(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ブレーキ装置およびブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20240314BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240314BHJP
B62L 1/00 20060101ALI20240314BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240314BHJP
B62L 3/08 20060101ALI20240314BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20240314BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20240314BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240314BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20240314BHJP
F16D 125/48 20120101ALN20240314BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T8/17 B
B62L1/00 A
B60T13/74 G
B62L3/08
F16D65/18
F16D121:04
F16D121:24
F16D125:06
F16D125:48
(21)【出願番号】P 2022092858
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2018088810の分割
【原出願日】2018-05-02
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2017203756
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】名合 大輔
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043333(JP,A)
【文献】特開2005-233308(JP,A)
【文献】特開平05-065060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0241330(US,A1)
【文献】特開2017-043332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/138
B60T 8/17
B62L 1/00
B60T 13/74
B62L 3/08
F16D 65/18
F16D 121/04
F16D 121/24
F16D 125/06
F16D 125/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の回転体を制動する制動部と、
動力伝達媒体によって前記制動部を駆動する第1アクチュエータと、
ユーザによって操作されるように構成される操作装置への入力に応じて電力によって前記第1アクチュエータを駆動する第2アクチュエータと、を備え、
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの両方は、フロントフォーク
のブレードに設けられ、
前記操作装置と前記第1アクチュエータとは、前記動力伝達媒体によって接続されない、ブレーキ装置。
【請求項2】
人力駆動車の回転体を制動する制動部と、
動力伝達媒体によって前記制動部を駆動する第1アクチュエータと、
ユーザによって操作されるように構成される操作装置への入力に応じて電力によって前記第1アクチュエータを駆動する第2アクチュエータと、を備え、
前記第1アクチュエータは、フロントフォークの第1部分に設けられるように構成され、
前記第2アクチュエータは、前記第1部分とは異なる前記フロントフォークの第2部分に設けられるように構成され、
前記操作装置と前記第1アクチュエータとは、前記動力伝達媒体によって接続されない、ブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2アクチュエータは、前記人力駆動車の走行に伴って発電機構で発電される電力によって動作する、
請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータは、前記動力伝達媒体として流体を用いるポンプを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記第2アクチュエータは、電気モータを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記第2アクチュエータは、電気モータを含み、
前記第1アクチュエータは、前記動力伝達媒体として流体を用いるポンプを含み、
前記ポンプは、前記電気モータによって駆動されるマスターピストンを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含む、
請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含み、
前記キャリパは、キャリパ本体と、前記キャリパ本体に設けられる複数のスレーブピストンと、前記マスターピストンの動きに伴って前記複数のスレーブピストンに油圧を供給するように前記キャリパ本体に設けられる流路とを含む、
請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
前記ポンプおよび前記電気モータは前記キャリパ本体に設けられる、
請求項9に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
前記電気モータの回転を変速して前記マスターピストンに伝達する第1変速機構をさらに備え、
前記第1変速機構は、前記キャリパ本体に設けられる、
請求項9または10に記載のブレーキ装置。
【請求項12】
前記第1変速機構は、減速機構である、
請求項11に記載のブレーキ装置。
【請求項13】
前記ポンプと繋がるように前記キャリパ本体に設けられるリザーバタンクをさらに備える、
請求項9から12のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項14】
前記複数のスレーブピストンの移動速度を変化させる第2変速機構をさらに備える、
請求項9から13のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項15】
人力駆動車の回転体を制動する制動部と、
動力伝達媒体によって前記制動部を駆動する第1アクチュエータと、
ユーザによって操作されるように構成される操作装置への入力に応じて電力によって前記第1アクチュエータを駆動する第2アクチュエータと、を備え、
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの両方は、フロントフォークに設けられ、
前記操作装置と前記第1アクチュエータとは、前記動力伝達媒体によって接続されず、
前記第2アクチュエータは、電気モータを含み、
前記第1アクチュエータは、前記動力伝達媒体として流体を用いるポンプを含み、
前記ポンプは、前記電気モータによって駆動されるマスターピストンを含み、
前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含み、
前記キャリパは、キャリパ本体と、前記キャリパ本体に設けられる複数のスレーブピストンと、前記マスターピストンの動きに伴って前記複数のスレーブピストンに油圧を供給するように前記キャリパ本体に設けられる流路とを含み、
前記複数のスレーブピストンの移動速度を変化させる第2変速機構をさらに備える、ブレーキ装置。
【請求項16】
前記第2変速機構は、前記マスターピストンの移動速度を変化させることによって、前記複数のスレーブピストンの移動速度を変化させる、
請求項14または15に記載のブレーキ装置。
【請求項17】
前記第2変速機構は、単位時間当たりの前記流体の送り量を変化させることによって、前記複数のスレーブピストンの移動速度を変化させる、
請求項14または15に記載のブレーキ装置。
【請求項18】
前記キャリパは、キャリパ本体と、前記キャリパ本体に設けられる複数のスレーブピストンと、マスターピストンの動きに伴って前記複数のスレーブピストンに油圧を供給するように前記キャリパ本体に設けられる流路とを含む、
請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項19】
前記電気モータは、回転モータである、
請求項9から17のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項20】
前記マスターピストンの移動方向と前記複数のスレーブピストンの移動方向とは、直交するように構成される、
請求項9から19のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項21】
前記マスターピストンは、前記複数のスレーブピストンの軸方向の延長線上には配置されないように構成される、
請求項9から20のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のブレーキ装置と、
前記人力駆動車の走行に伴って発電する発電機構と、を備えるブレーキシステム。
【請求項23】
前記発電機構は、ハブダイナモ、ブロックダイナモ、アシスト回生機構、および、振動発電素子の少なくとも1つを含む、
請求項22に記載のブレーキシステム。
【請求項24】
前記発電機構からの電力を蓄電する蓄電部をさらに備える、
請求項22または23に記載のブレーキシステム。
【請求項25】
前記蓄電部は、二次電池を含む、
請求項24に記載のブレーキシステム。
【請求項26】
前記蓄電部は、前記発電機構以外の外部電源によっても充電可能に構成される、
請求項24または25に記載のブレーキシステム。
【請求項27】
前記第2アクチュエータは、前記蓄電部からの電力によって動作する、
請求項24から26のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項28】
前記操作装置をさらに備える、
請求項22から27のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項29】
前記操作装置への入力に応じて前記ブレーキ装置を制御する制御部をさらに備える、
請求項23から28のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項30】
請求項9から21のいずれか一項に記載のブレーキ装置と、
前記キャリパ本体に設けられ、前記第1アクチュエータを制御するアクチュエータ制御装置と、を備える、ブレーキシステム。
【請求項31】
前記アクチュエータ制御装置は、外部機器と無線通信可能に構成される、
請求項30に記載のブレーキシステム。
【請求項32】
前記外部機器は、前記操作装置を含む、
請求項31に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置およびこれを備えるブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動車に搭載され、電力によって駆動されるブレーキ装置が知られている。例えば特許文献1に開示されるブレーキ装置は、人力駆動車の回転体を制動する制動部と、制動部を駆動するアクチュエータとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人力駆動車の回転体を好適に制動できることが好ましい。
本発明の目的は、人力駆動車の回転体を好適に制動できるブレーキ装置およびブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従うブレーキ装置は、人力駆動車の回転体を制動する制動部と、動力伝達媒体によって前記制動部を駆動する第1アクチュエータと、操作装置への入力に応じて電力によって前記第1アクチュエータを駆動する第2アクチュエータと、を備える。
第1側面に従うブレーキ装置によれば、操作装置への入力に応じて第2アクチュエータが電力によって駆動され、第2アクチュエータが第1アクチュエータを駆動し、第1アクチュエータが動力伝達媒体によって制動部を駆動する。このため、人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面のブレーキ装置において、前記第2アクチュエータは、前記人力駆動車の走行に伴って発電機構で発電される電力によって動作する。
第2側面に従うブレーキ装置によれば、外部電源による電力の蓄電および供給を必要とせず、発電機構で発電される電力を用いて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面のブレーキ装置において、前記第2アクチュエータは、電気モータを含む。
第3側面に従うブレーキ装置によれば、人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0008】
前記第1~第3側面のいずれか1つに従う第4側面のブレーキ装置において、前記第1アクチュエータは、前記動力伝達媒体として流体を用いるポンプを含む。
第4側面に従うブレーキ装置によれば、人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0009】
前記第1~第4側面のいずれか1つに従う第5側面のブレーキ装置において、前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含む。
第5側面に従うブレーキ装置によれば、人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0010】
前記第1または第2側面に従う第6側面のブレーキ装置において、前記第2アクチュエータは、電気モータを含み、前記第1アクチュエータは、前記動力伝達媒体として流体を用いるポンプを含み、前記ポンプは、前記電気モータによって駆動されるマスターピストンを含む。
第6側面に従うブレーキ装置によれば、流体を用いて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0011】
前記第6側面に従う第7側面のブレーキ装置において、前記制動部は、前記回転体を挟持するキャリパを含み、前記キャリパは、キャリパ本体と、前記キャリパ本体に設けられる複数のスレーブピストンと、前記マスターピストンの動きに伴って前記複数のスレーブピストンに油圧を供給するように前記キャリパ本体に設けられる流路とを含む。
第7側面に従うブレーキ装置によれば、スレーブピストンおよび流路がキャリパ本体に設けられるため、ブレーキ装置を簡素に構成できる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面のブレーキ装置において、前記ポンプおよび前記電気モータは前記キャリパ本体に設けられる。
第8側面に従うブレーキ装置によれば、ブレーキ装置を簡素に構成できる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面のブレーキ装置において、前記電気モータの回転を変速して前記マスターピストンに伝達する第1変速機構をさらに備え、前記第1変速機構は、前記キャリパ本体に設けられる。
第9側面に従うブレーキ装置によれば、電気モータの回転を変速してマスターピストンに伝達できる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面のブレーキ装置において、前記第1変速機構は、減速機構である。
第10側面に従うブレーキ装置によれば、電気モータの回転を減速してマスターピストンに伝達できる。
【0015】
前記第7~第10側面のいずれか1つに従う第11側面のブレーキ装置において、前記ポンプと繋がるように前記キャリパ本体に設けられるリザーバタンクをさらに備える。
第11側面に従うブレーキ装置によれば、スレーブピストンに油圧を一層好適に供給できる。
【0016】
前記第7~第11側面のいずれか1つに従う第12側面のブレーキ装置において、前記スレーブピストンの移動速度を変化させる第2変速機構をさらに備える。
第12側面に従うブレーキ装置によれば、スレーブピストンの移動速度を好適に変化させることができる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面のブレーキ装置において、前記第2変速機構は、前記マスターピストンの移動速度を変化させることによって、前記スレーブピストンの移動速度を変化させる。
第13側面に従うブレーキ装置によれば、スレーブピストンの移動速度を容易に変化させることができる。
【0018】
前記第12側面に従う第14側面のブレーキ装置において、前記第2変速機構は、前記マスターピストンによる単位時間当たりの前記流体の送り量を変化させることによって、前記スレーブピストンの移動速度を変化させる。
第14側面に従うブレーキ装置によれば、スレーブピストンの移動速度を容易に変化させることができる。
【0019】
本発明の第15側面に従うブレーキシステムは、前記第1~第14面のいずれか1つに従う前記ブレーキ装置と、前記人力駆動車の走行に伴って発電する発電機構と、を備える。
第15側面に従うブレーキシステムによれば、外部電源による電力の蓄電および供給を必要とせず、発電機構で発電される電力を用いて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0020】
前記第15側面に従う第16側面のブレーキシステムにおいて、前記発電機構は、ハブダイナモ、ブロックダイナモ、アシスト回生機構、および、振動発電素子の少なくとも1つを含む。
第16側面に従うブレーキシステムによれば、多様な発電機構をブレーキシステムに適用できる。
【0021】
前記第15または第16側面に従う第17側面のブレーキシステムにおいて、前記発電機構からの電力を蓄電する蓄電部をさらに備える。
第17側面に従うブレーキシステムによれば、発電機構からの電力が不足するような状況においても、蓄電部に蓄電される電力を用いることによって人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0022】
前記第17側面に従う第18側面のブレーキシステムにおいて、前記蓄電部は、二次電池を含む。
第18側面に従うブレーキシステムによれば、蓄電部を簡素に構成できる。
【0023】
前記第17または第18側面に従う第19側面のブレーキシステムにおいて、前記蓄電部は、前記発電機構以外の外部電源によっても充電可能に構成される。
第19側面に従うブレーキシステムによれば、十分な電力を蓄電部に蓄電できる。
【0024】
前記第17~第19側面のいずれか1つに従う第20側面のブレーキシステムにおいて、前記第2アクチュエータは、前記蓄電部からの電力によって動作する。
第20側面に従うブレーキシステムによれば、蓄電部に蓄電される電力を用いて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0025】
前記第15~第20側面のいずれか1つに従う第21側面のブレーキシステムにおいて、前記操作装置をさらに備える。
第21側面に従うブレーキシステムによれば、操作装置への入力に応じて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0026】
前記第15~第21側面のいずれか1つに従う第22側面のブレーキシステムにおいて、前記操作装置への入力に応じて前記ブレーキ装置を制御する制御部をさらに備える。
第22側面に従うブレーキシステムによれば、操作装置への入力に応じて人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【0027】
前記第7~第14側面のいずれか1つに従う第23側面のブレーキシステムにおいて、前記キャリパ本体に設けられ、前記第1アクチュエータを制御するアクチュエータ制御装置と、を備える。
第23側面に従うブレーキシステムによれば、ブレーキ装置を簡素に構成できる。
【0028】
前記第23側面に従う第24側面のブレーキシステムにおいて、前記アクチュエータ制御装置は、外部機器と無線通信可能に構成される。
第24側面に従うブレーキシステムによれば、利便性が高められる。
【0029】
前記第24側面に従う第25側面のブレーキシステムにおいて、前記外部機器は、前記操作装置を含む。
第25側面に従うブレーキシステムによれば、操作装置と好適に通信できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のブレーキ装置およびブレーキシステムによれば、人力駆動車の回転体を好適に制動できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態のブレーキシステムを搭載した人力駆動車の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
図1を参照して、ブレーキシステム10を含む人力駆動車Aについて説明する。
人力駆動車Aは、ブレーキシステム10を含む。ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽量車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車Aは、補助的に電動で駆動される自転車(e-bike)である。より具体的には、図示される人力駆動車Aは、シティサイクルである。人力駆動車Aは、フレームA1、フロントフォークA2、前輪A3、後輪A4、ハンドルA5、および、ドライブトレインBをさらに含む。
【0033】
ドライブトレインBは、クランクアセンブリC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクアセンブリCは、クランク軸C1、一対のクランクアームC2、および、一対のペダルC3を含む。一対のペダルC3は、クランクアームC2の先端に回転可能に取り付けられる。
【0034】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクアセンブリCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪A4のハブA6に設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車Aの搭乗者によってペダルC3に加えられる駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪A4に伝達される。
【0035】
人力駆動車Aは、電動補助ユニットEをさらに含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車Aの推進力がアシストされるように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルC3に加えられる駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、電気モータE1を含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車Aに搭載されるバッテリBTから供給される電力によって駆動される。
【0036】
ブレーキシステム10は、一対のブレーキ装置12を備える。この実施形態では、ブレーキ装置12は、人力駆動車Aの回転体Fを制動するディスクブレーキ装置である。回転体Fは、人力駆動車Aの前輪A3および後輪A4のそれぞれに設けられるディスクブレーキロータF1である。一方のブレーキ装置12は、例えば前輪A3に対応して設けられる。他方のブレーキ装置12は、例えば後輪A4に対応して設けられる。一対のブレーキ装置12は、互いに同じ構成を有する。ブレーキ装置12は、リムブレーキ装置であってもよい。この場合、回転体FはリムF2である。
【0037】
ブレーキ装置12は、人力駆動車Aの回転体Fを制動する制動部14と、動力伝達媒体16によって制動部14を駆動する第1アクチュエータ18と、第1アクチュエータ18を駆動する第2アクチュエータ20と、を備える。制動部14は、回転体Fを挟持するキャリパを含む。第1アクチュエータ18および第2アクチュエータ20は、例えばフレームA1、フロントフォークA2、および、制動部14のいずれかに設けられる。この実施形態では、前輪A3に対応するブレーキ装置12において、第1アクチュエータ18および第2アクチュエータ20は、フロントフォークA2のブレードA8(
図1紙面奥側のブレード)に設けられる。また、後輪A4に対応するブレーキ装置12において、第1アクチュエータ18および第2アクチュエータ20は、フレームA1のシートステイA9(
図1紙面奥側のシートステイ)に設けられる。
【0038】
ブレーキシステム10は、操作装置22および制御部24(
図2参照)をさらに備える。操作装置22は、人力駆動車Aの中心平面に対して、ハンドルA5の左側、および、ハンドルA5の右側にそれぞれ設けられる。一対の操作装置22は、それぞれレバー22Aを含む。制御部24は、操作装置22への入力に応じてブレーキ装置12を制御する。制御部24は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。この実施形態では、制御部24は、一方の操作装置22のレバー22Aの操作に応じて一方のブレーキ装置12を制御し、他方の操作装置22のレバー22Aの操作に応じて他方のブレーキ装置12を制御する。各操作装置22のそれぞれに対して別の制御部24を設け、各ブレーキ装置12を制御するようにしてもよい。また、一対の操作装置22のそれぞれの操作に応じて各ブレーキ装置12を動作させてもよい。この場合、一方の操作装置22の操作における各ブレーキ装置12の制動力の比率と、他方の操作装置22の操作における各ブレーキ装置12の制動力の比率とを異ならせるようにしてもよい。
【0039】
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、人力駆動車Aの走行に伴って発電する発電機構26、および、発電機構26からの電力を蓄電する蓄電部28をさらに備える。発電機構26は、ブレーキシステム10を構成する各種の電気的な要素、および、蓄電部28に電力を供給可能に構成される。ブレーキシステム10を構成する各種の電気的な要素は、例えば第2アクチュエータ20および制御部24を含む。蓄電部28は、二次電池を含む。蓄電部28は、ブレーキシステム10を構成する各種の電気的な要素に電力を供給可能に構成される。蓄電部28は、発電機構26以外の外部電源EPによっても充電可能に構成される。
【0040】
発電機構26は、ハブダイナモ26A、ブロックダイナモ26B、アシスト回生機構26C、および、振動発電素子26Dの少なくとも1つを含む。ハブダイナモ26Aは、前輪A3のハブA7(
図1参照)、および、後輪A4のハブA6の少なくとも一方に設けられる。ブロックダイナモ26Bは、前輪A3、前輪A3のリムF2、後輪A4、および、後輪A4のリムF2のうちの少なくとも1つと接触できるように、フレームA1およびフロントフォークA2の少なくとも一方に設けられる。アシスト回生機構26Cは、例えば電動補助ユニットEの電気モータE1によって構成される。振動発電素子26Dは、前輪A3および後輪A4が地面(図示略)から受ける振動の影響を受けやすい部分に設けられる。振動発電素子26Dは、フレームA1およびフロントフォークA2の少なくとも一方に設けられる。
【0041】
第2アクチュエータ20は、操作装置22への入力に応じて電力によって第1アクチュエータ18を駆動する。第2アクチュエータ20は、人力駆動車Aの走行に伴って発電機構26で発電される電力によって動作する。第2アクチュエータ20は、蓄電部28からの電力によって動作する。この実施形態では、第2アクチュエータ20は、発電機構26で発電される電力、および、蓄電部28に蓄電される電力の少なくとも一方によって動作し、第1アクチュエータ18を駆動する。第2アクチュエータ20は、電気モータ20Aを含む。また、第2アクチュエータ20は、電気モータ20Aの回転を変速(減速あるいは増速)する変速機(図示略)を含む。
【0042】
第1アクチュエータ18は、動力伝達媒体16として液体を用いるポンプ18Aを含む。この実施形態では、動力伝達媒体16は、作動油である。この実施形態では、第2アクチュエータ20の電気モータ20Aが動作することによってポンプ18Aが駆動され、動力伝達媒体16である作動油の油圧が制動部14に与えられる。これによって、キャリパである制動部14は、人力駆動車Aの回転体Fに少なくとも1つの摩擦部材(図示略)を押圧し、回転体Fを制動する。
【0043】
制御部24は、操作装置22への入力に応じて、対応する第2アクチュエータ20が動作するように電気モータ20Aを制御する。この実施形態では、発電機構26で発電される電力、および、蓄電部28に蓄電される電力の少なくとも一方によって第2アクチュエータ20の電気モータ20Aが動作し、第1アクチュエータ18のポンプ18Aが駆動される。
【0044】
(第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態のブレーキシステム100について説明する。第2実施形態のブレーキシステム100に関して、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
第2実施形態のブレーキシステム100は、ブレーキ装置112およびアクチュエータ制御装置130を備える。ブレーキ装置112は、人力駆動車Aの回転体Fを制動する制動部114と、動力伝達媒体16によって制動部114を駆動する第1アクチュエータ18と、第1アクチュエータ18を駆動する第2アクチュエータ20と、を備える。
【0046】
第2アクチュエータ20は、電気モータ20Aを含む。第1アクチュエータ18は、動力伝達媒体16として流体を用いるポンプ18Aを含む。ポンプ18Aは、電気モータ20Aによって駆動されるマスターピストン132を含む。このため、作動油などの流体である動力伝達媒体16を用いて人力駆動車Aの回転体Fを好適に制動できる。
【0047】
ポンプ18Aは、マスターピストン132を収容するシリンダ134、および、マスターピストン132をシリンダ134内で往復移動させるピストン移動部136をさらに備える。ピストン移動部136は、電気モータ20Aの出力軸20AXの回転運動を直線運動に変換する。ピストン移動部136は、ボールねじ136Aおよび移動体136Bを備える。ボールねじ136Aは中心軸がマスターピストン132の中心軸と一致するように配置される。移動体136Bにはボールねじ136Aが挿入される。移動体136Bにはマスターピストン132の一方の端部が接続される。電気モータ20Aの出力がボールねじ136Aに伝達されることによって、ボールねじ136Aは第1方向または第2方向に回転する。移動体136Bは、ボールねじ136Aの回転に伴って直線的に移動するように複数のガイド軸によって案内される。ボールねじ136Aが第1方向に回転する場合、移動体136Bおよびマスターピストン132が制動部114に接近する方向に移動する。このため、シリンダ134内の容積が減少し、制動部114に作動油の油圧が供給される。ボールねじ136Aが第2方向に回転する場合、移動体136Bおよびマスターピストン132が制動部114から離間する方向に移動する。このため、シリンダ134内の容積が増加し、制動部114に供給されている作動油の油圧が減少する。
【0048】
制動部114は、回転体Fを挟持するキャリパ138を含む。キャリパ138は、キャリパ本体140と、キャリパ本体140に設けられる複数のスレーブピストン142と、マスターピストン132の動きに伴って複数のスレーブピストン142に油圧を供給するようにキャリパ本体140に設けられる流路144とを含む。スレーブピストン142および流路144がキャリパ本体140に設けられるため、ブレーキ装置112を簡素に構成できる。ポンプ18Aおよび電気モータ20Aはキャリパ本体140に設けられる。このため、ブレーキ装置112を簡素に構成できる。
【0049】
スレーブピストン142は、第1スレーブピストン142Aおよび第2スレーブピストン142Bを含む。第1スレーブピストン142Aは、キャリパ本体140に設けられる第1室140Aに部分的に収容される。第2スレーブピストン142Bは、キャリパ本体140に設けられる第2室140Bに部分的に収容される。
【0050】
第1スレーブピストン142Aおよび第2スレーブピストン142Bは、リターンスプリング(図示略)によって、ディスクブレーキロータF1から離間する方向に付勢される。第1スレーブピストン142Aは、図示しない第1ブレーキパッドを介してディスクブレーキロータF1の一方の面に対向するように設けられる。第1スレーブピストン142Aは、ポンプ18Aから所定の油圧が供給されることによって、リターンスプリングの付勢力に抗してディスクブレーキロータF1の一方の面に向けて移動する。第2スレーブピストン142Bは、図示しない第2ブレーキパッドを介してディスクブレーキロータF1の他方の面に対向するように設けられる。第2スレーブピストン142Bおよび第2ブレーキパッドは、ディスクブレーキロータF1を介して第1スレーブピストン142Aおよび第1ブレーキパッドと対向するように設けられる。第2スレーブピストン142Bは、ポンプ18Aから所定の油圧が供給されることによって、リターンスプリングの付勢力に抗してディスクブレーキロータF1の他方の面に向けて移動する。つまり、第1スレーブピストン142Aおよび第2スレーブピストン142Bは、第1ブレーキパッドおよび第2ブレーキパッドを介してディスクブレーキロータF1を制動する。
【0051】
流路144は、第1流路144Aおよび第2流路144Bを含む。第1流路144Aは、シリンダ134と第1室140Aとを繋ぐ。第2流路144Bは、第1室140Aと第2室140Bとを繋ぐ。
【0052】
ブレーキ装置112は、電気モータ20Aの回転を変速してマスターピストン132に伝達する第1変速機構146をさらに備える。このため、電気モータ20Aの回転を変速してマスターピストン132に伝達できる。第1変速機構146は、キャリパ本体140に設けられる。第1変速機構146は、減速機構である。このため、電気モータ20Aの回転を減速してマスターピストン132に伝達できる。第1変速機構146は、第1ギア146Aおよび第2ギア146Bを含む。第1ギア146Aは、電気モータ20Aの出力軸20AXと連結される。第1ギア146Aは、第2ギア146Bと噛み合う。第2ギア146Bは、第1ギア146Aよりも大径のギアである。第2ギア146Bは、ボールねじ136Aと連結される。電気モータ20Aの出力軸20AXの回転は、第1変速機構146によって減速してボールねじ136Aに伝達され、ボールねじ136Aが第1方向または第2方向に回転する。
【0053】
ブレーキ装置12は、ポンプ18Aと繋がるようにキャリパ本体140に設けられるリザーバタンク148をさらに備える。リザーバタンク148は、作動油である動力伝達媒体16の体積変化やブレーキパッドの摩耗に伴う経路容積の変化を吸収するために設けられる。このため、スレーブピストン142を安定して配置できる。
【0054】
アクチュエータ制御装置130は、キャリパ本体140に設けられ、第1アクチュエータ18を制御する。このため、ブレーキ装置112を簡素に構成できる。アクチュエータ制御装置130は、外部機器と無線通信可能に構成される。このため、利便性が高められる。外部機器は、操作装置22(
図1参照)を含む。アクチュエータ制御装置130は、操作装置22への入力に応じて、第2アクチュエータ20が動作するように電気モータ20Aを制御する。この実施形態では、発電機構26で発電される電力、および、蓄電部28に蓄電される電力の少なくとも一方によって第2アクチュエータ20の電気モータ20Aが動作し、第1アクチュエータ18のポンプ18Aが駆動される。
【0055】
(第3実施形態)
図4を参照して、第3実施形態のブレーキシステム200について説明する。第3実施形態のブレーキシステム200に関して、第2実施形態と共通する構成については、第2実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
第3実施形態のブレーキシステム200は、ブレーキ装置212を備える。ブレーキ装置212は、スレーブピストン142の移動速度を変化させる第2変速機構250をさらに備える。ブレーキ装置212は、好ましくは、第2変速機構250を移動させる移動機構262、および、第2変速機構250とキャリパ本体240とを接続する付勢部材270を備える。
【0057】
第2変速機構250は、マスターピストン132の移動速度を変化させることによって、スレーブピストン142の移動速度を変化させる。第2変速機構250は、ハウジング250A、第1ギア252、第2ギア254、第3ギア256、第4ギア258、および、回転軸260を備える。ハウジング250Aは、第1ギア252、第2ギア254、第3ギア256、第4ギア258、および、回転軸260を収容する。第1ギア252は、電気モータ20Aの出力軸20AXと連結される。第2ギア254は、第1ギア252と噛み合う。第2ギア254は、第1ギア252よりも大径のギアである。第2ギア254は、回転軸260が挿入される。第2ギア254は、回転軸260と一体的に回転する。第3ギア256は、回転軸260が挿入される。第3ギア256は、第2ギア254よりも小径のギアである。第3ギア256は、回転軸260と一体的に回転する。第4ギア258は、第3ギア256と噛み合う。第4ギア258は、第3ギア256よりも大径のギアである。第4ギア258は、ボールねじ136Aと連結される。電気モータ20Aの出力軸20AXの回転は、第1ギア252、第2ギア254、第3ギア256、および、第4ギア258を介してボールねじ136Aに伝達される。
【0058】
移動機構262は、電気モータ20Aの回転が伝達されることによって、ハウジング250A、および、ハウジング250Aに収容される部材をスレーブピストン142に接近する方向に移動させる。移動機構262は、カム部材264、複数のボール266、および、ボール配置台268を備える。
【0059】
カム部材264は、例えば、円盤形状である。カム部材264には、回転軸260が挿入される。カム部材264は、回転軸260と一体的に回転する。カム部材264は、ハウジング250Aと接触する。カム部材264は、複数のボール266と接触するカム面264Aを備える。カム面264Aは、例えば、カム部材264の周方向に沿って深さが変化する面である。一例では、カム面264Aは、カム部材264の周方向に沿って、深さが浅くなる面である。複数のボール266は、カム面264Aと接触できるように、ボール配置台268に配置される。ボール配置台268は、キャリパ本体240に対して固定される。付勢部材270は、ハウジング250Aをスレーブピストン142から離間する方向に付勢する。
【0060】
電気モータ20Aの回転が第1ギア252、第2ギア254、および、回転軸260を介してカム部材264に伝達されることによって、カム部材264が回転し、複数のボール266と接触しているカム面264Aの位置が変化する。カム面264Aのうちの最も深い面と複数のボール266とが接触している場合、カム部材264とボール配置台268との距離が最も近くなる。カム面264Aのうちの最も浅い面と複数のボール266とが接触している場合、カム部材264とボール配置台268との距離が最も遠くなる。カム部材264の回転に伴い、複数のボール266と接触するカム面264Aの深さが浅くなるにつれて、カム部材264がボール配置台268から離間するため、カム部材264がハウジング250A、および、ハウジング250Aに収容されている部材をボール配置台268から離間する方向に押す。このため、ハウジング250Aに収容されているマスターピストン132がスレーブピストン142に接近する方向に移動し、シリンダ134内の容積が減少し、制動部114に作動油の油圧が供給される。カム部材264の回転に伴うスレーブピストン142の移動が終了した場合、第2実施形態の場合と同様に、第1方向に回転するボールねじ136Aによって、マスターピストン132がスレーブピストン142にさらに接近する方向に移動する。このため、シリンダ134内の容積がさらに減少し、制動部114に作動油の油圧が供給される。ボールねじ136Aが第2方向に回転するように電気モータ20Aが駆動される場合、複数のボール266と接触するカム面264Aの深さが深くなるようにカム部材264が回転する。ハウジング250A、および、ハウジング250Aに収容されている部材は、付勢部材270の付勢力によって、ボール配置台268に接近する方向に移動する。
【0061】
(第4実施形態)
第3実施形態の第2変速機構250に替えて、
図5に示すような第2変速機構350を備えるブレーキ装置312によってブレーキシステム300を構成してもよい。第2変速機構350は、単位時間当たりの流体の送り量を変化させることによって、スレーブピストン142の移動速度を変化させる。第2変速機構350は、マスターピストン352、サブピストン354、第1付勢部材356、および、第2付勢部材358を備える。第4実施形態のマスターピストン352は、例えば、第2実施形態で示される第1変速機構146およびピストン移動部136を介して電気モータ20Aによって駆動される。
【0062】
マスターピストン352は、サブピストン354に設けられる孔354Aに挿入される。マスターピストン352は、サブピストン354に対して移動可能に設けられる。第1付勢部材356は、マスターピストン352をサブピストン354から離間するように付勢する。第1付勢部材356は、例えば、コイルばねである。第2付勢部材358は、サブピストン354をキャリパ本体340から離間するように付勢する。第2付勢部材358は、例えば、皿ばねである。第2付勢部材358の付勢力は、第1付勢部材356の付勢力よりも小さい。
【0063】
キャリパ本体340は、第1溝342、第2溝344、および、ストッパ346を備える。第1溝342は、第2溝344よりも容積が広い溝である。第2溝344は、第1溝342と繋がる。ストッパ346は、第1溝342の側壁342Aに設けられる。ストッパ346は、第2溝344から離間する方向へのサブピストン354の移動を規制する。サブピストン354は、ストッパ346と第1溝342の底342Bとの間を移動する。
【0064】
電気モータ20A(
図3参照)の出力がボールねじ136A(
図3参照)に伝達されることによって、ボールねじ136Aは第1方向または第2方向に回転する。ボールねじ136Aが第1方向に回転する場合、移動体136B(
図3参照)、および、マスターピストン352が制動部114(
図3参照)に接近する方向に移動する。マスターピストン352が制動部114に接近する方向に移動する場合、第1付勢部材356を介してマスターピストン352と接続されているサブピストン354が第2付勢部材358の付勢力に抗して制動部114に接近する方向に移動する。このため、第1溝342内の容積が減少し、制動部114に作動油の油圧が供給される。サブピストン354が第1溝342の底342Bと接触した場合、マスターピストン352は、第1付勢部材356の付勢力に抗してさらに制動部114に接近する方向に移動する。このため、第2溝344内の容積が減少し、制動部114に作動油の油圧がさらに供給される。
【0065】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うブレーキ装置およびブレーキシステムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うブレーキ装置およびブレーキシステムは、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
・蓄電部28の構成は、任意に変更可能である。第1例では、蓄電部28は、コンデンサ(図示略)を含む。第2例では、蓄電部28は、外部電源EPによる充電ができないように構成される。
【0067】
・発電機構26の構成は、任意に変更可能である。第1例では、発電機構26は、蓄電部28だけに電力を供給する。この例によれば、発電機構26で発電される電力の全部が蓄電部28に蓄電され、蓄電部28に蓄電される電力だけによって第2アクチュエータ20が動作する。第2例では、発電機構26は、ブレーキシステム10を構成する各種の電気的な要素だけに電力を供給する。この例によれば、ブレーキシステム10から蓄電部28を省略してもよい。
【0068】
・ブレーキ装置12、112、212、および、312の構成は、任意に変更可能である。
図2に示されるように、第1アクチュエータ18は、動力伝達媒体16としてケーブル(図示略)を用いるケーブル制御機構18Bであってもよい。ケーブル制御機構18Bの一例は、ラックアンドピニオン機構である。第2アクチュエータ20が動作することによって第1アクチュエータ18のケーブル制御機構18Bが駆動され、動力伝達媒体16がケーブル制御機構18Bに対して変位することによって制動部14が駆動される。これによって、人力駆動車Aの回転体Fが制動部14によって制動される。例えば、ブレーキ装置12は、ケーブル制御機構18Bが駆動されることによって動力伝達媒体16が制動部14に対してケーブル制御機構18B側に引っ張られ、制動部14を駆動するように構成される。この場合、ラックアンドピニオン機構にワンウェイクラッチを設けると共に、制動部14にばね等の弾性部材(図示略)を設け、操作装置22の操作後に、動力伝達媒体16であるケーブルが制動部14側に戻るように構成されてもよい。
【0069】
・ブレーキシステム10、100、200、および、300の構成は、任意に変更可能である。一例では、発電機構26および蓄電部28の少なくとも一方がブレーキシステム10から省略される。この例によれば、第2アクチュエータ20は、バッテリBTから供給される電力によって第1アクチュエータ18を駆動する。
【0070】
・人力駆動車Aの構成は、任意に変更可能である。一例では、電動補助ユニットEが人力駆動車Aから省略される。この例によれば、アシスト回生機構26Cが発電機構26から省略される。
【0071】
・人力駆動車Aの種類は、任意に変更可能である。第1例では、人力駆動車Aの種類は、ロードバイク、マウンテンバイク、トレッキングバイク、または、クロスバイクである。第2例では、人力駆動車Aの種類は、キックスケータである。
【符号の説明】
【0072】
10、100、200、300…ブレーキシステム、12、112、212、312、…ブレーキ装置、14、114…制動部、16…動力伝達媒体、18…第1アクチュエータ、18A…ポンプ、20…第2アクチュエータ、20A…電気モータ、22…操作装置、24…制御部、26…発電機構、26A…ハブダイナモ、26B…ブロックダイナモ、26C…アシスト回生機構、26D…振動発電素子、28…蓄電部、130…アクチュエータ制御装置、132、352…マスターピストン、138…キャリパ、140、240、340…キャリパ本体、142…スレーブピストン、144…流路、146…第1変速機構、148…リザーバタンク、250、350…第2変速機構、A…人力駆動車、EP…外部電源、F…回転体。