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特許7454593針を用いる繊維機械において破損した針の存在を検出するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】針を用いる繊維機械において破損した針の存在を検出するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   D04B 35/18 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
D04B35/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021566154
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2020054023
(87)【国際公開番号】W WO2020225655
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】102019000006681
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513122107
【氏名又は名称】ビティエッセエッレ インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】バレア チツイアノ
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第93/021368(WO,A1)
【文献】米国特許第06317644(US,B1)
【文献】特開平06-261379(JP,A)
【文献】国際公開第2016/091286(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第04213842(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03470564(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編み繊維機械(4)又は直線編み繊維機械において、少なくとも1つの不良な及び/又は破損した針の存在を検出するための方法であって、前記繊維機械は、当該繊維機械に対応付けられた各給糸装置(1)から糸(F)が供給される複数の針(6)を備え、前記糸(F)のそれぞれは、製造物品又はその一部の製造中に、その特性としての張力、給糸速度、及び給糸量のうちの少なくとも1つが監視されて一定値と等しく保たれた状態で、前記繊維機械(4)に供給され、値を監視可能な前記少なくとも1つの特性を前記糸(F)を前記繊維機械に供給する段階を通じて監視するための監視手段(9)であって、監視対象である前記特性の値における外乱を検出し、前記外乱の周期性と前記外乱が周期的に繰り返すかどうかとを特定するように構成された監視手段(9)が備えられており、前記監視手段(9)が、前記繊維機械において不良な及び/又は破損した針を特定する方法において、前記糸(F)の張力特性及び給糸速度が、これらの特性のうちの1つにおける周期的な変化の検出によって破損した及び/又は不良な針を特定するために、監視されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記糸(F)の特性の監視が、前記繊維機械により一定速度で非選択状態で行われる加工の段階、又は、選択が存在する場合に前記繊維機械が可変速度で動作する段階において行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繊維機械が可変速度で動作する場合に実施され、
前記繊維機械(4)による糸の巻き取りに不連続性がなく、それにより前記監視手段(9)がそのアクションを前記繊維機械と同期させることができる、前記繊維機械(4)による製造段階において、前記糸(F)の特性の第1の監視ができるようになっており、前記第1の監視の後に、前記繊維機械(4)が可変速度で動作する段階において、監視対象である前記特性の値を自己学習する段階と、前記監視対象である特性の値に基づいて行われる前記糸の特性の第2の監視とが行われ、前記第2の監視が、製造プロセスにおいて前記繊維機械(4)が可変速度で動作する各段階において行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維機械(4)によって製造される製造物品毎に、又は、該製造物品の部分毎に、又は、該製造物品の複数の部分若しくは製造された完成品について、給糸量又は給糸長を監視することができるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
製造物品又は完成品の複数の部分を製造するのに用いられた糸の給糸長又は給糸量を、所定値又は自己学習値と比較して比較値を求め、この比較値の変化を製造物品又は完成品の多数の部分を製造するために供給された糸の給糸長又は給糸量に関する対応するデータに対して求め、不良な及び/又は破損した針の存在の有無が、この比較に応じて判定されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維機械における前記複数の針の中から損傷した針を正確に特定できるように、前記監視手段(9)を前記繊維機械(4)と同期させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
損傷した針が検出された後、不具合検出信号のみを前記監視手段(9)若しくは前記繊維機械(4)のディスプレイに生成する又は前記繊維機械(4)を停止させることができるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記各給糸装置(1)が、前記繊維機械(4)に糸を供給する電気モータ(8)によって駆動される回転部材(7)を備える積極タイプのフィーダであり、前記糸(F)の速度の特性が、前記回転部材(7)の回転及び/又は前記電気モータ(8)が発生するトルクを監視することによって検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維機械(4)によるサンプル物品の製造における1サイクル中の、前記電気モータ(8)が提供するトルクと前記糸の張力特性及び速度特性とが、当該サイクルにおいてこれらの特性の値の自己学習が行われたことによって得られて、保存され、これらの保存値が、不良な及び/又は破損した針を特定できるように、少なくとも1つの物品又はその少なくとも1つの部分の製造時に測定された対応する実際値と比較されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記各給糸装置(1)が、蓄積型フィーダ又は一定速度フィーダのいずれかであり、前記各フィーダと前記繊維機械(4)との間に張力検知装置を設けることによって、前記糸(F)の張力の検出ができるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記監視手段(9)が、前記給糸装置(1)を監視するユニットであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって、丸編み繊維機械(4)又は直線編み繊維機械において、少なくとも1つの不良な及び/又は破損した針(6)の存在を検出するためのシステムであって、前記繊維機械(4)は、前記繊維機械(4)に対応付けられた各給糸装置(1)から糸(F)が供給される複数の針(6)を備え、前記糸(F)のそれぞれは、物品又はその一部の製造中に、その張力特性、給糸速度特性、及び/又は給糸量若しくは給糸長特性のうちの少なくとも1つが監視されて一定値と等しい状態で、前記繊維機械(4)に供給され、監視手段(9)が、前記繊維機械に給糸する段階において、値を監視可能な前記糸(F)の前記少なくとも1つの特性を監視することができるようになっている、システムにおいて、前記監視手段が、前記糸(F)の監視対象である前記張力特性及び給糸速度特性の値における外乱を検出し、前記監視手段(9)が、前記糸(F)のこのような特性のうちの1つの値における外乱の周期的な繰返しを検出した場合に前記繊維機械(4)における不良な及び/又は破損した針(6)を検出することが可能である、システム。
【請求項13】
前記各給糸装置が、積極フィーダ、蓄積型フィーダ、又は一定速度フィーダのいずれかであり、前記監視手段が、前記各フィーダと前記繊維機械(4)との間に設置された前記糸(F)の張力検知部材(12)と協働する前記フィーダ用の監視ユニット(9)であり、前記張力検知部材(12)が、前記フィーダの一部であるか、又は、前記フィーダに対して独立していることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記監視手段(9)が、前記給糸量又は給糸長の値における外乱も検出することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記給糸装置(1)が、電気モータ(8)によって駆動される回転部材(7)を有し、前記糸(F)の給糸速度及び/又は給糸量若しくは給糸長を検出するために、前記回転部材(7)の回転又は前記電気モータ(8)が発生するトルクが監視されることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記監視ユニット(9)が、完成品若しくはその一部又は複数の完成品若しくはそれらの部分の製造において検出された前記糸(F)の前記監視対象である特性における外乱を特定できるように、前記繊維機械(4)の物品製造のための動作段階全体と同期され、前記同期によって、前記監視ユニット(9)は、前記繊維機械(4)における前記複数の針から損傷及び/又は破損した針を特定することが可能であることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、対応する独立請求項の前提事項部に記載の小径、中径、若しくは大径の丸編み繊維機械又は直線編み繊維機械などの針を用いる繊維機械において、破損した針の存在を特定するための方法及びシステムである。
【背景技術】
【0002】
特に、ただし丸編み繊維機械に限定するものではないが、繊維機械が、ニットウェア、下着類、又は靴下などの種々の衣料製品や、自動車又はその他の分野のための、室内装備品を含む種々の製品を、(針を編成用構成要素として使用することにより)製造するために用いられることが知られている。こうした繊維機械は、多様な直径を有し得る(小径、中径、及び大径機械群を構成する)ものであり、複数の針が、少なくとも1つの周縁に配置されて、それぞれのアクチュエータによって動かされる第1の円筒状部分と、該第1の部分に重ね合わされた、公知の方法で上記針に向けて糸を送る第2の部分とを含んでいる。製造しなければならない製品の種類、製品に施される模様(image)や質感に応じて、針用アクチュエータは、針テキストを、糸と協働して完成品の生地を形成させるように、動かす。針のそれぞれは、その一端に、編み方、つまり生地の形成を可能にする可動ラッチを有している。
【0003】
丸編み繊維機械において起こり得る問題の1つは、針(さらに悪い場合には、数本の針)の破損、針の部分的な損傷、変形若しくは引っ掛かり、又はラッチの破損である。簡明化のために、本明細書においては、このような可能性の全てを、「針の破損」、「破損した針」又は「不良な針」と呼ぶ。
【0004】
この針の破損の結果、繊維機械は不良品を製造することになり、このような破損が迅速に特定されない場合は、多くの不良品が製造され、その結果、経済的な問題を含む問題が生じる可能性があることは明らかである。
【0005】
同じ理由は、糸ガイドが固定されたキャリッジが1つ以上の針床を走行し、編地を形成することができる、直線編み繊維機械にも明らかに当てはまる。
【0006】
丸編み繊維機械において製造プロセス中に針の破損を検出するための様々なシステム又は装置が知られている。現在市販されているほとんどのシステムは、一般に光学式のもの(カメラ、光ファイバなど)であり、針ヘッドの破損又は変形を検出するために、繊維機械の針の近くに取り付けられる。
【0007】
針の破損を捕捉、すなわち検出するための他の装置(単に「検出装置」ともいう)は、こうする代わりに、針の下流で製造された生地を検査して生地に生じた縦の筋を検出することを可能にするフォトセルを備えるが、当然ながら、このタイプの検査は、衣料品の外観がこのタイプの確認に適している非ジャカード加工の機械でしか行うことができない。
【0008】
このような公知の検出システム及び装置は、十分に動作するものではあるが、いくつかの限界がある。
【0009】
例えば、いくつかのタイプの繊維機械においては、針の破損を捕捉、すなわち検出するためのシステム(検出システム)は、適用するのが難しいようなサイズである。このことは、生地の形成を担う機械部品に近接しているために針の近くにはスペースがほとんどない小径及び中径の繊維機械に特に当てはまる。
【0010】
光学検出装置の場合、構造的な観点から特に難しく、そのため、その位置決めも重要である。実際、このような装置のためには、操作者が特に繊維機械の糸通しや保守の際に針の近くで行わなければならない通常の操作に干渉しない位置を見つける必要がある。
【0011】
また、一般に、加工時に糸自体が針の近くで放出する汚れ(パラフィン、埃、又は他の汚れ)があり、このため、当然ながら、システム又は検出装置の綿密な較正、多くの場合にエラーの影響を受けない較正が必須である。正しく較正されていないシステムは、誤警報や不必要な機械停止を引き起こしたり、得られた製品の不良を検出できなかったりする場合がある。
【0012】
さらに、光学検出システムは、破損した針を検出することはできるが、曲がった針やラッチが正しく機能していない針を検出することは難しく、このため、常に製造ヘッドの不具合(十分に明瞭ではないため光学装置によって検出できない)を発生させる可能性があり、あるいは、曲がった針の近傍にある別の針の破損につながる可能性がある。
【0013】
国際公開第2016/091286号には、編機を監視するための方法であって、給糸装置を介して糸を編機に送ることと、張力センサを用いて供給糸の張力を測定すること、又は、監視用測定機器を用いて糸パラメータを監視することとを含む方法が記載されており、監視対象であるパラメータは、測定された糸張力か、又は、測定された糸張力に関するパラメータである。このような繊維機械における針の破損によって特徴付けられる停止条件が通知されると、編機を停止させる信号が監視手段によって生成される。針の破損は、給糸張力を監視する監視手段によって、この張力が少なくとも1つの閾値パラメータを超えた場合に特定される。これにより、針の破損が特定される。
【0014】
この先行技術には、上記の編機において針の破損を特定するために給糸速度信号を用いることは記載されていない。
【0015】
ドイツ特許公開第4213842号には、上記に概要を述べた先行技術のものと同様の発明が記載されているが、この発明では、監視対象であるパラメータに、糸張力の代替として、給糸速度又はこれに関連するパラメータも含まれている。実際に、この先行技術には、繊維機械において針の機能を監視するための方法であって、これらの針と協働し得る少なくとも1本の糸の、経時的な力、動き、又はそれらの派生要素などの、状態(すなわち、この糸の給糸中のパラメータ)を測定し、測定値を評価してどの針が正しく動作していないかを判定することによる監視方法が記載されている。いずれにしても、機械の針の正しい状況及び/又は正しい動作の監視を目的として、上記2つのパラメータ(張力及び速度)のうちのどちらか一方を使用することしか記載されていない。
【0016】
欧州公開公報第347564号には、製織プロセスにおいて編機のように糸の巻き取りを監視するための方法であって、誤った停止につながる可能性のある誤警報を回避するために、製織プロセス中、繊維機械における針の破損などの不具合を、糸巻き取り測定エラー(ドリフト)の影響を受けることなく、正確に検出することを可能にする方法が記載されている。繊維機械は、糸巻き取り量の現在値を算出してそれを基準値と比較する監視ユニットをそれぞれが備えた複数のフィーダから糸を受け取り、該監視ユニットは、上記値の間に差があれば警報を発生する。監視ユニットは、製造済みの所定数の製品に基づいて平均の糸巻き取り量を周期的に算出し、この平均巻き取り量を基準値と比較し、これら2つの値の差が所定の最大パーセンテージ閾値よりも大きければ、平均巻き取り量値を基準値として設定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
よって、本発明の目的は、丸編み繊維機械において、針の破損若しくは曲がり又はそのラッチの破損(欠落していたり、引っ掛かっていたり、正常に機能していなかったりする可能性がある)を確実に検出するための方法及びシステムを提供することである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、上記繊維機械に対して機械的構成要素を追加することなく実施することができ、上記繊維機械自体の構成要素、特に、上記繊維機械に既に存在する一定張力/速度の給糸装置上で動作する、上記のタイプの方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、市販されている全ての繊維機械及び新世代の機械に対して容易に適用可能な、上記のタイプの検出システムを提供することである。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、経済的であり、かつ、製造品質を絶対確実に監視することを可能にする、上記のタイプのシステムを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、不良製品の製造を回避するために、針の不具合が検出されると上記繊維機械を停止させることができる、上記のタイプの方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これらの目的、及び当業者に明らかであるその他の目的は、対応する各独立請求項に記載の、丸編み繊維機械において針の破損を検出するための方法及びシステムによって達成される。
【0023】
本発明をより良く理解するために、単なる例示であって非限定的なものとして、以下の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図2図2は、丸編み繊維機械の針に糸を供給するために用いられる給糸装置に対して供給される糸の張力信号及び速度信号のグラフであって、針が問題なく稼働できる状態の場合のグラフを示す。
図3図3は、図2と同様のグラフであるが、破損した針が存在し、給糸装置が繊維機械による糸の巻き取りに結果として生じた外乱を補償するように働いている状況のグラフを示す。
図4図4は、図3と同様のグラフであるが、給糸装置が巻き取りに生じた外乱を補償することができない状況のグラフを示す。
図5図5は、本発明に係る方法を実施するためのシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記の図面を参照すると、本発明に係るシステムは、ボビン2から糸Fを受け取る、糸Fの給糸装置1を備える。給糸装置1は公知のタイプのものであり、上記糸は、当該給糸装置から、編地(ストッキング又はセーターなど)を編成するために、それぞれが対応する糸と協働可能な複数の可動針を備えた丸編み繊維機械4に供給される。図5に、この給糸装置1と繊維機械4とを概略的に示しており、糸Fと協働するこの繊維機械4の針6も、同様に概略的に示している。
【0026】
各針6は、図示されていない公知の各アクチュエータによって動かされる。
【0027】
給糸装置1は、糸Fを一定の張力及び/又は速度(「張力/速度」)で供給することができるタイプのものであり、様々なタイプの一定張力/速度給糸装置が先行技術において知られている。
【0028】
簡単に、また、限定されるわけではないが例示として、本明細書の残りの部分では、積極タイプの一定張力の給糸装置1について言及する。当該給糸装置1においては、糸Fが滑ることなく巻き付けられるプーリ7が、モータ8によって監視され、該モータ8のトルク/速度が、監視ユニット又は電子カード9によって、ロードセル10などの張力検知装置によって得られる糸の張力の値に応じて監視されている。これは、作業プロセス全体を通して、糸Fの張力を予め設定された範囲内に保つためである。
【0029】
一定速度での加工時(非選択状態、すなわち、繊維機械による巻き取りに変化が生じることなく加工が行われるとき)、このタイプの給糸装置は、糸Fの張力を設定張力と全く同じに保つことができる。実際に、公知の外部の計測器(例えば、監視対象である張力並びにモータの速度及びトルクの変化をグラフ化することができるオシロスコープ又はソフトウェアデバッグツール)を用いて調べると、2つの変数(給糸張力及び給糸速度)の軌跡は、2つの実質的に平坦な軌跡A及びB(図2参照)を示し、前者の軌跡は張力に関連し、後者の軌跡はプーリ回転速度に関連する。公知の方法では、前者の変数は、ロードセル10によって生成される電気信号を介して検出され、後者の変数は、プーリ7の回転速度を検出することができる、それ自体公知のセンサによって検出される。よって、この値は給糸速度に対応する。
【0030】
図2から、張力(軌跡A)は規則的であり、正又は負のピークを示さないことが分かるであろう。同時に、速度(行跡B)も規則的であり、給糸装置1に入る糸の張力を補償する必要性があるため、いくらかのわずかな振幅がある。
【0031】
張力及び速度に対応する検出信号が実質的に一定である上記の場合、本発明に係るシステム(給糸ユニット1の監視ユニット9によって動作する)は、針6の構造的問題(例えば、破損又は曲がり)を検出しない。
【0032】
このため、図1を参照すると、起動(図1のブロック20)並びに糸Fの張力及び速度の測定(ブロック21)の後、本発明に係る方法は、糸張力の変化又はピークの有無を確認し(判定ブロック22)、無い場合は(分岐23)、速度の変化又はピークの有無を確認する(判定ブロック24)。
【0033】
無い場合は(分岐25)、図2の場合のように、ブロック21に戻る。
【0034】
逆に、破損した又は曲がった針がある場合、当該機械的不具合によって導入される外乱により、繊維機械4による糸Fの巻き取りが完全な線形ではなくなる。この場合、以下に示す結果のどちらかが生じ得る。
a)針6によって導入された外乱(糸の巻き取りの突然の又は異常な変化)が、モータ8に作用して張力をいかなる環境においても設定張力と同じに保つことができる給糸装置1の監視ユニット9の監視アルゴリズムによって、完全に補償される。ただし、このことは、プーリ7の回転速度を急激に変化させることによって達成される。図3を参照すると、張力に関連する行跡Aは平坦なままであるが、行跡Bは、強い減速とその後に続く繰り返しの加速とを示す周期的な外乱Kを有することになる。
【0035】
これにより、監視ユニット9は、針6の機械的不具合を検出することができる。不具合の周期性が特定されると、監視ユニット9は、それ自体のディスプレイを介して、又は、本システムが、繊維機械に組み込まれている場合には繊維機械のディスプレイを介して、当該不具合を知らせる(「警告」)ことを決定することができ、あるいは、デジタル出力によって機械を停止させる(「停止」)ことができる。こうした信号(「警告」又は「停止」)は、即時(最初の不具合発生時)であってもよいし、確実性を高めるために遅延されてもよい。例えば、不具合が全く同じようにある決まった回数繰り返されたことが認識されると信号が生成されてもよく、そのようにプログラム可能にしてもよい。当然ながら、蓄積型の給糸装置(同じ出願人名義のEP2791408号又はEP2780271号、EP279445号に記載のものなど)の場合は、監視されるのは、モータの速度ではなく、繊維機械に供給される糸を減速させる電磁石に電力を供給するために使用される電流であり、したがって、このような給糸装置の監視ユニット9は、繊維機械による巻き取りの変化を補償するために生成される電流パルスを記録することになる。
(b)針によって導入された外乱(繊維機械4による糸Fの巻き取りの突然の又は異常な変化)が、監視アルゴリズムによって、完全には補償されない。図4を参照すると、問題となる状況において、監視対象である変数(張力及び速度)は、速度に関しては平均的な平坦な軌跡Bを生じさせるが(計測機器において)、一方で、張力を表す軌跡Aは、突然の張力低下とその後に続く張力ピークとを示す周期的な外乱Wを示している。
【0036】
これが、監視ユニット9によって、針6の機械的不具合の存在として検出され、上記の結果となる。
【0037】
上記の2通りの状況a)及びb)を、図3及び図4で説明し、特に、上記図に示すフローチャートのフローライン100及び200で説明する。第1のフローライン100は、給糸速度の変化を生じさせる外乱の状況に関連するものであり、第2のフローライン200は、糸Fの張力の変化を生じさせる外乱の場合に関連するものである。
【0038】
フローライン100(速度信号に関連)を考えると、ブロック24の評価時に速度のピークが検出されると(分岐30)、検出されたピークについてのデータと該ピークが検出された時間(給糸周期内の)とが、メモリバッファに保存される(ブロック31)。なお、速度ピークの不具合は、例えば、監視ユニット9によって、瞬間速度と平均速度との比較として特定され得るが、この場合、当該不具合を特定するような、平均速度に代わって起こる突然の減速とその後に続く突然の加速が着目されることになる。
【0039】
次のブロック32において、他のピークの存在が評価され、ピークが検出されない場合は、ブロック21(分岐33)に戻り、検出された場合は(分岐34)、ピークの発生期間が保存され(ブロック35)、その次のブロック36において、ピークの検出に時間的周期性があるかどうかが確認される。この周期性が検出されると(分岐37)、監視ユニット9は針の不具合があると確定し、そうでなければ(分岐38)、ブロック21に戻る。不具合の特定に続いて、不具合の周期性を特定した監視ユニット9は、そのディスプレイの1つを介して、又は、本システムが繊維機械に組み込まれている場合は繊維機械のディスプレイを介して、不具合を知らせる(「警告」)決定をすることができ、あるいは、デジタル出力を介して繊維機械を停止させる(「停止」)ことができる。この信号(「警告」又は「停止」)は、即時(最初の不具合発生時)であることも、確実性を高めるために遅延させることも可能であり、例えば、不具合が全く同じようにある決まった回数繰り返されたことが認識されたときに生成されてもよく、そのようにプログラム可能にしてもよい。
【0040】
フローライン200は、フローライン100と並行して進み、フローライン100におけるステップ30乃至ステップ38の全てが、同じ参照符号の後に文字Cを付して示されている。これらのステップ30C乃至ステップ38Cは、ステップ30乃至ステップ38に対応しているが、処置は、検出された糸Fの張力に関連して実行される。
【0041】
したがって、「給糸速度」変数及び「糸張力」変数の変化を監視し続けることによって、どのようにして、本検出システムが、監視対象である張力又はプーリ7の測定速度及び設定速度(どちらも給糸装置の監視ユニット9によって測定及び監視される)における外乱、一定の頻度/周期で繰り返す外乱を、支障なく検出し、かつ、この外乱の原因が繊維機械における破損した針(又は正しく機能しない針)の存在(「不良な針」)にあるとする(常に確実に、正確に、なぜなら、検出システムが2つの給糸パラメータによって動作し、その双方のデータが確認されるからである。)ことができるかは、明白である。
【0042】
このタイプの監視は、一定速度の給糸装置にも、たとえ旧世代の装置(多くの中径及び大径の丸編み機に存在するベルトフィーダ)であっても、下流の張力センサを追加し、上記のように糸張力の変化を監視するだけで、適用可能である。
【0043】
当業者には、最新型の給糸装置におけるように張力センサが設けられていない場合に、張力センサをその下流に追加することによって、このタイプの監視を、蓄積型の給糸装置にも適用可能となるようになることは、明らかである。
【0044】
上述の特許によって保護されるもののような蓄積型フィーダユニットの場合、上記のような監視は、張力と、供給糸の張力を一定に保つために電磁ブレーキ装置(又は同様の装置)に電力を供給するのに使用される電流と、を監視することによって行われる。
【0045】
したがって、本システムは、糸の巻き取りが一定である(ひいては、一定の張力及び給糸速度である)作業領域、すなわち物品製造領域が、常に存在する小径及び中径の丸編み機において、確実に針の不具合を検出することができる。
【0046】
一定速度であり非選択状態で加工が行われる段階について説明した。しかしながら、本発明は、繊維機械が製造段階において糸の様々な選択を行う場合、すなわち、繊維機械が可変速度で動作する場合に対しても、適用される。
【0047】
この場合は、正常供給時の糸の巻き取りの変化により、変則的な張力及び/又は速度が加工時に既に存在している。不良な(破損又は曲がりなどの生じた)針を検出するために、2つの可能な解決策が採用され得る。
【0048】
第1の解決策は、ヘッド内に非選択状態の領域が存在する状況に関するものである。この場合、上記の確認は、その点においてのみ行うことができる。そして、確認をアクティブ化及び非アクティブ化するのは、給糸装置と(シリアルバス又はデジタル入力/出力によって)適切にインタフェース接続された繊維機械となる。このようなインタフェース接続が可能でない場合は、同じ出願人名義の国際公開第2016/142901号に記載されているように動作させることと、製品を様々な領域に区分し、所望の場合に(すなわち、非選択状態である1つ以上の領域において)監視をアクティブ化及び非アクティブ化させる監視ユニット9用の特定の動作プログラムを選択することが、可能である。
【0049】
第2の解決策は、巻き取りが一定に行われる領域が存在しない場合に関するものである。この場合、監視ユニット9は、加工による異常(張力/速度)を保存することを可能にする学習サイクルで処理を行うことができる。その後の監視サイクルにおいて、当該ユニット9の監視アルゴリズムが、破損したか又は完全には機能していない針が存在する場合に、それを判別できるように、学習サイクルに存在しないさらなる反復性の異常(張力/速度)を確認する。
【0050】
しかしながら、説明した手順は、監視対象である変数の変化の周期性、つまり、糸の破損の場合には存在しない周期的変化を監視することにより、繊維機械4における針の破損と、糸Fの破損とを区別することが可能である。
【0051】
上記監視システムを繊維機械と同期させることによって、この他の効果が得られる。
【0052】
例えば、繊維機械のドラムの一回転ごとに適切な同期信号が発せられ、かつ、存在している針の本数が分かっていると、破損した針の正確な位置を特定することができ、損傷した部品を交換する際の操作者の作業が簡単になる。実際に、繊維機械(丸編み機)からのドラムの回転に関連する信号又はキャリッジ(直線編み繊維機械)の方向に関連する信号を取得することによって、監視ユニット9は、ドラムの一回転に必要な時間が分かり、それを上記信号から不具合が検出されるまでの経過時間と比較することで、破損した針の位置を特定することができる。例えば、機械が500ミリ秒ごとに一回転すると想定すると、同期信号から100ミリ秒後に不具合が発生した場合、機械が500本の針を有していることがわかっていると、問題の原因が針100にあるとすることができる。
【0053】
同期に関連する、もう一つの効果は、以下の通りであり得る。張力及び給糸速度だけではなく、製造される物品それぞれの全体の給糸量(小径又は中径の丸編み機)、その一部を製造するための給糸量(中径及び大径の丸編み機)、又は製造物品の多数の部分若しくは製造物品全体を製造するための給糸量も監視することによって、繊維機械に存在する給糸装置のうちの1つにおける糸の巻き取りの減少を検出することで針の破損を検出することができる。実際に、破損した針は、巻き取られる糸の長さ(LFA=「lunghezza di filo assorbita」)を減少させ、例えば、靴下に筋を生じさせる可能性がある。他方で、針のラッチが破損した場合は、LFAが増加する。
【0054】
不良な針(破損、曲がり、又はラッチの破損など)があれば、必ずLFAが変化することになる。製造された製品の部分又は完成品全体を確認する場合、LFAの(実際の)測定値を(所定の又は学習した)基準値と比較し、その後、多数の製造部分又は完成品全体の製造から収集されたLFAデータとの比較において、この比較値の標準偏差又は単なる変化を求めることによって、LFAの実際の変化を検出することが可能であり、これにより、針の不具合を特定することが可能である。
【0055】
したがって、上述したシステムは、巻き取りが一定である作業領域がないジャカードタイプの加工の場合であったとしても、確実に、針の破損、曲がった針、破損した又は引っ掛かったラッチを、常に検出することが可能である。こうした場合、速度及び監視張力に一定の変化があるため(場合によっては、必ずしも完全に補償されるわけではない)、本システムは、上記のように、サンプルサイクル(自己学習)において張力、モータ8のトルク、及び給糸速度の変化を保存し、その後のサイクルにおいて、測定された変数の、学習値からのずれを検出することによって処理を行う。
【0056】
したがって、本システムは、モータ8のトルク(給糸速度に比例)を監視することによって不良な(破損、引っ掛かりなどの生じた)針を検出することもできる。
【0057】
本発明の様々な実施形態を説明したが、他の実施形態も、当業者にとっては上記の説明に鑑みて可能であり、よって、これら他の実施形態も、以下の特許請求項の範囲に含まれる。
図1
図2
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図5