(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び通信デバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20240314BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240314BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240314BHJP
H01Q 5/314 20150101ALI20240314BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q1/38
H01Q13/08
H01Q5/314
(21)【出願番号】P 2022565728
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020061638
(87)【国際公開番号】W WO2021219195
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】イルボネン,ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】ハンヌラ,ヤリ-マティ
(72)【発明者】
【氏名】コルミライネン,リク
(72)【発明者】
【氏名】レトヴオリ,アヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルオマニエミ,ラスムス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーカリ,ヴィッレ
(72)【発明者】
【氏名】クリプコフ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】クロエルス,ヨーナス
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0113673(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0289701(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0273325(US,A1)
【文献】国際公開第2011/089676(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/024355(WO,A1)
【文献】特開平05-304413(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106058450(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109742540(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信デバイス用のアンテナ装置であって、
上面及び底面を有する基板と、
前記上面に配置され、第1セクション及び該第1セクションに隣接している第2セクションを有するトップ導電性パッチと、
前記トップ導電性パッチと反対の位置で前記底面に配置されるボトム導電性パッチと、
前記トップ導電性パッチへ又はそれから無線周波数(RF)信号を運ぶよう構成される1つ以上のフィード回路と
を有し、
前記トップ導電性パッチは、該トップ導電性パッチが前記1つ以上のフィード回路へ結合される2つ以上の結合ポイントを有し、該2つ以上の結合ポイントは、前記第1セクションに位置している第1結合ポイントと、前記第2セクションに位置している第2結合ポイントとを有し、それにより、前記RF信号は、前記第1結合ポイントで第1位相を、及び前記第2結合ポイントで第2位相を有し、
第1スロットが、前記第1結合ポイントと前記第2結合ポイントとの間
にあるよう前記トップ導電性パッチ
の一辺から前記トップ導電性パッチの真ん中に向かって延在
し、
前記アンテナ装置は、
前記RF信号が第3結合ポイントで第3位相を有するように前記第1セクションに位置している前記第3結合ポイントと、
前記RF信号が第4結合ポイントで第4位相を有するように前記第2セクションに位置している前記第4結合ポイントと、
前記第3結合ポイントと前記第4結合ポイントとの間にあるようかつ前記第1スロットと整列されるよう前記トップ導電性パッチの前記一辺とは反対の辺から前記トップ導電性パッチの前記真ん中に向かって延在する第2スロットと
を更に有する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1スロットに配置され、該第1スロットの電気長を変化させるよう構成される第1可制御キャパシタを更に有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1スロットは、開放端及び閉塞端を有し、
前記第1可制御キャパシタは、前記第1スロットの前記開放端から前記閉塞端の間に配置される、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2位相は、前記第1位相に対して180度位相回転されている、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1位相及び前記第3位相は同じ位相を有し、前記第2位相及び前記第4位相は同じ位相を有し、あるいは、
前記第1位相、前記第2位相、前記第3位相、及び前記第4位相は異なる位相を有する、
請求項
1乃至4のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2スロットに配置され、該第2スロットの電気長を変化させるよう構成される第2可制御キャパシタを更に有する、
請求項
1乃至5のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2スロットは、開放端及び閉塞端を有し、
前記第2可制御キャパシタは、前記第2スロットの前記開放端から前記閉塞端の間に配置される、
請求項
6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1スロットの前記開放端及び前記第2スロットの前記開放端は、前記トップ導電性パッチの対辺に配置される、
請求項
7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1スロット及び前記第2スロットは、前記第1セクション及び前記第2セクションを互いに少なくとも部分的に境界を画定する、
請求項
1乃至8のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1結合ポイント、前記第2結合ポイント、前記第3結合ポイント、及び前記第4結合ポイントは、前記トップ導電性パッチに対称的に配置される、
請求項
1乃至
9のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
各結合ポイントで前記RF信号は同じ振幅を有する、
請求項1乃至
10のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記RF信号を運ぶよう構成される単一フィード回路と、
前記単一フィード回路へ結合され、前記RF信号を各結合ポイントに分けるよう構成される電力分配器と、
各結合ポイントのための位相シフタと
を有し、
各位相シフタは前記電力分配器へ結合され、各自の結合ポイントへ供給される前記RF信号の位相を制御するよう構成される、
請求項1乃至
11のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記第1位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第1フィード回路と、
前記第2位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第2フィード回路と、
前記第3位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第3フィード回路と、
前記第4位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第4フィード回路と
のうちの少なくとも1つを有する、請求項
1乃至
10のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
無線通信システム用の通信デバイスであって、
請求項1乃至
13のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置を有する通信デバイス。
【請求項15】
筐体と、
ガラス層と、
前記筐体と前記ガラス層との間に配置される誘電体層と
を有し、
前記アンテナ装置は、前記筐体と前記誘電体層との間に配置される、
請求項
14に記載の通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信デバイス用のアンテナ装置に関する。本発明は更に、そのようなアンテナ装置を有する通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ユーザ装置(UE)などのモバイル機器のアンテナは、損失の多い困難な環境に置かれながら、効率的な放射を提供しなければならない。これは、小型アンテナの究極の効率限界に近づく実用的なアンテナ構造を必要とする。最適なアンテナ形状を見つけることは、電磁シミュレーションの高い計算負荷、及びアンテナ形状とその電気的特性と間の複雑な関係により、非常に困難で骨の折れる作業になる場合がある。従って、設計者が最適解を見つけられる保証はない。
【0003】
理論的及び数値的な電磁気学の研究コミュニティは、数学的に最適な解を見つけることに重点を置いている。研究コミュニティは、帯域幅及び効率の観点から、電気的に小さいアンテナの性能の上限を定義する有名なチュー限界など、アンテナの基本的な制限を導き出した。研究コミュニティはまた、可能な限り最良の放射特性をもたらし得るアンテナの最終的に最良の電流又は電界分布を見つけるための比較的簡単な方法を確立した。しかし、このような最適な電流分布を実際のアンテナ設計に組み込むことは困難である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、従来の解決法の欠点及び課題を軽減又は解決する解決法を提供することである。
【0005】
上記の及び更なる目的は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の更なる有利な実施形態は、従属請求項で見つけられる。
【0006】
本発明の第1態様に従って、上記の及び他の目的は、通信デバイス用のアンテナ装置であって、
上面及び底面を有する基板と、
前記上面に配置され、第1セクション及び該第1セクションに隣接している第2セクションを有するトップ導電性パッチと、
前記トップ導電性パッチと反対の位置で前記底面に配置されるボトム導電性パッチと、
前記トップ導電性パッチへ又はそれから無線周波数,RF,信号を運ぶよう構成される1つ以上のフィード回路と
を有し、
前記トップ導電性パッチは、該トップ導電性パッチが前記1つ以上のフィード回路へ結合される2つ以上の結合ポイントを有し、該2つ以上の結合ポイントは、前記第1セクションに位置している第1結合ポイントと、前記第2セクションに位置している第2結合ポイントとを有し、それにより、前記RF信号は、前記第1結合ポイントで第1位相を、及び前記第2結合ポイントで第2位相を有し、
第1スロットが、前記第1結合ポイントと前記第2結合ポイントとの間で前記トップ導電性パッチにおいて延在する、
アンテナ装置により達成される。
【0007】
トップ導電性パッチは、RF信号を捕捉又は放射するアンテナとして動作可能であり、一般に、パッチアンテナとして当該技術で知られている設計のものであってよい。トップ導電性パッチは、従って、ここではアンテナパッチとも呼ばれ得る。ボトム導電性パッチは接地面として動作可能であり、ここでは接地パッチとも呼ばれ得る。
【0008】
結合ポイントは、トップ導電性パッチの面積と比較して小さい空間的広がりを有する点状領域に対応する、とここでは理解され得る。
【0009】
第1態様に係るアンテナ装置の利点は、結合ポイントの形態での複数のフィードポイントが、ただ1つの結合ポイントしか有さない単フィードアンテナと比較して、アンテナ構造内の電流分布をより良く制御することを可能にすることである。電流分布のより良い制御は、高い放射効率、望ましい指向若しくは偏光特性、及び/又は望ましい入力インピーダンスを達成することを可能にする。
【0010】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、アンテナ装置は、
前記第1スロットに配置され、該第1スロットの電気長を変化させるよう構成される第1可制御キャパシタを更に有する。
【0011】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、制御可能なキャパシタがアンテナ上の電流分布を制御することを可能にし、アンテナが固定されている場合と比較して更に優れていることである。電流分布のより良い制御は、例えばユーザの手がアンテナの近くにある場合など、様々な使用シナリオで、より広い周波数帯域にわたって高い放射効率、良好なマッチング、及び起こり得る他の放射特性を維持することを容易にする。
【0012】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第1スロットは、開放端及び閉塞端を有し、前記第1可制御キャパシタは、前記第1スロットの開放端から閉塞端の間に配置される。第1可制御キャパシタは更に、第1スロットの開放端又は閉塞端に配置されてもよい。
【0013】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、潜在的に高い電界がスロット/ギャップにわたって形成され、その結果、電流に対する制御可能なキャパシタの効果が増大することである。スロットは、潜在的に、制御可能なキャパシタによる電流の制御性を向上させる。
【0014】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第2位相は、前記第1位相(P1)に対して180度位相回転されている。
【0015】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、異なる結合ポイントのフィード間の180度位相オフセットが、一般的に、高い効率及び良好なインピーダンスマッチングをもたらすことである。更に、180度の位相差は、いくつかの異なる受動構造で簡単に実現できる。
【0016】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、アンテナ装置は、
前記RF信号が第3結合ポイントで第3位相を有するように前記第1セクションに位置している前記第3結合ポイントと、
前記RF信号が第4結合ポイントで第4位相を有するように前記第2セクションに位置している前記第4結合ポイントと、
前記トップ導電性パッチにおいて延在し、前記第3結合ポイントと前記第4結合ポイントとの間に配置される第2スロットと
を更に有する。
【0017】
この実施形態係るアンテナ装置の利点は、アンテナの制御性が結合ポイント/フィードの数の増加とともに改善することである。結合ポイントが2つである場合と比較して、4つの結合ポイントは、潜在的に、より良い電気的アンテナ性能を提供する。
【0018】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、
前記第1位相及び前記第3位相は同じ位相を有し、前記第2位相及び前記第4位相は同じ位相を有し、あるいは、
前記第1位相、前記第2位相、前記第3位相、及び前記第4位相は異なる位相を有する。
【0019】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、固定フィード位相により、フィード位相が可変である実現よりも簡単なフィード構造がもたらされることである。比較的に優れた性能が、固定フィード位相を用いて、比較的に広い帯域にわたってさえ通常は取得され得る。このようにして、制御可能なRF位相シフタは必要とされず、フィード構造はより簡単である。
【0020】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、アンテナ装置は、
前記第2スロットに配置され、該第2スロットの電気長を変化させるよう構成される第2可制御キャパシタを更に有する。
【0021】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、電流の制御性がアンテナでの制御可能なキャパシタの数とともに改善することである。より良い制御性は、より広い帯域及びより幅広い使用ケースにわたって良好なマッチング、高い効率、及び他の性能パラメータを保つことを可能にする。更に、制御可能なキャパシタの数が増えると、潜在的に、構造上の電流部分布がより一様になる。より一様な電流分布は、結果として、導電損失の低下をもたらす。
【0022】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第2スロットは、開放端及び閉塞端を有し、前記第2可制御キャパシタは、前記第2スロットの開放端から閉塞端の間に配置される。第2可制御キャパシタは更に、第2スロットの開放端又は閉塞端に配置されてもよい。
【0023】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、スロットにわたる電界が、特にスロットの開放端の近くでかつスロットの閉鎖端から遠く離れて、典型的に大きいことである。制御可能なキャパシタの電界が大きいほど、電流分布に対するその潜在的な影響は大きくなる。従って、制御可能なキャパシタを備えた構造の制御性は、スロットを導入し、それを挟んで制御可能なキャパシタを配置することによって、改善可能である。
【0024】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第1スロットの開放端及び前記第2スロットの開放端は、トップ導電性パッチの対辺に配置される。
【0025】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、対称なレイアウトを有するこの種の構造が極めて一様な電流分布及び更に良好な電流制御性をもたらし得ることである。一様な電流分布は、潜在的に、導電損失の低下をもたらす。
【0026】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第1スロット及び前記第2スロットは、反対の方向に延在し、互いに整列される。
【0027】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、このような対称な配置が対称なフィードポイントインピーダンス及びフィード信号位相をもたらすことである。これは、潜在的に、フィードネットワークを簡素化し、固定された180度位相シフトされたフィード信号を使用するのを容易にする。
【0028】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第1スロット及び前記第2スロットは、前記第1セクション及び前記第2セクションを互いに少なくとも部分的に境界を画定する。
【0029】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、前記第1結合ポイント、前記第2結合ポイント、前記第3結合ポイント、及び前記第4結合ポイントは、前記トップ導電性パッチに対称的に配置される。
【0030】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、このような対称な配置が対称なフィードポイントインピーダンス及びフィード信号位相をもたらすことである。これは、潜在的に、フィードネットワークを簡素化し、固定された180度位相シフトされたフィード信号を使用するのを容易にする。
【0031】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、各結合ポイントで前記RF信号は同じ振幅を有する。
【0032】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、フィードネットワークが、フィード信号振幅が任意又は制御可能であるべき場合と比べて、潜在的に簡単であることである。
【0033】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、アンテナ装置は、
前記RF信号を運ぶよう構成される単一フィード回路と、
前記単一フィード回路へ結合され、前記RF信号を各結合ポイントに分けるよう構成される電力分配器と、
各結合ポイントのための位相シフタと
を更に有し、各位相シフタは前記電力分配器へ結合され、各自の結合ポイントへ供給される前記RF信号の位相を制御するよう構成される。
【0034】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、可変位相シフタがアンテナ構造における電流分布の優れた制御を提供することである。これは、幅広い使用ケースにわたってかつ広い帯域にわたって良好な性能を達成することを可能にする。他方で、集積回路技術により実現された可変位相シフタは、非常に安価であり、小さく、アンテナと一体化するのが容易である。留意すべきは、電力分配器もマルチチャネル位相シフタチップ内に実現され得る点である。マルチチャネル位相シフタチップを使用すると、単一のチップがアンテナ構造全体に給電することができる。
【0035】
第1態様に係るアンテナ装置の実施形態において、アンテナ装置は、
前記第1位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第1フィード回路と、
前記第2位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第2フィード回路と、
前記第3位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第3フィード回路と、
前記第4位相で前記RF信号を運ぶよう構成される第4フィード回路と
のうちの少なくとも1つを更に有する。
【0036】
この実施形態に係るアンテナ装置の利点は、電力分配器及び位相シフタが必要とされないことである。
【0037】
本発明の第2態様に従って、上記の及び他の目的は、無線通信システム用の通信デバイスであって、第1態様に係るアンテナ装置の上記の実施形態のいずれか1つに係るアンテナ装置を有する通信デバイスにより達成される。
【0038】
第2態様に係る通信デバイスの実施形態において、通信デバイスは、
筐体と、
ガラス層と、
前記筐体と前記ガラス層との間に配置される誘電体層と
を有し、
前記アンテナ装置が前記筐体と前記誘電体層との間に配置される。
【0039】
本発明の実施形態の更なる応用及び利点は、以下の詳細な説明から明らかである。
【0040】
添付の図面は、本発明の様々な実施形態を明らかにし、そして説明するよう意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を示す。
【
図1b】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を示す。
【
図3a】本発明のトップ導電性パッチの種々の例示的な形状を示す。
【
図3b】本発明のトップ導電性パッチの種々の例示的な形状を示す。
【
図3c】本発明のトップ導電性パッチの種々の例示的な形状を示す。
【
図3d】本発明のトップ導電性パッチの種々の例示的な形状を示す。
【
図3e】本発明のトップ導電性パッチの種々の例示的な形状を示す。
【
図4a】アンテナ装置の種々の例示的な形状を示す。
【
図4b】アンテナ装置の種々の例示的な形状を示す。
【
図4c】アンテナ装置の種々の例示的な形状を示す。
【
図4d】アンテナ装置の種々の例示的な形状を示す。
【
図4e】アンテナ装置の種々の例示的な形状を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係るアンテナ装置の単フィード配置を示す。
【
図6】本発明の実施形態に係るアンテナ装置の複数フィード配置を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る通信デバイスに含まれるアンテナ装置の側面図を示す。
【
図8】本発明の実施形態に係る通信デバイスに含まれるアンテナ装置の上面図を示す。
【
図9】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を有する通信デバイスを示す。
【
図10】無線通信システムにおいて通信するよう構成される通信デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
アンテナの最適な電流又は電界分布は、理論上、数値最適化により決定可能である。しかし、実際のアンテナ設計に最適な電流分布を組み込むことは困難である。計算されたアンテナ構造は、最新の無線デバイス内のアンテナ構造の複雑なモデルとはかけ離れた単純な形状であることがよくある。主な課題は、如何なる実際の励起要素も最適な分布を容易に変更するので、求められた電流分布が実際には励起するのが難しいことである。
【0043】
最適な電流分布を得るための従来のアンテナソリューションは、開口結合を通じて又は単一アンテナによって励起される寄生金属ピクセル層、共同給電アンテナ素子、マルチフィードパッチアンテナ、差動信号で給電される2つの分離パッチ、単一フィード又は2つの別個のフィードを備えたピクセル状/格子状アンテナを含む。
【0044】
従来のソリューションは、例えば、アンテナの非最適なフィード、複雑な励起が使用されていること、及び比較的厚いアンテナが必要であること、などの問題を抱えている。従って、従来のソリューションのいずれも、制御された体系的な方法でアンテナに最適な電流分布を提供することに成功していない。
【0045】
そのため、本発明の目的は、上述の欠点に対処し、アンテナ装置における電流分布を改善することである。改善された電流分布は、制御された体系的な方法で所望の電流分布がアンテナにおいて実現されることを可能にする本発明に係るアンテナ装置によって達成される。
【0046】
図1a~bは、本発明の実施形態に係る通信デバイス200用のアンテナ装置100の実施形態を示す。アンテナ装置100は、トップ導電性パッチ102及びボトム導電性パッチ160が配置されている基板150を有する。アンテナ装置100は、トップ導電性パッチ102へ又はそれから無線周波数(RF)信号を運ぶよう構成される1つ以上のフィード回路142a、142b、142c、・・・、142d(
図5~6に図示)を更に有する。
【0047】
図1aを参照して、基板150は上面152及び底面154を備えている。トップ導電性パッチ102は上面152に配置され、ボトム導電性パッチ160は、トップ導電性パッチ102と反対の位置で底面154に配置される。トップ導電性パッチ102は、RF信号を吸収又は放射するアンテナとして動作するよう構成可能であり、一般的に、パッチアンテナとして当該技術で知られている設計のものであってよい。トップ導電性パッチ102は、従って、ここでは、アンテナパッチとも呼ばれ得る。ボトム導電性パッチ160は、接地面として動作するよう構成可能であり、ここでは接地パッチとも呼ばれ得る。
【0048】
トップ導電性パッチ102は、
図1bに示されるように、第1セクション106及び第1セクション106に隣接する第2セクション110を有する。トップ導電性パッチ102は、トップ導電性パッチ102が1つ以上のフィード回路142a、142b、142c、・・・、142dへ結合される2つ以上の結合ポイントを更に有する。結合ポイントは、トップ導電性パッチ102の面積と比較して小さい空間的広がりを持った点状領域に対応する、とここでは理解され得る。結合ポイントの面積は、例えば、トップ導電性パッチ102の面積の10から1パーセントに満たなくてもよい。2つ以上の結合ポイントは更に、能動又は受動ポートであってよい。能動ポートは、トランシーバから給電され得、受動ポートは、インピーダンス、例えば、キャパシタ、インダクタ、開回路、短絡回路、伝送線路区間を搭載し得る。インピーダンス負荷は、集中又は分散コンポーネントで、例えば、印刷回路基板(PCB)にモノリシックに集積されたインダクタ若しくはキャパシタにより又は集中要素により、つまり、金属層を適切にパターニングすることによって、又は伝送線路区間をパターニングすることによって、実現可能である。
【0049】
図1a~bに示される実施形態では、トップ導電性パッチ102は2つの結合ポイント、つまり、第1セクション106に位置している第1結合ポイント104、及び第2セクション110に位置している第2結合ポイント108を有する。トップ導電性パッチ102は、トップ導電性パッチ102への又はそれからのRF信号が第1結合ポイント104では第1位相P1を、及び第2結合ポイント108では第2位相P2を有するように、第1結合ポイント104及び第2結合ポイント108で1つ以上のフィード回路142a、142b、142c、・・・、142dへ結合される。第1結合ポイント104及び第2結合ポイント108でのRF信号は、夫々、振幅は同じだが、位相が異なり得る。よって、第2位相P2は第1位相P1とは異なってよい。実施形態において、第2位相P2は、第1位相P1に対して180度位相回転される。
【0050】
トップ導電性パッチ102は、
図1bに示されるように、第1結合ポイント104と第2結合ポイント108との間でトップ導電性パッチ102に延在する第1スロット112を更に有する。第1結合ポイント104及び第2結合ポイント108は、従って、第1スロットの両側に位置し得る。第1スロット112は更に、第1セクション106と第2セクション110との間の境界上に延在して、第1セクション106を第2セクション110から少なくとも部分的に画定するよう配置されてもよい。
【0051】
第1可制御キャパシタ114が第1スロット112に配置され、第1スロット112の電気長を変化させるよう構成されてもよい。第1可制御キャパシタ114は、従って、第1スロット112の電気長を、ひいてはアンテナ装置100の共振周波数をチューニングし得る。制御可能なキャパシタは、例えば、バラクタダイオード、強誘電体バラクタ、又は集積回路若しくはMEMS(微小電気機械システム)技術で実現される切り替え可能なキャパシタバンクであることができる。バラクタダイオード及び強誘電体バラクタはアナログデバイスであり、それらのキャパシタンスはDC(直流)バイアス電圧又は電流によって制御される。それらは通常、バイアス回路をRF回路から分離するようDCブロックキャパシタ及びRFチョークインダクタを使用してアンテナ回路に接続される。キャパシタバンクは通常デジタルコンポーネントである。それらはRF信号及びデジタル制御信号のための別々のポートを備えている。デジタル制御信号は、コンポーネントのキャパシタンスを利用可能な個別のキャパシタンス状態の組から選択するために使用される。キャパシタンスはアンテナ構造の電流分布に影響を与え、電流分布はその後、入力インピーダンス、放射効率、放射パターン、及び偏光を含むアンテナの全ての電気的特性を決定する。従って、キャパシタンスを変化させること/変更することによって、アンテナの特性は制御可能である。
【0052】
図1bを参照して、第1スロット112は開放端132及び閉塞端132’を備えてよく、第1可制御キャパシタ114は第1スロット112の開放端132から閉塞端132’の間に配置されてよい。第1可制御キャパシタ114は、端部132、132’を含む第1スロット112に沿ってどこでも配置されてよい。通常、スロットにわたる電界は、その開放端で最も高い。その結果、キャパシタにかかる電圧が大きいほど、それが電流分布に影響を及ぼす可能性は高くなる。潜在的に、最大のチューニング効果は、スロットの開放端にキャパシタを置くことによって達成される。よって、第1可制御キャパシタ114は、実施形態において、第1スロット112の開放端132又は閉塞端132’に配置されてよい。
図1に示される実施形態では、第1可制御キャパシタ114は、第1スロット112の開放端132に配置されている。
【0053】
図2は、本発明の実施形態に係る通信デバイス200用のアンテナ装置100の更なる実施形態を示す。
図2に示される実施形態では、アンテナ装置100はトップ導電性パッチ102及び4つの結合ポイントを有する。
図1bを参照して説明された第1及び第2結合ポイント104、108に加えて、第3結合ポイント116及び第4結合ポイント118がある。第3結合ポイント116は、RF信号が第3結合ポイント116で第3位相P3を有するように、第1セクション106に位置し、一方、第4結合ポイント118は、RF信号が第4結合ポイント118で第4位相P4を有するように、第2セクション110に位置している。各結合ポイント104、108、116、118でRF信号は同じ振幅を有してよい。
【0054】
実施形態において、第1位相P1及び第3位相P3は同じ位相を有し、第2位相P2及び第4位相P4は同じ位相を有する。かような実施形態では、第2位相P2及び第4位相P4は、第1位相P1及び第3位相P3に対して180度位相回転されてよい。しかし、第1位相P1、第2位相P2、第3位相P3、及び第4位相P4は、実施形態において代わりに、異なる位相を有してもよい。点どうしの180度の位相差は通常、特に、構造が対称である場合に、良好な放射特性及びインピーダンスマッチングをもたらす。アンテナが非対称である場合、又はそれが非対称な環境に、例えば、移動体電話機のサイズに、置かれる場合には、180度以外のオフセットフィード信号の方が優れた性能をもたらすことがある。
【0055】
図2を参照して、第1結合ポイント104、第2結合ポイント108、第3結合ポイント116、及び第4結合ポイント118は、トップ導電性パッチ102に対称に配置されてもよい。結合ポイントが対称に配置されることは、結合ポイントがトップ導電性パッチ102で対称なパターンを形成することとして理解され得る。しかし、第1結合ポイント104、第2結合ポイント108、第3結合ポイント116、及び第4結合ポイント118の他の配置も、本発明の範囲から逸脱せずに可能である。従って、非対称な設計又はパターンも可能である。
【0056】
4つの結合ポイント104、108、116、118を備えたアンテナ装置100は、トップ導電性パッチ102に延在しかつ第3結合ポイント116と第4結合ポイント118との間に配置されている、第1スロット112とは異なる第2スロット120を更に有する。第1スロット112の場合と同様に、第2可制御キャパシタ122が第2スロット120に配置され、第2スロット120の電気長を変化させるよう構成されてよい。実施形態において、第2スロット120は、開放端134及び閉塞端134’を含む、第2スロット120の開放端134から閉塞端134’の間に配置されてよい。
図2に示される実施形態では、第2可制御キャパシタ122は第2スロット120の開放端134に配置されている。
【0057】
図2を参照して、第1スロット112の開放端132及び第2スロット120の開放端134は、トップ導電性パッチ102の対辺に配置されてよい。更に、第1スロット112の開放端132及び第2スロット120は、反対の方向に延在してよく、かつ、互いに整列されてよい。第1スロット112は、例えば、トップ導電性パッチ102の一辺からトップ導電性パッチ102の真ん中に向かって延在してよく、一方、第2スロット120は、トップ導電性パッチ102の反対の辺からトップ導電性パッチ102の真ん中に向かってかつ第1スロット112の方に延在する。このようにして、第1スロット112及び第2スロット120は、第1セクション106及び第2セクション110を互いに少なくとも部分的に境界を画定してよく、つまり、トップ導電性パッチ102を第1セクション106及び第2セクション110に少なくとも部分的に分割する。
【0058】
図3a~3eは、アンテナ装置100のトップ導電性パッチ102の種々の非限定的な例示的形状を示す。
図3a~3eに示されるように、トップ導電性パッチ102は、
図1及び
図2に開示されている長方形形状に加えて、多種多様な形状を有し得る。異なるように成形されたパッチは異なる電流分布をもたらし、更には異なるアンテナ特性ももたらすことがよく知られている。最良の形状は、望ましいアンテナ特性、環境、及び使用ケースに依存する。しばしば、アンテナは、計画された応用に適合しかつモバイル機器などのデバイスの設計に従うように成形される必要がある。
【0059】
図4a~4eは、アンテナ装置100の第1スロット112及び第2スロット120の種々の非限定的な例示的形状を示す。
図4a~4eに示されるように、第1スロット112及び第2スロット120は多種多様な形状を有し得る。更に、第1スロット112及び第2スロット120の形状は同じであっても異なってもよい。
図4a~4e内の矢印は、スロット112;120の開放端132;134が位置し得る場所を示す。パッチ内のスロットはアンテナでの電流分布に影響を与える。スロットは、アンテナ特性を向上させるよう、例えば、効率を高めたり又は共振を導入してより広いインピーダンス帯域を達成したりするよう、電流分布を変更するために使用され得る。スロットはまた、制御性を高めるために制御可能なチューニングキャパシタに対してアンテナを敏感するためにも使用され得る。1つのオプションは、アンテナのユーザ効果又はユーザ、つまり、本アンテナ装置100を有するモバイル機器を把持又は操作する人による比吸収率(SAR)を低減させるためにスロットを使用することである。
【0060】
図5は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置100を示し、アンテナ装置100は単一フィード回路142を有する。単一フィード回路142は電力分配器144へ接続され、その出力ポイントは、続いて、RF信号とのアンテナ装置100の結合ポイントへ接続される。
図5に示される実施形態では、アンテナ装置100は4つの結合ポイント104、108、116、118を有する。よって、単一フィード回路142は、電力分割器144を通じて4つ全ての結合ポイント104、108、116、118へRF信号を運ぶよう構成される。制御可能なキャパシタ114及び122などの固定された又は制御可能なりアクティブ負荷が、例えば、実現に応じてスロットの開放端で、受動アンテナポートへ接続される。
【0061】
アンテナ装置100は、単一フィード回路142へ結合され、RF信号を各結合ポイントへ分けるよう構成された電力分配器144を更に有する。
図5に示される実施形態では、これは、電力分配器144が単一フィード回路142からのRF信号を第1結合ポイント104、第2結合ポイント108、第3結合ポイント116、及び第4結合ポイント118の夫々へ分けることを意味する。各結合ポイント104、108、116、118へ供給されるRF信号が同じ振幅を有する場合に、4つのRF信号は夫々、
図5に示されるように、単一フィード回路142によって供給されるRF信号よりも6dB小さい振幅を有し得る。
【0062】
アンテナ装置100は、各結合ポイント104、108、116、118のための位相シフタ146a、146b、146c、146dを更に有する。各位相シフタ146a、146b、146c、146dは、電力分配器144へ結合され、その各々の結合ポイント104、108、116、118へ供給されるRF信号の位相を制御するよう構成される。よって、各位相シフタ146a、146b、146c、146dは、電力分配器144からRF信号を受信し、特定の位相を有するRF信号をその各々の結合ポイント104、108、116、118へ供給する。
【0063】
図5に示される実施形態では、第1結合ポイント104及び第3結合ポイント116に夫々関連した位相シフタ146a、146bは、第1位相P1を供給するよう構成されてよく、一方、第2結合ポイント108及び第4結合ポイント118に夫々関連した位相シフタ146c、146dは、第1位相P1とは異なる第2位相P2を供給するよう構成されてよい。第2位相P2は、例えば、第1位相P1に対して180度位相回転されてよい。従って、第1位相P1がゼロ位相である場合に、第2位相は位相回転されて180度である。
【0064】
図6は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置100を示し、アンテナ装置100は代わりに、結合ポイント104、108、116、118ごとにフィード回路142a、142b、142c、142dを有する。アンテナ装置100は、従って、第1結合ポイント104へ結合され、第1位相P1でRF信号を運ぶよう構成される第1フィード回路142aと、第2結合ポイント108へ結合され、第2位相P2でRF信号を運ぶよう構成される第2フィード回路142bと、第3結合ポイント116へ結合され、第3位相P3でRF信号を運ぶよう構成される第3フィード回路142cと、第4結合ポイント118へ結合され、第4位相P4でRF信号を運ぶよう構成される第4フィード回路142dとを有してよい。各結合ポイント104、108、116、118はそれ自体のフィード回路142a、142b、142c、142dを備えているので、電力分配器又は別個の位相シフタはこの実施形態では不要である。代わりに、各フィード回路142a、142b、142c、142dが、特定の位相P1、P2、P3、P4を有するRF信号をその関連する結合ポイント104、108、116、118へ夫々供給することができる。
【0065】
上述されたように、第1位相P1及び第3位相P3は同じ位相を有してよく、第2位相P2及び第4位相P4は同じ位相を有してよく、あるいは、第1位相P1、第2位相P2、第3位相P3、及び第4位相P4は異なる位相を有してもよい。
【0066】
実施形態において、第1フィード回路142a及び第3フィード回路142cは、従って、第1位相P1を有するRF信号を第1結合ポイント104及び第3結合ポイント116へ夫々供給してよく、一方、第2フィード回路142b及び第4フィード回路142dは、第2位相P2を有するRF信号を第2結合ポイント108及び第4結合ポイント118へ夫々供給してよい。代替的に、第1フィード回路142a、第2フィード回路142b、第3フィード回路142c、第4フィード回路142dは、異なる位相P1、P2、P3、P4をそれらの各々の結合ポイント104、108、116、118へ供給してもよい。
【0067】
単一フィード回路142が使用される実施形態及び複数のフィード回路142a、142b、142c、142dが使用される実施形態の両方で、フィード回路は、ビア、容量性フィード、開口結合、及びマイクロストリップ線路フィードのうちの少なくとも1つを用いて実装されてよい。
【0068】
実施形態において、トップ導電性パッチ102は金属パッチであり、例えば、Teflonなどの低損失基板のような基板150に実装されてよい。トップ導電性パッチ102は更に、PCB上に実現されたプレナーパッチであってもよい。更に、トップ導電性パッチ102が金属パッチである代わりに、実施形態において、トップ導電性パッチ102は、そうでなければ金属構造の上部層の穴として実装されてもよい。このような構造は、前述の構造の陰性であり、つまり、非金属領域と金属領域とが入れ替わっている。このような陰性の又は相補的な構造は、アンテナで一般的に使用されている。
【0069】
図7及び
図8は、本発明の実施形態に係る無線通信システム400用の通信デバイス200を示す。通信デバイス200は、アンテナ装置100のここで記載される実施形態のいずれか1つに係るアンテナ装置100を有する。
図7は、通信デバイス200の断面側面図を示し、一方、
図8は、通信デバイス200の平面A(
図7に図示)の上面図を示す。
【0070】
図7を参照して、通信デバイス200は、筐体202、ガラス層204、及び筐体202とガラス層204との間に配置された誘電体層206を有し得る。通信デバイス200は、筐体202と誘電体層206との間に配置されたアンテナ装置100を更に有し得る。
【0071】
筐体202は、通信デバイス200の表されている基体202又は本体202であってもよく、
図7又は
図8に示されていない1つ以上のプロセッサ及びメモリデバイスを含む1つ以上のPCB構造並びに1つ以上のバッテリとを有してもよい。誘電体層206は、空気、又は例えば、セラミック、ガラス、ポリマー、液体、又はそのような物質の合成物のようなその他の適切な誘電媒質であってよい。更に、ガラス層204は、通信デバイス用の従来のガラスであってよく、通信デバイス200のディスプレイの部分であってよい。
【0072】
非限定的な例では、ガラス層204の厚さは0.55mmであってよく、誘電体層206の厚さは0.3mmであってよく、アンテナ装置100の厚さは0.5mmであってよく、筐体202の厚さは2.5mmであってよい。
【0073】
図8は、
図7に示される平面Aでの通信デバイス200の上面図を示し、筐体202におけるアンテナ装置100の1つの可能な位置を示す。しかし、アンテナ装置100の位置及びサイズは、アンテナ装置100が使用されている通信デバイス
200の設計及びタイプに応じて変化してもよい。非限定的な例では、アンテナ装置100のサイズは30mm×30mmであってよい。
【0074】
図9は、本発明の実施形態に係る通信デバイス200を示す。
図9に示される実施形態では、通信デバイス200は、モバイル機器の形をしたクライアントデバイス200として表されている。モバイル機器200は、少なくとも1つのプロセッ
サ(図9に図示せず)、少なくとも1つのディスプレイ212、及び少なくとも1つの通信手段(
図9に図示せず)を収容している。モバイル機器は、ディスプレイ212へ通信可能に接続されている、例えばキーボード216の形をした入力手段を更に有する。モバイル機器は、例えばスピーカ214の形をした出力手段を更に有する。モバイル機器は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置100を更に有する。
【0075】
図10は、無線通信システム400、例えば、ロング・ターム・エボリューション(LTE)又はニュー・ラジオ(NR)システムにおける、ネットワークアクセスノード300(例えば、基地局)と、例えば、
図9に示されるモバイル機器200のような、通信デバイス200との間の通信を示す。そのようなシステムで、通信は、ネットワークアクセスノード300と通信デバイス200との間でダウンリンク(DL)で及びアップリンク(UL)で実行され得る。また、いわゆるサイドリン
ク(SL)通信が通信デバイス200と通信システム400内の他の通信デバイスとの間で行われ得るが、ここでは示されていない。
【0076】
アンテナ装置100は、他の困難な環境でアンテナを実現するために更に使用されてもよい。例えば、ウェアラブル及び埋め込み型デバイスでのアンテナは、損失が大きくなる傾向があり、本発明に係るアンテナ装置100は、そのようなデバイスで効率を向上させるのに役立ち得る。
【0077】
更に、非常に薄いコンフォーマルアンテナが多くのアプリケーションで必要とされている。例えば、自動車のアンテナは視覚的に見えないことが好ましく、スクリーン又は他の表面上で実現されることが更に好ましい。コンフォーマルアンテナは、飛行機、列車、船舶でも必要とされる。本発明に係るアンテナ装置100は、非常に薄いコンフォーマルアンテナの効率を高めるのに役立つことができる。
【0078】
衛星受信に使用されるパラボラアンテナは、見た目に問題があると見なされることがよくある。衛星アンテナは薄く、目立たないように建物の壁に設置するのが理想的である。しかし、そのような薄い平面アンテナは、従来の方法で実現した場合、効率が低いという欠点がある。従って、本発明に係るアンテナ装置100は、そのようなアンテナにおいても効率を高めるのに役立つことができる。
【0079】
放射効率を最大にする結合ポイント電流の分析的解法における最初のステップは、ポート電流の線形結合で遠方場パターンを構成することである。遠方場は
【数1】
であり、ここで、
【数2】
は、ポートkでの電流i
kを遠方場ベクトルにマッピングする。全てのポートについて電流遠方場基底Kは、N個の方程式の定式化を必要とする:
【数3】
ここで、
(外1)
は、ポートkのみが励起され、残りのポートは終端される場合の遠方場である。
【0080】
電流要素i
k,jは、ポートkが励起される場合のポートjでの誘導電流である。この場合に、ポート固有の遠方場は、夫々の角度及び周波数について行列の分解として定義され得る:
【数4】
ここで、E及びKは、要素
(外2)
を夫々含む長さNの列ベクトルである。Iは、要素ik,jを含むN×N行列である。個々のポート励起についての遠方場及び電流が知られている場合に、Kを計算するのは簡単である。
【0081】
電流遠方場基底Kが知られている場合に、任意の電流励起ベクトルに対応する放射効率を計算することができる:
【数5】
なお、i
kは、ポートkでの総電流である。
【0082】
この場合に、遠方場へ放射される時間平均された電力は、
【数6】
と表され得る。ここで、Δθ=θ
p+1-θ
p、Δφ=φ
q+1-φ
q、かつ
【数7】
であり、
(外3)
は、要素
【数8】
を含む列ベクトルである。よって、行列のサイズは2PQ×Nである。
【0083】
アンテナ構造に受け入れられる電力は、ポート電圧及び電流から計算される:
【数9】
ここで、Zは、Nポートアンテナのインピーダンス行列である。しかし、電力の実部のみが放射電力に寄与する。つまり:
【数10】
結果として、放射効率は、
【数11】
として、2つの電力に関して記述され得る。
【0084】
計算された放射効率は、電流Iについての一般的な固有値問題として解くことができるレイリー商の一般式を有する。最大放射効率は、
【数12】
によって得られ、対応する固有ベクトルが最適な電流を与える。
【0085】
本発明の実施形態は、従来の解決法と比べて改善された性能を有する。本アンテナ装置の放射効率は約-6dBから-2dBであり得る、と結論づけられている。全体の効率も-6dB未満から-4dB超に増加する。全体の効率が増加する一方で、放射パターンの全体の形状は本アンテナ装置では同じままである。また、ビーム幅は本アンテナ装置の方が大きく、広報への放射は従来の解決法と比較して約5dBだけ減少する。
【0086】
更に、キャパシタンス値が変化するにつれて、アンテナの総有効反射係数はシフトされ得る。キャパシタンス値が0.847~2.96pFの間で変化する場合、瞬間帯域幅は100MHzであり、一方で、約-5.8dBを超える総合効率が3.3~4.2GHzの間で達成可能である。
【0087】
可変キャパシタンス(バリキャップとしても知られる)の非限定的な例示的な値は、用途に応じて、0.4~2.5pF又は1.0~5.0pFなど、0.4~5.0pFであってもよい。可変キャパシタンスのチューニング範囲は、例えば、1:5であってよい。
【0088】
本開示の通信デバイス200又はモバイル機器200は、スマートフォン、携帯電話機、コードレス電話機、セッション開始プロトコル(SIP)電話機、無線ローカルループ(WLL)局、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、無線通信機能を備えた手持ち式デバイス、ウェアラブルデバイス、モバイルカー若しくは車に設置された装置などの統合アクセスバックホールノード(IAB)、ドローン、デバイス・ツー・デバイス(D2D)デバイス、無線カメラ、移動局、アクセス端末、ユーザユニット、無線通信デバイス、無線ローカルアクセスネットワーク(WLAN)のステーション、無線対応タブレットコンピュータ、ラップトップ埋め込み型装置、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)ドングル、無線カスタマ構内設備(CPE)、及び/又はチップセットを含むが、これらに限られない。インターネット・オブ・シングス(IOT)シナリオでは、通信デバイス200は、他の無線デバイス及び/又はネットワーク設備との通信を実行するマシン又は他のデバイス又はチップセットを表してもよい。UEは、移動体電話機、携帯電話機、無線能力を備えたコンピュータタブレット又はラップトップとも呼ばれ得る。この文脈中のUEは、例えば、無線アクセスネットワークを介して、他の受信器又はサーバなどの他のエンティティと音声及び/又はデータを通信することができる、持ち運び可能な、ポケット収納可能な、手持ち式の、コンピュータ内蔵型の、又は車載型のモバイル機器であってもよい。UEは、IEEE802.11準拠の媒体アクセス制御(MAC)及び無線媒体(MW)への物理層(PHY)インターフェース任意のデバイスであるステーション(STA)であることができる。UEは3GPP関連のLTE及びLTE-Advancedでの、WiMAX及びその進化での、並びにNRなどの第5世代無線技術での通信のために構成されてもよい。
【0089】
更に、通信デバイス200の実施形態は、例えば、ソリューションを実行するための機能、手段、ユニット、要素などの形で必要な通信能力を備えることが、当業者によって理解される。他のそのような手段、ユニット、要素、及び機能の例は、ソリューションを実行するために適切に一緒に配置されているプロセッサ、メモリ、バッファ、制御ロジック、エンコーダ、デコーダ、レートマッチング装置、デレートマッチング装置、マッピングユニット、乗算器、決定ユニット、選択ユニット、スイッチ、インターリーバ、デインターリーバ、変調器、復調器、入力、出力、アンテナ、増幅器、受信ユニット、送信ユニット、DSP、MSD、TCMエンコーダ、TCMデコーダ、電源ユニット、給電装置、通信インターフェース、通信プロトコルなどである。
【0090】
特に、通信デバイス200のプロセッサは、例えば、中央演算処理装置(CPU)、プロセッシングユニット、プロセッシング回路、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、又は命令を解釈し実行し得る他の処理ロジックを有してもよい。よって、「プロセッサ」という表現は、例えば、上述されたもののいずれか、いくつか又は全てといった複数のプロセッシング回路を有するプロセッシング回路構成であってよい。プロセッシング回路構成は更に、データバッファリングを含むデータの入力、出力、及び処理のためのデータ処理機能と、呼び出し処理制御、ユーザインターフェース制御、などのようなデバイス制御機能とを実行してもよい。
【0091】
最後に、本発明は、上記の実施形態に制限されず、添付の独立請求項の範囲内の全ての実施形態にも関係があり、それを組み込む。