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特許7454598圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備
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  • 特許-圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備 図1
  • 特許-圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備 図2
  • 特許-圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備 図3
  • 特許-圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
A01G25/00 501Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022012205
(22)【出願日】2022-01-28
(62)【分割の表示】P 2020109313の分割
【原出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022044809
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
(72)【発明者】
【氏名】藤本 好宏
(72)【発明者】
【氏名】三木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】武内 利樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁
(72)【発明者】
【氏名】陳 巨壹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】山森 直毅
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-275501(JP,A)
【文献】特開2019-140954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
A01G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圃場で構成される圃場群を単位に、圧送式の配水ポンプで圧送され配水管を介して供給される灌漑用水を用いて、各圃場への給水を管理する圃場水管理装置であって、
管理対象となる複数の圃場群への前記灌漑用水の単位時間当たりの配水量を取得する配水量取得部と、
給水要求が発生した圃場に対する日毎の給水スケジュールを管理する給水管理部と、
を備え、
前記給水管理部は、前記配水量に基づいて同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、給水要求のある各圃場に対して前記最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成する圃場水管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の圃場水管理装置と、
前記圃場水管理装置から要求された圃場群ごとの必要給水量に基づいて、揚水機場に備えた前記配水ポンプを制御して複数の圃場群への前記灌漑用水の単位時間当たりの配水量を調節する灌漑用水管理装置と、
を備えている給配水管理装置。
【請求項3】
複数の圃場で構成される圃場群を単位に各圃場へ灌漑用水を送水する灌漑用水設備であって、
配水管を介して灌漑用水を前記圃場群に圧送する配水ポンプと、
前記配水ポンプを遠隔制御可能に構成され、前記圃場群への配水を管理する灌漑用水管理装置と、
前記灌漑用水管理装置と通信媒体を介して連系され、前記配水ポンプによる配水量に基づいて前記各圃場への給水を管理する圃場水管理装置と、
を備え、
前記灌漑用水管理装置は、給水要求が発生した圃場の給水状態に基づいて算出される必要給水量に基づいて配水スケジュールを生成し、当該配水スケジュールに基づいて前記配水ポンプを制御するように構成され、
前記圃場水管理装置は、前記配水スケジュールに基づいて前記給水要求のある各圃場に対して同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、当該最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成するように構成されている、灌漑用水設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各圃場に備えた給水装置を遠隔制御することにより自動給水可能な圃場水管理システムが実用化されつつある。例えば、特許文献1には、稲の生育段階に応じて毎日の水田目標水位を決定し、水田水位が目標水位の近傍内に収まるように給水バルブを制御する圃場水管理システムが提案されている。
【0003】
また、頭首工から取り出され揚水機場に導かれた灌漑用水を、圃場の集合体である各圃場群へ分水工などを介して配水管理する灌漑用水管理システムも提案されている。例えば、特許文献2には、水源の水を各圃場群に供給するための親揚水機場と、親揚水機場から供給された灌漑用水を受け取り圃場群内の各末端圃場に対して給水するための圃場群ごとに設置された子揚水機場・分水弁とを、中央管理部より遠隔制御することにより、水源からの灌漑用水を所定量だけ各圃場群に配水できる灌漑用水管理システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-65776号公報
【文献】特開平10-42726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたような灌漑用水管理システムでは、各揚水機場に複数の揚水用のポンプが設置され、予め設定された時間帯に凡そ必要とされる所定の配水量が維持されるように各ポンプが運転管理されていた。
【0006】
しかし、各圃場群で必要とされる正確な配水量までリアルタイムに管理できるような構成ではなかったため、例えば配水管を介して揚水を直接圃場群に配水するような圧送式のポンプを設置している揚水機場では、必要な配水量が少なく効率が低下する条件であってもポンプを常時運転せざるを得ず、そのための電気代などの維持費が嵩んでいた。
【0007】
また、揚水を配水池などの調整水槽に貯水するようなポンプを設置している揚水機場でも、調整水槽の水位に基づいてポンプを運転するため、不必要な水位まで貯水することとなり、同様に維持費が嵩んでいた。
【0008】
他方、各圃場群では給水が必要な複数の圃場の全ての給水栓を開放して同時に給水すると、給水圧力の低下により下流側の圃場で適切に給水することができなくなる虞があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、灌漑設備からの灌漑用水の配水能力に応じ各圃場に適切に給水することができる圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による圃場水管理装置の特徴構成は、複数の圃場で構成される圃場群を単位に、圧送式の配水ポンプで圧送され配水管を介して供給される灌漑用水を用いて、各圃場への給水を管理する圃場水管理装置であって、管理対象となる複数の圃場群への前記灌漑用水の単位時間当たりの配水量を取得する配水量取得部と、給水要求が発生した圃場に対する日毎の給水スケジュールを管理する給水管理部と、を備え、前記給水管理部は、前記配水量に基づいて同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、給水要求のある各圃場に対して前記最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成する点にある。
【0011】
給水管理部は、配水量取得部により取得された灌漑用水の単位時間当たりの配水量を満たすように、給水要求が発生した圃場に対して同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水を行なうように各圃場への給水スケジュールを生成する。従って、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より多量の給水状態や、少量の給水状態が生じることがなく、その結果、各圃場に適切な圧力で給水を継続することができ、配水のための圧送ポンプの無駄な消費電力の低減も可能になる。
【0012】
本発明による給配水管理装置の特徴構成は、上述した特徴構成を備えた圃場水管理装置と、前記圃場水管理装置から要求された圃場群ごとの必要給水量に基づいて、揚水機場に備えた前記配水ポンプを制御して複数の圃場群への前記灌漑用水の単位時間当たりの配水量を調節する灌漑用水管理装置と、を備えている点にある。
【0013】
各圃場群への給水管路を行なう圃場水管理装置と、各圃場水管理装置から要求された圃場群ごとの必要給水量に基づいて、各圃場群への配水量を調節する灌漑用水管理装置を備えた給配水管理装置を構築することで、広域での灌漑用水の効率的な供給管理が円滑に行えるようになる。
【0014】
本発明による灌漑用水設備の特徴構成は、複数の圃場で構成される圃場群を単位に各圃場へ灌漑用水を送水する灌漑用水設備であって、配水管を介して灌漑用水を前記圃場群に圧送する配水ポンプと、前記配水ポンプを遠隔制御可能に構成され、前記圃場群への配水を管理する灌漑用水管理装置と、前記灌漑用水管理装置と通信媒体を介して連系され、前記配水ポンプによる配水量に基づいて前記各圃場への給水を管理する圃場水管理装置と、を備え、前記灌漑用水管理装置は、給水要求が発生した圃場の給水状態に基づいて算出される必要給水量に基づいて配水スケジュールを生成し、当該配水スケジュールに基づいて前記配水ポンプを制御するように構成され、前記圃場水管理装置は、前記配水スケジュールに基づいて前記給水要求のある各圃場に対して同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、当該最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成するように構成されている点にある。
【0015】
各圃場群への給水を管理する圃場水管理装置と、広域での灌漑用水の配水を管理する灌漑用水管理装置とが連携して、効率的に灌漑用水を各圃場に供給することができるようになる。即ち、圃場水管理装置は、給水要求が発生した圃場に対して同時に給水可能な最大圃場数または最大圃場面積を算出し、灌漑用水管理装置により各圃場に供給される配水量に応じて、最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水を行なうように各圃場への給水スケジュールを生成する。従って、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より多量の給水状態や、少量の給水状態が生じることがなく、その結果、各圃場に適切な圧力で給水を継続することができ、配水ポンプの無駄な消費電力の低減も可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明によれば、灌漑設備からの灌漑用水の配水能力に応じ各圃場に適切に給水することができる圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】灌漑用水設備の説明図
図2】圃場の説明図
図3】給配水管理システムの説明図
図4】給水管理のフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明による圃場水管理装置、給配水管理装置及び灌漑用水設備を図面に基づいて説明する。以下の説明で用いる圃場との用語は水田及び畑の双方を意味し、水源から分水工などで分水された共通の配水系統から灌漑用水が供給される複数の圃場を圃場群という。また、規模の大きな圃場群は複数のブロック圃場群の集合で構成され、ブロック圃場群単位で給水の要否が管理される。通常、共通の水源から取水された灌漑用水は分水工などにより分水された複数の配水系統によって其々異なる圃場群に給水される。以下の実施形態では稲作用の圃場について説明するが、畑用の圃場であっても同様である。
【0019】
[灌漑用水設備の構成]
図1に示すように、灌漑用水設備は、河川や湖沼などの水源池130に設置された揚水機場131で取水された灌漑用水を幹線となる配水管120及び支線となる配水管121、さらに配水管121に接続された給水管100を介して各圃場1に送水するための設備である。
【0020】
なお、本実施形態では、便宜上、灌漑用水管理装置により管理される灌漑用水の送水を配水と称し、圃場水管理装置により管理される灌漑用水の圃場への送水を給水と称している。
【0021】
揚水機場131で取水された灌漑用水は、圧送ポンプ131Pを介して排水管120に直接圧送され、或いは揚水ポンプ131Pを介して調整槽である配水池122(図1では破線で示されている。)に揚水された後に配水池122から配水管120に自然流下により送水される。何れの場合もポンプ131Pは原則として交互運転される2基のポンプを単一または複数備えて構成され、配水量が多くなる場合には双方が同時運転される。
【0022】
以下、本実施形態では圧送ポンプ131Pを用いる場合を説明する。なお、本明細書では、揚水ポンプまたは圧送ポンプを、灌漑用水を各圃場群に配水するという機能から配水ポンプと表記する場合もある。
【0023】
幹線となる配水管120は各圃場群10に向けてそれぞれ分岐され、分岐された各配水管121への配水量を調整するための分水工として機能する分水装置140が設けられている。つまり、揚水機場131から圧送された灌漑用水は、分水装置140によって配水量が調整された後に給水管100を介して各圃場群10へ送水される。
【0024】
給水管100に沿って配された各圃場1には、給水管100から給水可能に接続された給水栓を備えた給水装置2が設けられている。また、各圃場1には排水栓を備えた排水装置4が設けられ、排水装置4を介した各圃場1からの放水が排水路9を経由して河川に放流されるように構成されている。
【0025】
[圃場設備の構成]
図2に示すように、圃場1には、給水管100に流れる灌漑用水を、導水路3を介してして圃場1に導く給水栓を備えた給水装置2と、圃場1の水を、放水路5を介して排水路9に排水する排水栓を備えた排水装置4と、圃場1の水位を計測する水位センサ6などが設けられている。
【0026】
給水装置12及び排水装置16にはソーラーパネルSPを備えた蓄電器、給水栓または排水栓を駆動する電動モータ、電動モータを制御する制御回路、無線中継器7を介して無線通信する通信回路などが設けられ、ソーラーパネルSPによる発電電力が蓄積された蓄電器の電力によって給水栓や排水栓を駆動するモータや通信回路などが作動するように構成されている。
【0027】
圃場1の近傍にはインターネットなどの通信ネットワークに接続可能な無線中継器7が設置され、給水装置2及び排水装置4に備えた通信回路は無線中継器7を介して圃場水管理装置として機能する圃場水管理サーバ21と通信可能に構成されている。給水栓または排水栓の状態や水位センサ6で検出された各圃場1の水位などが圃場水管理サーバ21に送信されるとともに、圃場水管理サーバ21により給水栓を介した給水量及び/または排水栓を介した排水水位が遠隔制御により調整可能に構成されている。
【0028】
[給配水管理システムの構成]
図1に戻り、揚水機場131に備えた圧送ポンプ131Pには、制御回路及び通信回路が設けられ、通信回路を介して灌漑用水管理装置として機能する灌漑用水管理サーバ31と通信可能に構成されている。揚水機場131と各圃場群10を結ぶ配水管120,121に備えた各分水装置140には分水のための流量調整弁と、流量調整弁を制御する制御回路及び通信回路が設けられ、通信回路を介して灌漑用水管理サーバ31と通信可能に構成されている。そして、灌漑用水管理サーバ31により揚水機場に備えた圧送ポンプ131Pや分水装置140に備えた流量調整弁が遠隔制御される。即ち、各分水装置140に備えた流量調整弁、制御回路及び通信回路により各圃場群への配水量を調整する圃場群配水量調整装置14が構成される。
【0029】
水稲栽培を例に挙げると、圃場に十分な量の水を供給して代掻きを行ない、田植え後のしばらくは稲の保護のために深水管理を継続し、ある程度安定すると浅水管理を経て間断灌水して根の成長を促し、茎の増加を抑制すべく中干した後に間断灌水を再開し、収穫時期に落水する、といったように稲の成長に伴って圃場の水位を調整する必要がある。
【0030】
代掻きの時期など、各圃場の給水時期が重なり同時期に大量の灌漑用水を供給する必要がある場合には、水源で確保された一定量の灌漑用水を各圃場に公平に配水するべく、輪番制を採用するなど圃場群単位で給水日程を計画して管理する必要がある。
【0031】
深水管理や浅水管理などのように、各圃場1の水位を設定水位に維持する一定灌水モードでは、蒸発や蒸散さらには浸透など減水深の影響により設定水位から低下した水量を日々補充する必要もある。
【0032】
しかし、同一の圃場群の圃場でも分水装置140によって調整された配水量や給水管の水圧によってはそのときに十分な量の給水ができない場合があり、逆に所定量の給水後も給水栓が解放され続けていると他の圃場への給水量が不足する場合もある。
【0033】
また、灌漑用水管理サーバ31で、各圃場群10に必要な給水量の変動が把握できないために、必要な給水量が低下した場合でも圧送ポンプ131Pを常時運転する必要があり、圧送ポンプ131Pでの電力消費が嵩むという問題もある。
【0034】
この様な問題に柔軟に対処すべく、上述した灌漑用水管理サーバ31と圃場水管理サーバ21をインターネットなどの通信媒体を介して連系させることにより、営農者が管理する個々の圃場の状況に応じて適切に灌漑用水を供給することを可能とする給配水管理システムが構築されている。
【0035】
具体的に、図3に示すように、給配水管理システム200は、圃場水管理システム20と、灌漑用水管理システム30とで構成されている。
【0036】
圃場水管理システム20は、圃場水管理サーバ21と、営農者などが所有する端末装置8と、各圃場1に備えた給水装置2、排水装置4、水位センサ6などを備えて構成されている。端末装置8には、スマートフォンやタブレットコンピュータなどの可搬性の端末装置やデスクトップコンピュータのような据置型の端末装置が含まれる。
【0037】
圃場水管理サーバ21には、圃場管理部21A、給水管理部21B、給水制御部21C、配水量取得部21D、通信処理部21Eなどの機能ブロックが設けられている。
【0038】
圃場水管理サーバ21には、CPUボード、メモリボード、通信ボード、大容量の外部記憶装置などが設けられ、メモリボードに備えたメモリに格納されたアプリケーションプログラムがCPUボードに搭載されたCPUによって実行されることにより、上述した各機能ブロックが実現される。
【0039】
圃場管理部21Aは、各圃場1の稼働状態を管理するとともに各圃場1の給水状態を収集する。各圃場の住所地や所有者含む圃場識別情報に関連付けて稼働状態や給水状態が管理される。
【0040】
稼働状態とは栽培中または休耕中の何れかを識別する情報と、栽培中の場合には代掻き、深水管理、浅水管理、中干し、間断灌水、落水、かけ流しの何れかを識別する情報が含まれ、主に営農者の端末装置8から通信処理部21Eを介して入力される情報である。通信処理部21Eは端末装置8と圃場水管理サーバ21との間の通信インタフェースとして機能するブロックである。
【0041】
給水状態とは、各圃場1の給水状態を示す情報であり、設定水位、現在水位、給水栓の開度などを含む。設定水位は営農者の端末装置8から入力され排水装置4に備えた排水栓に設定された排水水位をいい、現在水位は水位センサ6により検出された圃場1の水位をいい、給水栓の開度とは給水装置2から入力され給水装置2に備えた給水栓の開度をいう。排水栓の排水水位や給水栓の開度は給水制御部21Cにより管理され、水位センサ6により検出された水位は給水管理部21Bで管理される。
【0042】
給水管理部21Bは、各圃場1の給水状態に基づいて圃場群ごとの必要給水量を定期的に算出する。具体的には、各圃場群10に含まれる各圃場1の稼働状態と設定水位、現在水位、給水栓の開度などに基づいて、所定時間ごとに算出した必要給水量の総量が圃場群ごとの必要給水量となる。
【0043】
所定時間の具体的な数値は特に限定するものではなく、例えば一日(24時間)に一度、その日に必要とする給水量を予め決まった時刻(例えば午前4時)に算出するとか、数時間毎に算出するとかでよい。通常は、1日単位で各圃場群に給水制御することになり、その1日のうちで各圃場への給水を開始する時刻の前から後完了するまでの間で、適宜の時間に設定すればよい。
【0044】
例えば、稼働状態が代掻きや一定灌水モードである場合に、給水管理部21Bは給水状態に含まれる各圃場1の水位情報に基づいて、各圃場1の設定水位と現在水位との水位差である需要水深を算出し、各圃場群10への必要給水量Qを、Q=Σ(需要水深×圃場面積)で算出する。圃場水管理サーバ21が複数の圃場群10を管理する場合には、各圃場群10の必要給水量Qの合計量が必要な給水量となる。
【0045】
配水量取得部21Dは、給水管理部21Bにより算出された圃場群10ごとの必要給水量を灌漑用水管理サーバ31に出力する。
【0046】
灌漑用水管理サーバ31に備えた配水スケジュール管理部31Bは、配水量取得部21Dから要求された圃場群10ごとの必要給水量に基づいて各圃場群10への配水スケジュール、つまり各圃場群10への配水可能日とその日の配水量を含む配水スケジュールを生成する。同時に全ての圃場群10への配水が可能である場合には配水可能日を複数設定する必要はなく、当日のみでよい。
【0047】
なお、配水スケジュール管理部31Bは、配水量取得部21Dから必要給水量が要求される度に配水スケジュールを生成するように構成され、例えば1日に一度必要給水量が要求される場合には、前回の配水スケジュールを更新した配水スケジュールを1日に一度生成する。
【0048】
灌漑用水管理サーバ31に備えた配水管理部31Aは、配水スケジュールに基づいて圧送ポンプ131Pの運転台数を調整するとともに、圃場群配水量調整装置14を調整し、配水量取得部21Dに配水可能日と配水量を出力する。
【0049】
給水管理部21Bは、灌漑用水管理サーバ31から送られた配水可能日及び配水量に基づいて、配水可能日に同時に給水可能な最大圃場数を算出し、給水要求のある各圃場に対して前記最大圃場数を維持した状態で給水スケジュールを生成する。各給水栓からの給水量が同じ場合には、最大圃場数は最大給水栓数と同義となる。
【0050】
給水制御部21Cは、給水管理部21Bで生成された給水スケジュールに基づいて給水対象となる単一または複数の圃場1を選択して、選択した圃場1の給水栓を開放して給水し、選択した圃場1の水位が設定水位に達すると当該給水栓を閉鎖して、次に給水する圃場1を選択して同様の給水制御を行なう。
【0051】
当該給水スケジュールによれば、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より著しく多い給水量で圃場1に給水されることがなく、また、著しく少ない給水量で圃場1に給水されることもない。その結果、各圃場1に適切な圧力で給水を継続することができ、給水量の増大に起因する圧力低下で給水困難な圃場が発生するようなことがなく、給水量の低下に起因して取水した灌漑用水を水源に戻す循環路の形成などによる圧送ポンプの無駄な消費電力も低減できるようになる。
【0052】
給水管理部21Bは、給水可能日に設定された圃場群10に対して最大圃場数を維持できない場合に、他の給水可能日に設定された圃場群10の圃場1を含めて給水スケジュールを生成するように構成することが好ましい。
【0053】
給水可能日に設定された圃場群10に対して最大圃場数を維持できない場合とは、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より多量の給水状態や、少量の給水状態が生じる場合を意味する。そのような場合には、他の給水可能日に設定された圃場群10の圃場1を含めて給水スケジュールを生成することにより、各圃場1に適切な圧力で給水を継続することができ、送水のための圧送ポンプの無駄な消費電力の低減も可能になる。
【0054】
例えば、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より多量の給水状態が生じる場合には、当日の給水予定の圃場への給水を他の給水日の圃場群の給水スケジュールに組み込み、灌漑用水の単位時間当たりの配水量より少量の給水状態が生じる場合には、他の給水可能日に設定された圃場群の圃場に前倒しで給水するように給水スケジュールを生成すればよい。
【0055】
以上、給水管理部21Bが、灌漑用水管理サーバ31から送られた配水可能日及び配水量に基づいて、配水可能日に同時に給水可能な最大圃場数を算出し、給水要求のある各圃場に対して前記最大圃場数を維持した状態で給水スケジュールを生成し、給水可能日に設定された圃場群10に対して最大圃場数を維持できない場合に、他の給水可能日に設定された圃場群10の圃場1を含めて給水スケジュールを生成する態様と説明したが、最大圃場数に代えて最大圃場面積を採用してもよい。
【0056】
つまり、給水管理部21Bは、灌漑用水管理サーバ31から送られた配水可能日及び配水量に基づいて、配水可能日に同時に給水可能な最大圃場面積を算出し、給水要求のある各圃場1に対して最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成し、給水可能日に設定された圃場群10に対して最大圃場面積を維持できない場合に、他の給水可能日に設定された圃場群10の圃場1を含めて給水スケジュールを生成するように構成してもよい。単位時間当たりの配水量に相当する水量の給水が維持できればよい。
【0057】
さらに、給水管理部21Bは、給水対象となる各圃場1の面積と目標圃場水位と自動給水栓の単位時間当たりの給水量に基づいて給水時間を算出し、算出した給水時間に基づいて圃場1毎に給水開始予定時刻、給水中、給水終了予定時刻、の各状態を管理するように構成されていることが好ましい。
【0058】
圃場1の面積と目標圃場水位との積により総水量が求まり、総水量を自動給水栓の単位時間当たりの給水量で除すれば給水に要する時間が求まる。給水要求のある各圃場1に対して最大圃場数または最大圃場面積を維持した状態で給水スケジュールを生成することで、各圃場1の給水予定時刻と給水終了予定時刻が求まり、圃場毎に給水開始予定時刻、給水中、給水終了予定時刻の各情報が管理できる。
【0059】
通信処理部21Eは、圃場1毎の給水開始予定時刻、給水中、給水終了予定時刻に基づいて、対応する圃場1の管理者の端末8に対して、給水開始予定時刻および給水終了予定時刻を送信するとともに、給水を開始すると給水中である旨の情報を送信し、給水を終了すると給水終了の旨の情報を送信する。その結果、各圃場1の管理者は圃場1に出向くことなく状況を把握することができる。
【0060】
通信処理部21Eは、給水開始予定時刻、給水中、給水終了予定時刻の各状態のうちどの状態のときに各圃場の管理者の端末8に通知するか、管理者が選択可能に構成されていることが好ましい。
【0061】
通信処理部21Eが管理者の端末8の表示画面に報知対象イベントを選択可能な画面表示を表示し、管理者が必要な報知対象イベント(給水開始予定時刻、給水中、給水終了予定時刻の各情報)を選択することにより、報知対象イベントを管理することができ、管理者に必要とされる情報のみを提供することができるようになる。管理者は不要な情報の確認操作を省くことができ、で負担が軽減される。
【0062】
以上の実施形態では、給水管理部21Bで算出した必要給水量を配水量取得部21Dが灌漑用水管理サーバ31に送信することで、灌漑用水管理サーバ31が配水スケジュールを生成し、生成した配水スケジュールに基づいて配水量取得部21Dに配水可能日及び配水量を送信する態様を説明したが、必要給水量を灌漑用水管理サーバ31に送信することなく、単に灌漑用水管理サーバ31が予め定めた輪番に基づいて配水可能日と、予め定めた配水量とを配水量取得部21Dに送信してもよい。
【0063】
図4には、給水管理部21Bおよび給水制御部21Cにより実行される給水管理の手順が示されている。給水管理部21Bは配水量取得部21Dを介して灌漑用水管理サーバ31から管理対象となる複数の圃場群への灌漑用水の単位時間当たりの配水量を取得すると(SA1)、対象となる圃場群の中で当該配水量に相当する最大圃場数を算出し(SA2)、最大圃場数を満たすように給水スケジュールを生成する(SA3)。
【0064】
例えば、単位時間当たりの給水量が同じ給水栓が各圃場に其々一つ設置されたような場合に、当該配水量の90~100%の水量となる最大給水栓の数が最大圃場数となる。各圃場の面積から設定水位に達する時間が算出できるので、当該配水量の90から100%の水量となる最大給水栓の数を維持しつつ制御対象給水栓を選択するタイムテーブルが給水スケジュールとなる。
【0065】
生成した給水スケジュールに基づいて各圃場の給水栓を開放制御し(SA4)、選択した圃場の水位が設定水位に達すると当該圃場の給水栓を閉塞制御する処理を、給水スケジュールに従って給水要求のある全圃場に対して繰り返し実行し(SA5,SA6)、圃場群内の全圃場への給水が完了すると、処理を終了する。
【0066】
最大圃場数として選択することができる範囲を配水量の90~100%の範囲としたが、これは例示であり、この値に限るものではない。例えば、配水量の95~105%の範囲に設定してもよい。
【0067】
圃場群内の圃場で最大圃場数が維持できない場合には、圃場に図管理サーバ21が管理する他の圃場群の圃場を組み込むことも可能である。このようにして最大圃場数を維持した状態で給水することにより配水された灌漑用水を効率的に圃場に給水することができる。
【0068】
なお、最大圃場数が維持できなくなると、給水管理部21Bからその時点の必要給水量を算出して灌漑用水管理サーバ31に必要給水量を送信することで、て灌漑用水管理サーバ31が配水量を減少制御するように構成してもよい。
【0069】
以上説明した実施形態は本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されることを意図するものではなく、圃場水管理装置の具体的な構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1:圃場
2:給水装置
3:導水路
6:水位センサ
8:端末
10:圃場群
20:圃場水管理システム
21:圃場水管理装置(圃場水管理サーバ)
21A:圃場管理部
21B:給水管理部
21C:給水制御部
21D:配水量取得部
21E:通信処理部
30:灌漑用水管理システム
31:灌漑用水管理装置(灌漑用水管理サーバ)
31A:配水管理部
31B:配水スケジュール管理部
100:給水管
120:配水管(幹線)
121:配水管(支線)
122:配水池
130:水源池
131:揚水機場
131P:揚水ポンプ(圧送ポンプ)
140:圃場群配水量調節装置
200:給配水管理システム
図1
図2
図3
図4