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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】波形シミュレータ及び超音波映像装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/38 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N29/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023203424
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2023-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌幸
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-032754(JP,A)
【文献】特開2018-189550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G01B17/00-G01B17/08
A61B 8/00-A61B 8/15
G06C、G06D、G06E、G06F、G06G、G06J、G06K、G06M、G06N、G06Q、G06T、G06V
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層構造を有する積層体に超音波を照射したときに、所望の積層部を示す対象積層部の底面を示す対象界面において反射して返って来る反射波を模擬する波形シミュレータであって、
前記積層体を構成するそれぞれの積層部の材質と厚みを含む層構造情報を入力し、前記層構造情報及び材質データベースに基づいて、前記それぞれの積層部の厚みと音速を用いてプローブから前記超音波を前記積層体に照射してから前記対象界面からの前記反射波を前記プローブが受信するまでの遅延時間を算出する第一の処理を行う第一の処理部と、
前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記超音波が前記プローブから出力されてから前記対象界面に到達するまでの第一の透過率を算出する第二の処理を行う第二の処理部と、
前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記超音波が前記対象積層部の内部で生じる反射の反射率を算出する第三の処理を行う第三の処理部と、
前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記反射波が前記対象界面から前記プローブまで到達するまでの第二の透過率を算出する第四の処理を行う第四の処理部と、を備える
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の波形シミュレータであって、
前記超音波に相当する模擬信号を生成する模擬信号生成部を有し、
全ての前記積層部における前記遅延時間と、全ての前記積層部における前記第一の透過率、前記反射率、及び前記第二の透過率とを算出して、これらの値を乗じて前記模擬信号に対する振幅変化率を算出し、前記振幅変化率を前記模擬信号に乗じて算出した模擬反射波と、を記憶部に記憶する
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項3】
請求項2に記載の波形シミュレータであって、
前記第一の処理において、前記材質データベースからそれぞれの前記積層部の材質を検索キーとしてそれぞれの前記積層部の音速であるVを抽出し、
前記層構造情報の中のそれぞれの積層部の厚みをDとし、前記対象界面までの前記積層体の積層数をnとし、kを0からnまでの変数としたときに、
【数3】
により前記遅延時間を算出する
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項4】
請求項2に記載の波形シミュレータであって、
前記第二の処理において、前記材質データベースからぞれぞれの前記積層部の材質を検索キーとしてそれぞれの前記積層部の音響インピーダンスのZを抽出し、
前記対象界面までの前記積層体の積層数をn、液状媒体の音響インピーダンスでZとしたときに、
(第一の透過率)
=(2(Z)/(Z+Z))×・・×(2Z/(Zn-1+Z))
により前記第一の透過率を算出する
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項5】
請求項2に記載の波形シミュレータであって、
前記第三の処理において、前記対象積層部をn番目としたとき、n-1番目とn番目とn+1番目の前記積層部の音響インピーダンスを前記ぞれぞれの前記積層部の材質を検索キーとしてそれぞれの前記積層部の音響インピーダンスのZを材質データベースから抽出し、前記対象積層部の内部で生じる反射回数を5回としたときに、
(前記反射率)=((Zn+1)―Z))/((Zn+1)+Z)
×((Zn-1)―Z)/((Zn-1)+Z)
により前記反射率を算出する
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項6】
請求項2に記載の波形シミュレータであって、
前記第四の処理において、前記材質データベースからぞれぞれの前記積層部の材質を検索キーとしてそれぞれの前記積層部の音響インピーダンスのZを抽出し、
前記対象界面までの前記積層体の積層数をn、液状媒体の音響インピーダンスでZとしたときに、
(第二の透過率)
=(2(Z)/(Z+Z))×・・×(2(Zn-1)/(Zn-1+Z))
により前記第二の透過率を算出する
ことを特徴とする波形シミュレータ。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の波形シミュレータと、
表示部と、を含む超音波映像装置であって、
入力部から前記積層体の前記層構造情報を入力して前記層構造情報を前記波形シミュレータに付与し、前記層構造情報に基づいて前記積層体を構成する全ての前記積層部の前記遅延時間と前記模擬反射波を算出して波形データベースに記憶して、前記表示部に表示した表示番号選択部において選択された表示番号を取得し、前記表示番号を検索キーとして前記表示番号に対応した前記積層部の前記遅延時間と前記模擬反射波を抽出して、前記表示部に横軸を時間軸に、縦軸を振幅軸にして設定した二次元平面において、前記遅延時間だけ遅延した位置に前記模擬反射波を表示する
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波映像装置であって、
前記超音波映像装置は、さらにポインティングデバイスを備え、前記ポインティングデバイスで前記表示部をトレースした範囲にゲートを設定し、前記ゲートの位置と形状をゲート情報として、前記表示番号に対応する前記積層部に紐づけてゲート情報記憶部に記憶する
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波映像装置であって、
前記層構造情報に含まれる全ての前記積層部に対応する前記模擬反射波を前記波形データベースに記憶するとともに、前記ゲート情報を前記ゲート情報記憶部に記憶し、全ての前記積層部に対応する前記模擬反射波と前記遅延時間を呼び出し、全ての前記積層部の前記模擬反射波を重ね合わせて一つの前記模擬反射波を構成し、それぞれの前記積層部の前記反射波を他の前記積層部の前記反射波と区別して前記二次元平面に表示する
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項10】
請求項7に記載の超音波映像装置であって、
前記模擬反射波を表示する際、層構造入力画面で指定された色で、前記表示部に表示することを特徴とする超音波映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層構造を有する積層体に超音波を照射したときに、所望の積層部を示す対象積層部の底面を示す対象界面において反射して返って来る反射波を模擬する波形シミュレータ及び超音波映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数の層構造を有する被検査体内に存在する欠陥を超音波で検出するには、音響インピーダンスの違いによる反射特性を利用する。超音波は液体や固体物質中を伝搬し、音響インピーダンスの異なる物質の境界面や空隙のところで、反射波(エコー)が生じる。ここで、剥離、ボイドといった欠陥からの反射波は、欠陥のないところからの反射波に比べて、その強度が高いため、被検査体の各層の接合面での反射強度を画像化することで、被検査体内に存在する欠陥が顕在化された画像を得ることができる。
【0003】
超音波映像装置は、超音波プローブを水平方向に二次元的に走査し、検査対象内の検査対象部位からの反射波の時間ゲート(着目する時間範囲)内の振幅情報や時間情報を用いて欠陥の映像を生成する。検査対象に欠陥があって時間ゲート内に欠陥に由来する反射波が存在する場合、欠陥がある検査対象の反射波は、欠陥が無い健全な検査対象の反射波との間に差異が生じ、欠陥像として観測できる。
【0004】
特許文献1の超音波映像装置には、時間ゲート設定部を有し、時間ゲート設定部は、計算モデルとして検査対象の欠陥が設定されていない欠陥なしの計算モデルと欠陥が設定された欠陥ありの計算モデルとが入力され、欠陥なしの計算モデルと欠陥ありの計算モデルのそれぞれについて検査対象を伝搬する超音波を数値シミュレーションで求め、時間ゲートは、欠陥なしの計算モデルで求められた超音波の波形と欠陥ありの計算モデルで求められた超音波の波形とが、互いに異なっている時間範囲の少なくとも一部であることを開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-189550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置では、既存のシミュレータを用いて超音波の伝搬を数値シミュレーションで求めることができるが、時間ゲートを設定するには、欠陥なしのモデルと欠陥ありのモデルの2種類を準備しなければならず、欠陥がどこにあるか不明な状態において、時間ゲートを設定するには、思考錯誤を繰り返す必要があった。
【0007】
また、既存のシミュレータでは、反射波の全体波形を得ることができるが、構造情報と反射波が立ち上げる時間的な位置との関係が明確に把握することができず、容易に特定の界面の時間ゲートの位置を設定することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、複数の検査界面がある複数の層構造を有する被検査体に対し、時間ゲートを容易に設定することができるように、積層体に超音波を照射したときに、所望の界面から反射する反射波を求めることができる波形シミュレータ及び超音波映像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の波形シミュレータは、複数の層構造を有する積層体に超音波を照射したときに、所望の積層部を示す対象積層部の底面を示す対象界面において反射して返って来る反射波を模擬する波形シミュレータであって、前記積層体を構成するそれぞれの積層部の材質と厚みを含む層構造情報を入力し、前記層構造情報及び材質データベースに基づいて、前記それぞれの積層部の厚みと音速を用いてプローブから前記超音波を前記積層体に照射してから前記対象界面からの前記反射波を前記プローブが受信するまでの遅延時間を算出する第一の処理を行う第一の処理部と、前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記超音波が前記プローブから出力されてから前記対象界面に到達するまでの第一の透過率を算出する第二の処理を行う第二の処理部と、前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記超音波が前記対象積層部の内部で生じる反射の反射率を算出する第三の処理を行う第三の処理部と、前記それぞれの積層部の音速と密度を用いて前記反射波が前記対象界面から前記プローブまで到達するまでの第二の透過率を算出する第四の処理を行う第四の処理部と、を備えることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の検査界面がある複数の層構造を有する被検査体に対し、時間ゲートを容易に設定することができるように、積層体に超音波を照射したときに、所望の界面から反射する反射波を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る波形シミュレータの構成を示すブロック図である。
図2】層構造情報の一例を示す図である。
図3】材質データベースを示す図である。
図4】遅延時間を算出する例を示す図である。
図5】第一透過率を算出する例を示す図である。
図6】反射率を算出する例を示す図である。
図7】第二透過率を算出する例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る波形シミュレータの処理を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
図10】第2実施形態に係る超音波映像装置の処理を示すフローチャートである。
図11】表示部に表示した模擬反射波の例を示す図である。
図12】重ね合わせた模擬反射波を示す図である。
図13A】特定の層でのみ反射が起こる伝搬経路の例を示す図である。
図13B】特定の層でのみ反射が起こる伝搬経路で計算した波形データを示す図である。
図14】波形シミュレータの画面例を示す図である。
図15】波形シミュレータ等のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
超音波映像装置は、検査対象物である複数の層構造を有する半導体ウェハや半導体パッケージに超音波を照射し、積層体から超音波が反射して返ってくる反射波を取得して、所望の積層部を示す対象積層部の底面部である対象界面からの反射波の波形をチェックして、対象界面に剥離、ボイドなどの欠陥があるか否かを検査するのに有用なツールである。
【0013】
検査対象物の積層体が多数の層から成る場合、反射波は、積層体を構成するそれぞれの積層部からの反射波が返ってくるので、いくつものピークを有する波形が連続した構成となっている。従って、検査したい波形を見るときは、その波形を抽出するようにゲートを設定する。例えば、検査対象物が5層構造の積層体であり、対象積層部が3層目でその底面部を対象界面とする反射波を見るときは、3層目の対象界面からの反射波を囲む位置にピーク部を含んでゲートを設定することになる。
【0014】
このゲート設定作業は、熟練度を要するものであり、作業を容易にすることで作業効率を大きく改善することが可能となる。
【0015】
波形シミュレータは、積層体に超音波を照射した際に、対象界面からの反射波を模擬した模擬反射波を生成して、対象界面からの反射波に対して適切なゲートを設定する作業を支援し、操作員の熟練度に影響されることなく、迅速な作業を行なえるようにして、積層体の欠陥有無の検査効率を大きく改善するものである。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る波形シミュレータ10の構成を示すブロック図である。
波形シミュレータ10は、積層体の層構造情報を入力する入力部9と、材質に関する情報を記憶している材質データベース7と、遅延時間を算出する第一の処理を行なう第一の処理部1(図4参照)と、第一の透過率を算出する第二の処理を行なう第二の処理部2(図5参照)と、反射率を算出する第三の処理を行なう第三の処理部3(図6参照)と、第二の透過率を算出する第四の処理を行なう第四の処理部4(図7参照)と、模擬信号を生成する模擬信号生成部5と、模擬反射波を生成する波形変換部6と、遅延時間と模擬反射波を記憶する波形データベース8(記憶部)を含んで構成する。
【0017】
入力する層構造情報22は、波形シミュレーションを行う積層体を構成するそれぞれの積層部の材質名(材質)は何か、また、それぞれの積層部の厚さはいくらか、を含む。
【0018】
図2は、層構造情報22の一例を示す図である。図2の積層構成21の場合、積層数が5層(第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4、第5層L5)であり、さらに超音波プローブ50から出射された超音波を積層体に伝搬する液状媒体(通常は水)を含んでいる。
【0019】
層構造情報22は、層名、材質名、厚さ(厚み)を含んで構成されている。本図では、それぞれの積層部の材質名をマテリアル1、マテリアル2と表現しているが、実際には、エポキシ樹脂、シリコン、などが入力される。なお、厚さの単位はmmである。
【0020】
図3は、材質データベース7を示す図である。材質データベース7は、積層体を構成する材質名に関して、音速と密度を記憶している。波形シミュレータ10では、対象界面からの模擬反射波を生成する過程において、積層体を構成するそれぞれの積層部の音速と密度を使用する。従って、各種材質名の音速と密度を予め材質データベース7に記憶しておき、入力部9から入力した層構造情報の材質名をキーとして、それぞれの積層部の音速と密度を材質データベースから抽出する。なお、音速の単位はm/秒であり、密度の単位はg/cm3である。また、材質データベース7には、後記する音響インピーダンスが含まれていてもよい。
【0021】
図4は、遅延時間を算出する例を示す図である。図4は、第一の処理部1における遅延時間を算出する第一の処理に関する図である。積層体に超音波を照射すると、超音波はそれぞれの積層部を伝搬していき、基板に到達することになる。この伝搬する過程において、伝搬遅延が生じる。それぞれの積層部の遅延時間は、次の式により算出することができる。
(遅延時間)=(積層部の厚さ)/(積層部内の音速)
伝搬遅延は全ての積層部で発生するので、n番目の積層部の界面までに生じる遅延時間は、次の式により算出することができる。
【0022】
【数1】
ここで、nは対象界面までの積層数、kは整数で0からnまでの変数、Vは音速、Dは厚さである。
【0023】
伝搬遅延は、プローブから出射された超音波が対象界面に到達するまでに生じる遅延と、対象界面で反射した反射波が返ってきてプローブに到達するまでに生じる遅延があるので、最終的に遅延時間は次の式により算出することができる。
【0024】
【数2】
【0025】
図5は、第一透過率を算出する例を示す図である。図5は、第二の処理部2における第一の透過率を算出する第二の処理に関する図である。超音波は、超音波プローブ50を出射してから対象界面に到達するまでに、対象界面より前の界面を透過する際に減衰する。従って、ある界面を透過する前の超音波に対して、その界面を透過した透過波は、その界面の透過率を乗じた振幅となる。図5に示すように、例えば、第1層の積層部と第2層の積層部との界面1に関する透過率は、次の式で算出することができる。
【0026】
(透過率)=(2Z2)/(Z1+Z2)
ここで、Zはそれぞれの積層部の音響インピーダンスを示し、
Z=(積層部の音速)×(積層部の密度)により算出することができる。
ここで、Z1は第1層L1の積層部の音響インピーダンス、Z2は第2層L2の積層部の音響インピーダンスである。なお、Z1はZと、ZnはZと表記する場合がある。
【0027】
超音波の減衰は、超音波が超音波プローブ50から出射されてから対象界面に到達するまでに、第1層L1の表面を含み、超音波が透過するそれぞれの界面において生じるので、超音波プローブ50から出射した超音波の振幅をYとし、それぞれの界面の透過率をTkとし、それぞれの界面を透過して減衰した超音波をYkとし、積層体の積層数を3とすると透過波の振幅は次のように減衰していく。
【0028】
Y0=Y×T0
Y1=Y0×T1
Y2=Y1×T2
Y3=Y2×T3
ここで、T0は第1層L1の表面の透過率、Y0は第1層L1の表面を透過した透過波の振幅である。
【0029】
従って、最終的な透過波Y3は次のように算出できる。
Y3=Y×T0×T1×T2×T3
【0030】
従って、積層体の積層数が3層の場合、超音波プローブ50から出射された超音波が対象界面(界面3)に到達するまでの全体の透過率を第一の透過率とすると、表面、界面1、界面2を介して、第一の透過率は次の式により算出することができる。
(第一の透過率)=T0×T1×T2
【0031】
積層体の積層数がn層の場合とすると、第一の透過率は次の式により算出することができる。
(第一の透過率)=T0×T1×・・・×(Tn-1) (式3)
【0032】
よって、積層数nの積層体の第一の透過率は次の式で算出することができる。
(第一の透過率)=(2×Z1/(Z0+Z1))
×・・・×(2×Zn/((Zn-1)+Zn) (式4)
【0033】
図6は、反射率を算出する例を示す図である。図6は、第三の処理部3における反射率を算出する第三の処理に関する図である。超音波は、対象積層部に到達すると、対象積層部の底面部である対象界面と対象積層部の上面部を示す対象上面部との間で反射を生じる。本実施形態では、該反射を単に反射と呼び、その反射率を単に反射率と呼ぶことにする。反射は、複数回生じることになるが、ここでは5回生じることと仮定する。なお、反射の回数は、必要に応じて変更してもよい。
【0034】
図6に示すように、反射は、対象界面から対象上面部への反射が3回で、対象上面部から対象界面への反射が2回で、合計5回の反射となる。つまり、対象界面から対象上面部への反射回数が、対象上面部から対象界面への反射回数より1回多いことになる。
【0035】
対象積層部の音響インピーダンスをZ2とし、一つ前の積層部の音響インピーダンスをZ1とし、一つ後の積層部の音響インピーダンスをZ3としたとき、超音波が対象界面から対象上面部に反射する第一の反射の反射率を示す第一の反射率は、次の式により算出することができる。
(第一の反射率)=(Z3-Z2)/(Z3+Z2)
【0036】
また、超音波が対象上面部から対象界面に反射する第二の反射の反射率を示す第二の反射率は、次の式により算出することができる。
(第二の反射率)=(Z1―Z2)/(Z1+Z2)
【0037】
対象積層部内の反射は、前記したように、第一の反射が3回、第二の反射が2回生じるので、全体の反射率は次のように算出することができる。
(反射率)=(第一の反射率)×(第二の反射率)
=((Z3-Z2)/(Z3+Z2))×((Z1―Z2)/(Z1+Z2))
【0038】
従って、n層目の積層部を対象積層部とした場合は、次の式により算出することができる。
(反射率)=((Zn+1)-Zn))/((Zn+1)+Zn))
×((Zn-1)-Zn))/((Zn-1)+Zn)) (式5)
【0039】
図7は、第二の透過率を算出する例を示す図である。図7は、第四の処理部4における第二の透過率を算出する第四の処理に関する図である。超音波は、対象界面に到達して反射波がプローブに返ってきてプローブに入力されるまでの伝搬経路において、プローブから出射された超音波が対象界面に到達する伝搬経路と同様に、対象界面からプローブに到達するまでに透過するそれぞれの界面において減衰する。従って、第一の透過率と同様に、対象界面からプローブに至るまでの透過率を示す第二の透過率を算出して対象界面で反射する反射波に乗じることで、プローブに到達する反射波の振幅を算出することができる。
【0040】
積層体の積層数をnとし、それぞれの積層部の音響インピーダンスをZk(kは0からnまでの正の整数)とした場合、第二の透過率は次の式により算出することができる。
(第二の透過率)=(2×Z0/(Z0+Z1))
×・・・×(2×(Zn-1)/((Zn-1)+Zn) (式6)
【0041】
以上、第一の処理部1から第四の処理部4までの処理について説明したが、これらの処理の結果、超音波プローブ50から出射された超音波が対象界面で反射して超音波プローブ50に戻って入力されるまでのプロセスに関して、波形シミュレータでは次のように処理される。
【0042】
図8は、第1実施形態に係る波形シミュレータ10の処理(S100)を示すフローチャートである。適宜図1を参照する。波形シミュレータ10は、まず入力部9から、波形シミュレーションの対象とする積層体の積層構造情報を入力する(S101)。具体的には、第1層目から第n層目までの積層部に関して、それぞれの材質と厚さに関する情報を入力する。
【0043】
次に、積層体を構成するそれぞれの積層部に対して、第一の処理部1から第四の処理部4において、第一の処理から第四の処理を実行し、それぞれの積層部の遅延時間と模擬反射波を算出して波形データベース8に記憶する。
【0044】
処理を具体的に説明する。
波形シミュレータ10は、層構造情報を入力し(S101)、パラメータn(積層数)を設定し、その初期値として1を代入する(S102)。波形シミュレータ10は、パラメータnに該当する積層部を対象積層部として、入力した層構造情報に含まれる対象積層部の材質を検索キーとして、材質データベースから該材質の音速と密度を抽出する(S103)。波形シミュレータ10は、これらの対象積層部の音速と密度と厚さを使用して、第一の処理部1から第四の処理部4において第一の処理から第四の処理を実行し(S104~S107)、対象積層部に対して遅延時間と第一の透過率と反射率と第二の透過率を算出する。
【0045】
次に、波形シミュレータ10は、模擬信号生成部5により模擬信号を生成する(S108)。模擬信号は、実際の超音波映像装置において、プローブから出射する超音波に相当するものである。模擬信号は、実際の超音波に波形形状の近い波形として、sinc関数を用いると好適である。なお、sinc関数は、正弦関数をその変数で割って得られる初等関数である。
【0046】
波形シミュレータ10は、以上の処理により算出した第一の透過率と反射率と第二の透過率と模擬信号を波形変換部6に入力し、第一の透過率と反射率と第二の透過率を乗じて振幅変化率を算出し(S109)、模擬信号に振幅変化率を乗じて模擬反射波を算出する(S110)。波形シミュレータ10は、遅延時間と模擬反射波を、波形データベースに対象積層部のnの値と紐づけて記憶する(S111)。
(模擬反射波)=Y×(第一の透過率)×(反射率)×(第二の透過率)
ここで、Yは模擬信号生成部で生成した模擬信号である。
【0047】
波形シミュレータ10は、nをインクリメントしながら、入力した層構造情報に含まれるすべての積層部に対して、第一の処理から全ての処理を実行し、遅延時間と模擬反射波を波形データベース8に記憶するまで繰り返す(S112、S113)。
【0048】
実際に超音波映像装置を使用して、積層体を構成するそれぞれの界面からの反射波に対してゲートを設定する作業においては、第2実施形態のように行えばよい。実作業を行う前段階において、波形シミュレータによる波形シミュレーションを実行してそれぞれの積層分の遅延時間と模擬反射波を波形データベースに記憶する。実作業では、波形データベースに記憶したそれぞれの積層部に関する遅延時間と模擬反射波を呼び出し、模擬信号の周辺に時間ゲート(ゲート)を設定する。
【0049】
このように、波形シミュレータ10を使用することで、作業員の熟練度に影響されずに、容易に精度よくそれぞれの積層部に対して時間ゲートを設定することを可能とする。
【0050】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の波形シミュレータ10を組み込んだ超音波映像装置100について説明する。
図9は、第2実施形態に係る超音波映像装置100の構成を示す図である。
超音波映像装置100は、材質データベース7と波形データベース8を含む波形シミュレータ10と、超音波プローブ50と、超音波プローブ50を駆動するプローブ駆動部40と、制御装置30を含んで構成される。制御装置30は、入力部9と、プローブ駆動部40を走査制御する走査制御部31と、ゲート情報入力部32と、プローブとの間で信号をやり取りする送受信制御部33と、ゲート設定部34と、画像生成部35と、表示部36と、を含んで構成する。なお、入力部9は、超音波映像装置と波形シミュレータで共用する。
【0051】
超音波映像装置100は、対象物の検査範囲に、超音波プローブ50を介して予め定めた間隔で設定した照射点に超音波を照射してその反射波を取得し、該反射波の中から検査対象とする接合界面の波形を示す界面エコーを抽出し、該界面エコーの信号強度を正の整数値(0~255)に変換して画素化情報を生成する処理を全ての照射点または特定の照射点に施し、生成した照射点の画素化情報に基づき接合界面の画像を生成して欠陥を見つけ出す。
【0052】
超音波プローブ50は、当該超音波プローブ50の走査位置を検知するエンコーダ51と、電気信号と超音波信号とを相互に変換する圧電素子52とを備えている。圧電素子52は、例えば、単一焦点型の超音波センサである。
【0053】
制御装置30は、入力部9と、プローブ駆動部40を走査制御する走査制御部31と、ゲート情報入力部32と、プローブとの間で信号をやり取りする送受信制御部33と、ゲート設定部34と、画像生成部35と、表示部36と、を含んで構成する。なお、入力部9は、超音波映像装置100と波形シミュレータ10で共用する。
【0054】
プローブ駆動部40は、メカ制御部41、X軸スキャナ42、Y軸スキャナ43及びZ軸スキャナ44によって超音波プローブ50の走査位置を制御すると共に、メカ制御部41は超音波プローブ50の現在の走査位置情報を受信する。
【0055】
圧電素子52は、圧電膜の両面にそれぞれ電極が取り付けられているものであり、酸化亜鉛(ZnO)、セラミックス、フッ素系共重合体等で構成される。圧電素子52は、両電極間に電圧が印加されることにより、当該圧電膜から超音波を送信する。さらに圧電素子52は、当該圧電膜が受信したエコー波(受信波)を、前記両電極間に発生する電圧である受信信号に変換する。
【0056】
水槽60内には水61が注入されており、当該水61中に被検体62が水没状態で置かれている。水槽60内の水61は、超音波プローブ50(超音波探触子)の下端の開口面から放射された超音波を、被検体62の内部に効率良く伝播させるために必要な伝播媒体である液状物質である。被検体62は、例えば複数の層構造を有する半導体ウェハや半導体パッケージである。
【0057】
超音波プローブ50は、水槽60に満たされた水61に浸漬され、被検体62の上部Z方向に所定の距離を於いて対向するように配置されている。
【0058】
プローブ駆動部40によって超音波プローブ50をXYZ方向に自在に移動させることができる。例えば、超音波プローブ50は、超音波を被検体62に照射しながら、所定の速度で被検体62の始点(一方端点)から終点(他方端点)まで、X軸方向にスキャンする。超音波プローブ50が終点に到達すると、Y軸方向にプローブを所定量移動させ、所定の速度で反対方向に、視点から終点までX軸方向にスキャンする。
【0059】
この移動動作に基づいて、超音波プローブ50は被検体62の表面における予め定められた測定範囲を走査し、超音波を送信し、測定範囲内において予め設定された複数の測定点で反射エコー波を受信し、当該測定範囲に含まれる内部構造の欠陥を映像化して検査することができる。
【0060】
超音波映像装置100は、波形シミュレータ10と、表示部36と、を含む超音波映像装置であって、入力部9から積層体の層構造情報を入力して層構造情報を波形シミュレータ10に付与し、層構造情報に基づいて積層体を構成する全ての積層部の遅延時間と模擬反射波を算出して波形データベース8に記憶して、表示部36に表示した表示番号選択部38(図11参照)において選択された表示番号を取得し、表示番号を検索キーとして表示番号に対応した積層部の遅延時間と模擬反射波を抽出して、表示部36に横軸を時間軸に、縦軸を振幅軸にして設定した二次元平面において、遅延時間分だけ遅延した位置に前記模擬反射波を表示する。
【0061】
超音波映像装置100によるゲート設定の動作を説明する。
図10は、第2実施形態に係る超音波映像装置100の処理S120を示すフローチャートである。図11は、表示部36に表示した模擬反射波の例を示す図である。
超音波映像装置100は、入力部9から、検査対象とする積層体の層構造情報を入力する(S121)。入力した層構造情報に基づき、波形シミュレーションを実施して全ての積層部の遅延時間と模擬反射波を算出し、波形データベース8に記憶する(S122)。
【0062】
超音波映像装置100は、表示部36において、表示番号選択部38から対象積層部とする積層部の表示番号を取得し、その表示番号に対応した模擬反射波を表示する(S123)。そして、作業員は、表示部36内でゲートを設定し、ゲート情報をゲート情報記憶部70に記憶し(S124)、処理を終了する。
【0063】
図11に、表示部に3層目の模擬反射波を表示した図を示す。表示部36に表示した表示番号選択部38から対象積層部が何番目の積層部かを示す表示番号を取得する。取得した表示番号を検索キーとして、表示番号に対応した遅延時間と模擬反射波を波形データベース8から抽出する。図11では、対象積層部を3番目として表示番号選択部から入力する例である。表示部36に、横軸に時間軸を設定し、縦軸に振幅軸を設定した二次元平面37を設定し、抽出した遅延時間の位置に模擬反射波を表示する。なお、図11の左側に、模擬信号生成部5で生成した模擬信号39を参考に示している。
【0064】
作業員が、超音波映像装置100に接続しているポインティングデバイスにより、模擬反射波のピーク値を含んで、表示部36に表示した模擬反射波の周辺部をトレースした部分(範囲)を表示番号に対応した積層部のゲート設定部34として、その時間的な位置と形状を表示番号に紐づけてゲート情報記憶部70に記憶する。
【0065】
これらの処理を全ての積層部に対して実行することにより、全ての積層部に対するゲート情報をゲート情報記憶部に記憶することができる。
【0066】
作業員は、実際に積層体を検査するときには、検査したい対象積層部のゲート情報を、対象積層部の番号、すなわち表示番号を検索キーとしてゲート情報記憶部70からゲート設定情報を抽出し、表示部36にゲートを設定する。このように、熟練度に影響されずに、対象界面に対して容易に高精度のゲートを設定することができる。
【0067】
以上のようにして、入力された層構造情報に含まれるすべての積層部に対応する模擬反射波を算出して波形データベース8に記憶し、また、すべての積層部に対応するゲート情報を算出してゲート情報記憶部70に記憶する。超音波映像装置100は、作業員からの指示により、前記全ての模擬反射波と対応するゲート情報を呼び出し、それぞれの模擬反射波の遅延時間を考慮してすべての模擬反射波を重ね合わせて一つの模擬反射波を構成し、表示部36に設定した二次元空間に表示する。なお、重ね合わせた模擬反射波を二次元空間に表示する際、それぞれの模擬反射波を他の模擬反射波と区別できるように、作業員が指定に従って表示する。区別する方法は、色分けしてもよいし、太線と細線を交互にして表示してもよい。これは、区別する方法を予め超音波映像装置の中に組み込んでおく。図12に重ね合わせた模擬反射波を示す図を示すが、この例では、それぞれの模擬反射波を濃淡で区別している。
【0068】
なお、重ね合わせた模擬反射波を表示するタイミングは、作業員からの指示を受付けて処理してもよいし、すべての積層部に対応する模擬反射波とゲート情報を記憶したタイミングにおいて自動で処理してもよい。
【0069】
<波形シミュレータの画面例>
波形シミュレータ10の特徴をさらに説明する。
図13Aは、特定の層でのみ反射が起こる伝搬経路の例を示す図である。図13Bは、特定の層でのみ反射が起こる伝搬経路で計算した波形データを示す図である。本実施形態の波形シミュレータ10では、例えば、特定の層でのみ反射が起こる複数の経路の伝搬経路を示すことができる。図13Aの界面1での反射を考えた場合、経路1は界面1での1回反射の場合である。経路2は、界面1で反射し界面0で反射し、さらに界面1で反射した場合である。経路3は、界面1で反射し界面0で反射し、さらに界面1で反射し界面0で反射し、そして界面1で反射した場合である。このため、作業者が特定の層のみの予想される反射波形を知りたい場合、図13Bのように表示することができる。
【0070】
図14は、波形シミュレータ10の画面例を示す図である。波形シミュレーション画面には、層構造入力画面とシミュレーション波形表示部などが含まれている。比較例(特許文献1の手法)の場合、符号81の全体波形(細線)のみが表示されるため、どの界面からの反射であるのか不明であった。これに対し、本実施形態の波形シミュレータ10によれば、例えば、作業者が界面1の反射波を知りたければ、符号82の特定界面波形(太線、実際には緑の線)を表示することができる。このため、例えば、作業者は、界面1の反射波に合わせて、時間ゲートを容易に設定することができる。また、模擬反射波を表示する際、層構造入力画面で指定された色で、前記2次元平面に表示される。このため、作業者はどの界面の反射波であるか容易に判別することができる。
【0071】
<ハードウェア構成>
図15は、波形シミュレータ10等のハードウェア構成を示す図である。図15に示す計算機1200は、図1に示す入力部9、処理部(第一の処理部1、第二の処理部2、第三の処理部3、第四の処理部4)、模擬信号生成部5、波形変換部6、材質データベース7、波形データベース8の実現形態の一つである。なお、各部は複数の計算機1200で実現してもよい。
【0072】
計算機1200は、メモリ1201、プロセッサ1202、HD(Hard Disk)などの記憶装置1203、NIC(Network Interface Card)などの通信部1204、ユーザインターフェース部1205などを有する。なお、プロセッサの一例としてはCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)が考えられるが、所定の処理を実行する主体であれば他の半導体デバイスでもよい。
【0073】
そして、記憶装置1203に記憶されているプログラムがメモリ1201にロードされ、ロードされたプログラムがプロセッサ1202によって実行される。これによって、図1に示す各処理部、模擬信号生成部5、波形変換部6、材質データベース7、波形データベース8の各機能が具現化する。計算機1200は、ユーザインターフェース部1205として、ディスプレイ、タッチパネル、マウス、キーボードを有してもよい。
【0074】
以上説明した本実施形態の波形シミュレータ10は、主に次の特徴を有する。
(1)複数の層構造を有する積層体に超音波を照射したときに、所望の積層部を示す対象積層部の底面を示す対象界面において反射して返って来る反射波を模擬する波形シミュレータであって、積層体を構成するそれぞれの積層部の材質と厚みを含む層構造情報を入力し、層構造情報22及び材質データベース7に基づいて、プローブ(超音波プローブ50)から超音波を積層体に照射してから対象界面からの反射波をプローブが受信するまでの遅延時間を算出する第一の処理を行う第一の処理部1と、超音波がプローブから出力されてから対象界面に到達するまでの第一の透過率を算出する第二の処理を行う第二の処理部2と、超音波が対象積層部の内部で生じる反射の反射率を算出する第三の処理を行う第三の処理部3と、反射波が前記対象界面からプローブまで到達するまでの第二の透過率を算出する第四の処理を行う第四の処理部4と、を備える。
【0075】
(2)前記(1)の波形シミュレータであって、超音波に相当する模擬信号を生成する模擬信号生成部5を有し、全ての積層部における遅延時間と、全ての積層部における第一の透過率、反射率、及び第二の透過率とを算出して、これらの値を乗じて模擬信号に対する振幅変化率を算出し、振幅変化率を模擬信号に乗じて算出した模擬反射波と、を記憶部(波形データベース8)に記憶する。
【0076】
本実施形態によれば、複数の検査界面がある複数の層構造を有する被検査体に対し、時間ゲートを容易に設定することができるように、積層体に超音波を照射したときに、所望の界面から反射する反射波を求めることができる。このため、作業者は、熟練度に影響されずに、対象界面に対して容易に高精度のゲート(時間ゲート)を設定することができる。
【0077】
波形シミュレータは、前記したように、積層体に超音波を照射した際に、対象界面からの反射波を模擬した模擬反射波を生成して、対象界面からの反射波に対して適切なゲートを設定する作業を支援し、操作員である作業者の熟練度に影響されることなく、迅速な作業を行なえるようにして、積層体の欠陥有無の検査効率を大きく改善するものである。
【符号の説明】
【0078】
1 第一の処理部
2 第二の処理部
3 第三の処理部
4 第四の処理部
5 模擬信号生成部
6 波形変換部
7 材質データベース
8 波形データベース(記憶部)
9 入力部
10 波形シミュレータ
21 積層構成
22 層構造情報
30 制御装置
31 走査制御部
32 ゲート情報入力部
33 送受信制御部
34 ゲート設定部
35 画像生成部
36 表示部
37 二次元平面
38 表示番号選択部
39 模擬信号
40 プローブ駆動部
41 メカ制御部
42 X軸スキャナ
43 Y軸スキャナ
44 Z軸スキャナ
50 超音波プローブ(プローブ)
51 エンコーダ
52 圧電素子
60 水槽
61 水
62 被検体
70 ゲート情報記憶部
100 超音波映像装置
L1 第1層
L2 第2層
L3 第3層
L4 第4層
L5 第5層
S100 処理(波形シミュレータの処理)
S120 処理(超音波映像装置の処理)
Z 音響インピーダンス
Zn,Z 第n層の音響インピータンス
【要約】
【課題】複数の検査界面がある複数の層構造を有する被検査体に対し、時間ゲートを容易に設定することができるように、積層体に超音波を照射したときに、所望の界面から反射する反射波を求めることができる波形シミュレータを提供する。
【解決手段】波形シミュレータ10は、層構造情報に基づいて、プローブから超音波を積層体に照射してから対象界面からの反射波をプローブが受信するまでの遅延時間を算出する第一の処理を行う第一の処理部1と、超音波がプローブから出力されてから対象界面に到達するまでの第一の透過率を算出する第二の処理を行う第二の処理部2と、超音波が対象積層部の内部で生じる反射の反射率を算出する第三の処理を行う第三の処理部3と、反射波が対象界面からプローブまで到達するまでの第二の透過率を算出する第四の処理を行う第四の処理部4と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15