(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】薬物コーティングされたバルーン
(51)【国際特許分類】
A61L 29/04 20060101AFI20240314BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240314BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20240314BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240314BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61L29/04 100
A61M25/10 550
A61M25/10
A61L29/08
A61L29/16
A61L29/12
(21)【出願番号】P 2022527135
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020059965
(87)【国際公開番号】W WO2021096925
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エム.アルストン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】テレサ エー.ホランド
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディー.トレイラー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-532192(JP,A)
【文献】特表2019-522540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0261723(US,A1)
【文献】特表2018-528053(JP,A)
【文献】特表2016-513543(JP,A)
【文献】特表2015-509439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A61M
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーン、及び、
前記バルーンの外面上の薬物コーティング層であって、少なくとも1つの治療剤を含み、実質的に賦形剤を含まない薬物コーティング層、
を含み、
前記薬物コーティング層は、前記バルーンの外面への配置においてランダムで実質的に均一性がない、ヘイスタック配向の微結晶を含む、薬物コーティングされたバルーン。
【請求項2】
前記バルーンは、延伸ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンの複合材を含む、請求項1記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項3】
前記少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含む、請求項1及び2のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項4】
前記バルーンは、パクリタキセルを組織にデリバリーして、再狭窄に関連する細胞増殖応答を低減するように構成されている、請求項3記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項5】
前記薬物コーティング層は、ドセタキセル、プロタキセル、三酸化ヒ素、サリドマイド、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン21-パルミテート、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムス又はテムシロリムスから選ばれる治療剤をさらに含む、請求項3及び4のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項6】
前記薬物コーティング層は0質量%~4.75質量%の賦形剤を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項7】
前記薬物コーティング層は0質量%~4.75質量%の賦形剤を含み、前記賦形剤は脂肪酸及びそれらの誘導体及び尿素から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項8】
前記薬物コーティング層は2μm~10μmの平均侵入深さだけ前記バルーンの外面を侵入する、請求項1~7のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項9】
前記薬物コーティング層の約80%は、インプラント処置後の約100分で前記バルーンから放出される、請求項1~8のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項10】
前記外面はナイロンをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項11】
前記微結晶の主要部分はそれぞれ、主寸法幅より少なくとも10倍大きい主寸法長さを有する、請求項1~10のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項12】
前記微結晶の主要部分の主寸法長さは、主寸法長より少なくとも13倍又は少なくとも15倍大きい、請求項11記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項13】
前記微結晶の主要部分の主寸法幅は0.5μm~2μmである、請求項1~12のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項14】
前記微結晶は、前記外面からの角度の均一性がランダムかつ実質的に欠如しており、前記微結晶の主要部分は前記外面から50°~15°の角度で突出している、請求項1~13のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
【請求項15】
薬物適用のための容器を調製するための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの治療剤を溶媒中に可溶化して溶液を生成すること、
メディカルバルーンの外面を前記溶液でコーティングすること、及び、
前記溶媒を蒸発させ、薬物コーティング層が前記バルーンの外面上への配置においてランダムかつ実質的な均一性の欠如を有するヘイスタック配向の微結晶を含むように、前記バルーンの外面上に前記少なくとも1つの治療剤を含む薬物コーティング層を残すこと、
を含み、前記溶液は実質的に賦形剤を含まない、方法。
【請求項16】
前記溶媒はアセトンを含む、請求項
15記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒は水をさらに含む、請求項
16記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒は約75%のアセトン及び約25%の水を含む、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒はジオキサンをさらに含む、請求項
17記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒は約58%のアセトン、14%のジオキサン及び28%の水を含む、請求項
19記載の方法。
【請求項21】
前記バルーンは、フルオロポリマー及びナイロンを含む複合材料を含む、請求項
15~
20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含む、請求項
15~
21のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年5月22日に出願された仮出願PCT/US2020/034279号の利益を主張し、あらゆる目的のためにその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
分野
本開示は、一般に、薬物コーティングされたバルーン、より具体的には、薬物コーティングが賦形剤を含まない薬物コーティングされたバルーンシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アテローム性動脈硬化症、動脈閉塞及び再狭窄などの血管疾患は、ヒトの死亡及び罹患の主な原因である。血管疾患は様々な原因から発生し、幾つかの例において、外科的又は血管内介入が必要になる。血管系への外傷はまた、外傷を受けた解剖学的構造を治療するために外科的介入を必要とすることもある。全身レベルではなく局所レベルでの血管疾患の治療はしばしば好ましい。薬物の全身投与は、血管疾患を治療するための標的組織への薬物の局所投与と比較したときに、望ましくない副作用を引き起こすことがある。薬物コーティングされた血管内メディカルデバイスの利用は、血管疾患の治療における標準的な技術になっている。特に、血管疾患のための一般的な治療法は、接触部位で血管疾患を予防又は軽減する薬剤でコーティングされた、それぞれバルーン又はステントなどの血管内メディカルデバイスとの組織の短期又は長期の接触である。カテーテルベースのバルーンを含む血管メディカルデバイスの短期間の接触は、血管疾患及び血管外傷を治療するためにしばしば行われ、長期間の接触は、例えば、血管グラフト、ステントグラフト及びステントを含む、血管内メディカルデバイスのインプラント処置がしばしば行われる。血管内メディカルデバイスが罹患した血管組織と接触すると、薬物は血管内メディカルデバイスから接触部位での周囲組織に溶出し、それにより、全身レベルではなく局所レベルで血管疾患を治療する。
【0004】
薬物コーティングされたバルーン(DCB)は、薬物コーティングされた血管内メディカルデバイスの一例である。文献は、冠状動脈疾患及び末梢動脈疾患を含む血管疾患の治療のためのDCBの使用を開示している(例えば、Drorらの米国特許第5,102,402号明細書を参照されたい)。Drorらは、血管壁を治療するために血管管腔にDCBを配置し、バルーンを膨張させ、そしてバルーン表面を管腔血管壁と接触させて薬物を血管壁にデリバリーすることを開示している。DCBを使用した治療部位への薬物の用量は、インプラント処置又は展開の直後に非常に変動し、予測できない可能性があり、血管組織における局所的な薬物レベルは、長期間にわたって非常に変動し、予測できない可能性がある。したがって、薬物投与において信頼性があり再現性のある、血管疾患を治療するための改善されたDCB及び技術が存在することが望ましい。
【0005】
血管疾患を治療するための従来のDCB及び技術を改善するために、DCBは、用途に応じて、ある特定の方法でDCBの性能を最適化するための特定の特性を提供するように選択された材料の1つ以上の層から構築されうる。多層又は複合バルーンの場合において、複合材内の複数の層は、性能を最適化するための物理的特性及び/又は化学的特性のブレンドを得るために異なる材料であることができる。Cullyらの米国特許出願公開第2016/0106961号明細書は、複合材又は層状DCBを開示している。記載された複合材料は、ブロー成形可能なポリマーに接着された多孔質層、例えば、ストレッチブロー成形プロセスを通じてブロー成形可能なポリマーに接着された膨張(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)フルオロポリマー層を含む複合材料を含むことができる。さらに、Cleekらの米国特許出願公開第2014/0271775号明細書は、高アスペクト比の傾向のある配向した薬物結晶を有する基材を含む複合又は層状DCBを開示している。記載された複合材料は、多孔質微細構造を含む基材と、前記基材に関連した中空の晶癖を含むある量の結晶性パクリタキセル(PTX)とを含むことができる。
【0006】
Cullyら及びCleekらに記載されている多層又は複合バルーンは、薬物投与の信頼性及び再現性である程度の成功を収めているが、従来の多層又は複合バルーンの多くは、最適な薬物の適用性及び保持性よりも低いことを示す。この現象は、基材上の薬物の不均一なコーティング、DCBの展開中の薬物コーティングの粒子化又は損失、及び/又は血管管腔の表面への薬物コーティングの不均一又は不完全な移行を含む多くの要因によって発生する。これにより、最終的に、最適な薬物の適用性及び保持性よりも低くなる。したがって、薬物の適用性及び保持性のために、血管透過性を高めるための改善されたDCB及び技術の必要性が存在する。
【0007】
従来のDCBの薬物コーティングは、使用前のバルーン表面上での薬物保持、使用中のバルーン表面からの薬物放出、及び組織への薬物輸送を促進するための賦形剤又は他の添加剤を含む。
【発明の概要】
【0008】
要旨
使用前にバルーン表面上に薬物を保持するために、使用中にバルーンから治療されている組織への薬物製剤の放出を促進するために、そして治療された組織における薬物の保持のために、薬物コーティングされたバルーン上の薬物製剤に賦形剤が必要であると考えられてきた。薬物コーティングされたバルーンからのパクリタキセル放出、組織保持、処置中の薬物コーティングの損失及び遅発性内腔喪失に対する賦形剤の効果を、本明細書でさらに詳述される様々な方法を使用して調査した。試験には、ePTFEを含む複合バルーンと市販のバルーンの比較が含まれた。異なる量の賦形剤を利用する異なる薬物製剤も比較した。試験は、賦形剤の存在が、試験したパラメータのいずれにも有意な影響を及ぼさなかったことを明らかにした。
【0009】
本開示の例(「例1」)によれば、薬物コーティングされたバルーンが開示される。薬物コーティングされたバルーンは、外面を有するバルーンであって、前記バルーンの外面上に延伸ポリテトラフルオロエチレン及び薬物コーティング層を含む、バルーンを含む。薬物コーティング層は、少なくとも1つの治療剤を含み、実質的に賦形剤を含まない。
【0010】
例1の薬物コーティングされたバルーンのバルーンは、延伸ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンの複合材を含むことができる。少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含むことができる。少なくとも1つの治療剤がパクリタキセルを含む場合に、バルーンは、パクリタキセルを組織にデリバリーして、再狭窄に関連する細胞増殖応答を低減するように構成されうる。少なくとも1つの治療剤がパクリタキセルを含む場合に、薬物コーティング層は、ドセタキセル、プロテキセル、三酸化ヒ素、サリドマイド、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン21-パルミテート、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムス又はテミシロリムスから選ばれる治療剤をさらに含むことができる。
【0011】
例1の薬物コーティングされたバルーンの薬物コーティング層は、0質量%~4.75質量%の賦形剤を含むことができる。例1の薬物コーティングされたバルーンの薬物コーティング層は、0質量%~4.75質量%の賦形剤を含むことができ、ここで、賦形剤は、脂肪酸及びそれらの誘導体ならびに尿素から選ばれる。例1の薬物コーティングされたバルーンのバルーン外面は、ナイロンをさらに含むことができる。薬物コーティングされたバルーンのバルーン外面は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。薬物コーティング層は、2μm~10μmの平均侵入深さだけバルーンの外面を侵入することができる。薬物コーティング層の約80%は、インプラント処置後約100分でバルーンから放出されうる。
【0012】
薬物コーティング層は、バルーンの外面への配置においてランダムで実質的に均一性がない、ヘイスタック配向の微結晶を含むことができる。薬物コーティング層が微結晶を含む場合に、微結晶の主要部分はそれぞれ、主寸法幅よりも少なくとも10倍大きい主寸法長さを有することができる。微結晶の主要部分の主寸法長さは、主寸法長さの少なくとも13倍又は少なくとも15倍大きいことができる。微結晶の主要部分の主寸法幅は、0.5μm~2μmであることができる。微結晶は、外面からの角度の均一性がランダムかつ実質的に欠如している可能性があり、微結晶の主要部分は、50度~15度の角度で外面から突出していることができる。
【0013】
本開示の別の例(「例2」)において、薬物コーティングバルーンが開示されている。薬物コーティングされたバルーンは、外面を有するバルーンと、前記バルーンの外面上の薬物コーティング層とを有する。薬物コーティング層は、少なくとも1つの治療剤を含み、実質的に賦形剤を含まない。薬物コーティング層は、バルーンの外面上の配置において均一性がランダムかつ実質的に欠如している、ヘイスタック配向の微結晶をさらに含む。
【0014】
例2の薬物コーティングバルーンのバルーン外面は、ナイロンを含むことができる。バルーン外面は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。例2の薬物コーティングされたバルーンの薬物コーティング層の微結晶の主要部分は、それぞれ、主寸法幅より少なくとも10倍大きい主寸法長さを有することができる。微結晶の主要部分の主寸法長さは、主寸法長さの少なくとも13倍又は少なくとも15倍大きいことができる。微結晶の主要部分の主寸法幅は、0.5μm~2μmであることができる。微結晶は、外面からの角度の均一性がランダムかつ実質的に欠如している可能性があり、微結晶の主要部分は、50度~15度の角度で外面から突出している。
【0015】
本開示のさらに別の例(「例3」)において、薬物適用のための容器を調製するための方法が開示される。この方法は、少なくとも1つの治療剤を溶媒に可溶化して溶液を生成すること、メディカルバルーンの外面を前記溶液でコーティングすること、及び、前記溶媒を蒸発させて、薬物コーティング層が、前記バルーンの外面上の配置において均一性がランダムかつ実質的に欠如しているヘイスタック配向の微結晶を含むように、前記バルーンの外面上に前記少なくとも1つの治療剤を含む薬物コーティング層を残すことを含む。この溶液は実質的に賦形剤を含まない。
【0016】
例3の方法の前記溶媒は、アセトンを含むことができる。前記溶媒がアセトンを含む場合に、前記溶媒はさらに水を含むことができる。前記溶媒がアセトン及び水の両方を含む場合に、前記溶媒は、約75%のアセトンと約25%の水を含むことができる。前記溶媒がアセトン及び水の両方を含む場合に、前記溶媒はジオキサンをさらに含むことができる。前記溶媒がアセトン、ジオキサン及び水を含む場合に、前記溶媒は、約58%のアセトン、14%のジオキサン及び28%の水を含むことができる。例3のバルーンは、フルオロポリマー及びナイロンを含む複合材料を含むことができる。例3の少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含むことができる。
【0017】
本開示の別の例(「例4」)において、薬物コーティングされたバルーンが開示されている。薬物コーティングされたバルーンは、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーンと、前記バルーンの外面上の薬物コーティング層とを含む。薬物コーティング層は、少なくとも1つの治療剤と、0質量%~4.75質量%の脂肪酸及びそれらの誘導体を含む。例4の脂肪酸及びそれらの誘導体は、モノカルボン酸、ポリソルベート及びシェラックから選ばれることができる。
【0018】
本開示のさらに別の例(「例5」)において、薬物コーティングされたバルーンが開示されている。薬物コーティングされたバルーンは、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーンと、前記バルーンの外面上の薬物コーティング層とを含む。薬物コーティング層は、少なくとも1つの治療剤と、0質量%~4.75質量%の尿素とを含む。
【0019】
上述の例はまさに実施例であり、本開示において他の方法で提供される本発明の概念のいずれかの範囲を制限又は他の方法で狭めるように読まれるべきではない。複数の例が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な例を示して記載する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に限定的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の幾つかの態様による、重合による微小管のアセンブリを示す。
【0022】
【
図2A】
図2Aは、本開示の幾つかの態様によるDCBを示す。
【0023】
【0024】
【0025】
【
図2D】
図2Dは、本開示の幾つかの態様による、DCBを形成する複合材料の厚さ特性を示す。
【0026】
【
図3】
図3A及び3Bは、本開示の幾つかの態様による、非多孔質及び多孔質バルーン基材上の微結晶形態を示す。
【0027】
【
図4】
図4は、本開示の幾つかの態様によるバルーンカテーテルアセンブリを示す。
【0028】
【
図5A】
図5Aは、本開示の幾つかの態様による、比較例Aで試験された異なるDCBによってデリバリーされた薬物の組織保持を比較するグラフである。
【0029】
【
図5B】
図5Bは、本開示の幾つかの態様による、比較例Aで試験された異なるDCBによってデリバリーされた薬物の組織保持を比較する表である。
【0030】
【
図5C】
図5Cは、本開示の幾つかの態様による、比較例Aで試験された異なるDCBによってデリバリーされた薬物の組織保持を比較するグラフである。
【0031】
【
図6】
図6は、本開示の幾つかの態様による、比較例Aで試験された異なるDCBの薬物放出を比較する表である。
【0032】
【
図7】
図7は、本開示の幾つかの態様による、比較例Aで試験された異なるDCBを比較するグラフである。
【0033】
【
図8】
図8は、本開示の幾つかの態様による、例Bで試験された異なるDCBの目標装填率の表である。
【0034】
【
図9】
図9は、本開示の幾つかの態様による、例Bで試験された異なるDCBからの累積的なインビトロPTX放出のグラフである。
【0035】
【
図10】
図10は、本開示の幾つかの態様による、前記DCBがインビボで膨張された後の例Bで試験された異なるDCB上に残っているPTXのグラフである。
【0036】
【
図11】
図11は、本開示の幾つかの態様による、例Bで試験された異なるDCBによる組織の治療の1日後に治療された組織に残っているPTXのグラフである。
【0037】
【
図12A】
図12Aは、本開示の幾つかの態様による、例Cで試験された異なるDCBによる組織の治療後の様々な期間にわたる治療された組織中のPTX濃度のグラフである。
【0038】
【
図12B】
図12Bは、本開示の幾つかの態様による、例Cで試験された異なるDCBによる動脈内の組織の治療後の様々な期間にわたる動脈に残っているPTXの総量のグラフである。
【0039】
【
図13】
図13は、本開示の幾つかの態様による、例Dで試験された異なるDCBの累積的なインビトロPTX放出のグラフである。
【0040】
【
図14A】
図14Aは、イントロデューサバルブを通過した後の、本開示の幾つかの態様による例Dで試験された異なるDCB上に残っているPTXのグラフである。
【0041】
【
図14B】
図14Bは、DCBがイントロデューサバルブを通過した後の、本開示の幾つかの態様による例Dで試験された対応する異なるDCBの異なるパッケージングシース上に残っているPTXのグラフである。
【0042】
【
図14C】
図14Cは、DCBがそれぞれイントロデューサバルブを通過した後の、本開示の幾つかの態様による例Dで試験された対応する異なるDCBの異なるイントロデューサバルブ上に残っているPTXのグラフである。
【0043】
【
図15】
図15は、本開示の幾つかの態様による例Eで試験された異なるDCBによって治療された治療済み動脈の遅発性内腔喪失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
定義及び用語
不正確さの用語に関して、「約」及び「ほぼ」という用語は、交換可能に使用され、記載された測定値を含み、また、記載された測定値に合理的に近い測定値を含む測定値を指すことができる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され、容易に確認されるように、合理的に少量だけ記載された測定値から逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的エラー、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調整及び/又は操作及び/又は同様のものに起因する可能性がある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合に、「約」及び「ほぼ」という用語は、記載された値の±10%を意味すると理解することができる。
【0045】
ここでは、単に便宜上、特定の用語を使用している。例えば、「上(top)」、「下(bottom)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、「上向き(upward)」、「下向き(downward)」などの単語は、単に図面中に示される構成を記載するだけであり、又は取り付け位置での部品の向きを記載する。実際、参照される構成要素は、任意の方向に配向させることができる。同様に、プロセス又は方法が示され又は記載される本開示全体を通して、方法が最初に実行される特定の動作に依存することが文脈から明らかでない限り、方法は任意の順序で又は同時に実行されうる。
【0046】
座標系は図に示され、記載で参照され、ここで、「Y」軸は垂直方向に対応し、「X」軸は水平又は横方向に対応し、「Z」軸は内部/外部方向に対応する。
【0047】
「主に」又は「主要部分」という用語は、少なくとも半分又は50%を示す。
【0048】
「含む(comprise)」(及び「含む(comprises)」や「含む(comprising)」などの含む(comprise)の任意の形態)、「有する(have)」(及び「有する(has)」や「有する(having)」などの有する(have)の任意の形態)、「含む(include)」(及び含む(includes)及び含む(including)などの含む(include)の任意の形態、含む(contain)(及び「含む(contains)」及び「含む(containing)」などの含む(contain)の任意の形態)は、制限のない連結動詞である。結果として、1つ以上の要素を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」又は「含む(contains)」本デバイス、システム及び方法のいずれも、それらの1つ以上の要素を有するが、それらの1つ以上の要素を有することのみに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」又は「含む(contains)」デバイス、システム又は方法の要素は、それらの1つ以上の要素を有するが、これらの1つ以上の要素のみを有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」又は「含む(contains)」デバイス、システム又は方法の要素は、それらの1つ以上の特徴を有するが、これらの1つ以上の特徴のみを有することに限定されない。
【0049】
本デバイス、システム及び方法のいずれも、記載された要素及び/又は特徴及び/又は工程のいずれかを含む(comprise)」/含む(include)」/含む(contain)/有する(have)よりも、むしろそれからなる又はから本質的になることができる。したがって、特許請求の範囲のいずれにおいても、所与の特許請求の範囲を他の場合とは異なるものから変更するために、「からなる」又は「から本質的になる」という用語を、上記の制限のない連結動詞のいずれかに置き換えることができ、それにより、制限のない連結動詞を使用しているものから所与の特許請求の範囲を変更することができる。
【0050】
さらに、機能を発揮することが可能である又は特定の様式で構成された構造は、少なくともその様式で可能又は構成されうるが、リストされていない様式で可能又は構成されうる。
【0051】
本明細書で使用されるときに、「公称直径」は、公称膨張圧力でのバルーンのおおよその直径を意味する。この状態を超えると、圧力の増加(例えば、定格破裂圧力まで)により、直径が20%未満、直径が15%未満又は直径が10%未満で増加する。典型的に、公称直径は、臨床医などのエンドユーザ向けの指示書に示されているとおりのラベル付き直径である。
【0052】
「微結晶ヘイスタック」又は「ヘイスタック配向の微結晶」という句は、複数の微結晶であって、それらの主要部分は、それらが配置される表面から20°未満の角度で配向されるものとして定義される。さらに、複数の微結晶の主要部分はそれぞれ、微結晶の主(全体)寸法幅よりも少なくとも5倍大きい主(全体)寸法長さを有する。
【0053】
「角度」、「投影角度」、「投影の角度」などの用語は、投影対象物が表面の最も外側の平面に対して有する幾何学的角度である。
【0054】
「配置」などは、表面の最も外側の平面の中央軸に対して対象物が有する回転又はオフセットを意味する。
【0055】
「均一な分布」、「均一に分布した」などは、基材の表面上の所与の体積内に存在する微結晶の体積パーセントが、特定のパーセンテージ内で表面全体に維持されることを意味し、ここで、特定のパーセンテージは、3、10及び/又は20パーセントを含む。1つの特定の例において、基材の表面上の所与の各体積が65体積%~68体積%の微結晶(すなわち、3%以内)、65体積%~75体積%の微結晶(すなわち、10%以内)及び/又は65体積%~85体積%の微結晶を(すなわち、20%以内)含むならば、微結晶は、基材全体に「均一に分布」しうる。
【0056】
「賦形剤」とは、薬物コーティング中の任意の不活性成分である。賦形剤は、薬物吸収の促進、粘度の低下又は溶解性の向上など、治療剤の安定化、バルクアップ又は治療増強を与えるために治療剤と一緒に製剤化される物質である。そのような賦形剤としては、飽和又は不飽和脂肪酸及びそれらの誘導体、例えば、モノカルボン酸(例えば、ステアリン酸)及び塩基(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(「トリス」)から誘導されるモノカルボン酸塩、ソルビトールと脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸)から誘導されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、及びシェラック(例えば、アルミニウム酸、ジャラリン酸及びシェロール酸)が挙げられる。別の賦形剤としては、例えば、尿素が挙げられる。
【0057】
以下の記載のセクション見出しは、限定的な意味で読むことを意図したものではなく、また、以下に示す集合的な開示を分離することを意図したものでもない。開示は全体として読まれるべきである。見出しは単にレビューを支援するために提供されており、特定の見出し以外の議論がその見出しに該当する開示の部分に適用できないことを意味するものではない。本開示は、限定的に読まれることを意図するものではない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の用語がそのような用語に帰する関係で広く読まれるべきである。
【0058】
様々な実施形態の説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0059】
I.はじめに
様々な実施形態において、バルーンの外面及び前記外面上の薬物コーティング層を含むバルーンは提供される。血管疾患の治療のための従来のアプローチとしては、薬物コーティングされたバルーン(DCB)の利用が挙げられる。しかしながら、従来のDCBに関連する問題は、特に、薬物が受容体と結合及び/又は受容体から解離する(すなわち、可逆的結合及び結合動態)薬物の速度を増加させる要因が存在するときに、治療位置へのDCB輸送中に、薬物の組織保持を維持し、生体液、例えば血液中の薬物損失を減らすことが難しいことである。例えば、組織内の受容体への薬物の可逆的結合は、用量及び滞留時間の関数である。
【0060】
図1は、微小管内の受容体部位へのタキサンなどの薬物の可逆的結合が組織保持にどのように影響するかを示している。αβチューブリンヘテロダイマー105の重合による微小管のアセンブリ100は、核形成110及び伸長115の2つの段階で起こる。短い重合核の形成は、チューブリンサブユニットの可逆的で非共有結合的な付加による各末端での伸長又はポリマー成長に先立つ。正味のポリマー伸長に関して、チューブリンヘテロダイマー105の成長中の微小管への結合は微小管の解重合よりも速い。しかしながら、定常状態では、αβ-ヘテロダイマーの付加による微小管ポリマーの成長は、αβ-チューブリンサブユニットへの分解による収縮によって相殺される。したがって、重合した微小管120は成長と収縮の事象を切り替え、それは動的不安定性(すなわち、微小管の正常な平衡)と呼ばれる特性である。
【0061】
パクリタキセル(PTX)などのタキサン125は、重合した微小管120の管腔内の特定の部位を標的とする微小管結合薬である。タキサン125は、GDPに結合したβ-チューブリン分子に結合し、それらのコンフォメーションをより安定なGTPに結合したβ-チューブリン構造に変えることによって安定化することによって作用する。タキサンの細胞毒性効果は、チューブリンに結合し、プロトフィラメントを安定化させて微小管の過剰重合を引き起こし、最終的にはアポトーシスによる死をもたらす能力に起因する。しかしながら、理論に拘束されることなく、重合した微小管120の管腔へのタキサン125の可逆的結合は、微小管軸に沿ったタキサン125の拡散を妨げ、したがってタキサン125の組織保持に影響を及ぼすことがある。
【0062】
上述の組織保持及び薬物損失の問題に対処するために、米国公開番号第2017/0367705号明細書は、DCBから移送された薬物の組織保持を増加させながら、治療場所、例えば、動脈壁へのDCBの輸送、膨張及び収縮中にDCBの表面上に薬物を維持するヘイスタック配向の微結晶を含むコーティング形態を開示している。このコーティング形態は、DCBの輸送、膨張及び収縮中にDCBの表面上に薬物を伝統的に維持するために使用されてきた技術である、DCB上の除去可能なカバー及び/又はDCBの表面上の多孔質層の必要性を低減又は排除することができる。
【0063】
理論に拘束されることなく、ヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態が、血管の内面上の薬物の分布を決定し、何らかの方法で薬物の組織保持を最大化することができることが実証された。さらに、ヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態は、以下の比較例Aに示されるように薬物コーティング上に追加のカバー/層を必要とせずに、輸送中及び/又は膨張及び収縮中の薬物損失を最小限に抑えることができる。したがって、フルオロポリマー表面上のヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態を有するDCBの利用は、薬物コーティング上の追加の除去可能なカバー/層を必要とせずに、輸送、膨張及び収縮中の薬物損失を最小限に抑えることが実証された。これらの結果は、多孔質微細構造を有するフルオロポリマー表面を有するDCBが、多孔質微細構造からの微結晶成長を促進し、及び/又は、輸送、膨張及び収縮中の薬物コーティングの粒子化を克服し得ることを示している。
【0064】
さらに、ヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態は、バルーンの多孔質又は非多孔質ポリマー層のいずれかに配置されたときに、血管の内面上での薬物の分布を改善しうることが実証された。
【0065】
さらに、DCBからの組織保持は、ヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態から恩恵を受け、仮定された投薬暴露の増加によるものではないことが実証された。当業者は、別のDCBよりも高い初期投薬暴露をデリバリーするDCBが、1時間でその別のDCBよりも高い保持用量を有することを期待するが、以下の比較例Aに示すように、フルオロポリマー表面及びヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態を備えたDCBの結果は、組織保持の相乗的増加を提供した。これは、多孔質微細構造を有するフルオロポリマー表面を備えたDCB上の微結晶表面コーティング形態が、吸収の強化のために血管の調製し及び/又は不十分な薬物デリバリー性の制限を克服することができることを示す。
【0066】
上記の組織保持の問題に加えて、長期安定化性を向上させるために、強力な活性成分を含む固体製剤を増量させる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」、又は「希釈剤」と呼ばれる)ために、又は、薬物吸収の促進、粘度の低下又は溶解性の向上など、最終剤形の治療薬に治療的増強を与えるために、薬物コーティング層の製剤内に賦形剤が必要であると以前は考えられていた。
【0067】
理論に拘束されることなく、特に、ヘイスタック配向の微結晶を含む微結晶表面コーティング形態の一部として、フルオロポリマー表面を備えたバルーン上の賦形剤の存在は、治療された組織における治療剤の保持にほとんど影響を及ぼさないことが実証された。さらに、フルオロポリマー表面及び賦形剤を含まない薬物コーティングを備えたバルーンは、賦形剤を含む薬物コーティングを有するデバイスと比較して、薬物損失を増加させることなく、イントロデューサバルブを通過できることが実証された。さらに、驚くべきことに、今回、賦形剤は、バルーンからのインビボ及びインビトロの治療薬放出に対して、あるとしても最小限の影響しか及ぼさない可能性があることが発見された。したがって、本開示の薬物コーティング層は、賦形剤を実質的に含まなくてよい。
【0068】
II.薬物コーティングされたバルーン(DCB)
様々な実施形態において、外面を有するバルーンと、前記バルーンの外面上に薬物コーティング層とを含むメディカルデバイスが提供される。薬物コーティングは、バルーンの外面全体に均一に適用されるヘイスタック配向の微結晶を含むことができる。バルーンは、臨床用途に適した寸法及びサイズを有することができる。幾つかの実施形態において、バルーンは、作業長に沿って実質的に筒形である。幾つかの実施形態において、バルーンは、巻き付けされたバルーン、例えば、20度~90度又は40度~70度の角度、又は他の適切な巻き付け角度でらせん状に巻き付けされたバルーンであることができる。幾つかの実施形態において、バルーンは、約90度の角度で巻き付けられた、巻き付けられたバルーン(すなわち、タバコ巻きバルーン)であることができる。
図2Aに示されるように、例示的なバルーン700は、ショルダー/テーパー部分710に一体的に接続された2つの対向する脚部分705を有する。本開示の目的で、「作業長」は、対向するショルダー/テーパー部分710の間のおおよその長さを備えたバルーン700の真っ直ぐな本体セクション715の長さとして規定される。脚部分705、ショルダー/テーパー部分710及び真っ直ぐな本体セクション715は、バルーン700の「全長」を規定する。バルーン700の作動長は、約10mm~約150mm以上であることができる。同様に、バルーン700の公称直径は、約2mm~約30mm以上であることができる。例として、バルーン700は、4mmの直径及び30mmの作動長、あるいは、8mmの直径及び約60mmの作動長を有することができる。もちろん、本開示のバルーン700は、特定の用途に適切な任意の寸法で構築することができる。バルーン700は、血管系におけるバルーン700の膨張を介して薬物コーティングをデリバリーするために、脚部分でカテーテル915(
図4に示されるように)に付着されるか、又は取り付けられることができる。カテーテル915は、1つ以上の管腔を有することができ、そのうちの1つは、バルーン700を膨張させるための膨張流体を供給するために、バルーン700のチャンバと連通されていることができる。
【0069】
図2A、2B、2C及び2Dを参照すると、バルーン700は、外面725及び内面727を含むバルーン壁720をさらに含むことができる。バルーン壁720は、チャンバ730を画定し、層状材料735から構築されうる。幾つかの実施形態において、層状材料735は、互いに上に重なる関係で基材又はポリマー層745に少なくとも部分的に接着された熱可塑性ポリマー層740を含む。特定の実施形態において、層状材料735は、米国特許出願公開第2016/0106961号明細書に記載されているように、ストレッチブロー成形プロセスによって作成することができる。他の実施形態において、層状材料735は、ある層を別の層の周りに巻き付けること(例えば、らせん巻き)によって作成することができ、例えば、ポリマー層745は、熱可塑性ポリマー層740の周りに巻き付けることができ、米国特許出願公開番号第2016/0143759A1号明細書に記載されているとおりである。層状材料735は、熱可塑性ポリマー層740の厚さが10μm~40μm、例えば、15μm~35μm又は約30μmであり、ポリマー層745の厚さが5μm~50μm、例えば、10μm~30μm又は約15μmであるように、ブローモールド又は巻き付けによって構築されうる。
【0070】
幾つかの実施形態において、熱可塑性ポリマー層740は、バルーン壁720の内面727を画定し、これは、膨張流体を保持するためのブラダとして機能し、したがって、不透過性又は液密性材料を含む。そのような態様によれば、ポリマー層745又は他の材料層(例えば、第二のポリマー層)は、バルーン壁720の外面725を画定する。他の実施形態において、ポリマー層745は、バルーン壁720の内面を画定し、膨張流体を保持するためのブラダとして機能し、したがって、不透過性又は液密性材料を含む。そのような態様によれば、熱可塑性ポリマー層740又は他の材料層(例えば、第二のポリマー層)は、バルーン壁720の外面725を画定することができる。
【0071】
様々な実施形態において、コーティング層750(例えば、薬物コーティング)は、層状材料735の外面725の少なくとも一部全体に均一に分布している。例えば、
図2B、2C及び2Dに示されるように、コーティング層750は、ポリマー層745の外面725の少なくとも一部全体に均一に分布されうる。幾つかの実施形態において、コーティング層750はバルーン700の実質的に作業長にわたってのみ均一に分布されている。他の実施形態において、コーティング層750は、バルーン700の作業長と、脚部分705及び/又はショルダー/テーパー部分710の少なくとも一部とに実質的に均一に分布されている。「均一分布」、「均一に分布された」などとは、外面725の部分を横切るコーティング層750の厚さが、指定された厚さの特定のパーセンテージ内に維持されることを意味し、このパーセンテージは、3、10及び20パーセントを含む。特定の実施形態において、コーティング層750の厚さは、5μm~50μm、例えば、10μm~35μmである。
【0072】
図2Dに示されるように、層状材料735及びコーティング層750の厚さは、ラマン分光法及び走査型電子顕微鏡技術によって研究され、コーティング層750は、多孔質微細構造を有するポリマー層745の2μm~10μm(例えば、約5μm)の平均侵入深さを有することができ、したがって、多孔質微細構造カバー(例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE))の最外層に浸透することができる。対照的に、コーティング層750は、非多孔質微細構造を有するポリマー層745に侵入せず、したがって、非多孔質微細構造カバー(例えば、ナイロン)の最外層(例えば、外側2層)上に完全に配置されるであろう。したがって、理論に拘束されることなく、ePTFEなどの多孔質微細構造を有するポリマー層745は、約5μmの深さまでのコーティング侵入を備えたコーティング層750(例えば、PTX)のためのスポンジ様足場を提供する。
【0073】
幾つかの実施形態において、コーティング層750及びポリマー層745の厚さは、5μm~45μm、例えば、10μm~35μm又は約25μmである。幾つかの実施形態において、コーティング層750、熱可塑性ポリマー層740及びポリマー層745の厚さは、30μm~60μm、例えば、40μm~55μm又は約45μmである。熱可塑性ポリマー層740の厚さ/ポリマー層745の厚さの比は、1.5:1~2.5:1、例えば、約2:1であり、又は、約30μmの熱可塑性ポリマー層740/15μmのポリマー層745であることができる。熱可塑性ポリマー層740の厚さ/(ポリマー層745及びコーティング層750)の厚さの比は、1:1~1.7:1、例えば、約1.2:1であり、又は、約30μmの熱可塑性ポリマー層/25μmの(ポリマー層745及びコーティング層750)であることができる。
【0074】
熱可塑性ポリマー層740は、順応性、半順応性又は非順応性熱可塑性ポリマーを含むことができる。適切な熱可塑性ポリマーとしては、メディカルグレードでブロー成形可能なポリマーが挙げられる。適切な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA又はアクリル)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、変性ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE又はLLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)を含む半結晶性の商用プラスチック、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、修飾ポリフェニレンオキシド(Mod PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、修飾ポリフェニレンエーテル(Mod PPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオキシメチレン(POM又はアセタール)、ポリエチレンテレフタレート(PET、熱可塑性ポリエステル)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、熱可塑性ポリエステル)、ポリイミド(PI、イミド化プラスチック)、ポリアミドイミド(PAI、イミド化プラスチック)、ポリベンズイミダゾール(PBI、イミド化プラスチック)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールスルホン(PAS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むフルオロポリマー又はそれらの組み合わせ、コポリマー又は誘導体が挙げられる。他の一般的に知られているメディカルグレードの材料としては、エラストマー有機ケイ素ポリマー及びポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))が挙げられる。特に、ポリアミドとしては、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン9、ナイロン6/9及びナイロン6/6を挙げることができる。特定の実施形態において、PET、ナイロン及びPEは、冠状動脈形成術又は他の高圧用途で使用されるメディカルバルーンのために選択されうる。材料の具体的な選択は、バルーンの望ましい特性/意図された用途に依存することができる。
【0075】
ポリマー層745は、順応性、半順応性又は非順応性ポリマーを含むことができる。適切なポリマーは多孔質微細構造又は非多孔質微細構造を含む。多孔質微細構造(本明細書では「多孔質層」と呼ばれる)を有する実施形態において、適切なポリマーとしては、限定するわけではないが、ペルフルオロエラストマーなど、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを含むフルオロポリマー、ならびにePTFEを含む膨張フルオロポリマーが挙げられる。非多孔質微細構造(本明細書では「非多孔質層」と呼ばれる)を有する実施形態において、適切なポリマーとしては、限定するわけではないが、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン9、ナイロン6/9及びナイロン6/6を含むポリアミドが挙げられる。
【0076】
多孔質微細構造の構築は、意図された用途の必要性に基づいて選択することができる。幾つかの実施形態において、多孔質微細構造は、実質的にフィブリル化されうる(例えば、実質的にフィブリルのみの微細構造を有し、幾分かは交差点で融合されるか、又はより小さなノード寸法を有する不織布ウェブ)。他の実施形態において、多孔質微細構造は、ブロー成形中の材料の圧縮性/崩潰性の程度に影響を及ぼしうる大きなノード又は大きな高密度化領域を含むことができる。さらに他の実施形態において、多孔質微細構造は、上述の実施形態の間のどこかのノード及びフィブリル微細構造であることができる。幾つかの実施形態において、多孔質微細構造は、外側ポリマー層745がより多くのロフトを有することができ、及び/又は薬物コーティング層750が外側ポリマー層745の表面近くを占めるためにより多くのボイド空間を有することができるような「開放」微細構造を有することができる。多孔質構造の他の例は、繊維構造(織布又は編組布など)、繊維、マイクロファイバー又はナノファイバーの不織布マット、フラッシュスパンフィルム、エレクトロスピニングフィルム及び他の多孔質フィルムであることができる。
【0077】
幾つかの実施形態において、多孔質微細構造は、膨張フルオロポリマー又は膨張ポリエチレンを含むことができる(例えば、Sridharanらの米国特許第6,743,388号明細書を参照されたい)。膨張フルオロポリマーの非限定的な例としては、限定するわけではないが、ePTFE、延伸修飾PTFE及び延伸PTFEコポリマーが挙げられる。PTFEの延伸性ブレンド、延伸性変性PTFE及び延伸PTFEコポリマーについて特許が出願されており、例えば、Brancaの米国特許第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書及びXuらの米国特許第8,937,105号明細書である。
【0078】
ポリマー層745は、多孔質又は非多孔質微細構造を有するポリマーの管状部材から形成することができる。管状部材は、押出チューブとして形成することも、又は、フィルム巻き付けすることもできる。管状部材は、微細構造の周方向、らせん状又は軸方向の配向を有することができる。様々な実施形態において、管状部材は、フィルム又はテープを巻き付けることによって形成することができ、そして配向は、巻き付けの角度によって制御することができる。管状部材は、周方向に巻き付けられるか、又は、らせん状に巻き付けられることができる。多孔質材料が周方向又は軸方向に巻かれているのに対して、らせん状に巻かれているときに、所与の方向の順応性の程度は変化し、複合材料の全体的な順応性に影響を与える可能性がある(本明細書で使用されるときに、「軸方向」という用語は、「長手方向」という用語と交換可能である。本明細書で使用されるときに、「周方向」は、長手方向軸に実質的に垂直な角度を意味する)。
【0079】
コーティング層750は、少なくとも1つの天然、半合成又は合成の治療剤(例えば、少なくとも1つの薬物)を含むことができる。コーティング層750の機能的特徴は、バルーン膨張中に血管壁の組織への少なくとも1つの治療剤の放出を可能にすることである(例えば、末梢動脈の閉塞性疾患の患者における経皮経管血管形成術による治療)。特定の実施形態において、治療剤は、親油性(n-ブタノールと水との間の分配係数>10)であるか、又は非常に低い水溶性(<10mg/ml、20℃)を示す。「少なくとも1つの治療剤(又は治療薬製剤)」という表現は、単一の治療剤又は異なる治療剤の混合物が含まれることを意味する。したがって、異なる薬理作用が必要であるか、又は有効性又は耐性が改善されるべきである場合に、様々な治療剤は適用又は組み合わされることができる。
【0080】
コーティング層750での使用に適した治療剤としては、再狭窄又は細胞増殖の阻害剤(例えば、抗有糸分裂薬又は抗増殖薬)、例えば、ビンコアルカロイド、例えば、コルヒチン、ポドフィロトキシン、グリセオフルビン、抗有糸分裂アルカロイド剤、及び、抗微小管アルカロイド剤、及びタキサン、例えば、PTX、ドセタキセル及びプロタキセルを挙げることができる。特定の実施形態において、治療剤は、PTX又は三酸化ヒ素を含む。あるいは、コーティング層750での使用に適した治療剤としては、血管新生の特異的阻害剤、例えば、サリドマイド、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチンなどのスタチン、又は抗炎症薬、例えば、コルチコイド、あるいは、ジプロピオン酸ベタメタゾン又はデキサメタゾン21-パルミテートなどのコルチコイドの親油性誘導体、及びリムス薬、特にシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムス及びテムシロリムスなどのmTOR阻害剤などの免疫抑制剤及び有糸分裂阻害剤を挙げることができる。すなわち、幾つかの実施形態において、治療剤は、PTX、タキサン、ドセタキセル、ビンカアルカロイド、コルヒチン、ポドフィロトキシン、グリセオフルビン、有糸分裂阻害性アルカロイド剤、抗微小管アルカロイド剤、プロタキセル、三酸化ヒ素、サリドマイド、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン21-パルミテート、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムス、又はテムシロリムスを含む。理解されるべきであるように、少なくとも1つの治療剤は、上述の薬物の構造類似体、関連物質、分解物及びいずれかの誘導体を含むことができる。
【0081】
薬物コーティング層750は、賦形剤を実質的に含まなくてよく、それにより、より薄い薬物コーティング層750及びより低い総コーティング質量のデリバリーが可能になりうる。例えば、薬物コーティング層750は、長期安定化性を向上させること、強力な活性成分を含む固体製剤を増量させること、又は、薬物の吸収を促進し、粘度を下げ又は溶解性を高めるなど、最終剤形中の治療剤に治療増強を与えることを目的とする成分を実質的に含まなくてもよい。そのような賦形剤としては、飽和又は不飽和脂肪酸及びそれらの誘導体、例えば、モノカルボン酸(例えば、ステアリン酸)及び塩基(例えば、トリス)に由来するモノカルボン酸塩、ソルビトール及び脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸及びオレイン酸)に由来するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、及びシェラック(例えば、アルミニウム酸、ジャラリン酸、シェロール酸)が挙げられる。別の賦形剤としては、例えば、尿素が挙げられる。したがって、薬物コーティング層750は、脂肪酸及びそれらの誘導体(モノカルボン酸、ポリソルベート及びシェラックを含む)、尿素、及び/又は他の賦形剤を実質的に含まなくてよい。別の言い方をすれば、薬物コーティング層750は、賦形剤を含まない少なくとも1つの治療剤(すなわち、薬物コーティング層750中に0質量%の賦形剤)からなることができ、又は、わずかな量の賦形剤を含む少なくとも1つの治療薬(すなわち、薬物コーティング層750中に4.75質量%以下の賦形剤)から本質的になることができる。したがって、特定の実施形態において、薬物コーティング層750は、0質量%~4.75質量%、例えば、約0.1質量%、約0.5質量%、約1.0質量%、約1.5質量%、約2.0質量%、約2.5質量%、約3.0質量%、約3.5質量%、約4.0質量%、4.5質量%又は4.75質量%の賦形剤を含むことができる。
【0082】
様々な実施形態において、コーティング層750のための製剤は、少なくとも1つの治療剤及び揮発性溶媒を含む。溶媒の選択は、乾燥状態でのコーティング層750の結晶形態、ならびにメディカルデバイスの表面の治療剤の付着及び放出に有用であることができる。したがって、溶媒としては、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、水及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0083】
したがって、幾つかの実施形態において、溶媒は、アセトン、ジオキサン、THF及び水を含む。他の実施形態において、溶媒は、アセトン、ジオキサン、THF及び水から本質的になる。他の実施形態において、溶媒は、アセトン、ジオキサン及び水を含む。他の実施形態において、溶媒は、アセトン、ジオキサン及び水から本質的になる。他の実施形態において、溶媒はアセトン及び水を含む。さらに他の実施形態において、溶媒はアセトン及び水から本質的になる。幾つかの実施形態において、溶媒は、約35体積%~約85体積%、例えば、約75体積%又は約0.75v/vのアセトン、及び約5体積%~約35体積%、例えば、約25%又は約0.25v/vの水を含む。他の実施形態において、溶媒は、約35体積%~約65体積%、例えば、約58体積%又は約0.58v/vのアセトン、約5体積%~約35体積%、例えば、28%又は約0.27v/vの水、及び約5体積%~約30体積%、例えば、約14%又は約0.14v/vのジオキサンを含む。しかしながら、当業者は、この製剤の変性が主成分を変化させない限り、この製剤の変性が許容され、限定するわけではないが、これらの主要成分と同様の誘導体及び類似体を含む変性物を含むことができることを理解するであろう。薬物コーティング層750が実質的に賦形剤を含まないようにするために、薬物コーティング層750を形成するために使用される製剤は、賦形剤を実質的に含まずに、少なくとも1つの治療剤及び溶媒のみを含むことができる。
【0084】
本明細書で論じられるように、様々な実施形態は、DCBの治療位置、例えば、動脈壁への輸送、膨張及び収縮中にDCBの表面上に薬物を維持するコーティング形態を有利に有し、同時にDCBから移行された薬物の組織保持性を増加させるDCBを対象とする。
図3A及び3Bに示されるように、本明細書に記載の様々な実施形態に従って確立されたコーティング層製剤は、非多孔質基材(例えば、ナイロン)805(
図3A)及び多孔質バルーン基材(例えば、ePTFE)810(
図3B)上に実質的に同様の微結晶形態を提供する。微結晶形態は、ヘイスタック配向820の微結晶815を含むことができる。例えば、微結晶815は、基材805、810全体に均一に分布され、基材805、810上に配置する際にランダムで実質的な均一性がなく(不均一)を示し、及び/又は、基材805、810からの投影角度でランダムであり、実質的に均一性がない(不均一)ことができる。幾つかの実施形態において、基材805、810の表面上の所与の体積内に存在する微結晶815の体積パーセントは、約50%~約100%、例えば、約65%~約85%である。
【0085】
微結晶815の主要部分は、基材805、810の表面から20°未満の角度で延在しうる(したがって、結晶は、基材805、810上に比較的平坦に横たわる)。他の実施形態において、微結晶815の主要部分は、基材805、810の表面から50°~17°、50°~15°、15°未満、10°未満又は8°未満の角度で延在する。さらに、微結晶815の主要部分は、それぞれ、微結晶815の主寸法幅よりも少なくとも5倍大きい主寸法長さを有する。他の実施形態において、微結晶815の主要部分は、それぞれ、微結晶815の主寸法幅よりも少なくとも10倍大きい主寸法長さを有する。他の実施形態において、微結晶815の主要部分は、それぞれ、主寸法幅の少なくとも13倍又は少なくとも15倍である主寸法長を有する。さらに、微結晶815の主要部分は、場合により、12μm~22μm、例えば、14μm~20μm又は約17μmである主寸法長を有し、微結晶815の主要部分は、それぞれ、0.5μm~2.0μm、例えば0.8 μm~1.6μm又は約1.3μmの主寸法幅を有する。
【0086】
図2Dに戻ると、コーティング層750、したがって微結晶(例えば、微結晶815)は、
図3Bの多孔質基材810と同様の多孔質微細構造を有するポリマー層745の外側2~7μm(例えば、約5μm)に侵入することができ、したがって、多孔質微細構造カバー(例えば、ePTFE)の最外層(例えば、外側の2つの層)に侵入することができる。対照的に、コーティング層750、したがって微結晶815は、
図3Aの非多孔質基材805と同様の非多孔質微細構造を有するポリマー層745内に侵入せず、したがって、非多孔質微細構造カバー(例えば、ナイロン)の最外層(例えば、外側の2つの層)上に実質的に配置されるであろう。したがって、ePTFEなどの多孔質微細構造を有するポリマー層745は、コーティング層750(例えば、PTX)に、約5μmの深さまでのコーティング侵入を備えたスポンジ状足場を提供し、これは、追跡及び展開中の薬剤の損失を最小限に抑えるのに役立ち、また、より良い適用性を提供する。
【0087】
有利なことに、コーティング製剤及び形態は、治療剤が基材(例えば、多孔質基材810及び非多孔質基材805)に十分にしっかりと付着して、バルーンの折り畳みを含む製造、包装、顧客への出荷及び最終的な臨床使用中に機械応力に耐え、臨床使用には、狭い止血弁、導入シース又はガイドカテーテル、及び、曲がりくねることがある細い血管の様々な距離を通過することが含まれる。さらに、コーティング形態は、付着を強化するための粗いバルーン表面、保護シース又は膜を提供するための追加のコスト又は製造工程を必要とせず、又は治療剤のバルーン表面への付着を強化するための他の物理的又は化学的方法を必要としないので、製造において経済的かつ効率的である。
【0088】
図4に示されるように、バルーンカテーテルアセンブリ900は、カテーテル915の遠位セクション910に取り付けられたバルーン905、
図2A、2B、2C及び2Dに関して記載されるとおりのバルーン700を含むことができる。バルーンカテーテルアセンブリ900はまた、カテーテル915の近位セクション925に配置されたハブアセンブリ920を含むことができる。ハブアセンブリ920は、カテーテル915の膨張管腔と流体連通している膨張ポート930を含むことができる。カテーテル915の膨張管腔は、膨張媒体が膨張ポート930に挿入されて、バルーン905を膨張させるように、バルーン905の内部領域と流体連通していることができる。ハブアセンブリ920はまた、カテーテル915の中央管腔と連通している第二のポート935を含むことができる。カテーテル915の中央管腔は、カテーテル915の近位セクション925から、カテーテル915の遠位セクション910まで延在していることができ、ガイドワイヤを受け入れることができる。幾つかの態様において、カテーテル915の中央管腔はまた、バルーン905から膨張媒体をフラッシュするために使用されうる。1つ以上の放射線不透過性マーカー940、例えば、限定するわけではないが、放射線不透過性白金イリジウムマーカーがバルーン905上に配置されて、バルーン905の作動長を示し、デリバリー及び配置中のバルーン905の蛍光透視視覚化を容易にする。幾つかの実施形態において、放射線不透過性マーカーはカテーテル915上に配置されて、バルーン905の作動長さを示すことができる。
図2B、2C及び2Dに関して上記されるように、バルーン905は、バルーン905の外面の少なくとも一部の上にコーティング層945を含む。
【0089】
III.DCBを使用した治療方法
様々な実施形態によれば、DCB(例えば、バルーンカテーテルアセンブリの一部として)を利用して、体腔内の所望の部位に1つ以上の治療を提供することができる。DCBは、
図2A、2B、2C及び2Dに関して記載されるように、バルーンの外面上にコーティング層を有するバルーンを含むことができる。1つ以上の治療を実施する技術は、
図4に関して記載されるように、DCBをバルーンカテーテルアセンブリの遠位セクション上に配置すること、及び、体腔内のDCBを所望の部位に前進させることを含むことができる。DCB又はカテーテルの位置は、DCB又はカテーテル上に配置された放射線不透過性要素を使用して、体腔内で前進するときに監視又は追跡することができる。DCBが所望の部位に進むと、DCBは、単一の治療(又は膨張)を提供することができ、又は他の実施形態において、所望の部位で複数又は反復の治療(又は膨張)を提供することができる。DCBが所望の部位で単一の治療を提供する様々な実施形態において、DCBは、20~200秒、例えば、約45秒、約60秒、約90秒、約180秒又は他の適切な長さの各治療(又はインフレーション)の時間膨張されうる。1つ以上の治療に続いて、DCBは収縮され、体腔から引き抜かれることができる。
【0090】
理解されるべきであるように、複数又は反復治療は、同じ治療部位で単一のDCBを複数回膨張させることによって(上記の方法で記載されたように)、又は同じ治療部位で複数のDCBを複数回膨張させることによって(上記の方法を何度も繰り返し実行することによって)実行されうる。例えば、本開示の他の態様は、順次の医療処置において記載のDCBを使用する技術を対象とする。そのような技術は、DCBが取り付けられたバルーンカテーテルデバイスを解剖学的導管又は血管を通して所望の位置に通し、記載のDCBを公称直径に1回又は順次に膨張させることを含むことができる。この方法は、バルーンを拡張し、膨張時に、バルーンの外面上にある治療剤を周囲組織又は血管内デバイスにデリバリーすることをさらに含むことができる。この方法は、バルーンカテーテルデバイスを解剖学的導管又は血管から順次に引き込め、そして、バルーンカテーテルデバイスに取り付けられた別のDCBを解剖学的導管又は血管を通して所望の位置に通過させ、続いてバルーンを公称直径に1回又は順次に膨張させることをさらに含むことができる。
【0091】
IV.試験方法
特定の方法及び装置を以下に記載するが、当業者によって適切であると決定された他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【実施例】
【0092】
V.例
本明細書で論じられる実施形態の範囲を限定することを意図することなく、様々な実施形態で実施されるシステム及び方法は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解されうる。
【0093】
比較例A
DCBの実施形態の前臨床性能が評価され、ここで、賦形剤とともに配合されたPTXを、複合ePTFE/ナイロンバルーンのePTFE多孔質表面に適用した。
【0094】
方法:3.5μg/mm2(ラベル量)又は3.3μg/mm2(測定量)のPTXの用量密度のPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(5mmx40mm及び6mmx40mm ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz. )を、ヨークシャー豚の末梢動脈内で膨張させた。3.5μg/mm2(ラベル量)又は3.3μg/mm2(測定量)のパクリタキセルの用量密度のPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販、Medtronic IN. PACT(商標)Admiral(商標)パクリタキセルコーティングPTAバルーンカテーテル)を、ヨークシャー豚の末梢動脈内で膨張させた。動脈は、60秒間の1回の膨張治療によって臨床用量を受けた。動物は治療後1時間から30日で安楽死させ、包括的な剖検を行った。バルーンは、パクリタキセル放出の分析のために収集され、そして、処理された動脈は、他の組織とともに、生物分析のために収集されるか、又は、組織学的評価及び走査型電子顕微鏡(SEM)評価のために処理された。
【0095】
さらに、3.5μg/mm2の用量密度のPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(5mmx40mm及び6mmx40mm ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)をベンチトップで膨張及び収縮させた。各バルーンからのコーティングの粒子は、膨張/収縮後に分析のために収集された。
【0096】
結果:
図5~7に示されるように、3.5μg/mm
2の用量密度での本開示の実施形態によるPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)は、1456μg±233 μgのPTXでは、装填用量の61.2%を放出し、1時間で1270μg/g、1日で48μg/g、14日で22μg/g、28日で6.4μg/gの組織濃度又は用量を達成し、0.73のクリアランス勾配係数を達成した。3.5μg/mm
2の同様の用量密度のPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)は、装填用量の85.1%、例えば2445μg±343μgのPTXを放出し、1時間で330μg/gのPTX、1日で30μg/g、14日で6.4μg/g、28日で2.5μg/gの組織濃度又は用量をそれぞれ達成し、0.73のクリアランス勾配係数を達成した。
【0097】
PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)は、本開示の実施形態(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)によるPTXでコーティングされたバルーンの初期PTX用量と比較して、より高い初期PTX用量をデリバリーしたが(ePTFE/市販比0.6)、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)は、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)と比較して、1時間で3.8倍大きい最大保持可能量を達成でき(ePTFE/市販比3.8)、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)と比較して、1日で1.6倍大きい最大保持可能量を達成できた(ePTFE/市販比1.6)。当業者は、PTX/賦形剤被覆バルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)よりも高い初期用量のPTXをデリバリーするPTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)はまた、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)の1時間又は1日での保持可能用量よりも高い1時間又は1日での保持可能用量を有することを期待するであろうが、フルオロポリマー表面及び微結晶表面コーティング形態を備えたDCBの結果は、組織保持における相乗的な増加をもたらした。
【0098】
驚くべきことに、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)のフルオロポリマー表面及び微結晶表面コーティング形態は、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)よりも1時間で3.8倍高い保持可能なドラッグデリバリー及び1日で1.6倍高い保持可能なドラッグデリバリーを生じさせた。さらに、PTXでコーティングされたバルーン(ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)は、ベンチトップでの膨張/収縮後に粒子化の兆候を示さなかったが、PTX/賦形剤でコーティングされたバルーン(市販)は粒子化を示した。
【0099】
結論:全体として、3.5μg/mm2の用量密度での本開示のDCB実施形態による末梢動脈の治療は、許容できる急性デバイス性能をもたらし、有害な安全事象がなく、そして他のPTX/賦形剤でコーティングされたバルーンと同様の薬物動態をもたらした。同様のPTX用量(3.5μg/mm2)でコーティングされたバルーン表面のイメージングにより、異なる形態が明らかになった。本開示の実施形態からの組織保持は、コーティングされたバルーンのフルオロポリマー表面及び微結晶表面コーティング形態から得られ、用量暴露の増加によるものではない。微結晶表面コーティング形態は、何らかの方法で薬物の粒子化を減少させ、組織保持を増加させることができる。同様のクリアランス速度は、両方のタイプのDCBの同様の組織クリアランスメカニズムに起因する可能性があり、これは、薬物の早期デリバリー及び保持性の重要性を示している。
【0100】
例B
DCBの実施形態の前臨床性能が評価され、ここで、PTXは複合ePTFE /ナイロンバルーンのePTFE多孔質表面に適用された。6つの試験群は、様々な量のステアリン酸及びトリス(tris)賦形剤を含み、一方、1つの試験群は賦形剤を含まなかった。
【0101】
方法:PTXでコーティングされたバルーン(W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)(5x40mm)が構築され、
図8による異なるレベルのステアリン酸及びトリスを含む7つの異なるコーティング製剤でコーティングされた。コーティングされたバルーンへのPTX装填量は、すべての群で一定であった(3.5μg/mm
2)。製剤100-100-100を備えたデバイスは対照群を表し、公開番号第2017/0367705号明細書(PTX:3.5μg/mm
2、ステアリン酸:0.12μg/mm
2、Tris:0.05μg/mm
2)に記載されているPTX-stearic-trisレベルを有した。製剤100:0:0を備えたデバイスは、PTXのみを含み、賦形剤は含まれていなかった。すべてのデバイスは滅菌され、インビトロ及びインビボ環境の両方で展開された。
【0102】
結果:
図9に示されるように、すべてのデバイスは、賦形剤レベルに関係なく、同様のPTXインビトロ放出プロファイルを示した。
【0103】
図10に示されるように、賦形剤レベルは、インビボ展開中にバルーンから放出されるPTXの量に影響を及ぼさなかった。すべてのデバイスは、インビボでの展開後に、バルーン表面上に約35%のPTXが残存していた。
図11は、賦形剤装填量がデバイス展開の1日後にPTX組織レベルに対して影響を与えなかったことを示している。PTXのみがコーティングされたバルーン(100-0-0)で治療された動脈は、約100μg PTX/g組織の1dPTX組織レベルをもたらし、PTX組織レベルはコーティング製剤間で有意差はなかった(p>0.05)。
【0104】
結論:これらの結果は、賦形剤を含まないPTXのみのコーティングが、賦形剤を含む対照コーティングと同様の薬物レベルをデリバリーするようであるため、賦形剤レベルがePTFEバルーン表面からのインビトロPTX放出に対して、あったとしても、最小限の影響しか及ぼさない可能性があることを示唆している。さらに、展開後にデバイス上に残存しているPTXの百分率と、治療された組織内の1日でのPTXの保持性について、治療手段間で有意差はない。
【0105】
例C
DCBの実施形態の前臨床性能が評価され、ここで、PTXは複合ePTFE/ナイロンバルーンのePTFE多孔質表面に適用された。1つの試験群は、ステアリン酸とトリス賦形剤を含む薬物コーティング(
図8の製剤100-100-100)を含み、もう1つの試験群は、薬物のみのコーティング(
図8の製剤100-0-0、賦形剤なし)を含んだ。
【0106】
方法:3.5μg/mm2の用量密度のPTXでコーティングされたバルーン(W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)(5x40mm及び6x40mm)を構築し、コーティングし、滅菌した。次に、デバイスをヨークシャー豚の末梢動脈に配置し、治療後1日、3日、7日及び28日目にPTX組織濃度を測定した。
【0107】
結果:
図12Aに示されるように、薬物のみでコーティングされたバルーンを使用した治療部位でのPTXの平均動脈組織濃度は、1日で約74.42ng/mg、3日で14.15ng/mg、7日で2.05ng/mg及び28日で0.20ng/mgであった。賦形剤を含むバルーンを使用した治療部位でのPTXの平均動脈組織濃度は、1日で約35.26ng/mg、3日で12.07ng/mg、7日で4.43ng/mg、28日で1.27ng/mgであった。
図12Bに示されるように、薬物のみでコーティングされたバルーンを使用して治療された動脈内のPTXの平均合計量は、1日で12.12μg、3日で1.75μg、7日で0.33μg及び28日で0.03μgであった。賦形剤を含むバルーンを使用して治療された動脈内のPTXの平均合計量は、1日で約6.26μg、3日で1.63μg、7日で0.79μg及び28日で0.17μgであった。
【0108】
結論:1日及び3日で、PTX組織レベルは賦形剤なしの製剤でより高い傾向にあったが、この傾向は、その後7日及び28日で逆転した。
【0109】
例D
DCBの実施形態の前臨床性能が評価され、ここで、PTXは、複合ePTFE/ナイロンバルーンのePTFE多孔質表面及びナイロンバルーンの非多孔質表面に適用された。各バルーンタイプの1つの試験群は、ステアリン酸及びトリス賦形剤を含む薬物コーティングを含み、各バルーンタイプの別の試験群は、賦形剤を含まない薬物のみのコーティングを含んだ。
【0110】
方法:PTXでコーティングされた複合ePTFE/ナイロンバルーン(W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)(5x40mm)を構築し、コーティングし、パッケージ化しそして滅菌した。1つの群のPTXでコーティングされたバルーンはステアリン酸及びトリス賦形剤を含み(
図8の製剤100-100-100)、別の群のPTXでコーティングされたバルーンは賦形剤を含まなかった(
図8の製剤100-0-0)。さらに、2つの群のナイロンバルーンをPTXでコーティングし、パッケージ化しそして滅菌し、ここでも、1つの群は賦形剤を含み(
図8の製剤100-100-100)、もう1つの群は賦形剤を含まなかった(
図8の製剤100-0-0)。各デバイスの目標PTX装填量は2.6mgであった。各群はインビトロ溶解試験を受けた。複合バルーン群はさらにイントロデューサバルブの交差を経験し、デバイス上に残るPTX、及び、パッケージングシース及びイントロデューサへのPTX損失を目標装填量の百分率として計算した。
【0111】
結果:
図13に示されるように、PTXのみ(賦形剤なし)を含むナイロンバルーン及び複合バルーンの両方は、PTX及び賦形剤でコーティングされた複合バルーンと同様のインビトロ放出を有した。これらの3つのデバイス群は、同様のバースト放出及び最終累積放出を示した。PTX及び賦形剤でコーティングされたナイロンバルーンは、他の3つのデバイス群よりも高いバースト放出を示した。
【0112】
図14Aに示されるように、イントロデューサバルブ交差後に、賦形剤がコーティングされ又はコーティングされない複合バルーン上に残っているPTXの平均量で有意差はなかった(p>0.05)。同様に、パッケージングシース又はイントロデューサバルブへのPTX損失の製剤間で有意差はなかった(それぞれ
図14B及び14Cを参照されたい)。
【0113】
結論:PTX溶解プロファイルは、結果の違いが有意であることが判明しなかったため、賦形剤がインビトロPTX溶解にほとんど影響を与えないことを示唆している。さらに、複合バルーン、パッケージングシース及びイントロデューサのPTX含有量は、試験された群の間で有意差はなかった。これは、賦形剤を含まない複合バルーンが、賦形剤でコーティングされた複合バルーンと比較したときに、薬物損失が増加しないで、イントロデューサバルブを通して通過されうることを示唆している。
【0114】
例E
DCBの実施形態のインビボ性能は評価され、ここで、PTXは複合ePTFE/ナイロンバルーンのePTFE多孔質表面に適用された。賦形剤を含む薬物コーティングを備えたDCB(
図8の製剤100-100-100)を、賦形剤を含まない薬物コーティング層を備えたDCB(
図8の製剤100-0-0)と包括的に比較した。
【0115】
方法:賦形剤を含む及び含まないPTXでコーティングされたバルーン(5mmx40mm及び6mmx40mm ePTFE- W.L. Gore, Flagstaff Ariz.)を、家族性高コレステロール血症のブタのステント内再狭窄モデルの末梢動脈内で膨張させた。2つの市販のバルーン-1つは賦形剤を含むPTXでコーティングされたナイロンバルーン(市販1、Medtronic IN.PACT(商標)Admiral(商標)パクリタキセルでコーティングされたPTAバルーンカテーテル)、もう1つはコーティングされていないナイロンバルーン(市販 2、Cordis POWERFLEX(登録商標)PRO PTA拡張カテーテル)も、家族性高コレステロール血症のブタのステント内再狭窄モデルの末梢動脈内で膨張させた。簡単に説明すると、モデルは0日目に治療部位を損傷させることによって作成された。損傷は、標準的な血管形成バルーンカテーテルを使用して、部位での3回の膨張で目標の130%のオーバーストレッチで動脈をオーバーストレッチし、続いてベアメタル自己拡張型ステントを展開することによって作成された。ステントは、約20%のオーバーストレッチを目標とするように選択された。およそ15日目に、損傷したステント留置部位を血管造影法及び光コヒーレンストモグラフィー(OCT)で画像化し、続いてバルーンで治療した。損傷した部位は、各バルーンから1回の治療を受け、60秒間膨張された。治療後、血管造影を繰り返した。およそ45日目に、損傷した治療部位は血管造影及びOCTによる画像化を繰り返し受けた。0、15及び45日目に収集された画像は、定量的血管造影(QVA)分析に使用された。治療された末梢動脈は、他の組織とともに収集され、光学顕微鏡分析及び組織形態計測のために調製された。
【0116】
結果:
図15に示されるように、賦形剤を含む複合バルーンで治療された動脈は、平均して、約0.18mmの遅発性内腔喪失を経験し、一方、賦形剤を排除した複合バルーンで治療された動脈は、平均して、約0.58mmの遅発性内腔喪失を経験した。市販1のコーティングされたバルーンで治療された動脈は、平均して、約0.22mmの遅発性内腔喪失を経験し、市販2のコーティングされていないバルーンで治療された動脈は、平均して、約1.88mmの遅発性内腔喪失を経験した。
【0117】
結論:結果は、試験された薬物コーティングされたバルーン間の差が有意ではなかったため、賦形剤が遅発性内腔喪失にほとんど影響を及ぼさないことを示唆している。
【0118】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態の両方に関して上記で記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
(態様)
(態様1)
延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーン、及び、
前記バルーンの外面上の薬物コーティング層であって、少なくとも1つの治療剤を含み、実質的に賦形剤を含まない薬物コーティング層、
を含む、薬物コーティングされたバルーン。
(態様2)
前記バルーンは、延伸ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンの複合材を含む、態様1記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様3)
前記少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含む、態様1及び2のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様4)
前記バルーンは、パクリタキセルを組織にデリバリーして、再狭窄に関連する細胞増殖応答を低減するように構成されている、態様3記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様5)
前記薬物コーティング層は、ドセタキセル、プロタキセル、三酸化ヒ素、サリドマイド、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン21-パルミテート、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムス又はテムシロリムスから選ばれる治療剤をさらに含む、態様3及び4のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様6)
前記薬物コーティング層は0質量%~4.75質量%の賦形剤を含む、態様1~5のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様7)
前記薬物コーティング層は0質量%~4.75質量%の賦形剤を含み、前記賦形剤は脂肪酸及びそれらの誘導体及び尿素から選ばれる、態様1~6のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様8)
前記薬物コーティング層は、前記バルーンの外面への配置においてランダムで実質的に均一性がない、ヘイスタック配向の微結晶を含む、態様1~7のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様9)
前記薬物コーティング層は2μm~10μmの平均侵入深さだけ前記バルーンの外面を侵入する、態様1~8のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様10)
前記薬物コーティング層の約80%は、インプラント処置後の約100分で前記バルーンから放出される、態様1~9のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様11)
外面を有するバルーン、及び、
前記バルーンの外面上の薬物コーティング層であって、少なくとも1つの治療剤を含み、実質的に賦形剤を含まない薬物コーティング層、
を含む、薬物コーティングされたバルーンであって、
前記薬物コーティング層は、前記バルーンの外面への配置においてランダムで実質的に均一性がない、ヘイスタック配向の微結晶を含む、薬物コーティングされたバルーン。
(態様12)
前記外面はナイロンをさらに含む、態様1~11のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様13)
前記微結晶の主要部分はそれぞれ、主寸法幅より少なくとも10倍大きい主寸法長さを有する、態様8、11及び12のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様14)
前記微結晶の主要部分の主寸法長さは、主寸法長より少なくとも13倍又は少なくとも15倍大きい、態様13記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様15)
前記微結晶の主要部分の主寸法幅は0.5μm~2μmである、態様13及び14のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様16)
前記微結晶は、前記外面からの角度の均一性がランダムかつ実質的に欠如しており、前記微結晶の主要部分は前記外面から50°~15°の角度で突出している、態様8及び11~15のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様17)
前記外面は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、態様1~16のいずれか1項記載の薬物コーティングされたバルーン。
(態様18)
薬物適用のための容器を調製するための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの治療剤を溶媒中に可溶化して溶液を生成すること、
メディカルバルーンの外面を前記溶液でコーティングすること、及び、
前記溶媒を蒸発させ、薬物コーティング層が前記バルーンの外面上への配置においてランダムかつ実質的な均一性の欠如を有するヘイスタック配向の微結晶を含むように、前記バルーンの外面上に前記少なくとも1つの治療剤を含む薬物コーティング層を残すこと、
を含み、前記溶液は実質的に賦形剤を含まない、方法。
(態様19)
前記溶媒はアセトンを含む、態様18記載の方法。
(態様20)
前記溶媒は水をさらに含む、態様19記載の方法。
(態様21)
前記溶媒は約75%のアセトン及び約25%の水を含む、態様20記載の方法。
(態様22)
前記溶媒はジオキサンをさらに含む、態様20記載の方法。
(態様23)
前記溶媒は約58%のアセトン、14%のジオキサン及び28%の水を含む、態様22記載の方法。
(態様24)
前記バルーンは、フルオロポリマー及びナイロンを含む複合材料を含む、態様18~23のいずれか1項記載の方法。
(態様25)
前記少なくとも1つの治療剤はパクリタキセルを含む、態様18~24のいずれか1項記載の方法。
(態様26)
延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーン、及び、
前記バルーンの外面上の薬物コーティング層であって、少なくとも1つの治療剤及び0質量%~4.75質量%の脂肪酸及びそれらの誘導体を含む、薬物コーティング層、
を含む、薬物コーティングされたバルーン。
(態様27)
前記脂肪酸及びそれらの誘導体は、モノカルボン酸、ポリソルベート及びシェラックから選ばれる、態様26記載のバルーン。
(態様28)
延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む外面を有するバルーン、及び、
前記バルーンの外面上の薬物コーティング層であって、少なくとも1つの治療剤及び0質量%~4.75質量%の尿素を含む、薬物コーティング層、
を含む、薬物コーティングされたバルーン。