6】
前記側方射出窓は前記カテーテルシャフトの全周にわたって配されている請求項1~5のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項7】
前記光導波路の近位部は、前記光導波路を前記カテーテルシャフトの周方向に回転させる周方向回転部材に接続されている請求項1~6のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項8】
前記光導波路は、第1コアと、該第1コアの外方にある第2コアと、該第2コアの外方にあるクラッドとを有している請求項1~7のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
但し、第1コアの屈折率n1と、第2コアの屈折率n2と、クラッドの屈折率n3は、n1>n2>n3を満たす。
【請求項9】
前記光導波路は、前記第1コアの外方かつ前記第2コアの内方に中間クラッドを有している請求項8に記載の光治療診断装置。
但し、第1コアの屈折率n1と、第2コアの屈折率n2と、中間クラッドの屈折率n4は、n1>n2>n4を満たす。
【請求項10】
前記側方射出窓は、前記クラッドの非存在領域に対応して配されている請求項8または9に記載の光治療診断装置。
【請求項11】
前記第2コアは、前記コアの前記遠位端面よりも近位側に光拡散領域を有している請求項8~10のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項12】
前記光拡散領域における前記第2コアの外表面の表面粗さRaは、前記光拡散領域よりも遠位領域における前記第2コアの外表面の表面粗さRaよりも大きい請求項11に記載の光治療診断装置。
但し、表面粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに基づくものとする。
【請求項13】
前記第2コアは前記光拡散領域において光拡散粒子を内包している請求項11または12に記載の光治療診断装置。
【請求項14】
前記カテーテルシャフトの遠位端部は尖鋭である請求項1~13のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項15】
前記第1光線を発生させる光源と、該光源と前記コアの前記遠位端面との間に配置されているレンズと、を有する請求項1~14のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【請求項16】
前記カテーテルシャフトは、その内腔に連通するバルーンを含む請求項1~15のいずれか一項に記載の光治療診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学的治療法(PDT:PHOTODYNAMIC THERAPY)や光免疫療法(PIT:PHOTO-IMMUNOTHERAPY)といった光を用いた治療法に用いる光治療診断装置およびその作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDTやPITといった光を用いた生体治療法が注目されているが、下記特許文献に記載されているように、生体内に治療のための光線を照射するに先立ち治療部位の状態を把握するための光線を照射することができる光測定装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、筒状のプローブ外筒と、光導波部材と、第1照射部と、第2照射部とを有する光プローブが開示されている。光導波部材は、プローブ外筒の内部空間にプローブ外筒の軸方向に配設された第1の光と第2の光とを導波する。第1照射部は、光導波部材の先端から射出した第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射する。第2照射部は、光導波部材の先端から射出した第2の光を、プローブ外筒の外方に配された照射対象上であって第1照射部により走査しながら照射されたときに照射対象上に形成される第1の光の軌跡上に照射可能にする。光導波部材から第1の光と前記第2の光とが同時に射出されたとき、第1照射部と第2照射部とが照射対象上の異なる部位に第1の光と第2の光とをそれぞれ照射する。
【0004】
特許文献2には、挿入部と、照明光照射部と、治療光照射部と、受光部と、光強度検出部とを有する内視鏡システムが開示されている。挿入部は、被検体の体腔内に挿入可能な筒形形状を有して形成されている。照明光照射部は、挿入部の先端部に設けられ、体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を、先端部の前方へ照射するように構成されている。治療光照射部は、先端部と一体にまたは別体に設けられ、治療光供給部から供給される治療光を伝送する治療光伝送部と、治療光伝送部により伝送された治療光を、先端部の前方における略管状の領域内に拡散して照射する光拡散部とを有している。受光部は、先端部の前方へ照射された照明光の戻り光、及び、先端部の前方における略管状の領域内に照射された治療光の戻り光をそれぞれ受光する。光強度検出部は、受光部において受光された治療光の戻り光の強度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-125939号公報
【文献】特開2014-104138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載の装置に用いられている光学デバイスはいずれも、例えばMEMSなどの微細加工技術を用いて製造される、非常に細径のものである。このため、生体表面を照らす照明光学系においても生体表面から戻ってきた光の受光光学系においても光線量の低下が発生しやすく、観察像の解像度を上げることには改善の余地があった。本発明は、例えばケラレ、口径食など生体観察に用いる光線量の低下によるロスを低減し、光の利用効率を高めた光治療診断装置とその作動方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得た本発明の光治療診断装置の一実施態様は、長手方向に第1端と第2端を有するカテーテルシャフトであって、長手方向に延在している内腔を有するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの内腔に配置され、長手方向に進退可能な光導波路と、カテーテルシャフトの内腔であって光導波路よりも遠位側に配置されている透明部材と、を有し、光導波路は、第1光線と、第1光線とは波長が異なる第2光線とを導波するものであり、カテーテルシャフトは、カテーテルシャフトの側部に配されている側方射出窓とカテーテルシャフトの遠位端部に配されている遠方射出窓とを備え、側方射出窓から第1光線と第2光線が側方に射出され、遠方射出窓から第1光線が遠位方向に射出され、光導波路はコアとクラッドとを有しており、コアの遠位端面の法線は光導波路の光軸に対して傾斜しており、光導波路と透明部材とが当接しているとき第1光線は透明部材を透過し、光導波路と透明部材とが離隔しているときコアを導波する第1光線は光導波路の遠位端部で反射することを特徴とする。上記光治療診断装置では、カテーテルシャフトの内腔に透明部材が配置されており、光導波路と透明部材とが離隔しているときコアを導波する第1光線は光導波路の遠位端部で反射し、光導波路と透明部材とが当接しているとき第1光線は透明部材を透過するため、光治療の光学系を併設しながらも生体観察に用いる光線量の低下によるロスを低減して光の利用効率を向上させることができる。
【0008】
上記光治療診断装置において、透明部材が光導波路よりも光路が短い短尺光導波路であり、当該短尺光導波路の近位端面の法線は、カテーテルシャフトの長手方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0009】
上記光治療診断装置において、光導波路の近位部は周方向回転部材に接続されており、かつ当該周方向回転部材は所定の回転角度において回転が停止されるように構成されており、周方向回転部材が所定の回転角度にあるとき、光導波路の遠位端面と短尺光導波路の近位端面とが平行となることが好ましい。
【0010】
上記光治療診断装置において、透明部材が光導波路よりも柔らかい材料で構成されていることが好ましい。
【0011】
上記光治療診断装置において、透明部材の遠位端面は、カテーテルシャフトの長手方向に対して垂直であることが好ましい。
【0012】
上記光治療診断装置において、側方射出窓はカテーテルシャフトの全周にわたって配されていることが好ましい。
【0013】
上記光治療診断装置において、光導波路の近位部は、光導波路をカテーテルシャフトの周方向に回転させる周方向回転部材に接続されていることが好ましい。
【0014】
上記光治療診断装置において、光導波路は、第1コアと、該第1コアの外方にある第2コアと、該第2コアの外方にあるクラッドとを有していることが好ましい。但し、第1コアの屈折率n1と、第2コアの屈折率n2と、クラッドの屈折率n3は、n1>n2>n3を満たす。
【0015】
上記光治療診断装置において、光導波路は、第1コアの外方かつ第2コアの内方に中間クラッドを有していることが好ましい。但し、第1コアの屈折率n1と、第2コアの屈折率n2と、中間クラッドの屈折率n4は、n1>n2>n4を満たす。
【0016】
上記光治療診断装置において、側方射出窓は、クラッドの非存在領域に対応して配されていることが好ましい。
【0017】
上記光治療診断装置において、第2コアは、コアの遠位端面よりも近位側に光拡散領域を有していることが好ましい。
【0018】
上記光治療診断装置において、光拡散領域における第2コアの外表面の表面粗さRaは、光拡散領域よりも遠位領域における第2コアの外表面の表面粗さRaよりも大きいことが好ましい。但し、表面粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに基づくものとする。
【0019】
上記光治療診断装置において、第2コアは光拡散領域において光拡散粒子を内包していることが好ましい。
【0020】
上記光治療診断装置において、カテーテルシャフトの遠位端部は尖鋭であることが好ましい。
【0021】
上記光治療診断装置は、第1光線を発生させる光源と、該光源とコアの遠位端面との間に配置されているレンズと、をさらに有することが好ましい。
【0022】
上記光治療診断装置において、カテーテルシャフトは、その内腔に連通するバルーンを含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明は上記光治療診断装置の作動方法も提供する。本発明の光治療診断装置の作動方法の一実施態様は、コアと透明部材とが当接している状態において第1光線を光導波路に導波させるステップと、コアと透明部材とが離隔している状態において第1光線を光導波路に導波させるステップと、第2光線を光導波路に導波させることにより第2光線を側方射出窓から射出するステップと、を有している。
【発明の効果】
【0024】
上記光治療診断装置およびその作動方法によれば、光治療の光学系を併設しながらも生体観察に用いる光線量の低下によるロスを低減して光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る光治療診断装置の側面図を表す。
図2図1の光治療診断装置の遠位側を拡大した断面図を表し、カテーテルシャフトの側方に向けて第1光線を射出している状態を表す。
図3図1の光治療診断装置の遠位側を拡大した断面図を表し、カテーテルシャフトの遠位方向に向けて第1光線を射出している状態を表す。
図4図1の光治療診断装置の遠位側を拡大した断面図を表し、カテーテルシャフトの側方に向けて第2光線を射出している状態を表す。
図5図2の光治療診断装置の変形例を示す断面図を表す。
図6図3の光治療診断装置の変形例を示す断面図を表す。
図7図2の光治療診断装置のVII-VII断面図を表す。
図8図7の光治療診断装置の変形例を示す断面図を表す。
図9図4の光治療診断装置の変形例を示す断面図を表す。
図10図2の光治療診断装置の他の変形例を示す断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0027】
本発明の光治療診断装置の一実施態様は、長手方向に第1端と第2端を有するカテーテルシャフトであって、長手方向に延在している内腔を有するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの内腔に配置され、長手方向に進退可能な光導波路と、カテーテルシャフトの内腔であって光導波路よりも遠位側に配置されている透明部材と、を有し、光導波路は、第1光線と、第1光線とは波長が異なる第2光線とを導波するものであり、カテーテルシャフトは、カテーテルシャフトの側部に配されている側方射出窓とカテーテルシャフトの遠位端部に配されている遠方射出窓とを備え、側方射出窓から第1光線と第2光線が側方に射出され、遠方射出窓から第1光線が遠位方向に射出され、光導波路はコアとクラッドとを有しており、コアの遠位端面の法線は光導波路の光軸に対して傾斜しており、光導波路と透明部材とが当接しているとき第1光線は透明部材を透過し、光導波路と透明部材とが離隔しているときコアを導波する第1光線は光導波路の遠位端部で反射することを特徴とする。上記光治療診断装置では、カテーテルシャフトの内腔に透明部材が配置されており、光導波路と透明部材とが離隔しているときコアを導波する第1光線は光導波路の遠位端部で反射し、光導波路と透明部材とが当接しているとき第1光線は透明部材を透過するため、光治療の光学系を併設しながらも生体観察に用いる光線量の低下によるロスを低減して光の利用効率を向上させることができる。
【0028】
図1図4を参照しながら、光治療診断装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光治療診断装置の側面図を表し、図2図4は、図1の光治療診断装置の遠位側を拡大した断面図を表す。図2は、カテーテルシャフトの側方に向けて第1光線を射出している状態を表し、図3はカテーテルシャフトの遠位方向に向けて第1光線を射出している状態を表し、図4は、カテーテルシャフトの側方に向けて第2光線を射出している状態を表す。光治療診断装置1は、カテーテルシャフト10と、光導波路20と、透明部材30とを有している。以下では、光治療診断装置1を単に装置1、カテーテルシャフト10を単にシャフト10と称することがある。
【0029】
装置1はPDTやPITに使用することができる。装置1において、画像診断による生体組織の観察には光干渉断層法(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いることが好ましいが、超音波イメージング法や蛍光イメージング法を用いてもよい。
【0030】
シャフト10は、長手方向を規定する第1端と第2端を有している。なお、装置1およびシャフト10の遠位側とは、シャフト10の長手方向(換言すれば、シャフト10の長手軸方向)の第1端側であって処置対象側を指す。光治療診断装置1およびシャフト10の近位側とはシャフト10の長手方向の第2端側であって使用者(術者)の手元側を指す。図1においては左側が遠位側、右側が近位側を表している。また、シャフト10の径方向において、内方はシャフト10の長手軸中心に向かう方向を指し、外方は内方とは反対方向の放射方向を指す。
【0031】
シャフト10は、長手方向に延在している内腔11を有している。シャフト10は内腔11に光導波路20を配置するために管状構造を有している。シャフト10は体内に挿入されるものであるため、好ましくは可撓性を有している。管状構造を有するシャフト10としては、一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;筒状の樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらをシャフト10の長手方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。シャフト10が筒状の樹脂チューブである場合、シャフト10は単層または複数層から構成することができる。シャフト10はその長手方向または周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。図1に示すように、シャフト10の近位部には術者が把持するハンドル40が好ましく接続される。装置1は、内視鏡に組み込まれてもよく、併用デバイスとして用いられてもよい。これにより、対象部位のより詳細な観察、治療が可能となる。
【0032】
シャフト10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
光導波路20は、シャフト10の内腔11に配置され、シャフト10の長手方向に進退可能となっている。光導波路20は、第1光線51と、第1光線51とは波長が異なる第2光線52とを導波するものである。光導波路20がシャフト10の長手方向に進退可能に配置されていることにより、光導波路20と透明部材30の当接と非当接を切り替えることができる。光導波路20はコア21とクラッド23とを有しており、コア21の遠位端面22の法線は光導波路20の光軸に対して傾斜している。光導波路20としては、光ファイバーが挙げられる。光導波路20の近位部には光源が接続されることが好ましい。これにより、光導波路20に第1光線51および第2光線52を入射することができる。
【0034】
光導波路20をシャフト10の内腔11においてシャフト10の長手方向に移動させることで、シャフト10に対する光導波路20の位置を変更することができる。これにより、第1光線51を側方射出窓12から射出することによって装置1の側方を観察する側方観察モードと、第1光線51を遠方射出窓13から射出することによって装置1の前方を観察する前方観察モードに切り替えることができる。装置1を身体に穿刺するときには前方観察モードにすることで装置1が血管を刺すリスクを低減することができる。所定の位置まで装置1を挿入した後は側方観察モードにすることで対象部位を観察することができる。
【0035】
第1光線51は治療部位またはその周辺部位の状態を把握するための観察用光線であり、第2光線52は治療用光線であることが好ましい。これにより、1つの装置1で治療部位の状態の把握と治療の両方を行うことができ、これまでは難しかった診断と治療を同時に行うことができる。治療用光線の照射後に観察用光線を用いて対象部位を観察することで対象部位の治療結果を確認することができる。その結果、手技時間および治療期間の短縮が可能となる。
【0036】
OCTでの生体組織の観察では、第1光線51は、近赤外線光であることが好ましく、赤外線光であることがより好ましい。これにより、第1光線51の体組織通過性が良好となる。第1光線51の光源は、Super Luminescent Diode光源、Super Continuum光源、または波長掃引レーザーでもよい。第1光線51の波長(中心波長)は、例えば1.3μm以上、1.35μm以上、または1.4μm以上であってもよく、1.8μm以下、1.75μm以下、または1.7μm以下であることも許容される。
【0037】
第2光線52は、体内組織を照射し、PDTやPITといった光治療に適した波長のレーザー光であることが好ましい。第2光線52の波長は第1光線51の波長よりも短いことが好ましい。第2光線52の波長は、例えば0.64μm以上、0.65μm以上、または0.66μm以上であってもよく、0.72μm以下、0.71μm以下、または0.7μm以下であることも許容される。
【0038】
1つの光源から第1光線51と第2光線52が射出されてもよく、第1光線51と第2光線52が異なる光源から射出されてもよい。
【0039】
装置1は第1光線51を発生させる光源42と、該光源42とコア21の遠位端面22との間に配置されているレンズ(図示せず)とを有することが好ましい。光源42により光導波路20内に第1光線51を入射することができ、レンズで第1光線51を集光することで側方射出窓12の側方にある生体組織の像や遠方射出窓13の遠方にある生体組織の像を得ることができる。レンズは、光導波路20よりも近位側に配置されていてもよく、光導波路20中に配置されていてもよく、光導波路20よりも遠位側に配置されていてもよい。レンズとしては、屈折率が連続的に変化して構成される所謂GRINレンズを用いることが好ましい。
【0040】
シャフト10は、シャフト10の側部に配されている側方射出窓12とシャフト10の遠位端部に配されている遠方射出窓13とを備えている。側方射出窓12からは第1光線51と第2光線52が側方に射出され、遠方射出窓13からは第1光線51が遠位方向に射出される。このようにシャフト10に射出窓を設けることにより、射出窓から光線を射出することができる。
【0041】
側方射出窓12は、シャフト10の側壁に好ましく形成される。側方射出窓12は、シャフト10の周方向に延在するように配されていることが好ましく、シャフト10の全周にわたって配されていることがより好ましい。これにより、第2光線52を一度に広範囲に照射することができるため、患者の負担を軽減することができる。
【0042】
側方射出窓12は、シャフト10の遠位端よりも近位側に配置されていることが好ましい。側方射出窓12の近位端は、例えばシャフト10の遠位端から10cm以内の範囲に配置することができる。
【0043】
遠方射出窓13は、シャフト10の遠位端面に形成されていることが好ましい。これにより、遠方射出窓13から遠位方向に第1光線51を射出しやすくなる。なお、シャフト10の遠位端面は平面であっても曲面であってもよい。これにより、遠方射出窓13も平面または曲面に形成することができる。
【0044】
側方射出窓12や遠方射出窓13は、第1光線51または第2光線52を透過する材料から構成されていればよい。側方射出窓12や遠方射出窓13の構成材料は、シャフト10のうちこれらの射出窓が形成されていない部分の構成材料と比べて高い透過率を有していることが好ましい。側方射出窓12や遠方射出窓13を構成する材料としては、シャフト10や後述する透明部材30を構成する樹脂の説明を参照することができる。側方射出窓12と遠方射出窓13を構成する材料は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0045】
図2に示すように、透明部材30は、シャフト10の内腔11であって光導波路20よりも遠位側に配置されている。光導波路20のコア21の遠位端面22の法線が光導波路20の光軸に対して傾斜している。このため、図2に示すように光導波路20と透明部材30とが離隔しているとき、コア21を導波する第1光線51は光導波路20の遠位端部で反射する。これにより、第1光線51を側方射出窓12から側方に射出することができるため、シャフト10の側方にある生体組織の状態を把握することができる。なお、OCTでは、第1光線51を生体組織に照射したときの反射光に基づき断層画像を作成する。詳説すると、光導波路20の遠位端部における第1光線51の反射は、光導波路20のコア21の屈折率とシャフト10の内腔11に存在している空気の屈折率が異なっていることに起因している。例えば、コア21の屈折率を1.45に設定すると、空気の屈折率は約1であるため、スネルの法則によりsinθc=1/1.45=0.6896となり、臨界入射角θcは約43.6°となる。このため、コア21の遠位端面22の法線と光導波路20の光軸のなす角度を43.6°よりも大きくすることにより、コア21側から反射界面に対して入射する第1光線51を側方射出窓12から側方に射出することができる。なお、上記屈折率は、波長589.3nmの光(ナトリウムのD線)についての値を示している。
【0046】
他方、図3に示すように、光導波路20と透明部材30とが当接しているとき第1光線51は透明部材30を透過する。これにより、第1光線51を遠方射出窓13から遠位方向に射出することができるため、装置1よりも遠位にある生体組織の状態を把握することができる。詳細には、光導波路20のコア21と透明部材30の屈折率を同一か、互いに近い値に設定することが好ましい。コア21と透明部材30を当接させてもコア21と透明部材30の界面では反射は起こらないため、コア側21から入射した第1光線51は透明部材30を透過する。その結果、第1光線51をシャフト10の遠位方向に射出することができるようになる。
【0047】
上記のように光導波路20と透明部材30を当接または非当接にすることにより、第1光線51の射出方向を、側方と遠位方向に容易に切り替えることができる。したがって、装置1によれば、光治療の光学系を併設しながらも生体観察に用いる光線量の低下によるロスを低減して光の利用効率を向上させることができる。
【0048】
図4に示すように、光導波路20と透明部材30とが離隔しているとき、コア21を導波する第2光線52が光導波路20の遠位端部で反射することが好ましい。これにより、第2光線52を側方射出窓12から側方に射出することができる。第2光線52をシャフト10の側方にある生体組織に照射することで、光線を用いた生体治療を行うことができる。
【0049】
コア21の遠位端面22は、平面であることが好ましい。これにより、光導波路20と透明部材30とが離隔しているときに、コア21を導波する第1光線51がコア21の遠位端面22で反射しやすくなる。
【0050】
光導波路20の光軸に対するコア21の遠位端面22の法線の傾斜角度は、光導波路20のコア21と透明部材30の屈折率との関係で適宜設定することができる。上記傾斜角度は、例えば、40°以上、41°以上、または42°以上であってもよく、あるいは、47°以下、46°以下、または45°以下であることも許容される。
【0051】
光導波路20のコア21の屈折率は、クラッド23の屈折率よりも大きければよく、例えば、1.4以上、1.41以上、1.43以上、または1.45以上であってもよく、あるいは1.7以下、1.6以下、または1.5以下とすることも許容される。
【0052】
透明部材30は、第1光線51を透過可能な材料から構成されていればよい。光導波路20のコア21と透明部材30の屈折率が同一であるか、互いに近い値であることが好ましい。これにより、光導波路20のコア21が透明部材30に当接したときに、第1光線51を遠位方向に確実に射出することができる。したがって、透明部材30の屈折率は、1.4以上であることが好ましく、1.41以上がより好ましく、1.43以上がさらに好ましく、1.45以上がさらにより好ましく、また、1.7以下、1.6以下、または1.5以下とすることも許容される。
【0053】
透明部材30は、第1光線51を透過する材料から構成されていればよい。透明部材30は、例えば、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート樹脂(例えば、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PC))、ポリスチレン系樹脂(例えば、メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂(MS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(SAN))、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
図2図4に示すように、透明部材30は樹脂塊31であることが好ましい。これにより、シャフト10内に透明部材30を配置しやすくなる。樹脂塊31は、シャフト10の内腔11を塞いでいることが好ましい。これにより、光導波路20と樹脂塊31との当接時に接触面積を確保することができる。
【0055】
透明部材30が光導波路20よりも柔らかい材料で構成されていることが好ましい。光導波路20と透明部材30が当接したときに、透明部材30が光導波路20に密着しやすくなるため、遠位方向に第1光線51を射出しやすくなる。
【0056】
透明部材30の遠位端面は、シャフト10の長手方向に対して垂直であることが好ましい。これにより、透明部材30の遠位端面における第1光線51の反射ロスを防ぐことができるため、第1光線51が遠位方向に射出されやすくなる。
【0057】
図5図6は、透明部材30が短尺光導波路32である場合の例について示している。図5に示すように、透明部材30が光導波路20よりも光路が短い短尺光導波路32であってもよい。短尺光導波路32は、コア33とクラッド34を有していればよい。このように透明部材30を構成することによっても、第1光線51の射出方向を容易に切り替えることができる。例えば、図5に示すように光導波路20と短尺光導波路32(詳細には、光導波路20のコア21と短尺光導波路32のコア33)を離隔させることで、コア21を導波する第1光線51は光導波路20の遠位端部で反射する。また、図6に示すように光導波路20と短尺光導波路32を当接させることで、光導波路20と短尺光導波路32が1つの導波路として機能するため、第1光線51を遠位方向に射出することが可能となる。
【0058】
短尺光導波路32の近位端面35の法線は、シャフト10の長手方向に対して傾斜していることが好ましい。これにより、光導波路20のコア21の遠位端面22と、短尺光導波路32の近位端面35を当接させやすくなる。その結果、光導波路20と短尺光導波路32を接続しやすくなり、第1光線51を遠位方向に射出しやすくなる。
【0059】
装置1をシャフト10の長手方向から見たときに、光導波路20のコア21と、短尺光導波路32のコア33は重なって配置されていることが好ましく、短尺光導波路32の光軸が、光導波路20の光軸と重なって配置されていることがより好ましい。光導波路20と短尺光導波路32を当接させたときに、第1光線51が光導波路20から短尺光導波路32に入射しやすくなる。
【0060】
図2図6に示すように、透明部材30は、遠方射出窓13と当接していることが好ましいが、遠方射出窓13と隣り合っていてもよい。
【0061】
図7図8を用いて光導波路20の構成について説明する。光導波路20は、1つのクラッドの中に1つのコアが配置されているシングルコアファイバーを一または複数有していてもよく、1つのクラッドの中に複数のコアが配置されているマルチコアファイバーを一または複数有していてもよい。
【0062】
図7に示すように、光導波路20は、第1コア21Aと、第1コア21Aの外方にある第2コア21Bと、該第2コア21Bの外方にあるクラッド23とを有していることが好ましい。但し、第1コア21Aの屈折率n1と、第2コア21Bの屈折率n2と、クラッド23の屈折率n3は、n1>n2>n3を満たす。このように第2コア21Bを第1コア21Aの外周に配置することにより、第2光線52をシャフト10の全周から射出しやすくなり、一度に広範囲を照射可能となる。第1コア21A、第2コア21Bおよびクラッド23は、同心円状に配置されていることが好ましい。これにより、クラッド23で光線の洩れを防ぎながら、第1コア21Aで第1光線51を導波し、第1コア21Aおよび第2コア21Bで第2光線52を導波することができる。
【0063】
図8は、図7に示した光導波路20の変形例を示す断面図を表す。図8に示すように、光導波路20は、第1コア21Aの外方かつ第2コア21Bの内方に中間クラッド24を有していることが好ましい。但し、第1コア21Aの屈折率n1と、第2コア21Bの屈折率n2と、中間クラッド24の屈折率n4は、n1>n2>n4を満たす。これにより、第1コア21Aで導波される光線を中間クラッド24で閉じ込めて、第2コア21Bで導波される光線を中間クラッド24およびクラッド23で閉じ込めることができる。その結果、光導波路20からの光の洩れを防ぐことができる。なお、中間クラッド24の屈折率n4は、クラッド23の屈折率n3と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
図9は、図4の装置1の変形例を示す断面図を表している。図9に示すように、側方射出窓12は、クラッド23の非存在領域23aに対応して配されていることが好ましい。これにより、コア21を導波する第1光線51または第2光線52を、クラッド23の非存在領域23aから側方に射出することができる。中でも、第2光線52がクラッド23の非存在領域23aから側方に射出されることが好ましい。なお、側方射出窓12がクラッド23の非存在領域23aに対応して配されているとは、光導波路20がシャフト10の所定位置に配されている場合に、クラッド23の非存在領域23aとシャフト10の側方射出窓12が少なくとも一部で重なることを意味する。
【0065】
クラッド23の非存在領域23aとは、クラッド23が存在しないことによりクラッド23内のコア21(第1コア21Aまたは第2コア21B、好ましくは第2コア21B)が外に露出している領域である。このようにクラッド23の非存在領域23aを形成する方法としては、機械的または化学的にクラッド23を除去する方法が挙げられ、例えば、レーザー加工、エッチング加工が挙げられる。
【0066】
クラッド23の非存在領域23aは、周方向に延在していることが好ましく、光導波路20の全周にわたって配されていることがより好ましい。これにより、第2光線52を一度に広範囲を照射することができる。
【0067】
図9に示すように、第2コア21Bは、コア21の遠位端面22よりも近位側に光拡散領域21Baを有していることが好ましい。このように第2コア21Bに光拡散領域21Baを設けることにより、第2光線52を好適に拡散することができるため、第2光線52を一度に広範囲を照射することができる。
【0068】
光拡散領域21Baにおける第2コア21Bの外表面の表面粗さRaは、光拡散領域21Baよりも遠位側の領域における第2コア21Bの外表面の表面粗さRaよりも大きいことが好ましい。但し、表面粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに基づくものとする。このように表面粗さを設定することにより、光拡散領域21Baから効率よく第2光線52を拡散することができるため、一度に広範囲を照射することができる。
【0069】
光拡散領域21Baにおける第2コア21Bの外表面を粗くする方法としては、機械的または化学的にこれらの表面を荒らす方法が挙げられ、例えば、エッチング加工、ブラスト加工、けがき針、ワイヤブラシ、またはサンドペーパーを用いる方法が挙げられる。
【0070】
第2コア21Bは光拡散領域21Baにおいて光拡散粒子を内包していることが好ましい。これにより、光拡散領域21Baにおいて効率よく第2光線52を拡散することができるため、一度に広範囲を照射することができる。光拡散粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機系粒子、架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系粒子等の有機系粒子が挙げられる。
【0071】
シャフト10の長手方向における第2コア21Bの光拡散領域21Baの長さまたはクラッド23の非存在領域23aの長さは、側方射出窓12よりも短いことが好ましい。これにより、シャフト10の側方に第2光線52をロスなく射出しやすくなる。
【0072】
図2図6に示すように、シャフト10の遠位端は塞がれていることが好ましい。これにより、シャフト10の内腔11に体液等の液体が入り込むことを防ぐことができる。シャフト10の遠位端面の法線は、光導波路20の光軸と平行であってもよい。
【0073】
図示していないが、シャフト10は複数の部材から構成されていてもよい。例えば、シャフト10が、筒状のシャフト本体であってその遠位端に開口が形成されているシャフト本体と、シャフト本体の遠位端部に設けられ、シャフト本体の開口を塞いでいるキャップとを有していてもよい。その場合、遠方射出窓13がキャップに形成されていてもよい。遠方射出窓13とシャフト10のうち射出窓が形成されていない部分を異材料で構成しやすくなる。なお、キャップを構成する材料としては、シャフト10の構成材料の説明を参照することができる。
【0074】
図10は、図2の装置1の変形例を示す断面図を表している。図10に示すようにシャフト10の長手方向に沿った断面において、シャフト10の遠位端部は1の線で形成される尖鋭形状でもよく、2以上の線で形成される尖鋭形状でもよい。シャフト10の遠位端は、シャフト10の径方向の外方端に位置していてもよく、シャフト10の長軸中心に位置していてもよい。このようにシャフト10の遠位端部は尖鋭であることが好ましい。シャフト10の遠位端部を組織に穿刺することができるため、体内でのシャフト10の位置を固定することができる。その結果、画像診断や治療のために第1光線51や第2光線52の照射が行いやすくなる。
【0075】
図1に示すように、光導波路20の近位部は、光導波路20をシャフト10の周方向に回転させる周方向回転部材41に接続されていることが好ましい。光導波路20はその光軸を中心にしてシャフト10に対して回転することがより好ましい。光導波路20をその光軸を中心に回転させることができるため、シャフト10の周方向における側方射出窓12からの光線の射出位置を調整することができる。
【0076】
光導波路20の近位部は周方向回転部材41に接続されており、かつ当該周方向回転部材41は所定の回転角度において回転が停止されるように構成されており、周方向回転部材が所定の回転角度にあるとき、光導波路20の遠位端面(より好ましくはコア21の遠位端面22)と短尺光導波路32の近位端面35とが平行となることが好ましい。周方向回転部材41を回転させることによって、光導波路20と短尺光導波路32との当接/非当接を切り替えることができる。また、光導波路20の遠位端面と短尺光導波路32の近位端面35を平行に形成することにより、光導波路20を短尺光導波路32に当接させやすくなる。
【0077】
図示しないが、シャフト10は、遠位側にバルーンを備えていてもよい。詳細にはシャフト10はその内腔に連通するバルーンを含んでいてもよい。バルーンは、シャフト10に設けられた側方射出窓12との関係で、側方射出窓12を覆うように配置されていてもよく、側方射出窓12より遠位側または近位側に配置されていてもよい。あるいは、バルーンが遠方射出窓13または、側方射出窓12と遠方射出窓13の両方を覆っていてもよい。バルーンをシャフト10に取り付ける箇所が、側方射出窓12および遠方射出窓13と重ならないように、バルーンがシャフト10に取り付けられていることが好ましい。なお、光線がバルーンを透過することができる場合は、バルーンは側方射出窓12と重なるようにシャフト10に取り付けられていてもよい。シャフト10にバルーンを設けることで、体腔内において装置1を固定し、安定して側方射出窓12から光線を射出することができるようになる。バルーンが、側方射出窓12を覆うようにシャフト10にバルーンを配置する場合は、側方射出窓12から射出する光線の減衰を防ぐために、バルーンは透明性の高い材料を用いることが好ましい。
【0078】
上記それぞれの好ましい態様は、必要に応じて組み合わせて本発明の光治療診断装置の構成の一部とすることができる。
【0079】
本発明は上記光治療診断装置1の作動方法も提供する。本発明の光治療診断装置1の作動方法の一実施態様は、コア21と透明部材30とが当接している状態において第1光線51を光導波路20に導波させるステップと、コア21と透明部材30とが離隔している状態において第1光線51を光導波路20に導波させるステップと、第2光線52を光導波路20に導波させることにより第2光線52を側方射出窓12から射出するステップと、を有している。
【0080】
コア21と透明部材30とが当接している状態において第1光線51を光導波路20に導波させる。これにより、第1光線51を遠方射出窓13から遠位方向に射出することができるため、装置1よりも遠位にある生体組織の状態を把握することができる。
【0081】
コア21と透明部材30とが離隔している状態において第1光線51を光導波路20に導波させる。これにより、第1光線51を側方射出窓12から側方に射出することができるため、シャフト10の側方にある生体組織の状態を把握することができる。
【0082】
第2光線52を光導波路20に導波させることにより第2光線52を側方射出窓12から射出する。これにより、第2光線52をシャフト10の側方にある生体組織に照射することができるため、光線を用いた生体治療を行うことができる。
【0083】
本願は、2019年6月12日に出願された日本国特許出願第2019-109903号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年6月12日に出願された日本国特許出願第2019-109903号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0084】
1:光治療診断装置
10:カテーテルシャフト
11:内腔
12:側方射出窓
13:遠方射出窓
20:光導波路
21:コア
21A:第1コア
21B:第2コア
21Ba:光拡散領域
22:コアの遠位端面
23:クラッド
23a:クラッドの非存在領域
24:中間クラッド
30:透明部材
31:樹脂塊
32:短尺光導波路
33:短尺光導波路のコア
34:短尺光導波路のクラッド
35:短尺光導波路の近位端面
40:ハンドル
41:周方向回転部材
42:光源
51:第1光線
52:第2光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10