(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】気泡識別装置、気泡識別方法及び異物検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20240314BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240314BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20240314BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20240314BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G06T7/00 610
G06T7/60 300Z
G06T7/12
(21)【出願番号】P 2022571503
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047328
(87)【国際公開番号】W WO2022138643
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2020215149
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502220366
【氏名又は名称】シンテゴンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 軍
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-044688(JP,A)
【文献】特開2003-309844(JP,A)
【文献】特開2006-010612(JP,A)
【文献】特開2006-234515(JP,A)
【文献】特開2004-354100(JP,A)
【文献】特開2011-058970(JP,A)
【文献】特開2012-120799(JP,A)
【文献】特開2009-059002(JP,A)
【文献】特開2000-339478(JP,A)
【文献】特開昭63-076578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0173982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 1/00
G06T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像中のブロブに対して当該ブロブを横切る複数の参照ラインを設定する設定部と、
前記複数の参照ライン上の複数の輝度分布の内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて前記ブロブを気泡像として識別する識別部と、
を含み、
前記画像は、x方向及びy方向を有し、
前記設定部は、前記ブロブに対して、前記複数の参照ラインとして、交差関係にある複数の参照ライン列からなる参照ラインセットを設定し、
前記複数の参照ライン列には、前記y方向に平行な複数の参照ラインからなる第1参照ライン列と、前記x方向に平行な複数の参照ラインからなる第2参照ライン列と、が含まれ、
前記複数の参照ラインがそれぞれ注目参照ラインとされ、
前記複数の輝度分布がそれぞれ前記注目参照ライン上の注目輝度分布とされ、
前記識別部は、前記注目輝度分布に対してエッジ検出を実行し、
前記ブロブが外側部分及びそれに囲まれる内側部分からなる気泡像であり、且つ、当該ブロブに設定された前記注目参照ラインが前記外側部分を2回横断している場合に、前記注目輝度分布に対する前記エッジ検出により2つのエッジペアが検出され、
前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、
前記エッジペア条件は、前記注目輝度分布に前記2つのエッジペアが含まれる場合に満たされる条件である、
ことを特徴とする気泡識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡識別装置において、
前記設定部は、前記ブロブに外接する図形に基づいて前記ブロブを囲むROIを設定し、前記ROIの全体にわたって前記各参照ライン列を設定することにより前記ブロブに対して前記参照ラインセットを設定する、
ことを特徴とする気泡識別装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気泡識別装置において、
前記参照ラインセットは、更に、
前記x方向及び前記y方向に対して傾斜する複数の参照ラインからなる第3参照ライン列と、
前記x方向及び前記y方向に対して傾斜する複数の参照ラインからなり、前記第3参照ライン列に対して交差する第4参照ライン列と、
を含む、ことを特徴とする気泡識別装置。
【請求項4】
請求項1に記載の気泡識別装置において、
前記気泡判定条件にはエッジ間隔条件が含まれ、
前記エッジ間隔条件は、前記2つのエッジペアにより特定される2つのエッジ間隔についての条件である、
ことを特徴とする気泡識別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気泡識別装置において、
前記2つのエッジ間隔の差が所定範囲内にある場合に前記エッジ間隔条件が満たされる、
ことを特徴とする気泡識別装置。
【請求項6】
画像中のブロブに対して当該ブロブを横切る複数の参照ラインを設定する工程と、
前記複数の参照ライン上の複数の輝度分布の内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて前記ブロブを気泡像として識別する工程と、
を含み、
前記画像は、x方向及びy方向を有し、
前記
設定する工程では、前記ブロブに対して、前記複数の参照ラインとして、交差関係にある複数の参照ライン列からなる参照ラインセット
が設定
され、
前記複数の参照ライン列には、前記y方向に平行な複数の参照ラインからなる第1参照ライン列と、前記x方向に平行な複数の参照ラインからなる第2参照ライン列と、が含まれ、
前記複数の参照ラインがそれぞれ注目参照ラインとされ、
前記複数の輝度分布がそれぞれ前記注目参照ライン上の注目輝度分布とされ、
前記ブロブを気泡像として識別する工程では、前記注目輝度分布に対してエッジ検出が実行され、
前記ブロブが外側部分及びそれに囲まれる内側部分からなる気泡像であり、且つ、当該ブロブに設定された前記注目参照ラインが前記外側部分を2回横断している場合に、前記注目輝度分布に対する前記エッジ検出により2つのエッジペアが検出され、
前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、
前記エッジペア条件は、前記注目輝度分布に前記2つのエッジペアが含まれる場合に満たされる条件である、
ことを特徴とする気泡識別方法。
【請求項7】
検査対象物を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により取得された画像を処理するプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記画像に対して非浮遊ブロブを除外する前処理を適用し、
前記前処理後の画像中の浮遊ブロブに対して当該浮遊ブロブを横切る
複数の参照ライ
ンを設定し、
前記
複数の参照ライ
ン上の
複数の輝度分
布の内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて、前記浮遊ブロブを気泡像として識別し、
前記浮遊ブロブが前記気泡像として識別されなかった場合に前記浮遊ブロブを異物像として判定し、
前記画像は、x方向及びy方向を有し、
前記プロセッサは、前記浮遊ブロブに対して、前記複数の参照ラインとして、交差関係にある複数の参照ライン列からなる参照ラインセットを設定し、
前記複数の参照ライン列には、前記y方向に平行な複数の参照ラインからなる第1参照ライン列と、前記x方向に平行な複数の参照ラインからなる第2参照ライン列と、が含まれ、
前記参照ラインセットを構成する複数の参照ラインがそれぞれ注目参照ラインとされ、
前記輝度分布セットを構成する複数の輝度分布がそれぞれ前記注目参照ライン上の注目輝度分布とされ、
前記プロセッサは、前記注目輝度分布に対してエッジ検出を実行し、
前記浮遊ブロブが外側部分及びそれに囲まれる内側部分からなる気泡像であり、且つ、当該浮遊ブロブに設定された前記注目参照ラインが前記外側部分を2回横断している場合に、前記注目輝度分布に対する前記エッジ検出により2つのエッジペアが検出され、
前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、
前記エッジペア条件は、前記注目輝度分布に前記2つのエッジペアが含まれる場合に満たされる条件である、
ことを特徴とする異物検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気泡識別装置、気泡識別方法及び異物検出システムに関し、特に、液体中に浮遊している気泡を識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
異物検出システムは、検査対象物の中に含まれる異物を検出するシステムである。検査対象物が液体である場合、液体中に浮遊している異物が検出される。例えば、製薬工場において、個々の容器内に収容されている薬剤が異物検出システムを用いて検査される。容器として、シリンジ、バイアル、アンプル等が挙げられる。異物として、製造過程で薬剤に混入した金属片、樹脂片、ゴム片、繊維等が挙げられる。飲料検査、化学薬品検査等においても、異物検出システムが用いられる。
【0003】
典型的な異物検出システムは、検査対象物を撮影し、それにより得られた画像の解析により異物を検出するものである。異物の検出に際して、容器の傷や汚れが誤検出要因となる。これに関し、特許文献1には、対象画像を基準画像と比較して、非浮遊物と浮遊物とを区別する技術が開示されている。
【0004】
また、異物の検出に際して、液体中に浮遊する気泡が誤検出要因となる。これに関し、特許文献2には、気泡(正確には気泡像)の特徴量に基づいて、気泡と異物を区別する技術が開示されている。特許文献1及び特許文献2には、気泡像固有の輝度パターンを利用して気泡像を識別する技術は開示されておらず、特に、輝度パターン解析用の参照ラインを用いて気泡像を識別する技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-226228号公報
【文献】特開2004-354100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、検査対象物に含まれる気泡を簡便に且つ精度良く識別することにある。あるいは、本開示の目的は、検査対象物に含まれる異物の検出精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る気泡識別装置は、画像中のブロブに対して当該ブロブを横切る少なくとも1つ参照ラインを設定する設定部と、前記少なくとも1つの参照ライン上の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて前記ブロブを気泡像として識別する識別部と、を含み、前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、前記エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である、ことを特徴とする。
【0008】
本開示に係る気泡識別方法は、画像中のブロブに対して複数の参照ラインを設定する工程と、前記複数の参照ライン上の複数の輝度分布の内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて前記ブロブを気泡像として識別する工程と、を含み、前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、前記エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である、ことを特徴とする。
【0009】
本開示に係る異物検出システムは、検査対象物を撮影する撮影装置と、前記撮像装置により取得された画像を処理するプロセッサと、を含み、前記プロセッサは、前記画像に対して非浮遊ブロブを除外する前処理を適用し、前記前処理後の画像中の浮遊ブロブに対して参照ラインセットを設定し、前記参照ラインセット上の輝度分布セットの内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて、前記浮遊ブロブを気泡像として識別し、前記浮遊ブロブが前記気泡像として識別されなかった場合に前記浮遊ブロブを異物像として判定し、前記気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれ、前記エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る異物検出システムの構成例を示す図である。
【
図10】特殊な気泡像上でのエッジ検出を示す図である。
【
図11】気泡識別方法を含む異物判定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る気泡識別装置は、設定部、及び、識別部を有する。設定部は、画像中のブロブに対して当該ブロブを横切る少なくとも1つの参照ラインを設定する。識別部は、少なくとも1つの参照ライン上の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいてブロブを気泡像として識別する。気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれる。エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である。
【0013】
気泡像は、非一様性を有する又は構造をもった輝度パターンを有する。気泡像は外側部分及び内側部分に大別される。一般に、外側部分と内側部分との間には明確な輝度差が生じる。外側部分と背景との間にも明確な輝度差が生じる。一方、異物像は、一様性を有する又は構造を有しない輝度パターンを有する。一般に、異物像と背景との間には明確な輝度差が生じるが、異物像の中に明確な輝度差は生じない。
【0014】
上記構成は、気泡像の輝度パターンと異物像の輝度パターンの相違から、気泡像と異物像とを識別するものである。具体的には、ブロブ(識別対象像)に対してそれを横切る参照ラインが設定される。参照ラインが気泡像における外側部分及び内側部分を横断している場合、参照ライン上において2つのエッジペア(2つの輝度差ペア)が生じる。すなわち、参照ラインの一方端から他方端へエッジ検出を繰り返し実行した場合、最初に外側部分を横断する過程で第1のエッジペアが検出され、次に外側部分を横断する過程で第2のエッジペアが検出される。気泡判定条件にエッジペア条件を含めておけば、エッジペア条件が満たされた時点で、ブロブを気泡像として識別することが可能となる。一様性を有する異物像に参照ラインが設定された場合、参照ライン上においては2つのエッジしか検出されない。よって、気泡像と異物像とを区別することが可能である。
【0015】
気泡像の形態や向きが様々であることから、実施形態においては、ブロブに対して複数の参照ラインが設定される。これにより、小さな内側部分を有するブロブ、及び、部分的に欠損した外側部分を備えるブロブを、それぞれ気泡像として識別できる可能性を高められる。気泡像の識別精度を高めるために、気泡判定条件にエッジペア条件以外の条件を含めてもよい。対象画像中に含まれる個々のブロブに対して識別処理を適用すれば、対象画像それ全体に対して識別処理を適用する場合よりも演算量を削減できる。
【0016】
実施形態において、設定部は、ブロブに対して交差関係にある複数の参照ライン列からなる参照ラインセットを設定する。識別部は、参照ラインセット上の輝度分布セットの内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡識別条件を満たすことに基づいて、ブロブを気泡像として識別する。
【0017】
参照ラインセットを用いれば、様々な形態を有する気泡像を正確に識別することが可能となる。nを1としてもよい。誤認可能性がある場合、nを2以上の数値としてもよい。参照ライン列を構成する参照ラインの個数、参照ライン列におけるピッチ、等の諸条件を状況に応じて可変できるようにしてもよい。その構成によれば、識別精度の向上と演算量の削減を両立させることが可能となる。
【0018】
実施形態において、参照ラインセットは、第1方向に平行な複数の参照ラインからなる第1参照ライン列と、第1方向に交差する第2方向に平行な複数の参照ラインからなる第2参照ライン列と、を含む。気泡像において、部分的な欠損が生じる方位は様々であるが、交差関係にある2つの参照ライン列を用いれば、部分的な欠損を備える気泡像の識別精度を高められる。
【0019】
実施形態において、気泡判定条件には、エッジ判別条件が含まれる。エッジ判定条件は、コントラスト閾値条件を満たした輪郭の方向が、参照ライン方向を基準とする一定の角度範囲内に入る場合に(例えば、参照ライン方向に対して垂直に近い角度となる場合に)、当該輪郭をエッジと判定する条件である。このエッジ判定条件の適用により、繊維などの湾曲した形状を有する異物をエッジとして誤認してしまう可能性を低減できる。
【0020】
実施形態において、気泡判定条件にはエッジ間隔条件が含まれる。エッジ間隔条件は、2つのエッジペアにより特定される2つのエッジ間隔についての条件である。実施形態において、2つのエッジ間隔の差が所定範囲内にある場合にエッジ間隔条件が満たされる。気泡像において、第1のエッジ間隔つまり第1のエッジペアを構成する2つのエッジの間隔(距離)と、第2のエッジ間隔つまり第1のエッジペアを構成する2つのエッジの間隔(距離)の差は、小さいという傾向が認められる。上記構成はその傾向を利用して気泡像識別精度を高めるものである。なお、気泡識別装置が異物検出以外の用途で利用されてもよい。例えば、液体中の気泡の判定が必要な場合に気泡識別装置を用いてもよい。
【0021】
実施形態に係る気泡識別方法は、設定工程、及び、識別工程を有する。設定工程では、画像中のブロブに対して複数の参照ラインが設定される。識別工程では、複数の参照ライン上の複数の輝度分布の内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいてブロブを気泡像として識別する。気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれる。エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である。
【0022】
上記気泡識別方法は、情報処理装置上において実行され得る。その場合、気泡識別方法を実施するためのプログラムが、ネットワーク又は可搬型記憶媒体を介して、情報処理装置へインストールされる。ユーザーに対して対象画像を表示してもよい。その場合、対象画像上にブロブ単位で設定される複数の参照ラインを表示してもよい。その場合、ブロブ識別処理が適正に遂行されていることをユーザーにおいて確認することが可能となる。情報処理装置の概念には、コンピュータ、気泡識別装置、異物検出システム等が含まれる。情報処理装置は、プログラムを記憶する非一時的記憶媒体を有する。
【0023】
実施形態に係る異物検出システムは、検査対象物を撮影する撮影装置と、撮影装置により取得された画像を処理するプロセッサと、を含む。プロセッサは、画像に対して非浮遊ブロブを除外する前処理を適用し、前処理後の画像中の浮遊ブロブに対して参照ラインセットを設定し、参照ラインセット上の輝度分布セットの内でn(但しnは1以上の整数)個の輝度分布が気泡判定条件を満たすことに基づいて、浮遊ブロブを気泡像として識別し、浮遊ブロブが気泡像として識別されなかった場合に前記浮遊ブロブを異物像として判定する。気泡判定条件にはエッジペア条件が含まれる。エッジペア条件は、注目した輝度分布に2つのエッジペアが含まれることを求める条件である。
【0024】
撮影に際してバックライトを用いてもよい。その場合、画像として、シルエット像を取得し得る。容器の傷や汚れに起因する非浮遊ブロブの除外に際しては、様々な方法を用い得る。
【0025】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る異物検出システムが示されている。この異物検出システムは気泡像識別機能を備え、換言すれば、この異物検出システムには気泡識別装置が含まれる。異物検出システムは、例えば、製薬工場の検査過程において用いられ、薬剤中の異物を検出するものである。その場合、薬剤は水薬である。異物として、金属片、樹脂片、ゴム片、繊維等が挙げられる。検出対象となる異物のサイズは、例えば、50μm~数mmである。その範囲以下のサイズを有する異物やその範囲以上のサイズを有する異物が検出対象とされてもよい。様々な異物検出方法が同時に又は段階的に適用されてもよい。飲料水や化学薬品等に含まれる異物が異物検出システムにより検出されてもよい。
【0026】
異物検出システムは、測定部10及び情報処理部12を有する。測定部10は、筐体14を有し、筐体14の内部にはシリンジ列を搬送する搬送ライン16が設けられている。搬送ライン16における所定箇所が撮影場所18である。撮影場所18には撮影装置30が設置されている。図示の例では、回転機能を備える台座20上に検査対象物であるシリンジ22が載置されている。シリンジ22は、薬剤28を収容した容器である。薬剤を収容する他の容器として、バイアル、アンプル、等が挙げられる。
【0027】
シリンジ22は、本体24、ストッパ(内部封止栓)25、及び、キャップ(外部封止栓)26を有する。本体24の内部に薬剤が収容されている。本体24は、透明性を有する材料、例えば、樹脂、ガラス等により構成される。台座20上にシリンジ22を固定するための部材の図示が省略されている。
【0028】
撮影装置30は、カメラ32、レンズ34、バックライト38等を有する。バックライト38は、シリンジ22の背面側から平行光を照射するものである。その状態で、カメラ32により、シリンジ22中の薬剤28のシルエット像が取得される。カメラ32の視野36は、薬剤28の全部をカバーしている。シルエット像は白黒画像であるが、カラー画像が取得されてもよい。複数本のシリンジがカメラ32により同時に撮影されてもよい。シリンジ22とバックライト38との間に偏光板を設け、且つ、シリンジ22とカメラ32との間に偏光板を設けてもよい。
【0029】
実施形態においては、台座20により、シリンジ22がその中心軸周りにおいて回転駆動され、その後、シリンジ22の回転が止められ、シリンジ22の静止状態が形成される。その静止状態では、慣性により薬剤28の回転状態が継続する。回転状態にある薬剤28がカメラ32により間欠的に撮影される。これにより時系列順で並ぶ複数の画像からなる原画像列(フレーム列)が取得される。原画像列を構成する個々の現画像が画像処理対象となる。
【0030】
情報処理部12は、気泡識別装置、又は、異物検出装置として機能する。情報処理部12は、プログラムを実行するプロセッサ40、記憶部42、入力器44及び表示器46を有する。記憶部42は半導体メモリ等により構成される。入力器44は、キーボード等により構成され、表示器46はLCD(Liquid Crystal Display)等により構成される。入力器44と表示器46によりタッチスクリーンパネルが構成されてもよい。プロセッサ40はCPU(Central Processing Unit)等により構成される。
【0031】
図1には、プロセッサ40が発揮する複数の機能が複数のブロックにより表現されている。前処理器48は、原画像列を構成する各原画像に対して前処理を適用する。前処理には、シリンジ22の本体24に生じた傷や汚れに相当する非浮遊物像を除去する処理、浮遊物像を抽出する処理、等が含まれる。具体的には、前処理には、差分処理、二値化、膨張収縮、ラベリング等の処理が含まれる。前処理後の対象画像中に含まれる個々の孤立した塊を以下においてはブロブ(Blob)と称する。
【0032】
ROI設定器52は、前処理後の対象画像に含まれる個々のブロブに対して関心領域(ROI:Region of Interest)を設定する。ROI設定を省略して気泡像の識別等を行うことも可能である。
【0033】
気泡識別器54は、設定手段(設定部)及び識別手段(識別部)として機能する。気泡識別器54は、対象画像上に設定された個々の関心領域ごとにブロブの解析を行う。具体的には、ブロブが気泡像であるか否かを識別する。その際には、後述するように、個々のROIに対して参照ラインセットが設定され、各参照ライン上の輝度分布が評価される。気泡像固有の輝度分布の存在が判定された場合に、ブロブが気泡像であると識別される。気泡像固有の輝度分布の存在が判定されなかった場合、その結果が異物判定器56へ送られる。
【0034】
異物判定器56は、ブロブが気泡像でないと判定された場合に当該ブロブを異物像として判定する。その際において、気泡識別器54の識別結果の他、他の情報が参照されてもよい。例えば、ブロブ形状についての評価結果が参照されてもよい。異物像が判定された場合、つまり異物が検出された場合、検査対象となったシリンジ22を所定の管理エリアへ搬送するための制御信号60が出力される。異物が検出された場合、表示器46にその旨が表示されてもよい。
【0035】
表示処理部58は、表示器46に表示される画像を生成するものである。カメラ32によって撮影された各画像が表示器46に表示されてもよい。その場合、画像中における異物像を識別表示してもよい。例えば異物を特定色で表示してもよい。気泡像を識別表示してもよい。
【0036】
薬剤回転中に取得された各画像が画像処理対象となるので、ある画像においてたまたま気泡像と異物像が重なり合っていても、他の画像においてそれらは分離した状態で現れる。よって、異物の検出精度を高められる。
【0037】
図2には、観測され得る様々な気泡像が示されている。(A)が示している気泡像は、外側部分62と内側部分64とからなる。外側部分62は、低輝度部分(例えば二値化後において値0を有する部分)であり、内側部分64は、高輝度部分(例えば二値化後において値1を有する部分)である。外側部分62は、気泡の表層又は輪郭が画像化されたものであり、内側部分64は、気泡の内部つまり空気層が画像化されたものである。外側部分62は、環状の形態を有し、それは欠損部を備えていない。内側部分は、楕円形を有し、それは背景(外界)と接していない。(B)~(E)が示している気泡像においても、グレー部分が低輝度部分であり、白部分が高輝度部分である。(B)が示している気泡像も、(A)が示している気泡像と同様に、環状の外側部分と楕円形の内側部分とからなる。外側部分はやや大きな厚みを有している。
【0038】
(C)が示している気泡像は、部分的に欠損した外側部分66とそれによって囲まれている内側部分68とからなる。符号66aは外側部分66に生じた欠損部を示している。欠損部66aを通じて内側部分68が背景(外界)に連なっている。一般に、欠損部を備える外側部分は、例えば、C字形状、U字形状、半円形状、円弧形状等になる。(D)が示している気泡像も、(C)が示している気泡像と同様に、欠損部を有する外側部分とそれにより囲まれている内側部分とからなる。
【0039】
(E)が示している気泡像は、特殊な形態(数字8に似た形状)を有しており、それは真の気泡像70と偽の気泡像72とで構成される。真の気泡像70が液面74で反射して偽の気泡像72が生じている。画像上においてそれらが連なった場合、(E)が示している気泡像が生じる。
【0040】
いずれの気泡像においても、輝度により区別し得る外側部分及び内側部分が存在する。つまり、複数の気泡像に共通の固有の輝度パターン(二次元構造)を見てとれる。外側部分と背景との間の境界、及び、外側部分と内側部分との間の境界に、顕著な輝度差が生じている。二値化画像ではない、諧調をもった画像を処理対象とする場合でも、外側部分の中や内側部分の中で生じる輝度変化は、境界での輝度差よりもかなり小さいので、単なる輝度変化と境界での輝度差とを明確に区別することが可能である。
【0041】
図3には、観測され得る様々な異物像が示されている。
図3においても、グレー部分が低輝度部分を示し、白部分(背景)が高輝度部分を示している。(A)が示している異物像の内部76は一様な輝度(低輝度)を有する。(B)が示している異物像、(C)が示している異物像、及び、(D)が示している異物像のいずれも、一様な輝度(低輝度)を有する。いずれの異物像も、その内部に二次元構造は存在せず、その輝度パターンは単調である。気泡像の輝度パターンと異物像の輝度パターンの違いから、両者を識別することが可能であり、換言すれば、気泡像固有の輝度パターンを利用して、気泡像を識別することが可能である。
【0042】
図4には、前処理の内容が示されている。符号170で示されるように、シリンジの回転後にシリンジの回転が停止され、これにより、シリンジ内の液体のみが回転している状態が形成される。その状態において、シリンジを連続的に撮影することにより、原画像列172が取得される。横軸は時間軸tである。
【0043】
隣接する2つの原画像ごとに、第1処理174が適用される。第1処理174には、減算、負成分削除等が含まれる。実施形態において、隣接する2の原画像の内で、時間的に後の原画像が注目画像とされ、時間的に前の原画像が基準画像とされる。注目画像と基準画像との間で減算が実施される。高輝度部分ではなく、輝度部分を抽出する場合、例えば、基準画像から注目画像が減算される。その上で、減算後に生じた差分画像中の負成分が削除される(又は減算の過程で負成分が無視される)。第1処理174により、シリンジに生じていた傷や汚れに起因する非浮遊物像については差分画像内から除去され(同時に背景も除去される)、気泡又は異物に相当する浮遊物像だけが残される。他の方法により、浮遊物像だけが残されてもよい。基準画像として1つ前の現画像ではなく、先頭の原画像等を用いてもよい。上記の第1処理174により、原画像列172から差分画像列176が生成される。
【0044】
差分画像列176を構成する各差分画像に対して、第2処理178が適用される。第2処理178には、二値化(反転二値化)、膨張収縮、ラベリング等が含まれる。ラベリングにより、孤立した個々のブロブが抽出される。具体的には、個々のブロブに番号が付され、個々のブロブが管理される。例えば、ブロブ単位で、ブロブ番号、中心座標、幅サイズ、高さサイズ等が管理される。差分画像列176から対象画像列180が生成される。
【0045】
図5~
図10を用いて気泡識別方法について説明する。以下に説明する処理はブロブごとに実施される。
【0046】
図5において、ブロブ78は、外側部分82及び内側部分84を有する。図示の例において、外側部分82は値0を有する部分であり、内側部分は値1を有する部分である。ブロブ78は、中心座標O、幅サイズW及び高さサイズHで特定される。符号80はブロブ78に外接する矩形の図形を示している。幅サイズW及び高さサイズHに代えて、矩形80の左上隅座標Qが管理されてもよい。なお、x方向は画像における水平方向であり、y方向は画像における垂直方向である。
【0047】
図6に示すように、中心座標O、幅サイズW及び高さサイズHに基づいて、ブロブ78を非接触で囲むROI86が設定される。例えば、マージンとしてiピクセルが設定され得る。iは1以上の整数である。ROI86に対して参照ラインセット88が設定される。ブロブ78に対して参照ラインセット88が設定されると理解してもよい。参照ラインセット88は、第1参照ライン列92及び第2参照ライン列4により構成される。
【0048】
第1参照ライン列92は、y方向に平行な複数の参照ライン96により構成される。複数の参照ライン96は均等間隔でx方向に並んでいる。第1参照ライン列92は、ROI86のx方向の全体に及んでいる。第2参照ライン列94は、x方向に平行な複数の参照ライン98により構成される。複数の参照ライン98は均等間隔で並んでいる。第2参照ライン列94は、ROI86のy方向の全体に及んでいる。
【0049】
複数の参照ライン96及び複数の参照ライン98を非均等間隔で配置してもよいし、複数の参照ライン96及び複数の参照ライン98を内部部分が生じる可能性の高い部分に集中的に配置してもよい。複数の参照ライン96及び複数の参照ライン98におけるピッチは例えば1画素である。ピッチの大きさをユーザー又は自動的に変更し得るように構成してもよい。
【0050】
実際には、参照ラインセット88を構成する個々の参照ラインが順番に設定される。その過程において、後述する気泡判定条件が満たされた場合、ブロブが気泡像と識別される。その時点で、当該ブロブに対する新規の参照ラインの設定が終了する。なお、個々の参照ラインは、通常、ROI内に設定されるが(ROI内において以下に説明するエッジ検出が実施されるが)、各図においては個々の参照ラインが目立つように表現されている。
【0051】
図7に示すように、各参照ライン上において、一方端から他方端にかけてエッジ検出が繰り返し実行される。その際のピッチは例えば1画素である。エッジ検出に際してはエッジ検出フィルタを利用し得る。
【0052】
例えば、参照ライン100において、上から下へエッジ検出が順次実行されると、その結果として、ブロブ78における4つのエッジ(境界点)E1,E2,E3,E4が検出される。エッジE1は、背景と外側部分82との間の境界上にあり、エッジE2は、外側部分82と内側部分84との間の境界上にある。エッジE3は、内側部分84と外側部分82との間の境界上にあり、エッジE4は、外側部分82と背景との間の境界上にある。エッジE1、E2が第1のエッジペアEP1を構成し、エッジE3,E4が第2のエッジペアEP2を構成する。
【0053】
図7には、参照ライン上の輝度分布102が示されている。図示の例では、二値化された画像が処理対象となっているため、輝度分布102を構成する各値は1又は0となる。符号102A,102Bで示す凹部が外側部分(低輝度部分)に相当する。処理対象となる画像が諧調を有する場合においても、2つのエッジペアEP1,EP2を検出することが可能である。
【0054】
実施形態においては、気泡判定条件にエッジペア条件が含まれる。エッジペア条件は、現在注目している参照ライン上の輝度分布が2つのエッジペアを含むことを要求する条件である。
図7に示す例では、参照ライン100上に2つのエッジペアEP1,EP2が含まれており、エッジペア条件が満たされる。気泡判定条件にエッジペア条件のみが含まれる場合、エッジペア条件が満たされた時点で、ブロブが気泡像であると識別される。
【0055】
図7においては、第1のエッジペアEP1を構成するエッジE1,E2の間の間隔(距離)がD1で示され、第2のエッジペアEP2を構成するエッジE3,E4の間の間隔(距離)がD2で示されている。ブロブが気泡像である場合、一定の対称性が認められる。外側部分82に対して直交するように参照ラインを設定した場合、エッジ間隔D1,D2が互いに近くなる。よって、気泡像の識別精度を高めるために、気泡判定条件にエッジ間隔条件を加えてもよい。例えば、エッジ間隔D1とエッジ間隔D2の差ΔDが所定値よりも小さい場合にエッジ間隔条件が満たされるとしてもよい。この場合、エッジペア条件が満たされ、更に、エッジ間隔条件が満たされた場合に限り、ブロブが気泡像であると判定されることになる。
【0056】
図8には、他の参照ラインセット112が示されている。ブロブ104を囲むようにROI110が設定されている。ブロブ104は、低輝度部分としての外側部分106と高輝度部分としての内側部分108とからなる。外側部分106は三日月形状を有しており、それには大きな欠損部が生じている。内側部分108は背景に連なっている。このようなブロブを104を気泡像として正しく識別するために、特に、ブロブにおける欠損部がいずれの方位にあっても正しく気泡像を識別するために、ブロブ104に対して、より多様性のある参照ラインセット112を設定するのが望ましい。
【0057】
参照ラインセット112は、第1参照ライン列114、第2参照ライン列116、第3参照ライン列118、及び、第4参照ライン列120により構成される。
図8においては、各参照ライン列114~120の一部のみが示されている。第1参照ライン列114は、y方向に平行な複数の参照ラインにより構成され、それらはx方向に並んでいる。第2参照ライン列116は、x方向に平行な複数の参照ラインにより構成され、それらはy方向に並んでいる。第3参照ライン列118は、y方向に対して時計回り方向に+45度傾いた+45度傾斜軸に対して平行な複数の参照ラインにより構成され、それらは、y方向に対して時計回り方向に-45度傾いた(反時計回り方向に+45度傾いた)-45度傾斜軸の方向に並んでいる。第4参照ライン列120は、-45度傾斜軸に対して平行な複数の参照ラインにより構成され、それらは+45度傾斜軸に沿って並んでいる。
【0058】
例えば、参照ライン122上においては4つのエッジE5~E8が検出され、つまり2つのエッジペアが検出される。参照ライン124上においても、4つのエッジE9~E12が検出され、つまり2つのエッジペアが検出される。参照ラインセットを構成するいずれかの参照ラインにおいて、エッジペア条件が満たされると、ブロブ104が気泡像であると識別される。気泡判定条件にエッジ間隔条件を含める場合、参照ラインセットを構成する参照ライン列の個数をより増大させてもよい。あるいは、ブロブの中心点又は他の基準点から放射状に広がる複数の参照ラインにより構成される参照ラインセットを用いてもよい。
【0059】
図9には、異物像に相当するブロブ126が示されている。ブロブを含む画像は二値化されている。ブロブ126を取り囲むROIが設定されている。ブロブ126の内部128は一様な輝度(低輝度)を有している。ブロブ126に対して参照ラインセットが設定される。その内で、参照ライン130に注目する。
図9には、参照ライン130上の輝度分布132が示されている。凹部132Aがブロブ126の内部(低輝度部分)128に相当する。参照ライン130においては2つのエッジE13,E14しか検出されない。エッジペア条件は満たされず、よって、気泡判定条件は満たされない。参照ラインセットを構成するすべての参照ラインにおいて気泡判定条件が満たされなかった場合に、ブロブが異物像であると判定される。もちろん、異物像の判定に際しては、他の情報を併せて考慮してもよい。
【0060】
以上のように、実施形態に係る気泡識別方法は、気泡像の輝度パターンと異物像の輝度パターンの違いを前提とし、ブロブに対して複数の参照ラインを設定して各参照ラインでのエッジ構成を解析することにより、ブロブが気泡像であるか否かを識別するものである。ブロブの向きや形態を事前に特定できる場合、ブロブに対して適切な位置及び傾斜角度で単一の参照ラインを設定してもよい。それを用いて気泡像か否かが識別されてもよい。
【0061】
図10には、特殊な形態を有するブロブ140が示されている。ブロブ140を取り囲むようにROI146が設定されている。ブロブ140は、第1部分142と第2部分144とで構成され、それらは連結されている。第1部分142は、真の気泡像に相当する部分であり、第2部分144は、液面の反射により生じた偽の気泡像に相当する部分である。第1部分142は、低輝度部分である外側部分142A及び高輝度部分である内側部分142Bからなる。第2部分144も、低輝度部分である外側部分144A及び高輝度部分である内側部分144Bからなる。ブロブ140の外側は高輝度部分としての背景148である。
【0062】
ブロブ140に対して参照ラインセットが設定される。例えば、参照ライン150が設定された場合、参照ライン150上でエッジ検出が繰り返される。これにより、エッジE15~E20までの6個のエッジが検出される。それには2つのエッジペアが含まれるので、エッジペア条件が満たされる。参照ライン152が設定される場合にも同様である。もっとも、
図10に示すような特殊なブロブが存在している場合、気泡識別精度が低下することも考えられる。参照ライン上のエッジペア数が3以上の場合には、注意を喚起する表示を行うようにしてもよい。
【0063】
図11には、実施形態に係る異物判定方法の要点が整理されている。ブロブごとに気泡像であるか否か、つまり異物像であるか否かが判定される。具体的には、気泡判定条件154が満たされるか否かが判断される。気泡判定条件154には、図示の例では、エッジペア条件136及びエッジ間隔条件138が含まれる。それらの条件が同時に満たされた場合に限り、気泡判定条件が満たされたことになる。実際には、気泡判定条件を満たすn本の参照ラインが存在する場合に、ブロブが気泡像であると識別される(符号158を参照)。nは例えば1である。nを2以上の数値としてもよい。ブロブが気泡像であると識別されなかった場合にブロブが異物像であると判定される(符号160を参照)。気泡像の識別及び異物像の判定において、他の情報を参照してもよい。例えば、ブロブの外形、サイズ等が考慮されてもよい。
【0064】
図12には、異物検査システムの動作、特に画像処理の内容がフローチャートとして示されている。カメラにより取得された画像単位で画像処理が実施される。S12では、原画像に対して前処理が適用される。シリンジに生じた傷や汚れを誤検出しないように、前フレーム画像等の基準画像が利用され、原画像と基準画像との間で差分演算が実施される。これにより生成された差分画像に対してラベリング等の処理が適用され、1又は複数のブロブを含み得る対象画像が生成される。S14では、対象画像中のブロブごとにROIが設定される。S16以降の処理はROIごと、つまりブロブごとに実施される。
【0065】
S16では、k番目のROIが特定され、S18ではk番目のROI内のブロブが気泡像であるか否かが識別される。気泡像であれば、S22が実行され、気泡像でなければS20においてブロブが異物像であると判定される。つまり異物が検出される。その事実が記録され、必要な制御が実行される。S22では、最終のROIまで処理されたか否かが判定され、NOであれば、S24においてkが1つインクリメントされた上で、S16以降の各工程が繰り返し実行される。
【0066】
上記実施形態においては、検査対象が薬剤であったが、他の検査対象に対して上記構成を用いて異物検出が実施されてもよい。