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特許7454607塩を抽出するための方法及び温度再生される抽出組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】塩を抽出するための方法及び温度再生される抽出組成物
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/26 20230101AFI20240314BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C02F1/26 Z
B01D11/04 B
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107697
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2019503425の分割
【原出願日】2017-07-21
(65)【公開番号】P2022130680
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】1657078
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517251683
【氏名又は名称】アディオニク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ソウザ、ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】プーエッセル、ジャッキー
(72)【発明者】
【氏名】ドートリシュ、バスティアン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200552(JP,A)
【文献】特開平08-127561(JP,A)
【文献】特開昭55-147104(JP,A)
【文献】特表2003-507359(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101559350(CN,A)
【文献】米国特許第6566561(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0179568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20 - 1/26
1/30 - 1/38
B01D 11/00 - 12/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体生理食塩水溶液からの二価の非アルカリカチオン種及び相補的アニオン種の抽出に適用される、熱再生による液体媒体中での抽出によって水を脱イオン化するための方法であって、前記液体生理食塩水溶液が、
- 前記非アルカリカチオン種の塩、及び
- アルカリ金属カチオン種の塩
を含み、
前記方法が、以下のステップ:
a)処理済みの液体水溶液、並びに前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された疎水性液体有機相をその後に得るために、第1の反応器において、第1の温度で、疎水性液体有機相及び前記液体生理食塩水溶液を混合するステップであり、
前記疎水性液体有機相が、前記非アルカリカチオン種の抽出分子、及び前記相補的アニオン種の溶媒和分子を含む、上記ステップと、
b)一方では、前記処理済みの液体水溶液、並びに他方では、前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記疎水性液体有機相を分離するステップと、
c)再生済みの疎水性液体有機相、並びに前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された再生液体水溶液をその後に得るために、第2の反応器において、前記第1の温度よりも高い第2の温度で、液相で、前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記疎水性液体有機相を、再生液体水溶液と混合するステップであり、前記第1の温度と前記第2の温度との間の差異が30℃から150℃で変動する、上記ステップと
を含み、
非アルカリカチオン種の前記抽出分子が、以下の式(I)又は(II)
【化1】

(式中、
- nは、5から8の整数であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、3又は4であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCH-フェニル基、又は水素原子であり、
- 同一であるか若しくは異なる、R’及びR’’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、並びにオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’及びR’’は一緒に、ピロリジン、ピペリジン、若しくはモルホリン環を形成する)
を有する、環が24から32個の炭素原子から形成されており、アミド基で官能化されている大環状高分子であり、
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、プロトン性疎水性化合物であって、25℃の水中におけるそのpKaが、少なくとも9であり、25℃で15よりも低い、上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の非アルカリカチオン種の抽出分子が、カリックスアレーン大環状高分子を有する式(I)の化合物から選択され、p=1であり、R’、R’’及びnが以下に定義され、コーン型又は部分的コーン型の配置にある、請求項1に記載の方法。
【表1】
【請求項3】
前記疎水性液体有機相が、流動化剤をさらに含み、前記流動化剤が、ジクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、それらの誘導体及びそれらの混合物から誘導される芳香族極性溶媒から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非アルカリカチオン種が、以下のカチオン:カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムのうちの少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属カチオン種が、ナトリウムイオンNaである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
液体生理食塩水溶液からの少なくとも1種のアルカリカチオン種及び相補的アニオン種の抽出に適用される、熱再生による液体媒体中での抽出によって水を脱イオン化するための方法であって、前記液体生理食塩水溶液が、
- 前記少なくとも1種のアルカリカチオン種の塩、及び
- アルカリ土類金属カチオン種の塩
を含み、
前記方法が、以下のステップ:
a)処理済みの液体水溶液、並びに前記アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された疎水性液体有機相をその後に得るために、第1の反応器において、第1の温度で、疎水性液体有機相及び前記液体生理食塩水溶液を混合するステップであり、
前記疎水性液体有機相が、前記アルカリカチオン種の抽出分子、及び前記相補的アニオン種の溶媒和分子を含む、上記ステップと、
b)一方では、前記処理済みの液体水溶液、並びに他方では、前記アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記疎水性液体有機相を分離するステップと、
c)再生済みの疎水性液体有機相、並びに前記アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された再生液体水溶液をその後に得るために、第2の反応器において、前記第1の温度よりも高い第2の温度で、液相で、前記アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記疎水性液体有機相を、再生液体水溶液と混合するステップであり、前記第1の温度と前記第2の温度との間の差異が30℃から150℃で変動する、上記ステップと
を含み、
少なくとも1種のアルカリカチオン種の前記抽出分子が、以下の式(V)又は(VI)
【化2】

(式中、
- nは、4、5又は6であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、2又は3であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル基、又は水素原子であり、
- R’は、ケトン型結合基を作製するために、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’は、エステル型結合基を作製するために、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCH -フェニル基からなる群から選択される)
の化合物から選択され、
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、プロトン性疎水性化合物であって、25℃の水中におけるそのpKaが、少なくとも9であり、25℃で15よりも低い、上記方法。
【請求項7】
少なくとも1種のアルカリカチオン種の抽出分子が、カリックスアレーン大環状高分子を有する式(V)の化合物から選択され、p=1であり、R’、R’’及びnが以下に定義され、コーン型又は部分的コーン型の配置にある、請求項6に記載の方法。
【表2】
【請求項8】
前記疎水性液体有機相が、流動化剤をさらに含み、前記流動化剤が、ジクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、それらの誘導体及びそれらの混合物から誘導される芳香族極性溶媒から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のアルカリカチオン種は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される、請求項6~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、親水性アニオンによるアルカリ塩の選択的抽出からなる、請求項6~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、少なくとも10.5のpKaを有し、25℃の水のpKaよりも低い、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、以下の式
【化3】

(式中、Rは、R=n-C15、n-C19、n-C1123、又はn-C1327である)
の分子である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非アルカリカチオン種の抽出分子、相補的アニオン種の溶媒和分子、及び流動化剤を含む疎水性液体有機組成物であって、非アルカリカチオン種の前記抽出分子が、以下の式(I)又は(II)
【化4】

(式中、
- nは、5から8の整数であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、3又は4であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCH-フェニル基、又は水素原子であり、
- 同一であるか若しくは異なる、R’及びR’’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’及びR’’は一緒に、ピロリジン、ピペリジン、若しくはモルホリン環を形成する)
を有する、環が24から32個の炭素原子から形成されており、アミド基で官能化されている大環状高分子であり、
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、プロトン性疎水性化合物であって、25℃の水中におけるそのpKaが、少なくとも9であり、25℃で15よりも低いことを特徴とする、上記疎水性液体有機組成物。
【請求項14】
アルカリカチオン種の抽出分子、相補的アニオン種の溶媒和分子、及び流動化剤を含む疎水性液体有機組成物であって、アルカリカチオン種の前記抽出分子が、式(V)又は(VI)
【化5】

(式中、
- nは、4、5又は6であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、2又は3であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル基、又は水素原子であり、
- R’は、ケトン型結合基を作製するために、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’は、エステル型結合基を作製するために、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCH-フェニル基からなる群から選択される)
の化合物から選択される、環が16から24個の炭素子から形成されており、エステル又はケトン基で官能化されている大環状高分子であり、
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、プロトン性疎水性化合物であって、25℃の水中におけるそのpKaが、少なくとも9であり、25℃で15よりも低いことを特徴とする、上記疎水性液体有機組成物。
【請求項15】
前記相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、少なくとも10.5のpKaを有し、25℃の水のpKaよりも低い、請求項13又は14に記載の疎水性液体有機組成物。
【請求項16】
相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、以下の式
【化6】

(式中、Rは、R=n-C15、n-C19、n-C1123、又はn-C1327である)
の分子である、請求項13~15のいずれか一項に記載の疎水性液体有機組成物。
【請求項17】
前記流動化剤が、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、それらの誘導体及びそれらの混合物から誘導される芳香族極性溶媒から選択される、請求項13~16のいずれか一項に記載の疎水性液体有機組成物。
【請求項18】
生理食塩水溶液からの少なくとも1種の二価非アルカリカチオン種及び1種の相補的アニオン種の選択的抽出のための、請求項1315~17のいずれか一項に記載の疎水性液体有機組成物の使用。
【請求項19】
生理食塩水溶液からの少なくとも1種のアルカリカチオン種及び1種の相補的アニオン種の選択的抽出のための、請求項14~17のいずれか一項に記載の疎水性液体有機組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、工業用又は天然の塩水の処理に適用される、塩、特に親水性塩のイオン抽出である。
【背景技術】
【0002】
鉱業活動、石油活動、又は産業活動は、塩分を高度に含み、非常にスケール生成性且つ/又は毒性の金属汚染廃水を生み出す場合があり、この廃水は、環境に排出される前又は鉱業プロセス内で再循環させる前に処理する必要がある。どちらの場合でも、現状、製造業者の有するソリューションは非常に高価なものしかなく、それらの特定の環境に対する適合も不十分であるか、又は適合されていない。
【0003】
また、今日、特にアルカリ土類カチオンに富み且つ/又は微量金属を組み込む非常にスケール生成性の塩水の場合、これらの水を実質的且つ/又は経済的に処理するための技術は存在しないため、これらの水はソリューションを待っている間、沈降タンクに保管せざるを得ない。
【0004】
異なる泉由来の水の混合物、又は非常にスケール生成性の水の場合、水に対する溶解性が低い塩、例えば一部の炭酸塩(MgCO、CaCO、SrCO、BaCO、CdCO、CoCO、MnCO、PbCO、NiCO、FeCO、ZnCOなど)、硫酸塩(CaSO、SrSO、BaSO、PbSOなど)、フッ化物塩(MgF、CaF、SrF、BaF、CdF、FeF、PbFなど)、金属水酸化物塩(Mg(OH)、Ca(OH)、Cd(OH)、Co(OH)、Fe(OH)、Ni(OH)、Zn(OH)など)、及び多量に存在し得る、他の多くのものの沈殿により、設備にはスケール生成することが多い。さらに、使用される技術がこの水の熱蒸発と関連する場合、80℃を上回ることが一般的な使用温度では、一部の塩(例えば、二酸化炭素の蒸発による、CaCOなどの炭酸塩)及び逆溶解性を有する塩(CaSOなど)の沈殿閾値の低下が引き起こされ、これにより、塩水の最大水抽出レベルがなおいっそう制限されたり、又は処理すべき固形廃棄物の生成される量がさらにより大量になったりする可能性がある。
【0005】
工業用水又は天然水中に溶解形態で存在するイオン又は塩を抽出するためには、一般的なアプローチは、例えば、例えば塩基(NaOHなど)の試薬を添加して、水に対して溶解性ではない金属水酸化物を沈殿させることで、そのイオン又は塩の沈殿を確実にすることによる、化学的方法を使用することにある。この方法は、沈殿する金属に対して非選択的であり、カチオン(ここでは、Na対金属)又はアニオン交換に相当し、例えば下流で処理すべき新たな汚染物質の添加及び標的化合物の濃度の低下による効率性の低下など、他の不利益をもたらす。
【0006】
また、カチオンの交換Mn+/nHによって、より高濃度でニッケル、コバルトなどの金属を捕捉する場合、湿式精錬法として公知である、溶媒抽出による別の方法を実行することもできる。これらの方法は、溶媒中に溶解されているカチオン性抽出剤を使用して、酸塩基化学又は抽出を実行し、溶媒の再生は、数桁異なるpHにおいて起こる。したがって、このような方法は、高価な塩基(NaOHなど)及び酸(HSOなど)を使用し、下流で処理すべき塩(NaSOなど)の共生成と関連する、新たな汚染物質の添加がもたらされる。
【0007】
別の方法も50年を超えて実行されてきたが、この方法は、選択的電気透析膜、すなわちカチオン又はアニオンに対して透過性であるが、水及び中性分子に対しては一般に透過性ではない膜を使用することにある。この場合、消費される電気エネルギーは移動される塩に比例するため、ブライン処理の場合では、その使用は高付加価値用途に限定される。この技術は、同じ電荷を有するイオンに対しては選択的でなく、したがって抽出されるべき金属又はアニオンに対して選択的でないのと同時に、膜汚損に関しても危険性がある。
【0008】
例えばイオン交換などの他の方法も存在し、この方法での選択性は、イオン電荷に左右され、処理されるイオンの濃度によって限定され、またそこでは樹脂の化学的再生から結果として生じる新たな汚染物質の供給も生み出される。
【0009】
より近年では、本出願人が、国際出願公開第2010/086575号において、イオン交換器に付随する、液体であり且つ疎水性のフッ化相を含む、直接接触交換器におけるフッ化化合物の使用について開示している。しかしながら、この出願に記載されている液体有機フッ化相は、不適当な再生手順に起因して、高い水脱塩率又は塩の選択的脱塩、及び特にスケール除去を得るのに十分に好適ではない方法と関連付けられる、イオン性及び非イオン性有機フッ化化合物の使用について記載している。
【0010】
米国特許出願第2008/179568号(A1)は、希釈剤、例えばC12~C15のイソパラフィン系炭化水素などに溶解された、中濃度のクラウンエーテルファミリー及び非常に低濃度(0.0025から0.025Mol/L)のカリックスアレーンに由来する2種類のカチオン性抽出剤の分子と、少なくとも1種の改質剤とを使用する、低濃度のセシウム及びストロンチウムの液液抽出のための方法について記載している。改質剤は、アルコール、トリオクチルアミン(TOA)、トリ-n-ブチルホスファート(TBP)、又はそれらの混合物であってもよい。この化合物は、カチオン性抽出剤の能力及び/又はその実行中、可溶化した状態であり続けるその能力を改善することを意図したものである。
【0011】
米国特許出願第2008/0014133号は、高い割合(80体積%超)のフッ化アルコール(フルオロヘプタノールnとして知られる)と組み合わされた、低濃度(0.04から0.095Mol/L)のクラウンエーテルファミリーに由来するカチオン性抽出剤の分子と、グリコールエーテルとを使用することによる、低濃度のセシウム及びストロンチウムの液液抽出のための方法について記載している。
【0012】
米国特許第6566561号(B1)は、低濃度(0.001から0.20Mol/L、好ましくは0.01Mol/L)のカリックスアレーン-クラウンエーテルファミリーに由来するカチオン性抽出剤の分子の存在下で、溶媒和剤及び塩基性媒体中で安定なフェノキシフルオロアルコール型相改質剤を使用することによる、低濃度のセシウムの液液抽出のための方法について記載している。
【0013】
この分野には文献が幅広く存在し、T.G.Levitskaiaら、Anal.Chem.2003、75、405~412による論文が挙げられ、この文献では、クラウンエーテル型ナトリウム中性抽出剤を、脱プロトン性の親油性弱酸とともに使用することで、疎水性ナトリウムアルコキシドを形成させることによって、水溶液からソーダ(NaOH)を抽出することが可能であることが実証されている。
【0014】
[DC18C6](org)+[RCOH](org)+[Na(aq)+[OH(aq)⇔[RCONaDC18C6](org)+H(aq)
【0015】
この文書はまた、0.04Mで存在し、すべてニトロベンゼンに溶解した7つの弱酸(アルコールファミリー由来)を伴わずに、次いで、これらの弱酸と、0.02MのDC18C6とを組み合わせることによって、1Mの塩度のNaF、NaCl、NaBr、NaNO、及びNaClOを抽出するための実施例も示している。これらのアルコールのうちの2つは、pKaが約8.8であるフッ化芳香族アルコールである。ピクリン酸イオンなどの疎水性イオンの塩抽出率は、比較的高い。しかしながら、塩化物イオンClなどの親水性アニオンの場合、再計算した塩抽出率は、0.06%から0.16%の範囲であり、このことによって、水から親水性NaClを抽出することが非常に困難であることと、この濃度での、抽出性能に対するアルコールの影響が小さいこととが確認される。
【0016】
したがって、今日、産業界は、幅広い塩度における塩の抽出にとって有効であり、且つ投資及び実施の見地からはるかにより安価である、金属によって汚染されているか否かにかかわらず、ブラインを処理するためのソリューションを待ち望んでいるようである。
【0017】
また、この処理のすべて又は一部をサポートするために、スケール生成性イオンの組合せを分離して、それらを除去するか若しくは特定の塩及び特にこれらの水によるこの設備のスケール生成を引き起こすものの存在を低減すること、並びに/又はこれらの水中に存在するこれらの無機化合物の一部を評価することが可能であることも期待されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本特許出願の目的は、工業用又は天然の塩水の処理のために、多かれ少なかれ高い経済価値を有する塩を選択的又は大量に水から抽出するその能力によって、これらの問題に対応可能である、塩水及び金属によって汚染された水を処理するための新しい技術について説明することである。この技術は、生態系について考慮しつつ、これらの水のプロセス水としての推進のために環境中への排出を可能にして、鉱業若しくは石油事業、又は高付加価値塩及び/若しくは金属カチオンの再循環の範囲内で、新規の又は追加的な経済価値を提供するために、幅広く適用することが可能であろう。この新しい技術はまた、イオンが、無電荷の化合物体の塩の形態で水から抽出され、これが次いで、熱及び非化学的方法による抽出剤の再生を実行することによって抽出溶媒から逆抽出されるため、新しい汚染物質を生み出さないという利点も有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
水性媒体からの塩の抽出を実行するために、本出願は、
- CEM(カチオン抽出分子)として公知である、水性相から抽出されるべき塩のカチオンを抽出する(例えば、溶媒和する、複合体化する、又はキレート化する)ことが可能である、少なくとも1種の、電気的に中性であり、有機且つ疎水性の化合物、
- ASM(アニオン溶媒和分子)として公知である、水性媒体から抽出されるべき塩のアニオンを溶媒和することが可能である、少なくとも第2の、電気的に中性であり、有機且つ疎水性の化合物、及び任意選択で、
- 好ましくは疎水性である、流動化剤
を含む、又はこれらから本質的になる、又はこれらからなる疎水性液体有機相を使用する熱再生による液液抽出を通じて水を脱イオン化するための方法を提供する。
【0020】
驚くべきことに、本発明によるASM及びCEMの提携は、有機相に移行させることが特に困難である親水性カチオン及びアニオンで構成される中性塩の共同抽出を可能にする。
【0021】
「疎水性」という用語は、25℃での水への溶解度が少なくとも0.1Mol/リットル未満である、化合物又は化合物の混合物を意味する。好ましくは、25℃での水への溶解度が0.01Mol/L未満、好ましくは0.0001Mol/L未満、有利なことには1×10-5Mol/L未満である疎水性化合物が選択される。化合物の疎水性又は水に対する溶解性は、標準的な方法によって、及び特にUV可視分光法によって測定することができる。
【0022】
CEM
また、本出願において説明されるCEM化合物、その混合物、並びに少なくとも1種の二価カチオン種及び少なくとも1種の相補的アニオンの抽出のための、熱再生による液液抽出を通じて水を脱イオン化するための方法としての、カチオン種を含有する水からそのカチオン種を抽出するための方法における使用も、本発明の一部である。
【0023】
少なくとも1種のカチオンの抽出を可能にするCEMは、有利なことには、例えばカルシウム、ストロンチウム、若しくはバリウムイオンなどのアルカリ土類イオン、又は他の二価カチオンの良好な抽出能力を有する分子の中から、分離の必要性に応じて選択することができる。抽出は、水によるカチオン及びアニオンの溶媒和を、抽出組成物によるそれらの溶媒和で置き換えることで、CEM及びASMとの相互作用を可能にすることによって可能となる。相互作用の性質は、水素結合及び静電相互作用の形成、又はさらにはファンデルワールス結合を伴うイオン双極子相互作用などの現象を網羅する。好ましくは、CEMは、カチオンを複合体化させ、特にキレート化することができる化合物である。「キレート化」は、カチオンが少なくとも2つの結合/相互作用によってキレート配位子に結合するという点において、単なる「複合体化」とは区別される。
【0024】
一価のアルカリ金属カチオンに対して、二価カチオンを選択的に抽出することが考えられるCEMは、nフェノール型芳香環として説明される、疎水性キャビティを有するメタシクロファン(MCP)ファミリー由来の大環状高分子である。大環状高分子のサイズは、原子、特に炭素原子が24から32個で変動する。好ましくは、大環状高分子のサイズは、24から28個の炭素原子である。
【0025】
これらのフェノール型芳香環は、互いに対して、ヒドロキシ官能基のオルト位において、直接、又は1炭素メチレン架橋(-CH-)、若しくは2炭素架橋(-CHCH-)、若しくは3炭素架橋(-CHCHCH-)によって結合され得る。直接結合のみを備えている場合には、これらの大環状高分子の一般名は、[0]型スフェランドとなる。1炭素メチレン架橋(-CH-)のみを備えている場合には、これらの大環状高分子の一般名は、[1]型カリックスアレーンとなる。2炭素架橋(-CHCH-)のみを備えるている場合には、これらの大環状高分子の一般名は、[2]型オールホモカリックスアレーンとなる。架橋のサイズも、同一の大環状高分子内で異なっていてもよく、0から3個の炭素原子で異なっていてもよい。命名法は、そのような多様性を、例えば互いに対してオルト位で連続的に、1つのメチレン架橋、次いで1つの3炭素架橋、次いで再び1つのメチレン架橋、及び最後に1つの3炭素架橋によって連結されることで環が完成されている、4つの芳香環を有する大環状高分子に関して、それらを[1.3.1.3]MCP又は[1.3]MCPと名付けることによって特定する。
【0026】
その後、目的とする大環状高分子は、二価遷移金属の抽出に対しても選択的になることはなく、アルカリ土類の選択的抽出のために非水素化アミド基で官能化される。
【0027】
したがって、アルカリカチオン、特に一価のものに対して、非アルカリカチオン、特に二価のものの選択的抽出を達成することを可能にするCEMは、大環状高分子であり、その環は24から32個の炭素原子から形成されており、アミド基で官能化されており、以下の式(I)又は(II)
【化1】

(式中、
- nは、5から8の整数であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、3又は4であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCHフェニル基、又は水素原子であり、
- 同一であるか若しくは異なる、R’及びR’’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’及びR’’は一緒に、ピロリジン、ピペリジン、若しくはモルホリン環を形成する)
を有する。
【0028】
したがって、式(I)の化合物の場合、整数n及びpは、24≦(3+p)×n≦32となるように選択されるべきである。式(II)の化合物の場合、整数m、q、及びtは、24≦(7+q+t)×m≦32となるように選択されるべきである。
【0029】
そのような分子は、メタシクロファンファミリーに属する。
【0030】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化2】

([1]型の、カリックス[6]アレーンファミリーに由来)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。R’及びR’’が両方ともエチル基である場合、特にR基がtert-ブチル、OCHPh、H、又はO-メチルである場合に、二価カチオンの選択的抽出は特に強力なものとなる。
【0031】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化3】

([2]型の、オールホモカリックス[5]アレーンファミリーに由来)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0032】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化4】

([2]型の、オールホモカリックス[6]アレーンファミリーに由来)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0033】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化5】

([1]型の、カリックス[7]アレーンファミリーに由来)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0034】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化6】

([1]型の、カリックス[8]アレーンファミリーに由来)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。R’及びR’’が両方ともエチル基である場合、特にR基がtert-ブチル、OCHフェニル、H、又はO-メチルである場合に、二価カチオンの選択的抽出は特に興味深いものとなる。
【0035】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化7】

([2.1.2.1.2.1]MCP又は[2.1]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0036】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化8】

([3.1.3.1.3.1]MCP又は[3.1]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0037】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化9】

([2.0.2.0.2.0]MCP又は[2.0]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0038】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化10】

([3.0.3.0.3.0]MCP又は[3.0]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0039】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化11】

([1.0.1.0.1.0.1.0]MCP又は[1.0]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0040】
有利なことには、CEMは、以下の式
【化12】

([2.0.2.0.2.0.2.0]MCP又は[2.0]MCP型の)
(式中、R、R’、及びR’’は、式(I)及び(II)について上に定義された通りである)
の分子である。
【0041】
式(I)及び(II)において、
【0042】
特に有利なことには、R基はtert-ブチルである。
【0043】
特に有利なことには、R’基及びR’’基は両方ともエチル基である。
【0044】
特に有利なことには、R基はtert-ブチル又は水素原子である。
【0045】
特に有利なことには、CEMは、以下の式の化合物である:
【化13】

([1]型の、カリックス[6]アレーンファミリーに由来し、CAS番号:111786-95-9のもの)。このCEM2は、本発明による液体樹脂の熱再生による液液抽出方法において、水溶液からの親水性アルカリ土類塩、特に塩化物塩の選択的抽出にとって、それらが少なくとも1種のASM及び任意選択で流動化剤と組み合わされた場合に特に有効である。
【0046】
これらの式(I)のファミリーに属する分子は、既にCAS番号によって同定されており、特に、以下のカチオン抽出分子である:
【表1】
【0047】
本発明による組成物はまた、少なくとも1種のカチオンの抽出を可能にする1種よりも多いCEM化合物を含んでもよく、これは、有利なことには、本出願において説明される化合物から選択することができる。
【0048】
本発明の別の目的は、水性媒体から塩及び/又はイオンを抽出するための、これらのCEM化合物の使用に関する。特に、これらの化合物は、本出願において説明されるような本発明による組成物又は方法において、個別に使用されてもよく、又は一緒に混合されてもよい。
【0049】
本発明の別の目的は、大環状高分子型CEM化合物であって、その環のサイズが、16から22個の範囲の原子、特に炭素原子であり、アミド基によって官能化されている、化合物の、塩、特に塩化物塩などの親水性アニオン塩を抽出するための使用に関する。特に、本発明によるASMと提携したこれらの化合物は、55pmから180pm、有利なことには70pmから167pm、より特定すると75pmから167pmの範囲のイオン半径を有する異なるカチオンを含む、例えば塩化物塩のそのような塩の混合物を含有する溶液から、大量に抽出することができる。そのようなカチオンは、特に、一価であるリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、若しくはセシウムカチオン、又は二価であるカルシウム、ストロンチウム、若しくはバリウムカチオン、さらには遷移金属カチオンである。イオン半径が72pmの二価のカチオンであるマグネシウムは例外であり、これらのCEMを、水からマグネシウムを抽出する目的で工業的に使用できるほど十分に抽出可能であるとはみなされないことに留意すべきである。
【0050】
これらの化合物は、一般式(III)及び(IV)
【化14】

(式中、
- nは、4又は5であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、2又は3であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCHフェニル基、又は水素原子であり、
- 同一であるか若しくは異なる、R’及びR’’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’及びR’’は一緒に、ピロリジン、ピペリジン、若しくはモルホリン環を形成する)
の化合物である。
【0051】
したがって、式(III)の化合物の場合、整数n及びpは、16≦(3+p)×n≦22となるように選択されるべきである。式(IV)の化合物の場合、整数m、q、及びtは、16≦(7+q+t)×m≦22となるように選択されるべきである。
【0052】
特に、本発明による液体樹脂の熱再生による液液抽出方法において、式IIIの大環状高分子CEM1(式中、n=4であり、R=tert-ブチルであり、R’=R’’=エチルであり、CAS番号114155-16-7のもの)は、そのコーン型配置において、水溶液からの親水性塩、特に塩化物塩の大量又は全般的抽出にとって、それが少なくとも1種のASM及び任意選択で流動化剤と組み合わされた場合に特に有効である。
【0053】
これらの式(III)及び(IV)のファミリーに属する分子は、既にCAS番号によって同定されており、特に、以下のCEMである:
【表2】
【0054】
カリックスアレーンの場合、コーン型、さらには部分的コーン型の環配置が、交互の1,2-型又は交互の1,3-型配置よりも選ばれるべきであるが、これらの交互配置を除外するものではない。
【0055】
他の20炭素メタシクロファン型環を同定する:
【表3】
【0056】
本発明の優先的な一態様においては、式(III)又は(IV)のCEMは、25℃のメタノール中において、3超且つ11未満、好ましくは5超且つ9未満の、抽出されるべきカチオン種の複合体化定数Log Kを有する。
【0057】
これらのアミド型CEMは、本発明による温度差を介した液液抽出方法に対して、特に良好に適合されている。
【0058】
本発明の別の目的は、エステル又はケトン基で官能化されているCEM化合物の、一価遷移金属(銀Ag)の抽出に選択的ではなく、アルカリ土類カチオンに対して、アルカリカチオンを選択的に抽出するための使用に関する。特に、これらの化合物は、本出願において説明されるような本発明による組成物又は方法において、個別に使用されてもよく、又は一緒に混合されてもよい。
【0059】
本発明の別の目的は、大環状高分子型CEM化合物であって、その環のサイズが、16から24個の範囲の原子、特に炭素原子であり、エステル又はケトン基によって官能化されている、化合物の、アルカリ塩、特に塩化物塩などの親水性アニオンアルカリ塩を選択的に抽出するための使用に関する。特に、本発明によるASMと提携したこれらの化合物は、55pmから180pm、有利なことには70pmから167pmの範囲のイオン半径を有する異なるカチオンを含む、そのような塩、例えば塩化物塩の混合物を含有する溶液から、1種又は複数のアルカリ塩を選択的に抽出することができる。そのようなカチオンは、特に、一価であるリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムカチオン、又は二価であるカルシウム、ストロンチウム、バリウムカチオン、さらには遷移金属カチオンである。
【0060】
これらの化合物は、一般式(V)及び(VI)
【化15】

(式中、
- nは、4、5、又は6であり、
- pは、1又は2であり、
- mは、2又は3であり、
- 同一であるか又は異なる、q及びtは、0、1、又は2であり、
- Rは、tert-ブチル、tert-ペンチル、tert-オクチル基、又は水素原子であり、
- R’は、ケトン型結合基を作製するために、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル基からなる群から選択されるか、又はR’は、エステル型結合基を作製するために、O-メチル、O-エチル、O-プロピル、O-イソプロピル、O-ブチル、O-イソブチル、O-ペンチル、O-ヘキシル、O-ヘプチル、O-オクチル、OCHフェニル基からなる群から選択される)
の化合物である。
【0061】
したがって、式(V)の化合物の場合、整数n及びpは、16≦(3+p)×n≦24となるように選択されるべきである。式(VI)の化合物の場合、整数m、q、及びtは、16≦(7+q+t)×m≦24となるように選択されるべきである。
【0062】
特に、本発明による液体樹脂の熱再生による液液抽出方法において、式(V)の大環状高分子CEM10(式中、n=4であり、R=tert-ブチルであり、R’=O-エチルであり、CAS番号97600-39-0のもの)は、そのコーン型配置において、水溶液からのナトリウム塩、特に塩化ナトリウム塩の選択的抽出にとって、それが少なくとも1種のASM及び任意選択で流動化剤と組み合わされた場合に特に有効である。
【0063】
特に、本発明による液体樹脂の熱再生による液液抽出方法において、式(V)の大環状高分子CEM11(式中、n=5であり、R=tert-ブチルであり、R’=O-エチルであり、CAS番号152495-34-6のもの)及び式(V)の大環状高分子CEM12(式中、n=6であり、R=tert-ブチルであり、R’’=O-エチルであり、CAS番号97600-45-8のもの)は、それらのコーン型構成において、水溶液からのアルカリ土類塩、特にアルカリ塩化物塩に対するアルカリ塩の選択的抽出にとって、それが少なくとも1種のASM及び任意選択で流動化剤と組み合わされた場合に特に有効である。CEM11が、アルカリ塩化物の抽出にとってより全般的に好適であるのに対し(リチウムを除く)、CEM12は、環径が24とより大きいため、好ましくは大きい直径を有するアルカリを抽出する能力を有する(セシウム、ルビジウム、さらにはカリウム)。
【0064】
これらの式(V)及び(VI)のファミリーに属する分子は、既にCAS番号によって同定されており、特に、以下のCEMである:
【表4】
【0065】
カリックスアレーンの場合、コーン型、さらには部分的コーン型の環配置が、交互の1,2-型又は交互の1,3-型配置よりも選ばれるべきであるが、いかなるものに関しても排他的ではない。
【0066】
好ましい一実施形態によれば、組成物は、カルシウムイオンの抽出を可能にする、すなわち、その複合体化定数Log K(Ca++)が、25℃のメタノール中において3超である、式(V)又は(VI)のCEMを含まない。本発明の優先的な一態様においては、式(V)又は(VI)のCEMは、25℃のメタノール中において、3超且つ11未満、好ましくは5超且つ9未満の、抽出されるべきカチオン種の複合体化定数Log Kを有する。さらに、アルカリカチオン種の抽出に選択的なCEMの場合、そのアルカリ土類カチオン、特にカルシウムに関するLog Kは、25℃のメタノール中において5未満、好ましくは3未満であり得る。
【0067】
式(V)又は(VI)のこれらのエステル又はケトン型CEMは、本発明による温度差を介した液液抽出方法に対して、特に良好に適合されている。
【0068】
ASM化合物
ASMは、6から50個の炭素原子、有利なことには7から30個の炭素原子、特に8から20個の炭素原子を含み、且つ少なくとも1つの芳香環と、少なくとも1個のハロゲン原子又は電子吸引基、特にフッ化されているものとを含む化合物であり得る。
【0069】
有利なことには、ASMは、式B
【化16】

[式中、同一であるか又は異なる、R、R、R、R、及びR基のうちの少なくともいずれか1つは、ハロゲン原子又は電子吸引基、特に以下の群:
- F、Cl、Br、
- C2m+1(m≦4であり、mはゼロではない整数である)、
- CFCF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- OCHCF
- C(=O)CF
- CClBr(m≦4であり、n、p、q、sは整数であり、これらの中でも少なくともp、q、又はsはゼロではない)、
- C(=O)OC2m+1(m≦4であり、mは整数である)、及び
- C(=O)C2m+1(m≦4であり、mは整数である)
からのハロゲン化基であり、
同一であるか又は異なる、1つ又は複数の残りのR、R、R、R、及びR基は、以下の非電子吸引基:
- H、
- CH
- CHCH
- CHCH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- C2m-1(3≦m≦10であり、mは整数である)、及び
- C2m+1(3≦m≦10であり、mは整数である)
から選択され、
からR基のうちの1つのみが、これらの最後の2つのC2m-1及びC2m+1基のうちの1つであってもよく、
Xは、以下の基:
- OH、
- NH-R’、

【化17】


【化18】


【化19】


【化20】

から選択され、
同一であるか又は異なる、R’及びR’’は、以下の基:
- H、
- C2n-1(3≦n≦4であり、nは整数である)、
- C2n+1(n≦4であり、nはゼロではない整数である)、
- CHCH2p+1(p≦2であり、pは整数である)、
- CH2p+1(p≦2であり、pは整数である)、及び
- 式bのアリール基:
【化21】

から選択され、
同一であるか又は異なる、R、R、R、R、及びRは、式Bにおいて上に定義された通りであり、
R’’’は、以下の基:
- C2m+1(m≦20、好ましくは≦15であり、mは整数である)、
- C2m-1(3≦m≦20であり、mは整数である)、
- CClBr(m≦10であり、n、p、q、sは整数であり、これらの中でも少なくともp、q、又はsはゼロではない)、
- CHCH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CFCF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- C2m+1(m≦4であり、mはゼロではない整数である)、及び
- 式bのアリール基:
【化22】

から選択され、
同一であるか又は異なる、R、R、R、R、及びRは、式Bにおいて上に定義された通りである]
の化合物である。
【0070】
ASM化合物 - アルコール
そのような化合物は、有利なことには、アルコール官能基を有するフッ化芳香族及びそれらの誘導体の群から選択される。例えば、この化合物は、3-(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール(CAS番号:349-75-7)などのメタノール性フェニルから誘導されるアルコールであってもよい。
【0071】
好ましくは、この第1の化合物は、有利なことには3個より多いフッ素原子を含む、メタノール性フェニル化合物である。有利なことには、この化合物は、少なくとも2つの-CF基を含む。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、この第1のASM化合物は、式BのX基として、
【化23】

を有し、これは、式A
【化24】

[式中、
同一であるか又は異なるが、R、R、及びRのうちのいずれか1つがフッ化基である場合の、R、R、R、R、及びRは、以下の基:
- H、
- F、
- C2m+1(m≦4であり、mはゼロではない整数である)、
- CFCF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、及び
- CF2p+1(p≦4であり、pは整数である)
から選択され、
同一であるか又は異なる、R’及びR’’は、以下の基:
- H、
- C2n-1(3≦n≦4であり、nは整数である)、
- C2n+1(n≦4であり、nはゼロではない整数である)、
- CH2p+1(p≦2であり、pは整数である)、
- CHCH2p+1(p≦2であり、pは整数である)、及び
- 式aのアリール基:
【化25】

から選択され、
同一であるか又は異なる、R、R、R、R、及びRは、以下の群:
- H、
- F、
- C2m+1(m≦4である)、
- CFCF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CF2p+1(p≦4であり、pは整数である)
から選択される]
の化合物に相当する。
【0073】
ASM化合物 - アルコール
有利なことには、前記第1の化合物は、下の表Iに記載される化合物からなる群から選択される。
【表5-1】

【表5-2】
【0074】
本発明の一態様によれば、疎水性液体有機組成物は、少なくとも1種のアニオンの溶媒和を可能にする少なくとも1種の化合物を含む。好ましくは、これらの化合物は、本出願において説明されるASM型化合物から選択される。
【0075】
特に、本発明による液体組成物は、流動化剤又は疎水性液体希釈剤と組み合わされた、固体形態のASM、例えば[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(CAS番号:32707-89-4)などを含んでもよい。
【0076】
代わりに、本発明による液体組成物は、(運転温度において)液体のASM、例えば[(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(CAS番号:349-75-7)などと提携した、(運転温度において)固体のASM、例えば[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(CAS番号:32707-89-4)などを含んでもよい。この場合、液体形態のASM1は、ASMとしての、及び流動化剤/希釈剤としての二重の機能を果たす。これらの化合物の互いに対する相対的体積割合は変動し得るが、有利なことには、30/70から60/40体積/体積(v/v)の範囲の比である。好ましくは、この比は、特にASM1/ASM2の組合せに関して約40/60v/vである。
【0077】
ASM化合物 - アミド
そのような化合物は、有利なことには、アミド官能基を有するフッ化芳香族及びそれらの誘導体の群から選択される。式BのASM化合物はまた、アミド化合物であってもよい。この場合、式BのX基は、

【化26】


【化27】


【化28】

(式中、R’’’は、上に記載した通りである)
である。
【0078】
好ましくは、アミドは、以下の式:
(C):
【化29】

又は(D):
【化30】

[式中、
R’’’は、以下の基:
- -C2m+1(m≦20、好ましくは≦15であり、mは整数である)、
- -C2m-1(3≦m≦20であり、mは整数である)、及び
- 式bのアリール基:
【化31】

から選択され、
同一であるか又は異なる、R、R、R、R、及びR基のうちの少なくともいずれか1つは、ハロゲン原子又は電子吸引基、特に以下の群:
- F、Cl、Br、
- C2m+1(m≦4であり、mはゼロではない整数である)、
- CFCF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CF2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- CH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- OCHCF
- C(=O)CF
- CClBr(m≦4であり、n、p、q、sは整数であり、これらの中でも少なくともp、q、又はsはゼロではない)、
- C(=O)OC2m+1(m≦4であり、mは整数である)、及び
- C(=O)C2m+1(m≦4であり、mは整数である)
からのハロゲン化基であり、
同一であるか又は異なる、1つ又は複数の残りのR、R、R、R、及びR基は、以下の非電子吸引基:
- H、
- CH
- CHCH
- CHCH2p+1(p≦4であり、pは整数である)、
- C2m-1(3≦m≦10であり、mは整数である)、及び
- C2m+1(3≦m≦10であり、mは整数である)
から選択され、
からR基のうちの1つのみが、これらの最後の2つのC2m-1及びC2m+1基のうちの1つであってもよい]
を有する。好ましくは、R’’’基は、直鎖状又は非直鎖状アルキル鎖であり、特に、n-C15、n-C19、n-C1123、又はn-C1327基である。
【0079】
これらのアミド型化合物は、本発明による熱再生による液液抽出方法に対して、特に適合されている。本発明による抽出組成物のためのASMとして使用することができるこの種の他の化合物は、例えば、以下である:
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#16143-84-3)、
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-2-クロロアセトアミド(CAS#790-75-0)、
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-2-ブロモアセトアミド(CAS#99468-72-1)、
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-2-クロロベンズアミド(CAS#56661-47-3)、
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-4-クロロベンズアミド(CAS#56661-30-4)、
N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-4-ブロモベンズアミド(CAS#56661-31-5)、
N-[3,5-ジクロロフェニル]アセトアミド(CAS#31592-84-4)、
N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]アセトアミド(CAS#39182-94-0)、
N-[3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#402-02-8)、
N-[2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#349-27-9)、
N-[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#348-90-3)、
N-[4-ブロモ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#41513-05-7)、
N-[2,5-ジフルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#1994-23-6)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#351-36-0)、
N-[2-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#546434-38-2)、
N-[2-アミノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミド(CAS#1579-89-1)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(CAS#2946-73-8)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2,2-ジクロロアセトアミド(CAS#2837-61-8)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2,2,2-トリクロロアセトアミド(CAS#1939-29-3)、
N-[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2,2,2-トリクロロアセトアミド(CAS#13692-04-1)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-ブロモアセトアミド(CAS#25625-57-4)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド(CAS#2300-88-1)、
N-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド(CAS#721-57-3)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,2-ジメチル-プロパンアミド)(CAS#1939-19-1)、
N-[2-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,2-ジメチル-プロパンアミド)(CAS#150783-50-9)、
N-[4-クロロ-2-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,2-ジメチル-プロパンアミド)(CAS#112641-23-3)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2-クロロ-プロパンアミド)(CAS#36040-85-4)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタンアミド(CAS#2339-19-7)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]イソブタンアミド(CAS#1939-27-1)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロペンタンカルボキサミド(CAS#13691-84-4)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2-メチル-ペンタンアミド)(CAS#1939-26-0)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,2-ジメチル-ペンタンアミド)(CAS#2300-87-0)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2-(4-ブロモフェニル)-アセトアミド)(CAS#349420-02-6)、
N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1-アダマンタンカルボキサミド(CAS#42600-84-0)、
N-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]オクタンアミド(CAS#4456-59-1)
【0080】
ASMとして使用されるこれらの分子は、少なくとも1種のCEM及び任意選択で流動化剤を組み合わせる配合におけるそれらの統合によって、イオン種、特に親水性塩を水から抽出有機相へと抽出することを可能にする。本発明による抽出方法において特に使用することができるASMは、以下の式の分子であり、
【化32】

式中、R=n-C15、n-C19、n-C1123、又はn-C1327であり、それぞれ、ASM9、ASM10、ASM11、及びASM12として公知である。
【0081】
「親水性塩」は、20℃で1g/リットル超、より特定すると20℃で20g/L超、有利なことには20℃の水1Lに対して100g超で、水に対して溶解性である塩を意味する。
【0082】
流動化剤
CEM及びASMの一部は、抽出方法の運転温度で固体又は粘性の化合物であるため、流動化剤の使用が有利である。本発明による方法が特に、比較的高濃度の塩を抽出可能であることを考慮すると、集積されたCEM及びASMを少なくとも0.1mol/L溶解させることができる流動化剤が同定されるべきである。実際に、アセトン、酢酸エチル、ヘプタン、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、又はアセトニトリルなどの従来の溶媒は、例えば、これらのレベルの濃度では、公知のCEM、特に、上に記載した16から32個の原子の環を有する大環状高分子の多くを溶解しない。
【0083】
しかしながら、ジクロロメタンなどの溶媒又は希釈剤、より特定すると極性芳香族溶媒は、本出願のための可溶化剤として良好な候補であることが分かる。これは、それら自体が概して芳香族化合物であるASMの、類似する性質によって説明することができる。例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(CAS番号:402-31-3)、より好ましくは2つの芳香環で構成された安息香酸ベンジル(CAS番号:120-51-4)が、例証される配合に対するこの可溶化基準を満たす。1つの芳香環又は2つの芳香環上における、少なくとも1つのトリフルオロメチル又は塩化物型電子吸引基の存在は、特に有利な流動化化合物を得ることを可能にする。ジクロロベンゼン型化合物(例えば、1,2-ジクロロベンゼン(CAS番号:95-50-1))及びジクロロトルエン型化合物(例えば、2,4-ジクロロトルエン(CAS番号:95-73-8))、それらの誘導体、並びにそれらの混合物は、本発明によるCEMの希釈に特に適合されている希釈剤である。「誘導体」は、例えば、混合基を有する溶媒としての、前述のトリフルオロメチル基で置換された芳香族化合物、例えば2,4-ジクロロ-(トリフルオロメチル)ベンゼン(CAS番号:320-60-5)などだけでなく、二芳香族化合物、例えばジフェニルエーテル(CAS番号101-84-8)なども意味する。
【0084】
ASMを、それがASMとしての機能と、CEM及び/又は他のASMの希釈剤としての機能とを組み合わせるように選択することも可能である。
【0085】
本発明の優先的な一態様によれば、組成物は、任意選択で流動化化合物と提携させたASM及びCEM化合物のみを含み、したがって、ASM及びCEM、並びに1種の流動化化合物で構成された組成物が構成される。
【0086】
本発明の別の目的は、水性媒体から塩及び/又はイオンを抽出するための、これらのASM化合物、特にアミドASMの使用に関する。特に、これらの化合物は、本出願において説明されるような本発明による組成物又は方法において、個別に使用されてもよく、又は一緒に混合されてもよい。
【0087】
液体有機組成物中のASM濃度
本発明の好ましい一態様によれば、本発明による組成物中の1種のASM(又はそのような化合物の混合物)のモル濃度は、少なくとも0.1Mに等しい。好ましくは、この組成物は、より高く、最適な抽出、特に親水性アニオンの抽出を可能にするように、少なくとも1Mに等しい。それはまた、選択されるASMのアニオン溶媒和効率に応じて、少なくとも2Mに等しくてもよく、有利なことには少なくとも3Mに等しくてもよく、例えば少なくとも4Mに等しくてもよい。保持されるべきASM濃度は、アニオン溶媒和剤としてのASMの効率に左右される。抽出性能を改善しない過剰なASMは、目的とされない。高いASM濃度に起因する、最適な抽出組成物の流動性の欠如もまた、目的とされない。本発明のある特定の変化形態においては、ASM又はASMの混合物は、純粋な、その液体形態で使用されてもよい([(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(CAS番号:349-75-7)の場合、7.32Mのモル濃度又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリン(CAS番号:328-74-5)の場合、6.41Mのモル濃度)。最終的に保持されるASM濃度は、水を脱イオン化するための最良の技術的/経済的ソリューションを達成するために、意図される用途、及びASMと流動化剤との間の相対的コストに左右される。
【0088】
密度、溶解度、及び粘度
本発明の有利な一態様によれば、液体有機組成物、特に抽出液体有機組成物中における、少なくとも1種のアニオンのアニオン溶媒和を可能にするASMは、その遊離形態又は複合体化形態で、0.1Mol/L未満、好ましくは0.01Mol/L未満、好ましくは0.0001Mol/L未満、より特定すると1×10-5Mol/L未満の水への溶解度を有する。
【0089】
本発明の別の有利な態様によれば、少なくとも1種の抽出されるアニオンのASMは、1kg/リットル超、有利なことには1.1kg/リットル超、理想的には1.2kg/リットル超の密度を有する。この設計の選択は、より高い密度を介して、ASMの密度の欠如を補填し得る流動化剤の選択と密接に関連している。
【0090】
本発明のなおも別の有利な態様によれば、液体ASM又はASM+流動化剤混合物は、25℃において、100mPa・s未満、好ましくは50mPa・s未満、例えば20mPa・s未満の粘度を有する。
【0091】
液体有機組成物中のASM及びCEMの相対濃度
イオン種の最大抽出を確実にするために、ASM及びCEMの濃度は、抽出されるべきイオン種の水溶液中の濃度に応じて選択される。「水溶液」は、50mol%超の水を含有する液体を意味する。
【0092】
したがって、等体積の塩水及び抽出配合物では、CEM化合物の濃度は、有利なことには、抽出されるべきカチオンの濃度と等モル又はそれよりも高い。約2倍高い濃度は、概して、それを超えるとカチオン抽出が実質的に改善されなくなる限界を構成する。実際に保持されるCEM化合物の濃度は、主に、ASM単独若しくはASM+流動化剤混合物中でのCEMの可溶化能力によって、且つ/又は得られた全般的な配合物粘度によって、且つ/又は全般的な技術的/経済的評価最適条件によって限定される。
【0093】
驚くべきことに、抽出されるべきアニオンのモル濃度よりもはるかに高いASMのモル濃度が、最適化された抽出を可能にするために必要とされ得る。したがって、抽出されるべきアニオンの濃度の少なくとも2倍、好ましくは3倍、さらには4倍、5倍、又は6倍、さらにはそれ以上が、特にアニオンが塩化物アニオンである場合に、良好な結果を得るために必要であり得る。実際に保持されるASMの濃度は、主に、CEM+流動化剤混合物中でのASMの可溶化能力によって、且つ/又は得られた全般的な配合物粘度によって、且つ/又は全般的な技術的/経済的評価最適条件によって限定される。
【0094】
したがって、1種のアニオン及び1種のカチオンからなる塩を抽出するための、本発明による組成物のASM/CEMの相対モル比は、有利なことには、1、2、3、4、5、又は6以上である。工業用途のために保持されるべきASM/CEMの相対モル比の選択は、これらの化合物の相対的コスト、プロジェクトの技術的/経済的データ、及び選択されるASMのアニオン溶媒和活性に左右される。好ましくは、この比は、アルコールASMの場合は少なくとも4に等しく、アミドASMの場合は1と4との間である。
【0095】
実施例において与えられるCEM濃度は、ASM+流動化剤混合物の体積に関するものであるため、これらのCEMなどの巨大分子の希釈によって引き起こされる、全般的配合物の体積の増加は考慮されていない。したがって、実際のCEM濃度は、概して、10%から25%低めであるが、この範囲は限定的なものではない。
【0096】
本発明による組成物の使用
本発明による組成物は、有利なことには、水相から親水性イオン(カチオン、アニオン)を抽出するために使用することができる。このイオン抽出は、有機相から水相への、又は反対の、化学イオン種又は他の種の移行によって補填されるものではないことに留意すべきである。この組成物は、いくつかの塩及び/又はイオン種を含む水溶液からの、選択的方法でのイオン種の抽出に対して特に適合されている。したがって、この組成物は、生理食塩水溶液からの少なくとも1種の非アルカリカチオン種の選択的抽出に対して特に適合されている。
【0097】
抽出されるべきアニオン及びカチオン
本発明による組成物に含まれるCEM及びASM化合物は、少なくとも2種、好ましくは数種のイオン種の抽出及び溶媒和を可能にする化合物である。両方のイオン種が、特に、1種又は複数の親水性塩を構成してもよい。本発明の1つの目的によれば、CEM及びASMは、1種よりも多くの塩、好ましくは数種の塩を、それらを含有する生理食塩水から抽出できるように選択される。好ましくは、これえらの塩は、塩化物塩を含むか、又は塩化物塩である。本発明の別の目的によれば、これらのイオンは、例えば1種又は複数のアルカリ土類塩、及びカドミウムCd2+、鉛Pb2+、又は銀Agの塩などの、一部の金属の塩の構成成分である。
【0098】
「塩」は、中性生成物を形成するカチオン及びアニオンからなり、正味電荷を有しない、イオン性化合物を意味する。これらのイオンは、無機(塩化物Cl、カルシウムCa++など)及び有機(酢酸CH-COO、アンモニウムRNHなど)であってもよく、単原子(フッ化物F、マグネシウムMg2+など)及び多原子(硝酸NO 、炭酸水素HCO3、硫酸SO 2-など)であってもよい。
【0099】
特に好ましくは、本発明による、流動化剤を伴うか又は伴わない、CEM及びASMの混合物を含む組成物は、
少なくとも1種のアルカリ金属カチオン種、
少なくとも1種の非アルカリカチオン種、特に二価のもの、及び
少なくとも1種の相補的アニオン種
を含む溶液から抽出することができ、
前記非アルカリカチオン種の量は、アルカリ金属カチオン種の量よりもはるかに多い。代わりに又はさらに、この組成物によって抽出されるアルカリ金属カチオン種の量は、非常に低い。
【0100】
「はるかに多い相対量」及び「非常に低い抽出」は、抽出されるべき1種又は複数のカチオンの抽出率(モル百分率単位)が、処理される水溶液のアルカリカチオンの抽出率の少なくとも2倍ほどの高さであることを意味している。この比は、有利なことには少なくとも5、又はさらには10を超えることもあり得る。本発明による一部の組成物は、初期の等濃度の、抽出されるべきカチオン及び抽出されるべきではないカチオンにおいて、13に等しい比を達成することが可能であるか、又は特に大多数のアルカリカチオンが存在する場合、アルカリカチオン(例えばNa)をほとんど抽出せずに、抽出されるべきイオン(例えばCa)の全体を抽出することが可能である。
【0101】
抽出されるべき1種又は複数のカチオンは、好ましくは、アルカリ土類金属の群から選択され、より特定すると、カルシウム、ストロンチウム、及び/又はバリウムから選択される。そのような二価カチオン、特に水中に最も一般的に存在するカルシウムの抽出によって、これらが特定のアニオンと組み合わさることによるスケール生成現象を回避することが可能となる。
【0102】
アルカリ金属は、元素の周期表の第1列からの化学元素(第1族、水素を除く)である。リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムが、アルカリ金属である。それらは、単一電荷+を有する。
【0103】
アルカリ土類カチオン塩の抽出は、このカチオン用のCEMを複合体化することによって、及び電荷+/-の中和を確実にするための、水性相から有機相へのアニオンの「追跡」によって実行される。
【0104】
ASMによって溶媒和される「追随」アニオンは、主に、最も親水性が低いアニオンであり、すなわち、水和の自由エネルギーが最も高いアニオンである。したがって、水性相から本発明による有機配合物へ移動するアニオンの抽出の優先的な順序は、BF 、I、Br、NO 、Cl、HCO 、CHCOO、F-、SO 2-、CO 2-である。したがって、アルカリ土類塩、ヨウ化物、臭化物、硝酸塩、及び/又は塩化物塩が、優先的に抽出されることになる。これらの塩は、高い水温であっても水に対して非常に溶解性である(CaClは、40重量%を超えて水に対して溶解性である)ため、溶媒熱再生ステップ中に、濃縮ブラインにされ得る。したがって、本発明によって抽出されるアルカリ土類塩又は金属塩は、スケール堆積の原因であり、スケール生成性の塩を構成する可能性があるアニオンからカチオンを分離して、それらを2つの別個の水性廃液へと追いやることが可能となる。したがって、本発明によって部分的に脱イオン化された水は、最も親水性のアニオン、すなわち、フッ化物、硫酸、及び炭酸と、抽出されていないアルカリカチオンとで構成されている。したがって、この水は、スケール生成の能力をすべて失っている。これは軟水である。ところで、このことは、本発明による方法の熱再生から結果として生じる、主にアルカリ土類塩及び金属塩化物塩で構成されている水の場合にも当てはまる。したがって、本発明の目的は、組み合わされた場合に水に対して溶解性でないか又は溶解性が不良であるカチオン及びアニオンの、同じ廃液中での組み合わされた存在を回避することによって、多くの工業用途からスケール堆積の障壁を除去可能にすることである。したがって、分離されるべき塩は主に、炭酸塩(MgCO、CaCO、SrCO、BaCO、CdCO、CoCO、MnCO、PbCO、NiCO、FeCO、ZnCOなど)、硫酸塩(CaSO、SrSO、BaSO、PbSOなど)、及びフッ化物塩(MgF、CaF、SrF、BaF、CdF、FeF、PbFなど)である。金属水酸化物塩(Mg(OH)、Ca(OH)、Cd(OH)、Co(OH)、Fe(OH)、Ni(OH)、Zn(OH)など)の沈殿の制御は、水のpHを調整することによって、又は抽出された二価カチオンを放出して、水のpHを中性若しくは少しばかり酸性にすることによって管理される。
【0105】
本発明によって抽出されることが好ましいカチオンは、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Pb2+、Cd2+、及び銀Agである。このリストは、遷移金属に関する限り、網羅的なものではない。
【0106】
同様に、本発明による組成物は、有機相中のCa++、Sr++、及び/又はBa++を抽出するための本発明による方法において使用することができる。
【0107】
過塩素酸塩ClO 、過マンガン酸塩MnO 、ピクリン酸塩などのより疎水性のアニオンの場合、1種のCEMによって抽出された少なくとも1種のカチオンと組み合わせて有機相へそれらを移行させるには、より低い濃度のASMで十分である。
【0108】
したがって、本発明による組成物は、特に、本出願において説明されるような抽出方法において、特に熱再生による液液抽出を通じて水を脱イオン化するための方法において使用することができる。
【0109】
好ましい一実施形態によれば、組成物は、塩化ナトリウムの抽出を可能にする、すなわち、25℃のメタノール中におけるナトリウムの複合体化定数Log K(Na)が3超であるCEMを含まない。
【0110】
本発明の特定の一態様によれば、25℃のメタノール中におけるマグネシウムの複合体化定数Log K(Mg2+)が3未満であるCEMの導入に起因して、塩化マグネシウム塩は抽出されないか、又はその抽出は不良である。
【0111】
液液抽出方法
本発明はまた、液体生理食塩水溶液からの非アルカリカチオン種の液液抽出方法であって、前記液体生理食塩水溶液が、少なくとも1種の非アルカリカチオン種、1種のアルカリ金属カチオン種、及び1種の相補的アニオン種を含み、前記方法が、以下のステップ:
a)、処理済みの液体水溶液、並びに前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された疎水性液体有機相をその後に得るために、第1の反応器において、第1の温度で、疎水性液体有機相及び前記液体生理食塩水溶液を混合するステップであり、
前記疎水性液体有機相が、前記非アルカリカチオン種の抽出分子、前記相補的アニオン種の溶媒和分子、及び任意選択で流動化剤を含む、上記ステップ、
b)一方では、前記処理済みの液体水溶液、並びに他方では、前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記液体有機相を分離するステップ
を含み、
前記方法が、非アルカリカチオン種の前記抽出分子が、上に記載したようなCEMである点、及び相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、有利なことには、上に記載したようなASM、特にアミド型ASMであることを特徴とする、上記方法にも関する。
【0112】
好ましくは、c)後に、再生済みの液体有機相、並びに前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された再生液体水溶液を得るために、第2の反応器において、第2の温度(第1の温度よりも高いことが好ましい)で、液相で、前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記液体有機相を、再生液体水溶液と混合することを含み、前記第1の温度と前記第2の温度との間の差異が、30℃から150℃で変動し、優先的には50℃から100℃で変動する、後続のステップc)が実行される。
【0113】
「非アルカリカチオン」又は「非アルカリカチオン種」という用語は、アルカリ金属に由来するカチオンを除外することを意図したものである。好ましくは、非アルカリカチオン種は、アルカリ土類カチオンなどの二価カチオンである。本発明による方法は、以下のカチオン:カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムのうちの1つの抽出に対して特に適合されている。この方法はまた、銀Agなどの一価金属カチオン、又は鉛Pb2+及びカドミウムCd2+などの二価金属カチオンに対しても適用することができる。本発明の好ましい一態様によれば、アルカリ金属カチオン種は、ナトリウムイオンNaである。有利なことには、このカチオン種は、生理食塩水からの抽出が不良であるか、又は抽出されない。
【0114】
非アルカリカチオン塩は、前述のカチオンと、相補的アニオン種又はアニオンとで構成されている。「相補的アニオン」という語句は、1種又は複数のアニオン種の電荷が、カチオン種の電荷に対応しており、それを中和することが可能であり、それによって中性塩が構成されることを示している。
【0115】
CEM及びASM、並びに可能性のある流動化剤は、上に記載した通りである。
【0116】
代わりに、ASMはまた、疎水性化合物であってもよく、好ましくは、プロトン性疎水性化合物であって、25℃の水中におけるそのpKaが、少なくとも9、好ましくは少なくとも10.5であり、優先的には25℃の水のpKaよりも低いか、又は25℃で少なくとも15よりも低い、化合物であってもよい。
【0117】
CEMはまた、有機及び疎水性の化合物であって、その抽出されるべき非アルカリカチオン種の複合体化定数、Log K値が、25℃のメタノール中において、3超且つ11未満、好ましくは5超且つ9未満である、化合物であってもよい。さらに、非アルカリカチオン種の抽出に選択的なCEMの場合、そのCEMは、25℃のメタノール中において、5未満、好ましくは3未満の、アルカリカチオン、特にナトリウムに関するLog K値を有し得る。
【0118】
pKa(又は酸性度定数)は、pKa=-log10Kaとして定義され、Kaは、pKaなどの標準的な方法で測定される酸解離定数である。高い、塩基性のpKaにとって推奨される標準的測定方法は、好ましくは、Popovら、IUPAC-高及び低pKaを決定するためのNMR測定用ガイドライン(Guidelines for NMR measurements for determination of high and low pKa)Pure Appl.Chem.、第78巻、第3号、663~675頁、2006年によって記載されているものである。
【0119】
Kは、25℃のメタノール中におけるCEM及び非アルカリカチオンの複合体化定数であり、等温熱量滴定の標準的な方法に従って測定される。
【0120】
本発明の特定の一態様によれば、非アルカリカチオン種は、アルカリ金属カチオン種に対して選択的に抽出される。そのような選択によって、上に記載したレベルを達成することができる。
【0121】
多くの既知のイオン抽出方法とは異なり、本発明による方法は、特に水素イオンHの酸塩基流動性を通じた、捕捉イオンの吸収又は放出のいずれかを可能にするpHの変化に基づくものではない。したがって、本発明の優先的な一態様によれば、方法は、再生液体水溶液のpHが有意に変更される、すなわち、処理される水に関して+/-2、例えば±1を超えて変更されるステップを含まない。本発明の優先的な態様によれば、方法は、イオン抽出溶媒の再生ステップ中に、再生液体水溶液のpHを修正することを目的とした化合物、例えば酸又は塩基など、特に硫酸、塩酸若しくは硝酸などの無機酸、又はソーダ若しくはカリなどの塩基の添加、使用、又は存在を含まない。
【0122】
さらに、この方法は、有利なことには、処理される水から、少なくとも1種のアルカリ土類カチオン種だけでなく、Br又はClイオンなどのアニオン種も抽出することが可能である。そのようなアニオン種は、親水性であり、水性媒体から抽出することが特に難しいことに留意すべきである。本発明による方法の特に有利な一態様は、この方法が、水性相から、カチオン、特にCa++型カチオン及びアニオン、特にCl型アニオンを同時に、且つ抽出される塩濃度が0.1Mol/Lを上回り得るように抽出できることである。
【0123】
ステップa)
液体生理食塩水溶液及び疎水性有機相の混合ステップa)は、これらの2つの相が異なる密度である場合、2つの液相を撹拌することによって、例えば、機械的撹拌若しくは軌道撹拌によって、高度に乱流を生み出すことによって、且つ/又は垂直相互浸透(静的又は撹拌重力カラム)によって実行することができる。本発明の主題である方法の実行と関連する技術的選択は、この方法と関連する塩の移行動態、及び考慮される運転温度に左右される。
【0124】
意図される塩の抽出性能を達成するには、これらの混合ステップa)を繰り返すことが必要な場合がある。その場合、脱イオン化性能を最大限にするために、処理される生理食塩水のフロー及び有機相のフローが、混合反応器内において対向流として流されてもよい。
【0125】
また、混合ステップa)が、マイクロエマルション又は安定なエマルションが結果として生じるような条件下では起こらないこと、及びどのような場合においても、選択されるASMが、界面活性剤型の活性を有しないことも好ましい。
【0126】
ステップb)
水性相及び有機相を分離するステップb)は、有利なことには、有機相及び液体水性相の単純な重力デカンテーションであってもよい。このデカンテーションは、混合物が作製される反応器内において行われてもよい。代わりに、分離は、外部手段の適用によって、例えば、任意選択で、水性相及び有機相が混合される反応器とは別個の遠心分離装置における遠心分離によって達成されてもよい。両方の相のデカント時間は、不動化された有機相体積により、方法の重要なパラメーターである。同様に、非混和性の液相間における密度差は、0.1kg/L超又はさらには0.2kg/L超であることが好ましい。したがって、有機相は、有利なことには、処理される水、処理済みの水、及び生成される再生塩水の密度よりも高い密度を有するように選択される。代わりに、有機相は、処理される水及び処理済みの水の密度より低い密度を有するように選択されてもよい。これらの2つの場合において、密度差は、このタイプの混合物が使用される場合、2つの相の有効なデカンテーションを可能にするのに十分であるべきである。これらの2つの場合において、方法に導入された非混和性の液相間における密度差が0.1kg/Lよりも低い場合、密度差が0.05kg/Lしかない液相を分離することが可能である遠心分離型のデカントシステムの導入を考慮してもよい。
【0127】
ステップc)
相が分離されると、イオン種が充填された液体有機相は、有利なことには、1つ又は一連の第2の反応器に導かれ、そこで、再加熱された後に、液体有機相は、第1の温度よりも高い第2の温度で、液体水又は再生水と接触させられる。この、「高温」水による有機相の再生は、ステップa)において吸収された塩の逆抽出を可能にし、これは、再生水が高温であるために、なおいっそう有効である。したがって、このことから、再生水の体積を低下させること、及び/又は液体有機相の生産性を増加させること、及び/又は導入される脱離反応器の数を低減すること、及び/又は高濃度の逆抽出された塩が充填された再生水を生成することが可能となる。塩の逆抽出を可能にするこの混合ステップc)は、温度を除き、塩の抽出を可能にする混合ステップa)に関して記載した運転条件と同様の運転条件下で実行することができる。しかしながら、例えば圧力などの条件の一部は、例えば、水又は流動化剤の沸騰を回避するために変動し得る。さらに、抽出組成物を再生するためのこのステップをより高い温度で実行することは、有機相の粘度が低減されることにより、フローの水力学的挙動に対して強い影響を与え、それによって、相のデカンテーションが促進され、また、相間における塩の移行動態に対しても強い影響が与えられ、これによって、ステップa)において実行されるものではない別の技術が選択され得る。水又は再生液体水溶液は、特にこのステップから結果として生じる高温水を冷却するための熱交換器のスケール生成のあらゆる問題を回避するために、逆抽出された塩と適合性であるように選択されることになる。
【0128】
温度
本発明の有利な一態様によれば、ステップa)は、室温で実行される。また、液体生理食塩水が、予備加熱又は冷却ステップに供されないことも有利である。代わりに、予備加熱又は冷却ステップが行われてもよい。この場合、液体生理食塩水は、処理される液体生理食塩水に対して、5℃を超えて、有利なことには2℃を超えて加熱又は冷却されないことが好ましい。
【0129】
本発明の別の有利な態様によれば、第1の温度は、50℃より低く、0℃より高い温度である。この温度は、有利なことには、10℃から40℃、好ましくは15℃から30℃、特に19から26℃の範囲から選択することができる(例えば、25℃)。
【0130】
「10℃から50℃の温度範囲」は、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃又は50℃の温度を意味する。
【0131】
本発明の別の特に有利な態様によれば、第2の温度は、60℃より高く、好ましくは85℃より高い温度である。この温度は、60℃から150℃、好ましくは85℃から125℃、特に90℃から120℃の範囲から選択することができる(例えば、95℃)。
【0132】
「60℃から150℃の温度範囲」は、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、122℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃、131℃、132℃、133℃、134℃、135℃、136℃、137℃、138℃、139℃、140℃、141℃、142℃、143℃、144℃、145℃、146℃、147℃、148℃、149℃又は150℃の温度を意味する。
【0133】
第1の温度及び第2の温度は、必然的に、混合物が運転圧力において液体状態のままであるように、且つ本発明の技術的/経済的性能が最大となるように選択される。これらの温度間における差ΔTが、30℃から150℃、好ましくは50℃から100℃の範囲内で選択されることが特に有利である。「50℃から100℃の範囲のΔT」は、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃又は100℃のΔTを意味する。同様に、第1の温度が20℃である場合、第2の温度は50℃より高く、有利なことには70℃より高く、例えば80℃であることになる。
【0134】
したがって、本発明の方法は、室温における、処理される液体生理食塩水溶液から有機相への、好ましくは相補的である特定のイオン種の移行を可能にする第1のステップa)と、その後の、好ましくは相補的であるイオン種が充填された有機相の再生を可能にし、且つ室温より高いものの、地熱、太陽、又は他の再生可能エネルギーから生じるように高過ぎない(例えば、150℃より低い)温度で行われるステップc)とを含んでもよい。
【0135】
方法の好ましい一態様によれば、方法は、以下の後続のステップ
c)前記再生済みの液体有機相、及び好ましくは相補的である前記イオン種が充填された水又は再生液体水溶液を分離するステップ、
d)イオン種が充填された前記液体有機相を、前記再生済みの液体有機相と、例えば熱交換器を通じて、間接的に熱接触させるステップ
を含む。
【0136】
本発明の特定の一態様によれば、方法は、
- イオン種が充填された有機相、
- イオン種が充填されていない、特に再生済みの有機相、
- 再生水又は水溶液、及び
- 排出されたイオン種が充填された再生水又は水溶液
の加熱及び/又は冷却ステップを含むことが有利であり、
これは、第1の反応器及び第2の反応器へのこれらの様々な相又は水の導入に先行する。
【0137】
そのような加熱ステップは、前述の様々な相のうちの少なくとも2つの間(すなわち、充填された有機相と、特にイオン種が充填されていない再生済みの有機相との間、又は水である水性相と、再生水溶液との間、又は水と、排出されたイオン種が充填された再生水溶液との間)において、熱交換器によって全体的又は部分的に実行することができる。
【0138】
特に、本発明による方法は、ステップc)の前に実行される、再生水若しくは水溶液を加熱するステップを含み、且つ/又はステップc)の前に実行される、イオン種が充填された有機相の加熱ステップを含む。
【0139】
抽出組成物の熱再生によって、例えば、方法内でそれを再循環させる前の、必要な再生ステップ2の数を2倍に低減することができる。この利点は、CEM含有量が多く、したがって塩含有量が多い樹脂が導入される場合に、さらにより有意なものとなるであろう。
【0140】
再生温度を上昇させることによって、蒸留水又は再生水と接触させるための連続的なステップの数を低減することが可能になり、同時に、毎回の塩の逆抽出をより大規模にすることができる。
【0141】
圧力
混合ステップa)及び/又はステップc)は、有利なことには、約1気圧の、海水面での大気圧において、又は反応器内に存在する液体の重量以外の圧力手段の適用を伴わずに実行される。
【0142】
圧力が適用される場合、その圧力は正であってもよく、又は負であってもよい。そのような圧力は、0.8atmから80気圧、好ましくは1から10atmの範囲であってもよい。
【0143】
処理済みの水の使用
有利なことには、ステップc)において使用される再生液体水又は水溶液は、ステップc)、d)、又はe)の間のスケール生成のあらゆるリスクを回避することを可能にする補完処理の後に、ステップa)の最後に得られた処理済みの生理食塩水溶液から生じる。代わりに、それは、外部源からもたらされてもよい。
【0144】
組成物
有機相は、本出願において説明される、本発明による組成物を含む、又はそれから主になる、又はそれからなる。この組成物は、前記方法の実行にとって特に有効である。本発明による方法の実行にとって特に好適である組成物は、上に記載したようなCEM型化合物のうちの少なくとも1つと提携したアミドを、任意選択で流動化剤と提携させた組成物を含む。
【0145】
本発明の記載において、この組成物はまた、「溶媒」又は「液体樹脂」と呼ばれることもできる。
【0146】
デバイス
本発明はまた、液体生理食塩水溶液中に存在する少なくとも1種の非アルカリカチオン種及び少なくとも1種の相補的アニオンを抽出するためのデバイスであって、
本出願において説明されるような本発明による疎水性液体有機相又は組成物を含む、第1の反応器
を含む、デバイスにも関する。
【0147】
このデバイスは、有利には、
- 処理済みの生理食塩水溶液、並びに前記非アルカリカチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された疎水性液体有機相をその後に生成するための、前記疎水性液体有機組成物及び任意選択で生理食塩水溶液を含む第1の反応器であって、第1の混合手段と、一方では、前記処理済みの液体生理食塩水溶液、及び他方では、前記充填された液体有機相を分離するための第1の手段とをさらに含む、前記第1の反応器、
- 前記イオン種が充填された再生液体水溶液及び再生済みの有機相をその後に得るための、少なくとも前記非アルカリカチオン種及びその電荷を中和する少なくとも1種の相補的アニオンが充填された疎水性液体有機相、並びに再生水又は水溶液を含む第2の反応器であって、第2の混合手段と、一方では、イオン種が充填された前記再生生理食塩水、及び他方では、前記再生済みの有機相を分離するための第2の手段とを含む、前記第2の反応器;
- 任意選択で、前記第2の反応器における温度を制御するための手段;
- 以下:
- 前記第1の反応器から抽出することができる、前記再生液体水溶液、
- 前記第1の反応器から抽出される、前記充填された疎水性液体有機相、
- 前記第2の反応器から抽出される、前記再生済みの疎水性液体有機相、
- 前記第2の反応器に由来する塩が充填された、前記再生液体水
の、第1の反応器と第2の反応器との間における移行を可能にする接続手段;並びに
- 一方では、前記第1の反応器から抽出される前記充填された疎水性液体有機相、及び他方では、前記第2の反応器から抽出される前記再生済みの疎水性液体有機相を一緒にする熱交換器、並びに任意選択で、
- 一方では、前記再生液体水又は水溶液、及び他方では、逆抽出された相補的イオン種が充填された、前記再生液体水を一緒にする熱交換器
を含んでいてもよい。
【0148】
本発明の特定の一態様によれば、反応器、より特定すると、これらの反応器の可動式ではないような部分は、ステンレス鋼で作製されていない。
【0149】
本発明の別の特定の態様によれば、第1の反応器(単数又は複数)は、加熱手段(ヒーター)又は冷却手段(クーラー)を含まない。
【0150】
本発明のなおも別の特定の態様によれば、デバイス内に存在する有機相は、本出願において説明される、本発明による組成物を含む、又はそれから主になる、又はそれからなる。
【0151】
本発明によるデバイスは、有利なことには、純水及び/又は抽出されるべきイオン種が除かれて清められた水が得られるまで、水中のイオン種の濃度を低減するために、処理されるべき水を連続的に処理するステップを可能にするように直列に設置されてもよい。そのようなデバイスもまた、本発明によって網羅される。
【0152】
同様に、本発明によるデバイスは、有利なことには、抽出されるイオン種が除かれて十分に清められた樹脂が得られるまで、樹脂中のイオン種の濃度を低減するために、塩が充填された疎水性液体有機相を連続的に再生するステップを可能にするように直列に設置されてもよい。そのようなデバイスもまた、本発明によって網羅される。
【0153】
本発明はまた、少なくとも1種の親水性アニオン、例えば塩化物などで構成される塩又は塩の混合物の液液抽出方法にも関する(例1及び2を参照)。抽出されるカチオンは、55pmから180pm、有利なことには70pmから167pmの範囲のイオン半径を有し得る。そのようなカチオンは、特に、一価カチオンであるリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムカチオン、又は二価カチオンであるカルシウム、ストロンチウム、若しくはバリウムカチオン、又はさらには遷移金属カチオンである。
【0154】
この方法は、以下のステップ:
i)処理済みの液体水溶液、並びに前記カチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された疎水性液体有機相をその後に得るために、第1の反応器において、第1の温度で、疎水性液体有機相及び前記液体生理食塩水溶液を混合するステップであって、
前記疎水性液体有機相が、上に記載したような前記カチオン種の抽出分子、前記相補的アニオン種の溶媒和分子、及び任意選択で流動化剤を含む、上記ステップ、
ii)一方では、処理済みの液体水溶液、並びに他方では、前記カチオン種及び前記相補的アニオン種が充填された前記疎水性液体有機相を分離するステップ
を含み、
前記方法は、カチオン種の前記抽出分子が、16から22個の原子、特に炭素原子を有する大環状高分子に関して上に記載したようなCEMであること、及び相補的アニオン種の前記溶媒和分子が、有利なことには、上に記載したようなASMであることを特徴とする。
【0155】
有利なことには、方法は、上に記載したものと同じタイプのものであってもよい、疎水性有機液相を再生する後続のステップを含む。有利なことには、再生温度は、60℃から150℃、優先的には90℃から120℃の範囲である。
【0156】
方法の化合物及び他の条件は、有利なことには、非アルカリカチオン種の抽出方法に関して記載したものであってもよい。同様に、本発明は、上に記載したデバイスと実質的に等価であるか又はそれと同一である、方法の実行を可能にするデバイスにも関する。
【0157】
本発明は、添付の図面を読み取ることでより良好に理解されるが、これらの図面は例として提供されるものであり、本質的に限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図1】本発明による、0.4Mol/LのCEM1及び1.2Mol/LのASM9を含有し、全体が1,2-ジクロロベンゼンに溶解された組成物と、4回連続で接触させた後の、最初は180g/Lであった塩水中の5種のイオン、Na、K、Mg2+、Ca2+、及びClの濃度(mMOl/L単位)の進展を示すグラフである。例2において説明されるように、次のステップを実行する前に、ステップ毎に抽出平衡を達成することが期待されている。
図2】例3において説明されるように、カチオンのイオン半径に従って表されている、本発明による、0.1Mol/LのCEM2及び3.5Mol/LのASM2を含有し、全体がジクロロメタンに溶解された組成物を使用することによって初期濃度が0.1Mol/Lであった塩水から個別に抽出される7種の塩、LiCl、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、SrCl、及びBaClの室温での抽出率(モル%単位)を示すグラフである。
図3】例4において説明されるように、本発明による、0.1Mol/LのCEM2及び1Mol/LのASM9を含有し、全体が1,2-ジクロロベンゼンに溶解された組成物の、室温及び80℃でのCaClの吸収等温線を示すグラフである。
図4】例5において説明されるように、蒸留水による数回の連続した逆抽出フェーズを開始する前に、最大で80mMol/LのCaClが充填された、0.1Mol/LのCEM2及び1Mol/LのASM9を含有し、全体が1,2-ジクロロベンゼンに溶解された組成物の、20℃及び80℃での2つの再生フェーズの比較を示すグラフである。
図5】例1及び3において部分的に説明されるように、カチオンのイオン半径に従って表されている、本発明による、0.1Mol/LのCEM1からCEM8と、CEM1及びCEM2の場合には3.5Mol/LのASM2、又はCEM3からCEM8の場合には1Mol/LのASM9とを含有し、全体が、CEM1及びCEM2の場合にはジクロロメタンに、又はCEM3からCEM8の場合には1,2-ジクロロベンゼンに溶解された組成物を使用することによって、初期濃度が0.1Mol/Lであった塩水から個別に抽出される7種の塩、LiCl、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、SrCl、及びBaClの室温での抽出率(モル%単位)を示す表である。
図6】化合物ASM11のNMRスペクトルを示す図である。
【実施例
【0159】
本発明の実行において使用されるCEMについての説明
本発明による、異なるイオン抽出組成物を例証する。これらの組成物において使用される12種のCEMは、以下の通りである。
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0160】
これらのCEMはすべて固体であり、水に対して完全に不溶性である。
【0161】
例証される実施形態の一般的説明
抽出組成物
抽出組成物は、CEM及びASMを最小で3ミリリットルの流動化剤中に可溶化した後に、追求される最終濃度を得るために、ある量のCEM及びASMを、選択された流動化剤、ジクロロメタンCHCl、ジクロロベンゼン若しくはジクロロトルエン、又はCEM/ASM混合物を良好に可溶化することができる、任意の他の流動化剤中に可溶化することによって得られる。選択された流動化剤もASM化合物である場合、選択されたASMの体積は少なくとも3ミリリットルである。ASM2及びASM9の与えられる濃度は、添加される流動化剤の体積に関するものであり、CEMの濃度は、添加される流動化剤+ASMの体積に関するものである。次いで、有機化合物の可溶化を促進するように、ヒートガン(およそ50から60℃の温度)を用いて、数秒間(10から30秒間)、透明な溶液が得られるまで有機抽出組成物をわずかに加熱する。こうして、得られた配合物が安定であることを確かめるために、組成物を室温で24時間放置する。
【0162】
次いで、配合物全体の水飽和、並びに入口及び出口におけるpH制御(7に近いpH、又は少なくとも飽和水との接触後に維持する)を可能にするように、等体積の2回蒸留した水を添加した後、これらの密封された配合物を500回転/分で2時間軌道撹拌する。
【0163】
こうして、抽出組成物を、デカンテーションのために放置する。すべての組成物が安定であり、2つの別個の相へと迅速に(最長で数分間)デカントされる。
【0164】
塩水 - 特に抽出されるべき塩を含有するブライン
1種又は複数の考慮される塩化物塩(NaCl又は他のもの)の水溶液を、2回蒸留した水から調製する。使用される塩化物塩は以下の通りである:LiCl、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、SrCl、及びBaCl
【0165】
抽出/逆抽出
次いで、3mLの調製した有機抽出組成物を、デカントした二相混合物の下相から採取し、1種又は複数の考慮される塩化物塩(NaCl又は他のもの)を含有する3mLの水が入ったバイアルに移した後、このバイアルを密封し、室温(RT)、すなわち20から25℃で2時間、(500回転/分で)軌道撹拌する。
【0166】
より高い温度、特に60℃又は80℃での抽出アッセイ又は逆抽出アッセイに関しては、磁気撹拌(500回転/分で)を2時間、ホットプレート上の金型においてサーモスタット制御で間接的に加熱しながら実行する。
【0167】
考慮される塩化物塩(NaCl又は他のもの)の分布における平衡が撹拌の最後に両方の液相間で達成されていることを確実にするために、これらの撹拌中に1~2mmの範囲の液滴が実際に存在したことを確かめるように確認を行う。有機相及び水相の性状は、透明且つ無色、又はわずかに濁っている。
【0168】
2時間の撹拌を実行したら撹拌を停止し、デカンテーションのために、約10分間、少なくとも両方の相が完全に分離されるまでアッセイの温度において全体を放置する。次いで、上部の水性相を採取した後、イオンクロマトグラフィー(探索されるイオン及び塩の濃度にとって好適なカチオン分析カラム及びアニオン分析カラムを含む、Metrohm(商標)デバイス)によってその塩度を分析するために、撹拌及び希釈する。同様に、抽出前の水溶液のカチオン及び塩化物の相対モル濃度を決定するために、塩化物塩(NaCl又は他のもの)の最初の水溶液も、このイオンクロマトグラフィーによって分析する。すべての抽出及び分析を二重に行った。
【0169】
(例1)
単塩の生理食塩水の、室温でのCEM1による抽出。
【0170】
この実施例において使用されるCEMは、4-tert-ブチル-カリックス[4]アレーンテトラキス(N,N-ジエチルアセトアミド)(CAS番号:114155-16-7のCEM1)である。
【0171】
これは、出版物≪カリックスアレーンアミドによる選択的なアルカリ及びアルカリ土類カチオンの複合体化(Selective alkali and alkaline earth cation complexation by calixarene amides)、New J.Chem、1991年、15巻、33~37頁≫に記載されている合成手順に従って、TCI Chemicalsで購入した、分子式がC4456であり、CAS番号が60705-62-6である4-tert-ブチルカリックス[4]アレーンから合成した。
【化33】
【0172】
使用されるASMは、いくつかの販売業者から購入可能である、CAS番号32707-89-4、CO、MW=244.13g/mol、白色固体であるASM2である。その特性評価は、以下の通りである。
【化34】

【表7】
【0173】
考慮される抽出組成物は、ジクロロメタンCHCl中の0.1mol/LのCEM1及び3.52mol/LのASM2を含み、これは、上に記載したように得られた。水中での考慮される塩の初期濃度は、それがLiCl、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、SrCl、又はBaClであるかにかかわらず、0.1mol/Lである。
【0174】
これらの7種の塩の特定の抽出(二重)を実行した後、室温での抽出前及び抽出後の、等体積の水/抽出配合物における抽出されたカチオンの量を、相対モル百分率で表Iに示す。
【表8】
【0175】
こうして、1種のアルカリ又はアルカリ土類塩化物のみからなるブラインからのカチオンの抽出は、カチオンに応じて、5.4%から85.8%で変動する。これらの単塩溶液においては、このCEM1の場合、塩抽出レベルはマグネシウムを除いて非常に良好である。マグネシウムは、そのイオン半径が76pmであることと、その親水性が高いことから、この16原子の大環状高分子の抽出エンベロープにフィットせず、なおも大き過ぎる。したがって、この配合物は、塩水、さらにはブライン(塩度が50g/リットルより高い水)の大規模な脱塩にとって良好に好適であるようである。
【0176】
(例2)
CEM1を使用することによるブラインからの塩の抽出。
抽出組成物は以下の通りである:0.4Mol/LのCEM1(例1を参照、CAS番号:114155-16-7のもの)を、1.2Mol/Lの、以下の式のASM9:
【化35】

(式中、Rはヘプチル基:n-C15である)
で完成させる。
【0177】
この化合物を、下の例9において説明される方法によって合成した。
【0178】
これら2つの化合物を可溶化するために使用される流動化剤は、TCI-Chemicalsで購入され、12ClPhのイニシャルで特定される、CAS番号95-50-1の1,2-ジクロロベンゼンである。
【0179】
ブラインは、180g/リットル(すなわち、5.6Mol/L)の高い塩度を有する水であり、下の表IIの割合のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び塩化物イオンで構成されている。処理されるべき塩水を、運転条件に近づけるために、3倍の相対体積のこの抽出組成物と接触させた。
【0180】
下の表IIでは、室温(RT)で実行された4回の抽出ステップのそれぞれの前後での、イオンのそれぞれの濃度(水1L当たりのmMol単位)が示されている。
【表9】
【0181】
このデータは、図1によって例証されている。抽出される第1の塩はNaClであり、その後3回目の抽出ステップから、塩化カルシウム及び塩化カリウムが抽出され始めるが、NaClはその水中での濃度における減少が続くことが明確に表されている。当然のことながら、マグネシウムは抽出されない。最終的に、液相間での4回の接触及び混合フェーズの後、水の総塩度は、180g/リットルから23.7g/リットルへと変遷した。5回目の抽出で、MgClを除けば、完全な脱塩を達成することができたであろう。
【0182】
(例3)
単塩の生理食塩水の、室温でのCEM2による抽出。
この例3は、CEM1をCEM2で置き換えたことを除けば、例1と同じ条件で実行される。
【0183】
使用されるCEMは、4-tert-ブチル-カリックス[6]アレーンヘキサキス(N,N-ジエチルアセトアミド)(CAS番号:111786-95-9のCEM2)である。
【0184】
これは、出版物≪カリックス[6]アレーンアミドによるグアニジウム塩の選択的複合体化及び膜輸送(Selective Complexation and Membrane Transport of Guanidinium Salts by Calix[6]arene Amides)、Israel J.Chem、1992年、32巻、79~87頁≫に記載されている合成手順に従って、TCI Chemicalsで購入した、分子式がC6684であり、CAS番号が78092-53-2である4-tert-ブチルカリックス[6]アレーンから社内で合成した。
【化36】
【0185】
使用されるASMは、いくつかの販売業者から購入可能である、CAS番号32707-89-4、CO、MW=244.13g/mol、白色固体であるASM2である。
【化37】
【0186】
7種の塩の特定の抽出(二重)を実行した後、室温での抽出前及び抽出後の、等体積の水/抽出配合物における抽出されたカチオンの量を、相対モル百分率で表IIIに示す。
【表10】
【0187】
こうして、1種のアルカリ又はアルカリ土類塩化物のみで構成されるブラインからのカチオンの抽出は、カチオンに応じて、13.5%から63.8%で変動する。これらの単塩溶液においては、二価カチオンは、Mg2+マグネシウムイオンを除けば、一価カチオンの量の2倍から3倍の多さの量で抽出される。マグネシウムイオンは、はるかにより親水性であり且つより小さく、図2に示されるように抽出には困難が伴う。
【0188】
こうして、本発明による組成物は、多くの工業用途にとって特に興味深い、この配合物の特異性を実証しており、ここでは、カルシウムが、ナトリウムよりも親水性であり(ΔG°hyd=-1515kJ/mol対-406kJ/mol)、それらのイオン半径は互いに対して非常に近い(102及び100pm)にもかかわらず、それらのそれぞれの塩化物形態において、2.54倍多く水から抽出される。
【0189】
(例4)
CaClを抽出するための、CEM2を含む抽出組成物の特性評価
この一連の実施例は、1Mol/LのASM9と組み合わされた0.1Mol/LのCEM2を含み、全体が1,2-ジクロロベンゼンに溶解された抽出組成物に関する、20℃及び80℃におけるCaClの2本の抽出等温線を確立することを目的とする。
【0190】
7種の塩の特定の抽出(二重)を実行した後、室温での抽出前及び抽出後の、等体積の水/抽出配合物における抽出されたカチオンの量を、相対モル百分率で表IVに示す。
【表11】
【0191】
次いで、同じ一連の抽出を80℃で実行して、以下の通りである表Vが与えられた。
【表12】
【0192】
抽出温度は、抽出性能に対して大きな影響を有する。これらの研究及び収集されたデータから、これらの吸収等温線を、図3において、Mol/リットル単位の濃度の関数としてプロットすることが可能となった。横座標の軸は、吸収平衡における、水中でのNaClの濃度を示しており、縦座標の軸は、有機相中でのNaClの濃度を示している。
【0193】
本発明による塩の液液抽出方法は、吸収に関しては発熱性であり、再生に関しては吸熱性であり、これによって、有機抽出組成物の高温水による熱再生が可能となる。
【0194】
(例5)
CEM2を含む抽出組成物の熱再生を含む抽出方法及び関連するCaClの脱離に対する影響
20℃での最大含有量のCaClを有する、例4の抽出組成物の2つのサンプルを、1Mol/LのCaClの塩水と室温で接触させて、溶解したCEM2カチオン抽出分子の塩充填レベルを上昇させ、したがってそれらの塩飽和レベル(0.1Mol/L)に近づけた。次いで、これらの2つのサンプルを、20℃の等体積の蒸留水と接触させ、撹拌した。次いで、2つの二相サンプルのうちの1つを80℃まで加熱し、撹拌しながら保持した。最初の塩充填レベルは80mMol/Lと評価されるが、後者では、80℃での最初の再生ステップから15.27mMol/Lに低下する一方で、20℃での再生中は、塩の残留濃度は29.3mMol/Lであると表されている。図4は、塩が充填された疎水性液体有機相を等体積の蒸留水と接触させる、連続的な数回のステップを通じて得られた結果を例証している。抽出組成物の熱再生は、同じCaClの総合逆抽出率を達成するのに必要な再生ステップの数が2倍に低減されるため、はるかにより有効である。使用においては、この利点は、CEM含有量が多く、したがって塩含有量が多い樹脂が導入される場合に、さらにより有意なものとなるであろう。
【0195】
再生温度を上昇させることによって、同体積の蒸留水と接触させるための連続的なステップの数を低減することが可能になり、同時に、毎回の塩の逆抽出をより大規模にすることができる。また、使用する再生水の体積がより小さいことから、より高い濃度の逆抽出された塩を有する再生水にアクセスすることも可能となる。
【0196】
(例6)
比較例:塩の二成分混合物NaCl/CaClからの、室温でのカチオンの選択的抽出
上に記載したように作製された、塩の等モル混合物、それぞれ0.05mol/LのNaCl及びCaClを含有するブラインを、2つの抽出組成物と接触させた。これらのうちの一方は本発明によるものであった。
【化38】

これらの組成物は、使用されるCEM化合物でしか互いとは異ならない。このCEM化合物は、二置換の第一級アミドファミリーに由来するものであるが、その大環状高分子のサイズが変更されており、それによって、それぞれサイズが16個の炭素原子(CEM1)及び24個の炭素原子(CEM2)となっている。これらの組成物は、上に記載したような方法に従って得られる。
【0197】
それぞれの抽出組成物は、0.1mol/LのCEM
【化39】

及び2.4mol/LのASM9を、1,2-ジクロロベンゼン中に含む。
【0198】
99%より高い純度を有する1,2-ジクロロベンゼン(CAS番号:95-50-1)は、TCI Chemicals製である。
【0199】
混合物から抽出されたカチオンの量を、モル百分率で、表VIに示す。
【表13】
【0200】
塩の混合物においては、選択されたCEMに応じて、これらのカチオンの抽出は、純粋な物質として最も抽出されるカチオンが、塩の混合物としても主に抽出されるという、増加した選択性を経る。ここでは、共吸収が、元来最良であった抽出にとって好ましい。特に、炭素環が24単位を有するCEM2を含む配合物は、等濃度のカチオンを有する混合物において、これらの塩のうちの1つしか含有しない溶液の場合の比率2.54と比較して14倍高いカルシウム対ナトリウム抽出率を有する(例1及び3を参照)。このような抽出能力は、水のスケール除去において多くの工業用途を有する。
【0201】
(例7)
区別された初期濃度の塩の二成分混合物NaCl及びCaClからの、室温でのカチオンの選択的抽出
NaCl及びCaClの混合物を含有するブラインを、上に記載したように作製して、混合物中において以下の初期塩濃度:0.2Mol/LのNaCl及び0.03Mol/LのCaClを得る。抽出樹脂は、0.1Mol/LのCEM2、3.52Mol/LのASM2、及び補足物の液体ASM1(流動化剤としても使用される)で構成される。
【0202】
混合物から抽出されたカチオンの量を、モル百分率で、表VIIに示す。
【表14】
【0203】
ここでは、Ca/Naの抽出率の比が17.6であると表されており、これは、共通のアニオンの存在下で複数の塩を抽出している間に差異が改善されるため、本発明の目的のうちの1つが認定される。
【0204】
(例8)
4種の塩NaCl、CaCl、SrCl、及びBaClの混合物からの、室温でのカチオンの選択的抽出
NaCl、CaCl、SrCl、及びBaClの混合物を含有するブラインを、上に記載したように作製する。溶解した塩の濃度を、mMol/L単位で表VIIIに示す。抽出は、2回目には、二価の塩の濃度を変更して実行した。溶解した塩の濃度を、mMol/L単位で表IXに示す。
【0205】
抽出組成物は、0.1Mol/LのCEM2及び2種のASMの混合物からなる。この混合物は、最大で60体積%の、CAS番号:32707-89-4の、[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール](35TFMBnOH)と通常呼ばれるASM2と、最大で40体積%の、分子式がCOであり、MW=176.14g/Molであり、CAS番号:349-75-7である、[3-(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール](3TFMBnOH)と呼ばれるASM1とで構成され、これらは両方とも、流動化剤として、且つその液体形態を与えられたASMとして働く。
【0206】
抽出は、例1に記載したように、室温で実行する。
【0207】
抽出されたカチオンの量を、モル百分率で、表VIII及び表IXに示し、初期イオン濃度及び最終イオン濃度は、それぞれmMol/L単位で表す。
【表15】

【表16】
【0208】
ここでは、これらのスケール生成性の二価カチオンに対してナトリウムの相対濃度が高いため、100%の抽出選択性を達成できることが表されている。
【0209】
二価カチオンの選択的抽出は、本発明によるこれらの組成物の、カルシウムCa++、ストロンチウム、及びバリウムの選択的抽出によって、スケール堆積に対して効率的に抗う能力及び水を精製する能力を実証している。
【0210】
(例9)
ASM9、ASM10、ASMC11、及びASM12化合物の合成
合成図
【化40】

R=n-C15(ASM9)、n-C19(ASM10)、n-C1123(ASM11)、n-C1327(ASM12)である。
【0211】
プロトコル
3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリン(8.79mL、56.29mmol、1.0当量)、ジクロロメタン(40mL)、及びトリエチルアミン(8.63mL、61.92mmol、1.1当量)の溶液に、撹拌しながら、酸塩化物(56.29mmol、1.0当量)を滴下添加する。温度は、添加中に制御され、38℃(ジクロロメタンの沸点)を上回るべきではない。反応混合物を、室温で5時間撹拌する。1MのHClの溶液(50mL)を添加し、次いで、有機相を洗浄する。連続的な洗浄を、1MのHCl溶液(50mL)及び飽和NaCl溶液(50mL)を用いて実行する。有機相を、NaSOで乾燥させ、ろ過し、次いで溶媒を、減圧下で蒸発させる。次いで、固体残渣を、石油エーテル(低温又は室温で)に溶解し、洗浄し、ろ過し、次いで真空下で乾燥させて、所望されるアミドを得る。使用される石油エーテルは、n-ペンタンで主に構成される炭化水素、VWR製のCAS番号64742-49-0の2-メチルペンタンの混合物であり、これは、Petroleum Ether 40-60℃ GPR RECTAPURの名称で販売されている。得られた化合物の特性評価を、表Xに示す。
【表17】
【0212】
化合物ASM9、ASM10、ASMC11、及びASMC12は、それぞれのIUPAC名:N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]オクタンアミド、N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]デカンアミド、N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ドデカンアミド、N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]テトラデカンアミドを有し、さらにNMR分光法によって同定した。図6は、ASM11化合物のNMRスペクトル(CDCl、300MHz)を示しており、そのピークは以下の通りである:1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ (ppm)=0.87 (t, 3J=7.0 Hz, 3H), 1.20-1.35 (m, 20H), 1.73 (五重線, 3J=7.0 Hz, 2H), 2.40 (t, 3J=7.0 Hz, 2H), 7.58 (s, 1H), 7.77 (bs, 1H), 8.04 (s, 2H).
【0213】
(例10)
単塩の生理食塩水の、室温でのCEM10による抽出。
この例10は、問題のCEMがCEM10であることを除けば、例1及び例3と同じ条件で実行される。
【0214】
使用されるCEMは、4-tert-ブチル-カリックス[4]アレーン酸テトラエチルエステル(CAS番号:97600-39-0のCEM10)である。
【化41】
【0215】
これは、体積比5/1の混合物THF/DMF中における、アルコールに対する従来の添加手順を実行するために、分子式がC4456であり、CAS番号が60705-62-6である4-tert-ブチルカリックス[4]アレーン、及びCAS番号105-36-2のブロモ酢酸エチルから社内で合成され、これらの製品は、Sigma-Aldrichで購入した。
【0216】
使用されるASMは、いくつかの販売業者から入手可能である、CAS番号32707-89-4、CO、MW=244.13g/mol、白色固体であるASM2である。
【化42】
【0217】
7種の塩の特定の抽出(二重)を実行した後、室温での抽出前及び抽出後の、等体積の水/抽出配合物における抽出されたカチオンの量を、相対モル百分率で表XIに示す。
【表18】
【0218】
こうして、1種のアルカリ又はアルカリ土類塩化物のみで構成されるブラインからのカチオンの抽出は、カチオンに応じて、3.7%から66.2%で変動する。これらの単塩溶液においては、CEM10は、アルカリカチオンの中でも塩化ナトリウムに対して選択的であること、及び二価カチオンの抽出は不良であり、Na/Caの選択性は14であることが表されている。
【0219】
こうして、本発明による組成物は、塩素化学に関連する工業用途にとって特に興味深い、この配合物の特異性を実証しており、ここでは、NaOH、HCl、又はさらにはClを生成するための電解槽を供給するために、海水又はブラインから選択的な方法でNaClを抽出することができる。
【0220】
(例11)
単塩の生理食塩水の、室温でのCEM12による抽出。
この例11は、問題のCEMがCEM12であることを除けば、例1、例3、及び例10と同じ条件で実行される。使用されるCEMは、4-tert-ブチル-カリックス[6]アレーン酸ヘキサエチルエステル(CAS番号:92003-62-8のCEM12)である。
【化43】

【0221】
これは、体積比5/1の混合物THF/DMF中における、アルコールに対する従来の添加手順を実行するために、分子式がC6684であり、CAS番号が78092-53-2である4-tert-ブチルカリックス[6]アレーン、及びCAS番号105-36-2のブロモ酢酸エチルから社内で合成され、これらの製品は、Sigma-Aldrichで購入した。
【0222】
使用されるASMは、いくつかの販売業者から入手可能である、CAS番号32707-89-4、CO、MW=244.13g/mol、白色固体であるASM2である。
【化44】
【0223】
7種の塩の特定の抽出(二重)を実行した後、室温での抽出前及び抽出後の、等体積の水/抽出配合物における抽出されたカチオンの量を、相対モル百分率で表XIIに示す。
【表19】
【0224】
こうして、1種のアルカリ又はアルカリ土類塩化物のみで構成されるブラインからのカチオンの抽出は、カチオンに応じて、4.6%から55.7%で変動する。これらの単塩溶液においては、CEM12は、より大きい直径を有するアルカリ塩化物塩に対して選択的であること、及び二価カチオンの抽出は不良であり、K/Caの選択性は10.2であることが表されており、このCEM12は良好なセシウムイオノフォアであることが公知であるため、選択性はRb+及びCs+に対してきっとより良好である。本発明は、提示される実施形態に限定されるものではなく、当業者には、他の実施形態も明らかとなるであろう。特に、それぞれのCEMの特定の性能を提携させて、最適な総合性能を得るために、抽出配合物内でいくつかのCEMを組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6